JP2011195856A - ラインパイプ用鋼材及びその製造方法 - Google Patents

ラインパイプ用鋼材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011195856A
JP2011195856A JP2010061728A JP2010061728A JP2011195856A JP 2011195856 A JP2011195856 A JP 2011195856A JP 2010061728 A JP2010061728 A JP 2010061728A JP 2010061728 A JP2010061728 A JP 2010061728A JP 2011195856 A JP2011195856 A JP 2011195856A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel
content
mass
toughness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2010061728A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Nakamura
浩史 中村
Genki Inokari
玄樹 猪狩
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2010061728A priority Critical patent/JP2011195856A/ja
Publication of JP2011195856A publication Critical patent/JP2011195856A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

【課題】靱性、溶接性に優れており、かつ低YRであるラインパイプ用鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.06〜0.09%、Si:0.26%を超えて0.60%以下、Mn:1.3〜1.9%、Cr:0.01〜0.60%、V:0.001〜0.09%、Nb:0.001〜0.09%、Ti:0.005〜0.024%及びsol.Al:0.005〜0.060%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP:0.020%以下、S:0.004%以下、Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下、Mo:0.05%以下、B:0.0005%以下、N:0.007%以下及びO:0.005%以下であり、下記(1)式から求められるPn値が0.140以下である化学組成を有することを特徴とするラインパイプ用鋼材。
Pn=C−Si/2+Mn/20+Cr/20+Nb/2+V/10・・・・(1)式
ここで、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
【選択図】なし

Description

本発明は、良好な靱性を有するラインパイプ用鋼材及びその製造方法に関する。
天然ガスまたは原油を大量に輸送する時には、大径のラインパイプが用いられる。ラインパイプ用鋼材には、高い強度と靭性が要求されると共に、地震時、凍土融解/凍結時などの地盤移動によるパイプラインの破壊を防止するため、高い変形性能を有するSBD(Strain-based Design)対応鋼が望まれている。特に、母材に対しては局部座屈を防止するために変形性能および歪時効特性の向上が要望されている。変形性能は、低い降伏比(YR)、高い加工硬化率、高い一様伸び(U.El)を有する場合などに向上する。
こうした要求に対して、化学組成または製造条件を制御して鋼材の変形性能を高める技術が提案されている。例えば、特許文献1には、「耐歪み時効特性に優れた高強度鋼材とその製造方法」が開示されている。また、特許文献2には、「耐歪時効性に優れた高強度ラインパイプ用鋼管及び高強度ラインパイプ用鋼板並びにそれらの製造方法」が開示されている。
特開2002−220634号公報 特開2007−314828号公報
特許文献1で開示された製造方法によれば、歪時効後においても良好な一様伸びが得られるとされている。しかしながら、この方法によって得られる鋼材が優れた低YR(例えば80%以下)を有さない場合がある。
また、特許文献2で開示された製造方法は、歪時効の前後における降伏強度の変化を小さくするものであり、YRの改善を狙ったものではない。このため、特許文献2で開示された製造方法によって得られた鋼板が優れた低YRを有さない場合がある。
本発明の目的は、このような問題点を解決するために、ラインパイプの素材として好適な、靱性に優れるラインパイプ用鋼材及びその製造方法を提供することにある。特に、低降伏比で変形特性に優れるラインパイプ用鋼材及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、種々の検討を行った。その結果、次の(a)〜(e)に示す知見を得た。
(a) 優れた低YRを得るためには、鋼の化学組成においてSi量は大きい方が良い。また、強度・靱性を改善するために添加されるNb量は、なるべく小さい方が良い。
(b) 優れた低YRに加えて、良好な強度、靱性や溶接性を有する鋼材を比較的低コストで得るためには、Si、Nb以外の化学成分についても適正な範囲に制御する必要がある。特に、下記の(1)式に示すPn値を小さくすることによって良好な母材性能と溶接性が得られる。
Pn=C−Si/2+Mn/20+Cr/20+Nb/2+V/10・・・・(1)式
ここで、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
(c) 鋼の化学組成を適正化することに加えて、加速冷却停止温度などの製造条件を適正に制御すると、優れた低YRを有する鋼材を得ることができる。
(d) Si、Nb以外の化学成分、及び製造条件をある一定の適切な範囲に制限した場合において、図1に示すように、YRは下記の(2)式に示すPyr値と相関がある。
Pyr=56.0−1.65Si+104Nb+0.000648(Ts−320)・・・(2)式
ここで、(2)式中の元素記号(SiおよびNb)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味し、そして、Tsは加速冷却停止温度(℃)を意味する。
(e) Pyr値が小さくなるように、化学組成および製造条件を調整することによって、特に優れた低YR(例えば、YRが76%以下)を有する鋼材を得ることができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、次の(1)〜(3)に示すラインパイプ用鋼材及び次の(4)〜(6)に示すラインパイプ用鋼材の製造方法にある。
(1) 質量%で、C:0.06〜0.09%、Si:0.26%を超えて0.60%以下、Mn:1.3〜1.9%、Cr:0.01〜0.60%、V:0.001〜0.09%、Nb:0.001〜0.09%、Ti:0.005〜0.024%及びsol.Al:0.005〜0.060%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP:0.020%以下、S:0.004%以下、Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下、Mo:0.05%以下、B:0.0005%以下、N:0.007%以下及びO:0.005%以下であり、下記(1)式から求められるPn値が0.140以下である化学組成を有することを特徴とするラインパイプ用鋼材。
Pn=C−Si/2+Mn/20+Cr/20+Nb/2+V/10・・・・(1)式
ここで、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
(2) Feの一部に代えて、さらに質量%で、Ca:0.01%以下及びREM:0.02%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、上記(1)のラインパイプ用鋼材。
(3) Feの一部に代えて、さらに質量%で、Mg:0.008%以下を含有することを特徴とする、上記(1)又は(2)のラインパイプ用鋼材。
(4) 質量%で、C:0.06〜0.09%、Si:0.26%を超えて0.60%以下、Mn:1.3〜1.9%、Cr:0.01〜0.60%、V:0.001〜0.09%、Nb:0.001〜0.09%、Ti:0.005〜0.024%及びsol.Al:0.005〜0.060%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP:0.020%以下、S:0.004%以下、Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下、Mo:0.05%以下、B:0.0005%以下、N:0.007%以下及びO:0.005%以下であり、下記(1)式から求められるPn値が0.140以下である化学組成を有する鋼片または鋼塊を用いて、加熱、圧延及び加速冷却を行い、下記(2)式から求められるPyr値が76.0以下であることを特徴とするラインパイプ用鋼材の製造方法。
Pn=C−Si/2+Mn/20+Cr/20+Nb/2+V/10・・・・(1)式
ここで、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
Pyr=56.0−1.65Si+104Nb+0.000648(Ts−320)・・・(2)式
ここで、(2)式中の元素記号(SiおよびNb)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味し、そして、Tsは加速冷却停止温度(℃)を意味する。
(5) Feの一部に代えて、さらに質量%で、Ca:0.01%以下及びREM:0.02%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、上記(4)のラインパイプ用鋼材の製造方法。
(6) Feの一部に代えて、さらに質量%で、Mg:0.008%以下を含有することを特徴とする、上記(4)又は(5)のラインパイプ用鋼材の製造方法。
本発明に係るラインパイプ用鋼材は、靱性、溶接性に優れており、かつ低YRであるため、高い変形性能が要求されるラインパイプの素材として好適である。また、このラインパイプ用鋼材は本発明に係る製造方法により、比較的容易に製造することができる。
成分・製造条件パラメータPyr値とYRとの関係を示す図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学組成における各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成について
C:0.06〜0.09%
Cは、鋼の強度を高めるために必要な元素である。この効果を安定して得るために、Cは0.06%以上の含有量とする必要がある。一方、C含有量が大きくなり過ぎると溶接割れが起こり易いため、上限を0.09%とした。Cは0.07%以上含有させるのが好ましい。また、C含有量の好ましい上限は0.08%である。
Si:0.26超〜0.60%
Siは、良好な変形性能、特に低YRを得るのに効果がある。これらの効果を確実に得るために、Siを0.26%を超えて含有させる。しかしながら、Si含有量が大きくなり過ぎると、母材及び溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)の靱性の悪化が著しくなる。したがって、Si含有量を0.26超〜0.60%とした。Siは0.32%を超えて含有させるのが好ましい。また、Si含有量の好ましい上限は0.45%である。
Mn:1.3〜1.9%
Mnは、鋼の強度を高める作用を有する。この効果を充分に得るために、Mnを1.3%以上含有させる。一方、その含有量が過大となると溶接割れが起こりやすくなる。また、変形性能が悪化する可能性もある。したがって、Mn含有量を1.3〜1.9%とした。Mn含有量の好ましい下限は1.5%であり、より好ましい下限は1.6%である。また、Mn含有量の好ましい上限は1.8%である。
Cr:0.01〜0.60%
Crは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るために、Crを0.01%以上含有させる。ただし、Cr含有量が過剰な場合、溶接割れが起こりやすくなる。また、靱性が悪化する可能性もある。したがって、Cr含有量を0.60%以下とする。特に、Crを0.10%以上含有させた場合、上記の効果が顕著となる。Cr含有量は0.40%以下とするのが好ましい。
V:0.001〜0.09%
Vは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るために、Vを0.001%以上含有させる。ただし、その含有量が過剰な場合、変形性能に関わる低YR、延性および靱性が悪化するおそれがある。したがって、Vを含有させる場合には、その含有量を0.09%以下とする。特に、Vを0.01%以上含有させた場合、この効果が顕著となる。V含有量の好ましい下限は0.01%、より好ましい下限は0.02%である。V含有量の好ましい上限は0.06%である。
Nb:0.001〜0.09%
Nbは、鋼材の強度を向上させる効果を有するとともに、適切な圧延条件と組合せることにより、母材靱性を高める作用もある。このため、Nbは0.001%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が大き過ぎると、母材とHAZの靱性や変形性能が悪化する。したがって、Nb含有量を0.001〜0.09%とする。好ましい下限は0.008%である。また、好ましい上限は0.05%である。さらに、上限を0.04%とすることがより好ましい。
Ti:0.005〜0.024%
Tiは、Nとともに析出物(TiN)を形成して、Nによる歪時効を抑制し、変形性能を改善するので、0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が大き過ぎると、母材とHAZの靱性や変形性能が悪化する。したがって、Ti含有量を0.005〜0.024%とする。好ましい下限は0.010%である。また、好ましい上限は0.020%である。また、歪時効後のYRの増加やU.Elの低下を抑制するため、TiとNの含有量の比(Ti/N)を4.0以上とすることが好ましい。
sol.Al:0.005〜0.060%
Alは、脱酸作用を有する元素であり、また一様伸びの改善にも効果があるため、sol.Al(酸可溶Al)として0.005%以上含有させる。しかしながら、sol.Al含有量が大きくなり過ぎると、溶接熱影響部の靱性が悪化する場合がある。したがって、sol.Al含有量を0.005〜0.060%とした。なお、sol.Al含有量は下限を0.015%とし、上限を0.040%とすることがより好ましい。
本発明に係るラインパイプ用鋼材は、上記の成分のほか、残部がFeと不純物からなるものである。なお、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。ただし、本発明に係るラインパイプ用鋼材においては、特に、不純物中のP、S、Cu、Ni、Mo、B、NおよびOを、次に述べるように含有量を抑制する必要がある。
P:0.020%以下
Pは、靱性悪化の原因となる元素で、その含有量が多くなり、特に、0.020%を超えると、靱性の悪化が著しくなり易い。したがって、P含有量を0.020%以下とする。なお、P含有量は少ないほうがよく、0.015%以下とすることが好ましい。
S:0.004%以下
Sは、含有量が多くなると延性または靱性に有害な介在物を多く生成する。特に、0.004%を超えると、介在物が多くなって延性の低下や靱性の悪化が著しくなる。したがって、S含有量を0.004%以下とした。なお、S含有量は少ないほうがよく、0.002%以下とすることが好ましい。
Cu:0.05%以下
Cuは、その含有量が大きいと、鋼材の表面性状や靱性が顕著に悪化する。このため、Cu含有量を0.05%以下とする。
Ni:0.05%以下
Niは、その含有量が大きいと、鋼材の表面性状が顕著に悪化する。このため、Ni含有量を0.05%以下とする。
Mo:0.05%以下
Moは、その含有量が大きいと、歪時効によるYSの増加が大きくなり、変形特性が損なわれる。また、溶接熱影響部の靱性悪化および溶接割れが発生し易くなる。そのため、Mo含有量を0.05%以下とする。
B:0.0005%以下
Bは、その含有量が大きいと、延性および靱性が悪化するおそれがある。したがって、B含有量を0.0005%以下とする。
N:0.007%以下
Nは、含有量が多くなると溶接熱影響部の靱性を悪化させる。特に、0.007%を超えるとその悪化が著しくなる。したがって、N含有量を0.007%以下とする。なお、N含有量は0.005%以下とすることが好ましい。
O:0.005%以下
O(酸素)は、含有量が微量であればフェライト生成核となる酸化物の生成に有効である場合があるものの、含有量が多くなると母材靱性ならびに延性に悪影響を及ぼす。したがって、O含有量を0.005%以下とする。なお、O含有量は0.002%以下とすることがより好ましい。
本発明に係るラインパイプ用鋼材は、必要に応じて、Ca、REM、Mgのうちの1種又は2種以上の元素を含有させることができる。
Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下
Ca及びREMは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、低温靱性や耐水素割れ性能を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させることができる。ただし、含有量が過剰な場合、Ca及びREMを含む介在物が粗大化し、クラスター化することがあり、鋼の清浄度を害し、溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。このため、必要に応じて含有させる場合のCa量及びREM量の上限は、それぞれ、0.01%以下及び0.02%以下とすることが好ましい。特に溶接性の観点よりCa含有量の上限は0.006%以下にすることが好ましい。上記の効果を安定的に得るためには、Caは0.0005%以上、REMは0.001%以上含有させるのが好ましい。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、これらの元素から選択される1種以上を含有させることができる。REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
Mg:0.008%以下
Mgは、微細に分散した酸化物を形成し、溶接熱影響部のオーステナイト粒径の粗大化を抑制して低温靭性を向上させる効果を発揮する。この効果を得るために、必要に応じてMnを含有させることができる。ただし、Mgを0.008%を超えて含有させると、粗大な酸化物を生成し靭性を劣化させることがある。このため、必要に応じて含有させる場合の含有量を0.008%以下とするのが好ましい。上記の効果を安定的に得るためには、Mgを0.0005%以上含有させるのが好ましい。
Pn:0.140以下
Pn=C−Si/2+Mn/20+Cr/20+Nb/2+V/10・・・・(1)式
ここで、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
この(1)式は母材の性能及び溶接性を良好にするために有用なパラメータである。Pnの値が0.140%を超えると母材の変形性能や靱性の低下が起こり易くなる。また、溶接割れも起こり易くなる。なお、より大きな効果を得るために、Pnの上限値は0.100%とすることが望ましく、0.050%とすることがより望ましく、0.025%とすることがさらに望ましい。下限は特に定めないが、Pnが低いと母材の強度や溶接熱影響部の靱性が低下する。Pnの下限値は−0.100%とすることが望ましく、−0.050%とすることがより望ましく、−0.025%とすることがさらに望ましく、0.000%とすることが最も望ましい。
(B)製造条件について
特に優れた変形性能を有するラインパイプ用鋼材を製造するためには、上述した化学組成を有する鋼片または鋼塊を用いて、加熱、圧延及び加速冷却を行い、下記(2)式から求められるPyr値が76.0以下を満足する製造条件を用いる。
Pyr=56.0−1.65Si+104Nb+0.000648(Ts−320)・・・(2)式
ここで、(2)式中の元素記号(SiおよびNb)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味し、そして、Tsは加速冷却停止温度(℃)をそれぞれ意味する。
すなわち、Pyr値が76.0を超える場合には、YRが76.0%以下という良好な特性を得ることが難しくなる。また、さらなる低YRを確実に得るためには、Pyr値を70.0以下とすることが好ましく、65.0以下とすることがさらに好ましい。
以下に、各製造工程における好ましい条件を説明する。
圧延前の加熱温度は、850℃以上とするのが好ましい。このような温度にスラブを加熱することによって、鋼材の熱間圧延が容易となる。圧延前の加熱温度は、1000℃以上とするのがより好ましい。但し、スラブの加熱温度が高すぎると、オーステナイト結晶粒が粗大化して低温靱性が劣化することがある。したがって、加熱温度は1200℃以下とするのが好ましい。
圧延は、900℃以下の温度域における合計圧下率が50%以上となる条件で行うことが好ましい。900℃以下の温度域における合計圧下率を50%以上とすることによって、オーステナイトに残留ひずみを確実に与えることができ、良好な靱性を確保することが容易になる。900℃以下の温度域における合計圧下率は70%以上であればより好ましい。ここで、「900℃以下の温度域における合計圧下率」とは、[(900℃に達した時点の厚さ)−(最終厚さ)]/[(900℃に達した時点の厚さ)]×100(%)を意味する。
さらに、圧延仕上温度を800〜650℃とすることによって、良好な強度および靱性がより確実に得られる。すなわち、圧延仕上温度が650℃未満の場合には、鋼板の強度が不足することがあり、一方、800℃を超える場合には良好な靱性の確保が難しくなることがある。圧延仕上温度は、700℃以上であることがより好ましい。また、圧延仕上温度は750℃以下であることがより好ましい。
圧延後の加速冷却は、冷却開始温度を800〜650℃とすることが好ましい。
圧延後の加速冷却は、良好な引張強度、低YR及び高靱性を得るために行うものである。冷却開始温度が650℃未満では、この効果が小さくなることがある。また、冷却開始温度が800℃を超えると、良好な靱性が得られない場合がある。冷却開始温度の上限は、750℃とするのがより好ましく、700℃とするのがさらに好ましい。
なお、水素割れの発生を抑止するために、加速冷却停止温度は200℃以上とするのが好ましい。また、加速冷却停止後は、放冷または徐冷することが好ましい。
圧延後の加速冷却において、冷却速度を10℃/s以上とすることが好ましい。冷却速度が10℃/s未満では、引張強度を確保するのが難しい場合がある。良好な引張強度を得るために、冷却速度を20℃/s以上とするのが好ましい。また、良好な延性を確保するために、冷却速度を70℃/s以下とするのが好ましい。
なお、上述の各温度は、被圧延材の表面部における平均温度を指し、「冷却速度」は、冷却の開始時と停止時における当該材の表面部の温度差を加速冷却時間で除した値を指す。ここで、冷却停止時における温度とは、復熱後の最大到達温度を意味する。また、加速冷却時間とは、例えば水槽で冷却を行う場合は、浸漬時間を意味する。
本発明で製造された鋼板を管状に成形し、突合せ部を接合し、必要に応じて、拡管及び防食のためのコーティングを施すことによって、ラインパイプを製造することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する厚さが140mmの鋼片を、1160℃に加熱し、1160℃にて1時間以上保持した後に、熱間圧延した。各パス出側の鋼板の厚さは、1パス目:130mm、2パス目:110mm、3パス目:92mm、4パス目:76mm、5パス目:64mm、6パス目:54mm、7パス目:45mm、8パス目:38mm、9パス目:32mm、10パス目:28mm、11パス目:26mmとした。放射温度計を用いて測定した各パスの入側における被圧延材の表面温度は、3パス目:780℃、9パス目:750℃、11パス目:710℃(仕上温度)である。圧延後は、670℃から加速冷却(水冷)を行った。加速冷却の停止温度(復熱後の最大到達温度)を表2に示す。
Figure 2011195856
Figure 2011195856
得られた各鋼板について、引張特性および衝撃特性を調査した。
引張特性は、平行部の直径が8.5mm、標点距離42.5mmの丸棒引張試験片を、試験片の軸が圧延方向に対して平行(L方向)になるように板厚中央部から採取し、室温で引張試験を実施して調査した。具体的には、0.5%耐力、引張強度、全伸びを求め、降伏比(0.5%耐力/引張強度)を算出した。
衝撃特性は、JIS Z 2242(2005)に記載のVノッチ試験片を、試験片の長辺が圧延方向に対して垂直(C方向)になるように板厚中央部から採取し、シャルピー衝撃試験を行い、破面遷移温度(vTs)及び−60℃での吸収エネルギー(vE−60)を求めた。
上記の各試験結果をPyr値と共に表2に示す。
表2に示すように、本発明で規定する条件を満たす板は、YRが76.0%以下であり、良好な低YRを有する。また同時に、vTsが−60℃以下、vE−60が47J以上であり、良好な衝撃特性(靱性)を有している。一方、化学組成、及びPyr値が本発明で規定される条件を満たしていない板は、YRが76.0%を超えている。
本発明に係るラインパイプ用鋼材は、靱性、溶接性に優れており、かつ低YRであるため、高い変形性能が要求されるラインパイプの素材として好適である。また、このラインパイプ用鋼材は本発明に係る製造方法により、比較的容易に製造することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.06〜0.09%、Si:0.26%を超えて0.60%以下、Mn:1.3〜1.9%、Cr:0.01〜0.60%、V:0.001〜0.09%、Nb:0.001〜0.09%、Ti:0.005〜0.024%及びsol.Al:0.005〜0.060%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP:0.020%以下、S:0.004%以下、Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下、Mo:0.05%以下、B:0.0005%以下、N:0.007%以下及びO:0.005%以下であり、下記(1)式から求められるPn値が0.140以下である化学組成を有することを特徴とするラインパイプ用鋼材。
    Pn=C−Si/2+Mn/20+Cr/20+Nb/2+V/10・・・・(1)式
    ここで、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
  2. Feの一部に代えて、さらに質量%で、Ca:0.01%以下及びREM:0.02%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、請求項1に記載のラインパイプ用鋼材。
  3. Feの一部に代えて、さらに質量%で、Mg:0.008%以下を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のラインパイプ用鋼材。
  4. 質量%で、C:0.06〜0.09%、Si:0.26%を超えて0.60%以下、Mn:1.3〜1.9%、Cr:0.01〜0.60%、V:0.001〜0.09%、Nb:0.001〜0.09%、Ti:0.005〜0.024%及びsol.Al:0.005〜0.060%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP:0.020%以下、S:0.004%以下、Cu:0.05%以下、Ni:0.05%以下、Mo:0.05%以下、B:0.0005%以下、N:0.007%以下及びO:0.005%以下であり、下記(1)式から求められるPn値が0.140以下である化学組成を有する鋼片または鋼塊を用いて、加熱、圧延及び加速冷却を行い、下記(2)式から求められるPyr値が76.0以下であることを特徴とするラインパイプ用鋼材の製造方法。
    Pn=C−Si/2+Mn/20+Cr/20+Nb/2+V/10・・・・(1)式
    ここで、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味する。
    Pyr=56.0−1.65Si+104Nb+0.000648(Ts−320)・・・(2)式
    ここで、(2)式中の元素記号(SiおよびNb)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)を意味し、そして、Tsは加速冷却停止温度(℃)を意味する。
  5. Feの一部に代えて、さらに質量%で、Ca:0.01%以下及びREM:0.02%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、請求項4に記載のラインパイプ用鋼材の製造方法。
  6. Feの一部に代えて、さらに質量%で、Mg:0.008%以下を含有することを特徴とする、請求項4又は5に記載のラインパイプ用鋼材。
JP2010061728A 2010-03-18 2010-03-18 ラインパイプ用鋼材及びその製造方法 Pending JP2011195856A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010061728A JP2011195856A (ja) 2010-03-18 2010-03-18 ラインパイプ用鋼材及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010061728A JP2011195856A (ja) 2010-03-18 2010-03-18 ラインパイプ用鋼材及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011195856A true JP2011195856A (ja) 2011-10-06

Family

ID=44874446

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010061728A Pending JP2011195856A (ja) 2010-03-18 2010-03-18 ラインパイプ用鋼材及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011195856A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104694846A (zh) * 2015-04-08 2015-06-10 攀钢集团成都钢钒有限公司 一种低温无缝钢管及其生产方法
CN104947000A (zh) * 2015-06-14 2015-09-30 秦皇岛首秦金属材料有限公司 屈服强度700MPa级高强钢及TMCP制造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002294339A (ja) * 2001-03-29 2002-10-09 Sumitomo Metal Ind Ltd 高強度エアバッグ用鋼管の製造方法
JP2009209443A (ja) * 2008-03-06 2009-09-17 Sumitomo Metal Ind Ltd ラインパイプ用鋼板、その製造方法およびラインパイプ
JP2009242841A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Jfe Steel Corp 曲げ加工性および低温靭性に優れる高張力鋼材ならびにその製造方法
JP2009242840A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Jfe Steel Corp 曲げ加工性および低温靭性に優れる高張力鋼材ならびにその製造方法
JP2010506044A (ja) * 2006-10-06 2010-02-25 エクソンモービル アップストリーム リサーチ カンパニー 優れた歪みエージング抵抗を有する低降伏比ジュアル相鋼ライン管

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002294339A (ja) * 2001-03-29 2002-10-09 Sumitomo Metal Ind Ltd 高強度エアバッグ用鋼管の製造方法
JP2010506044A (ja) * 2006-10-06 2010-02-25 エクソンモービル アップストリーム リサーチ カンパニー 優れた歪みエージング抵抗を有する低降伏比ジュアル相鋼ライン管
JP2009209443A (ja) * 2008-03-06 2009-09-17 Sumitomo Metal Ind Ltd ラインパイプ用鋼板、その製造方法およびラインパイプ
JP2009242841A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Jfe Steel Corp 曲げ加工性および低温靭性に優れる高張力鋼材ならびにその製造方法
JP2009242840A (ja) * 2008-03-31 2009-10-22 Jfe Steel Corp 曲げ加工性および低温靭性に優れる高張力鋼材ならびにその製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104694846A (zh) * 2015-04-08 2015-06-10 攀钢集团成都钢钒有限公司 一种低温无缝钢管及其生产方法
CN104947000A (zh) * 2015-06-14 2015-09-30 秦皇岛首秦金属材料有限公司 屈服强度700MPa级高强钢及TMCP制造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4844687B2 (ja) 低降伏比高強度高靭性鋼板及びその製造方法
JP5516784B2 (ja) 低降伏比高強度鋼板およびその製造方法並びにそれを用いた高強度溶接鋼管
JP5516785B2 (ja) 低降伏比高強度鋼板およびその製造方法並びにそれを用いた高強度溶接鋼管
JP5821173B2 (ja) 低降伏比高強度高一様伸び鋼板及びその製造方法
JP5223511B2 (ja) 高強度耐サワーラインパイプ用鋼板およびその製造方法および鋼管
CA2980247C (en) Thick steel plate for structural pipes or tubes, method of producing thick steel plate for structural pipes or tubes, and structural pipes and tubes
JP5532800B2 (ja) 耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高一様伸び鋼板及びその製造方法
JP6149368B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高張力鋼板の製造方法
JP4484123B2 (ja) 高強度かつ溶接熱影響部靭性に優れたクラッド鋼板用母材およびその製造方法
JP6048615B2 (ja) 耐歪時効特性及び耐hic特性に優れた高変形能ラインパイプ用鋼材およびその製造方法ならびに溶接鋼管
JP5472071B2 (ja) ラインパイプ用鋼材
EP3276026A1 (en) Thick steel sheet for structural pipe, method for manufacturing thick steel sheet for structural pipe, and structural pipe
JP2013104124A (ja) 曲げ加工性に優れた直接焼入れ焼戻し型高張力鋼板およびその製造方法
JP2015190026A (ja) ラインパイプ用厚肉高強度電縫鋼管およびその製造方法
JP2015189984A (ja) 低降伏比高強度高靭性鋼板、低降伏比高強度高靭性鋼板の製造方法および鋼管
JP6288288B2 (ja) ラインパイプ用鋼板及びその製造方法とラインパイプ用鋼管
WO2012108027A1 (ja) スチーム配管用高強度鋼材およびその製造方法
JP5245921B2 (ja) ラインパイプ用鋼材の製造方法
JP5640899B2 (ja) ラインパイプ用鋼材
JP4507708B2 (ja) 低降伏比高強度高靱性鋼板の製造方法
JP2013108167A (ja) 溶接性および耐遅れ破壊特性に優れた引張強さ950MPa以上の高張力鋼板の製造方法
JP2015086411A (ja) 材質安定性および溶接性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5176847B2 (ja) 低降伏比低温用鋼、およびその製造方法
JP2011195856A (ja) ラインパイプ用鋼材及びその製造方法
CN111183238A (zh) 耐酸管线管用高强度钢板及其制造方法以及使用了耐酸管线管用高强度钢板的高强度钢管

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120326

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121011

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20121011

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130926

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131001

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131120

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20131224