JP3299034B2 - 冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた機械構造用鋼 - Google Patents
冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた機械構造用鋼Info
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Description
し、焼入れ焼戻し後の機械的特性は勿論のこと、特に被
削性、冷間鍛造性および疲労強度等の有利な改善を図ろ
うとするものである。
は、機械構造用炭素鋼や合金鋼を切削鍛造等により所定
の形状に成形した後、焼入れ焼戻し処理を行って機械部
品として要求される特性を付加する加工工程により製造
されている。ところで近年、環境問題の観点から自動車
等の軽量化への要望が強く、それに伴い機械部品につい
てもその高強度化が求められている。機械部品の高強度
化のためには、周知のように合金元素の増加が有効であ
るが、合金元素の増加はその一方で、鍛造性および被削
性の著しい劣化を招くことから、工業的な大量生産を前
提とした場合には、生産性およびコストの面で問題が残
る。なお、被削性の向上策としては、PbやS,Ca等の快
削元素の添加が有効であることが知られているが、かよ
うな元素の添加は、非金属介在物を鋼中に多数生成させ
るため、疲労強度はもとより、冷間加工性および被削性
の劣化を招く不利がある。
51-57621号公報では、鋼中のCを黒鉛化することによ
り、冷間鍛造性と被削性という相矛盾する特性を両立さ
せた技術が開示されている。しかしながら、発明者らの
検討によれば、上記の技術では、鋼中Si量が 1.9〜3.0
mass%と高いために冷間鍛造時における変形抵抗が大き
く、また形成される黒鉛も大きく変形能が低いことか
ら、工業的な利用は困難である。さらに、この成分系で
は焼入れ焼戻しによっても十分な強度が確保できないと
いうところにも問題を残していた。
鋼中のCを黒鉛化することにより被削性を改善する方法
が開示されているが、この方法では、黒鉛化処理前に焼
入れ処理が不可欠であり、このような方法を採用するこ
とは工業的生産の立場からは極めて不利である。また、
発明者らの検討によれば、この方法では、黒鉛化に極め
て長時間を必要とするだけでなく、熱間圧延条件の小さ
な変動によって黒鉛化に必要な時間が2〜3倍程度変動
することが判明したが、このことは、上記の方法では工
業的利用が実際上不可能であることを示している。この
理由は、上記方法においては、PおよびN量の規定がな
く、他方、本発明者らの検討によれば、PおよびNは黒
鉛化に顕著な影響を及ぼし、Pは添加量の増加に伴って
顕著に黒鉛化を遅延させる。また、Nは適正な添加量が
存在し、この適正添加量をはずれると黒鉛は粗大とな
り、黒鉛化が遅延される。この挙動は、黒鉛化の核とな
るBN分布とよく対応しており、またBNの分布は熱間
圧延条件およびN量の影響を顕著に受けることによるも
のと考えられる。
方法として、特開平3-140411号公報に開示の方法がある
が、この技術は、鋼中Siが少なく黒鉛化に長時間を要す
るので、工業的には不適である。
題を有利に克服したもので、疲労強度、鍛造性および被
削性といった互いに矛盾する特性を兼ね備える新規な機
械構造用鋼を提案することを目的とする。
の問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下に述べ
る結論を得るに至った。まず、被削性の検討結果につい
て述べる。鋼中のCを黒鉛化することにより被削性を向
上させることができる。これは、鋼中Cが黒鉛化される
ことによって鋼材の硬さが著しく低下することに加え、
黒鉛が切削時に潤滑剤として作用することにより工具の
温度上昇が抑制される結果である。しかし、このような
黒鉛化によって被削性を向上させるためには、黒鉛を微
細に分散させることが不可欠である。この理由は、黒鉛
の被削性向上効果が、黒鉛の潤滑効果と共に、切削時の
せん断領域において材料が変形しこの時に黒鉛と母相界
面に亀裂が入り、この亀裂が連続することにより切屑の
形成が容易になるという機構に基づくからであり、かか
る機構は、黒鉛が微細に分散し、黒鉛と黒鉛の平均距離
が短いほど容易に進行するからである。
述べる。鋼中のCを黒鉛化することにより冷間鍛造性は
著しく向上する。冷間鍛造性は、一般に加工時の変形抵
抗と変形能によって評価されるが、黒鉛化した鋼材は、
硬質なセメンタイトが消失するためにセメンタイトの分
散強化作用が消失し、その結果、変形抵抗は著しく低下
する。また、変形能も黒鉛化が生じていない場合に比較
して向上する。この理由は、黒鉛が加工時に母相の変形
に追随する結果、母相と黒鉛界面に亀裂が生じるまでの
歪み量がセメンタイトの場合に比較して極めて大きくな
るためである。しかし、変形能は黒鉛の粒径に大きな影
響を受け、黒鉛が細粒の方が変形能は高い。これは、細
粒の方が黒鉛−母相界面にボイドの発生する限界歪み量
が増大するためである。
て述べる。疲労強度は一般に鋼材の硬さの向上と共に向
上するが、一方で鋼材中に含有される非金属介在物のサ
イズの影響を受ける。機械部品は、必要とされる疲労強
度を確保するために、二次加工において焼入れ焼戻し処
理が行われるが、この場合、黒鉛粒の溶解挙動は黒鉛の
サイズに強く依存する。これは、黒鉛の溶解過程がオー
ステナイト中へのCの拡散が律速しているのではなく、
Feの拡散速度が律速しているためである。この結果、黒
鉛粒が粗大であると、短時間の加熱では黒鉛が十分に固
溶せず、焼入れ硬化層の硬さが低下するために疲労強度
が低下するのである。しかも、黒鉛が粗大なために未溶
解の黒鉛が存在した場合には、この部分は、疲労の起点
として作用し、硬さから予測されるよりもさらに疲労強
度が低下する。この傾向は、高強度の場合ほど顕著であ
る。したがって、黒鉛鋼の焼入れ焼戻し後の疲労強度を
高めるには、黒鉛の微細化が二重の意味で極めて重要で
ある。
影響を及ぼす臨界的な黒鉛のサイズは約20μm であり、
これよりも大きい場合には、黒鉛の溶解は短時間では進
行しない。また未溶解の黒鉛がこのサイズ以上の場合に
は、疲労破壊の起点として作用するために、疲労強度は
著しく低下する。黒鉛粒を上記の好適サイズに制御でき
る場合には、疲労強度は焼入れ焼戻し後の硬さによって
決まる。このためには、鋼中に焼入れ性向上元素である
Mn, Cr,Mo等を添加すれば良いが、一方でこれらの元素
は鋼中のセメンタイトを著しく安定化させる作用がある
ので、工業的に処理可能な時間で黒鉛化を行うために
は、化学組成の選択が重要となる。
間鍛造性、被削性および疲労強度特性を向上させるため
には、黒鉛粒のサイズをより微細にすることおよび鋼材
の焼入れ性を可能な限り高めることが重要であることが
判明した。そこで、発明者らは、これらを工業的に可能
な時間内に達成することができる化学組成についてさら
に検討を加えた。以下、この検討結果について述べる。
影響に関する検討結果を述べる。黒鉛粒を微細化するた
めには、黒鉛の結晶化の核形成サイトとなる析出物を鋼
中に多数生成させることが重要である。そこで、黒鉛の
結晶化のサイトとなる析出物について鋭意検討した結
果、BN, AlN, TiN, ZrN, Nb(C,N), V(C,N) および
(La,Ce)S等は全て黒鉛の結晶化のための核形成サイト
として作用することが判明した。それらの中でもBNは
黒鉛化の結晶化のためのサイトとして最も有効であり、
またAlNも有効に黒鉛化の結晶化の核として有効に作用
し、特にBNとAlNを複合化した場合に最良の効果が得
られることが判明した。しかし、このBNおよびAlNを
微細分散させるためにはN量をある範囲内に制御するこ
とが肝要である。この条件が満たされた場合に黒鉛は最
も微細になり、同時に黒鉛化の処理時間を最も短縮する
ことができる。この理由は明確ではないが、N量が高い
場合には固溶Nも多いために、鋼中に生成したBNおよ
びAlNが急速に成長することにより黒鉛の各サイトが減
少することによるものと推定される。一方Nが低い場合
には、当然ながら黒鉛の核となるBNおよびAlNが少な
くなるためである。
Pは一般には、鋼中の不純物であり、通常の機械構造用
合金および炭素鋼では 0.015〜0.03mass%程度含有され
るのが一般的である。発明者らは、このPの影響につい
て検討したところ、Pは黒鉛化を著しく阻害する元素で
あり、普通鋼の一般的な含有レベルである0.015 mass%
よりもさらに低減し、0.010 mass%以下まで抑制すると
黒鉛化に要する時間が急速に短くなることを究明した。
化を達成するためには、鋼材の焼入れ性を向上させる必
要がある。一般に鋼材の焼入れ性は、Mn, CrおよびMoと
いった焼入れ性向上元素を添加させれば良いが、これら
の元素は同時にセメンタイトを安定化する作用が強く、
鋼中Cを黒鉛化するという要請とは相矛盾する。そこ
で、発明者らは、これらの合金元素の黒鉛化に及ぼす影
響についてさらに検討を行い、工業的に可能な時間内で
黒鉛化を行わせることができ、同時に焼入れ性を向上さ
せ得る合金元素の選択およびその添加量について検討し
た結果、以下の知見を得た。
Mn>Moの順に大きく、Crは添加量にして0.04mass%程度
の極微量でも黒鉛化を阻害する。また、Crがこの程度添
加された場合には、黒鉛化促進元素であるSiを多量に添
加する必要があることが判った。この点、Mn, Moは、Cr
よりもその弊害が小さく、機械構造用炭素鋼および合金
鋼とほぼ同等なレベルまで添加しても比較的短時間で黒
鉛化させ得ることが判明した。ただし、この場合には、
黒鉛化促進元素であるSiを 1.5mass%を超えて多量に含
有させる必要があることも判明した。従って、基本組成
としては、Mo, MnおよびSiを優先的に考慮した成分組成
が理想的である。またこのような化学組成の場合には、
焼入れ性が向上するだけでなく、焼入れ後の焼戻し軟化
抵抗性が増大するので、焼入れ焼戻し後の硬さはDIが
同じであっても、より高強度化が可能となる利点があ
る。この発明は、上記の知見に立脚するものである。
りである。 1.C:0.20〜0.85mass%、 Si:1.5 超〜1.9 mass
%未満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0045mass
%、 O:0.0018mass%以下 を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも金属
組織がフェライトおよび黒鉛、または、フェライト、黒
鉛およびセメンタイトよりなるよりなることを特徴とす
る冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し後の機械的性
質および疲労強度特性に優れた機械構造用鋼(第1発
明)。
%未満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0045mass
%、 O:0.0018mass%以下 を含み、さらに Cu:0.1 〜3.0 mass%、 Ni:0.1 〜3.0 mass%、 Co:0.1 〜3.0 mass%、 Nb:0.005 〜0.05mass%のうちから選んだ少なくとも1種 を含有し、残部は実質
的にFeの組成になり、しかも金属組織がフェライトおよ
び黒鉛、または、フェライト、黒鉛およびセメンタイト
よりなることを特徴とする冷間鍛造性、被削性並びに焼
入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた
機械構造用鋼(第2発明)。
未満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0160mass
%、 O:0.0018mass%以下およびTi:0.05mass%以下 を、 0.0013mass%≦N−(Ti/3.42)≦0.0045mass% を満足する範囲において含有し、残部は実質的にFeの組
成になり、しかも金属組織がフェライトおよび黒鉛、ま
たは、フェライト、黒鉛およびセメンタイトよりなるこ
とを特徴とする冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し
後の機械的性質および疲労強度特性に優れた機械構造用
鋼(第3発明)。
%未満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0160mass
%、 O:0.0018mass%以下およびTi:0.05mass%以下 を、 0.0013mass%≦N−(Ti/3.42)≦0.0045mass% を満足する範囲において含有し、さらに Cu:0.1 〜3.0 mass%、 Ni:0.1 〜3.0 mass%、 Co:0.1 〜3.0 mass%、 Nb:0.005 〜0.05mass% のうちから選んだ少なくとも1種を含有し、残部は実質
的にFeの組成になり、しかも金属組織がフェライトおよ
び黒鉛、または、フェライト、黒鉛およびセメンタイト
よりなることを特徴とする冷間鍛造性、被削性並びに焼
入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた
機械構造用鋼(第4発明)。
の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.20〜0.85mass% Cは、黒鉛相を形成するために不可欠な元素であるが、
含有量が0.20mass%未満では被削性を確保する上で必要
な黒鉛相を確保することが難しく、一方0.85mass%を超
えて添加しても、焼入れ焼戻し後の硬さは増大するが、
靱性が劣化する結果疲労強度の向上が小さくなるので、
0.20〜0.85mass%の範囲に限定した。
定化することによって黒鉛化を促進する有用元素である
が、1.5 mass%以下では黒鉛化の進行が遅く、工業的処
理としては不適である。また、Siの増加に伴い焼戻し軟
化抵抗が向上し疲労強度も高まるが、1.9 mass%以上添
加してもその効果が飽和する。従って、Si含有量は 1.5
超〜1.9 mass%未満の範囲に限定した。
な元素であるので積極的に添加するが、一方で、セメン
タイト中に固溶し、黒鉛化を阻害する弊害がある。含有
量が0.3 mass%未満では、この発明の目的とする高強度
化のためには焼入れ性が不足し、一方1.5 mass%を超え
て添加すると黒鉛化が阻害されるので、Mnは 0.3〜1.5
mass%の範囲に限定した。
の混入は極力抑制する必要があるが、0.04mass%までな
ら許容される。
上元素であるMn, Cr,Moの中では黒鉛化に及ぼす影響は
最が小さく、しかも焼戻し軟化抵抗が大きい元素でもあ
るので、この発明においては必須の成分である。しかし
ながら、含有量が0.05mass%未満では焼入れ性の向上効
果が小さく、一方 0.5mass%を超えて添加すると黒鉛化
が阻害されるので、0.05〜0.5 mass%の範囲で含有させ
るものとした。
核形成サイトとして作用することにより、黒鉛化の促進
に寄与する。また、焼入れ時にNを固定することにより
Bの焼入れ性向上効果を有効に発揮させることが可能と
なるので積極的に添加する。しかしながら、含有量が0.
01mass%未満ではその作用が小さく、一方0.1 mass%を
超えて添加すると、鋳造工程においてAl系酸化物が多数
形成される。この酸化物は単独でも疲労破壊の起点とな
るだけでなく、この酸化物を核として粗大な黒鉛粒が形
成され、これが焼入れ焼戻し処理時において十分に固溶
しないため、焼入れ焼戻し後の硬さを低下させると共
に、未固溶黒鉛が疲労破壊の起点になり、疲労強度を低
下させる。さらに、Al系酸化物は硬質なため切削時に工
具を摩耗させ、ひいては被削性の低下を招く。それ故、
Alは0.01〜0.1 mass%の範囲で含有させるものとした。
れが黒鉛の結晶化の核として作用することにより黒鉛化
を促進すると共に黒鉛粒の微細化を促す。また鋼の焼入
れ性を高め、焼入れ後の強度を確保する上でも有効に寄
与する。かかる効果を有効に実現するためには0.0005ma
ss%以上の添加を必要とするが、0.0050mass%を超えて
添加するとBがセメンタイト中に固溶してセメンタイト
を安定化させ、逆に黒鉛化が阻害されるので、0.0005〜
0.005 mass%の範囲で含有させるものとした。
焼割れを助長するので、極力低減する必要があり、少な
くとも従来よりも一段低い0.01mass%以下とすることが
肝要である。
の核として作用するが、MnSを核として発生した黒鉛は
粒径が大きく、焼入れ焼戻し処理によっても容易に消失
せず、疲労破壊の起点として作用するので極力低減する
必要がある。そこでこの発明では上記の観点からSの混
入量は0.01mass%以下に制限した。
化の促進と共に黒鉛粒の細粒化に有効に寄与する。しか
しながら、0.0013mass%未満ではBNが十分に形成され
ず、一方、0.0045mass%を超えて添加すると黒鉛化の遅
延を招くので、0.0013〜0.0045mass%の範囲に限定し
た。なお、第3および第4発明において、Tiを添加する
場合には、N量は0.0013〜0.0160mass%の範囲に規定し
たが、この理由は、TiがNをTiNとして固定する作用が
強いからである。しかしながら、この場合においてもTi
によりTiNとして固定されなかった残りの窒素{N−
(Ti/3.42)}は0.0013〜0.0045mass%の範囲に規制す
る必要がある。ここに、Ti添加時におけるNの上限を0.
0160mass%としたのは、N:0.0160mass%が0.05mass%
までのTi添加によって残りのNを0.0013〜0.0045mass%
の範囲に制御できる上限だからである。
削性および疲労強度をともに低下させるので極力低減す
る必要があるので、この発明では0.0018mass%以下に制
限した。
作用があるので、N量が黒鉛化速度に最も適切な範囲よ
りも多い場合に用いて好適である。しかしながら、0.05
mass%を超える添加では、多数のTiNが形成され、これ
が疲労破壊の起点となり高強度化が困難となるので、そ
の含有量は0.05mass%以下とする必要があり、また上述
したとおり、N量との兼ね合いで、黒鉛化が最も速くな
るようにN量を制御する必要上、次式 0.0013mass%≦N−(Ti/3.42)≦0.0045mass% の関係を満足させることが肝要である。
について説明したが、この発明では黒鉛化を一層促進す
るために以下の元素を必要に応じて用いることができ
る。 Cu:0.1 〜3.0 mass%、Ni:0.1 〜3.0 mass%、Co:0.
1 〜3.0 mass% これらの元素は、黒鉛化を促進する作用だけでなく、焼
入れ性を向上させる作用も併せ持つので、黒鉛化を阻害
せずに焼入れ性を向上させる場合に好適である。含有量
については、各元素とも下限に満たないとその添加効果
に乏しく、一方上限を超えるとその効果は飽和に達する
ので、それぞれ上記の各範囲で含有させるものとした。
んど固溶しないので、黒鉛化を阻害する程度が小さい。
また、炭窒化物を形成し、この析出強化作用により強度
を上昇させる利点もある。さらに、焼入れ性を向上させ
る元素でもあるので疲労強度を向上させる必要のある場
合に特に好適である。しかしながら、含有量が0.005 ma
ss%に満たないとその添加効果が小さく、一方0.05mass
%を超えて添加しても効果は飽和するので、 0.005〜0.
05mass%の範囲に限定した。
金属組織が重要であり、主にフェライトと黒鉛の組織と
する必要がある。というのは、黒鉛化が不十分で硬質な
セメンタイトが多量残留する場合には、冷間鍛造時の変
形抵抗が急激に増大するとともに、切削時に、硬質なセ
メンタイトが切削工具の摩耗を著しく促進し、本発明の
目的である優れた冷間鍛造性および被削性が得られない
ためである。ここで、本発明で目標とする冷間鍛造性お
よび被削性を確保するためには、添加Cのほぼ90%以上
が黒鉛として存在することが好ましく、また、黒鉛粒径
としては3μm程度に制御することが好ましい。また、
黒鉛の分布は均一分散が好ましく、分布に粗密が生じた
り、方向性を生じたりすると、特に冷間鍛造性が低下す
る。従って、鋼中Cはほぼ完全に黒鉛とする必要がある
が、そのためには黒鉛化処理として 600〜750 ℃の温度
領域において5〜20h保持する処理を行えば良い。な
お、かかる黒鉛化処理に際して、前処理としての焼入れ
は必要ない。
経て150mm 角のビレットとした後、棒鋼圧延により30mm
φに圧延、空冷した。ついで、700 ℃における保持時間
を種々に変化させて黒鉛化の状況を観察し、黒鉛化に要
する時間を決定した。
化が完了するまでの時間との関係について調べた結果を
示す。図より明らかなとおり、N量が45 ppmを超える場
合およびN量が13 ppm未満の場合には、黒鉛化に要する
時間が著しく増加している。また、P量が0.01mass%を
超える領域では、黒鉛化に要する時間が急激に増大して
いる。また、P, Nが同一の場合、Siが高い方が黒鉛化
に要する時間は短い。
とを前提として、表2に示す種々の成分組成になる鋼
を、転炉−連続鋳造の工程により溶製し、 450×500 mm
のブルームとした。表2において、No.1〜18はこの発明
に従う発明鋼であり、 No.19〜22は、B,Ti, Crおよび
Sがこの発明の適正範囲外の比較鋼である。また No.23
〜25は、従来から機械構造用として用いられている JIS
規格のS30C相当鋼、Cr−Mo鋼であるSCM435およびS45C鋼
に快削元素であるS,Ca, Pbを添加した快削鋼である。
周知のように、S30C鋼は冷間鍛造性に優れるために冷間
鍛造用鋼として、またS45C−S−Ca−Pb快削鋼は被削性
に優れるために高い被削性の要求される用途に、さらに
SCM435は焼入れ性に優れ焼入れ焼戻し後の機械的性質お
よび回転曲げ疲労強度に優れるために、高い疲労強度が
要求される機械部品に用いられている。
m 角のビレットとした後、線棒圧延により52mmφの棒鋼
に圧延し、ついで焼鈍炉により 700℃×23hの黒鉛化焼
鈍処理を施した。かくして得られた鋼材の黒鉛化率、焼
鈍ままの硬さ、冷間鍛造性、被削性、焼入れ焼戻し後の
機械的性質および焼入れ焼戻し後の回転曲げ疲労強度に
ついて調査した。得られた結果を、表3に示す。
微鏡用サンプルを作製し、画像解析装置により黒鉛の面
積率を測定し、添加されたCがすべて黒鉛になった場合
に予測される面積率に対する割合により評価した。ま
た、焼鈍ままの硬さはビッカース硬度計を用いて測定し
た。冷間鍛造性は、焼鈍後の素材より15mmφ×22.5mml
の円柱状試験片を作製し、300tプレスを用いて圧縮試験
を行い試験時の荷重より変形抵抗を算出した。表3には
高さ減少率(圧縮率60%) 時の変形抵抗を示す。また、
試験片側面の割れ発生の有無を確認し、試験した試験片
の半数に割れの発生する圧縮率を限界圧縮率として変形
能の指標とした。被削性試験は、高速度工具鋼SKH4を用
い、切削速度:80 m/min、無潤滑の条件により外周旋削
を行い工具が切削不能となるまでの時間を工具寿命とし
て評価した。焼入れ焼戻し後の特性は、素材より15mmφ
×85mml の試験片を作製し、 900℃×30 min加熱後、水
溶性焼入れ液中に焼入れ、 500℃×1h→水冷の焼戻し
処理を施し、さらに8mmφの引っ張り試験片を作製し引
っ張り試験を行うことにより測定した。また回転曲げ疲
労試験は、上記と同様な焼入れ焼戻し処理を行った後、
8mmφの試験片を作製し小野式回転曲げ疲労試験機を用
い、常温において3600rpm の速度で実施した。
なかったため、一般の加工工程に則して、 No.23(S30C
相当鋼) および No.24(SCM435相当鋼) については、 7
45℃×15h→徐冷の球状化焼なまし処理を行った後、各
項目の試験を上記したと同様な方法で実施した。また、
S45C−Pb鋼については、被削性のみ圧延ままでその他の
試験は 745℃×15h→徐冷の球状化焼なまし処理後に実
施した。
o.1〜18は、被削性はいずれもS45C−Pb鋼よりも優れた
値を示し、また冷間鍛造時の変形抵抗および限界圧縮率
はS30C鋼と同等またはそれ以上であり、しかも冷間鍛造
性にも優れていた。さらに、焼入れ焼戻し後のY.S.およ
びT.S.はSCM435よりもいずれも高い値となっている。こ
れに対し、Crを添加したNo.19 およびB量の低いNo.20
は黒鉛化率が低く、被削性および冷間鍛造性に劣ってい
る。また No.21はN量に対してTi量が多すぎるために黒
鉛化率が低く、被削性および冷間鍛造性に劣っている。
さらに No.22はSが 0.018mass%とこの発明の上限を超
えて多量に添加されているので、被削性、冷間鍛造性、
焼入れ焼戻し後の機械的性質は優れているものの、同じ
硬さレベルの発明鋼と比較すると疲労強度に劣ってい
る。これは、MnSを核として形成された粗大な黒鉛が焼
入れ焼戻し処理によっても消失せず、疲労破壊の起点と
して作用するためである。
させることが困難とされた被削性、冷間鍛造性および疲
労強度を同時に満足するだけでなく、従来よりも格段に
優れた高い疲労強度の機械構造用鋼を得ることができ、
従って、自動車、産業機械等に要求されている高強度部
品を従来よりも容易に提供することが可能となる。
たグラフである。
たグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 C:0.20〜0.85mass%、 Si:1.5 超〜1.9 mass%未
満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0045mass
%、 O:0.0018mass%以下 を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、しかも金属
組織がフェライトおよび黒鉛、または、フェライト、黒
鉛およびセメンタイトよりなるよりなることを特徴とす
る冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し後の機械的性
質および疲労強度特性に優れた機械構造用鋼。 - 【請求項2】 C:0.20〜0.85mass%、 Si:1.5 超〜1.9 mass%未
満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0045mass
%、 O:0.0018mass%以下 を含み、さらに Cu:0.1 〜3.0 mass%、 Ni:0.1 〜3.0 mass%、 Co:0.1 〜3.0 mass%、 Nb:0.005 〜0.05mass%のうちから選んだ少なくとも1種 を含有し、残部は実質
的にFeの組成になり、しかも金属組織がフェライトおよ
び黒鉛、または、フェライト、黒鉛およびセメンタイト
よりなることを特徴とする冷間鍛造性、被削性並びに焼
入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた
機械構造用鋼。 - 【請求項3】 C:0.20〜0.85mass%、 Si:1.5 超〜1.9 mass%未
満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0160mass
%、 O:0.0018mass%以下およびTi:0.05mass%以下 を、 0.0013mass%≦N−(Ti/3.42)≦0.0045mass% を満足する範囲において含有し、残部は実質的にFeの組
成になり、しかも金属組織がフェライトおよび黒鉛、ま
たは、フェライト、黒鉛およびセメンタイトよりなるこ
とを特徴とする冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し
後の機械的性質および疲労強度特性に優れた機械構造用
鋼。 - 【請求項4】 C:0.20〜0.85mass%、 Si:1.5 超〜1.9 mass%未
満、 Mn:0.3 〜1.5 mass%、 Cr:0.04mass%以下、 Mo:0.05〜0.5 mass%、 Al:0.01〜0.1 mass%、 B:0.0005〜0.005 mass%、P:0.01mass%以下、 S:0.01mass%以下、 N:0.0013〜0.0160mass
%、 O:0.0018mass%以下およびTi:0.05mass%以下 を、 0.0013mass%≦N−(Ti/3.42)≦0.0045mass% を満足する範囲において含有し、さらに Cu:0.1 〜3.0 mass%、 Ni:0.1 〜3.0 mass%、 Co:0.1 〜3.0 mass%、 Nb:0.005 〜0.05mass% のうちから選んだ少なくとも1種を含有し、残部は実質
的にFeの組成になり、しかも金属組織がフェライトおよ
び黒鉛、または、フェライト、黒鉛およびセメンタイト
よりなることを特徴とする冷間鍛造性、被削性並びに焼
入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた
機械構造用鋼。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11916994A JP3299034B2 (ja) | 1994-05-31 | 1994-05-31 | 冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた機械構造用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP11916994A JP3299034B2 (ja) | 1994-05-31 | 1994-05-31 | 冷間鍛造性、被削性並びに焼入れ焼戻し後の機械的性質および疲労強度特性に優れた機械構造用鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH07316732A JPH07316732A (ja) | 1995-12-05 |
JP3299034B2 true JP3299034B2 (ja) | 2002-07-08 |
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ID=14754625
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JP4084462B2 (ja) * | 1998-06-04 | 2008-04-30 | Jfe条鋼株式会社 | 快削熱間加工鋼材およびその製造方法 |
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1994
- 1994-05-31 JP JP11916994A patent/JP3299034B2/ja not_active Expired - Fee Related
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