JP5345415B2 - 被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼およびプレス金型 - Google Patents
被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼およびプレス金型Info
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Description
(1)質量%で、C:0.80〜0.89%、Si:1.0〜1.4%未満、Mn:0.1〜1.0%、S:0.030〜0.070%、Cr:7.5〜8.5%、Ni:0.05〜0.2%、MoおよびWの内の1種または2種をMo+1/2W:0.9〜1.6%、VおよびNbの内の1種または2種をV+1/2Nb:0.03〜0.3%を含有し、残部をFeおよび不可避的不純物からなる被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼。
(3)前記(1)または(2)に記載の鋼に加えて、(Si+S×100)/〔(V+1/2Nb)×10〕:2.5〜10.0であることを特徴とする被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1に記載の鋼を使用し、切削加工後、熱処理または表面処理を施した冷間プレス金型にある。
C:0.80〜0.89%
Cは、熱処理時に基地に固溶しての硬度を確保するための元素であり、その効果を得るためには0.80%以上必要である。また、Cr,Mo,V,W,Nbなどの合金元素と結合して炭化物を形成し二次硬化および耐摩耗性の向上に寄与するが、添加し過ぎると炭化物が粗大になり衝撃特性を著しく劣化されるため、その上限を0.89%とした。
Siは、製鋼時の脱酸剤として添加、焼入性にも有効である。さらに、本発明では、基地を脆化させて切削抵抗を下げ、切削工具刃先に構成刃先(酸化物層)を体積させるBelag効果で凝着を抑えて切削工具寿命を向上させることにより切削性改善を狙っており、そのためには、1.0%以上必要である。しかし、1.4%を超えると衝撃特性が顕著に低下するため上限を1.4%未満とした。
Mnは、Siと同様に脱酸剤として添加し、焼入性にも有効である。さらに、本発明においては、硫化物MnSを形成させ被削性改善を狙っており、必要量の硫化物を得るために0.1%以上添加する必要がある。しかし、添加し過ぎると被削性と衝撃特性を劣化させるため上限を1.0%とした。
Sは、MnSを形成させ被削性を高めるために、0.030%以上添加する必要がある。しかし、添加し過ぎると衝撃特性が劣化させるため上限を0.060%とした。
Ni:0.05〜0.2%
Niは、マトリックスに固溶して靱性を高めるので、0.05%以上添加する必要がある。しかし、焼きなまし硬さを高めるために焼きなまし状態での切削性を阻害するため、その上限を0.2%とする。
Crは、基地に固溶して焼入性を向上させ、また、炭化物を生成して耐摩耗性を確保するために7.5%以上必要である。しかし、Crは凝固時にCと結合して粗大な一次炭化物を形成しやすく、それが衝撃特性や被削性を著しく劣化させるため、その上限を8.5%とした。
Mo+1/2Wを規制したのは、焼入性確保と二次硬化による焼入れ焼戻し硬さの確保および析出炭化物による耐摩耗性改善のために、0.9%以上必要である。しかし、添加し過ぎると、凝固時に偏析して熱処理変寸や歪みの原因になったり、炭化物が粗大になり靱性や切削性が低下する。また、二次硬化で微細炭化物が多量に析出し、基地中のC量が低減した結果、残留オーステナイトのマルンサイト変態が促進され、高温焼戻し時の熱処理変寸量が大きくなるため、その上限を1.6%とした。
V+1/2Nbを規制したのは、微細で硬質な炭化物の分散析出による耐摩耗性改善、さらに、プレス金型に適用される拡散浸透表面処理(TD処理など)の高温長時間保持時の結晶粒粗大化を抑えて衝撃特性を維持するために、0.03%以上必要である。しかし、添加し過ぎると、凝固時に偏析して熱処理変寸や歪みの原因になったり、炭化物が粗大になり靱性や切削性が低下する。さらに、二次硬化において微細炭化物が多量に析出し、高温焼戻し時の熱処理変寸量が大きくなるため、その上限を0.3%とした。
Cr/Cを規制したのは、C−Cr量の両者の最適化により、耐衝撃性、被削性や耐摩耗性に寄与する一次炭化物の大きさやマトリックスへの炭素の固溶量を規制すると共に、熱処理変寸や耐摩耗性に寄与するMo、Vなどの析出炭化物の量を規制して、被削性、熱処理変寸特性、耐衝撃性を兼ね備えるためには、8.5以上必要である。しかし、10.5を超えると、炭化物が粗大化して被削性と衝撃特性が著しく悪化するため、その範囲を8.5〜10.5とした。
Mo+1/2W、V+1/2Nbを低減することで、高温焼戻し時の炭化物析出を減らし、残留オーステナイトの分解を抑制することで、熱処理変寸による膨張を小さくできる。また、鍛伸均熱処理は成分偏析の軽減と炭化物の微細均一化による熱処理変寸特性および衝撃特性の改善を図るもので、その両者のバランスにおいて達成される。これらの特性を得るためには、5.5以上必要である。しかし、15.5を超えると凝固時に偏析して熱処理変寸や歪みの原因になったり、炭化物が粗大になり靱性や切削性が低下する。また、二次硬化で微細炭化物が多量に析出し、マルンサイト変態が促進され、高温焼戻し時の熱処理変寸量が大きくなるため、その上限を15.5とした。
Si、Sを高めることで切削性は向上するが、過多の添加は衝撃特性を悪化させる。また、V、Nbを高めることで結晶粒粗大化を抑制し衝撃特性は向上するが、硬質な微細析出炭化物により著しく切削性が悪化する。これらのバランスを最適化することで、切削性と衝撃特性の両方が改善される。すなわち、これらの特性を得るためには、2.1以上必要である。しかし、13.0を超えると靱性が低下する。
鍛伸減面率は、(鍛伸完了品の平均断面積)/(鋼塊の平均断面積)×100%で算出される。鍛伸減面率を規制したのは、熱処理変寸の要因となる成分偏析の低減、鋼塊の内部欠陥の閉塞、および切削性と衝撃値に寄与する晶出炭化物を分散させるために25%以上必要である。すなわち、鋼塊のV偏析、柱状晶帯および等軸晶帯などの正偏析部に圧下を加えて歪みを導入することで、後の均熱保持において偏析部での拡散が促進されて、成分が均一に分散されるため、熱処理変寸量が改善される。
偏析部の合金成分を拡散させるためには、1075℃以上で8時間以上の均熱保持が必要である。しかし、保持温度を高くし過ぎると、圧延、鍛伸時にオーバーヒートして内部欠陥が発生するために、1150℃以下とした。
表1に示す成分組成の鋼を100kg真空誘導溶解炉にて溶解した後鋳型にて造塊し、この造塊を1100℃に加熱して鋼塊幅方向に減面率28%で鍛造し、1100℃、10時間の均熱保持後鍛伸により厚み35mm、幅150mmの平角材とし、その後径32mmの丸棒材を作製し供試材とした。その各化学成分での鍛伸減面率および加熱条件としての温度−時間を表1に示す。また、表2に各焼戻温度での熱処理変寸率、焼入焼戻硬さ(HRC)と残留オーステナイト量並びに切削性評価とシャルピー衝撃値を示す。
熱処理変寸率(%)=[(熱処理後寸法−熱処理前寸法)/熱処理前寸法]×100
なお、本発明では長手方向の変寸率で評価を行った。
また、シャルピー衝撃試験は、径32mm材中心部から圧延方向にシャルピー試験片(厚み10mm、幅10mm、長さ55mm、10R2mmCノッチ)を採取し、作製して、真空熱処理(焼入:1030℃、1時間保持後加圧ガス冷却、焼戻し:500℃、1時間保持後ガス冷却)の後、シャルピー衝撃試験を実施した。
特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.80〜0.89%、
Si:1.0〜1.4%未満、
Mn:0.1〜1.0%、
S:0.030〜0.070%、
Cr:7.5〜8.5%、
Ni:0.05〜0.2%、
MoおよびWの内の1種または2種をMo+1/2W:0.9〜1.6%、VおよびNbの内の1種または2種をV+1/2Nb:0.03〜0.3%を含有し、残部をFeおよび不可避的不純物からなる被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼。 - 請求項1に記載の鋼に加えて、Cr/C:8.5〜10.5、(Mo+1/2W)/(V+1/2Nb):5.5〜15.5であることを特徴とする被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼。
- 請求項1または2に記載の鋼に加えて、(Si+S×100)/〔(V+1/2Nb)×10〕:2.5〜10.0であることを特徴とする被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼を鋼塊状態から鍛造により鋼塊幅方向で減面率25%以上の圧下を加えて、1075〜1150℃で8時間以上均熱保持した後に、鍛造または圧延してなることを特徴とする被削性、熱処理変寸特性、衝撃特性に優れた冷間プレス金型用鋼。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼を使用し、切削加工後、熱処理または表面処理を施した冷間プレス金型。
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JP2008054211 | 2008-03-05 | ||
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