JP2007270194A - 耐sr特性に優れた高強度鋼板の製造方法 - Google Patents

耐sr特性に優れた高強度鋼板の製造方法 Download PDF

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純二 嶋村
Nobuyuki Ishikawa
信行 石川
Mitsuhiro Okatsu
光浩 岡津
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Abstract

【課題】API X100グレード以上の高強度を有し、かつ多量の合金元素を添加することなく、優れた耐SR特性を示す鋼板を製造することができる、耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法を提供すること。
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.07%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.5〜2.5%、Mo:0.1〜0.5%、Al:0.08%以下を含有し、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.07%、V:0.005〜0.1%の1種または2種以上を含有し、定められた式で表わされる、Ceq値、および原子%のMo、Ti、Nb、Vの合計量P値に対して、9×Ceq+4×P≧4.8を満足し、かつ、[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])が0.6〜1.7の鋼を、加熱、熱間圧延した後、加速冷却を行い、その後直ちに再加熱を行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼管や圧力容器等の製造に用いるAPI X100グレード以上の強度を有する高強度鋼板に関し、特に溶接後に行う応力除去焼鈍(SR)後においても優れた強度と靭性を有する耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法に関する。
石油またはガスの採掘用等に用いられるライザー鋼管は円周溶接によって合金元素量が非常に多い鍛造品(例えばコネクタ等)を溶接する場合が多い。また、発電プラント等の配管用鋼管やその他強度部材として用いられる鋼材または鋼板はCr−Mo鋼等と溶接接合される場合が多い。このような場合には、通常、溶接による残留応力除去を目的としてSR処理(応力除去焼鈍)が施されるが、熱処理によって強度低下や靭性低下を招くことが懸念されるため、SR処理が施される鋼管や鋼材に対してはSR処理後も強度、靭性が確保されること、すなわち耐SR特性に優れることが要求される。また近年、圧力上昇による操業効率向上や素材コスト削減の観点から、API X100グレード以上の高強度鋼管または鋼材に対する要求も高まっている。このような耐SR特性に優れた高強度鋼管に関す技術としては特許文献1,2に開示されたようなものがある。
しかし、特許文献1に開示されている技術ではSR処理による鋼板の強度低下をSR時のCr炭化物の析出によって補っているため、多量のCrの添加が必要となり、素材コストが高いだけでなく、溶接性や靭性の低下が問題となる。一方、特許文献2の技術は鋼管を製造する際のシーム溶接金属の特性改善を主眼においており、母材に対しては特段の配慮がなされておらず、SR処理による母材強度の低下が避けられない。
特開平11−50188号公報 特開2001−158939号公報
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、API X100グレード以上の高強度を有し、かつ多量の合金元素を添加することなく、優れた耐SR特性を示す鋼板を製造することができる、耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の(1)〜(2)を提供する。
(1)質量%で、C:0.03〜0.07%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.5〜2.5%、Mo:0.1〜0.5%、Al:0.08%以下、を含有し、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.07%、V:0.005〜0.1%の1種または2種以上を含有し、下記(1)式で表わされるCeq値、下記(2)式で表わされる原子%のMo、Ti、Nb、Vの合計量P値に対して、9×Ceq+4×P≧4.8を満足し、かつ、[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])が0.6〜1.7の鋼を、1100〜1300℃の温度に加熱し、750℃以上の圧延終了温度で熱間圧延した後、20℃/s以上の冷却速度で400℃未満の温度まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で550〜700℃まで再加熱を行なうことを特徴とする耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/12+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(1)
(ただし、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。)
P値=Mo+Ti+Nb+V ・・・(2)
(ただし、(2)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。)
(2)質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0035%、REM:0.0005〜0.01%、B:0.001%以下から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする上記(1)に記載の耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
一般に、溶接鋼管用の鋼板や溶接構造用の鋼板は溶接性の観点から化学成分が厳しく制限されるため、X65グレード以上の高強度鋼板は熱間圧延後に加速冷却されて製造されている。そのため、ミクロ組織はベイナイト主体か、またはベイナイト中にマルテンサイト(MA)を含んだ組織となるが、このような組織の鋼にSR処理を施すと、ベイナイト中のセメンタイト組織またはマルテンサイトが焼戻しにより分解するため強度低下は避けられない。また、焼戻しによる強度低下を補うために、SR時にCr炭化物等を析出させる方法があるが、炭化物が容易に粗大化するために靭性低下を生じてしまう。このように、変態強化によって、SR後でも強度、靭性を確保することには限界がある。
そこで、本発明者らは優れた耐SR特性と高強度が両立するミクロ組織形態について鋭意研究を行った結果、以下のa)〜c)の知見を得るに至った。
a)鋼のミクロ組織を、SR処理の前後において形態変化を生じないミクロ組織とすればよい。そのためにはSR処理によって分解するセメンタイトまたはマルテンサイト(MA)を抑制し、鋼中の炭素を熱的に安定な微細炭化物として分散析出させることによって強化すればよい。
b)鋼中で析出する種々の析出物について検討した結果、Ti、Nb、Vの1種または2種以上と、Moとからなる複合炭化物は適正な成分バランスの元では、10nm以下の極めて微細な析出物となり、かつ熱的にも安定である。
c)上記b)の微細炭化物を析出させるためには、特定の合金成分を有する鋼を用いて、熱間圧延後に加速冷却によって冷却する過程で、ベイナイト変態終了温度よりも低い温度で冷却を停止し、直ちに急速再加熱を行えばよい。このような熱履歴を受けた鋼の金属組織は、冷却停止直後、MAを含まない転移密度の高いベイナイト組織であるが、Moによってセメンタイトの生成が抑制され、炭素が過飽和な状態で存在するため、その後の再加熱によってMo、Ti、NbまたはVと結合し微細炭化物として転位上に優先的に析出する。
上記構成の本発明は、このような知見に基づいたものであり、本発明の方法によって上記のようなTi、Nb、Vの1種または2種以上と、Moとからなる複合炭化物が分散析出した鋼板を得ることができる。このような鋼板は析出強化によって高強度が得られるだけでなく、700℃程度以下の加熱によっても微細炭化物が分解または粗大化することがないため、SR処理を行なう場合、SR処理後もその高い強度が維持されるのである。
本発明によれば、鋼のミクロ組織をSR処理の前後において形態変化を生じないミクロ組織とすることにより、API X100グレード以上の高強度を有し、かつ多量の合金元素を添加することなく、優れた耐SR特性を示す鋼板を製造することができる、耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の高強度鋼板について詳しく説明する。
[化学成分組成]
まず、本発明の高強度鋼板の化学成分組成について説明する。以下の説明において、%で示す単位は全て質量%である。
・C:0.03〜0.07%
Cは、鋼の強度を増加する元素であり、所望の組織を得て、所望の強度、靭性とするためには、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.07%を超えて含有すると溶接性が劣化し、溶接割れが生じやすくなるとともに、母材靭性および溶接熱影響部(HAZ)靭性が低下する。このため、C含有量は0.03〜0.07%に規定する。なお、好ましくは0.04〜0.06%である。
・Si:0.01〜0.5%
Siは、脱酸剤として作用し、さらに固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、0.01%未満ではその効果がなく、0.5%を超える含有は、HAZ靭性を著しく劣化させる。このため、Si含有量を0.01〜0.5%とする。なお、好ましくは0.05〜0.2%である。
・Mn:1.5〜2.5%
Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともに、強度・靭性を向上させる作用を有する元素であり、1.5%以上の含有を必要とするが、2.5%を超える含有は、溶接性を劣化させる恐れがある。このため、Mn含有量を1.5〜2.5%とする。なお、好ましくは1.8〜2.0%である。
・Al:0.08%以下
Alは、製鋼時の脱酸剤として作用し、0.08%を超える含有は、靭性の低下を招く。このため、Al含有量を0.08%以下とする。なお、好ましくは0.01〜0.05%である。
・Mo:0.1〜0.5%
Moは、本発明において重要な元素であり、0.1%以上含有させることで、熱間圧延後冷却時のパーライト変態を抑制しつつ、Ti、Nb、Vとの微細な複合析出物を形成し、強度上昇に大きく寄与する。しかし、0.5%を超えると溶接熱影響部靭性の劣化を招く。このため、Mo含有量を0.1〜0.5%とする。
・Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.07%、V:0.005〜0.1%の1種または2種以上
これらは、以下に示すようにいずれも同様の作用を有するためこれらの1種または2種以上を含有される。
Tiは、0.005%以上添加することで、Moと複合析出物を形成し、強度上昇に大きく寄与する。しかし、0.035%を超える含有は溶接熱影響部靭性および母材靭性の劣化を招く。このため、Tiを添加する場合には、その含有量を0.005〜0.035%に規定する。
Nbは、組織の微細粒化により靭性を向上させるが、Moと共に複合析出物を形成し、強度上昇に寄与する。しかし、0.005%未満では効果がなく、0.07%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。このため、Nbを添加する場合には、その含有量は0.005〜0.07%とする。
VもNbと同様にMoと共に複合析出物を形成し、強度上昇に寄与する。しかし、0.005%未満では効果がなく、0.1%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。このため、Vを添加する場合には、その含有量を0.005〜0.1%とする。
上記成分組成を有する本発明の高強度鋼板は、さらに以下の式を満たすように規定する。
・9×Ceq値+4×P値≧4.8
Ceq値は合金元素の質量%を用いて下記(1)式で示され、P値は下記(2)式で示されるが、9×Ceq値+4×P値の値が4.8未満ではAPI X100グレードの高強度が得られないため、9×Ceq値+4×P値は4.8以上に規定する。
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/12+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(1)
(ただし、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。)
P値=Mo+Ti+Nb+V ・・・(2)
(ただし、(2)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。)
なお、上記元素の原子%での合計量は、鋼に含まれるMo、Ti、Nb、Vの原子数の和と、Fe、Mo、Ti、Nb、Vおよび他の合金元素の全原子数との比で求められるが、Mo、Ti、Nb、Vの質量%での含有量を用いた下記(3)式により求めることもできる。下記(3)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9)/(100/55.85)×100 ・・・(3)
・[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V]):0.6〜1.7
本発明鋼における高強度化はMoとTi、Nb、Vを含む複合析出物(炭化物)によるものである。この複合析出物による析出強化を有効に利用するためには、C量と炭化物形成元素であるMo、Ti、Nb、V量の関係が重要であり、これらの元素を適正なバランスのもとで添加することによって、熱的に安定でかつ非常に微細な複合析出物を得ることができる。このときCの原子%での含有量と、Mo、Ti、Nb、V量の原子%での含有量の合計量の比である[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])の値は0.6〜1.7とする。ここで、[C]、[Mo]、[Ti]、[Nb]、[V]はその成分の原子%の含有量(at%)を示す。[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])の値が0.6未満または1.7を超える場合はいずれかの元素量が過剰であり、本発明の複合析出物以外の硬化組織が過度に形成されて、耐SR特性の劣化や、靭性の劣化を招くため、[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])の値は0.6〜1.7に規定する。
なお、質量%の含有量を用いる場合は、以下の(4)式を用いて計算して、その値を0.6〜1.7とする。下記(4)式の元素記号は各含有元素の質量%である。
(C/12.01)/(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9) ・・・(4)
本発明では鋼板の強度や靭性をさらに改善する目的で、以下に示すCu、Ni、Cr、Caの1種または2種以上を含有してもよい。
・Cu:0.5%以下
Cuは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く添加すると溶接性が劣化するため、Cuを添加する場合には、その含有量を0.5%以下とする。
・Ni:0.5%以下
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く添加すると耐SR特性が低下するため、Niを添加する場合には、その含有量を0.5%以下とする。
・Cr:0.5%以下
Crは、Mnと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素であるが、多く添加すると溶接性を劣化するため、Crを添加する場合には、その含有量を0.5%以下とする。
・Ca:0.0005〜0.0035%
Caは、硫化物系介在物の形態制御による靭性向上に有効な元素であるが、0.0005%未満ではその効果が十分でなく、0.0035%を超えて添加しても効果が飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させる。このため、Caを添加する場合には、その含有量を0.0005〜0.0035%とする。
・REM:0.0005〜0.01%
REMもまた鋼中の硫化物系介在物の形態制御による靭性向上に有効な元素であるが、0.0005%未満ではその効果が十分でなく、0.01%を超えて添加しても効果が飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させる。このため、REMを添加する場合には、その含有量を0.0005〜0.01%とする。
[製造条件]
次に、上記化学成分組成の鋼を用いた本発明の高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明は、加速冷却時のベイナイト変態による変態強化と、加速冷却後の再加熱時に析出する微細炭化物による析出強化を複合して活用することにより、合金元素を多量に添加することなく高強度化が可能で、さらにSR処理を行なう場合にも、SR処理時に微細炭化物はそのまま熱的に安定であるので、SR処理後でもその強度を確保することが可能となる技術である。
本発明では、加速冷却によりベイナイト変態終了温度以下よりも低い温度で冷却を停止し、直ちに急速再加熱することにより、変態強化と析出強化をもっとも有効に複合して活用することが可能となる。
すなわち、本発明では、上記の成分組成を有する鋼について、加熱温度1100〜1300℃、圧延終了温度750℃以上で熱間圧延を行い、その後20℃/s以上の冷却速度で400℃未満の温度まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で550〜700℃の温度まで再加熱を行うことで金属組織をベイナイトの単相組織とし、Moと、Ti、Nb、Vの1種または2種以上とからなる微細な複合炭化物をベイナイト相中に分散析出することにより耐SR特性に優れた高強度鋼板を得る。ここで、温度は鋼板の平均温度とする。
また、冷却速度は板厚中心部の平均冷却速度とする。以下、各製造条件について説明する。
・加熱温度:1100〜1300℃
加熱温度が1100℃未満では炭化物の固溶が不十分で必要な強度が得られず、1300℃を超えると靭性が劣化するため、加熱温度を1100〜1300℃とする。
・圧延終了温度:750℃以上
圧延終了温度が低いと、加速冷却前に軟質なフェライト相が生成し強度が低下するため、圧延終了温度を750℃以上とする。
・冷却速度:20℃/s以上
この場合の冷却は、圧延終了後直ちに行う。冷却速度が20℃/s未満では軟質なフェライト相やセメンタイトの析出を生じるため、加速冷却後に十分な強度が得られない。また、セメンタイトの析出によって、固溶C量が減少するため、SR処理時の微細炭化物析出による強化が得られない。よって、圧延終了後の冷却速度を20℃/s以上とする。このときの冷却方法については製造プロセスによって任意の冷却設備を用いることができる。
・冷却停止温度:400℃未満
本発明では圧延終了後加速冷却によりCが過飽和に固溶したベイナイト単相とすることによって、その後の急速加熱時に微細析出物による析出強化が得られる。しかし、冷却停止温度が400℃以上では、ベイナイト変態が完了しないため、加速冷却後に十分な強度が得られないだけでなく、固溶C量が不足し急速加熱時の微細炭化物の析出が不十分となり、SR後の強度が得られない。よって、加速冷却停止温度を400℃未満とする。
・再加熱条件:加熱冷却後直ちに、0.5℃/s以上の昇温速度で550〜700℃の温度まで行う。
このプロセスは本発明における重要な製造条件である。析出強化に寄与する微細析出物は、急速再加熱時に析出する。このような微細析出物を得るためには、加速冷却後直ちに550〜700℃の温度域まで急速再加熱する必要がある。昇温速度が0.5℃/s未満では、目的の再加熱温度に達するまでに長時間を要するため製造効率が悪化し、また粗大なセメンタイトが粒界上に析出するため、微細析出物の分散析出が得られず十分な強度を得ることができないばかりか、靭性が劣化する。したがって、昇温速度を0.5℃/s以上とする。また、再加熱温度が550℃未満では析出量が十分でなく、十分な析出強化が図れず、700℃を超えると析出物が粗大化し十分な強度・靭性が得られないため、再加熱の温度域を550〜700℃に規定する。なお、再加熱温度において、特に温度保持時間を設定する必要はない。また、本発明の製造方法を用いれば再加熱後直ちに冷却しても、微細析出による高い強度が得られる。さらに、再加熱後の冷却を空冷としても、微細析出物の粗大化は起こらない。
上記のように加速冷却後の再加熱を行うための設備として、加速冷却を行うための冷却設備の下流側に加熱装置を設置することができる。加熱装置としては、鋼板の急速加熱が可能であるガス燃焼炉や誘導加熱装置を用いることが好ましい。誘導加熱装置は均熱炉等に比べて温度制御が容易でありコストも比較的低く、冷却後の鋼板を迅速に加熱できるので特に好ましい。また複数の誘導加熱装置を直列に連続して配置することにより、ライン速度や鋼板の種類・寸法が異なる場合にも、通電する誘導加熱装置の数を任意に設定するだけで、昇温速度、再加熱温度を自在に操作することが可能である。
図1は、本発明の製造方法を実施するための設備の一例である。図1に示すように、圧延ライン1には上流から下流側に向かって熱間圧延機3、加速冷却装置4、インライン型誘導加熱装置5、ホットレベラー6が配置されている。インライン型誘導加熱装置5あるいは他の熱処理装置を、圧延設備である熱間圧延機3およびそれに引き続く冷却設備である加速冷却装置4と同一ライン上に設置することによって、圧延、冷却、終了後迅速に再加熱処理が行なえるので、圧延冷却後の鋼板温度を過度に低下させることなく加熱することができる。
[ミクロ組織]
上記した製造条件で得られる厚鋼板のミクロ組織について説明する。
本発明の鋼板のミクロ組織は、板厚方向位置に拠らず、10kgfでのビッカース硬度が250以上のベイナイト組織を主体とし、円相当径10nm以下のNb主体の(Nb、V、Mo、Ti)複合炭窒化物が1μmあたり1個以上分散している。このミクロ組織は700℃以下のSR前後においてほとんど変化することがない。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜M)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて板厚20mmの厚鋼板(No.1〜18)を製造した。
Figure 2007270194
加熱したスラブを熱間圧延した後、直ちに水冷型の加速冷却設備を用いて冷却を行った。各鋼板(No.1〜18)の製造条件を表2に示す。
Figure 2007270194
以上のようにして製造した鋼板の引張特性は、圧延方向と同一方向の全厚試験片を引張試験片として引張試験を行い、引張強度を測定することにより得た。また、降伏強度690MPa以上、引張強度760MPa以上を本発明に必要な強度とした。また、鋼板の靭性は、板厚中央位置からJIS Z2202のVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を実施して評価した。そして、−10℃でのシャルピー吸収エネルギーが200J以上のものを良好とした。溶接熱影響部(HAZ)靭性については、再現熱サイクル装置によって入熱40kJ/cmに相当する熱履歴を加えた試験片を用いてシャルピー試験を行った。そして、−10℃でのシャルピー吸収エネルギーが100J以上のものを良好(○)、100J未満のものを不良(×)とした。
また、耐SR特性を調査するため、ガス雰囲気炉を用いて各鋼板のSR処理を行なった。このときの熱処理条件は650℃で2時間とし、その後炉から取り出し空冷によって室温まで冷却した。そして、SR処理前後の鋼板の引張特性およびシャルピー衝撃特性を測定した。測定結果を表2に併せて示す。
表2において、本発明例であるNo.1〜9はいずれも、化学成分および製造方法が本発明の範囲内であり、SR処理の前後で、降伏強度690MPa以上、引張強度760MPa以上の高強度であり、さらに母材靭性および溶接熱影響部靭性も良好であった。No.10〜14は、化学成分は本発明の範囲内であるが、製造方法が本発明の範囲外であるため、微細炭化物が分散析出しない場合があり、母材強度あるいは母材靭性が劣化した。No.15〜18は化学成分が本発明の範囲外であるので、十分な母材強度・靭性が得られないか、あるいは溶接熱影響部靭性が劣っていた。
本発明によれば、API X100グレード以上の高強度を有し、かつSR処理後も強度靭性の優れた鋼板が得られる。このため、特にSR処理を行なう可能性のある鋼管や圧力容器等への利用に好適である。
本発明の製造方法を実施するための製造ラインの一例を示す概略図。
符号の説明
1:圧延ライン
2:鋼板
3:熱間圧延機
4:加速冷却装置
5:インライン型誘導加熱装置
6:ホットレベラー

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.07%、
    Si:0.01〜0.5%、
    Mn:1.5〜2.5%、
    Mo:0.1〜0.5%、
    Al:0.08%以下、
    を含有し、
    Ti:0.005〜0.035%、
    Nb:0.005〜0.07%、
    V:0.005〜0.1%
    の1種または2種以上を含有し、下記(1)式で表わされるCeq値、下記(2)式で表わされる原子%のMo、Ti、Nb、Vの合計量P値に対して、9×Ceq+4×P≧4.8を満足し、かつ、[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])が0.6〜1.7の鋼を、1100〜1300℃の温度に加熱し、750℃以上の圧延終了温度で熱間圧延した後、20℃/s以上の冷却速度で400℃未満の温度まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で550〜700℃まで再加熱を行なうことを特徴とする耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
    Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/12+(Cr+Mo+V)/5 ・・・(1)
    (ただし、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。)
    P値=Mo+Ti+Nb+V ・・・(2)
    (ただし、(2)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。)
  2. 質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0035%、REM:0.0005〜0.01%、B:0.001%以下から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の耐SR特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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