JP2009242852A - 大入熱溶接用鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときでも、溶接後の靭性に優れる大入熱溶接用鋼材を提供する。
【解決手段】C:0.03〜0.08mass%、Si:0.01〜0.15mass%、Mn:1.60〜2.6mass%を含有し、炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲にある成分組成を有し、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときのボンド近傍の熱影響部の組織が、旧オーステナイト粒界から析出した粒界フェライトを除いた旧オーステナイト粒内組織の大きさが10μm以下であり、かつ島状マルテンサイトが面積分率で2%以下であることを特徴とする大入熱溶接用鋼材である。ここで、旧オーステナイト粒内組織の大きさとは、EBSDで測定した15°以上の傾角を有する粒界組織における線分法で測定した平均切片長さのことである。
【選択図】図1

Description

本発明は、造船や建築、土木等の分野における各種鋼構造物に用いられる鋼材に関し、特に溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を受ける用途に適した鋼材に関するものである。
造船や建築、土木等の分野で使用される鋼材は、一般に、溶接接合により所望の形状の鋼構造物に仕上げられる。従って、これらの構造物においては、安全性の観点から、使用される鋼材(母材)の靭性に優れていることは勿論のこと、溶接部の靭性にも優れていることが求められている。
一方、これら鋼構造物は、近年、ますます大型化するのに伴い、使用される鋼材の高強度化・厚肉化が進むと共に、溶接施工にはサブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接およびエレクトロスラグ溶接などの高能率な大入熱溶接が適用されるようになってきている。従って、大入熱溶接により施工したときの溶接部靭性に優れた鋼材が必要となってきている。
しかし、溶接入熱量が大きくなると、一般に、溶接熱影響部の組織は、粗大化し、靭性が低下することが知られている。このような大入熱溶接による靭性低下に対しては、これまで、多くの対策が提案されてきた。例えば、TiNを微細分散させて、オーステナイト粒の粗大化を抑制したり、フェライト変態核として利用したりする技術が既に実用化されている。また、特許文献1には、Ti酸化物を分散させることによって、また、特許文献2には、BNを析出させることによって、フェライト核生成能を高めて溶接部の靭性を高める技術が開示されている。さらに、特許文献3および4には、CaやREMを添加して硫化物の形態を制御することにより高靭性を得る技術が開示されている。
しかしながら、TiNを利用する従来技術は、TiNが溶解する温度域に加熱される溶接熱影響部においては、TiNが有する上記作用がなくなり、さらには、地の組織が固溶Tiおよび固溶Nにより脆化して靭性が著しく低下するという問題があった。また、特許文献1や2に記載のTi酸化物やBN析出物を利用する技術は、酸化物等を均一に微細分散させることが困難であるという問題があった。この問題に対しては、酸化物を複合化する等の方法で、分散能を改善する検討が種々行われているが、入熱量が300kJ/cmを超えるような大入熱溶接では、オーステナイト粒の成長を抑制して、溶接熱影響部の靭性を確保することは困難であるという問題があった。また、特許文献3に記載のCaを添加する技術や特許文献4に記載のREMを添加する技術では、300kJ/cm程度までの入熱量であれば高靭性の確保が可能であるが、300kJ/cmを超えるような大入熱溶接では、これらの技術でも溶接熱影響部の靭性を確保することは難しい。
これに対し、発明者らは、400kJ/cmを超えるような大入熱溶接でも、良好な溶接熱影響部靭性が得られる鋼材を特許文献5に開示している。この技術の特徴は、400kJ/cmを超える大入熱溶接を行った熱影響部の靭性を向上させるために、硫化物の形態制御に用いられるCaを適正量含有させるところにある。具体的には、まず、鋼を溶製し、凝固させる段階でCaSを析出させる。CaSは、酸化物に比べて低温で析出するため、鋼中に微細に分散させることができるからである。この際、Ca,Sの含有量および鋼中の溶存酸素量を適正範囲に制御し、CaSの晶出後に固溶S量を適正量確保することによって、微細分散したCaSの表面上にMnSを析出させることが特に重要である。MnSは、それ自身がフェライト核生成能を有しているほか、その周囲にMnの希薄帯を形成して、フェライト変態を促進する作用も有している。また、上記MnS上には、さらにTiN、BN、AlN、VN等のフェライト生成核が析出するため、より一層フェライト変態が促進される。以上の方策によって、大入熱溶接時の高温下でも溶解しないフェライト変態生成核を微細に分散させて、溶接熱影響部の組織を微細なフェライトパーライト組織とし、高靭性化を図ることが可能となった。
特開昭57−51243号公報 特開昭62−170459号公報 特開昭60−204863号公報 特公平04−14180号公報 特許3546308号公報
しかしながら、発明者らの研究によれば、Cや合金元素を比較的多量に添加している成分系の鋼、すなわち、比較的高強度の鋼においては、上記特許文献5に記載の技術を適用しても、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときのボンド近傍の熱影響部には、島状マルテンサイトと呼ばれる硬質の脆化組織が数%生成し、これが靭性の向上を阻んでいることがわかってきた。ここで、上記ボンド近傍の熱影響部とは、熱影響部の中でも溶接時に最も高い温度に曝され、オーステナイト粒が粗大化する領域であり、例えば、図1に示す点線近傍の熱影響部のことをいう。
そこで、本発明の目的は、合金元素を多量に含む高合金系の鋼において、300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときでも、ボンド近傍の熱影響部における島状マルテンサイトの生成を抑制し得る、溶接後の靭性に優れる大入熱溶接用鋼材を提供することにある。
発明者らは、大入熱溶接を施したときの溶接ボンド近傍の熱影響部に形成される島状マルテンサイトの生成を抑制する有効な方策について鋭意検討した。その結果、溶接ボンド近傍の熱影響部の旧オーステナイト粒内組織をアシキュラーフェライト主体とすることが極めて有効であることを知見した。というのは、アシキュラーフェライトは、いわば粒内から核生成したベイナイトであり、粒内にアシキュラーフェライトが生成した場合には、旧オーステナイト粒界からベイナイトが生成するときと比較して、核生成サイトが多くなり、未変態オーステナイトへのC濃化が軽減されるため、島状マルテンサイトが形成しにくくなるからと考えられる。そして、アシキュラーフェライトの面積分率は概ね半分程度以上となると、EBSD(電子線後方散乱回折)で測定した15°以上の傾角を有する粒界組織において、旧オーステナイト粒界から析出した粒界フェライトを除いて、線分法で得られる平均切片長さが10μm以下となるため、この平均切片長さをアシキュラーフェライトの面積分率の指標として用いることができる、即ち、島状マルテンサイトの面積分率を所定の値以下にするためには、上記平均切片長さを制御すればよいことを見出した。
また、粒内アシキュラーフェライトの生成を促進するには、Mn含有量を1.60〜2.60mass%と高めることが有効である。これは、CaSの表面上にMnSが析出する際に形成されるMnの希薄帯が、フェライト変態やベイナイト変態を促進するが、Mn添加量が高いと、母相と希薄帯間のMn含有量の差が大きくなり、フェライト変態あるいはベイナイト変態の駆動力が高くなるためであると考えられる。なお、粒内をアシキュラーフェライト組織とするために、旧オーステナイト粒界に沿って初析フェライトを析出させ、生成速度の大きい旧オーステナイト粒界からのベイナイト生成をできるだけ抑えることも有効である。
本発明は、上記知見を基に完成したものであり、C:0.03〜0.08mass%、Si:0.01〜0.15mass%、Mn:1.60〜2.60mass%を含有し、下記(1)式;
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
ただし、上記元素記号は、各元素の含有量(mass%)を示す。
に示す炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲にある成分組成を有し、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときのボンド近傍の熱影響部の組織が、旧オーステナイト粒界から析出した粒界フェライトを除いた旧オーステナイト粒内組織の大きさが10μm以下であり、かつ島状マルテンサイトが面積分率で2%以下であることを特徴とする大入熱溶接用鋼材である。ここで、旧オーステナイト粒内組織の大きさとは、EBSDで測定した15°以上の傾角を有する粒界組織における線分法で測定した平均切片長さのことである。
本発明の上記大入熱溶接用鋼材は、C:0.03〜0.08mass%、Si:0.01〜0.15mass%、Mn:1.60〜2.60mass%、P:0.03mass%以下、S:0.0005〜0.0040mass%、Al:0.005〜0.1mass%、Nb:0.003〜0.05mass%、Ti:0.003〜0.03mass%、N:0.0025〜0.0070mass%、Ca:0.0005〜0.0030mass%、B:0.0003〜0.0025mass%を含有し、かつ、Ca,OおよびSが下記(2)式;
0≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S≦1 ・・・(2)
ただし、上記元素記号は、各元素の含有量(mass%)を示す。
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする。
また、本発明の大入熱溶接用鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、V:0.2mass%以下、Cr:0.4mass%以下およびMo:0.4mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、300kJ/cmを超える大入熱溶接を行っても、溶接後の靭性に優れる鋼材を得ることができる。したがって、本発明は、サブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接などの大入熱溶接によって施工される大型の鋼構造物の品質向上や安全性向上に寄与するところ大である。
まず、本発明の大入熱溶接用鋼材の成分組成について説明する。
C:0.03〜0.08mass%
Cは、構造用鋼としての必要な強度を得るために必要な元素であり、下限を0.03mass%とする。一方、島状マルテンサイトの生成を抑えるため、上限は0.08mass%とする。
Si:0.01〜0.15mass%
Siは、脱酸剤として添加される元素であり、0.01mass%以上添加する必要がある。一方、0.15mass%を超えると、母材の靭性を劣化させるほか、大入熱溶接における溶接ボンド近傍の熱影響部に島状マルテンサイトを生成して靭性を劣化させる。よって、Siは0.01〜0.15mass%の範囲とする。
Mn:1.60〜2.60mass%
Mnは、母材の強度を確保するとともに、アシキュラーフェライトの生成を促進するため、1.60mass%以上添加する必要がある。一方、2.60mass%を超える添加は、溶接部の靭性を劣化させる。よって、Mnは1.60〜2.60mass%の範囲とする。好ましくは、1.8〜2.2mass%の範囲である。
P:0.03mass%以下
Pは、不可避的に混入する不純物であり、0.03mass%を超える含有は、溶接部の靭性を劣化させる。よって、Pは0.03mass%以下とする。
S:0.0005〜0.0040mass%
Sは、本発明においては、CaSおよびMnSを生成するための重要な元素であり、0.0005mass%以上含有する必要がある。一方、0.0040mass%を超えると母材の靭性が低下する。よって、Sは0.0005〜0.0040mass%の範囲とする。
Al:0.005〜0.1mass%
Alは、鋼の脱酸に必要な成分であり、0.005mass%以上添加する必要がある。一方、0.1mass%を超えて添加すると、母材の靭性が低下すると共に、溶接金属の靭性を低下させる。よって、Alは0.005〜0.1mass%の範囲とする。
Nb:0.003〜0.05mass%
Nbは、母材の強度・靭性および継手の強度を確保するのに有効な元素であり、上記効果をためには、0.003mass%以上添加する必要がある。一方、0.05mass%を超えて添加すると、溶接熱影響部の靭性が低下する。よって、Nbは、0.003〜0.05mass%とする。
Ti:0.003〜0.03mass%
Tiは、凝固時にTiNとなって析出し、溶接熱影響部でのオーステナイトの粗大化を抑制したり、フェライト生成核となってフェライト変態を促進したりして高靭性化に寄与する元素である。上記効果を得るには、0.003mass%以上の添加が必要である。一方、0.03mass%を超えると、TiN粒子が粗大化し、期待する効果が得られなくなる。よって、Tiは0.003〜0.03mass%の範囲とする。
N:0.0025〜0.0070mass%
Nは、TiNを形成するのに必要な元素であり、0.0025mass%未満では十分なTiN量が得られない。一方、0.0070mass%を超えると、溶接熱サイクルによってTiNが溶解する領域で固溶N量が増加し、靭性の低下をもたらす。よって、Nは0.0025〜0.0070mass%の範囲とする。
B:0.0003〜0.0025mass%
Bは、溶接熱影響部でBNを生成し、固溶Nを低減するとともに、フェライト変態核として作用する元素である。このような効果を得るには0.0003mass%以上の添加が必要である。一方、0.0025mass%を超えて添加すると、焼入性が増して、靭性が低下するようになる。よって、Bは0.0003〜0.0025mass%の範囲とする。
Ca:0.0005〜0.0030mass%
Caは、Sを固定することによって、靭性を改善する元素であり、0.0005mass%以上の添加によって上記効果を得ることができる。一方、0.0030mass%を超えて添加しても効果が飽和するだけである。よって、本発明では、Caは0.0005〜0.0030mass%の範囲とする。
0≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S≦1
Ca,SおよびOは、下記;
0.2≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S≦1
の関係式を満たして含有する必要がある。ここで、Ca,S,Oは、各元素の含有量(mass%)である。
(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/Sの値が0未満では、CaSが晶出しないため、SはMnS単独の形態で析出する。このMnSは、鋼板製造の圧延時に伸長されて母材の靭性低下を引き起こすとともに、溶接熱影響部ではMnSが溶融してしまうため、本発明の主眼であるフェライト生成核の微細分散を達成できない。
一方、(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/Sの値が1を超えると、SのほとんどがCaによって固定されるため、フェライト生成核として働くMnSがCaS上に析出しないため、フェライト生成核としての機能を果たすことができない。
したがって、上記式を満たす場合にのみ、CaS上にMnSが析出して複合硫化物の形態となり、フェライト変態が促進される。
なお、Oは、不可避的不純物として鋼中に含有され、鋼の清浄度を低下させる。このため、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。特に、O含有量が0.0030mass%を超えると、CaO系介在物が粗大化して母材靭性を低下させてしまうため、0.0030mass%以下とするのが好ましい。
また、本発明では、CaをCaSとして晶出させるために、Caと結合力の強いOの含有量をCa添加前に低減しておくことが必要であり、Ca添加前の残存O量は、0.0030mass%以下であることが好ましい。残存O量の低減方法としては、例えば、脱ガスを強化する、脱酸剤を投入する等の方法を用いることができる。
本発明の鋼材は、上記成分に加えてさらに、フェライト生成核としての機能を有するVを下記の範囲で含有することができる。
V:0.2mass%以下
Vは、母材の強度・靭性の向上に有効な元素であり、また、VNとして析出し、フェライト生成核としても働く有効な元素である。しかし、0.2mass%を超える添加は、却って靭性の低下を招く。よって、添加する場合は、0.2mass%以下とする。
また、本発明の鋼材は、上記成分に加えてさらに、強度向上を目的として、CrおよびMoを下記の範囲で添加することができる。
Cr:0.4mass%以下
Crは、母材の高強度化に有効な元素である。しかし、多量に添加すると、靭性に悪影響を与えるため、上限を0.4mass%とする。よって、Crを添加する場合は、0.4mass%以下とするのが好ましい。
Mo:0.4mass%以下
Moは、母材の高強度化に有効な元素である。しかし、多量に添加すると、靭性に悪影響を与えるため、上限を0.4mass%とする。よって、Moを添加する場合は、0.4mass%以下とするのが好ましい。
本発明の鋼材において、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。しかし、本発明の効果を害さない範囲であれば、他の元素の含有を拒むものではなく、例えば、Cu:0.1mass%未満、Ni:0.1mass%未満であれば含有しても構わない。
次に、本発明において、炭素当量Ceqおよびボンド近傍の熱影響部の組織を規制する理由について説明する。
上述したように、本発明は、C,Mn,Ca,SおよびOの含有量を限定された範囲に調整することによって、300kJ/cmを超える大入熱溶接においても溶接部靭性に優れた鋼材を提供することができる。しかし、本発明の鋼材は、上記成分組成を満たすことに加えてさらに、炭素当量Ceqを0.33〜0.45mass%の範囲とする必要がある。炭素当量Ceqが0.33mass%未満では、鋼材として必要な母材強度が得られない場合がある。一方、Ceqが0.45mass%を超えると、ボンド近傍の熱影響部における島状マルテンサイトの生成が顕著となって、溶接部の靭性が低下することがあるからである。
また、本発明の鋼材は、ボンド近傍の熱影響部における島状マルテンサイトの分率が、面積分率にして2%以下であることが必要である。島状マルテンサイトの面積分率は、Ceqを0.45mass%以下とすることにより、概ね3%未満に抑えることができる。しかし、発明者らの調査によれば、たとえ3%とはいえ、2%を超える島状マルテンサイトは、靭性に対して悪影響を及ぼす。したがって、溶接部の靭性の低下を確実に防止するには、ボンド近傍の熱影響部における島状マルテンサイトの面積分率を2%以下、望ましくは1%未満に抑えることが好ましい。
島状マルテンサイトの面積分率を2%以下に抑えるには、ボンド近傍の熱影響部におけるアシキュラーフェライトの面積分率をできるだけ大きくすることが好ましい。というのは、ボンド近傍の熱影響部における島状マルテンサイトの生成は、主としてCeqに依存するが、ベイナイト変態機構によっても左右される。先述したように、ボンド近傍の熱影響部の旧オーステナイト粒内には、ベイナイト変態によってアシキュラーフェライトが生成するが、このアシキュラーフェライトが多くなるほど、未変態オーステナイトへのC濃化が低減するので、島状マルテンサイトの生成量は小さくなる。また、アシキュラーフェライトの面積分率が概ね半分以上となると、ボンド近傍の熱影響部の組織から旧オーステナイト粒界より析出した粒界フェライトを除いた組織をEBSDで測定したとき、傾角が15°以上の粒界組織における線分法で測定した平均切片長さが10μm以下となることがわかった。
そこで、本発明においては、島状マルテンサイトの生成量を面積分率で2%以下とするため、Ceqを0.33〜0.45mass%の範囲に制限することに加えてさらに、ボンド近傍の熱影響部におけるアシキュラーフェライトの面積分率を概ね半分以上とし、ボンド近傍の熱影響部の旧オーステナイト粒内組織における線分法で測定した平均切片長さを10μm以下に制御することとした。
次に、本発明の鋼材の好ましい製造方法について説明する。
本発明の鋼材は、転炉や電気炉で溶銑を精錬し、必要に応じてさらに真空脱ガス等の2次精錬を施して、本発明に適合する所定の成分組成を有する鋼を溶製し、その後、連続鋳造工程または造塊−分塊工程を経て鋼片(スラブ)とするのが好ましい。次いで、その鋼片を再加熱し、熱間圧延して放冷するか、あるいは上記熱間圧延後、必要に応じて加速冷却したり、直接焼入れ−焼戻し、再加熱焼入れ−焼戻し、再加熱焼準−焼戻しなど工程を経たりして製品とされるのが好ましい。
150kgの高周波溶解炉を用いて、表1に示した成分組成を有する鋼を溶製し、鋼塊としたのち熱間圧延して厚さ70mmのシートバーとした。次いで、このシートバーを、1150℃に2時間加熱後、仕上圧延終了温度を板厚中心部で850℃とする熱間圧延を施し、板厚30mmの鋼板とし、板厚中心部の冷却速度が7℃/secとなるよう加速冷却した。この冷却速度は、板厚60mmの鋼板の1/4t部分の冷却速度を、30mmの鋼板でシミュレートしたものである。その後、上記鋼板に500℃×10分間の焼戻し処理を施した後、母材特性を評価するため、上記鋼板から、平行部14φ×85mm、標点間距離70mmの丸棒引張試験片と、2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、引張試験とシャルピー衝撃試験に供し、降伏応力YS、引張強さTSおよび靭性特性(vTrs)を測定した。
Figure 2009242852
さらに、上記鋼板の溶接熱サイクル後の靭性特性を評価するため、これらの鋼板から幅80mm×長さ80mm×厚み15mmの試験片を採取し、この試験片に、1450℃に加熱後800〜500℃を270secで冷却する熱処理を施した。この熱処理は、入熱量400kJ/cmのエレクトロガス溶接を行った際にボンド近傍の熱影響部が受ける熱サイクルに相当する。その後、この試験片から、2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃試験に供して、靭性特性(vTrs)を評価した。
また、上記熱処理後の鋼板について、旧オーステナイト粒内組織の平均切片長さと島状マルテンサイト(MA)の面積分率を測定した。ここで、旧オーステナイト粒内組織の平均切片長さは、ボンド近傍の熱影響部をEBSDで300μm×300μmの範囲を2視野測定し、15°以上の傾角を有するバウンダリーマップを描画させて得られた粒界組織から、旧オーステナイト粒界から析出した粒界フェライトを除いて旧オーステナイト粒内組織を特定し、線分法を用いて求めた。また、島状マルテンサイトの面積分率は、2段エッチング法により島状マルテンサイトを現出させたのちSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した2000倍の組織写真をトレースし、画像解析して求めた。
上記のようにして測定した母材特性と溶接部靭性特性等の結果を表2に示した。表2から、本発明に適合する成分組成を有する発明例の鋼板は、いずれもボンド近傍の熱影響部における組織が、平均切片長さが10μm以下で、かつ島状マルテンサイトが2%以下となっており、その結果、vTrsが−55℃以下という良好な溶接部靭性が得られていることがわかる。これに対して、成分組成が本発明の範囲を外れる比較例の鋼板は、ボンド近傍の熱影響部の組織における平均切片長さ、島状マルテンサイトの面積分率のいずれか1以上が本発明の範囲から外れることによって、ボンド近傍の熱影響部の靭性が大きく劣るものしか得られていない。
Figure 2009242852
本発明における溶接ボンド部を説明する模式図である。

Claims (3)

  1. C:0.03〜0.08mass%、Si:0.01〜0.15mass%、Mn:1.60〜2.60mass%を含有し、下記(1)式に示す炭素当量Ceqが0.33〜0.45の範囲にある成分組成を有し、溶接入熱量が300kJ/cmを超える大入熱溶接を施したときのボンド近傍の熱影響部の組織が、旧オーステナイト粒界から析出した粒界フェライトを除いた旧オーステナイト粒内組織の大きさが10μm以下であり、かつ島状マルテンサイトが面積分率で2%以下であることを特徴とする大入熱溶接用鋼材。ここで、旧オーステナイト粒内組織の大きさとは、EBSDで測定した15°以上の傾角を有する粒界組織における線分法で測定した平均切片長さのことである。

    Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1)
    ただし、上記元素記号は、各元素の含有量(mass%)を示す。
  2. C:0.03〜0.08mass%、Si:0.01〜0.15mass%、Mn:1.60〜2.60mass%、P:0.03mass%以下、S:0.0005〜0.0040mass%、Al:0.005〜0.1mass%、Nb:0.003〜0.05mass%、Ti:0.003〜0.03mass%、N:0.0025〜0.0070mass%、Ca:0.0005〜0.0030mass%、B:0.0003〜0.0025mass%を含有し、かつ、Ca,OおよびSが下記(2)式を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することを特徴とする請求項1に記載の大入熱溶接用鋼材。

    0≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S≦1 ・・・(2)
    ただし、上記元素記号は、各元素の含有量(mass%)を示す。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、V:0.2mass%以下、Cr:0.4mass%以下およびMo:0.4mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の大入熱溶接用鋼材。
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