JP6648736B2 - 母材低温靱性とhaz靱性に優れたクラッド鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、パイプラインや石油精製プラント等の流体輸送用配管、またはガス貯蔵用の鋼管などに好適な鋼管用のクラッド鋼板およびその製造方法に関し、特に母材が高強度で低温靱性に優れるとともに、溶接熱影響部靭性(HAZ靭性)に優れたクラッド鋼板およびその製造方法に関するものである。
クラッド鋼板とは、合せ材にオーステナイト系ステンレス鋼やNi合金鋼など、母材に普通鋼材と、二種類の性質の異なる金属を貼り合わせた鋼板である。合せ材のオーステナイト系ステンレス鋼には、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316Lなどが代表的である。Ni合金には、Alloy825やAlloy625などが代表的である。クラッド鋼板は、異種金属を金属学的に接合させたもので、めっきとは異なり剥離する心配がなく、単一金属および合金では達し得ない新たな特性を持たせることができる。
クラッド鋼板は、使用環境毎の目的に合った機能を有する合せ材を選択することにより、無垢材よりも合金元素の使用量が少なく、かつ無垢材と同等の耐食性を合せ材によって確保でき、さらに炭素鋼・低合金鋼と同等の強度・靱性を母材によって確保できるため、経済性と機能性が両立できるという利点を有する。以上から、高合金の合せ材を用いたクラッド鋼板は非常に有益な機能性鋼材であると考えられており、近年そのニーズが各種産業分野で益々高まっている。
オーステナイト系ステンレスクラッド鋼板は、ケミカルタンカー用として多く用いられている。一方で、エネルギー開発分野の成長とともに、ケミカルタンカー用よりも板厚が厚く、また母材の低温靱性や溶接部のHAZ靱性の要求が高いパイプライン用途としての需要が増えてきている。このクラッドパイプ原板用途のクラッド鋼板に求められる性能は、合せ材の高耐食性、合せ材と母材間の接合性は当然のことながら、パイプライン用途として使用される炭素鋼鋼管と同様の母材の機械的特性が挙げられる。具体的には、母材の機械的特性は、強度、母材の低温靱性、溶接熱影響部(HAZ)の低温靱性、鋼管周方向の降伏比が求められる。特に、近年の難採掘環境では、板厚を厚肉として強度を確保しつつ、さらに、鋼管の内圧による延性破壊を抑制するために、鋼管周方向の降伏比を低減しつつ、さらに今まで以上に母材の低温靱性、特に脆性破壊の伝播停止特性が求められている。
このような背景から、以下に示すようなクラッド鋼板およびクラッド鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献1および2には、クラッド鋼の母材の強度と低温靭性を達成する、焼入れ焼戻し処理で製造されたクラッド鋼およびその製造方法が開示されている。
特許文献3には、900℃以下の温度域における累積圧下率50%以上、圧延終了温度を750℃以上とする熱間圧延を行った後に、冷却停止温度600℃以下とするTMCP(Thermo-Mechanical Control Process)製造を行うことで、母材の低温靱性とHAZ靱性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板が開示されている。
特許文献4には、金属組織が面積分率が2〜15%の島状マルテンサイトとベイナイトからなり、降伏比が圧延直角方向で88%以下、圧延方向で85%以下であり、DWTT試験における−10℃での延性破面率が85%以上となる低降伏比のクラッド鋼板の母材が開示されている。また、クラッド鋼板を熱間圧延した後、(Ar−10℃)以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で冷却停止温度500〜650℃まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で550〜750℃まで再加熱を行う、クラッド鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献5には、金属組織がベイナイトとフェライトからなり、鋼板の降伏伸びが0.5%以上の鋼管の降伏比が低減可能な高強度鋼管の製造方法について、再結晶域で圧延を行い、その後、Ar点以上900℃以下の未再結晶温度域で累積圧下率50%以上の仕上げ圧延をおこない、圧延後にAr−50℃〜Ar−5℃の範囲の温度から加速冷却を行うことが開示されている。特許文献6には、金属組織がベイナイト主体の組織であり、鋼板の降伏伸びが0.5〜3%とすることで、鋼管の降伏比の増加を抑制可能な高強度鋼管用鋼板の製造方法について、950℃以下のオーステナイト温度域で圧下率50%以上で圧延を行った後、Ar温度以上から加速冷却を行うことが開示されている。
特開2006−328460号公報 特開2004−149821号公報 特開2015−105399号公報 特開2015−224376号公報 国際公開第2011/042936号 特開2002−363686号公報
特許文献1および2では、焼入れ処理を行っている。上述したように、特定の温度域で保持されると耐食性の劣化が生じるため、高耐食性を達成するためには、圧延後に炭化物が析出する温度域に再加熱される焼入れ処理を行わない方が良い。
また、特許文献3の場合、母材のベイナイト組織中に島状マルテンサイト(以下、MAと記す)が生成する場合があり、その際には、引張試験での応力歪曲線がラウンド型となる。応力歪曲線がラウンド型となる材料の場合、冷間加工ならびに拡管によって鋼板から鋼管とする際の加工硬化によって、鋼板の降伏比(=0.5YS/TS、ここで、0.5YS:0.5%耐力、TS:引張強さである。)に対して鋼管の降伏比は増加するという問題がある。
特許文献4の場合、島状マルテンサイトの面積分率が多いため、母材の低温靱性が劣化する問題がある。
また、特許文献5では、Ar温度未満から加速冷却を行っているため、フェライト面積率が10〜30%となり、母材の強度確保が困難となる。さらに、特許文献6は強度確保可能なベイナイト組織であるものの、降伏伸びを0.5%以上とする最適なMA分率の範囲が不明である。そもそも、特許文献5および6はクラッド鋼板を想定したものではなく、クラッド鋼板の合せ材の耐食性と接合性とを確保するために、炭素鋼鋼板で得られた技術をそのままクラッド鋼板へ転用することは難しい。
ところで、特許文献4の場合、クラッド鋼板を熱間圧延し、500〜650℃まで加速冷却を行った後、直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で550〜750℃まで再加熱を行うので、生産能率の面、および、製造に必要とされるエネルギーの面では有利である。しかし、熱間圧延終了後に、より低温まで冷却(焼入れ)してから焼き戻しする、直接焼入れ−焼戻しプロセス(DQ−Tプロセスとも呼ばれる)の方が、母材の強度確保や合せ材の耐食性の確保の観点から、さらに好ましいと考えられる。
これとは別に、圧延後の鋼材を再加熱してから焼き入れし、その後に焼き戻しを行う、いわゆる再加熱焼入れ−焼戻しプロセス(RQ−Tプロセスとも呼ばれる)が知られている。これは、特許文献4に記載される技術よりも低温まで焼入れを実施する点で、DQ−Tプロセスと類似する。しかしながら、RQ−Tプロセスにおいては、圧延された鋼板をオーステナイト単相温度域であるAc温度以上に再加熱するため、DQ−Tより多くのエネルギーが必要とされるほか、この再加熱時に、合せ材であるNi合金中に耐食性に有害な炭化物や金属間化合物が生じるおそれがあるため、このリスクを回避するための特別な対応が必要とされる、という課題があった。
本発明は、パイプラインや石油精製プラント等の流体輸送用配管、またはガス貯蔵用の鋼管などに好適な鋼管用クラッド鋼板およびその製造方法に関し、特に母材が高強度で低温靱性に優れるとともに、HAZ靭性にも優れたクラッド鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、板厚を厚肉としても強度を確保しつつ、鋼管の内圧による延性破壊を抑制するために、鋼管周方向の降伏比を低減することが可能なクラッド鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、製造に必要なエネルギーと、母材の機械的性質および合せ材の耐食性とのバランスを考慮し、DQ−Tプロセスによるクラッド鋼板の製造技術を検討した。
クラッド鋼板は、無垢の合せ材や無垢の低合金鋼と異なり、合せ材の耐食性の確保、母材の機械的性質の確保、複合材料としての接合性の確保の3つの特性を同時に満たす必要がある。特に、オーステナイト系ステンレス鋼板の耐食性の確保を満たす必要がある。本発明者らは、かかる事情に鑑み、合せ材の耐食性については、炭化物を抑制するためにC含有量を低くし、さらに製造条件で圧延終了温度の低温化の防止、また、母材の機械的特性、特に低温靱性と溶接熱影響部の靱性のために、母材の成分と製造条件の加熱温度と制御圧延条件の適正化、また、接合性については、製造条件のスラブ加熱温度と熱間圧延の温度範囲とその際の圧下比について適正化を行った。さらに、クラッド鋼管とした際の鋼管周方向の降伏比(YR)を低減するために、島状マルテンサイト(MA)の面積分率を含めた母材の金属組織、またそれを達成するための製造条件を鋭意検討し、すべての特性と満足する条件を知見した。
本発明は、このような知見に基づいて完成させたもので、その要旨は、以下の通りである。
[1]低合金鋼を母材とするクラッド鋼板において、前記母材の化学成分が質量%で、C:0.020〜0.100%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.75〜1.80%、P:0.015%以下、S:0.0030%以下、Nb:0.010〜0.040%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0010〜0.0060%、Al:0.070%以下、V:0.010%未満、Ca:0.0005〜0.0040%を含有し、さらに前記Tiと前記Nの比であるTi/Nが2.00〜3.50であり、残部Fe及び不可避的不純物からなり、圧延直角方向の応力歪曲線において0.5%以上の降伏伸びを有し、さらに面積分率が2.0%未満の島状マルテンサイトと残部がベイナイト組織からなることを特徴とする母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板。
[2]さらに、前記母材の化学成分が、質量%で、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01〜0.50%、の中から選ばれる一種または二種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板。
[3]前記クラッド鋼板の合せ材をオーステナイト系ステンレス鋼とすることを特徴とする[1]または[2]に記載の母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板。
[4]前記合せ材の化学成分が、質量%で、C:0.020%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.40%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:11.00〜15.00%、Cr:16.00〜20.00%、Mo:2.00〜4.00%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする[3]に記載の母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板。
[5][1]〜[4]の何れかに記載のクラッド鋼板の素材を用いて、1050〜1150℃に加熱後、鋼板表面温度が950℃以上での圧下比を1.5以上とし、未再結晶開始温度Tnr以下の温度域において累積圧下率40%以上、圧延終了温度を800℃以上とする条件で熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程後に、Ar温度以上から冷却速度5℃/s以上、冷却停止温度500℃未満とする条件で加速冷却する焼入れ工程と、さらに、400〜600℃で焼き戻しする焼き戻し工程とを備えることを特徴とする母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
本発明によれば、母材が高強度で、低温靱性に優れるとともに、HAZ靭性にも優れ、また鋼管周方向の降伏比を低減することが可能なクラッド鋼板およびその製造方法を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、各元素の%表示は、特に記載が無い限り質量%を意味する。
1.母材の化学成分について
C:0.020〜0.100%
Cは鋼の強度を向上させる有効な成分であり、0.020%未満では一般溶接用鋼としては強度が得られないため0.020%以上とする。一方、過剰なCの含有は鋼材ならびに熱影響部の靭性の劣化を招き、また、溶接性の観点からC量の低減が望ましい。このため、C量は0.020〜0.100%とする。なお、溶接性及びHAZ靭性の観点から、好ましくは0.020〜0.080%の範囲である。より好ましくは0.030〜0.080%の範囲である。
Si:0.10〜0.50%
Siは製鋼時の脱酸のために添加され、また、母材の強度確保に必要な成分であるため0.10%以上の含有が必要である。一方、0.50%を超えるSiの含有は靭性、加工性に悪影響を及ぼす。このため、Si量は0.10〜0.50%の範囲とする。脱酸の効果と靭性の観点から、好ましくは0.20〜0.40%の範囲である。
Mn:0.75〜1.80%
Mnは母材の強度及び靭性の確保に有効な成分として、0.75%以上の含有が必要である。一方、1.80%を超えるMnの含有は靭性、溶接性に悪影響を与える。このため、Mn量は0.75〜1.80%の範囲とする。なお、好ましくは、1.00〜1.70%の範囲である。
P:0.015%以下
母材ならびに溶接熱影響部靭性を確保するため、Pを極力低減することが望ましい。しかしながら、過度の脱Pはコスト上昇を招く。このため、P量は0.015%以下とする。好ましくは0.010%以下である。
S:0.0030%以下
Sは鋼中不純物として不可避な元素であるものの、低温靭性を確保するために、S量は0.0030%以下とする。好ましくは0.0010%以下である。
Nb:0.010〜0.040%
Nbは組織の細粒化により靱性を向上させ、さらに固溶Nbの焼入性向上により強度上に寄与する重要な元素である。クラッド鋼板では、接合性を確保するために、無垢の低合金鋼に比べて、圧延終了温度を高くする必要がある。母材靱性を確保するためには組織の細粒化が重要であり、細粒化させるためには未再結晶域での圧延が重要であることはよく知られている。Nb添加は未再結晶温度域を高温に広げる効果があり、その量が0.010%以上とすることで、クラッド鋼板の接合性を確保しながら母材の靱性を向上することが可能となる。一方、0.040%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。このため、Nb量は0.010〜0.040%の範囲とする。好ましくは、0.015〜0.035%の範囲である。
Ti:0.005〜0.030%
TiはTiNを形成してスラブ加熱時や溶接熱影響部の粒成長を抑制し、結果としてミクロ組織の微細化をもたらして強度と母材ならびに溶接熱影響部の靭性を改善する効果がある。その含有量は0.005%未満では効果が少ないため、0.005%以上含有させる。また、Tiの含有量が0.030%を超えると、かえって上記効果が得られないのみならず、靭性も劣化させる。したがって、Ti量は0.005〜0.030%の範囲とする。好ましくは、0.010〜0.020%の範囲である。
N:0.0010〜0.0060%
NはTiNとして析出することで溶接熱影響部靭性の向上に効果がある。しかしながら、Nの含有量が0.0010%未満では効果が薄れるため、下限を0.0010%とする。一方、0.0060%を超えると固溶Nが増大し溶接熱影響部靭性の低下がおこる。TiNの微細析出によるHAZ靭性の向上を考慮し、N量は0.0010〜0.0060%の範囲とする。好ましくは0.0020〜0.0050%の範囲である。
Ti/N:2.00〜3.50
Ti及びNは、上記のようにTiNを生成してHAZの靱性を改善するのに重要な元素であり、該効果を充分に発揮するためには両元素の含有量の相関関係も重要となる。すなわち、質量%で、Ti/Nが2.00未満であると結晶粒が粗大化し、靱性値が大きく低下することがある。また、Ti/Nが3.50を超えると同様の理由により靱性値が低下することがある。したがって、Ti/Nは2.00〜3.50の範囲とする。
Al:0.070%以下
Alは、製鋼過程の脱酸用として重要な元素であるとともに、溶接熱影響部の靭性向上にも効力を有する。しかし、0.070%を超えて含有しても溶接熱影響部の靭性改善効果は飽和するので、Al量は0.070%以下とする。なお、溶接熱影響部の靭性改善効果を得るためには、0.010%以上の含有が好ましい。
V:0.010%未満
Vは、焼入性を高め、強度上昇に寄与する元素である。一方で、母材、HAZのいずれの領域においても著しく硬化して、靱性劣化の原因となる。この靱性劣化はVが0.010%以上含有すると顕著となる。そのため、Vは0.010%未満とする。より好ましくは、0.004%未満であり、工業的に可能なレベルで含有させないことがさらに好ましい。
Ca:0.0005〜0.0040%
Caは硫化物系介在物の形態を制御し母材の靭性と溶接熱影響部靭性を改善する効果があるため、0.0005%以上含有する。しかし、0.0040%を超えると効果が飽和し、逆に清浄度を低下させ溶接熱影響部の靭性を劣化させる。このため、Ca量は0.0005〜0.0040%の範囲とする。好ましくは0.0020〜0.0030%の範囲である。
以上が本発明のクラッド鋼板の母材の基本成分であり、残部はFeおよび不可避的不純物である。上記成分に加えて、Cu、Ni、Cr、Moの中から選ばれる一種または二種以上を、以下のとおり含有させることができる。
Cu:0.01〜0.50%
Cuは焼入性元素であり、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つである。Cuを含有する場合、0.01%以上であることが好ましい。一方、0.50%を超えて含有すると溶接性を阻害することがある。このため、Cuを含有する場合、Cu量は0.01〜0.50%の範囲とする。より好ましくは、0.10〜0.40%の範囲である。
Ni:0.01〜0.50%
Niは焼入性元素であり、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つである。Niを含有する場合、0.01%以上であることが好ましい。一方、0.50%を超えると効果が飽和し、また、Niの含有は製造コストを上昇させる。このため、Niを含有する場合、Ni量は0.01〜0.50%の範囲とする。より好ましくは、0.10〜0.40%の範囲である。
Cr:0.01〜0.50%
Crは焼入性元素であり、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つである。Crを含有する場合、0.01%以上であることが好ましい。一方、0.50%を超えて含有すると溶接熱影響部靭性を劣化させることがある。このため、Crを含有する場合、Cr量は0.01〜0.50%の範囲とする。より好ましくは、0.05%〜0.35%の範囲である。
Mo:0.01〜0.50%
Moは焼入性元素であり、母材の強度と靭性を安定的に向上させる元素である。Moを含有する場合、0.01%以上であることが好ましい。一方、0.50%を超えて含有すると効果が飽和し、また、過剰な含有は溶接熱影響部靭性や溶接性を阻害する。このため、Moを含有する場合、Mo量は0.01〜0.50%の範囲とする。なお、母材強度と靭性の観点から、より好ましくは、0.05〜0.35%の範囲である。
2.合せ材の種類とその化学成分について
合せ材種類:オーステナイト系ステンレス鋼
オーステナイト系ステンレス鋼は、Ni、Cr、Moなどの耐食元素を多く含有していることから、耐食性能に優れている。特に、ラインパイプが使用される腐食環境の厳しい採掘環境のようなマイルドサワー環境では、耐応力腐食割感受性が改善される。また、同じくクラッド鋼板の合せ材として用いられるAlloy625を代表とするNi合金に比べて、変形抵抗が小さいことから、熱間圧延時の接合が比較的容易となる特徴がある。したがって、本発明の合せ材としてはオーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。
本発明の合せ材として、化学成分は、質量%で、C:0.020%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.40%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:11.00〜15.00%、Cr:16.00〜20.00%、Mo:2.00〜4.00%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることが好ましい。以下に、本発明の好適な合せ材の化学成分について説明する。
C:0.020%以下
Cはクラッド鋼の製造において、圧延中の熱履歴で炭化物として析出し、耐食性を阻害するため多量の含有は避けるべき元素である。0.020%を超えて含有すると、炭化物の析出が促進されて耐食性が劣化するため、C量は0.020%以下とする。好ましくは、0.015%以下である。
Si:1.00%以下
Siは製造時の脱酸に有効な成分である。しかしながら、1.00%を超えて含有すると非金属介在物として残存し、耐食性が劣化し、また熱間加工性も劣化するため、Si量は1.00%以下とする。好ましくは、0.75%以下である
Mn:1.40%以下
Mnも製鋼時の脱酸に有効な成分である。しかしながら、1.40%を超えて含有すると、MnSといった非金属介在物が残存し、耐食性が劣化し、また熱間加工性も劣化するため、1.40%以下とする。好ましくは1.00%以下とする。
P:0.045%以下
Pは不純物であり、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、P量は0.045%以下とする。好ましくは、0.030%以下とする。
S:0.030%以下
SはPと同様で不純物元素であり、MnSといった非金属介在物が析出して耐食性を劣化させる。したがって、S量は0.030%以下とする。好ましくは、0.010以下とする。
Ni:11.00〜15.00%
Niはオーステナイト系ステンレス鋼の主要元素であり、耐食性を向上させる元素である。後述するCrによって形成される酸化皮膜の密着性が増し、Crとの複合添加によって耐食性が向上する。しかし、高価な元素であるため、耐食性能と価格のバランスを考慮して、Ni量は、11.00〜15.00%の範囲とする。
Cr:16.00〜20.00%
Crは、金属の表面に保護性の高い酸化皮膜を形成し、耐孔食性や耐粒界腐食性といった耐食性を向上させる元素である。しかし、高価な元素であるため、耐食性能と価格のバランスを考慮して、Cr量は16.00〜20.00%の範囲とする。好ましくは、16.50〜19.00%の範囲である。
Mo:2.00〜4.00%
Moは、耐孔食性、耐隙間腐食性を向上させる元素である。CrとNiとの複合効果によって耐食性が向上する。一方で、高価な元素であり、CrとNiの添加量と価格のバランスを考慮して、Mo量は2.00〜4.00%の範囲とする。
上記した合せ材の成分の残部はFeおよび不可避的不純物である。また、不可避的不純物としては、Cu、B、Ca、N、O等が挙げられ、それぞれ、Cu:0.50%以下、B:0.0010%以下、Ca:0.0050%以下、N:0.05%以下、O:0.0050%以下の範囲内で含有しても耐食性に何ら影響を与えるものではない。当然ながら、その他の不可避的不純物が含有されても特性に影響しないので、含有してもかまわない。
3.金属組織について
次に、本発明の金属組織について説明する。
本発明では、面積分率2.0%未満の島状マルテンサイト(MA)と残部がベイナイト組織からなる金属組織とする。
ベイナイト組織は強度に優れた組織である。ベイナイト組織主体の中に硬質相であるMAが多く存在すると、ラウンド型の応力歪曲線の母材となる。このように、硬質相であるMAと、MAに比べると軟質であるベイナイト相といった、複合組織鋼になると、ラウンド型の応力歪曲線の材料となる。一方で、MA分率が小さくなると徐々に降伏棚が現れる。本発明では、MA分率が2.0%未満となると、降伏型の応力歪曲線で、さらに0.5%以上の降伏伸びが得られる母材となり、後述するように、従来の鋼管に比べ管周方向の降伏比を低くすることが可能となる。MA分率が2.0%以上となると、母材の低温靱性が劣化する。以上から、MA分率は2.0%未満とし、さらに、1.0%未満であることがさらに好ましい。なお、MAの面積分率は、例えばSEM(走査型電子顕微鏡)観察により得られた少なくとも4視野以上のミクロ組織写真を画像処理することによってMAの占めるそれらの面積率の平均値から算出することができる。
4.圧延直角方向の応力歪曲線において0.5%以上の降伏伸び
本発明では、圧延直角方向(C方向)の応力歪曲線において、降伏棚を有し0.5%以上の降伏伸びを有するものとする。応力歪曲線における降伏伸びの定義は、降伏点の不連続部(降伏棚)の長さが降伏伸びである。一般に、鋼板の圧延方向に対して直交する方向(圧延直角方向)が鋼管の管周方向と一致しているため、鋼板の圧延直角方向の引張特性が重要である。応力歪曲線に降伏棚がある場合、拡管による圧延直角方向の引張変形を降伏伸びによって吸収することができ、加工硬化による降伏強度の上昇量が低減できるため、従来の鋼管に比べ管周方向の降伏比を低くすることが可能となる。降伏伸びが0.5%未満では拡管による加工硬化量が大きくなるため、鋼管の降伏比が上昇する。よって、降伏伸びは0.5%以上とし、1.0%以上であることが好ましい。一方、降伏伸びが3.0%を超えると、拡管後も管軸方向の応力歪曲線に長い降伏伸びが残留するため、座屈特性が劣化するため、3.0%以下であることが好ましい。
5.製造方法について
本発明のNi合金クラッド鋼板の製造方法について以下に述べる。
本発明のクラッド鋼の母材素材ならびに合せ材素材は、前記した成分範囲に調整され、常法等により溶製することができる。クラッド圧延用組立スラブは、母材/合せ材/合せ材/母材というように重ね合わせた形式が製造上効率的であり、また冷却時の反りを考慮すると、母材同士、合せ材同士は等厚であることが望ましい。もちろん、上記で記述した組立方式に限定する必要が無いことは言うまでも無い。
加熱温度:1050〜1150℃
加熱時に合せ材を十分溶体化するために1050℃以上に加熱する。クラッド鋼の接合性の観点からは、加熱温度は高温である方が好ましい。しかしながら、1150℃を超えて加熱すると、母材の結晶粒粗大化によって靭性劣化を招く。よって、耐食性、低温靭性、接合性の観点から、加熱温度は1050〜1150℃の範囲とする。
950℃以上での圧下比:1.5以上
クラッド鋼は高温域での圧延によって、接合性が確保される。高温域での圧延が重要な理由としては、合せ材であるオーステナイト系ステンレス鋼と母材である低合金鋼の変形抵抗差が小さくなるため、圧延で理想的な接合界面となる点と、高温域では合せ材と母材との境界で元素相互拡散が進行しやすいためである。なお、オーステナイト系ステンレス鋼はNi合金に比べて変形抵抗が小さいことから、Ni合金クラッド鋼板の場合より、高温での大きな圧下比が必要なく、接合性に優れた特性となる。クラッド圧延用組立スラブを作製する段階で、組立スラブ内の真空度が10−4torr以上の高真空を確保できれば、合せ材/母材界面で十分な金属接合を得ることができ、そのためには、950℃以上での圧下比(=(圧延前の板厚)÷(圧延後の板厚))が1.5以上であれば良い。接合性の確保のためには、好ましくは、温度範囲は1000℃以上であり、圧下比は2.0以上である。
母材の強度、低温靭性、特に脆性破壊の伝播停止特性を改善するには、オーステナイト低温域での高圧下と圧延直後の水冷が有効であることが明らかとなった。そこで制御圧延と圧延後の冷却条件について以下に述べる。なお、圧延、冷却過程における温度は鋼板表面温度を意味するものとする。
制御圧延:未再結晶開始温度Tnr以下の温度域において累積圧下率40%以上、圧延終了温度を800℃以上
母材中のオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率が40%以上の圧延を行うことにより、オーステナイト粒が伸展し、その後の加速冷却で変態生成するベイナイトが微細化し靱性が向上する。圧延仕上温度を800℃未満まで低温化すると、元素拡散の進行が生じにくく、合せ材と母材との界面における接合性の劣化に繋がり、また、合せ材中の炭化物の析出が促進し、耐食性が劣化する。よって、制御圧延は、母材の強度、低温靱性と合せ材の耐食性、クラッド鋼板の接合性を全て確保するために、未再結晶開始温度Tnr以下の温度域において累積圧下率が40%以上とし、圧延終了温度を800℃以上とする。なお、Tnrは以下の式から求める。
nr(℃)=174log(Nb×(C+12/14×(N−Ti/3.42)))+1444
ただし、式に示す元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
Ar温度以上から冷却速度5℃/s以上、冷却停止温度500℃未満まで加速冷却する焼入れ工程
冷却開始温度はAr温度以上とする。圧延終了後、引き続いて実施される加速冷却をフェライト生成量が多くなる温度域から開始すると、フェライト相が混在したベイナイト組織となり、本発明の効果が得られないため、冷却開始温度をAr温度以上とする。ここで、Ar温度はフェライト変態が開始する温度であり、下記式により求めることができる。
Ar(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo−0.35(t−8)
ただし、式に示す元素記号は各元素の含有量(質量%)を、また、tは板厚(mm)を表す。
圧延終了後に500℃未満まで加速冷却するのは、母材の強度、低温靱性を担保するためである。特に、クラッド鋼板は、クラッド圧延用組立スラブを、母材/合せ材/合せ材/母材というように重ね合わせた形式で製造することが多く、通常の無垢の炭素鋼の圧延に比べて2倍の圧延厚になる。そのため、母材の強度、合せ材の耐食性を確保するためには、加速冷却の冷却速度を速め、冷却停止温度を低温化させなければ、製品板厚の全厚について特性を得ることができない。冷却速度は、耐食性に大きく影響し、冷却速度が5℃/s未満では、圧延直後からの冷却過程において、合せ材中に炭化物が析出し、耐食性が劣化する。よって、冷却停止温度は500℃未満とし、冷却速度は5℃/s以上とする。冷却停止温度は好ましくは、300℃以下とする。冷却速度は、好ましくは10℃/s以上である。なお、加速冷却後の冷却方法としては、水冷等を適用することができる。加速冷却後の冷却では、ベイナイト変態を完全に終了させるために、150℃以下まで冷却することが好ましい。
400〜600℃で焼き戻しする焼き戻し工程
焼入れ工程につづいて、焼入れされた鋼板に対して焼き戻しを実施する。焼き戻しの加熱開始温度は特に限定されるものではないが、室温にまで温度が下がってから焼き戻しを開始する必要はなく、たとえば、150℃以下の温度域から焼き戻しを開始することができる。
400〜600℃の焼き戻し温度で焼き戻し処理を行うのは、加速冷却後に金属組織中に生成したMAを分解・消失させ、降伏伸びが発現する降伏型の応力歪曲線にするためである。焼き戻し温度が400℃未満だと充分にMAが分解しない。600℃を超えると母材の強度低下が起こり、また、合せ材の耐食性が低下する。よって、焼き戻し温度は400〜600℃の範囲とする。
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。
表1に示す成分組成からなる母材と、表2に示す成分組成からなる合せ材を用いて、クラッド鋼板を製造した。表1および表2のいずれも、残部はFeおよび不可避的不純物である。製造条件は、母材/合せ材/合せ材/母材を重ねて一組のスラブに組み立てた。スラブにおける母材の厚みは160mm、合せ材の厚みは15mmとした。ついで、表3に示す加熱、圧延、冷却条件で熱間圧延および焼き入れを行い、その後、150℃以下の温度域から加熱して焼き戻しを行った。このようにして、圧延後の片面のクラッド鋼板の厚みが、母材32mm+合せ材3mmとなるクラッド鋼板を製造した。ここで、圧延直後のクラッド鋼板の全体の板厚は、母材32mm+合せ材3mm+合せ材3mm母材32mmの合計70mmであるので、表1のAr変態点は、前述の計算式において板厚tを70mmとして計算した値を示している。
母材の機械的特性は、API−5Lに準拠した引張試験片とDWTT試験片を採取し、引張試験とDWTT試験をおこなった。採取方向は、鋼板の圧延直角方向とした。引張試験は、0.5%YSが450MPa以上、TSが535MPa以上を母材強度に優れているものとした。また、引張試験後に応力歪曲線から降伏伸びを求めた。DWTT試験は、−20℃を試験温度とし、延性破面率(SA)85%以上を母材の低温靭性に優れているものとした。また、鋼板から冷間で管状に成型し、突合せ部を溶接して鋼管を製造し、拡管後の鋼管について、管周方向から丸棒引張試験片(平行部径:6mmΦ、標点間距離:24mm)を切り出して、0.5%YS、TS、降伏比(YR)を測定した。鋼管の降伏比が90%以下となる鋼板を特性が満足すると判断する。また、鋼管の溶接部の靱性評価(HAZ靭性)をシャルピー試験で行った。シャルピー試験片のノッチ位置は、溶接金属と母材の境界であるボンド部から、母材側へ2mm(HAZ2mm)の位置とした。試験温度は、−40℃で実施した。本発明では−40℃の吸収エネルギー(vE−40℃)が100J以上を靱性に優れているものとした。
また、合せ材の耐食性試験は、JIS G0578:2000のステンレス鋼の塩化第二鉄腐食試験方法に準拠し、試験温度50℃での浸漬試験を行い、腐食減少量が50g/(mm・hr)未満を合せ材の耐食性に優れているものとした。
また、クラッド鋼としての接合性は、JIS G0601:2012のクラッド鋼の試験方法に記載のせん断強さ試験に準拠して行った。評価基準はせん断強さが300MPa以上のものを接合性が良好であると判断した。
また、組織観察について、島状マルテンサイト(MA)の面積分率は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により得られた4視野のミクロ組織写真を画像処理することによってMAの占めるそれらの面積率の平均値から算出した。なお、ベイナイトについては、光学顕微鏡あるいはSEMによる観察にて判断した。
表4に試験結果を示す。
Figure 0006648736
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表1には、母材の化学成分実績を示す。鋼No.A1〜A9は本発明の範囲に属する発明例である。一方、鋼No.B1〜B4は何れかの成分が発明の範囲外となっている比較例である。表2には、合せ材の化学成分実績を示す。鋼No.C1〜C2は本発明の範囲に属する発明例である。表3には、表1に示す化学成分の母材と、表2に示す化学成分の合せ材を使ってクラッド鋼板を製造した製造実績を示す。製造方法No.E1〜E8は、加熱、圧延、冷却、焼き戻しのいずれの製造条件とも発明の範囲に属する発明例である。一方、製造方法No.F1〜F7は加熱、圧延、冷却、焼き戻しのいずれかの製造条件が発明の範囲外である比較例である。なお、製造したクラッド鋼板を35mm、つまり、圧延厚として70mmとしている。これらの鋼板を用いて、管厚35mm、外径900mmの鋼管を製造し、最終工程において拡管率1.0%で拡管を施した。
表4には、製造した各種クラッド鋼板とクラッド鋼管の試験結果を示す。表には、金属組織、MA分率、クラッド鋼板の母材の引張試験、落重試験の結果、鋼管の母材の引張特性、溶接試験結果(HAZ2mmでのシャルピー試験)、せん断試験結果および合せ材の腐食試験結果を示す。実施例No.1〜17はいずれの試験も目標値を満足する発明例である。実施例No.18〜21は母材の化学成分が発明の範囲外であり、No.22〜28は何れかの製造条件が発明の範囲外であるため、各種試験結果が目標値に達しなかった。

Claims (3)

  1. 低合金鋼を母材とするクラッド鋼板において、前記母材の化学成分が質量%で、C:0.020〜0.100%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.75〜1.80%、P:0.015%以下、S:0.0030%以下、Nb:0.010〜0.040%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0010〜0.0060%、Al:0.070%以下、V:0.010%未満、Ca:0.0005〜0.0040%を含有し、さらに前記Tiと前記Nの比であるTi/Nが2.00〜3.50であり、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記クラッド鋼板の合せ材をオーステナイト系ステンレス鋼とし、前記合せ材の化学成分が、質量%で、C:0.020%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.40%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:11.00〜15.00%、Cr:16.00〜20.00%、Mo:2.00〜4.00%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記母材が圧延直角方向の応力歪曲線において0.5%以上の降伏伸びを有し、さらに面積分率が2.0%未満の島状マルテンサイトと残部がベイナイト組織からなることを特徴とする母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板。
  2. さらに、前記母材の化学成分が、質量%で、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01〜0.50%、の中から選ばれる一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の化学成分を有する母材および合せ材を重ね合わせたクラッド圧延用組立スラブを用いて、1050〜1150℃に加熱後、鋼板表面温度が950℃以上での圧下比を1.5以上とし、未再結晶開始温度Tnr以下の温度域において累積圧下率40%以上、圧延終了温度を800℃以上とする条件で熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程後に、Ar温度以上から冷却速度5℃/s以上、冷却停止温度500℃未満とする条件で加速冷却する焼入れ工程と、さらに、400〜600℃で焼き戻しする焼き戻し工程とを備えることを特徴とする、前記母材が圧延直角方向の応力歪曲線において0.5%以上の降伏伸びを有し、さらに面積分率が2.0%未満の島状マルテンサイトと残部がベイナイト組織からなる、母材低温靱性とHAZ靱性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
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