JP5020691B2 - 低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板および高強度ラインパイプならびにこれらの製造方法 - Google Patents

低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板および高強度ラインパイプならびにこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、原油、天然ガス等を輸送するためのパイプラインに使用できる、低温靱性の優れた、高強度ラインパイプ用鋼板および高強度ラインパイプならびにこれらの製造方法に関する。
近年、原油、天然ガス等の長距離輸送方法としてパイプラインの重要性がますます高まっており、これまでに、長距離輸送用の幹線ラインパイプとして、米国石油協会(API)規格X80以下が規格化されている。しかし、(1)高圧化による輸送効率の向上や、(2)ラインパイプの外径・質量の低減による現地施工能率の向上のため、更に高強度のラインパイプが要望されている。特に、引張強さ900MPa級以上のX120級のラインパイプは、X65と較べて約2倍以上の内圧に耐えるため、同じサイズで約2倍以上のガスを輸送することが可能になる。また、ラインパイプの肉厚を厚くして耐内圧強度を向上させる場合と比較して、材料費、輸送費、現地溶接施工費を削減できるため、パイプライン敷設費を大幅に節約することができる。
既に、特許文献1、2、3に示されているように、X120ラインパイプの製造方法について技術が開示されている。しかし、高価な合金元素であるMoを多量添加する必要があるため、Moを低減する技術、また、肉厚を厚くするためには合金設計の自由度を高める技術が必要であった。
特許第3244981号公報 特許第3408385号公報 特許第3519966号公報
本発明は、上記従来技術の課題を有利に解決できる、低温靭性に優れた、特に、鋼管の周方向の引張強さ(TS−C)が900MPa級以上(API規格X120相当)の、高強度ラインパイプ用鋼板、及びそれを用いたラインパイプならびにそれらの製造方法を提供するものである。
本発明者らは、Moの代わりにWを添加した、低温靭性に優れた高強度ラインパイプを得るため、素材である鋼板が満足すべき条件について鋭意研究を行った。
その結果、耐内圧強度、低温靭性および耐破壊特性に優れた高強度ラインパイプを実現するための高強度ラインパイプ用鋼板およびその製造方法を発明し、更に、その鋼板を用いた高強度ラインパイプおよびその製造方法を発明した。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.07%、Si:0.02〜0.6%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、W:0.2〜1.2%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.10%以下、N:0.001〜0.006%、B:0.0003〜0.002%を含有し、かつ前記Ti含有量[Ti%]および前記N含有量[N%]が[Ti%]>3.4[N%]の関係式を満足し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織がベイナイトであり、ミクロ組織中の旧オーステナイト粒界面における偏析Bの単位面積あたりの平均原子数が5×10 11 〜5×10 13 個/mm 2 であることを特徴とする低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
(2)さらに、質量%で、Ni:0.1〜2.5%、V:0.01〜0.10%、Mo:0.1〜1.0%、Cu:0.3〜1.0%、および、Cr:0.3〜1.0%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
(3)さらに、質量%で、Ca:0.001〜0.01%、REM:0.001〜0.02%、および、Mg:0.001〜0.006%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
)引張強さが900MPa以上であることを特徴とする上記(1)〜()の何れか1項に記載の低温靭性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
)上記(1)〜()の何れか1項に記載の鋼板を素材とすることを特徴とする低温靭性に優れた高強度ラインパイプ。
)円周方向の引張強さが900〜1100MPaであることを特徴とする上記()に記載の低温靱性に優れた高強度ラインパイプ。
)上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の成分からなるスラブを900〜1100℃の温度に加熱し、該温度で30〜120分保持した後、900℃ 以上のオーステナイト温度域で粗圧延し、900℃以下の未再結晶温度域で仕上圧延し、680℃ 以上のオーステナイト温度域で仕上圧延を終了し、引き続き、1〜35℃/秒の冷却速度で、680℃以上のオーステナイト温度域から冷却を開始し、500℃以下の温度で冷却を終了することを特徴とする低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法。
)上記()に記載の製造方法により鋼板を製造し、該鋼板を管状に成形した後、鋼板の突き合わせ部を溶接することを特徴とする低温靱性に優れた高強度ラインパイプの製造方法。
以下に本発明の詳細について説明する。
高強度ラインパイプ、特に、X120級ラインパイプに要求される耐内圧強度を確保するためには、ラインパイプの円周方向の引張強さ(TS−C)を900MPa以上とすることが必要である。一方、ラインパイプの円周方向の引張強さが1100MPaよりも高くなると、急激に鋼管の製造が困難になるので、工業的制御の困難さを考慮すると、ラインパイプの円周方向での引張強さの上限を1100MPaとすることが好ましい。
なお、鋼板をラインパイプ製造工程でUO成形、溶接後の拡管などの成形加工すると、鋼板中に導入される塑性歪によって加工硬化する。そのため、ラインパイプの引張強さ(TS−C)が、鋼板の引張強さ(TS−T)よりも20MPa程度増加することを考慮して鋼板強度が設計される。
本発明の高強度ラインパイプ用鋼板は、この鋼板を造管して得られるラインパイプが、優れた低温靭性を有すること、特に、X120級ラインパイプに要求されるラインパイプの円周方向での900MPa以上の引張強さ(TS−C)を達成でき、かつラインパイプの母材および溶接熱影響部(以下、HAZ(Heat Affected Zone)ともいう)の低温靱性が−30℃でのVノッチシャルピー衝撃値が200J以上を達成できるための引張強さ(TS−T)および低温靱性を得ることを目標とする。
この鋼板の引張強さ及び低温靭性を達成するために、本発明では以下の説明の通り、鋼板中の成分組成とともに、ミクロ組織を適正に制御する必要がある。
先ず、本発明の鋼板ミクロ組織の限定理由について、以下に説明する。
本発明鋼板のミクロ組織は、引張強度と低温靭性に優れたベイナイト主体組織とする必要がある。
ここで、本発明におけるベイナイト組織とは、ベイナイト組織の中で、比較的靭性に優れた下部ベイナイトと擬似上部ベイナイトの単独またはこれら混合組織を意味し、これらの組織が全体のミクロ組織に対する割合で70%以上を含むことを意味する。一般にベイナイト組織は低温変態組織の特徴であるラス状形態を有し、下部ベイナイトが最も強度及び靭性に優れた組織であり、擬似上部ベイナイトはラス状形態の組織中の第2相である炭化物やマルテンサイトとオーステナイトの混成物(Martensite-Austenite、MAという。)が下部ベイナイトに較べて大きいものの、靭性に悪影響を及ぼさない程度の大きさである。なお、ラス状形態とは笹の葉、或いは板状の形態であり、粒状のグラニュラーベイナイトや、等軸晶フェライトとは異なる。
一方、粒状の形態を有するグラニュラーベイナイトは、上記下部ベイナイトや擬似上部ベイナイトに比べて第2相の粒径が大きく、靭性を悪化させる原因となるため好ましくない。なお、本発明鋼板は、本発明の目的とする引張強さ及び低温靭性を阻害しない含有量であれば、上記ベイナイト組織以外のその他の組織を含有することが可能である。特にラス状形態のマルテンサイト組織は、鋼板の引張強さを向上するために有効であるため、鋼板の靭性および延性を阻害しない範囲でミクロ組織中に含有することができる。また、等軸晶フェライトは強度が小さく、高強度材組織としてはあまり適さない。
従来から、鋼板ミクロ組織をベイナイト主体組織とするために鋼板中に添加する焼入れ性成分として、他の析出強化元素に比べて焼入性が高いMoが広く用いられていた。しかし、Moは高価な合金元素であり、また、本発明者らの検討によれば、製造条件によっては、ラインパイプの溶接熱影響部を著しく硬化させる。そのため、ラインパイプのHAZ靭性や現地溶接性を劣化させるという問題を生じる可能性があることを確認した。
そこで、本発明者らは、Moを用いずに、またはMoの添加量を制限しても、鋼板のベイナイト主体組織を得るために必要な焼入れ性を十分確保でき、かつ低温靭性を阻害する析出炭化物の形成を抑制できるための鋼板の焼入れ成分について検討した。その結果、Wは、Moに比べて合金コストも安価であるだけでなく、鋼中の低温靭性に有害な析出炭化物の形成を抑制でき、また、Moを用いなくても、またはMoの添加量を制限しても、WとBの複合添加により焼入れ性を確保しつつ、従来よりも低温靭性を向上することができることが判った。さらに原子量比で評価した場合、WとBとの複合添加の効果が、MoとBとの複合添加よりも優れる原因として、粒界に偏析する有効なボロン量と相関のあることが判った。
鋼の基本組成をFe−0.05%C−0.02%Tiとし、さらに、0.5%のMoまたは1.0%のWを添加し、B添加量を変化させて鋼を溶製し、鋳造した。得られた鋼片を、スラブ加熱温度を変化させて熱間圧延し、鋼板を製造した。なお、Wの添加量をMoの添加量の2倍としたのは、焼入れ性に及ぼす効果が原子量比で現れると仮定したためである。得られた鋼板から小片を採取し、組織がオーステナイト単相となる温度に加熱した後、480℃に冷却し、保持時間を変化させて等温保持した。480℃での保持後、ミクロ組織を光学顕微鏡によって観察、組織写真を画像解析して、ベイナイト組織の面積率を測定し、ベイナイト変態率が全体の50%になる時の時間(秒)を求めた。
図1および図2には、W+B含有鋼、Mo+B含有鋼およびB含有鋼をそれぞれスラブ加熱温度が1000℃または1250℃の条件でスラブを加熱して熱間圧延を行った場合の鋼中B含有量と焼入れ性との関係を示す。図1の縦軸は、480℃で等温保持した時にベイナイト変態率が全体の50%になる時の時間(50%ベイナイト変態時間という。)である。□はFe−0.05%C−0.02%Ti成分系にBを添加したB含有鋼、●は更に0.5%のMoを添加したMo+B含有鋼、△はMoの代わりに1.0%のWを添加したW+B含有鋼である。
この、50%ベイナイト変態時間が長いほど、焼入れ性が良好であると評価する。これは、等温での保持を長時間行った際でも、等軸晶フェライトの生成が抑制されることを意味する。したがって、50%ベイナイト変態時間が長いと、冷却速度が遅い場合でも、十分に靭性に優れたラス状形態のベイナイト組織が得られる。これにより、熱間圧延後の冷却条件を緩和することが可能であり、製造し易くなる。
図2に示されるように、スラブ加熱温度が1250℃の高温加熱の場合には、W+B含有鋼およびMo+B含有鋼の焼入れ性のB含有量の依存性はほぼ同等である。すなわち、B含有鋼を基準としたW+B含有鋼およびMo+B含有鋼の焼入れ性は、同程度の向上効果を示している。一方、図1に示されるように、スラブ加熱温度が1000℃の低温加熱の場合では、同じB含有量であっても、W+B含有鋼の焼入れ性は、Mo+B含有鋼に比べて飛躍的に向上することが判る。
図3に、W+B含有鋼およびMo+B含有鋼の焼入れ性に及ぼすスラブ加熱温度の影響を示す。図3は、スラブ加熱温度に対して、480℃で等温保持した時にベイナイト変態率が全体の50%になる時の時間を示したものであり、□はFe−0.05%C−0.02%Ti−10ppm鋼、●は更に0.5%のMoを添加した鋼、△はMoの代わりに1.0%のWを添加した鋼である。本発明では、50%ベイナイト変態時が400秒以上であるもの、すなわち、図3に示した破線以上のものを、焼入れ性が良好と評価する。
さらに本発明者らの詳細検討によって、加熱温度が900〜1100℃の低温加熱条件において、WとBの相乗作用による焼入れ性向上効果が得られることが確認された。また、WとBとの複合添加による焼入れの向上は、スラブ加熱温度が低温であるほど効果的であり、1050℃以下、更には、1000℃以下で、MoとBとの複合添加に対する優位性が顕著になることが判った。Moに対するWの効果は、後述するように安定的に十分な粒界偏析ボロン量が得られることと関係しているようであり、鋼中のボロン固溶量に何か影響を与えている可能性がある。
次に、W+B含有鋼をスラブ加熱温度が1000℃の条件で熱間圧延して熱延鋼板を製造し、ラス形状のベイナイト組織を主体とする鋼板の低温靭性に及ぼすBの偏析の影響を評価した。シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に準拠し、Vノッチ試験片を用いて−30℃で行った。鋼板組織中の旧オーステナイト粒界における偏析Bの単位面積当りの平均原子数と、−30℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーの関係を図4に示す。
なお、旧オーステナイト粒界における偏析Bの単位面積当りの平均原子数は、三次元アトムプローブ測定法を用いて以下のように測定した。つまり、ベイナイト主体組織中の旧オーステナイト粒界が先端部に位置するように、鋼板から針状の試料を作製し、三次元アトムプローブ測定法により針状先端部の旧オーステナイト粒界近傍の実空間での元素分布を計測した。ボロンは結晶粒内にはほとんど固溶せず、その測定値はノイズレベルであるから、複数箇所において旧オーステナイト粒界面に垂直な方向でボロン原子数を計測し、その平均値を偏析Bの単位面積あたりの平均原子数(個/mm2)とした。この偏析Bの単位面積あたりの平均原子数は、粒界偏析幅はおよそ5nmほどである場合が多いので、5nmの厚み幅に存在するB原子数を単位面積に投影した数に対応している。
図4から、低温加熱条件で熱延して得られる鋼板組織中の旧オーステナイト粒界における偏析Bの単位面積当りの平均原子数を5×1011〜5×1013個/mm2とすることにより、−30℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが200J以上の低温靭性を達成できることが判る。一方、鋼板組織中の旧オーステナイト粒界における偏析Bの単位面積当りの平均原子数が5×1011未満になると、旧オーステナイト粒界の偏析ボロン量が少なくなるため焼き入れ性が低下し、グラニュラーベイナイトや粗大な硬質セメンタイト相が生成して、ベイナイト主体組織の引張強さと低温靭性が低下することがある。
一方、鋼板組織中の旧オーステナイト粒界における偏析Bの単位面積当りの平均原子数が5×1013個/mm2を超えると、旧オーステナイト粒界の偏析ボロン量が過度に増加し、その一部が析出し始めるため、引張強さは維持できるものの低温靭性が低下することがある。
このような理由から、鋼中にMoを添加せずとも、またはMoの添加量を制限しても、高強度と優れた低温靭性を有し、特に、X120級ラインパイプに要求されるラインパイプの円周方向での900MPa以上の引張強さ(TS−C)を達成でき、かつラインパイプの母材および溶接熱影響部の低温靱性が−30℃でのVノッチシャルピー衝撃値が200J以上を達成するために、本発明の鋼板ミクロ組織は、特に鋼中にWとBを主な焼入れ成分して含有させ、900〜1100℃の低温加熱条件でのWとBの相乗作用により焼入れ性を向上させ、ミクロ組織をベイナイト主体組織とする。さらにベイナイト組織中の旧オーステナイト粒界面における偏析Bの単位面積あたりの平均原子数を5×1011〜5×1013個/mm2とすることが好ましい。
以下に、本発明の鋼板およびこれを用いたラインパイプ母材の成分組成、さらに、本発明の鋼板およびこれを用いたラインパイプの製造方法について詳細に説明する。
次に、本発明の高強度ラインパイプ用鋼板およびこれを用いたラインパイプ母材の成分元素の限定理由を説明する。
なお、以下の説明において「%」は特別の説明がない限り「質量%」を意味するものとする。
C:Cは鋼の強度向上に極めて有効であり、鋼板およびラインパイプの強度を本発明の目標とする範囲内とするためには、C含有量は0.03%以上とする必要がある。一方、C含有量が0.07%を超えると、ラインパイプの母材およびHAZの低温靱性や現地溶接性の著しい劣化を招くのでC含有量の上限を0.07%とした。なお、鋼板、ラインパイプの母材およびHAZのさらなる低温靱性の向上のためにはC含有量の上限は0.06%とするのが好ましい。
Si:Siは、鋼の脱酸や強度向上のために添加する元素であり、この効果を発揮するためにSi含有量の下限を0.02%とする。一方、Si含有量が0.6%を超えると、鋼板、ラインパイプのHAZ靱性、現地溶接性を著しく劣化させるのでSi含有量の上限を0.6%とした。なお、鋼の脱酸は、Al、Tiの添加によっても可能であり、本発明では、鋼中のSi含有量は、Al、Tiの含有量に応じて調整させることが好ましい。
Mn:Mnは、鋼板、ラインパイプの母材のミクロ組織を、下部ベイナイト組織および擬似上部ベイナイトからなるベイナイト組織主体の組織とし、優れた強度・低温靱性のバランスを確保する上で不可欠な元素であり、これらの効果を発揮させるためにMn含有量を1.5%以上とする。一方、Mn含有量が2.5%を超えると、鋼の焼入れ性が増してラインパイプのHAZ靱性、現地溶接性を劣化させるだけでなく、連続鋳造工程において鋼片中の中心偏析を助長する結果、この鋼片を圧延して得られる鋼板の低温靱性を劣化させるのでMn含有量の上限を2.5%とした。
P、S:PおよびSは不可避的不純物元素であり、鋼板およびラインパイプのHAZの低温靱性をより一層向上させるためである。P含有量を0.015%以下に低減することにより連続鋳造スラブの中心偏析を低減でき、鋼板およびラインパイプのHAZの粒界破壊を防止し低温靱性を向上させることができる。S含有量を0.003%以下に低減することにより、熱間圧延で延伸化するMnSを低減して鋼板およびラインパイプのHAZの延性および靱性を向上させることができる。このような理由から、本発明では、PおよびSの含有量を、それぞれ0.015%および0.003%以下に制限する。
W:Wは、本発明で最も重要な成分の一つであり、Moに比べて合金コストも安価であるとともに、鋼中での低温靭性に有害な析出炭化物の形成を抑制できる。また、Bとの相互作用により、スラブの900℃〜1100℃の加熱温度において鋼中のフェライト相の生成を極度に抑制し、その後の冷却速度に依存せずに鋼の焼入れ性を高めることができるため、目的とする鋼板のミクロ組織をベイナイト主体とすることができる。また、WをNbと共に複合添加することにより、Moと同様に、鋼板の制御圧延時においてオーステナイトの再結晶を抑制し、鋼板のオーステナイト組織を微細化することが可能となる。このような効果を得るために、本発明では、W含有量の下限を0.2%とする。一方、W含有量が1.2%を超えると、ラインパイプのHAZ靱性および現地溶接性を劣化させ、更にBとの相互作用による焼入れ性向上効果を損なうので、W含有量の上限を1.2%とする。
Nb:Nbは、W、Moと共に添加することにより、鋼板の制御圧延時にオーステナイトの再結晶を抑制し、冷却中に変態する擬似上部ベイナイト組織、下部ベイナイト組織を微細化し、かつ安定化する効果を有する。また、Nbは析出硬化や焼入れ性増大にも寄与し、鋼を強靱化する能力が高い。さらに、NbをBと共に添加すると、焼入れ性向上効果が相乗的に高まる。これらの作用効果により、溶接熱影響部の過剰な軟化を安定して抑制するためにNb含有量を0.01%以上とする。一方、Nb含有量が0.05%を超えると、ラインパイプのHAZ靱性や現地溶接性に悪影響を及ぼすので、その含有量の上限を0.05%とする。
Ti:Tiは、鋼中の固溶NをTiNとして固定することにより、BNの生成を抑制し、Bの焼入れ性向上効果を顕著に発揮させる作用がある。また、Tiは脱酸元素としても有用であり、特に、鋼材中のAl含有量が少ない場合には、Tiを0.005%以上含有させることにより、鋼中にTi酸化物が分散する。このTi酸化物は、ラインパイプのHAZにおいて粒内フェライト生成核として作用し、HAZ組織を微細化し、低温靭性を向上する効果を有する。これらの効果を充分に得るためには、Tiの含有量は0.005%以上とする必要がある。また、TiNを鋼中に微細析出させることにより、スラブの再加熱時の鋼中オーステナイト粒粗大化、さらに、ラインパイプのHAZにおけるオーステナイト粒粗大化を抑制し、ミクロ組織が微細化される。その結果、鋼板、ラインパイプの母材およびHAZの低温靱性を改善することができる。この効果を得るためには、上記Ti含有量の規定に加えて、Ti含有量[Ti%]およびN含有量[N%]を、[Ti%]>3.4[N%]の関係式を満足するように、Ti含有量を調整する必要がある。一方、Ti含有量が0.030%を超えると、TiCによる析出硬化やTiNの粗大化により、鋼板、ラインパイプの母材の低温靱性を劣化させるのでTi含有量の上限を0.030%とした。
Al:Alは、通常、脱酸材として鋼に含まれる元素であり、鋼中に存在するAl酸化物は鋼の組織の微細化のために効果を有する。しかし、本発明では、Ti、Siの添加により脱酸を十分に行うことが可能であるため、脱酸材としては必ずしもAlを鋼中に添加する必要はない。しかし、Al含有量が0.10%を超えると、Al系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害するのでAl含有量を0.10%以下に制限する。また、低温靭性を向上させるという点からAl含有量を0.06%以下とするのが好ましい。
N:Nは、上述したTiとTiNを形成し、スラブ再加熱時のオーステナイト粒の粗大化およびラインパイプのHAZにおけるオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材、ラインパイプの母材およびHAZの低温靱性を向上させる効果を有する。この効果を安定して得るためには、Nを0.001%以上添加する必要がある。しかし、N含有量が0.006%を超えると、スラブ表面疵の発生や固溶NによるHAZ靱性の劣化の原因となり、BNを生じて、B添加による焼入れ性向上効果を損なうことがあるのでN含有量の上限を0.006%とする。
B:Bは、鋼中に極微量の含有で鋼の焼入れ性を飛躍的に高め、上述したようにWとの複合添加し、900〜1100℃の低温加熱条件でWとBの相乗効果により焼入れ性を飛躍的に向上させ、鋼板ミクロ組織をベイナイト主体組織とするために必須な元素である。
この効果を十分に発現させるために、本発明では、B含有量を0.0003%以上とする。一方、B含有量が0.002%を超えると、鋼板、ラインパイプの母材の低温靱性を劣化させるだけでなく、炭硼化物の析出によりBの焼入れ性向上効果自体を消失せしめることもあるのでB含有量の上限を0.002%とした。
本発明では、本発明の目的とする特性を阻害せずに、鋼の強度及び靱性の一層の向上や、製造可能な鋼材サイズの拡大を図るために、上記基本成分に加えて、更に、Ni、V、Mo、Cu、Cr、Ca、REM、および、Mgのうちの1種または2種以上を以下の含有量の範囲で鋼中に含有させることが好ましい。
Ni:Niは、ラインパイプの現地溶接性を劣化させることなく、低炭素鋼の低温靱性、強度等の特性を向上させる効果がある。Niは、MnやCr、Moに比較して多く添加しても、圧延鋼板組織において、特に連続鋳造鋼片の中心偏析帯中に形成される低温靱性に有害な硬化組織の生成が少ない。NiによるラインパイプのHAZ靱性の改善効果を十分に発揮するためにはNi含有量を0.1%以上とするのが好ましい。さらに、ラインパイプのHAZ靱性向上効果を高めるためには、Ni含有量を0.3%以上とするのがより好ましい。一方、Ni含有量が1.5%を超えると、Niによるコスト増だけでなく、ラインパイプの現地溶接性を劣化させるのでNi含有量の上限を1.5%とするのが好ましい。
なお、Niは、連続鋳造時および熱間圧延時の鋼のCu割れ防止にも有効である。この効果を得るためには、上記Ni含有量の規定に加えて、Ni含有量をCu含有量の1/3以上とすることが好ましい。
V:Vは、上述したNbとほぼ同様の効果を有するが、鋼の強靱化、焼入れ性向上効果は、Nbに比較して弱いものの、高強度鋼における0.01%以上のVの含有は効果的であり、Vを上記Nbと複合添加することにより、上記効果を更に顕著なものとする。このため、Vを含有させる場合には、その含有量を0.01%以上とするのが好ましい。一方、V含有量が0.10%を超えると、ラインパイプのHAZ靱性および現地溶接性が劣化するため、V含有量の上限を0.10%とするのが好ましい。強度および靭性向上の点からは、特にV含有量を0.03〜0.08%とするのがより好ましい。
Mo:Moは、鋼の焼入れ性を向上させ、目的とするベイナイト主体、或いはベイナイトおよびマルテンサイト主体の組織を得るために有効な元素である。また、MoはNbと共に複合添加すると、鋼板の制御圧延時にオーステナイトの再結晶を抑制し、オーステナイト組織を微細化する。これらの効果を期待する場合はMoを0.10%以上添加するのが好ましい。しかし、Mo含有量が1.00%を超えると、ラインパイプのHAZ靱性、現地溶接性を劣化させ、更にMoとBの焼入れ性向上の相乗効果を損なうことがあるのでMo含有量の上限は1.00%とするのが好ましい。また、Moの添加により合金コストが上昇するため、上限を0.60%以下に制限することが好ましく、0.30%以下に制限することがより好ましい。
Cu、Cr:CuおよびCrは、母材および溶接部の強度を増加させる元素であり、何れも0.3%以上の含有量でその効果が発揮されるため、CuおよびCrの含有量の下限は何れも0.3%とするのが好ましい。しかし、CuおよびCrのそれぞれの含有量が1.0%を超えると、ラインパイプのHAZ靱性や現地溶接性を著しく劣化させるため、Cu量およびCr量の含有量の上限は、それぞれ1.0%とすることが好ましい。
本発明は、さらに、本発明の目的とする特性を阻害せずに、鋼板、ラインパイプの母材の低温靱性を向上するために、Ca、REM、および、Mgのうちの1種または2種以上を以下の含有範囲で添加することがこのましい。
Ca、REM:CaおよびREMはいずれも、硫化物、特にMnSの形態を制御する作用を有し、この作用による鋼板、ラインパイプの母材の低温靱性の向上効果を十分に得るために、CaおよびREMの含有量はいずれも0.001%以上とする。一方、Ca含有量が0.01%を超え、REM含有量が0.02%を超える場合には、CaO−CaSまたはREM−CaSを大量に生成し、大型クラスター、大型介在物となり、鋼の清浄度を害するだけでなく、現地溶接性にも悪影響を及ぼす。このため、Ca含有量の上限を0.01%、好ましくは、0.006%に制限し、REM含有量の上限は0.02%に制限するのが好ましい。
なお、高強度ラインパイプでは、さらに、S含有量を0.001%以下、O含有量を0.002%以下にそれぞれ低減し、かつ、ESSP=(Ca)〔1−124(O)〕/1.25Sを、0.5≦ESSP≦10.0とすることが特に有効である。
Mg:Mgは、鋼中で微細分散した酸化物を形成し、この酸化物は鋳造以降の製造工程でも安定して微細分散しているため、ラインパイプのHAZの粒粗大化を抑制して低温靭性を向上させる元素であり、これらの効果を発揮させるために、鋼中のMg含有量を0.001%以上とすることが好ましい。一方、Mg含有量が0.006%を超えると、鋼中に粗大酸化物を生成し、鋼板、ラインパイプの母材の靭性を劣化させることがあるため、Mg含有量の上限は0.006%とするのが好ましい。
次に本発明の鋼板の製造方法およびこの鋼板を用いたラインパイプの製造方法の条件の限定理由について説明する。
引張強さと低温靭性に優れたベイナイト主体組織、或いはさらにマルテンサイトを含有したミクロ組織を有する鋼板を安定して製造するためには、上記成分組成を有する鋼材を用い、以下の製造条件を規定する必要がある。
スラブ加熱条件:
上述したように、本発明では、Moを添加せずに、またはMoの添加量を制限しても、主に鋼中のWとBの相乗作用による焼入れ性向上効果を発揮し、引張強さと低温靭性に優れたベイナイト主体のミクロ組織を得るために、上述した成分組成を有する鋼を溶鋼し、連続鋳造または分塊でスラブを製造した後、スラブ加熱温度を900〜1100℃の比較的低温とすることが必要である。
スラブ加熱温度が900℃未満になると、特にW及びBを鋼中に十分に固溶させ、鋳造組織を整粒化することができなくなるため、鋼板の目的とする引張強さと低温靭性を安定して確保することが困難となる。一方、スラブ加熱温度が1100℃を超えると、鋼中のWとBの相乗効果による焼入れ性向上効果が損なわれ、目的とするベイナイト主体組織および旧オーステナイト粒界の偏析B量を適正範囲にし、引張強さと低温靭性を安定して達成することが困難となる。さらに、鋼板の引張強さと低温靭性を向上するために、加熱温度を930〜1050℃とするのが好ましい。WとBの複合添加による焼入れ性の向上が最も顕著になるスラブ加熱温度の上限は、1000℃である。
スラブ加熱の保持時間は、30分未満では中心部の温度が低くなることがあり、スラブ全体を均一に加熱するためには、下限を30分以上とすることが必要である。一方、スラブ加熱を120分以上行なうと、組織が粗大になり、低温靭性を損なうことがあるため、上限を120分以下とすることが必要である。
粗圧延条件:
上記加熱されたスラブの粗圧延は、仕上圧延における未再結晶圧延をする前に、鋼中のオーステナイト結晶粒径を微細化するために、上記加熱温度以下、900℃以上のオーステナイト温度域で圧延することが好ましい。なお、低温スラブ加熱が本プロセスのポイントであるため、加熱炉から抽出した後、直ちに粗圧延を行うことが好ましい。また、製造条件によってはスラブ加熱後の温度低下が大きく、粗圧延がそのまま未再結晶温度域に入る可能性もある。
また、680℃以上のオーステナイト域での累積圧下率は75%以上とするのが好ましい。これは、結晶粒径を微細化して、強度および低温靭性を向上させるためである。
仕上げ圧延条件:
仕上げ圧延は上記粗圧延に引き続いて行われ、900℃以下、スラブ加熱温度によっては、好ましくは850℃以下の未再結晶温度域で行う。仕上げ圧延の終了温度は、680℃以上のオーステナイト域の温度とする。なお、680℃という低温での圧延は製造工程上の負荷が大きい。そのため、低温圧延が好ましいとはいえ、通常は、750℃以上を仕上げ圧延終了温度とすることが多い。最終的な累積圧下率は、結晶粒径を微細化するため、75%以上とするのが好ましい。
冷却条件:
上記仕上圧延を終了した後、引き続き、1〜35℃/秒の冷却速度で、680℃以上のオーステナイト温度域から冷却を開始し、500℃以下の温度で冷却を終了する冷却(以下、加速冷却という)を行う必要がある。なお、これらの鋼板の冷却速度、温度は、鋼板の板厚中心部で制御することが好ましい(以下、鋼板の冷却速度、温度は、鋼板の板厚中心部での冷却速度、温度を意味するものとする)。なお、加速冷却は、仕上げ圧延終了後、直ちに開始することが好ましい。
鋼板の加速冷却における冷却速度が35℃/秒を超えると、鋼板のミクロ組織がマルテンサイト主体組織となり、鋼板の延性が低下する。一方、鋼板の板厚中心部の冷却速度が1℃/秒未満の場合には、鋼板の引張強さを安定して向上することができず、また、鋼板ミクロ組織がグラニュラーベイナイトになり低温靭性が低下する。なお、ミクロ組織をベイナイト主体とするには、加速冷却における冷却速度の上限を30℃/秒以下とすることが好ましい。
鋼板の加速冷却における終了温度は、オーステナイト温度域から冷却を開始した後、下部ベイナイトおよび擬似上部ベイナイトの変態を終了させ、これらのベイナイト主体組織を得るために、500℃以下の温度にする必要がある。なお、マルテンサイト組織は、少量であれば含有しても構わないが、過剰なマルテンサイトの生成を抑制するには、冷却終了温度の下限を250℃以上とすることが好ましい。これらの点から、好ましくは加速冷却の終了温度は300〜450℃の範囲内でするのが好ましい。また、強度を向上させるためには、加速冷却の上限を420℃以下とすることが好ましい。
本発明では、以上説明した製造方法により得られた高強度ラインパイプ用鋼板を用いて、この鋼板を通常の造管方法を用いて造管することにより、低温靭性優れた高強度ラインパイプを製造することができる。特に、X120級ラインパイプに要求されるラインパイプの円周方向での900MPa以上の引張強さ(TS−C)を達成でき、かつラインパイプの母材およびHAZの低温靱性が−30℃でのVノッチシャルピー衝撃値が200J以上を達成できるための引張強さ(TS−T)および低温靱性を得ることができる。
上記通常の造管方法としては、例えば、直径が450〜1500mm、肉厚が10〜40mm程度のサイズの鋼管を製造する場合には、鋼板の圧延方向と鋼管の長手方向が一致するように、U形、次いでO形に成形するUO工程において前記鋼板を管状に成形した後、鋼板の突き合わせ部を仮付け溶接し、内外面からサブマージアーク溶接を行う。さらに得られた鋼管には、真円度を高めるために、拡管を施す。なお、ラインパイプを拡管する場合、真円度を高めるために鋼板を塑性域まで変形させる必要があるが、本発明の高強度ラインパイプの場合は、拡管率を0.7%以上とすることが好ましい。一方、拡管率を2%超に大きくすると、母材、溶接部とも塑性変形による靭性劣化が大きくなるため、拡管率の上限は2%とすることが好ましい。
なお、拡管率とは、拡管率=(拡管後円周−拡管前円周)/拡管前円周で定義される。
表1に示す化学成分の鋼を300トン転炉で溶製した後、連続鋳造鋼片とし、その後、表2に示すスラブ加熱温度で1時間の再加熱を施した後、オーステナイトの再結晶温度域で粗圧延し、次いで、900〜750℃の未再結晶温度域で累積圧下量が75%以上となる制御圧延を行って、板厚を20mmとし、その後、板厚中心部の冷却速度および水冷停止温度が表2に示す条件になるように水冷して鋼板を製造した。この鋼板を、UO工程で管状に成形して、突合せ部を仮付け溶接後、サブマージアーク溶接し、拡管率1%の拡管を行った。外径が965mmの鋼管を製造した。サブマージアーク溶接は、3電極、1.5m/分、入熱3.0kJ/mmの溶接条件で、内外面から各1パスづつ行った。
Figure 0005020691
これらの鋼板および鋼管から試験片を採取し、引張試験およびシャルピー衝撃試験を行った。引張試験は、API 5Lに準拠して実施した。鋼板の幅方向から全厚試験片を採取し、鋼管の円周方向については、鋼管から全厚の円弧状短冊を切り出してプレス加工により扁平し、円周方向を長手とする全厚試験片を作製した。降伏強度としては、0.2%オフセット耐力を測定した。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に準拠して、鋼板の幅方向および鋼管の円周方向を長手とするフルサイズのVノッチ試験片を用いて、−30℃で行った。なお、Vノッチは母材に設けた。−30℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギー値が200J以上であれば、−20℃では250J以上のシャルピー衝撃吸収エネルギー値を確保できる。また、ミクロ組織は走査電子顕微鏡観察に基づいて同定し、面積率が70%以上である組織を表2の「ミクロ組織」に示した。粒界偏析B量は三次元アトムプローブ測定法によって測定した。また鋼板の引張り強度をTS-Tで示し、パイプとした後の引張り強度をTS−Cで示す。製造条件と鋼板および鋼管のミクロ組織、B(ボロン)の偏析量並びに特性を表2に示す。
Figure 0005020691
本発明範囲の化学成分の鋼A、B、C、D、E、F、G、HおよびIを用い、本発明の範囲内の条件で製造した、実施例No.1〜15の鋼板および鋼管は、強度が目標範囲にあり低温靭性も高い。
一方、本発明範囲の化学成分の鋼BおよびGであっても、冷却速度が本発明の範囲よりも遅い比較例No.18および20の鋼板においては、ミクロ組織が本発明の範囲外である。本発明範囲の化学成分の鋼Aであっても、スラブ加熱温度が高い比較例No.16、冷却停止温度が本発明の範囲よりも高い比較例No.17、本発明範囲の化学成分の鋼Bであっても、加熱温度が本発明の範囲よりも高い比較例No.19の鋼管においては、ミクロ組織が本発明の範囲外であり、強度が若干低下している。さらに、本発明範囲の化学成分の鋼Gであっても、冷却速度が本発明の範囲よりも高い比較例No.21の鋼板においては、マルテンサイト主体のミクロ組織となり、低温靭性が低下している。
また、C量が高い鋼Jを用いた比較例No.22、Wが添加されていない鋼Kを用いた比較例No.23、WとBが添加されていない鋼Lを用いた比較例No.24はミクロ組織が本発明の範囲外であると共に低温靭性が低い。
W+B含有鋼、Mo+B含有鋼およびB含有鋼の鋼中B含有量と焼入れ性との関係を示す図である(スラブ加熱温度:1000℃)。 W+B含有鋼、Mo+B含有鋼およびB含有鋼の鋼中B含有量と焼入れ性との関係を示す図である(スラブ加熱温度:1250℃)。 W+B含有鋼、Mo+B含有鋼およびB含有鋼の焼入れ性とスラブ加熱温度との関係を示す図である。 鋼板組織中の旧オーステナイト粒界における偏析Bの単位面積当りの平均原子数と−30℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーの関係を示す図である。

Claims (8)

  1. 質量% で、
    C :0.03〜0.07%、
    Si:0.02〜0.6%、
    Mn:1.5〜2.5%、
    P :0.015%以下、
    S :0.003%以下、
    W :0.2〜1.2%、
    Nb:0.01〜0.10%、
    Ti:0.005〜0.030%、
    Al:0.10%以下、
    N :0.001〜0.006%、
    B :0.0003〜0.002%を含有し、
    かつ前記Ti含有量[Ti%]および前記N含有量[N%]が[Ti%]>3.4[N%]の関係式を満足し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、ミクロ組織がベイナイトであり、
    ミクロ組織中の旧オーステナイト粒界面における偏析Bの単位面積あたりの平均原子数が5×10 11 〜5×10 13 個/mm 2 であることを特徴とする低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
  2. さらに、質量%で、
    Ni:0.1〜2.5%、
    V :0.01〜0.10%、
    Mo:0.1〜1.0%、
    Cu:0.3〜1.0%、および、
    Cr:0.3〜1.0%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
  3. さらに、質量%で、
    Ca:0.001〜0.01%、
    REM:0.001〜0.02%、および、
    Mg:0.001〜0.006%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
  4. 引張強さが900MPa以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の低温靭性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板。
  5. 請求項1〜の何れか1項に記載の鋼板を素材とすることを特徴とする低温靭性に優れた高強度ラインパイプ。
  6. 円周方向の引張強さが900〜1100MPaであることを特徴とする請求項に記載の低温靱性に優れた高強度ラインパイプ。
  7. 請求項1〜3の何れか1項に記載の成分からなるスラブを900〜1100℃の温度に加熱し、該温度で30〜120分保持した後、900℃以上のオーステナイト温度域で粗圧延し、900℃以下の未再結晶温度域で仕上圧延し、680℃以上のオーステナイト温度域で仕上圧延を終了し、引き続き、1〜35℃/秒の冷却速度で、680℃以上のオーステナイト温度域から冷却を開始し、500℃以下の温度で冷却を終了することを特徴とする低温靱性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法。
  8. 請求項に記載の製造方法により鋼板を製造し、該鋼板を管状に成形した後、鋼板の突き合わせ部を溶接することを特徴とする低温靱性に優れた高強度ラインパイプの製造方法。
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