JP6073167B2 - 面疲労強度と冷間鍛造性に優れた肌焼用鋼材 - Google Patents

面疲労強度と冷間鍛造性に優れた肌焼用鋼材 Download PDF

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本発明は、高い面疲労強度を有し、しかも球状化焼鈍後の冷間鍛造性にも優れた肌焼用鋼材、およびこうした肌焼用鋼材から得られる歯車に関するものである。本発明の肌焼用鋼材は、自動車部品や建築機械、その他の各種機械に使用される歯車やシャフト類等の素材として有用なものであるが、以下では自動車用歯車に適用する場合を中心にして説明を進める。
自動車用歯車は、過酷な条件下で使用されることから、耐ピッチング性や耐摩耗性が優れていることが要求され、こうした観点から鋼材表面における面疲労強度が優れていることが必要である。こうした特性を満足させるためには、その素材として低CでしかもSi、Moを比較的多く含有する鋼材(以下「低C高Si・Mo鋼」と呼ぶことがある)を用い、最終製品の段階でその表面に浸炭処理を施し、表面硬さを高くして鋼材の軟化抵抗性を高く維持する様にしている(例えば、特許文献1)。また歯車を製造するに際しては、熱間圧延によって鋼線材や棒鋼にした後、鍛造および機械加工によって歯車形状とされるのが一般的である。
ところで鍛造は、比較的高い温度で行う熱間鍛造と、比較的低い温度で行う冷間鍛造が知られている。このうち冷間鍛造は、切削加工に匹敵する寸法精度が得られると共に、切削加工の省略が可能であるため、幅広い分野で利用されている。但し、冷間鍛造に供される鋼材は、熱間鍛造に比べて変形抵抗が大きくなり、また加工機械の容量や金型工具の強度等の点で制約があるために、材料割れによる不良の発生や、工具ダイスの破損などが発生し易いという問題がある。
比較的高い硬度を有して成形性が悪い中炭素鋼や低合金鋼を素材鋼として冷間鍛造する場合には、冷間鍛造性を向上させるために、鋼中の炭化物を球状化するための球状化焼鈍が行なわれるのが一般的である。この様な球状化焼鈍を実施することによって、鋼材の変形能の向上が図れると共に、ダイス寿命の延伸に効果がある変形抵抗低減が達成されることになる。
上記のような球状化焼鈍は、Si含有量が0.3%以下であるような低Si鋼材においては有効である(例えば、特許文献2)。しかしながら、自動車用歯車に適用されるような低C高Si・Mo鋼に球状化焼鈍を実施しても、変形抵抗が高くなっているので冷間鍛造では割れが発生し易いという問題がある。
冷間鍛造性を向上させる技術として、例えば特許文献3には、鋼線材の組織をフェライトとベイナイトを主体としてフェライト面積分率を規定すると共に、表層と内部の硬さの差を制御することが提案されている。この技術は、フェライトの面積分率を10〜40%とすることによって、鋼材の硬さを低下させて冷間鍛造性を向上させるものである。しかしながら、熱間仕上げ圧延温度が875℃程度と低く、熱間圧延後の鋼材のフェライト粒度が微細化してしまい、冷間鍛造性が必ずしも良好になるとは限らない。
こうしたことから、低C高Si・Mo鋼については、これまで熱間鍛造によって成形されるのが一般的であり(前記特許文献1)、上記のような肌焼用鋼材としての低C高Si・Mo鋼についても冷間鍛造が有効に適用できる技術の確立が望まれているのが実状である。
特開平7−242994号公報 特開2000−119808号公報 特開2007−23310号公報
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、面疲労強度を優れたものとして耐ピッチング性や耐摩耗性を良好にし、しかも球状化焼鈍後の冷間鍛造性にも優れた肌焼用鋼材、およびこうした肌焼用鋼材から得られる歯車を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の肌焼用鋼材とは、C:0.15〜0.25%(質量%の意味、成分組成について、以下同じ)、Si:0.40〜0.6%、Mn:0.20〜0.49%、P:0.015%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、Cr:1.25〜1.6%、Mo:0.40〜0.80%、Al:0.01〜0.050%、およびN:0.008〜0.025%、を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、フェライトの面積分率:37〜65%、ベイナイトの面積分率:30〜60%、パーライトの面積分率:3〜10%であると共に、フェライト結晶粒度番号が7〜9であることを特徴とする。
本発明の肌焼用鋼材の化学成分組成において、更に、(a)Cu:0.1%以下(0%を含まない)および/またはNi:0.1%以下(0%を含まない)、(b)Nb:0.02%未満(0%を含まない)等を含有するものであっても良い。本発明は、上記のような肌焼用鋼材から得られる歯車も包含する。
本発明によれば、鋼材の化学成分組成を適切に調整すると共に、金属組織中のフェライト、ベイナイトおよびパーライトの面積分率を適切な範囲に規定し、且つフェライト結晶粒度番号を7〜9とすることによって、従来技術よりも面疲労強度が更に優れたものとなり、しかも冷間鍛造性にも優れた肌焼用鋼材が実現できる。
球状化焼鈍後の冷間鍛造性を向上させるためには、冷間鍛造時における鋼材の変形能を向上させること、および変形抵抗を低減させる必要がある。本発明者らは、肌焼用鋼材としての低C高Si・Mo鋼に関して、球状化焼鈍後の冷間鍛造時に割れが発生し、変形抵抗が増大する原因について、鋼材組織との関係から検討した。そして、SiやMoを多く含む鋼材では、下記の現象が生じているとの知見が得られた。
(1)ベイナイトの面積分率が高くなると、球状化焼鈍後に炭化物が球状化しやすくなり、鋼材の変形能は向上する。しかし、微細な炭化物量が増大するため、変形抵抗は却って高くなる。
(2)フェライトは、面積分率が高く、結晶粒が粗大なほど、球状化焼鈍後の変形抵抗が低くなる。しかし、フェライトの面積分率が高く結晶粒が粗大なほど、炭化物の分散性が悪化して変形能が低下する。
(3)パーライトの面積分率が高いほど、球状化焼鈍した際にアスペクト比の大きい炭化物量が多くなり、割れの起点となるため、変形能が低下する。しかしながら、低すぎる場合には粗大な炭化物量が少なくなるため、変形抵抗が増大する。
上記知見から球状化焼鈍後の冷間鍛造時に、鋼材の変形能の向上と変形抵抗の低減を高いレベルで両立させるためには、下記の組織を満たせばよいことが判明した。
(A)フェライトの面積分率が37〜65%であること、
(B)ベイナイトの面積分率が30〜60%であること、
(C)パーライトの面積分率が3〜10%であること、
(D)フェライト結晶粒度番号が7〜9であること。
(フェライトの面積分率:37〜65%)
フェライトの面積分率が高いほど、球状化焼鈍後の鋼材の変形抵抗が低くなる。こうした効果を発揮させるためには、フェライトの面積分率は37%以上とする必要がある。しかしながら、フェライトの面積分率が65%を超えると、球状化焼鈍後の炭化物の分散性が悪化するために変形能が低下する。フェライトの面積分率の好ましい下限は40%以上(より好ましくは45%以上)、好ましい上限は62%以下(より好ましくは55%以下)である。
(ベイナイトの面積分率:30〜60%)
ベイナイトの面積分率が高いほど、球状化焼鈍後に炭化物が球状化しやすくなり、鋼材の変形能は向上する。こうした効果を発揮させるためには、ベイナイトの面積分率は30%以上とする必要がある。しかしながら、ベイナイトの面積分率が60%を超えると、微細な炭化物量が増大するため、変形抵抗が高くなる。ベイナイトの面積分率の好ましい下限は32%以上(より好ましくは34%以上)、好ましい上限は50%以下(より好ましくは40%以下)である。
(パーライトの面積分率:3〜10%)
パーライトの面積分率が高いほど、球状化焼鈍した際にアスペクト比の大きい炭化物量が多くなり、割れの起点となるため、鋼材の変形能が低下する。そのため、パーライトの面積分率は10%以下とする必要がある。しかしながら、パーライトの面積分率が少なくなり過ぎると、粗大な炭化物量が少なくなるため、変形抵抗が高くなる。そのため、パーライトの面積分率は3%以上とする必要がある。パーライトの面積分率の好ましい下限は4%以上(より好ましくは5%以上)、好ましい上限は8%以下(より好ましくは6%以下)である。
尚、本発明の鋼材においては、基本的にフェライト、ベイナイトおよびパーライトの面積分率の合計が100%となっても良いが、他の組織(例えば、マルテンサイト等)が少量(5面積%以下)含まれていてもよい。このような場合には、フェライト、ベイナイトおよびパーライトの合計面積が100%とはならないものとなる。
(フェライト結晶粒度番号:7〜9)
フェライト結晶粒が粗大なほど、球状化焼鈍後の変形抵抗が低くなる。そのような効果を発揮させるためには、フェライト結晶粒度番号を9以下とする必要がある。しかしながら、フェライト結晶粒度番号が7未満となるとフェライトの結晶粒が粗大になって、炭化物の分散性が悪化し、変形能が低下する。フェライト結晶粒度番号は、好ましくは7.5以上、8.5以下である。
本発明の鋼材は、肌焼用鋼材としての特性を発揮させると共に、組織を上記のように制御するために、その化学成分組成も適切に調整する必要がある。こうした観点から、鋼材の化学成分組成の範囲設定理由は次の通りである。
(C:0.15〜0.25%)
Cは、強度付与元素であり、0.15%未満では必要な強度が得られない。一方、0.25%を超えると冷間鍛造性の低下(変形能の低下)、被削性および靱性の低下となるので、0.25%を上限とする。尚、C含有量の好ましい下限は0.17%以上(より好ましくは0.19%以上)であり、好ましい上限は0.23%以下(より好ましくは0.21%以下)である。
(Si:0.40〜0.6%)
Siは、鋼材の軟化抵抗性を向上させて面疲労強度を高める元素として作用し、本発明では積極的に含有させる。こうした作用を有するSiを含有させることによって、歯車などにおいて駆動中に接触部位の温度が上昇した際に、軟化の抑制が図れて高い硬さを維持し、ピッチングに対する面疲労強度向上、および耐摩耗性向上に寄与する。こうした効果を発揮させる為には、Siは0.40%以上含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になると強度上昇が著しくなって、冷間鍛造性および被削性が低下することになる。また粒界酸化層が増大し、表面の硬さ低下の一因となり、面疲労強度を低下させる。こうした観点から、Si含有量の上限を0.6%以下とする。尚、Si含有量の好ましい下限は0.43%以上(より好ましくは0.45%以上)であり、好ましい上限は0.55%(より好ましくは0.53%以下)である。
(Mn:0.20〜0.49%)
Mnは、脱酸・脱硫剤および焼入れ性向上元素として作用し、またベイナイトの生成にも有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnは0.20%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると、球状化焼鈍後における変形抵抗が高くなって冷間鍛造性や靱性の低下を招くと共に、被削性も劣化する。また粒界酸化層が増大して、表面の硬さ低下の一因となり、面疲労強度を低下させることにもなる。こうした観点から、Mn含有量は0.49%以下とする。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.3%以上(より好ましくは0.4%以上)であり、好ましい上限は0.47%以下(より好ましくは0.45%以下)である。
(P:0.015%以下(0%を含まない))
Pは、不可避的に不純物として含有する元素である。Pは粒界に偏析し、熱間加工性、面疲労強度を低下させるため、極力低減することが望ましい。しかしながら、極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、Pの含有量は、0.015%以下とした。好ましくは0.010%以下(より好ましくは0.008%以下)に低減するのが良い。
(S:0.02%以下(0%を含まない))
Sは、不可避的に不純物として含有する元素である。SはMnSとして析出し、面疲労強度および衝撃特性を低下させるため極力低減することが望ましい。しかしながら、極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、S含有量は、0.02%以下とした。好ましくは0.015%以下(より好ましくは0.010%以下)に低減するのが良い。
(Cr:1.25〜1.6%)
CrはMnと同様に、焼入れ性向上元素として作用し、また球状化焼鈍後の炭化物のアスペクト比を低減させ、冷間鍛造時に割れが発生するのを防止する効果がある。こうした効果を発揮させるためには、Crは1.25%以上含有させる必要がある。しかしながら、Crの含有量が過剰になると、球状化焼鈍後における変形抵抗が高くなって冷間鍛造性や靱性の低下を招くと共に、被削性も劣化する。また粒界酸化層が増大し、表面の硬さ低下の一因となり、疲労強度を低下させることにもなる。こうした観点から、Cr含有量は1.6%以下とする必要がある。尚、Cr含有量の好ましい下限は1.30%以上(より好ましくは1.35%以上)であり、好ましい上限は1.5%以下(より好ましくは1.4%以下)である。
(Mo:0.40〜0.80%)
MoはMnと同様に、焼入れ性を向上元素として作用し、またベイナイトの生成に有効な元素である。更に浸炭後の不完全焼入層の生成を抑制する効果も有する。こうした効果を発揮させるためには、Moは0.40%以上含有させる必要がある。しかしながら、Moを過剰に含有させると球状化焼鈍後における変形抵抗が高くなって冷間鍛造性が劣化すると共に、被削性を低下させる。こうした観点から、Mo含有量の上限は0.80%以下とする必要がある。尚、Moの好ましい下限は0.45%以上(より好ましくは0.50%以上)であり、好ましい上限は0.75%以下(より好ましくは0.70%以下)である。
(Al:0.01〜0.050%)
Alは脱酸剤であると同時に、微細な窒化物形成により結晶粒を微細化し、靱性を向上させる元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、少なくとも0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、Alの含有量が過剰になると、鋳造および圧延時に窒化物の粗大化によって、靱性に悪影響を及ぼし、加工性を低下することになる。こうした観点から、Alの含有量は0.050%以下とする必要がある。尚、Al含有量の好ましい下限は0.015%以上(より好ましくは0.020%以上)であり、好ましい上限は0.040%以下(より好ましくは0.035%以下)である。
(N:0.008〜0.025%)
Nは、Al等と窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、靱性を向上させる元素である。こうした効果を発揮させるためには、Nは少なくとも0.008%以上含有させる必要がある。しかしながら、N含有量が過剰になると、歪み時効により、冷間鍛造性が低下するので、その含有量は0.025%以下とする。尚、N含有量の好ましい下限は0.011%以上(より好ましくは0.015%以上)であり、好ましい上限は0.022%以下(より好ましくは0.020%以下)である。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物である。この不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素(例えば、B、V、Te、Pb、Ca、Mg、Bi、Li、Zr等)の混入が許容され得る。また、本発明の鋼材には、必要によって更に(a)Cu:0.1%以下(0%を含まない)および/またはNi:0.1%以下(0%を含まない)、(b)Nb:0.02%未満(0%を含まない)等を含有させることができ、含有される元素に応じて鋼材の特性が更に改善される。これらを含有するときの範囲設定理由は下記の通りである。
(Cu:0.1%以下(0%を含まない)および/またはNi:0.1%以下(0%を含まない))
Cuは、鋼材の焼入れ性を高める効果があるが、添加しなくても目的とする性能が得られる場合もあるので、必要に応じて少量添加して使用できる。Cuを含有させる場合には、0.03%以上(より好ましくは0.05%以上)含有させることが好ましい。但し、Cuを多量に含有させると、熱間圧延性、冷間鍛造性を劣化させるので、0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.07%以下である。
NiはCuと同様に、鋼材の焼入れ性を高める効果があるが、添加しなくても目的とする面疲労強度と冷間加工性が得られる場合もあるので、必要に応じて少量添加して使用できる。Niを含有させる場合には、0.03%以上(より好ましくは0.05%以上)含有させることが好ましい。但し、Niを多量に含有させると、冷間鍛造性を劣化させるので、0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.07%以下である。尚、CuおよびNiは、単独または併用して含有させることができる。
(Nb:0.02%未満(0%を含まない))
Nbは、浸炭後の結晶粒を微細化させ、鋼材の靱性を向上させると共に面疲労強度を向上させる効果がある。Nbを含有させる場合には、0.003%以上(より好ましくは0.005%以上)含有させることが好ましい。しかしながら、Nbを多量に含有させると、鋳造、熱間圧延時に炭窒化合物を形成し、加工性を劣化させると共に、球状化焼鈍後の変形抵抗を増大させ、冷間加工性も低下させる。こうした観点から、Nbの好ましい含有量は0.02%未満(より好ましくは0.017%以下)を上限とした。
本発明で規定する組織要件を満足させつつ本発明の肌焼用鋼材を製造するに当たっては、上記のように化学成分組成を調整した鋼材を溶製し、分塊圧延を実施した後、熱間圧延時の圧延仕上げ温度を1010〜1200℃とし、熱間圧延した後に0.40〜4℃/秒の平均冷却速度で750〜400℃の温度範囲を冷却することが好ましい。
圧延仕上げ温度を1010〜1200℃とすることで、フェライト結晶粒度番号を7〜9に制御することができる。熱間圧延時の圧延仕上げ温度が1200℃を超えると、フェライト結晶粒度番号が7未満となり、1010℃未満ではフェライト結晶粒度番号が9を超えることになる。圧延仕上げ温度のより好ましい下限は1030℃以上(更に好ましくは1050℃以上)であり、より好ましい上限は1170℃以下(更に好ましくは1150℃以下)である。また、熱間圧延後に0.40〜4℃/秒の平均冷却速度で750〜400℃の温度範囲を冷却することによって、フェライトの面積分率、ベイナイトの面積分率、パーライトの面積分率を規定する範囲内に制御することができる。この平均冷却速度は、より好ましい下限は0.70℃/秒以上(更に好ましくは1.5℃/秒以上)であり、より好ましい上限は3.5℃/秒以下(更に好ましくは3℃/秒以下)である。
尚、熱間圧延後の球状化焼鈍は、750〜780℃の範囲を、1〜8時間程度保持し、650℃までの平均冷却速度を3℃/時以上、50℃/時で実施すればよい。
本発明の肌焼用鋼材は、自動車部品や建築機械、その他の各種機械に使用される歯車やシャフト類等の素材として有用なものであるが、特に自動車用歯車に適用した場合には、良好な特性を発揮する歯車が得られる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することは勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す各種化学成分組成の各種鋼材(鋼種A〜X)を溶製し、分塊圧延を実施した後、圧延仕上げ温度を930〜1250℃として熱間圧延を終了し、0.1〜8℃/秒の平均冷却速度で750〜400℃の温度範囲を冷却して熱間圧延材を作製した(下記表2)。尚、鋼種Aは従来のSCM420H相当鋼である。
Figure 0006073167
得られた熱間圧延材(下記表2、3の試験No.1〜44)を切断して横断面組織を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、面積率からベイナイト、パーライトおよびフェライトが占める割合(分率)を求め、5視野の平均値を求めた。また、切断した圧延材を、下記の条件で球状化焼鈍を実施し、直径:20mm×厚さ:30mmの冷間鍛造用試験片を作製した。
(球状化焼鈍条件)
各圧延材について、760℃まで2時間で昇温した後、その温度で5時間保持し、その後650℃までを5℃/時の平均冷却速度で徐冷する条件で球状化処理した。
上記冷間鍛造用試験片を用いて、下記の条件で冷間鍛造性(変形抵抗、変形能)を評価した。
(冷間鍛造性)
球状化焼鈍後の鋼材の中心部から、直径:20mm、厚さ:30mmの円盤(試験片)を切り出し、プレス試験機を用いて、加工率(圧縮率):80%で冷間鍛造した後、試験片の側面を光学顕微鏡で観察し(倍率:20倍)、割れ発生の有無を確認し、変形能を評価した。また加工率50%で冷間鍛造した後の変形抵抗(MPa)を測定し、変形抵抗の評価を行った。尚、上記加工率は[{1−(L/L0)}×100(%)](但し、L:加工前の試験片厚さ(mm)、L0:加工後試験片厚さ(mm))で示されるものである。このとき、SCM420H相当鋼(鋼種A)の変形抵抗値である677MPaを下回る場合を合格とした。
(面疲労強度)
下記表2、3に示した試験No.1、2、14〜27、30、33、36、37〜40、43で得られた各圧延材から、ローラピッチング試験片を下記の手順で作製し、得られた試験片について、面圧:2.7、3.0、3.3(GPa)、回転数:1500rpm、すべり率:−40%、オートマチックオイル(油温:80℃)使用の条件で、ローラピッチング試験を行ない、100万回強度により、ピッチング強度を評価した。このとき用いた相手ローラーは、SUJ2からなる調質品(表面硬さ:HV700、クラウニングR:150mm)を用いた。そして、100万回強度が3.1GPa以上(鋼種Aを用いたときの1.1倍以上)を合格とした。
(ローラピッチング試験片の作製)
上記鋼材(圧延材)の表面を研磨し、カーボンポテンシャルが0.80%の浸炭ガス雰囲気中で浸炭処理(温度:930℃×5時間)した後油冷し、更に170℃で2時間の焼戻し処理を行った。こうして得られたローラピッチング試験片の試験部の最終形状は直径:26mmである。
各鋼材の圧延組織および冷間鍛造性の評価結果を、圧延条件(圧延仕上げ温度、750〜400℃の温度範囲での平均冷却速度)と共に、下記表2、3に示す。また、面疲労強度の評価結果を、下記表4に示す。
Figure 0006073167
Figure 0006073167
Figure 0006073167
これらの結果から、次のように考察することができる。即ち、試験No.2〜5、28〜44は、本発明で規定する化学成分組成(鋼材の化学成分組成)および圧延材組織の要件を満たしており、いずれも優れた冷間鍛造性を示していることが分かる。またこれらの鋼種を用いた圧延材では、面疲労強度も良好になっていることが分かる(表2、3)。
これに対して、試験No.6〜27は、本発明で規定する要件のいずれかを満足しない例であり、冷間鍛造性および面疲労強度の少なくともいずれかの特性が劣化している。
このうち試験No.6は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延後の平均冷却速度が速くなっており、圧延材におけるベイナイトの面積分率が増大して(フェライトの面積分率が低くなる)、変形抵抗が高くなっている。試験No.7は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延後の冷却速度が遅くなっており、圧延材におけるベイナイトの面積分率が低下して、冷間鍛造時に割れが発生している。
試験No.8は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延後の平均冷却速度が遅くなっており、圧延材におけるフェライトの面積分率が増大して、冷間鍛造時に割れが発生している。試験No.9は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延後の平均冷却速度が速くなっており、圧延材におけるフェライトの面積分率が低下して、変形抵抗が高くなっている。
試験No.10は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延後の平均冷却速度が遅くなっており、圧延材におけるパーライトの面積分率が増大して、冷間鍛造時に割れが発生している。試験No.11は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延後の平均冷却速度が速くなっており、圧延材におけるパーライトの面積分率が確保できず、変形抵抗が高くなっている。
試験No.12は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延時の圧延仕上げ温度が高くなっており、フェライト結晶粒度番号が小さくなって(結晶粒が粗大化)、冷間鍛造時に割れが発生している。試験No.13は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種B)、熱間圧延時の圧延仕上げ温度が低くなっており、フェライト結晶粒度番号が大きくなって(結晶粒が微細化)、変形抵抗が高くなっている。
試験No.14は、C含有量が多いために(鋼種C)、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなると共に、割れが発生している。試験No.15は、Si含有量が多いために(鋼種D)、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなると共に、割れが発生している。試験No.16は、Si含有量が少ないために(鋼種E)、鋼材の軟化抵抗が低下し、面疲労強度が低下している(表4)。
試験No.17は、Crの含有量が多いために(鋼種F)、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなっている。試験No.18は、Crの含有量が少ないために(鋼種G)、球状化焼鈍後の炭化物のアスペクト比が大きくなり、冷間鍛造時に割れが発生している。
試験No.19は、Mnの含有量が多いために(鋼種H)、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなっている。試験No.20は、Mnの含有量が少ないために(鋼種I)、ベイナイトの面積率が小さくなり、冷間鍛造時に割れが発生している。
試験No.21は、Moの含有量が多いために(鋼種J)、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなっている。試験No.22、23は、Moの含有量が少ないために(鋼種K、L)、パーライトの面積率が大きくなり、冷間鍛造時に割れが発生すると共に、浸炭焼入れ時に不完全焼入れ層が増大して、面疲労強度が低下している(表4)。
試験No.24は、Alの含有量が多いために(鋼種M)、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなると共に、割れが発生している。また面疲労強度も低下している(表4)。試験No.25は、Nの含有量が多いために(鋼種N)、歪み時効増大によって、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなっている。
試験No.26は、Nbの含有量が多いために(鋼種O)、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなっている。試験No.27は、鋼材の化学成分組成は適切であるが(鋼種P)、熱間圧延時の圧延仕上げ温度が低くなっており、フェライト結晶粒度番号が大きくなると共に、ベイナイトの面積分率が少なくなり、冷間鍛造時の変形抵抗が高くなると共に、割れが発生している。

Claims (3)

  1. C :0.15〜0.25%(質量%の意味、成分組成について、以下同じ)、
    Si:0.40〜0.6%、
    Mn:0.20〜0.49%、
    P :0.015%以下(0%を含まない)、
    S :0.02%以下(0%を含まない)、
    Cr:1.25〜1.6%、
    Mo:0.40〜0.80%、
    Al:0.01〜0.050%、および
    N:0.008〜0.025%、
    を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、
    フェライトの面積分率:37〜65%、ベイナイトの面積分率:30〜60%、パーライトの面積分率:3〜10%であり、フェライト、ベイナイト、パーライト以外の組織は5面積%以下であると共に、フェライト結晶粒度番号が7〜9であることを特徴とする球状化焼鈍後の面疲労強度と冷間鍛造性に優れた肌焼用鋼材。
  2. 更に、Cu:0.1%以下(0%を含まない)および/またはNi:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の肌焼用鋼材。
  3. 更に、Nb:0.02%未満(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の肌焼用鋼材。
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