JP5245921B2 - ラインパイプ用鋼材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ラインパイプ用鋼材の製造方法に関し、特に、引張強度が760MPa以上で耐歪時効特性に優れるラインパイプ用鋼材の製造方法に関する。
天然ガスまたは原油を大量に輸送する時には、大径のラインパイプが用いられる。ラインパイプ用鋼材には、高い強度と靭性が要求されると共に、地震時、凍土融解/凍結時などの地盤移動によるパイプラインの破壊を防止するため、高い変形性能を有するSBD(Strain−Based Design)対応鋼が望まれている。特に、母材に対しては局部座屈を防止するために変形性能および歪時効特性の向上が要望されている。変形性能は、低YR(降伏比)で、かつ高U.El(一様伸び)である場合などに向上する。変形性能は、製管加工およびコーティング時の加熱によって歪時効を受けて劣化する。ところで、一般に、高強度になるほど、歪時効後に高い変形性能を確保することが困難であると言われている。
こうした要求に対して、化学組成または製造条件を制御して鋼材の耐歪時効特性を高める技術が開示されている。例えば、特許文献1には、「耐歪時効特性に優れた高強度鋼材とその製造方法」が開示されている。また、特許文献2には、「耐歪時効性に優れた高強度ラインパイプ用鋼管及び高強度ラインパイプ用鋼板並びにそれらの製造方法」が開示されている。
特開2002−220634号公報 特開2007−314828号公報
特許文献1で開示された製造方法によれば、良好な耐歪時効特性が得られるとされているが、この方法は、引張強さが600MPa以上の鋼材を対象としているに過ぎない。従って、この方法によって得られる鋼材が、歪時効後において、760MPa以上の強度と良好な一様伸びを有さない場合がある。
特許文献2で開示された製造方法は、歪時効の前後における降伏強度の変化を小さくするものであり、一様伸びの改善を狙ったものではない。このため、特許文献2で開示された製造方法によって得られた鋼板が、歪時効後において、良好な一様伸びを有さない場合がある。
そこで、本発明は、ラインパイプの素材として好適な、特に歪時効後において引張強度が760MPa以上で、かつ一様伸びに優れるラインパイプ用鋼材を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、種々の検討を行った。その結果、次の(a)〜(e)に示す知見を得た。
(a)歪時効前後で良好な変形性能、すなわち低YRおよび高U.Elを得るためには、鋼の化学組成において、C量とSi量は大きい方が良く、Mo量は小さい方が良い。
(b)歪時効前後で良好な変形性能、すなわち低YRや高U.Elを得るためには、圧延前の加熱温度T、圧延仕上温度Tおよび加速冷却停止温度Tは、いずれも低い方が良い。
(c)鋼の化学組成を適正化することに加えて、圧延前の加熱温度T、圧延仕上温度T、加速冷却停止温度Tなどを適正に制御すれば、760MPa以上という高い引張強度と大きな一様伸びを兼備させることが可能である。
(d)図1に示すように、歪時効後のTS×U.El(強度と一様伸びの積)は下記の(1)式に示すP値と相関がある。
P=24+66C+2Si−2Mo−0.005T−0.02T−0.002T (1)
但し、(1)式中の元素記号(C、SiおよびMo)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)、Tは、圧延前の加熱温度(℃)、Tは、圧延仕上温度(℃)、Tは、加速冷却停止温度(℃)をそれぞれ意味する。
(e)P値が5.9以上で、かつ加速冷却停止温度が400℃以下となるように、化学組成および製造条件を調整することによって、TS×U.Elの値を6000以上とすることができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す引張強度が760MPa以上のラインパイプ用鋼材の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.07超〜0.14%、Si:0.2〜0.9%、Mn:1.0〜3.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.5%、Mo:0.04〜0.20%、Nb:0.005〜0.08%、Ti:0.005〜0.04%およびsol.Al:0.005〜0.100%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、S、NおよびOがそれぞれP:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.010%以下およびO:0.005%以下である化学組成を有する鋼片または鋼塊を用いて、(1)式から求められるP値が5.9以上で、かつ加速冷却停止温度が400℃以下となる条件で、加熱、圧延および加速冷却を行う、引張強度が760MPa以上であるラインパイプ用鋼材の製造方法。
P=24+66C+2Si−2Mo−0.005T−0.02T−0.002T (1)
但し、(1)式中の元素記号(C、SiおよびMo)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)、Tは、圧延前の加熱温度(℃)、Tは、圧延仕上温度(℃)、Tは、加速冷却停止温度(℃)をそれぞれ意味する。
(2)鋼片または鋼塊が、さらに質量%で、Cr:1.0%以下、V:0.5%以下およびB:0.01%以下から選択される1種以上を含有する上記(1)のラインパイプ用鋼材の製造方法。
(3)鋼片または鋼塊が、さらに質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下およびMg:0.008%以下から選択される1種以上を含有する、上記(1)または(2)のラインパイプ用鋼材の製造方法。
圧延前の加熱温度とは、加熱炉出側での被圧延材の温度を指す。圧延仕上温度とは、圧延最終パスのロールへの咬みこみ時における被圧延材の温度を指す。また、加速冷却停止温度とは、被圧延材の復熱後の最大到達温度を意味する。これらの被圧延材の温度は、いずれも表面部における平均温度を意味する。
本発明のラインパイプ用鋼材の製造方法によれば、歪時効前後で引張強度が760MPa以上という高強度に加えて、歪時効後の変形性能に優れるラインパイプの素材を製造することができる。
成分・製造条件パラメータP値と歪時効後のTS×U.Elとの関係を示す図
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学組成における各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成について
C:0.07%を超え0.14%以下
Cは、鋼の強度を高めるために必要な元素である。760MPa以上の引張強度を安定して得るために、Cは0.07%を超える含有量とする必要がある。一方、Cの含有量が大きくなり過ぎると溶接割れが起こり易い。従って、Cの含有量を0.07%を超え0.14%以下とした。Cの含有量は、0.08%を超えて含有させるのが好ましい。また、Cの好ましい上限は0.12%である。
Si:0.2〜0.9%
Siは、歪時効前後で良好な変形性能、すなわち低YRおよび高U.Elを得るのに効果がある。これらの効果を確実に得るために、Siを0.2%以上含有させる。しかしながら、Siの含有量が大きくなりすぎると、母材及び溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)の靱性の悪化が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.2〜0.9%とした。Siの含有量は0.3%を超えて含有させるのが好ましく、更に0.5%を超えて含有させるのが好ましい。また、Si含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましい上限は0.75%である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、鋼の強度を高める作用を有する。この効果を充分に得るためにMnを1.0%以上含有させる。一方、その含有量が過大となると溶接割れが起こりやすくなる。また、Mn含有量が大きい場合には本発明が狙いとする良好な変形特性、すなわち、低YR、高U.Elを得ることが難しくなる。したがって、Mnの含有量を1.0〜3.0%とした。Mn含有量の好ましい下限は1.2%であり、より好ましい下限は1.5%である。また、Mn含有量の好ましい上限は2.5%であり、より好ましい上限は2.0%である。
Cu:0.05〜1.0%
Cuは、鋼材の強度を向上させる効果を有するので、0.05%以上含有させる。しかしながら、その含有量が大きいと、鋼材の表面性状や靱性が顕著に悪化する。このため、Cuの含有量を0.05〜1.0%とした。Cu含有量の好ましい下限は0.1%である。また、好ましい上限は0.6%である。さらにCuの含有量は下限を0.2%とするのが好ましく、上限を0.5%とすることがより好ましい。
Ni:0.05〜1.5%
Niは、鋼材の強度を向上させる作用があり、また、靱性を改善する作用もある。これらの効果を発揮させるために、Niを0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、Niの含有量が1.5%を超えると、コストアップに見合う効果が得られない。このため、Niの含有量を0.05〜1.5%とした。Ni含有量の好ましい下限は0.1%である。また、好ましい上限は1.0%である。さらにNiの含有量は下限を0.2%とするのが好ましく、上限を0.6%とすることがより好ましい。
Mo:0.04〜0.20%
Moは、鋼材の強度を向上させる効果を有するので、0.04%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が過大であると、歪時効によるYSの増加が大きくなり、変形特性が損なわれる。また、HAZ靱性悪化および溶接割れが発生し易くなる。そのため、Moの含有量を0.04〜0.20%とした。Mo含有量の好ましい下限は0.05%である。また、好ましい上限は0.15%である。さらにMoの含有量は下限を0.07%とするのが好ましく、上限を0.13%とすることがより好ましい。
Nb:0.005〜0.08%
Nbは、鋼材の強度を向上させる効果を有するとともに、適切な圧延条件と組合せることにより、母材靱性を高める作用もある。このため、Nbは、0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が大き過ぎると、母材とHAZの靱性が悪化する。したがって、Nbの含有量を0.005〜0.08%とした。好ましい下限は0.01%である。また、好ましい上限は0.06%である。さらにNbの含有量は下限を0.02%とするのが好ましく、上限を0.05%とすることがより好ましい。
Ti:0.005〜0.04%
Tiは、Nと共に析出物(TiN)を形成してHAZの靱性を改善するので、0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が0.04%を超えると、母材及びHAZ靱性が悪化する。したがって、Tiの含有量を0.005〜0.04%とした。好ましい下限は0.01%である。好ましい上限は0.03%である。また、歪時効後のYRの増加やU.Elの低下を抑制するため、TiとNの含有量の比(Ti/N)を4.0以上とすることが好ましい。
sol.Al:0.005〜0.100%
Alは、脱酸作用を有する元素であり、またU.Elの改善にも効果があるため、sol.Al(「酸可溶Al」)として0.005%以上含有させる。しかしながら、sol.Alの含有量が大きくなり過ぎると、HAZの靱性が悪化する。したがって、sol.Alの含有量を0.005〜0.100%とした。なお、sol.Alの含有量は下限を0.010%とし、上限を0.060%とすることがより好ましい。
また、本発明の製造方法に供される鋼片または鋼塊の残部の主成分はFeであるが、製造工程の種々の要因により他の成分が含まれることにより、鋼の特性が悪化する可能性がある。そこで、目標とする良好な性能を確保するため、特に不純物中に含まれる下記の成分の含有量を制御する。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。
P:0.02%以下
Pは、靱性悪化の原因となる元素で、その含有量が多くなり、特に、0.02%を超えると、靱性の悪化が著しくなり易い。したがって、Pの含有量を0.02%以下とした。なお、Pの含有量は少ないほうがよく、0.01%以下とすることが好ましい。
S:0.005%以下
Sは、含有量が多くなると延性または靱性に有害な介在物を多く生成する。特に、0.005%を超えると、介在物が多くなって延性の低下や靱性の悪化が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.005%以下とした。なお、Sの含有量は少ないほうがよく、0.003%以下とすることが好ましい。
N:0.010%以下
Nは、含有量が多くなるとHAZの靱性を悪化させる。特に、0.010%を超えるとHAZの靱性悪化が著しくなる。したがって、Nの含有量を0.010%以下とした。なお、Nの含有量は0.009%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以下である。
O:0.005%以下
O(酸素)は、含有量が微量であればフェライト生成核となる酸化物の生成に有効である場合があるものの、含有量が多くなると母材靱性ならびに延性に悪影響を及ぼす。したがって、Oの含有量を0.005%以下とした。なお、Oの含有量は0.002%以下とすることがより好ましい。
本発明の製造方法に供される鋼片または鋼塊には、必要に応じて、下記の元素から選択される1種以上を含有させても良い。
Cr:1.0%以下
Crは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるので、含有させてもよい。ただし、Cr含有量が過剰な場合、溶接割れが起こりやすくなる。したがって、Crを含有させる場合には、その含有量を1.0%以下とする。Crの含有量は0.5%以下とするのが好ましい。上記の効果が顕著となるのは、Crを0.01%以上含有させた場合である。Crの含有量の好ましい下限は0.02%である。
V:0.5%以下
Vは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるので、含有させてもよい。ただし、その含有量が過剰な場合、延性および靱性が悪化するおそれがある。したがって、Vを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。上記の効果が顕著となるのは、0.001%以上含有させた場合である。V含有量の好ましい下限は0.005%である。
B:0.01%以下
Bは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるので、含有させてもよい。ただし、その含有量が過剰な場合、延性および靱性が悪化するおそれがある。したがって、Bを含有させる場合には、その含有量を0.01%以下とする。B含有量は0.002%未満とするのが好ましい。上記の効果が顕著となるのは、Bを0.0001%以上含有させた場合である。B含有量の好ましい下限は0.0004%である。
Ca:0.01%以下、
REM:0.02%以下
Ca及びREMは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、低温靱性を向上させるのに有効な元素であるので、含有させてもよい。ただし、含有量が過剰な場合、Ca及びREMを含む介在物が粗大化し、クラスター化することがあり、鋼の清浄度を害し、溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。このため、Ca量及びREM量の上限は、それぞれ、0.01%以下及び0.02%以下とすることが好ましい。特に溶接性の観点よりCaの含有量の上限は0.006%以下にすることが好ましい。上記の効果を得るためには、Caは0.0005%以上、REMは0.001%以上含有させるのが好ましい。なお、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、これらの元素から選択される1種以上を含有させることができる。REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
Mg:0.008%以下
Mgは、微細に分散した酸化物を形成し、HAZの粒径の粗大化を抑制して低温靭性を向上させる効果を発揮する。この効果を得るためにMgを含有させてもよい。ただし、Mgを0.008%を超えて含有させると、粗大な酸化物を生成し靭性を劣化させることがある。このため、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.008%以下とする。上記の効果を得るためには、Mgを0.0005%以上含有させるのが好ましい。
(B)製造条件について
化学組成が上述したものであっても、歪時効後の引張強度および一様伸びを確保することができない場合がある。したがって、下記(1)式から求められるPの値が5.9以上になる条件を満たす必要がある。
P=24+66C+2Si−2Mo−0.005T−0.02T−0.002T (1)
但し、(1)式中の元素記号(C、SiおよびMo)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)、Tは、圧延前の加熱温度(℃)、Tは、圧延仕上温度(℃)、Tは、加速冷却停止温度(℃)をそれぞれ意味する。
すなわち、P値が5.9を下回る場合には、TS×U.Elの値が6000以上という良好な特性を得ることが難しくなる。また、TS×U.Elの値のさらなる向上(6800以上)のためには、P値を8.5以上とすることが好ましい。
圧延後の加速冷却(単に「冷却」ともいう。)は、良好なTS×U.Elの値を確保するため、冷却停止温度は400℃以下とする必要がある。また、冷却停止温度を400℃以下とすることによって、低YRを得ることも容易になる。
製造条件については、上記の条件を満足すればよいが、それぞれの工程におけるより好ましい条件を以下に説明する。
圧延前の加熱温度は、850℃以上とするのが好ましい。このような温度にスラブを加熱することによって、鋼材の熱間圧延が容易となる。圧延前の加熱温度は、950℃以上とするのがより好ましい。但し、スラブの加熱温度が高すぎると、(1)式に示すP値が小さくなり、変形性能が低下する。さらに、オーステナイト結晶粒が粗大化して低温靱性が劣化することがある。したがって、加熱温度は1200℃以下とするのが望ましい。また、加熱温度は1100℃以下とするのがより望ましい。
圧延は、900℃以下の温度域における合計圧下率が50%以上となる条件で行うことが好ましい。また、圧延仕上温度は、850〜700℃とすることが望ましい。
900℃以下の温度域における合計圧下率を50%以上とすることによって、オーステナイトに残留ひずみを確実に与えることができ、良好な靱性を確保することが容易になる。900℃以下の温度域における合計圧下率は75%以上であればより好ましい。ここで、「900℃以下の温度域における合計圧下率」とは、{(900℃に達した時点の厚さ)−(最終厚さ)}/(900℃に達した時点の厚さ)×100(%)を意味する。
さらに、圧延仕上温度を850〜700℃とすることによって、良好な強度および靱性がより確実に得られる。すなわち、圧延仕上温度が700℃未満の場合には、鋼板の強度が不足することがあり、一方、850℃を超える場合には良好な靱性の確保が難しくなることがある。圧延仕上温度は、730℃以上であることがより好ましい。また、圧延仕上温度は800℃以下であることがより好ましい。
圧延後の加速冷却は、冷却開始温度を850〜700℃とすることが好ましい。
圧延後の加速冷却は、所定の引張強度を得るために行うものである。冷却開始温度が700℃未満では、この効果が小さくなることがある。また、冷却開始温度が850℃を超えると、良好な靱性が得られない場合がある。冷却開始温度の上限は、800℃とするのが好ましい。下限は、750℃とするのが好ましい。
なお、水素割れの発生を抑止するためには、冷却停止温度は200℃以上とするのが好ましい。また、冷却停止後は、放冷または徐冷することが好ましい。
圧延後の加速冷却は、冷却速度を10℃/s以上とすることが好ましい。冷却速度が10℃/s未満では、所定の引張強度を確保するのが難しい場合がある。所定の引張強度をより確実に得るためには、冷却速度を20℃/s以上とするのが好ましい。鋼板の良好な延性を確保するためには、冷却速度を70℃/s以下とするのが好ましい。
なお、上述の各温度は、被圧延材の表面部における平均温度を指し、「冷却速度」は、冷却の開始時と停止時における当該材の表面部の温度差を冷却時間で除した値を指す。ここで、冷却停止時における温度とは、復熱後の最大到達温度を意味する。ただし、冷却停止温度が200℃未満の場合には、当該材の板厚方向1/4(巾方向1/2、かつ長さ方向1/2)の位置における温度を用いて、冷却の開始から200℃までの冷却速度を算出するものとする。また、加速冷却時間とは、例えば水槽で冷却を行う場合は、浸漬時間を意味する。
本発明で製造された鋼板を管状に成形し、突合せ部を接合し、必要に応じて、拡管及び防食のためのコーティングを施すことによって、ラインパイプを製造することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する厚さが140mmの鋼片を用いて、表2に示す製造条件で加熱、圧延及び加速冷却(水冷)を行い、厚さ19mmの鋼板を得た。なお、表2に示した各温度は、放射温度計を用いて測定した各パスの入側における被圧延材の表面温度である。また、各パス出側の鋼板の厚さは、1パス目:130mm、2パス目:110mm、3パス目:92mm、4パス目:76mm、5パス目:64mm、6パス目:54mm、7パス目:45mm、8パス目:38mm、9パス目:32mm、10パス目:27mm、11パス目:23mm、12パス目:21mm、13パス目:19mmとした。
Figure 0005245921
Figure 0005245921
得られた各鋼板について、引張特性および衝撃特性を調査した。
引張特性は、平行部の直径が8.5mm、標点距離42.5mmの丸棒引張試験片を、板厚中央部から圧延方向に対して平行に採取し、室温で引張試験を実施して調査した。具体的には、0.5%耐力、引張強度、一様伸び、全伸び及び絞りを求め、これらの結果から、降伏比(0.5%耐力/引張強度)を算出した。
引張試験片に0.5%の引張予歪(公称歪)を与えた後、ソルトバスにて250℃で5分間の熱処理を行い、時効後の引張特性を同様に調査した。本条件は、通常の製管、コーティングによる歪時効条件よりも厳しい(すなわち、歪時効の程度が大きく、変形性能が損なわれやすい)条件である。
衝撃特性は、JIS Z 2242(2005)に記載のVノッチ試験片を板厚中央部から圧延方向に対して垂直に採取して、シャルピー衝撃試験を行い、破面遷移温度及び−80℃での吸収エネルギーを求めた。
上記の各試験結果をP値とともに表3に示す。
Figure 0005245921
表3に示すように、本発明で規定する条件を満たすNo.2〜5、8〜10、12〜21は、TS×U.Elが6000以上であり、引張強度と一様伸びのバランスに優れている。一方、No.1およびNo.7は、化学組成が本発明で規定される条件を満たしていない。No.11は、水冷停止温度が440℃と高く、本発明で規定される条件から外れる。No.6は、化学組成が本発明で規定される条件を満たしておらず、パラメータP値が5.8と小さい。No.22は、化学組成および水冷停止温度は本発明で規定される範囲内にあるが、P値が5.6と小さい。このため、これらの鋼板はTS×U.Elが低い。
以上のとおり、耐歪時効特性に優れる、引張強度が760MPa以上のラインパイプ用鋼材を本発明の方法によって製造することが可能である。この鋼材は、天然ガスや原油を大量に輸送するパイプラインに使用される大径の高強度高靱性ラインパイプの素材として好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.07%を超え0.14%以下、Si:0.2〜0.9%、Mn:1.0〜3.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.5%、Mo:0.04〜0.20%、Nb:0.005〜0.08%、Ti:0.005〜0.04%およびsol.Al:0.005〜0.100%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、S、NおよびOがそれぞれP:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.010%以下およびO:0.005%以下である化学組成を有する鋼片または鋼塊を用いて、(1)式から求められるP値が5.9以上で、かつ加速冷却停止温度が400℃以下となる条件で、加熱、圧延および加速冷却を行うことを特徴とする引張強度が760MPa以上であるラインパイプ用鋼材の製造方法。
    P=24+66C+2Si−2Mo−0.005T−0.02T−0.002T (1)
    但し、(1)式中の元素記号(C、SiおよびMo)は、それぞれの元素の鋼中含有量(質量%)、Tは、圧延前の加熱温度(℃)、Tは、圧延仕上温度(℃)、Tは、加速冷却停止温度(℃)をそれぞれ意味する。
  2. 鋼片または鋼塊が、さらに質量%で、Cr:1.0%以下、V:0.5%以下およびB:0.01%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のラインパイプ用鋼材の製造方法。
  3. 鋼片または鋼塊が、さらに質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下およびMg:0.008%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のラインパイプ用鋼材の製造方法。
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