JP5433964B2 - 曲げ加工性および低温靭性に優れる高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

曲げ加工性および低温靭性に優れる高張力鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼材ならびにその製造方法に関し、特に建設産業機械・タンク・ペンストック・ラインパイプ等で曲げ加工性および低温靱性を必要とする部材に、引張強度が600MPa以上の鋼材として用いて好適なものに関する。
近年、建設産業機械・タンク・ペンストック・ラインパイプ等では、構造物の大型化を背景として、使用する鋼材の高強度化が進展する一方、鋼材の加工条件、例えば曲げ加工条件などは従来と同様以上の厳しい条件が適用され、同時に使用環境の苛酷化に伴い優れた低温靱性を備えることが求められている。
例えば、代表的な建設産業機械の一つであるオールテレーンクレーンの場合、ブームの部材では、曲げ半径が板厚の6.0倍程度の曲げ加工が施されるため、JIS Z 2248で定められる曲げ試験で、曲げ半径が板厚の6.0倍以上で割れが発生しないことが要求される。
当該部材における曲げ加工は、部材の成形加工のため、曲げ半径が板厚の6.0倍程度でも割れを生じずに曲がることが必要とされ、その曲げ加工性を満足することは製品を差別化するものでメーカの商品戦略上極めて重要である。
しかし、鋼材の高強度化は、一般的に加工性および低温靱性を劣化させるため、高強度と高加工性および低温靱性を備えた鋼やその製造方法が種々検討されている。
特許文献1は、自動車の車体や家電に使用される薄鋼板を対象とし、鋼板成分およびミクロ組織構成の規定により、引張り強度850MPa以上と穴広げ性および延性を両立させた板厚1.2mm程度の冷延鋼板が記載されている。
特許文献2は、建築鋼構造物、圧力容器、その他の溶接鋼構造物に使用される厚鋼板を対象とし、特定成分において焼入れ臨界直径Diを規定することにより、引張強度490〜800MPaまでの優れた冷間加工性を有する板厚40mmの厚鋼板およびその製造方法が記載されている。
特開2005−298964号公報 特開平7−150236号公報
しかしながら、上記特許文献1、2等に記載されている方法によっても、強度レベルが上昇して板厚が増大すると加工性や低温靱性の劣化が避けられず、上述した建設機械で要求される引張強度と板厚の鋼材において、十分な加工性および低温靱性を両立させた高張力鋼材ならびにその製造方法が求められていた。そして、その加工性の中でも、上述した建設機械への適用時に主要な成形手段である曲げ加工性が重要視されるようになっており、高強度を保ちながらも曲げ加工性に優れていること、すなわち、鋼材が割れずに曲げることができる限界半径が従来よりも小さいことが要求されていた。
そこで本発明は、板厚20〜80mm程度で、強度が600MPa以上の鋼材として用いて好適な、曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼材ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、曲げ加工性に優れた鋼材を得るため、材料の曲げ加工性に影響を及ぼすとされている集合組織を中心に、鋼材のミクロ組織が曲げ加工性に及ぼす影響について鋭意研究を重ね、以下の知見を得た。なお、検討において曲げ加工性はJIZ Z 2248に準拠した曲げ試験、低温靭性はJIS Z 2242に準拠したシャルピー衝撃試験で評価した。
1.曲げ加工性を向上させる最適な集合組織の分布が存在し、当該集合組織は、Mn添加量および未再結晶域における圧延加工条件、圧延後の冷却時における冷却速度を適正にコントロールすることによって達成され、低温靭性も同時に向上させることが可能である。
2.また、鋼材のミクロ組織において、旧オーステナイト粒の展伸度と析出物および/または介在物量が曲げ加工性に大きな影響を及ぼし、旧オーステナイト粒の展伸度は未再結晶域における圧延条件、曲げ加工性に影響及ぼす介在物量の制御は、鋼中N、SおよびO量のコントロールによって可能である。
本発明は、得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C:0.120.19%、Si:0.01〜0.8%、Mn:1.0〜1.8%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.006%、P:0.02%以下、S:0.003%以下、O:0.0035%以下、Mo:0.20〜%、Nb:0.019〜0.1%、Cr:0.26〜2%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼(ただし、Ceq(WES)(=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14)≦0.44、およびMn+2Niの値が3.0%以上のものを除く、各式において合金元素は含有量(質量%))を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAc変態点以上に再加熱後、未再結晶域における圧下率が70%以下の熱間圧延によって所定の板厚とし、引続きAr変態点以上から2℃/秒以上の平均冷却速度で350℃以下の温度まで冷却した後、板厚中心部をAc変態点以下に焼戻し、鋼板のミクロ組織が旧オーステナイト粒のアスペクト比が20以下、かつ析出物および/または介在物が1000個/μm以下で、鋼板の板厚1/4位置の{110}面の集積度が0.3〜1.8、鋼板の板厚1/4位置の{211}面の集積度が0.9〜2.4であることを特徴とする曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼の製造方法。
2.更に、鋼組成が、質量%で、V:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cu:2%以下、Ni:4%以下、W:2%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼の製造方法。
3.更に、鋼組成が、質量%で、B:0.003%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.01%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼の製造方法。
本発明によれば、引張強度600MPa以上の鋼材として好適な、曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼材の製造が可能となり、産業上極めて有用である。
本発明では、ミクロ組織、成分組成を規定する。
[ミクロ組織]
本発明ではミクロ組織において「集合組織」、「旧オーステナイト粒」、および「析出物および/または介在物」を規定する。
集合組織は、鋼板の板厚1/4位置の鋼板表面に平行する{110}面のX線ランダム強度比を0.3〜1.8、望ましくは0.5〜1.6および鋼板の板厚1/4位置の鋼板表面に平行する{211}面のX線ランダム強度比を0.9〜2.4、望ましくは1.1〜2.2とする。
{110}面のX線ランダム強度比が0.3未満および{211}面のX線ランダム強度比が0.9未満になると、曲げ加工性が劣化し、また、{110}面のX線ランダム強度比が1.8超えおよび{211}面のX線ランダム強度比が2.4超えになっても、曲げ加工性が劣化するので、上記規定とする。
なお、特に曲げ特性に影響を及ぼす鋼板の板厚1/4位置の鋼板表面に平行する{110}面のX線ランダム強度比の好ましい範囲は、0.5〜1.6、鋼板の板厚1/4位置の鋼板表面に平行する{211}面のX線ランダム強度比の好ましい範囲は1.1〜2.2である。
上述したX線ランダム強度比は、ランダムサンプルの各面のX線強度を基準としたときの、板厚1/4位置における鋼板表面に平行する{110}面および{211}面のX線強度の相対的な強度である。試料は、化学研磨によって、歪みを除去し、その後にX線測定を行った。
旧オーステナイト粒のアスペクト比を20以下とする。旧オーステナイト粒のアスペクト比が20を超えると、曲げ加工性が劣化するようになるので、20以下に限定する。
析出物および/または介在物の存在密度は1000個/μm3以下とする。析出物および/または介在物が多量に含まれるようになると、曲げ試験片の表面に微小なわれが発生するようになるので1000個/μm3以下とする。
単位体積あたりの存在密度を1000個/μm3以下に規定する析出物および/または介在物は、鋼中N、SおよびO量のコントロールによりその量を制御することが可能である。以下、上述したミクロ組織を得るために好適な成分組成と製造条件について説明する。
[成分組成]
以下の説明で化学成分量を示す%は、何れも質量%とする。
C:0.02〜0.25%
Cは、強度を確保するために含有するが、0.02%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.25%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性を著しく劣化させるため、C含有量を0.02〜0.25%に限定する。
Si:0.01〜0.8%
Siは、製鋼段階の脱酸材および強度向上元素として含有するが、0.01%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.8%を超えると粒界が脆化し、低温脆化を促進するため、0.01〜0.8%に限定する。
Mn:1.0〜1.8%
Mnは、鋼板の板厚1/4位置の{110}面および鋼板の板厚1/4位置の{211}面のX線ランダム強度比をそれぞれ0.3〜1.8および0.9〜2.4に制御するために含有するが、1.0%未満では{110}面のX線ランダム強度比が0.3未満となり、一方、2.0%を超えると{211}面のX線ランダム強度比が2.4を超える。従って、Mn含有量は1.0〜1.8%に限定する。
Al:0.005〜0.1%
Alは、脱酸材として、また結晶粒径の微細化にも効果があるため添加する。0.005%未満の場合にはその効果が十分でなく、一方、0.1%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなるため、0.005〜0.1%に限定する。
N:0.0005〜0.006%
Nは、TiやNbなどと窒化物を形成することによって組織を微細化し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させる効果を有する。また、析出物および/または介在物の生成量に影響を及ぼし、材料の加工性に影響を及ぼす。
0.0005%未満の含有では組織の微細化効果が充分にもたらされず、一方、0.006%を超える含有は析出物および/または介在物を増加させ加工性を損なうため、0.0005〜0.006%に限定する。
P:0.02%以下
不純物元素であるPは、焼戻し処理時に旧オーステナイト粒界等の結晶粒界に偏析しやすく、0.02%を超えると隣接する結晶粒の接合強度を低下させ、低温靭性や耐遅れ破壊特性を劣化させるため、0.02%以下に限定する。
S:0.003%以下
不純物元素であるSは、非金属介在物であるMnSを生成しやすく、0.003%を超えると、介在物の量が多くなりすぎて引張試験など延性破壊の強度が低下し、加工性を劣化させるため、0.003%以下に限定する。
O:0.0035%以下
Oは、Alなどと酸化物を形成することによって、材料の加工性に影響を及ぼす。0.0035%を超える含有は析出物および/または介在物が増加するために加工性を損なうため、0.0035%以下に限定する。
本発明では、所望する特性に応じて、更にMo、Nb、V、Ti、Cu、Ni、Cr、W、B、Ca、REM、Mgの一種または二種以上を含有することができる。
Mo:1%以下
Moは、焼入れ性および強度を向上する作用を有すると同時に、炭化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させるが、1%を超える添加は経済性が劣る。
従って、Moを添加する場合には、その含有量を1%以下に限定する。ただし、Moは焼戻し軟化抵抗を大きくする作用を有し、強度を900MPa以上確保するために0.2%以上添加することが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbは、マイクロアロイング元素として強度を向上させると同時に、炭化物や窒化物、炭窒化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させるが、0.1%を超える添加は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Nbを添加する場合には、その含有量を0.1%以下に限定する。
V:0.5%以下
Vは、マイクロアロイング元素として強度を向上させると同時に、炭化物や窒化物、炭窒
化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させるが、0.5%を超える添加は溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Vを添加する場合には、その含有量を0.5%以下に限定する。
Ti:0.1%以下
Tiは、圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイト粒の成長を抑制し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させると同時に、炭化物や窒化物、炭窒化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させる。
一方、0.1%を超える添加は溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、Tiを添加する場合には、その含有量を0.1%以下に限定する。
Cu:2%以下
Cuは、固溶強化および析出強化により強度を向上する作用を有している。しかしながら、Cu含有量が2%を超えると、鋼片加熱時や溶接時に熱間での割れを生じやすくするため、添加する場合には、その含有量を2%以下に限定する。
Ni:4%以下
Niは、靭性および焼入れ性を向上する作用を有している。しかしながら、Niは高価な元素であり含有量が4%を超えると、実用鋼としての経済性が低下するようになるので、添加する場合には、その含有量を4%以下に限定する。
Cr:2%以下
Crは、強度および靭性を向上する作用を有しており、また高温強度特性を向上させる。従って、高強度化する場合に積極的に添加し、特に引張強度900MPa以上の特性を得るために0.3%以上添加することが好ましい。
しかしながら、Cr含有量が2%を超えると、溶接性が劣化するようになるので、添加する場合は含有量を2%以下に限定する。
W:2%以下
Wは、強度を向上する作用を有している。しかしながら、2%を超えると、溶接性が劣化するようになるので、添加する場合は、その含有量を2%以下に限定する。
B:0.003%以下
Bは、焼入れ性を改善して強度を向上させる作用を有している。しかしながら、0.003%を超えると、靭性を劣化させるようになるので添加する場合には、その含有量を0.003%以下に限定する。
Ca:0.01%以下
Caは、硫化物系介在物の形態制御に不可欠な元素である。しかしながら、0.01%を超える添加は、清浄度を低下させて、曲げ試験片の表面に微小なワレを発生させるようになるので、添加する場合には、その含有量を0.01%以下に限定する。
REM:0.02%以下
REM(Rare Earth Metalの略、希土類)は、鋼中でREM(O、S)として硫化物を生成することによって結晶粒界の固溶S量を低減し靭性を改善する。しかしながら、0.02%を超える添加は、沈殿晶帯にREM硫化物が著しく集積し、材質の劣化を招く。従って、添加する場合は0.02%以下に限定する。
Mg:0.01%以下
Mgは、溶銑脱硫材として使用する場合がある。しかしながら、0.01%を超える添加は、清浄度の低下を招く。従って、Mgを添加する場合には、その添加量を0.01%以下に限定する。
[製造条件]
以下の製造条件における温度規定は板厚の中心位置とするが、中心部近傍はほぼ同様の温度履歴となるので、中心そのものに限定するものではない。
鋳造条件
本発明は、いかなる鋳造条件で製造された鋼材についても有効であるので、特に鋳造条件は限定しない。溶鋼から鋳片を製造する方法や、鋳片を圧延して鋼片を製造する方法は特に規定しない。転炉法・電気炉法等で溶製された鋼や、連続鋳造・造塊法等で製造されたスラブが利用できる。
熱間圧延条件
鋼板の板厚1/4位置において、{110}面および{211}面のX線ランダム強度比がそれぞれ0.3〜1.8および0.9〜2.4の集合組織とし、かつ旧オーステナイト粒のアスペクト比を20以下にするため、鋳片を圧延して鋼片を製造する際、Ar変態点以下に冷却することなく、熱間圧延を開始して未再結晶域における圧下率70%以下の圧延を行う。一度鋳片を冷却する場合は、Ac変態点以上に再加熱した後に上記熱間圧延を開始する。
未再結晶域における圧下率は、好ましくは60%以下とし、圧延はAr変態点以上で終了するものとする。なお、未再結晶域以外での圧延条件は特に規定しない。
本発明ではAr変態点(℃)およびAc変態点(℃)を求める式は特に規定しないが、例えばAr=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo、Ac=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Crとする。両式において各元素は鋼中含有量(質量%)とする。
熱間圧延後の冷却条件
熱間圧延終了後、Ar変態点以上の温度から2℃/秒以上の平均冷却速度で、350℃以下の温度まで冷却する。
平均冷却速度2℃/秒以上で鋼板の温度が350℃以下になるまで焼入れ装置または加速冷却装置を使用して冷却することにより、オーステナイトからマルテンサイトもしくはベイナイトへの変態を完了させ、母材の靱性を向上すると共に、鋼板の板厚1/4位置において{110}面および鋼板の板厚1/4位置の{211}面のX線ランダム強度比をそれぞれ0.3〜1.8および0.9〜2.4とすることができる。
冷却条件の規定において、平均冷却速度は板厚方向での冷却速度の平均値、冷却停止温度は復熱完了直後の鋼板表面の温度とする。
焼戻し条件
冷却後、強度と靭性を調整するため、焼戻し処理を行う。焼戻し温度は、Ac変態点を超えるとオーステナイト変態を生じ、強度が大きく低下するため、Ac変態点以下とする。
焼戻し時の昇温速度は0.05℃/s未満の場合、焼戻し処理時にPが粒界に偏析する量が大きくなり、低温靭性が劣化するため、0.05℃/s以上が好ましい。焼戻し温度における保持時間は、特に規定しないが、生産性の観点から、30min以下とすることが望ましい。
焼戻し後の冷却速度は、冷却中における析出物の粗大化を防止すべく、焼戻し温度〜200℃までの平均冷却速度を0.05℃/s以上とすることが望ましい。
そのため、昇温速度の調整が可能な、加熱装置を用いることが好ましく、圧延機および直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と別の製造ライン上に設置しても、同一の製造ライン上に直結して設置しても良い。加熱装置は、誘導加熱、通電加熱、赤外線輻射加熱、雰囲気加熱等のいずれの方式でも良い。
焼戻し条件の規定において、平均冷却速度は板厚方向での冷却速度の平均値、焼戻し温度は、鋼板表面温度測定値から伝熱計算によって求めた板厚中心部の温度とする。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜U)を溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、熱間圧延を行い種々の板厚の鋼板とした。圧延後、引続き直接焼入れし、次いで、雰囲気炉焼戻し装置を用いて焼戻し処理を行い、加熱後、空冷した。焼戻し温度や焼入れ温度などは板厚中心部における温度とし、熱電対によって実測した。
得られた鋼板について、集合組織の測定、ミクロ組織観察、引張試験、シャルピー衝撃試験および曲げ試験を実施した。
集合組織の測定は、試料を化学研磨し、歪みを除去後にX線回折測定することによって行った。板厚1/4位置における{110}面および{211}面のX線ランダム強度比は、ランダムサンプルの各面のX線強度を基準としたときの、板厚1/4位置における鋼板表面に平行する{110}面および{211}面のX線強度の相対的な強度である。
引張試験はJIS Z 2241に準拠して丸棒引張試験片により降伏強度および引張強度を測定し、靭性は、シャルピー衝撃試験によって得られるvTrsで評価した。
ミクロ組織観察で板厚1/4位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比は、ミクロ組織をピクリン酸にて現出後、画像処理によって求めた。
析出物および/または介在物の観察は、抽出レプリカのサンプルを用いて、透過型電子顕微鏡にて行った。撮影写真から画像処理によって、析出物および介在物の面積密度を求め、これを体積密度に換算した。面積密度は500nm四方の視野中で観察される析出物を対象として、任意の5視野の単純平均値とした。
曲げ試験は、表曲げ、裏曲げおよび側曲げ試験を行った。表曲げ限界半径は、母材の表面に引張応力が負荷されるように曲げ、曲げ半径を板厚の0.5倍から順次0.5倍間隔で大きくし、割れが生じない最小半径を曲げ限界半径とした。
L方向曲げとは、曲げ試験片の長手方向が母材のL方向の場合と定義し、C方向曲げとは、曲げ試験片の長手方向が母材のC方向の場合と定義した。また、裏曲げ限界半径は、母材の裏面に引張応力が負荷されるように曲げ、上記表曲げ限界半径と同様に求め、側曲げ限界半径は、母材の全厚サイドに引張応力が負荷されるように曲げ、上記表曲げ試験および裏曲げ試験と同様に求めた。
曲げ限界半径の目標値は、引張強度800MPa未満の鋼種に関しては、板厚の3.0倍以下とし、引張強度800MPa以上1180MPa未満の鋼種に関しては、板厚の5.0倍以下とし、引張強度1180MPa以上の鋼種に関しては、板厚の6.0倍以下とした。
表2に鋼板製造条件、板厚1/4位置における{110}面および{211}面のX線ランダム強度比、板厚1/4位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比、板厚1/4位置における析出物および介在物の密度を示し、表3に得られた鋼板の降伏強度、引張強度、破面遷移温度(vTrs)、母材の表曲げ限界半径、側曲げ限界半径を示す。
vTrsの目標値は、引張強度800MPa未満の鋼種に関しては、−60℃以下とし、引張強度800MPa以上1180MPa未満の鋼種に関しては、−40℃以下とし、引張強度1180MPa以上の鋼種に関しては、−20℃以下とした。
Figure 0005433964
Figure 0005433964
Figure 0005433964
表2、3から明らかなように板厚1/4位置の{110}面および{211}面のX線ランダム強度比、板厚1/4位置のオーステナイト粒のアスペクト比、析出物および介在物の密度が本発明の範囲である鋼板No.1〜16(本発明例)では、良好なvTrsおよび曲げ加工性を得ることができた。また、裏曲げ限界半径についても、表曲げ限界半径と同様に良好な特性が確認された。
一方、比較鋼板No.17〜32(比較例)は、vTrsおよび曲げ加工性の少なくとも1つが上記目標に達していない。以下、これらの比較例を個別に説明する。
化学成分が本発明範囲から外れている鋼板No.28〜32は、板厚1/4位置の{110}面または{211}面のX線ランダム強度比、析出物および/または介在物の密度の少なくとも1つが、本発明範囲を外れており、曲げ加工性が目標値に達していない。
未再結晶域圧下率が本発明範囲から外れている鋼板No.26、27は、旧オーステナイト粒のアスペクト比が、本発明範囲を外れており、曲げ加工性が目標値に達していない。
直接焼入れ開始温度、すなわち熱間圧延後の冷却開始温度が本発明範囲から外れている鋼板No.17、18は、板厚1/4位置の{110}面または{211}面のX線ランダム強度比のいずれかが、本発明範囲を外れており、vTrsが目標値に達していない。
直接焼入れ停止温度、すなわち熱間圧延後の冷却の停止温度が本発明範囲から外れている鋼板No.19、20は、板厚1/4位置の{110}面のX線ランダム強度比が、本発明範囲を外れており、vTrsが目標値に達していない。
冷却速度が本発明範囲から外れている鋼板No.21、22は、板厚1/4位置の{110}面または{211}面のX線ランダム強度比のいずれかが、本発明範囲を外れており、vTrsが目標値に達していない。
焼戻し温度が本発明範囲から外れている鋼板No.23〜25は、板厚1/4位置の{110}面のX線ランダム強度比または{211}面のX線ランダム強度比の少なくとも1つが、本発明範囲を外れており、vTrsが目標値に達していない。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.120.19%、Si:0.01〜0.8%、Mn:1.0〜1.8%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.006%、P:0.02%以下、S:0.003%以下、O:0.0035%以下、Mo:0.20〜%、Nb:0.019〜0.1%、Cr:0.26〜2%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼(ただし、Ceq(WES)(=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14)≦0.44、およびMn+2Niの値が3.0%以上のものを除く、各式において合金元素は含有量(質量%))を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAc変態点以上に再加熱後、未再結晶域における圧下率が70%以下の熱間圧延によって所定の板厚とし、引続きAr変態点以上から2℃/秒以上の平均冷却速度で350℃以下の温度まで冷却した後、板厚中心部をAc変態点以下に焼戻し、鋼板のミクロ組織が旧オーステナイト粒のアスペクト比が20以下、かつ析出物および/または介在物が1000個/μm以下で、鋼板の板厚1/4位置の{110}面の集積度が0.3〜1.8、鋼板の板厚1/4位置の{211}面の集積度が0.9〜2.4であることを特徴とする曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼の製造方法。
  2. 更に、鋼組成が、質量%で、V:0.5%以下、Ti:0.1%以下、Cu:2%以下、Ni:4%以下、W:2%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼の製造方法。
  3. 更に、鋼組成が、質量%で、B:0.003%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.01%以下の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼の製造方法。
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