JP5181697B2 - 耐pwht特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐pwht特性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼管や圧力容器等に好適なAPI X100グレード以上の強度を有する高強度鋼板、特に溶接後熱処理(PWHT)を行った後においても優れた強度と靭性を有する耐PWHT特性に優れた高強度鋼板に関する。
石油やガスの掘削等に用いられるライザー鋼管は、円周溶接によって合金元素量が非常に多い鍛造品(例えばコネクタ等)を溶接接合する場合が多い。また、発電プラント等の配管用鋼管やその他強度部材として用いられる鋼材または鋼板は、Cr−Mo鋼等と溶接接合される場合が多い。このような場合には、通常、溶接による残留応力除去を目的としてPWHT処理(溶接後熱処理)が施されるが、熱処理によって強度低下や靭性低下を招くことが懸念されるため、PWHT処理が施される鋼管や鋼材に対してはPWHT処理後も強度、靭性が確保されることが要求される。また近年、圧力上昇による操業効率向上や素材コスト削減の観点から、API
X100グレード以上の高強度鋼管または鋼材に対する要求も高まっている。
このような耐PWHT特性に優れた高強度鋼管に関する従来技術としては、特許文献1,2に開示されたようなものがある。
特開平11−50188号公報 特開2001−158939号公報
しかし、特許文献1に記載の技術では、PWHT処理による強度低下をPWHT時のCr炭化物の析出によって補っているため、多量のCrの添加が必要となり、素材コストが高いだけでなく、溶接性や靭性の低下が問題となる。一方、特許文献2に記載の技術は、鋼管を製造する際のシーム溶接金属の特性改善を主眼においており、母材に対しては特段の配慮がなされておらず、PWHT処理による母材強度の低下が避けられないため、制御圧延や加速冷却によってPWHT前の強度を高めておく必要がある。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、API X100グレード以上の高強度を有するとともに、多量の合金元素の添加なしに、優れた耐PWHT特性を示す高強度鋼板および高強度鋼管を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような優れた特性を有する高強度鋼板を安定的に製造することができる製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.03〜0.07%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.5〜2.5%、Mo:0.1〜0.5%、Al:0.08%以下、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、下記(1)式で表わされるCeq値と下記(2)式で表わされるP値が下記(i)式を満足し、
9×Ceq値+4×P値≧4.8 …(i)
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/12+(Cr+Mo+V)/5
…(1)
但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
P値=[Mo]+[Ti]+[Nb]+[V] …(2)
但し、(2)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。
且つ下記(ii)式を満足する成分組成を有し、
0.6≦[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])≦1.7
…(ii)
但し、(ii)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。
鋼板ミクロ組織中の島状マルテンサイト(M-A
constituent)分率が2%(面積率)以下であるベイナイト組織からなり、円相当径が10nm以下であって、MoとTiおよび/またはNbを含む複合炭化物が1μmあたり30個以上分散し、当該複合炭化物の総析出量が0.03質量%以上であることを特徴とする、耐PWHT特性に優れた高強度鋼板。
[2]上記[1]の高強度鋼板において、さらに、質量%で、V:0.005〜0.1%を含有し、MoとTiおよび/またはNbを含む複合炭化物が、さらにVを含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐PWHT特性に優れた高強度鋼板。
[3]上記[1]または[2]の高強度鋼板において、さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0035%、REM:0.0005〜0.01%、B:0.002%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、耐PWHT特性に優れた高強度鋼板。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの成分組成を有する鋼を、加熱温度:1100〜1300℃、800℃以下での累積圧下率:70%以上で熱間圧延し、その後、冷却開始温度:700℃以上、冷却速度:20℃/s以上で300℃未満の温度まで加速冷却し、その後直ちに、0.5℃/s以上10℃/s未満の昇温速度で550〜700℃の温度まで再加熱することを特徴とする、耐PWHT特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[5]上記[1]〜[3]のいずれかの鋼板を素材とする鋼管であって、鋼板を長手方向で筒状に成形し、その突合せ部を管内外面から1層ずつ長手方向に溶接して得られることを特徴とする高強度鋼管。
本発明の高強度鋼板は、API X100グレード以上の高強度を有し、且つPWHT処理後も優れた強度、靭性を維持することができる。このため、特にPWHT処理が行われる鋼管や圧力容器等の材料として有用な鋼板である。
また、本発明の製造方法は、そのような優れた特性を有する高強度鋼板を安定的に製造することができる。
本発明者らは、耐PWHT特性の向上と高強度を両立させるために、PWHT処理による鋼材のミクロ組織変化について詳細な検討を行った。一般に溶接鋼管用の鋼板や溶接構造用の鋼板は、溶接性の観点から化学成分が厳しく制限されるため、X65グレード以上の高強度鋼板は熱間圧延後に加速冷却されて製造されている。そのため、ミクロ組織はベイナイト主体か、またはベイナイト中に島状マルテンサイト(M-A constituent)を含んだ組織となるが、このような組織の鋼にPWHT処理を施すと、ベイナイト中の島状マルテンサイト組織が焼戻しにより分解するため強度低下は避けられない。また、焼戻しによる強度低下を補うために、PWHT処理時にCr炭化物等を析出させる方法があるが、炭化物が容易に粗大化するために靭性低下を生じてしまう。このように変態強化によってPWHT処理後でも強度、靭性を確保することには、限界があることが明白である。そこで、本発明者らは、優れた耐PWHT特性が得られるミクロ組織形態に関して鋭意研究を行った結果、以下の(a)〜(c)の知見を得るに至った。
(a)鋼のミクロ組織を、PWHT処理の前後において形態変化を生じないミクロ組織とすればよい。そのためには、PWHT処理によって分解する島状マルテンサイトを2%以下に抑制し、鋼中の炭素を熱的に安定な微細炭化物として分散析出させることによって強化すればよい。
(b)鋼中で析出する種々の析出物について検討した結果、Ti、NbとMoとからなる複合炭化物、或いはさらにVを含む複合炭化物は、適正な成分バランスの下ではサイズが10nm以下の極めて微細な析出物となり、且つ熱的にも安定であることが判った。特に、そのような微細な複合炭化物が鋼中に1μmあたり30個以上分散し、且つその総析出量が0.03質量%以上であれば、PWHT処理後の強度低下が抑制できる。
(c)上記(b)の微細炭化物を析出させるためには、特定の合金成分を有する鋼を用いて、熱間圧延後に加速冷却によって冷却する過程で、ベイナイト変態終了温度よりも低い温度で冷却を停止し、直ちに急速再加熱を行えばよい。
上記(c)のような熱履歴を受けた鋼の金属組織は、冷却停止直後、島状マルテンサイトが少なく、転位密度の高いベイナイト組織となるが、Moによってセメンタイトの生成が抑制され、炭素が過飽和な状態で存在するため、その後の再加熱によってTi、NbとMoとからなる複合炭化物、或いはさらにVを含む複合炭化物として転位上に優先的に析出する。
上記のようなTi、NbとMoとからなる複合炭化物、或いはさらにVを含む複合炭化物が分散析出した鋼は、析出強化によって高強度が得られるだけでなく、700℃程度以下の加熱によっても微細炭化物が分解または粗大化することがないため、PWHT処理を行った後もその高い強度が維持されるものである。
以下、本発明の高強度鋼板およびその製造方法の詳細を説明する。
[化学成分]
まず、本発明の高強度鋼板の化学成分について説明する。以下に示す各元素の含有量の説明において、%で示す単位は全て質量%である。
・C:0.03〜0.07%
Cは、鋼の強度を増加する元素であり、所望の組織を得て、所望の強度、靭性とするためには、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.07%を超えて含有すると溶接性が劣化し、溶接割れが生じやすくなるとともに、母材靭性および溶接熱影響部靭性(以下「HAZ靭性」という)が低下する。このため、C含有量は0.03〜0.07%、好ましくは0.04〜0.06%とする。
・Si:0.01〜0.5%
Siは、脱酸剤として作用し、さらに固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、0.01%未満ではその効果がなく、一方、0.5%を超えるとHAZ靭性を著しく劣化させる。このため、Si含有量は0.01〜0.5%、好ましくは0.05〜0.2%とする。
・Mn:1.5〜2.5%
Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともに、強度および靭性を向上させる作用を有する元素であり、1.5%以上の含有を必要とするが、2.5%を超える含有は、溶接性を劣化させる恐れがある。このため、Mn含有量は1.5〜2.5%、好ましくは1.8〜2.0%とする。
・Al:0.08%以下
Alは、製鋼時の脱酸剤として作用し、0.08%を超える含有は、靭性の低下を招く。このため、Al含有量は0.08%以下、好ましくは0.01〜0.05%とする。
・Mo:0.1〜0.5%
Moは、本発明において重要な元素であり、0.1%以上含有させることで、熱間圧延後冷却時のパーライト変態を抑制しつつ、Ti、Nb、Vとの微細な複合炭化物を形成し、強度上昇に大きく寄与する。しかし、0.5%を超えるとHAZ靭性の劣化を招く。このため、Mo含有量は0.1〜0.5%とする。
・Ti:0.005〜0.035%
Tiは、0.005%以上添加することで、Moと複合炭化物を形成し、強度上昇に大きく寄与する。しかし、0.035%を超える添加はHAZ靭性および母材靭性の劣化を招く。このため、Ti含有量は0.005〜0.035%とする。
・Nb:0.005〜0.07%
Nbは、組織の微細粒化により靭性を向上させるが、Moと複合炭化物を形成し、強度上昇に寄与する。しかし、0.005%未満では効果がなく、一方、0.07%を超えるとHAZ靭性が劣化する。このため、Nb含有量は0.005〜0.07%とする。
本発明では、鋼板の化学成分が、さらに下記(i)式および(ii)式の条件を満足する必要がある。
・9×Ceq値+4×P値≧4.8 …(i)
この(i)式中、Ceq値は下記(1)式で表され、P値は下記(2)式で表される。特に、Ceq値はPWHT処理前の強度と相関があり、強度の指標としてよく用いられる。また、P値は析出強化の指標となる。実験から求めた回帰式より、9×Ceq値+4×P値<4.8では、PWHT処理後にAPI
X100グレードの高強度が得られない。このため9×Ceq値+4×P値≧4.8とする。
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/12+(Cr+Mo+V)/5
…(1)
但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
P値=[Mo]+[Ti]+[Nb]+[V] …(2)
但し、(2)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。
なお、(2)式における上記元素の原子%での合計量は、鋼に含まれるMo、Ti、Nb、Vの原子数の和と、Fe、Mo、Ti、Nb、Vおよび他の合金元素の全原子数との比で求められるが、Mo、Ti、Nb、Vの質量%での含有量を用いた下記(3)式により求めることもできる。
(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9)/(100/55.85)×100 …(3)
但し、(3)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
・0.6≦[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])≦1.7
…(ii) 但し、(ii)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。
本発明の鋼板の高強度化は、Ti、NbとMoからなる複合炭化物、或いはさらにVを含む複合炭化物によるものである。この複合炭化物による析出強化を有効に利用するためには、C量と炭化物形成元素であるMo、Ti、Nb、V量の関係が重要であり、これらの元素を適正なバランスのもとで添加することによって、熱的に安定で且つ非常に微細な複合炭化物を得ることができる。このときCの原子%での含有量と、Mo、Ti、Nb、Vの原子%での含有量の合計量の比である[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])の値は0.6〜1.7とする。[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])の値が0.6未満または1.7を超える場合はいずれかの元素量が過剰であり、本発明が狙いとする複合炭化物以外の硬化組織が過度に形成されて、耐PWHT特性の劣化や、靭性の劣化を招く。
なお、質量%の含有量を用いる場合は、以下の(iii)式を用いて計算して、その値を0.6〜1.7としてもよい。
(C/12.01)/(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9) …(iii)
但し、(iii)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
本発明の鋼板は、さらに強度上昇を図るために、Vを含有してもよい。また、強度や靭性をさらに改善する目的で、Cu、Ni、Cr、Ca、REM、Bの中から選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。
・V:0.005〜0.1%
Vは、Nbと同様にMoと複合炭化物を形成し、強度上昇に寄与する。しかし、0.005%未満では効果がなく、一方、0.1%を超えるとHAZ靭性が劣化する。このため、Vを添加する場合には、その含有量を0.005〜0.1%とする。
・Cu:0.5%以下
Cuは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、過剰に添加すると溶接性が劣化するため、Cuを添加する場合には、その含有量を0.5%以下とする。
・Ni:0.5%以下
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、過剰に添加すると耐PWHT特性が低下するため、Niを添加する場合には、その含有量を0.5%以下とする。
・Cr:0.5%以下
Crは、Mnと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素であるが、過剰に添加すると溶接性を劣化するため、Crを添加する場合には、その含有量を0.5%以下とする。
・Ca:0.0005〜0.0035%
Caは、硫化物系介在物の形態制御による靭性向上に有効な元素であるが、0.0005%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.0035%を超えて添加しても効果が飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させる。このため、Caを添加する場合には、その含有量を0.0005〜0.0035%とする。
・REM:0.0005〜0.01%
REMもまた鋼中の硫化物系介在物の形態制御による靭性向上に有効な元素であるが、0.0005%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.01%を超えて添加しても効果が飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させる。このため、REMを添加する場合には、その含有量を0.0005〜0.01%とする。
・B:0.002%以下
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、フェライト変態を抑制することで、特に溶接熱影響部の強度低下の防止に寄与するが、0.002%を超えて添加してもその効果は飽和する。このため、Bを添加する場合には、その含有量を0.002%以下とする。
上記以外の残部は実質的にFeからなる。したがって、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避不純物をはじめとする他の微量元素を含有することを妨げない。
なお、本発明において、V、Cu、Ni、Crは選択的な添加元素であるので、これらの元素を添加しない場合には、上記(i)式および(ii)式中の当該元素量の値は“零”となる。
[ミクロ組織・複合炭化物の析出形態]
本発明の鋼板は、島状マルテンサイト(M-A constituent)分率が2%以下であるベイナイト組織を主体とするミクロ組織を有し、さらに、円相当径が10nm以下であって、Moを主体とし、Tiおよび/またはNbを含む複合炭化物が1μmあたり30個以上分散し、且つ当該複合炭化物(円相当径が10nm以下の複合炭化物)の総析出量が0.03質量%以上であることが必要である。また、本発明の鋼板がVを含む場合には、上記の条件を満足する複合炭化物は、さらにVを含むことになる。
ここで、複合炭化物の円相当径とは、画像処理により求めた複合炭化物の面積を円の面積に換算した際の当該円の直径である。
PWHT処理前のミクロ組織形態を上記のように制御すれば、700℃程度以下のPWHT処理後においても強度が低下することなく、760MPa以上の引張強度を維持することが可能である。
なお、以上のような鋼板のミクロ組織および複合炭化物の析出形態は、鋼板の板厚方向位置にかかわりなく満足する必要があるが、例えば、島状マルテンサイト分率については、板厚断面中心位置で走査型電子顕微鏡(倍率2000倍)でランダムに10視野以上観察して面積率を測定し、同定すればよい。また、Mo主体の複合炭化物の析出形態については、板厚断面中心位置で透過型電子顕微鏡(倍率30000倍)でランダムに10視野以上観察し、その析出形態(個々の複合炭化物の面積および複合炭化物の分散密度)を同定すればよい。
[製造条件]
以下、本発明の高強度鋼板の製造条件について説明する。
本発明は、加速冷却時のベイナイト変態による変態強化と、加速冷却後の再加熱時に析出する微細炭化物による析出強化を複合して活用することにより、合金元素を多量に添加することなく高強度化が可能で、さらにPWHT処理を行なう場合にも、微細炭化物は熱的に安定であるのでPWHT処理時にそのままで維持され、PWHT処理後でもその強度が維持される技術である。
本発明では、例えば、未再結晶オーステナイト域で一定以上の累積圧下を加えた後、オーステナイト単相域から加速冷却を開始し、ベイナイト変態終了温度以下で冷却を停止し、直ちに急速再加熱することにより、変態強化と析出強化を最も有効に複合して活用することが可能となる。なお、未再結晶オーステナイト域(800℃以下)での累積圧下率が少ない場合、加工オーステナイトから変態するベイナイトへの蓄積転位の移行が十分でなく、転位上に優先析出する複合炭化物の微細分散化が不十分となり、析出強化量が低下するため、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率を70%以上とする必要がある。また、Ar点以下の2相域から冷却開始すると、ポリゴナルフェライトが混在し、PWHT処理前の強度低下が大きいため、冷却開始温度はAr点以上となる700℃以上とする必要がある。
具体的に、本発明の高強度鋼板は、次のような製造条件で製造することができる。すなわち、上記の成分組成を有する鋼を用い、加熱温度:1100〜1300℃、800℃以下での累積圧下率:70%以上で熱間圧延を行い、その後、Ar点を上回る700℃以上から20℃/s以上の冷却速度で冷却を開始して300℃未満の温度まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上10℃/s未満の昇温速度で550〜700℃の温度まで再加熱を行うことで、鋼板ミクロ組織中の島状マルテンサイト(M-A constituent)分率が2%以下のベイナイト組織を主体とし、円相当径が10nm以下であって、Moを主体とし、Tiおよび/またはNbを含む、或いはさらにVを含む微細な複合炭化物が1μmあたり30個以上分散し、且つ当該複合炭化物の総析出量が0.03質量%以上である本発明の高強度鋼板が得られる。ここで、上述した製造条件の各温度は鋼板の平均温度(板厚方向の平均温度)である。
熱間圧延において、加熱温度が1100℃未満では、出鋼スラブ中の粗大な炭化物の溶解が不十分となり、析出強化が不十分となる。一方、1300℃を超えると、初期γ粒が粗大化するため、靱性が劣化する。また、800℃以下での累積圧下率が70%未満では、上述したとおり、複合炭化物の微細分散化が不十分となり、析出強化量が低下する。
熱間圧延後の加速冷却において、冷却開始温度が700℃未満では、上述したとおり、ポリゴナルフェライトが混在し、PWHT処理前の強度低下が大きい。また、冷却速度が20℃/s未満では、ベイナイト組織が粗大化し、PWHT処理前の強度確保が困難となる。また、冷却停止温度が300℃以上では、ミクロ組織中のベイナイト母相が軟質化し、PWHT処理前の強度が低下するとともに、島状マルテンサイト分率が2%超えとなり、PWHT処理後の強度低下を招きやすい。
加速冷却後の再加熱において、昇温速度が0.5℃/s未満では、複合炭化物の微細分散が困難となる。一方、昇温速度が10℃/s以上では、複合炭化物析出までの時間が短く、PWHT処理前の複合炭化物の析出量が30個未満と少なくなり、PWHT処理前の強度が低下する。また、再加熱温度が550℃未満では、複合炭化物の析出が不十分となる。一方、700℃を超えると、強度が大きく低下する。
また、本発明の高強度鋼管は、上述した高強度鋼板を素材とする鋼管であって、通常の造管方法にしたがい、鋼板を長手方向で筒状に成形し、その突合せ部を管内外面から1層ずつ長手方向に溶接して得られる。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜M)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて表2および表3に示すNo.1〜20の厚鋼板(板厚20mm)を製造した。
この厚鋼板の製造では、加熱したスラブを熱間圧延した後、直ちに水冷型の加速冷却設備を用いて冷却を行い、加速冷却設備と同一ライン上に設置したインライン型の誘導加熱炉またはガス燃焼炉を用いて再加熱を行った。
各鋼板の製造条件を表2に示す。
製造された鋼板の引張特性については、圧延方向と同一方向の全厚試験片を引張試験片として引張試験を行い、引張強度を測定した。本発明で目標とする強度は、降伏強度690MPa以上、引張強度760MPa以上である。HAZ靭性については、再現熱サイクル装置によって入熱20〜50kJ/cmに相当する熱履歴を加えた試験片を用いてシャルピー試験を行った。−10℃でのシャルピー吸収エネルギーが100J以上のものを良好(○)、100J未満のものを不良(×)とした。
また、耐PWHT特性を調査するため、ガス雰囲気炉を用いて各鋼板にPWHT処理を行なった。このときの熱処理条件は650℃および700℃で2時間とし、その後、炉から取り出し空冷によって室温まで冷却した。そして、PWHT処理前の鋼板のミクロ組織形態および析出物形態を調査するとともに、PWHT処理前後の鋼板の引張特性およびHAZ靭性を測定した。測定結果を表3に示す。
表3において、本発明例であるNo.1〜7は、いずれも700℃でのPWHT処理後でも強度低下が50MPa以下であり、降伏強度690MPa以上、引張強度760MPa以上の高強度が維持され、さらに母材靭性およびHAZ靭性も良好であった。
これに対して比較例であるNo.8,9,13,14は、化学成分は本発明の範囲内であるが、10nm以下の微細複合炭化物の分散量が1μmあたり30個未満であり、PWHT処理前またはPWHT処理後の母材強度、母材靭性が劣化した。比較例であるNo.10は、化学成分は本発明の範囲内であるが、PWHT処理前の鋼板ミクロ組織中にフェライト組織が混在するとともに、島状マルテンサイト(M・A constituent)分率が2%を超えており、PWHT処理前後の母材強度が劣化した。比較例であるNo.11,12は、化学成分は本発明の範囲内であるが、PWHT処理前の鋼板ミクロ組織中の島状マルテンサイト(M-A constituent)分率が2%を超えており、PWHT処理後の母材強度あるいはPWHT処理前の母材靭性が劣化した。比較例であるNo.15〜18は化学成分が本発明の範囲外であるので、十分な母材強度・靭性が得られないか、あるいはHAZ靭性が劣っていた。比較例であるNo.19は、パラメータXの値が本発明の範囲外であり、特に700℃のPWHT処理後の母材強度が劣化した。また、比較例であるNo.20は、パラメータYの値が本発明の範囲外であり、PWHT処理後の母材強度が劣化した。
Figure 0005181697
Figure 0005181697
Figure 0005181697

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.07%、Si:0.01〜0.5%、Mn:1.5〜2.5%、Mo:0.1〜0.5%、Al:0.08%以下、Ti:0.005〜0.035%、Nb:0.005〜0.07%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、下記(1)式で表わされるCeq値と下記(2)式で表わされるP値が下記(i)式を満足し、
    9×Ceq値+4×P値≧4.8 …(i)
    Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/12+(Cr+Mo+V)/5
    …(1)
    但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
    P値=[Mo]+[Ti]+[Nb]+[V] …(2)
    但し、(2)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。
    且つ下記(ii)式を満足する成分組成を有し、
    0.6≦[C]/([Mo]+[Ti]+[Nb]+[V])≦1.7
    …(ii)
    但し、(ii)式の元素記号は各含有元素の原子%を示す。
    鋼板ミクロ組織中の島状マルテンサイト(M-A
    constituent)分率が2%(面積率)以下であるベイナイト組織からなり、円相当径が10nm以下であって、MoとTiおよび/またはNbを含む複合炭化物が1μmあたり30個以上分散し、当該複合炭化物の総析出量が0.03質量%以上であることを特徴とする、耐PWHT特性に優れた高強度鋼板。
  2. さらに、質量%で、V:0.005〜0.1%を含有し、MoとTiおよび/またはNbを含む複合炭化物が、さらにVを含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐PWHT特性に優れた高強度鋼板。
  3. さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0035%、REM:0.0005〜0.01%、B:0.002%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐PWHT特性に優れた高強度鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成を有する鋼を、加熱温度:1100〜1300℃、800℃以下での累積圧下率:70%以上で熱間圧延し、その後、冷却開始温度:700℃以上、冷却速度:20℃/s以上で300℃未満の温度まで加速冷却し、その後直ちに、0.5℃/s以上10℃/s未満の昇温速度で550〜700℃の温度まで再加熱することを特徴とする、耐PWHT特性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板を素材とする鋼管であって、鋼板を長手方向で筒状に成形し、その突合せ部を管内外面から1層ずつ長手方向に溶接して得られることを特徴とする高強度鋼管。
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