JP2008280573A - 大入熱溶接における溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C、Mn、P、S、Al、Ti、N、Ca、Oを夫々含有し、また必要によりSiを含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼板について、該鋼板に含まれる固溶N量を0.0010〜0.0060%とすればよい。
【選択図】なし
Description
1.00≦[Ti]/[N]≦2.5 …(1)
2.00≦1000×([Ca]+2×[S]+3×[O])≦10.0 …(2)
(a)B:0.0035%以下(0%を含まない)、
(b)Cu:2%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)およびCr:1.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
(c)Mo:0.5%以下(0%を含まない)、
(d)Nb:0.035%以下(0%を含まない)および/またはV:0.1%以下(0%を含まない)、
(e)Mg:0.005%以下(0%を含まない)、
(f)Zr:0.1%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.05%以下(0%を含まない)、
(g)Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)、
(h)REM:0.01%以下(0%を含まない)、
等を含有することができる。
PCM(%)=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5×[B]
1.00≦[Ti]/[N]≦2.5 ・・・(1)
2.00≦1000×([Ca]+2×[S]+3×[O])≦10.0 ・・・(2)
Cは、鋼板(溶接母材)の強度を確保するために必要な元素であり、所望の強度を確保するためには0.03%以上含有させる必要がある。C含有量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.055%以上である。しかしながら、Cを過剰に含有させると、HAZ靭性が却って低下することになる。こうしたことから、その上限は0.15%とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.13%以下、より好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.080%以下、特に好ましくは0.075%以下である。
Siは、鋼板の強度を確保するために有効な元素であり、必要により含有させる。しかしながら、過剰に含有させると鋼材(母材)に島状マルテンサイト相(M―A相)を多量に析出させてHAZ靭性を劣化させる。こうしたことから、その上限を0.50%とした。Si含有量の好ましい上限は0.40%、より好ましい上限は0.30%である。なお、Siを積極的に含有させるときの好ましい下限は0.1%である。Siは0%であってもよい。
Mnは、焼入れ性を向上させて鋼板の強度を確保する上で有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには、1%以上含有させる必要がある。Mn含有量の好ましい下限は1.3%である。しかしながらMnを過剰に含有させると、鋼板のHAZ靭性が劣化するので上限は2.0%とする。Mn含有量の好ましい上限は1.8%、より好ましい上限は1.7%である。
Pは、不可避的に混入してくる不純物であり、鋼板の靭性およびHAZ靭性に悪影響を及ぼすのでできるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、Pは0.020%以下に抑制する。P含有量は、好ましくは0.017%以下、より好ましくは0.015%以下、更に好ましくは0.010%以下、特に好ましくは0.0075%以下である。
Sは、鋳造時に溶鋼が凝固するときにCaSを形成し、溶接後にCaSを生成核としてMnSを形成させて、HAZ部にフェライトを形成させるのに有効に作用する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Sを0.0003%以上含有させることが好ましく、その含有量が増加するにつれてその効果は増大する。しかし0.005%よりも過剰に含有させると、母材の靭性およびHAZ靭性が劣化する。従ってS含有量は0.005%以下とする。S含有量は、好ましくは0.0030%以下、より好ましくは0.0020%以下、更に好ましくは0.0010%以下、最も好ましくは0.0007%以下である。Sを所定範囲に低減するには、脱硫時間を比較的長く(例えば、25分以上)すればよい。
Alは、脱酸剤として有効に作用する元素であると共に、鋼板のミクロ組織を微細化して母材靭性を向上させる効果も発揮する元素である。こうした効果を発揮させるためには、Al含有量は0.005%以上とする。Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましい下限は0.020%である。しかしながら、過剰に含有させると鋼板(母材)に島状マルテンサイト相(M―A相)を多量に析出させてHAZ靭性を劣化させる。こうしたことから、その上限は0.06%とする。Al含有量の好ましい上限は0.040%、より好ましい上限は0.035%である。
Tiは、窒化物を形成し、大入熱溶接時に旧オーステナイト粒が粗大化するのを抑制し、HAZ靭性を向上させるのに有効に作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Ti含有量は0.005%以上とする。Ti含有量の好ましい下限は0.0080%であり、より好ましい下限は0.010%である。しかしながら、Tiを過剰に含有させると粗大な介在物を析出させて、却ってHAZ靭性を劣化させる。従ってTi含有量の上限は0.030%とする。Ti含有量の好ましい上限は0.025%である。
Nは、所定量の固溶N量を確保し、HAZ靭性を向上させるのに必要な元素である。また、Nは、旧オーステナイト粒内にTiNを微細析出させてピンニング効果により旧オーステナイト粒が粗大化するのを防止し、大入熱溶接したときのHAZ靭性を高めるのに有効に作用する元素である。また、TiNはフェライト変態核としても機能し、HAZ組織を微細化させるのにも作用する。こうした効果を発揮させるためには、N含有量は0.005%以上とする必要がある。N含有量の好ましい下限は0.0060%である。しかしながら、N含有量が過剰になって0.015%を超えると粗大なTiNが析出してHAZ靭性が低下する。N含有量の好ましい上限は0.012%であり、より好ましい上限は0.010%であり、更に好ましい上限は0.0090%であり、特に好ましい上限は0.0080%である。
Caは、鋼板中の硫化物の形態を制御してHAZ靭性の向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるには、0.001%以上含有させる必要がある。Ca含有量は、好ましくは0.0013%以上であり、より好ましくは0.0015%以上であり、更に好ましくは0.0020%以上である。しかし0.0035%を超えて過剰に含有させてもHAZ靭性が却って劣化する。従ってCa含有量は0.0035%以下とする。Ca含有量は、好ましくは0.0030%以下とする。
Oは、不可避的不純物として混入するが、鋼中では酸化物として存在する。しかしながら、その含有量が0.0015%を超えると粗大な酸化物(例えば、CaOなど)が生成してHAZ靭性が劣化する。こうしたことからO含有量は、0.0015%以下とする。O含有量の好ましい上限は0.0013%である。
Bは、超大入熱溶接したときのHAZのボンド部付近でBNを核とした粒内フェライトを生成させて、HAZ靭性を改善するのに有効に作用する元素である。しかしながら、B含有量が過剰になるとボンド部の組織が粗大なベイナイト組織となるため、却ってHAZ靭性が劣化する。こうしたことから、Bを含有させるときは、その上限を0.0035%とするのがよい。B含有量は好ましくは0.0025%以下である。なお、B含有量の好ましい下限は0.0010%である。
Cu、NiおよびCrは、いずれも焼入れ性を高めて鋼板の強度を向上させるのに有効に作用する元素である。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、HAZ靭性が却って低下する。従ってCuについては、2%以下とするのが好ましく、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下とするのがよい。Niについては、2%以下とするのが好ましく、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下とするのがよい。Crについては1.5%以下とするのが好ましく、より好ましくは1.0%以下とするのがよい。上記効果を有効に発揮させるための好ましい下限は、いずれも0.20%であり、より好ましい下限は0.40%である。
Moは、焼入れ性を向上させて強度を確保するのに有効に作用する元素であり、焼戻し脆性を防止するのにも作用する元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、Mo含有量が過剰になるとHAZ靭性が劣化するので、0.5%以下とするのが好ましい。Mo含有量は、より好ましくは0.3%以下とするのがよい。上記効果を有効に発揮させるためのMo含有量の好ましい下限は、0.05%である。
NbとVは、焼入れ性を向上させて母材の強度を向上させるのに作用する元素である。またVは、焼戻し軟化抵抗を高くする作用も発揮する。しかしながら、多量に含有させるとHAZ靭性が劣化するため、Nb含有量は0.035%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.030%以下とするのがよい。V含有量は0.1%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.050%以下とするのがよい。こうした効果を有効に発揮させるには、Nb含有量は0.005%以上とすることが望ましく、V含有量は0.010%以上とすることが推奨される。
Mgは、鋼板中にMgOを形成し、このMgOがHAZ部でオーステナイト粒が粗大化するのを抑制するのに作用し、HAZ靭性を向上させる効果を発揮する元素である。しかしながらMg含有量が過剰になると、介在物(MgO)が粗大化してHAZ靭性が却って劣化するため0.005%以下とすることが好ましい。Mg含有量は、より好ましくは0.0035%以下である。上記効果を有効に発揮させるためのMg含有量の好ましい下限は、0.001%である。
ZrとHfは、Tiと同様、Nと結合して窒化物を形成し、この窒化物が溶接時におけるHAZのオーステナイト粒を微細化し、HAZの靭性改善に有効に作用する元素である。しかし過剰に含有するとHAZ靭性を却って低下させる。このためこれらの元素を含有させるときには、Zrは0.1%以下とすることが好ましく、Hfは0.05%以下とすることが好ましい。上記効果を有効に発揮させるためのZr含有量の好ましい下限は0.001%であり、Hf含有量の好ましい下限は0.001%である。
CoとWは、焼入れ性を向上させて母材強度を高めるのに作用する元素である。しかし、過剰に含有するとHAZ靭性が劣化するため、CoとWの上限は、いずれも2.5%とするのがよい。Co含有量のより好ましい上限は2%であり、更に好ましい上限は1.5%である。W含有量のより好ましい上限は2%であり、更に好ましい上限は1.5%である。Co含有量の好ましい下限は0.1%であり、W含有量の好ましい下限は0.1%である。
REM(希土類元素)は、鋼板中に不可避的に混入してくる介在物(例えば、酸化物や硫化物等)の形状を微細化・球状化することによって、HAZの靭性向上に寄与する元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、REMの含有量が過剰になると、REM自体の介在物が粗大化してHAZ靭性が却って劣化するため、0.01%以下に抑えることが好ましい。REMはより好ましくは0.0080%以下に抑えるのがよい。REM含有量の好ましい下限は0.0005%である。
下記表1または表2に示す成分組成の鋼(残部は、鉄および不可避不純物)を通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を鋳造してスラブとした後、該スラブを表3または表4に示す温度(実測値)に加熱して熱間圧延を行ない、板厚が60mmの熱間圧延板とし、熱間圧延終了後に水冷して焼入れ処理を行ない、引張強度が490〜780MPa級(50〜80kg/mm2級)の各種高張力鋼板(試験板)を製造した。なお、製鋼段階では、脱酸時間を30分間とした。
固溶N量(質量%)=鋼板に含まれる全N量(質量%)−窒化物となっているN量(質量%)
溶接方法 :エレクトロガスアーク溶接
溶接電流 :400A
溶接電圧 :40V
溶接速度 :0.6mm/秒
入熱量 :60kJ/mm
溶接ワイヤ:DWS−50GTR、DWS−50GTF
開先形状 :開先角度18°(逆V開先)、ルート間隔10mm
上記実施例1に示した鋼板を対象に、溶接条件を変えたときのHAZ靭性を評価した。
Claims (11)
- C :0.03〜0.15%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.50%以下(0%を含む)、
Mn:1〜2.0%、
P :0.020%以下(0%を含まない)、
S :0.005%以下(0%を含まない)、
Al:0.005〜0.06%、
Ti:0.005〜0.030%、
N :0.005〜0.015%、
Ca:0.001〜0.0035%および
O :0.0015%以下(0%を含まない)を夫々含有し、
残部が鉄および不可避不純物からなる鋼板であり、
該鋼板に含まれる固溶N量が0.0010〜0.0060%であることを特徴とする大入熱溶接における溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板。 - 前記鋼板に含まれる化学成分の含有量が、下記(1)式で規定される関係を満足する請求項1に記載の鋼板。
1.00≦[Ti]/[N]≦2.5 …(1)
但し、[ ]は、各元素の含有量(%)を示す。 - 前記鋼板に含まれる化学成分の含有量が、下記(2)式で規定される関係を満足する請求項1または2に記載の鋼板。
2.00≦1000×([Ca]+2×[S]+3×[O])≦10.0 …(2)
但し、[ ]は、各元素の含有量(%)を示す。 - 更に、他の元素として、
B:0.0035%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板。 - 更に、他の元素として、
Cu:2%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)およびCr:1.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板。 - 更に、他の元素として、
Mo:0.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の鋼板。 - 更に、他の元素として、
Nb:0.035%以下(0%を含まない)および/またはV:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の鋼板。 - 更に、他の元素として、
Mg:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の鋼板。 - 更に、他の元素として、
Zr:0.1%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.05%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜8のいずれかに記載の鋼板。 - 更に、他の元素として、
Co:2.5%以下(0%を含まない)および/またはW:2.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜9のいずれかに記載の鋼板。 - 更に、他の元素として、
REM:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の鋼板。
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