JPH10330894A - 低合金高速度工具鋼およびその製造方法 - Google Patents

低合金高速度工具鋼およびその製造方法

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JPH10330894A
JPH10330894A JP14827697A JP14827697A JPH10330894A JP H10330894 A JPH10330894 A JP H10330894A JP 14827697 A JP14827697 A JP 14827697A JP 14827697 A JP14827697 A JP 14827697A JP H10330894 A JPH10330894 A JP H10330894A
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JP
Japan
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less
tool steel
speed tool
low
steel
Prior art date
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Application number
JP14827697A
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English (en)
Inventor
Toshimitsu Fujii
井 利 光 藤
Yukinori Matsuda
田 幸 紀 松
Tetsuo Sawa
哲 郎 澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の低合金高速度工具鋼に比べて、高温焼
入れが可能であって高硬度を得ることができ、耐摩耗性
をより一層向上し、また、靭性にも優れていて耐衝撃性
をより一層向上した低合金高速度工具鋼を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.40〜0.80%、
Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:2.
0〜5.0未満%、W:2.0超過〜15.0%、N
b:1.0超過〜4.0%およびTa:2.0〜8.0
%のうちの1種または2種(ただし、Nb+1/2T
a:4.0%以下)、V:0.1〜2.0%を含有し、
場合によってはさらに、Mo:7.5%以下、N:0.
10%以下、Co:10.0%以下およびNi:2.0
%以下のうちの1種または2種、Al:1.5%以下お
よびTi:1.0%以下のうちの1種または2種、S:
0.030%以下,Te:0.030%以下およびC
a:0.0030%以下のうちの1種または2種以上、
REM:0.50%以下を含み、残部Feおよび不純物
よりなる低合金高速度工具鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パンチ,ダイス,
プレス型,転造ダイス,曲げ型,打ち抜き型,せん断刃
など、冷間ないしは温間で使用する工具および金型の素
材として用いるのに好適な低合金高速度工具鋼およびそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種工具および金型において、
耐摩耗性が要求される用途には、JIS SKD11に
代表される冷間用合金工具鋼が使用されることが多く、
とくに耐摩耗性により一層優れていることが要求される
場合には、高硬度を得ることができるJIS SKH5
1等の高速度工具鋼が使用されていた。
【0003】他方、靭性の要求が厳しい用途には、JI
S SKD7に代表される熱間用合金工具鋼が使用され
ることもあった。
【0004】さらにまた、冷間用合金工具鋼や高速度工
具鋼は、高硬度を得ることができるものの靭性にやや劣
り、熱間用合金工具鋼は靭性に優れるものの十分な硬さ
を得がたいという難点があった。
【0005】そのため、耐摩耗性と靭性の両方に優れて
いることが要求される用途に対しては、従来鋼では不十
分であるため、耐摩耗性と靭性とを兼ね備えた低合金高
速度工具鋼(通常、マトリックスハイスと称されるもの
であって、例えば、JISSKH51のC,Mo,W,
V含有量を低下したもの)が開発されており、このよう
な低合金高速度工具鋼が使用されることも多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先に開
発された低合金高速度工具鋼は、従来の高速度工具鋼に
おいて、C,Mo,W,V量を低減し、1次炭化物量を
減少させることによって靭性のより一層の向上を図るよ
うにしたものであるため、硬さの上限はHRC60レベ
ルであり、用途によっては耐摩耗性が十分でない場合が
あるという問題点があった。
【0007】また、この種の工具鋼における高硬度化
は、1次炭化物量を増大することにより可能であるが、
C,Mo,W,V量を増加した場合には靭性が低下する
傾向にあるという問題点があった。
【0008】
【発明の目的】本発明は、このような従来の問題点を解
決するためになされたものであって、先に開発された低
合金高速度工具鋼の靭性を低下させることなく、使用硬
さの上限をさらに高めることが可能である新規な低合金
高速度工具鋼を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる低合金高
速度工具鋼は、請求項1に記載しているように、重量%
で、C:0.40〜0.80%、Si:2.0%以下、
Mn:2.0%以下、Cr:2.0〜5.0未満%、
W:2.0超過〜15.0%、Nb:1.0超過〜4.
0%およびTa:2.0〜8.0%のうちの1種または
2種(ただし、Nb+1/2Ta:4.0%以下)、
V:0.1〜2.0%を含有し、残部Feおよび不純物
よりなることを特徴としている。
【0010】そして、本発明に係わる低合金高速度工具
鋼の実施態様においては、請求項2に記載しているよう
に、Mo:7.5%以下(ただし、W+2Mo:15.
0%以下)を含むものとすることができ、請求項3に記
載しているように、N:0.10%以下を含むものとす
ることができ、請求項4に記載しているように、Co:
10.0%以下およびNi:2.0%以下のうちの1種
または2種を含むものとすることができ、請求項5に記
載しているように、Al:1.5%以下およびTi:
1.0%以下のうちの1種または2種を含むものとする
ことができ、請求項6に記載しているように、S:0.
030%以下,Te:0.030%以下およびCa:
0.0030%以下のうちの1種または2種以上を含む
ものとすることができ、請求項7に記載しているよう
に、REM:0.50%以下を含むものとすることがで
きる。
【0011】本発明に係わる低合金高速度工具鋼の製造
方法は、請求項8に記載しているように、請求項1ない
し7のいずれかに記載の化学成分組成を有する低合金高
速度工具鋼素材に対し、熱間加工前および熱間加工途中
の少なくともいずれかにおいて、温度1100〜125
0℃の均質拡散処理を実施するようにしたことを特徴と
している。
【0012】
【発明の作用】本発明に係わる低合金高速度工具鋼およ
びその製造方法は、上述した構成を有するものであっ
て、その特徴のひとつとするところは、使用硬さの上限
を高めるために、高温焼入れを行うことにより、母相に
固溶する合金元素量を高めることによって高硬度を得る
ことは可能であるが、高温焼入れを行うために結晶粒が
粗大化して靭性が低下することから、本発明において
は、Nbおよび/またはTaを従来以上に多量に含有さ
せ、高温焼入れした場合の結晶粒の粗大化を抑制するこ
とにより、高温焼入れを可能とし、高硬度化を達成した
ことにある。
【0013】また、本発明の他の特徴のひとつとすると
ころは、Nb,Taの従来以上の多量の添加に際して、
結晶粒の粗大化を抑制するための単純な添加ではなく、
W,Mo,Nb,Taの添加により形成される1次炭化
物が微細に分散するように、添加量の適正化を図ったこ
とにある。
【0014】この結果、いわゆる低合金高速度工具鋼に
おいて、靭性の低下を抑制しつつ、高硬度化すなわち耐
摩耗性の向上が可能となったのである。
【0015】次に、本発明に係わる低合金高速度工具鋼
の成分組成範囲(重量%)の限定理由について説明す
る。
【0016】・C:0.40%以上0.80%以下 CはCr,Mo,W,V,Nb,Ta等の炭化物形成元
素と結合して炭化物を形成する。この炭化物は工具や金
型の耐摩耗性を高めるとともに、焼もどし時に微細炭化
物として析出することにより焼もどし硬さを高める。ま
た、Cは一部基地中に固溶し、硬さを高める。このよう
な作用を得るためには、最低0.40%の添加が必要で
ある。ただし、過度の添加は、粗大な1次炭化物量を増
加させ、靭性を低下させるため、0.80%を上限とす
る。
【0017】・Si:2.0%以下 Siは鋼溶製時の脱酸元素として必要である。ただし、
過度の添加は加工性や靭性が低下するため、上限を2.
0%とする。
【0018】・Mn:2.0%以下 Mnは鋼溶製時の脱酸元素として必要である。また、焼
入性および硬さを確保するためにも必要である。ただ
し、過度に添加すると、加工性や靭性が低下するため、
2.0%を上限とする。
【0019】・Cr:2.0%以上5.0%未満 Crは炭化物を形成し、基地の強化や耐摩耗性向上のた
めに必要である。また、焼入性確保のためにも必要であ
る。そして、このような作用を得るためには最低2.0
%の添加が必要である。ただし、過度の添加は靭性の低
下を招くため、5.0%未満とする必要がある。
【0020】・W:2.0%超過15.0%以下 WはMC型の炭化物を形成し、基地の強化や耐摩耗性
向上のために必要である。そして、このような効果を得
るためには2.0%を超える添加が必要である。ただ
し、過度の添加は、1次炭化物として残留するMC型
の炭化物量が増加し、靭性を低下させるため、上限を1
5.0%とする。
【0021】・Nb:1.0%超過4.0%以下および
Ta:2.0%以上8.0%以下のうちの1種または2
種 NbおよびTaは本発明の低合金高速度工具鋼において
特徴とする元素である。
【0022】このうち、Nbは凝固時にMC型の炭化物
を形成し、耐摩耗性を高めるため必要な元素である。ま
た、焼入れ時の結晶粒粗大化を防止する効果がある。従
来、このようなNbの作用を得るためには、0.1%以
上の添加で十分であり、過度の添加は、熱間加工後にM
C型の1次炭化物が粗大なまま残留し、靭性を低下させ
るとされていた。しかし、さらに鋭意実験・研究を進め
たところ、Nbを1.0%を超えて添加することによ
り、MC型1次炭化物の形態が塊状から花弁状に変化
し、熱間加工後の1次炭化物が微細に分散することによ
り、靭性がかえって向上することを見い出した。また、
Nbを1.0%を超えて添加することにより、MC型
炭化物の晶出が抑制され、MC型の1次炭化物量が減
少することも見い出した。したがって、かかる知見よ
り、1.0%超過を添加量の下限とする。ただし、4.
0%を超えての添加は、1次炭化物量が増加し、靭性が
低下するため、4.0%を上限とする。
【0023】他方、TaはNbと同等の効果を有する元
素であり、NbをTaで置き換えても同等の効果が得ら
れる。そして、熱間加工後に1次炭化物を微細に分散さ
せ、MC型の1次炭化物量が低減するようにするため
には、最低2.0%の添加が必要である。ただし、8.
0%を超えての添加は、1次炭化物量が増加し、靭性を
低下させるため、8.0%を上限とする。
【0024】・Nb+1/2Ta:4.0%以下 Nb,TaはともにMC型の炭化物を形成する。しか
し、過度に添加した場合、1次炭化物量が増加し、靭性
が低下する。したがって、Nb,Ta両元素の添加量を
規制する必要がある。そして、Taの原子量はNbの約
2倍であることから、Nb+1/2Taで規定し、上限
を4.0%とする。
【0025】・V:0.1%以上2.0%以下 Vは炭化物を形成し、基地の強化や耐摩耗性向上のため
に必要である。このような作用を得るためには最低0.
1%の添加が必要である。ただし、過度の添加は、1次
炭化物量を増加させ、靭性を低下させるため、上限を
2.0%とする。
【0026】・Mo:7.5%以下 MoはMC型の炭化物を形成し、基地の強化や耐摩耗
性向上のために適宜添加することができる。ただし、過
度の添加は、1次炭化物として残留するMC型の炭化
物量が増加し、靭性を低下させるため、添加するとして
もその上限を7.5%とする。
【0027】・W+2Mo:15.0%以下 W,Moはともに凝固時にMC型の炭化物を形成す
る。ただし、過度に添加した場合、1次炭化物として残
留するMC型の炭化物量が増加し、靭性を低下させ
る。したがって、W,Mo両元素の添加量を規制する必
要がある。そこで、Moの原子量はWの約1/2である
ことから、W当量(W+2Mo)で規定し、上限を1
5.0%とする。
【0028】・N:0.10%以下 NはNb,V,Al等の窒化物形成元素と結合し、微細
な窒化物として析出する。このような窒化物は、焼入れ
時の結晶粒粗大化を防止するのに有効であるので、適宜
Nを添加することができる。しかし、過度に添加しても
その効果が飽和するため、添加するとしてもその上限を
0.10%とする。
【0029】・Co:10.0%以下 Coは基地に固溶し、耐熱性の向上、基地の強化に寄与
するためNiと共に適宜添加することができる。しか
し、過度に添加しても加工性が低下するため、添加する
としてもその上限を10.0%とする。
【0030】・Ni:2.0%以下 Niは基地に固溶し、焼入性の向上、基地の強化に寄与
するためCoと共に適宜添加することができる。しか
し、過度に添加しても加工性が低下するため、添加する
としても上限を2.0%とする。
【0031】・Al:1.5%以下 Alは微細な窒化物を形成し、焼入れ時の結晶粒粗大化
防止の効果があるためTiと共に適宜添加することがで
きる。しかし、過度に添加しても、その効果が飽和する
ため、添加するとしてもその上限を1.5%とする。
【0032】・Ti:1.0%以下 Tiは炭窒化物を形成し、焼入れ時の結晶粒粗大化防止
の効果があるためAlと共に適宜添加することができ
る。しかし、過度に添加しても、その効果が飽和するた
め、添加するとしてもその上限を1.0%とする。
【0033】・S:0.030%以下 Sは被削性を向上する元素であるため、Te,Caと共
に適宜添加することができる。しかし、過度に添加する
と、靭性が低下するため、添加するとしてもその上限を
0.030%とする。
【0034】Te:0.030%以下 Teは被削性を向上する元素であるため、S,Caと共
に適宜添加することができる。しかし、過度に添加する
と、靭性が低下するため、添加するとしてもその上限を
0.030%とする。
【0035】・Ca:0.0030%以下 Caは被削性を向上する元素であるため、S,Teと共
に適宜添加することができる。しかし、過度に添加して
も、その効果が飽和するため、添加するとしても上限を
0.0030%とする。
【0036】・REM:0.50%以下 REM(Sc,Yを含む希土類元素の1種または2種以
上)はO,P等の不純物を固定し、基地の清浄度を高
め、耐衝撃性を向上させる元素であるため適宜添加する
ことができる。しかし、過度に添加すると、地きずが発
生するため、上限を0.50%とする。
【0037】本発明に係わる低合金高速度工具鋼はこの
ような化学成分組成を有するものであり、この低合金高
速度工具鋼を製造するにあたっては、熱間加工前および
熱間加工途中の少なくともいずれかにおいて、温度11
00℃以上1250℃以下のの均質拡散処理を行うよう
にすることが望ましい。
【0038】この場合、均質拡散処理に際しての温度が
1100℃よりも低いと、均質拡散処理が十分でないも
のとなったり、均質拡散処理に多くの時間を必要とした
りするので好ましくなく、反対に、均質拡散処理温度が
1250℃よりも高いと炭化物が溶融してかえって靭性
が低下することとなるので好ましくない。
【0039】
【実施例】
(実施例1)表1〜表3に示すNo.1〜No.37の
本発明鋼および比較鋼を50kg容量の真空誘導炉を用
いて溶製した。
【0040】また、参考のため、従来の低合金高速度工
具鋼(従来鋼No.38)、高速度工具鋼(従来鋼N
o.39:SKH51)、冷間用合金工具鋼(従来鋼N
o.40:SKD11)、熱間用合金工具鋼(従来鋼N
o.41:SKD7)をも試験に供した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】次いで、本発明鋼および比較鋼ならびに従
来の低合金高速度工具鋼については、温度:1200
℃,時間:20時間の均質拡散処理を実施し、従来鋼で
あるSKH51,SKD11,SKD7には均質拡散処
理を実施しなかった。
【0045】続いて、温度:1200℃での加熱鍛造を
行うことにより30mm角の大きさとしたのち、温度:
870℃,時間:2時間の焼なましを施し、その後、試
験片に粗加工した。
【0046】この試験片への粗加工に際しては、 (1)結晶粒粗大化特性評価用試験片(発明鋼,比較
鋼,従来の低合金高速度工具鋼のみ) (2)シャルピー試験片 を作製した。
【0047】そして、結晶粒粗大化特性評価用試験片を
用い、結晶粒粗大化温度の測定を行うに際しては、各温
度に5分間加熱した場合に、結晶粒度番号が8.0以下
に粗大化する温度を求めた。この結果を表5〜表7の
「結晶粒粗大化温度」の欄に示す。
【0048】一方、シャルピー衝撃試験片を用いてシャ
ルピー衝撃試験を実施するに際しては、表4に示す条件
で焼入れ・焼もどしを実施した。
【0049】
【表4】
【0050】次いで、熱処理後に試験片精加工を行うこ
とにより、10mm角×55mm,10Rノッチのシャ
ルピー衝撃試験片を作製した。
【0051】そして、耐摩耗性評価の指標として硬さの
測定を行い、この際、シャルピー衝撃試験片についてロ
ックウエルCスケールにて硬さの測定を行った。この結
果を表5〜表7の「硬さ」の欄に示す。
【0052】さらに、靭性評価の指標として、シャルピ
ー衝撃試験片を用いてシャルピー衝撃試験を行った。こ
の結果を表5〜表7の「シャルピー衝撃値」の欄に示
す。
【0053】さらに、1次炭化物量および1次炭化物平
均粒径の測定を行うに際し、発明鋼および比較鋼の一部
ならびに従来の低合金高速度工具鋼について、炭化物を
腐食した後、画像解析装置を用いて、最大長さ3μm以
上の1次炭化物の面積率および平均粒径の測定を行っ
た。これらの結果を表5〜表7の「1次炭化物面積率」
および「1次炭化物平均粒径」の欄に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】以上の結果、本発明鋼はいずれも結晶粒粗
大化温度が1220℃よりも高いものとなっており、従
来の低合金高速度工具鋼に比べてより高い温度での焼入
れが可能であることが確かめられた。
【0058】また、本発明の低合金高速度工具鋼では、
従来の低合金高速度工具鋼に比べてより高い温度での焼
入れが可能であることから、いずれもHRC62以上の
高硬度を得ることが可能であり、高硬度で使用すること
によって耐摩耗性がより一層要求される用途にも使用可
能であるものとなっていた。
【0059】さらに、本発明の低合金高速度工具鋼で
は、1次炭化物が微細に存在しており、シャルピー衝撃
値はいずれも35J/cm以上となっていて靭性に優
れたものとなっていた。
【0060】したがって、高硬度域で使用したときでも
割れ等による工具寿命の低下がなく、耐摩耗性がより一
層要求される用途にも使用可能であるものとなってい
た。
【0061】このように、本発明鋼では、Nb,Taを
従来よりも多く添加することによって、結晶粒の粗大化
を抑制し、高温焼入れを可能とし、高硬度化が実現でき
るものであった。
【0062】そして、Nb,Taは結晶粒の粗大化を抑
制するためだけに単純に添加したものではなく、Nb,
Taにより形成される1次炭化物が微細に分散するよう
に、添加量の適正化を鋭意検討した結果、靭性の低下を
抑制しつつ、高硬度化、すなわち耐摩耗性の向上が可能
となり、そのうえ、1次炭化物が微細に存在しているこ
とによって靭性に優れ、高硬度域で使用しても割れ等に
よる不具合が生じがたく、耐衝撃性の向上も可能となっ
た。
【0063】図1は、NbとTaの添加効果をさらにわ
かりやすく示したものであって、No.20〜26の鋼
について、Nb+1/2Ta含有量と1次炭化物面積率
および1次炭化物平均粒径との関係をあらわしたもので
ある。
【0064】図1より明らかであるように、Nb+1/
2Ta含有量を1.0%超過とすることによって、M
C型の1次炭化物量が減少し、その結果、合計の1次炭
化物(MC+MC)量が減少することが認められた。
そしてまた、MC型の1次炭化物が花弁状に晶出するた
め、熱間加工後の1次炭化物平均粒径が減少することが
認められた。ただし、Nb+1/2Ta含有量が4.0
%を超えると、1次炭化物面積率および1次炭化物平均
粒径がともに増加することが認められた。
【0065】(実施例2)表8の本発明鋼(A)の欄に
示す化学成分組成の鋼を量産規模て製造し、φ100m
mの丸棒を熱間鍛造により成形したのち、自動車用部品
の打ち抜きパンチを製作して、その実用性能を評価し
た。
【0066】他方、表8の比較鋼の欄に示す化学成分組
成を有する市販の冷間用合金工具鋼(SKD11)を素
材としてφ100mmの丸棒を熱間鍛造により成形した
のち、同じく自動車用部品の打ち抜きパンチを製作し
て、その実用性能を評価した。
【0067】
【表8】
【0068】また、評価終了後の各パンチの中心部より
シャルピー衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃値およ
び硬さを測定した。これらの結果を表9に示す。
【0069】なお、本発明鋼(A)については、熱間鍛
造前に表9に示すような均質拡散処理を実施したものと
実施しないものを2種類製造した。また、パンチの焼入
れ・焼もどし条件も変化させた。
【0070】そして、実用性能の評価は、S45Cから
なる板厚2.5mmの炭素鋼板を打ち抜いて、パンチが
摩耗または割れにより使用不要となるまでのショット数
を調べることにより行った。これらの結果を同じく表9
に示す。
【0071】
【表9】
【0072】表9に示すように、本発明鋼(A)からな
る低合金高速度工具鋼を素材としたパンチでは、従来の
冷間用合金工具鋼を素材としたパンチに比べて、ショッ
ト数がかなり多く、より一層の長寿命化を実現できるこ
とが確かめられた。
【0073】
【発明の効果】本発明による低合金高速度工具鋼では、
請求項1に記載しているように、重量%で、C:0.4
0〜0.80%、Si:2.0%以下、Mn:2.0%
以下、Cr:2.0〜5.0未満%、W:2.0超過〜
15.0%、Nb:1.0超過〜4.0%およびTa:
2.0〜8.0%のうちの1種または2種(ただし、N
b+1/2Ta:4.0%以下)、V:0.1〜2.0
%を含有し、残部Feおよび不純物よりなるものとした
から、従来の低合金高速度工具鋼に比べて高温焼入れが
可能であり、高硬度を得ることが可能であって、高硬度
で使用することにより、耐摩耗性にさらに優れているこ
とが要求される用途にも適したものであり、また、従来
の低合金高速度工具鋼に比べて1次炭化物が微細に存在
しているものとすることができるので、靭性にも優れた
ものとすることができ、それゆえ、高硬度域で使用した
ときでも割れ等による工具寿命の低下がなく、耐衝撃性
に優れていることが要求される用途にも適したものであ
るという著大なる効果がもたらされる。
【0074】そして、請求項2に記載しているように、
Mo:7.5%以下(ただし、W+2Mo:15.0%
以下)を含むものとすることによって基地の強化および
耐摩耗性のより一層の向上が可能となり、請求項3に記
載しているように、N:0.10%以下を含むものとす
ることにより微細な窒化物として析出させることによっ
て焼入れ時の結晶粒の粗大化をさらに防止することが可
能となり、請求項4に記載しているように、Co:1
0.0%以下およびNi:2.0%以下のうちの1種ま
たは2種を含むものとすることによって基地をより一層
強化することが可能であり、請求項5に記載しているよ
うに、Al:1.5%以下およびTi:1.0%以下の
うちの1種または2種を含むものとすることによって、
微細な窒化物ないしは炭窒化物を形成することにより焼
入れ時の結晶粒の粗大化をさらに防止することが可能で
あり、請求項6に記載しているように、S:0.030
%以下,Te:0.030%以下およびCa:0.00
30%以下のうちの1種または2種以上を含むものとす
ることによって、被削性をより一層向上することによ
り、工具や金型への加工性がさらに良好なものとなり、
請求項7に記載しているように、REM:0.50%以
下を含むものとすることによって、基地の清浄度を高
め、耐衝撃性をさらに向上させることが可能であるとい
う著大なる効果がもたらされる。
【0075】また、本発明による低合金高速度工具鋼の
製造方法では、請求項8に記載しているように、請求項
1ないし7のいずれかに記載の化学成分組成を有する低
合金高速度工具鋼素材に対し、熱間加工前および熱間加
工途中の少なくともいずれかにおいて、温度1100〜
1250℃の均質拡散処理を行うようにしたから、合金
元素の均質拡散が著しく良好なものとなって、高硬度,
高耐摩耗性,高靭性,高耐衝撃性の低合金高速度工具鋼
を製造することが可能であり、工具および金型のより一
層の長寿命化を実現することが可能であるという著大な
る効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Nb+1/2Ta含有量と1次炭化物面積率
および1次炭化物平均粒径との関係を調べた結果を例示
するグラフである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.40〜0.80%、
    Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:2.
    0〜5.0未満%、W:2.0超過〜15.0%、N
    b:1.0超過〜4.0%およびTa:2.0〜8.0
    %のうちの1種または2種(ただし、Nb+1/2T
    a:4.0%以下)、V:0.1〜2.0%を含有し、
    残部Feおよび不純物よりなることを特徴とする低合金
    高速度工具鋼。
  2. 【請求項2】 Mo:7.5%以下(ただし、W+2M
    o:15.0%以下)を含むことを特徴とする請求項1
    に記載の低合金高速度工具鋼。
  3. 【請求項3】 N:0.10%以下を含むことを特徴と
    する請求項1または2に記載の低合金高速度工具鋼。
  4. 【請求項4】 Co:10.0%以下およびNi:2.
    0%以下のうちの1種または2種を含むことを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれかに記載の低合金高速度工
    具鋼。
  5. 【請求項5】 Al:1.5%以下およびTi:1.0
    %以下のうちの1種または2種を含むことを特徴とする
    請求項1ないし4のいずれかに記載の低合金高速度工具
    鋼。
  6. 【請求項6】 S:0.030%以下,Te:0.03
    0%以下およびCa:0.0030%以下のうちの1種
    または2種以上を含むことを特徴とする請求項1ないし
    5のいずれかに記載の低合金高速度工具鋼。
  7. 【請求項7】 REM:0.50%以下を含むことを特
    徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の低合金高
    速度工具鋼。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれかに記載の化
    学成分組成を有する低合金高速度工具鋼素材に対し、熱
    間加工前および熱間加工途中の少なくともいずれかにお
    いて、温度1100〜1250℃の均質拡散処理を実施
    することを特徴とする低合金高速度工具鋼の製造方法。
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