JP2003166017A - 大入熱溶接部靱性に優れた厚肉高張力鋼材の製造方法 - Google Patents
大入熱溶接部靱性に優れた厚肉高張力鋼材の製造方法Info
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Abstract
た溶接部靱性を有する、大入熱溶接部靱性に優れた厚肉
高張力鋼材の製造方法を提案する。 【解決手段】C:0.05〜0.15%、Si:0.05〜0.50%、M
n:1.0 〜2.0 %、P:0.015 %以下、S:0.0005〜0.0
050%、Al:0.005 〜0.06%、Ti:0.01〜0.03%、Ni:
1.5 %以下、N:0.003 〜0.007 %、Ca:0.0005〜0.00
30%、O:0.0030%以下を含み、{Ca−(0.18 +130 ×
Ca) ×O}/(1.25/S)が0超え 1未満、Ti /Nが
2.0 超え5.0 未満を満足する組成を有する鋼素材を、10
50〜1200℃に加熱後、 Ar3変態点〜( Ar3変態点+100
℃)の温度域における累積圧下率を35%以上とする熱間
圧延を施した後、2℃/s以上の冷却速度で冷却する。
Description
等の各分野で溶接構造物用として好適な高張力鋼材に係
わり、とくに、大入熱溶接部靭性に優れた、板厚50mm以
上の厚肉高張力鋼材に関する。なお、本発明でいう「大
入熱溶接」とは、溶接入熱量が300kJ/cmを超える溶接を
意味するものとする。
おける鋼構造物は、鋼材を溶接により接合し、所望の形
状に組み立てられることが多い。こうした溶接鋼構造物
に使用される鋼材には、安全性確保の観点から、母材靱
性はもちろん、溶接部靱性にも優れることが要求されて
いる。
物の施工効率の向上と施工コストの低減の観点から、溶
接効率の向上が求められ、溶接入熱の増大が指向されて
きた。その際、最も問題となるのは、溶接部のボンド部
靱性である。ボンド部は、溶接時に溶融点直下の高温に
晒され、結晶粒がもっとも粗大化しやすく、しかも、溶
接入熱が増大するにしたがい冷却速度が遅くなり、脆弱
な上部ベイナイト組織が形成されやすくなる。さらにボ
ンド部では、ウィドマンステッテン組織や島状マルテン
サイトといった脆化組織が生成しやすく、靱性が低下し
やすい。
し、たとえば、特開平2-250917 号公報、特開平2-254
118 号公報、特公平3-53367号公報には、TiN を鋼中に
微細分散させ、MnS 又は REMオキシサルファイドと複合
してオーステナイト粒の粗大化を抑制し、溶接ボンド部
の靭性を改善する技術が提案されている。また、特開昭
60-184663 号公報には、入熱量100kJ/cmの溶接ボンド部
の靱性改善をめざし、希土類元素(REM )とTiとを複合
添加し、鋼中に微細粒子を分散させてオーステナイトの
粒成長を抑制し、溶接ボンド部の靱性向上を図る技術が
提案されている。
-79745号公報等には、Tiの酸化物を微細分散させ、フェ
ライト変態の核生成サイトとして利用し、溶接ボンド部
の靭性を改善する技術が提案されている。また、特開昭
61-253344 号公報には、溶接時の冷却過程でTiN などの
上に析出するBNをフェライト変態の核として利用し、溶
接熱影響部の靭性を改善する技術が提案されている。
Nを徹底的に低減するため、Tiと十分なAl量(0.05〜0.
10%)を含有させ、さらに微細酸化物としてCa酸化物を
活用して、超大入熱溶接における溶接熱影響部靭性を向
上させる高張力鋼板が提案されている。また、特開昭60
−204863号公報、特公平4− 14180号公報では、CaやRE
M を添加し硫化物の形態制御を介して、溶接部を高靱性
化する技術が提案されている。
たTi酸化物を用いる従来技術では、酸化物を均一かつ微
細に分散させることがかなりの困難を伴い、溶接部を安
定して高靭性とすることが困難となる。また、上記した
TiN を主体に利用する従来技術で製造された鋼材に、30
0kJ/cmを超える大入熱溶接法を適用した場合、溶接ボン
ド部近傍が高温度に長時間晒されるため、TiN が溶解し
結晶粒微細化の作用がなくなり、大入熱溶接部を高靭性
とすることができなくなるという問題があった。また、
上記した従来技術では、固溶Tiおよび固溶Nの増加に起
因して、脆化組織が生成し、著しく溶接部靱性が低下す
る場合があるという問題があった。
た技術では、Al、Caを多く添加するため酸化物がクラス
ター化し、これが破壊の起点になることで靱性を低下さ
せる場合があるという問題があった。また、CaやREM を
添加する従来技術では、溶接入熱300kJ/cmを超える大入
熱溶接部で、高靱性を確保することは困難であるという
問題があった。
い、使用される鋼材はより厚肉でかつ高強度を有するも
のが要望されるようになっている。鋼材の厚肉化、高強
度化には、通常、合金元素の多量添加が安易な方法であ
るが、合金元素の多量添加は溶接部の靱性低下を招く。
したがって、最近では、厚肉材のように製造時の冷却速
度が比較的遅い場合においても、合金元素の多量添加を
行うことなく、母材を高強度化させた厚肉高張力鋼材が
要望されている。
し、母材降伏強さが355N/mm2以上と高く、かつ母材靭性
が、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギー VE-40
で200 J以上と優れ、さらに溶接入熱300kJ/cmを超える
大入熱溶接においても優れた溶接部靱性を有する、大入
熱溶接部靱性に優れた板厚:50mm以上の厚肉高張力鋼材
を安定かつ効率的に製造できる、厚肉高張力鋼材の製造
方法を提案することを目的とする。なお、本発明でいう
「大入熱溶接部靱性に優れる」とは、溶接入熱300kJ/cm
を超える大入熱溶接での溶接熱影響部が、−40℃におけ
るシャルピー吸収エネルギー VE-40 で41J以上を有す
る場合をいうものとする。
課題を達成するために、大入熱溶接部の靱性におよぼす
各種要因について、研究、検討を重ねた。その結果、ま
ず、大入熱溶接部とくに溶接ボンド部の靱性は、脆化組
織の生成の有無に大きく影響される。そして、脆化組織
の生成は、高温に加熱された領域におけるオーステナイ
トの粗大化抑制と、冷却時にフェライト変態を促進する
変態核の微細分散により、防止できることを見出した。
従来は、これらが不十分であったために、溶接部を安定
して高靭性とすることができなかった。
散のために、硫化物の形態制御の役割を担うCaに注目
し、凝固時にCaS を晶出させることを想到した。CaS は
酸化物に比べて低温で晶出するため、鋼中で微細かつ均
一な分散が可能となる。CaS の晶出のためには、まずCa
添加時の溶鋼中の溶在酸素量を0.0030mass%以下に調整
する。そして、Ca添加時の溶鋼中の溶存酸素量を0.0030
mass%以下に調整したうえで、Ca,Sの添加量を次
(1)式 0<{Ca−(0.18 +130 ×Ca) ×O}/(1.25/S)<1 ………(1) ここで、Ca、O、S:各合金元素の含有量(mass%) を満足するように調整することにより、CaS の晶出後に
固溶S量が確保でき、CaS の表面上にMnS が析出する複
合硫化物を形成できることを見出した。MnS はフェライ
ト核生成能があることが知られており、さらにはその周
囲にMnの希薄帯が形成されフェライト変態がさらに促進
される。また、MnS 上にTiN ,BN,AlN 等のフェライト
生成核が析出することによっても、より一層フェライト
変態が促進することも新たに発見した。
材の高強度化、高靭化のために添加されてきたNbを無添
加とすることにより、TiN の溶解温度が上昇し、溶接時
に高温に加熱される領域でのオーステナイト粗大化が顕
著に抑制されることを見出した。またさらに、Nbを無添
加とすることで、溶接熱影響部粗粒域での上部ベイナイ
トの生成も抑制されることを見出した。
の溶接部靭性に及ぼす前組織の影響を検討した。その結
果、母材のフェライト平均粒径が5μm以下となるよう
に、熱間圧延時に、Ar3〜Ar3+100 ℃の温度域におい
て35%以上の累積圧下率を付与し、母材のフェライト平
均粒径が5μm以下にすることにより、溶接における昇
温時に、オーステナイト生成サイトが増加し、オーステ
ナイト粒が微細化し、溶接部の靱性向上に効果があるこ
とを見出した。
検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明
は、下記の構成を要旨とするものである。 (1)mass%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.05〜0.50
%、Mn:1.0 〜2.0 %、P:0.015 %以下、S:0.0005
〜0.0050%、Al:0.005 〜0.06%、Ti:0.01〜0.03%、
Ni:1.5 %以下、N:0.003 〜0.007 %、Ca:0.0005〜
0.0030%、O:0.0030%以下を含み、かつ次(1)式お
よび(2)式 0<{Ca−(0.18 +130 ×Ca) ×O}/(1.25/S)<1 ………(1) 2.5 < Ti /N <5.0 ………(2) (ここで、Ca、O、S、Ti、N:各合金元素の含有量
(mass%)) を満足し、好ましくは残部Feおよび不可避的不純物から
なる組成を有する鋼素材を、1050〜1200℃に加熱後、 A
r3変態点〜( Ar3変態点+100 ℃)の温度域における累
積圧下率を35%以上とする熱間圧延を施した後、板厚1/
4 位置において2℃/s以上の冷却速度で 450℃以下の温
度域まで冷却することを特徴とする大入熱溶接部靱性に
優れた厚肉高張力鋼材の製造方法。 (2)(1)において、前記鋼素材が、溶鋼中の溶存酸
素量を0.0030mass%以下に調整したのちCaを添加し、前
記(1)式を満足するように、Ca,S含有量を調整して
なる鋼素材であることを特徴とする大入熱溶接部靱性に
優れた厚肉高張力鋼材の製造方法。 (3)(1)または(2)において、前記組成に加えて
さらに、mass%で、V:0.2 %以下、Cu:1.0 %以下、
Cr:0.7 %以下、Mo:0.7 %以下、B:0.002 %以下の
うちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成を
有することを特徴とする大入熱溶接部靱性に優れた厚肉
高張力鋼材の製造方法。 (4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記冷
却後、さらに、450 〜650 ℃の温度範囲での焼戻しを施
すことを特徴とする大入熱溶接部靱性に優れた厚肉高張
力鋼材の製造方法。
組成限定理由について説明する。以下、組成におけるma
ss%は単に%で記す。 C:0.05〜0.15% Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、構造用高張力
鋼として必要な強度(母材降伏強さ:355N/mm2以上)を
得るためには、少なくとも0.05%は必要である。しか
し、過剰に含有すると、溶接部の靱性を劣化させる。こ
のため、本発明では、Cは0.05〜0.15%の範囲に限定し
た。なお、好ましくは、0.06〜0.12%である。
必要であるが、0.50%を超えて含有すると、母材靱性が
劣化する。このため、Siは0.05〜0.50%の範囲に限定し
た。なお、好ましくは、0.10〜0.35%である。 Mn:1.0 〜2.0 % Mnは、鋼の強度を増加させる元素であり、本発明では所
定の母材強度を確保するため、1.0 %以上の含有を必要
とする。一方、2.0 %を超える過剰の含有は、溶接部の
靱性を著しく劣化させる。このため、本発明では、Mnは
1.0 〜2.0 %の範囲に限定した。
あり、粒界に偏析して鋼の靭性を劣化させるため、でき
るだけ低減することが好ましい。とくに、0.015 %を超
えて含有すると、溶接部靱性の劣化が著しくなる。この
ため、本発明では、Pは0.015 %以下に限定した。
して凝固段階で微細に晶出し、さらに溶接時にCaS 粒子
上にMnS として析出し、フェライト変態核として作用し
溶接部靭性を向上させる効果を有する。このような効果
はS:0.0005%以上の含有で認められる。一方、0.0050
%を超えて含有すると、母材および溶接部の靱性を劣化
させる。このため、Sは0.0005〜0.0050%に限定した。
含有を必要とするが、0.06%を超えて含有すると、母材
の靱性が低下し、同時に溶接時に溶接金属部に混入し
て、溶接金属部の靱性を劣化させる。このため、Alは0.
005 〜0.06%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.
05%未満である。
影響部でのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるい
はフェライト変態核として溶接熱影響部の高靱性化に寄
与する。このような効果は、0.01%以上の含有で認めら
れるが、0.03%を超えて含有すると、TiN 粒子が粗大化
し、上記した効果が期待できなくなる。このため、Tiは
0.01〜0.03%の範囲に限定した。
あり、本発明では 0.2%以上の含有が望ましいが、1.5
%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効
果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このた
め、本発明では、Niは1.5 %以下に限定した。なお、好
ましくは 0.2〜 1.2%である。
のオーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるいはフェラ
イト変態核として溶接熱影響部の高靱性化に寄与する。
このような効果を有するTiN の必要量を確保するため
に、0.003 %以上のNを含有する必要がある。一方、0.
007 %を超えて含有すると、溶接熱によってTiN が溶解
する温度まで加熱される領域では、固溶N量が増加し、
靱性が著しく低下する。このため、Nは0.003 〜0.007
%の範囲に限定した。
元素である。このような効果を発揮させるには少なくと
も0.0005%含有することが必要であるが、0.0030%を超
えて含有しても効果が飽和する。このため、本発明で
は、Caは0.0005〜0.0030%の範囲に限定した。なお、本
発明では、後述するように、Ca添加直前の溶存酸素量を
0.0030%以下に調整したのち、Caを添加して、Ca酸化物
の生成を抑制してCaS を晶出させる。CaS は、溶鋼中で
酸化物に比べて低温で晶出するため、鋼中で微細かつ均
一な分散が可能となる。このようなCaS 微細粒子はMnS
と複合して溶接時にフェライト変態核として作用し、溶
接部靭性の向上に寄与する。
として存在し、清浄度を低下させる。このため、本発明
ではできるだけ低減することが好ましい。O含有量が0.
0030%を超えるとCaO系介在物が粗大化して、靭性に悪
影響を及ぼす。また、本発明では、CaをCaS として晶出
させるために、Caとの結合力が強いOはCa添加前に、脱
ガスを強化するか、脱酸剤を投入するかして、溶鋼中の
Oを0.0030%以下に低減しておくことが好ましい。
在酸素量を0.0030mass%以下に調整したうえで、Ca,S
を次(1)式を満足するように添加、調整する。 0<{Ca−(0.18 +130 ×Ca) ×O}/(1.25/S)<1 ………(1) ここで、Ca、O、S:各合金元素の含有量(mass%) {Ca−(0.18 +130 ×Ca) ×O}が、0以下では、CaS
が晶出しないため、SはMnS 単独の形態で析出する。こ
のMnS は鋼板製造時の圧延で伸長されて均一かつ微細に
分散しないため、母材の靱性低下を引き起こすととも
に、溶接熱影響部靭性の向上が達成されない。{Ca−
(0.18 +130 ×Ca) ×O}が、1以上では、Sが完全に
Caによって固定され、フェライト生成核として働くMnS
がCaS 上に析出しない。このため、溶接熱影響部靭性の
向上が達成されない。CaおよびS含有量が、前記(1)
式を満足してはじめて、CaS 上にMnS が析出した複合硫
化物の形態となる。この複合硫化物の存在により、フェ
ライト変態の核として機能し、溶接熱影響部の組織が微
細化され、溶接熱影響部靭性が向上する。
係で、次(2)式 2.5 < Ti /N <5.0 ………(2) (ここで、Ti、N:各合金元素の含有量(mass%)) を満足するように添加し、Ti含有量を調整する。 Ti /
Nが、2.5 以下では、母材靭性および溶接部靭性の向上
に必要なTiN 量を確保できない。一方、 Ti /Nが、5.
0 以上では、TiC 粒子の生成および TiNの粗大化のた
め、母材靭性および溶接部靭性が低下する。従来のTiと
Nbを複合して含有する鋼では、TiN にNbが固溶するた
め、Ti/Nが2付近で靱性が最も優れていたが、本発明
では、Nb無添加であるため、Ti/Nが化学量論比(3.4
)に近い領域で靱性が最も良好になる。
らに、V:0.2 %以下、Cu:1.0 %以下、Cr:0.7 %以
下、Mo:0.7 %以下、B:0.002 %以下のうちから選ば
れた1種または2種以上を含有できる。 V:0.2 %以下、Cu:1.0 %以下、Cr:0.7 %以下、M
o:0.7 %以下、B:0.002 %以下から選ばれる少なく
とも1種または2種以上 V、Cu、Cr、Mo、Bは、いずれも鋼の強度を増加させる
元素であり、必要に応じ選択して含有できる。
とともに、VNとして析出し、フェライト変態の核として
作用する。このような効果は、0.01%以上の含有で顕著
となるが、0.2 %を超える含有は、かえって靱性の低下
を招く。このため、Vは0.2%以下に限定することが好
ましい。Cuは、Niと同様、強度を増加するとともに、靭
性を向上させる作用を有する。このような効果は 0.2%
以上の含有で顕著となるが、1.0 %を超える含有は熱間
脆性を生じ、鋼板の表面性状が劣化する。このため、Cu
は1.0 %以下に限定することが好ましい。
強度化に有効に作用する元素である。このような効果
は、Cr:0.1 %以上、Mo:0.1 %以上、B:0.0005%以
上の含有で顕著となる。一方、過剰に含有すると、いず
れも靱性に悪影響を与えるため、Cr:0.7 %以下、Mo:
0.7 %以下、B:0.002 %以下、にそれぞれ限定するこ
とが好ましい。
び不可避的不純物である。つぎに、上記した組成を有す
る鋼素材に、下記に述べる製造工程を施し厚肉高張力鋼
材とする。上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空
溶解炉等通常公知の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法
などの通常公知の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とする。
加熱する。加熱温度が1050℃未満では、次工程の熱間圧
延で、鋼素材(スラブ)中の鋳造欠陥を圧着することが
できない。一方、1200℃を超える加熱温度では、TiN が
粗大化し、溶接部の靱性向上が期待できなくなる。この
ため、鋼素材の加熱温度は1050〜1200℃の範囲に限定し
た。
は、ついで、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)の温
度域における累積圧下率を35%以上とする熱間圧延を施
される。Ar3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)の温度域
における累積圧下率が35%未満では、図1に示すよう
に、変態後、平均粒径5μm以下のフェライト組織が得
られない。本発明では、Nb無添加のため、オーステナイ
トの未再結晶領域がほとんど存在しない。変態後のフェ
ライト粒径に大きく影響する再結晶オーステナイト粒径
が加工温度に依存するため、より低温で加工するほどオ
ーステナイト粒径が微細化する。Ar3変態点〜(Ar3変
態点+100 ℃)の温度域における累積圧下率が35%以上
とすることにより、再結晶オーステナイト粒が微細化
し、変態後、平均粒径5μm以下のフェライト組織が得
られる。平均粒径5μm以下のフェライト組織とするこ
と、すなわち、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)の
温度域における累積圧下率を35%以上とする熱間圧延を
施すこと、により図1に示すように、1400℃加熱、800
〜500 ℃の冷却時間が270 sの大入熱溶接熱影響部 HAZ
(ボンド部近傍)のシャルピー吸収エネルギー、vE-40
が70J以上となり、溶接部靭性が顕著に向上する。な
お、Ar3は次式 Ar3(℃)=910-273C-74Mn-57Ni-16Cr-9Mo-5Cu (ただし、C,Mn,Ni,Cr,Mo,Cu:各合金元素の含有
量(mass%))により求めるものとする。
/s以上の冷却速度で450 ℃以下の温度域まで冷却す
る。冷却速度が2℃/s未満では、フェライト粒が粗大化
し、強度・靱性が低下する。また、冷却した後、鋼材
に、450 〜650 ℃の範囲で焼戻しを施すことが好まし
い。焼戻しを施すことは、鋼材(母材)の残留応力低減
に有効であるため、鋼材の残留応力を除去する必要が生
じた場合に行うことが好ましい。
物が生成し、析出強化による強度上昇により、靱性の劣
化が認められる。一方、焼戻し温度が450 ℃未満では残
留応力の除去効果がない。
らに詳細に説明する。表1に示す組成に調整した鋼スラ
ブ(鋼素材)に、表2に示す条件で熱間圧延を施し、厚
鋼板(厚肉鋼材:板厚50〜100mm )とした。なお、本発
明例では、Ca添加に際して、Ca添加直前の溶鋼中の溶存
酸素量を、脱酸剤の投入を行うことにより調整した。
験及びシャルピー衝撃試験を実施した。引張試験は、各
厚鋼板の板厚1/4 位置から、JIS 4 号引張試験片を採取
し、降伏点YP、引張強さTSを求めた。シャルピー衝撃試
験は、各厚鋼板の板厚1/4 位置から、JIS 4 号衝撃試験
片を採取し、−40℃での吸収エネルギー( VE-40 )を
求めた。
製用試験片を採取した。試験片に、V開先を加工し、エ
レクトロガスアーク溶接(溶接入熱量:350 kJ/cm (板
厚:50mm)、または450 kJ/cm (板厚:65mm))によ
り、溶接継手を作製した。これら溶接継手から切り欠き
位置をボンド部とするJIS 4 号衝撃試験片を採取し、試
験温度:−40℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エ
ネルギー( VE-40 )を求めた。
の母材強度と、 VE-40 :200J以上の母材靭性を有す
る、母材の強度・靱性に優れた厚肉高張力鋼板である。
さらに溶接入熱量:350 〜450 kJ/cm の大入熱溶接(エ
レクトロガスアーク溶接)継手ボンド部の VE-40 が79
J 以上と、優れた大入熱溶接熱影響部靱性を有する厚肉
高張力鋼板となっている。これに対し、本発明の範囲を
外れる比較例は、母材の強度、母材の靱性、大入熱溶接
熱影響部の靱性のうちの、少なくとも一つが低下した厚
肉鋼板となっている。
cmを超える大入熱溶接においても、優れた溶接熱影響部
靱性を有する、降伏強さ355N/mm2以上、板厚50mmを超え
る厚肉高張力鋼材が、非調質で安価に製造でき、産業上
格段の効果を奏する。また、本発明は、構造物の大型化
や施工能率の向上に大きく寄与するという効果もある。
と、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)での累積圧下
率との関係を示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 mass %で、 C:0.05〜0.15%、 Si:0.05〜0.50%、 Mn:1.0 〜2.0 %、 P:0.015 %以下、 S:0.0005〜0.0050%、 Al:0.005 〜0.06%、 Ti:0.01〜0.03%、 Ni:1.5 %以下、 N:0.003 〜0.007 %、 Ca:0.0005〜0.0030%、 O:0.0030%以下を含み、かつ 下記(1)式および下記(2)式を満足する組成を有す
る鋼素材を、1050〜1200℃に加熱後、 Ar3変態点〜( A
r3変態点+100 ℃)の温度域における累積圧下率を35%
以上とする熱間圧延を施した後、板厚1/4 位置において
2℃/s以上の冷却速度で 450℃以下の温度域まで冷却す
ることを特徴とする大入熱溶接部靱性に優れた厚肉高張
力鋼材の製造方法。 記 0<{Ca−(0.18 +130 ×Ca) ×O}/(1.25/S)<1 ………(1) 2.5 < Ti /N <5.0 ………(2) ここで、Ca、O、S、Ti、N:各合金元素の含有量(ma
ss%) - 【請求項2】 前記鋼素材が、溶鋼中の溶存酸素量を0.
0030mass%以下に調整したのち、Caを添加し、前記
(1)式を満足するように、Ca、S含有量を調整してな
る鋼素材であることを特徴とする請求項1に記載の大入
熱溶接部靱性に優れた厚肉高張力鋼材の製造方法。 - 【請求項3】 前記組成に加えてさらに、mass%で、
V:0.2 %以下、Cu:1.0 %以下、Cr:0.7 %以下、M
o:0.7 %以下、B:0.002 %以下のうちから選ばれた
1種または2種以上を含有する組成を有することを特徴
とする請求項1または2に記載の大入熱溶接部靱性に優
れた厚肉高張力鋼材の製造方法。 - 【請求項4】 前記冷却後、さらに、450 〜650 ℃の温
度範囲での焼戻しを施すことを特徴とする請求項1ない
し3のいずれかに記載の大入熱溶接部靱性に優れた厚肉
高張力鋼材の製造方法。
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