JP6024643B2 - 母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板の製造方法 - Google Patents

母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板の製造方法 Download PDF

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本発明は、母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板およびその製造方法に関するものである。
クラッド鋼板は母材の機械的特性と合せ材の耐食性を兼ね備え、かつ経済性に優れた高機能鋼板である。Ni合金クラッド鋼板の合せ材としてはAlloy825やAlloy625が代表的にあるが、Alloy625クラッド鋼板はその合せ材の高耐食性能から、エネルギー開発分野の成長とともにパイプライン用途として需要が特に期待されている。近年、難採掘環境と呼ばれる領域においてもエネルギー資源開発が進んでおり、このような環境は、今まで以上に母材の低温靭性、特に脆性破壊の伝播停止特性や合せ材の耐食性が求められている。
クラッド鋼板とは合せ材にステンレス鋼やNi合金、母材に低合金鋼材と、二種類の性質の異なる金属を張り合わせた鋼材である。クラッド鋼は、異種金属を金属学的に接合させたもので、めっきとは異なり剥離する心配がなく単一金属及び合金では達し得ない新たな特性を持たせることができる。
クラッド鋼板は、使用環境毎の目的に合った機能を有する合せ材を選択することにより無垢材(全厚が合せ材の金属組織のような場合をいう)と同等の機能を発揮させることができる。さらに、クラッド鋼の母材には、耐食性以外の高靭性、高強度といった厳しい環境に適した炭素鋼や低合金鋼を適用することができる。
このように、クラッド鋼は、無垢材よりも合金元素の使用量が少なく、かつ、無垢材と同等の耐食性能を確保でき、さらに炭素鋼や低合金鋼と同等の強度や靭性を確保できるため、経済性と機能性が両立できるという利点を有する。
以上から、高合金の合せ材を用いたクラッド鋼は非常に有益な機能性鋼材であると考えられており、近年そのニーズが各種産業分野で益々高まっている。
しかしながら、合せ材であるNi合金の中でもAlloy625は、クラッド鋼板製造時の熱履歴によって炭化物や金属間化合物が析出する。析出する炭化物としては、MC、MC、M23(Mは金属元素を表す)などがあり、金属間化合物としては、Laves相、δ相、γ’’相がある。このうち、MCは主としてNbCであり、MCの析出は耐食性に大きな影響を与えない。また、Alloy625中では金属間化合物の析出は炭化物の析出よりも遅く、耐食性劣化の原因となりにくい。従って、Alloy625の耐食性劣化を引き起こすのはMCおよびM23である。これらMC、M23は700〜900℃の温度域に析出ノーズが存在し、耐食元素であるCr、Mo、Niを含有し、粒界に沿って析出するため、鋭敏化の原因となる。通常、無垢材であれば圧延後に溶体化処理を施し析出物を固溶させることができるが、クラッド鋼の場合には析出物が溶け込むような高温に加熱保持すると、母材である低合金鋼の結晶粒が粗大化し、機械的特性が著しく悪化するという問題がある。
このような背景から、以下に示すようなクラッド鋼板およびクラッド鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献1および特許文献2には、クラッド鋼の母材の強度と低温靭性を達成する、焼入れ焼戻し処理で製造されたクラッド鋼およびその製造方法が開示されている。しかしながら、上述したように、特定の温度域で保持されると耐食性の劣化が生じるため、高耐食性を達成するためには、焼入れ処理や焼戻し処理を行わない方が良い。また、焼入れ焼戻し処理での製造方法では、低温靭性、特に脆性破壊の伝播停止性能を向上させるのには限界がある。合せ材の耐食性と母材の低温靭性を向上させるための手段としてTMCP(Thermo-mechanical control process)プロセスを適用することが好ましい。
特許文献3には、母材にNbを0.08〜0.15質量%の範囲で含有した低合金鋼を用いて、1000℃以下での圧下比を3以上とし、圧延終了温度を900℃〜1000℃としたステンレス鋼またはニッケル合金を合せ材としたクラッド鋼板のTMCPでの製造方法が記載されている。しかしながら、Nbを0.08質量%以上含有すると、溶接熱影響部靭性が劣化するため、鋼構造物として用いる以上、Nb含有量は0.08質量%未満とすることが望ましい。但し、Nb含有量を下げた場合には、制御圧延による結晶粒の微細化のためには、より低温での圧延が必要となってくる。
特許文献4には、母材にCuを1.5質量%以下、Niを3.0%質量以下、Crを0.3質量%以下、Moを0.3質量%以下等を選択的に含有した低合金鋼を用いて、1100℃以上に加熱した後に、1000℃以上の温度範囲で圧下比を3以上とし、制御圧延として850℃以下から母材のAr点−20℃までの温度範囲で50%以上の圧下を施す、Ni合金クラッド鋼板のTMCPでの製造方法が記載されている。しかしながら、Cuは0.50質量%以上、Niは0.45質量%以上含有すると、溶接性が劣化するという問題がある。その分、Cu、Ni、Cr、Moを選択的に含有するのではなく、低含有量として全てを必須として含有する方が、安定的に強度と低温靭性を確保可能となる。また、鋼構造物として重要な溶接熱影響部靭性(HAZ靭性)を確保する点について考慮していない。
特開2006−328460号公報 特開2004−149821号公報 特開平5−261567号公報 特開平5−245657号公報
本発明は、母材の低温靭性とHAZ靭性および合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板およびその製造方法を提供する。
Ni合金クラッド鋼板は、無垢のNi合金や無垢の低合金鋼と異なり、合せ材の耐食性の確保、母材の機械的特性の確保、複合材料としての接合性の確保の3つの特性を同時に満たす必要がある。発明者らは、かかる事情に鑑み、合せ材の耐食性については、炭化物を抑制するためにC含有量を低くし、さらに製造条件で圧延終了温度の低温化の防止、また、母材の機械的特性、特に低温靭性と溶接熱影響部の靭性の確保のために、母材の成分と製造条件の加熱温度と制御圧延条件の適正化、また、接合性については、製造条件のスラブ加熱温度と熱間圧延の温度範囲とその際の圧下比について鋭意検討し、全ての特性を満足する条件を知見した。
本発明は、このような知見に基づいて完成させたもので、その要旨は、以下の通りである。
[1] Ni合金を合せ材とし、低合金鋼を母材とするクラッド鋼板において、前記母材の化学成分が質量%で、C:0.020〜0.100%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.75〜1.80%、P:0.015%以下、S:0.0030%以下、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.45%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01〜0.50%、Nb:0.005〜0.080%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0010〜0.0060%、Al:0.070%以下、Ca:0.0010〜0.0040%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板。
[2] さらに、前記Tiと前記Nとの質量%比であるTi/Nが2.00〜4.00の範囲にあることを特徴とする[1]記載の母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板。
[3] 前記合せ材の化学成分が質量%で、C:0.020%以下、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.02〜0.50%、P:0.010%以下、S:0.0010%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Fe:5.0%以下、Al:0.02〜0.40%、Ti:0.10〜0.40%を含有し、さらに、Nb+Ta:3.15〜4.15%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からなることを特徴とする[1]または[2]に記載の母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板。
[4] [1]乃至[3]の何れかに記載のクラッド鋼板の素材を用いて、1050℃〜1200℃に加熱後、鋼板表面温度が950℃以上での圧下比を2以上とし、900℃以下の温度域における累積圧下率を50%以上、圧延終了温度を750℃以上とする熱間圧延を行った後に、冷却速度3℃/s以上、冷却停止温度600℃以下とする加速冷却を行った後に放冷することを特徴とする母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板の製造方法。
本発明によれば、母材の化学成分としてCu、Ni、Cr、Moを必須元素として全て含有し、また、TMCP製造条件を適正化することで、母材の低温靭性とHAZ靭性および合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板を得ることができる。
以下、本発明における成分の限定範囲について詳細に説明する。各元素の%表示は特に記載が無い限り質量%を意味する。
1.母材の化学成分について
C:0.020〜0.100%
Cは鋼の強度を向上させる有効な成分であり、0.020%未満では一般溶接用鋼としては強度が得られないため0.020%以上とする。一方、過剰なCの含有は鋼材ならびに熱影響部の靭性の劣化を招き、また、溶接性の観点からC量の低減が望ましいため上限を0.100%とする。なお、溶接性及びHAZ靭性の観点から、好ましくは0.020〜0.080%の範囲である。より好ましくは0.030〜0.080%の範囲である。
Si:0.10〜0.50%
Siは製鋼時の脱酸のために添加され、また、母材の強度確保に必要な成分であるため0.10%以上の含有が必要である。一方、0.50%を超えるSiの含有は靭性、加工性に悪影響を及ぼすためSi量は0.10〜0.50%の範囲とする。脱酸の効果と靭性の観点から好ましくは0.20〜0.40%の範囲である。
Mn:0.75〜1.80%
Mnは母材の強度及び靭性の確保に有効な成分として0.75%以上の含有が必要であるが、1.80%を超えるMnの含有は靭性、溶接性に悪影響を与えるため、Mn量は0.75〜1.80%の範囲とする。なお、好ましくは、1.00〜1.70%の範囲である。
P:0.015%以下
母材ならびに溶接熱影響部靭性を確保するため、Pを極力低減することが望ましいが、過度の脱Pはコスト上昇を招くためP量は0.015%以下とする。好ましくは0.010%以下である。
S:0.0030%以下
Sは鋼中不純物として不可避な元素であるが、低温靭性を確保するためにはS量は0.0030%以下とする。好ましくは0.0010%以下である。
Cu:0.01〜0.50%
Cuは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つであるため、0.01%以上の含有が必要であるが、0.50%を超えて含有すると溶接性を阻害することがあるので、Cu量は0.01〜0.50%とする。好ましくは、0.10〜0.40%の範囲である。
Ni:0.01〜0.45%
Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つであるため、0.01%以上の含有が必要であるが、0.45%を超えると効果が飽和し、また、Niの含有は製造コストを上昇させるため、Ni量は0.01〜0.45%の範囲とする。好ましくは、0.10〜0.40%の範囲である。
Cr:0.01〜0.50%
Crは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つであるため、0.01%以上の含有が必要であるが、0.50%を超えて含有すると溶接熱影響部靭性を劣化させることがあるため、Cr量は0.01〜0.50%の範囲とする。好ましくは、0.05%〜0.35%の範囲である。
Mo:0.01〜0.50%
Moは母材の強度と靭性を安定的に向上させる元素であり、0.01%以上の含有が必要である。また、0.50%を超えて含有すると効果が飽和し、また、過剰な含有は溶接熱影響部靭性や溶接性を阻害するため、Mo量は0.01〜0.50%の範囲とする。なお、母材強度と靭性の観点から、好ましくは、0.05〜0.35%の範囲である。
Nb:0.005〜0.080%
Nbは細粒化による析出強化を通じて母材の強度および靭性を向上させるのに有効であるが、その量が0.005%未満ではその効果を有効に発揮することができない。一方、0.080%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、Nb量は0.005〜0.080%の範囲とする。好ましくは、0.010〜0.050%の範囲である。
Ti:0.005〜0.030%
TiはTiNを形成してスラブ加熱時や溶接熱影響部の粒成長を抑制し、結果としてミクロ組織の微細化をもたらして強度と母材ならびに溶接熱影響部の靭性を改善する効果がある。その含有量は0.005%未満では効果が少ないため0.005%以上含有させる。また、Tiの含有量が0.030%を超えると、かえって上記効果が得られないのみならず、靭性も劣化させる。したがって、Ti量は0.005〜0.030%の範囲とする。好ましくは、0.010〜0.020%の範囲である。
N:0.0010〜0.0060%
NはTiNとして析出することで溶接熱影響部靭性の向上に効果があるが、Nの含有量が0.0010%未満では効果が薄れるため下限を0.0010%とする。しかしながら0.0060%を超えると固溶Nが増大し溶接熱影響部靭性の低下がおこる。Tiの含有量と対応させるTiNの微細析出によるHAZ靭性の向上を考慮しN量は0.0010〜0.0060%の範囲とする。好ましくは0.0020〜0.0050%の範囲である。
Al:0.070%以下
Alは、製鋼過程の脱酸用として重要な元素であるとともに、溶接熱影響部の靭性向上にも効力を有する。しかし、0.070%を超えて含有しても溶接熱影響部の靭性改善効果は飽和するので、Al量は0.070%以下とする。一方、溶接熱影響部の靭性改善効果を得るためには、0.010%以上の含有が好ましい。
Ca:0.0010〜0.0040%
Caは硫化物系介在物の形態を制御し母材の靭性と溶接熱影響部靭性を改善する効果があるため、0.0010%以上含有する。しかし、0.0040%を超えると効果が飽和し、逆に清浄度を低下させ溶接熱影響部靭性を劣化させるためCa量は0.0010〜0.0040%の範囲とする。好ましくは0.0020〜0.0030%の範囲である。
Ti/N:2.00〜4.00
なお、TiおよびNは、各元素の含有量(質量%)を表す。
Ti及びNは、上記のようにTiNを生成してHAZの靱性を改善するのに重要な元素であり、該効果を充分に発揮するためには両元素の含有量の相関関係も重要となる。すなわち、質量%比で、Ti/Nが2.00未満であると結晶粒が粗大化し、靱性値が大きく低下することがある。また、Ti/Nが4.00を超えると同様の理由により靭性値が低下することがある。したがって、Ti/Nは2.00〜4.00の範囲とすることが好ましい。
2.合せ材の化学成分について
C:0.020%以下
Cはクラッド鋼板の製造において、圧延の熱履歴で炭化物として粒界に析出し、耐食性を阻害するため多量の含有は避けるべき元素である。0.020%を超えて含有すると、炭化物の析出が促進されて耐食性が劣化するため、C量は0.020%以下とする。好ましくは、0.015%以下である。
Si:0.02〜0.50%
Siは製造時の脱酸に有効な成分であり、0.02%以上の含有から効果が発現する。
しかしながら、0.50%を超えて含有すると非金属介在物として残存し、耐食性が劣化し、また熱間加工性も劣化するため、Si量は0.02〜0.50%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20%の範囲である。
Mn:0.02〜0.50%
Mnは脱酸成分として必要な成分であり、0.02%以上の含有から効果が発現する。
しかしながら、0.50%を超えて含有すると非金属介在物として残存し、耐食性が劣化し、また熱間加工性も劣化するため、Mn量は0.02〜0.50%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.15%の範囲である。
P:0.010%以下
Pは不純物元素であり、クラッド鋼板の接合性確保のため、900℃以上で圧延する際に、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、P量は0.010%以下とする。好ましくは、0.005%以下である。
S:0.0010以下
SはPと同様で不純物元素であり、クラッド鋼板の接合性確保のため、900℃以上で圧延する際に、粒界に偏析し、耐食性を劣化させる元素である。したがって、S量は0.0010%以下とする。好ましくは、0.0005%以下である。
Cr:20.0〜23.0%
Crは、金属の表面に保護性の高い酸化物皮膜を形成し、耐孔食性や耐粒界腐食性を向上させる元素である。また、Niとの複合添加によって、サワー環境中での耐応力腐食割れ感受性も改善するため、Niやその他の合金とのバランスも考え、Cr量は20.0〜23.0%の範囲とする。好ましくは21.5〜23.0%の範囲である。
Mo:8.0〜10.0%
Moは、耐孔食性、耐隙間腐食性を向上させる。また、Niとの複合添加によって、サワー環境中での耐応力腐食割れ感受性も改善するため、Niやその他の合金とのバランスも考え、Mo量は8.0〜10.0%の範囲とする。好ましくは8.5〜10.0%の範囲である。
Fe:5.0%以下
Feは、原料としてフェロクロム、フェロモリブデン等を用いた場合、不可避的に混入する不純物であり、5.0%を超えるとNi量が低下して耐食性が低下するため、Fe量は5%以下とする。好ましくは3.5%以下である。
Al:0.02〜0.40%
Alは有効な脱酸元素であり、0.02%以上から効果が発現する。しかしながら、0.40%を超えて含有すると耐応力腐食割れ性が劣化するため、Al量は0.02〜0.40%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.25%の範囲である。
Ti:0.10〜0.40%
TiはCの固定化元素として有効であり、クラッド鋼板製造時の熱履歴で炭化物として析出する。しかしながら、多量に含有すると、クラッド鋼板の接合界面で金属間化合物として析出し、接合性を阻害するため、Ti量は0.10〜0.40%の範囲とする。好ましくは0.10〜0.30%の範囲である。なお、0.10%未満の含有量では、Cの固定が不完全となり、耐食性を劣化する炭化物の析出原因となるため、下限を0.10%以上とする。
Nb+Ta:3.15〜4.15%
NbとTaはCの固定化元素として有効であり、クラッド鋼板製造時の熱履歴で炭化物として析出する。しかし、多量に含有すると低融点の金属間化合物を形成し、熱間加工性が低下するため、Nb+Taは3.15〜4.15%の範囲とする。
残部:Ni
Niは高Ni合金の主要元素であり、耐食性を向上させる元素である。特に、サワー環境での耐応力腐食割れ性を著しく改善する。前述したように、CrとMoとの複合添加効果でさらに耐食性は向上する。なお、Ni合金とは、合金成分のうちでNi含有量が最も多い合金をいう。本願でのNi量は58%以上とするのが好ましい。
3.製造方法について
本発明のNi合金クラッド鋼板の製造方法について以下に述べる。
加熱温度:1050℃以上、1200℃以下
加熱時に合せ材を十分溶体化するために1050℃以上に加熱する。クラッド鋼の接合性の観点からは、加熱温度は高温である方が好ましいが、1200℃を超えて加熱すると、Ni合金の熱間延性が劣化して、圧延中に素材割れが生じる、また、1200℃を越えて加熱すると、母材の結晶粒粗大化によって靭性劣化を招く。よって、耐食性、低温靭性、接合性の観点から、加熱温度は1050℃以上、1200℃以下の範囲とする。
950℃以上での圧下比:2.0以上
クラッド鋼は高温域での圧延によって、接合性が確保される。高温域での圧延が重要な理由としては、合せ材であるNi合金と母材である低合金鋼の変形抵抗差が小さくなるため、圧延で理想的な接合界面となる点と、高温域では合せ材と母材との境界で元素相互拡散が進行しやすいためである。得に、Ni合金はオーステナイト系ステンレス鋼より変形抵抗が大きいことから、オーステナイト系ステンレスクラッド鋼板の場合より、高温での大きな圧下比が必要となる。よって、クラッド圧延用組立スラブを作製する段階で、組立スラブ内の真空度が10−4torr以上の高真空を確保できれば、合せ材/母材界面で十分な金属接合を得るためには、950℃以上での圧下比(=(圧延前の板厚)÷(圧延後の板厚))が2.0以上であれば良い。接合性の確保のためには、好ましくは、温度範囲は1000℃以上であり、圧下比は2.5以上である。
母材の強度、低温靭性、特に脆性破壊の伝播停止特性を改善するには、オーステナイト低温域での高圧下と圧延直後の水冷が有効であることが明らかとなった。そこで制御圧延と圧延後の冷却条件について以下に述べる。なお、圧延、冷却過程における温度は鋼板表面温度を意味するものとする。
制御圧延:900℃以下において累積圧下率50%以上、圧延終了温度:750℃以上
母材中のオーステナイト未再結晶にて累積圧下率が50%以上の圧延を行うことにより、オーステナイト粒が伸展し、その後の加速冷却で変態生成するベイナイトが微細化し靭性が向上する。圧延仕上げ温度が750℃未満まで低下しすぎると、元素拡散の進行が生じにくく接合性の劣化に繋がり、また、合せ材中の炭化物の析出が促進し、耐食性が劣化する。よって、制御圧延は、母材の強度、低温靭性と合せ材の耐食性、クラッド鋼の接合性を全て確保するために、制御圧延開始温度は900℃以下、累積圧下率は50%以上とし、750℃以上の温度で仕上げ圧延を終了することとした。
冷却速度:3℃/s以上、冷却停止温度:600℃以下
圧延終了後に600℃以下まで加速冷却するのは、母材の強度、低温靭性を担保するためである。冷却速度は、耐食性に大きく影響し、冷却速度は3℃/s未満では、圧延直後からの冷却過程において、合せ材中に炭化物が析出し、耐食性が劣化する。よって、冷却停止温度は600℃以下とし、冷却速度は3℃/s以上とする。冷却速度は、好ましくは、5℃/s以上である。
本発明のクラッド鋼の母材素材ならびに合せ材素材は、前記した成分範囲に調整され、常法等により溶製することができる。クラッド圧延用組立スラブは、母材/合せ材/合せ材/母材というように重ね合わせた形式が製造上効率的であり、また冷却時の反りを考慮すると、母材同士、合せ材同士は等厚であることが望ましい。もちろん、上記で記述した組立方式に限定する必要が無いことは言うまでも無い。
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。ここで、溶接部靭性の評価は、シャルピー試験により行った。シャルピー試験片のノッチ位置は、溶接金属と母材の境界であるボンド部から、母材側へ3mm(HAZ3mm)の位置とした。試験温度は、−20℃で実施した。本発明では−20℃の吸収エネルギー(vE−20℃)が100J以上を靭性に優れているものとした。
また、母材の機械的特性は、API−5Lに準拠した引張試験片とDWTT試験片を採取し、引張試験とDWTT試験をおこなった。引張試験は、YSが450MPa以上、TSが535MPa以上を母材強度に優れているものとし、DWTT試験は、−20℃を試験温度とし、延性破面率85%以上を母材の低温靭性に優れているものとした。
また、合せ材の耐食性試験は、JIS G0573 ステンレス鋼の65体積%硝酸腐食試験(ヒューイ試験)方法に準拠した。試験方法は、沸騰させた65%硝酸溶液中に試験片を48時間浸漬させ、試験前後の重量変化から腐食速度(g/m・h)を算出し、新たな沸騰させた65%硝酸溶液中に同一試験片を再び浸漬させる。この48時間浸漬試験を5回繰り返し、5回の腐食速度の平均値から耐食性能を評価した。評価基準は、0.75g/m・h以下のものを耐食性能が良好であると判断した。
また、クラッド鋼としての接合性は、JIS G0601:2012のクラッド鋼の試験方法に記載のせん断強さ試験に準拠して行った。評価基準はせん断強さが300MPa以上のものを接合性が良好であると判断した。
表1に母材の化学成分を、表2に合せ材の化学成分を、表3に製造条件を示す。表4には試験結果の総合評価を示す。
Figure 0006024643
Figure 0006024643
Figure 0006024643
Figure 0006024643
表1には、母材の化学成分実績を示す。鋼No.A1〜A10は本発明の範囲に属する発明例である。一方、鋼No.B1〜B4は何れかの成分が発明の範囲外となっている比較例である。表2には、合せ材の化学成分実績を示す。鋼No.C1〜C3は本発明の範囲に属する発明例である。一方、No.D1はCが上限を外れた比較例である。表3には、表1に示す化学成分の母材と、表2に示す化学成分の合せ材を使ってクラッド鋼板を製造した製造実績を示す。製造方法No.E1〜E10は、加熱、圧延、冷却のいずれの製造条件とも発明の範囲に属する発明例である。一方、製造方法No.F1〜F5は加熱、圧延、冷却のいずれかの製造条件が発明の範囲外である比較例である。
表4には、製造した各種クラッド鋼の試験結果を示す。表には、母材の引張試験、落重試験の結果、溶接試験結果(HAZ3mmでのシャルピー試験)、せん断試験結果および合せ材の腐食試験結果を示す。実施例No.1〜17はいずれの試験も目標値をクリアした発明例である。実施例No.18、19は母材の化学成分が発明の範囲外であり、No.20、21は母材と合せ材の化学成分が発明の範囲外であり、No.22〜26は何れかの製造条件が発明の範囲外であるため各種試験結果が目標値に達しなかった。

Claims (2)

  1. 化学成分が質量%で、C:0.020%以下、Si:0.02〜0.50%、Mn:0.02〜0.50%、P:0.010%以下、S:0.0010%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Fe:5.0%以下、Al:0.02〜0.40%、Ti:0.10〜0.40%を含有し、さらに、Nb+Ta:3.15〜4.15%を含有し、残部Ni及び不可避的不純物からなるNi合金を合せ材とし、低合金鋼を母材とするクラッド鋼板において、前記母材の化学成分が質量%で、C:0.020〜0.100%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.75〜1.80%、P:0.015%以下、S:0.0030%以下、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.45%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01〜0.50%、Nb:0.005〜0.080%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.0010〜0.0060%、Al:0.070%以下、Ca:0.0010〜0.0040%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板の製造方法であって、
    ラッド鋼板の素材を用いて、1050℃〜1200℃に加熱後、鋼板表面温度が950℃以上での圧下比を2.0以上とし、900℃以下の温度域における累積圧下率を50%以上、圧延終了温度を750℃以上とする熱間圧延を行った後に、冷却速度3℃/s以上、冷却停止温度500℃以上600℃以下とする加速冷却を行った後に放冷することを特徴とする母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板の製造方法。
  2. さらに、前記Tiと前記Nとの質量%比であるTi/Nが2.00〜4.00の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の母材の低温靭性とHAZ靭性及び合せ材の耐食性に優れたNi合金クラッド鋼板の製造方法
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