JP2012036499A - 曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents

曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板およびその製造方法 Download PDF

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正雄 柚賀
Shigeki Kizutani
茂樹 木津谷
Minoru Suwa
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Abstract

【課題】引張強さが1150MPa以上で、板厚が7〜50mm程度の高張力鋼板に対して、優れた曲げ加工性と低温靱性を付与する。
【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.05〜1.5%、Mn:0.5〜2.0%、Cr:0.01〜2.2%、Mo:0.08〜1.4%、V:0.03〜0.1%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.006%、P:0.02%以下、S:0.005%以下およびB:0.0003〜0.003%を含有し、かつ次式(1)の関係を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成にすると共に、体積分率で95%以上がマルテンサイト組織でかつ、該マルテンサイト組織における旧オーステナイト粒の平均粒径が円相当径で20μm以下の鋼組織を有し、引張強さが1150MPa以上とする。
0.8≦0.5[%Cr]+1.2[%Mo]+5[%V]≦2.1・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、主に建設産業機械等に供して好適な、引張強さが1150MPa以上で曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼材およびその製造方法に関するものである。
近年、建設機械や産業機械すなわち建設産業機械をはじめとして、タンクやペンストック、ラインパイプ等においては、構造物の大型化を背景として、使用する鋼材の高強度化が進む一方、鋼材の加工条件例えば曲げ加工条件などは従来以上の厳しい条件が適用され、同時に、使用環境の過酷化に伴って優れた低温靱性をそなえることが求められている。
例えば、代表的な建設産業機械の一つであるオールテレーンクレーンの場合、ブーム部材では、曲げ半径が板厚の3倍程度の曲げ加工が施されるため、JIS Z 2248に定められる曲げ試験で、曲げ半径が板厚の3.0倍以上で割れが発生しないことが要求されている。
しかしながら、鋼材の高強度化は、一般に加工性や低温靱性の劣化を伴うため、高強度と共に優れた加工性および低温靱性を備えた鋼材が種々検討されている。
例えば、特許文献1には、自動車の車体や家電に使用される薄鋼板を対象として、鋼板成分およびミクロ組織を調整することにより、引張強さが850MPa以上で、穴広げ性と延性を両立させた板厚が1.2mm程度の冷延鋼板が提案されている。
また、特許文献2には、建築鋼構造物、圧力容器、その他の溶接鋼構造物に使用される厚鋼板を対象として、特定の成分下において焼入れ臨界直径Diを規定することにより、引張強さが490〜800MPaで、優れた冷間加工性を有する板厚が40mmの厚鋼板が記載されている。
さらに、特許文献3には、建設産業機械に使用される溶接用鋼を対象として、特定成分の下で直接焼入れ後焼戻すことからなる、引張強さが1150MPa以上の厚鋼板の製造技術が提案されている。
特開2005−298964号公報 特開平7−150236号公報 特許第4174041号公報
前掲した特許文献1,2の開発により、強度と加工性に優れた鋼板が得られるようになったが、これら特許文献1,2の技術をもってしても、強度レベルがさらに上昇したり、板厚がさらに増大した場合には、加工性や低温靱性の劣化が避けられなかった。
また、特許文献3には、曲げ加工性に関して何ら言及されていないため、この点について発明者らが検討したところ、曲げ加工性と強度を両立することはできないことが判明した。
上述したように、従来の技術では、建設産業機械等で要求される引張強さと板厚の鋼材に対して、十分な加工性と低温靱性を付与することができなかったため、優れた加工性と低温靱性を兼ね備える高張力鋼板の開発が要望されていた。
また、最近では、加工性の中でも、特に上述した建設産業機械への適用時に主要な成形手段である曲げ加工性が重要視されるようになってきている。すなわち、高強度を維持した上で、曲げ加工性に優れること、換言すると、割れずに鋼材を曲げることができる限界半径を従来よりも小さくすることが要求されている。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、引張強さが1150MPa以上で、板厚が7〜50mm程度の鋼板に対して、優れた曲げ加工性と低温靱性を付与した高張力鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、曲げ加工性に優れた鋼材を得るため、主に製造条件が曲げ加工性に及ぼす影響について鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
(a)高強度を得る目的に対しては有効な手段であるとされる制御圧延と直接焼入れの組合せによる製造方法は、集合組織の発達をもたらすため、曲げ加工性に対してはむしろ劣化させる原因となる。しかしながら、直接焼入れに代えて焼入れ焼戻しによる調質処理を採用することにより、曲げ加工性を大幅に向上させることができる。
(b)一方で、焼入れ焼戻しによる製造では、直接焼入れに比べると高強度が得難くなるが、この点については、成分組成を厳格に制御することにより、高強度と曲げ加工性の両立が可能となる。
本発明は、上記の知見にさらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.10〜0.25%、
Si:0.05〜1.5%、
Mn:0.5〜2.0%、
Cr:0.01〜2.2%、
Mo:0.08〜1.4%、
V:0.03〜0.1%、
Al:0.005〜0.1%、
N:0.0005〜0.006%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下および
B:0.0003〜0.003%
を含有し、かつ下記(1)式の関係を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、体積分率で95%以上がマルテンサイト組織でかつ、該マルテンサイト組織における旧オーステナイト粒の平均粒径が円相当径で20μm以下の鋼組織を有し、引張強さが1150MPa以上であることを特徴とする曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板。

0.8≦0.5[%Cr]+1.2[%Mo]+5[%V]≦2.1・・・(1)
但し、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)
2.前記鋼板が質量%で、さらに
Nb:0.05%以下、
Ti:0.1%以下、
Cu:2%以下および
Ni:4%以下
のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする前記1に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板。
3.前記鋼板が質量%で、さらに
Ca:0.01%以下、
REM:0.02%以下および
Mg:0.01%以下
のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする前記1または2に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板。
4.質量%で、
C:0.10〜0.25%、
Si:0.05〜1.5%、
Mn:0.5〜2.0%、
Cr:0.01〜2.2%、
Mo:0.08〜1.4%、
V:0.03〜0.1%、
Al:0.005〜0.1%、
N:0.0005〜0.006%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下および
B:0.0003〜0.003%
を含有し、かつ下記(1)式の関係を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を、熱間圧廷により熱延板としたのち、Ac点以上の温度に再加熱後、2℃/s以上の平均冷却速度で300℃以下の温度まで冷却し、ついで、550℃超680℃以下の範囲で焼戻し処理を施すことを特徴とする曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板の製造方法。

0.8≦0.5[%Cr]+1.2[%Mo]+5[%V]≦2.1・・・(1)
但し、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)
5.前記鋼板が質量%で、さらに
Nb:0.05%以下、
Ti:0.1%以下、
Cu:2%以下および
Ni:4%以下
のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする前記4に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板の製造方法。
6.前記鋼板が質量%で、さらに
Ca:0.01%以下、
REM:0.02%以下および
Mg:0.01%以下
のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする前記4または5に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強さが1150MPa以上で、しかも曲げ加工性、さらには低温靱性に優れる高張力鋼材を得ることができ、産業上極めて有用である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について述べる。なお、鋼板成分に関する%表示は、特に断らない限り何れも質量%である。
C:0.10〜0.25%
Cは、焼入れによって鋼をマルテンサイト主体の組織とし、鋼板の強度を確保するために含有するが、0.10%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.25%を超えると母材および溶接熱影響部(HAZ)の靱性が劣化するだけでなく、溶接性を著しく低下させるため、C量は0.10〜0.25%に限定する。好ましくは0.12〜0.25%の範囲である。
Si:0.05〜1.5%
Siは、製鋼段階の脱酸材および鋼板の強度向上元素として含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。一方、1.5%を超えると溶接性を著しく低下させるため、0.05〜1.5%に限定する。好ましくは、0.15〜1.0%の範囲である。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、焼入性を高め、マルテンサイト主体の鋼組織を得て、高強度を得るためには必須の元素であり、0.5%以上の添加を必要とするが、2.0%を超える添加は、靱性および溶接性を著しく低下させるため、0.5〜2.0%に限定する。
Cr:0.01〜2.2%
Crは、強度および靱性の向上に有用な元素である。従って、鋼をマルテンサイト主体の組織とし、高強度化する場合には積極的に添加し、特に、鋼板の引張強さが1150MPa以上の特性を得るためには、0.01%以上の添加が必要である。一方、Cr含有量が2.2%を超えると、溶接性が低下するので、含有量を2.2%以下に限定する。好ましくは、0.55〜2.2%の範囲である。
Mo:0.08〜1.4%
Moは、焼入れ性および強度の向上に有効に寄与するだけでなく、炭化物を形成することによって拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させる効果があるので、引張強さ:1150MPa以上を得るために0.08%以上添加することが必要である。しかしながら、Mo含有量が1.4%を超えるとその効果は飽和し、むしろコストの面で不利となるので、Mo量の上限は1.4%とする。好ましくは0.2〜1.4%の範囲である。
V:0.03〜0.1%
Vは、焼戻しによる組織の軟化を抑制する効果が高く、また、550℃より高い温度での焼戻し時にはマイクロアロイング元素として鋼板の強度を向上させる効果があるため、Vを十分に添加することで強度の向上と焼戻しによる強度低下の抑制が可能である。さらに、炭化物や窒化物、炭窒化物を形成することによって、拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させる作用がある。これらの効果を発揮させるためには、0.03%以上の添加が必要である。本発明のようにBを0.0003%以上の成分とし、かつ焼戻し温度を高く設定する場合には、Vの炭化物による焼戻し軟化抵抗を高めることで強度確保することが狙いである。一方、過剰の添加は鋼板の強度上昇への寄与が小さく、また、溶接性を低下させるため、その含有量を0.1%以下に限定する。好ましくは0.03〜0.08%の範囲とする。
Al:0.005〜0.1%
Alは、脱酸剤として、また結晶粒径の微細化元素として有効に寄与するが、0.005%未満の場合にはその添加効果が十分でなく、一方、0.1%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなるため、0.005〜0.1%に限定する。
N:0.0005〜0.006%
Nは、TiやNbなどと窒化物を形成することによって組織を微細化し、母材ならびに溶接熱影響部の靱性を向上させる効果を有する。また、析出物および/または介在物の生成量に影響を及ぼし、材料の加工性に影響を及ぼす。しかしながら、0.0005%未満の含有では組織の微細化効果が十分にもたらされず、一方、0.006%を超える含有は析出物および/または介在物を増加させ加工性を損なうため、Nは0.0005〜0.006%に限定する。
P:0.02%以下
不純物元素であるPは、焼戻し処理時に旧オーステナイト粒界等の結晶粒界に偏析しやすく、0.02%を超えると隣接する結晶粒の相互の接合強度を低下させ、低温靱性や耐遅れ破壊特性を劣化させるため、Pは0.02%以下に限定する。
S:0.005%以下
不純物元素であるSは、非金属介在物であるMnSを生成しやすく、0.005%を超えると、介在物の量が多くなるため、引張試験などの延性破壊の強度が低下し、加工性を劣化させる。そのため、Sは0.005%以下に限定する。
B:0.0003〜0.003%
Bは、鋼板の焼入性を高め、強度を向上させる作用を有しており、0.0003%以上添加することが必要である。一方、0.003%を超えると、鋼板の靱性を劣化させるようになるので、B量の上限は0.003%以下に限定する。
0.8≦0.5[%Cr]+1.2[%Mo]+5[%V]≦2.1
但し、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)を表す(以下、同じ)。
以下に示す製造条件において、引張強さが1150MPa以上の高強度鋼板を得るためには、0.5[%Cr]+1.2[%Mo]+5[%V]の値を0.8以上とする必要がある。一方、2.1を超えると溶接性および溶接部靱性が低下することから、その範囲を0.8〜2.1、好ましくは0.95〜1.95とする。
本発明における基本成分は、上記したとおりであり、残部はFeおよび不可避的不純物である。かかる不可避不純物としては、原料、製造設備等から不可避的に混入する不純物が挙げられる。
以上、本発明の基本成分について説明したが、本発明の効果を発現させるには、成分を所定の範囲に調整するだけでは不十分で、鋼組織を以下のように調整することが重要である。
本発明では、鋼組織のうち体積分率で95%以上がマルテンサイト組織であることが必要である。というのはマルテンサイト組織の体積分率が95%未満となった場合には、鋼の強度や靱性が不足してしまうからである。
なお、マルテンサイト以外の組織の体積分率は少ない程良く、その体積分率が低い場合は、その影響が無視できる。具体的には、マルテンサイト以外の組織として、例えば、ベイナイト、パーライト、セメンタイトなどから選ばれる1種または2種以上の金属組織の合計の体積分率が5%以下であれば許容でき、3%以下であることが好ましい。
上記したマルテンサイト組織において、旧オーステナイト粒の平均粒径は、円相当径で20μm以下であることが必要である。というのは、焼入れ前の組織であるオーステナイト粒が円相当径として求めた平均粒径で20μmを超える粗大粒であると、マルテンサイト変態後の靱性が劣化するからである。
なお、焼入れ前のオーステナイト粒の形態は、その後に熱処理を施しても、オーステナイト粒界を優先的に腐食する腐食液で腐食して、金属組織を観察することにより、いわゆる旧オーステナイト粒界として観察することができる。すなわち、この組織観察結果から線分法や画像処理などの方法を用いて旧オーステナイト粒の円相当径を求めることにより、加熱時のオーステナイト粒径を把握することができる。
また、本発明では、所望する特性に応じて、さらにNb、Ti、Cu、Ni、Ca、REM、Mgのうちから選んだ一種または二種以上を含有することができる。
Nb:0.05%以下
Nbは、マイクロアロイング元素として強度を向上させると同時に、炭化物や窒化物、炭窒化物を形成することによって拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させる作用がある。このような効果を発揮させるためには、0.005%以上含有させることが好ましい。一方、0.05%を超える添加は強度の向上効果が小さいことに加え、溶接熱影響部の靱性劣化を招く。従って、Nbを含有させる場合には、0.05%以下で含有させるものとした。
Ti:0.1%以下
Tiは、圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成してオーステナイト粒の成長を抑制し、母材ならびに溶接熱影響部の靱性を向上させるだけでなく、炭化物や窒化物、炭窒化物を形成することによって拡散性水素をトラップし、耐遅れ破壊特性を向上させる効果がある。このような効果を発揮させるためには、0.004%以上含有させることが好ましい。しかしながら、0.1%を超える含有は溶接熱影響部の靱性を劣化させるため、Tiを含有させる場合には、0.1%以下で含有させるものとした。
Cu:2%以下
Cuは、固溶強化および析出強化によって強度を向上する作用を有している。このような効果を発揮させるためには、0.04%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Cu含有量が2%を超えると、鋼片加熱時や溶接時に熱間での割れが生じやすくなるため、Cuを含有させる場合には、2%以下で含有させるものとした。
Ni:4%以下
Niは、靱性および焼入性を向上する作用を有している。このような効果を発揮させるためには、0.04%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Niは高価な元素であり含有量が4%を超えると、実用鋼としての経済性が低下するので、Niを含有させる場合には、4%以下で含有させるものとした。
Ca:0.01%以下
Caは、硫化物系介在物の形態制御に有用な元素である。このような効果を発揮させるためには、0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、0.01%を超えるCaの添加は、清浄度を低下させ、曲げ試験片の表面に微小な割れを発生させるようになるので、Caを含有させる場合には、0.01%以下で含有させるものとした。
REM:0.02%以下
REM(Rare Earth Metalの略、希土類)は、鋼中でREM(O,S)として硫化物を生成することにより、結晶粒界における固溶S量を低減して靱性を改善する有用元素である。このような効果を発揮させるためには、0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、含有量が0.02%を超えると、沈殿晶帯にREM硫化物が著しく集積し、材質の劣化を招くので、REMを含有させる場合には、0.02%以下で含有させるものとした。
Mg:0.01%以下
Mgは、溶銑脱硫剤として使用する場合がある。その場合には、0.0003%以上含有させることが好ましい。しかしながら、0.01%を超える添加は、清浄度の低下を招く。従って、Mgを含有させる場合には、0.01%以下で含有させるものとした。
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明では、前記した好適成分組成に調整した鋼片を、熱間圧延し、得られた熱延板に対して焼入れ焼き戻し処理を施す。すなわち、熱延板を、Ac3点以上の温度に再加熱し、ついで2℃/s以上の平均冷却速度で300℃以下の温度まで冷却する焼入れ処理を施したのち、550℃超680℃以下の範囲で焼戻し処理を施す。
以下、各製造工程の限定理由について説明する。
(熱間圧延条件)
熱間圧延条件については特に制限はなく、常法に従って行えばよい。但し、本発明では、熱延鋼板の板厚については7〜50mm程度の鋼板を対象とする。
(焼入れ条件)
従来公知の焼入れ装置または加速冷却装置を用いて、焼入れ処理温度をAc点以上とし、平均冷却速度を2℃/秒以上で、鋼板の温度が300℃以下になるまで冷却することにより、オーステナイトからマルテンサイトへの相変態を完了させ、鋼材の靱性が向上する。
本発明において、焼入れ処理は、熱間圧延直後の高温状態から焼入れる直接焼入れではなく、熱間圧延後の鋼をAc点以上の温度に再加熱してから焼入れる。このいわゆる再加熱焼入れ(本明細書においては、単に「焼入れ」とも記す)処理による製造プロセスを採用することによりにより、直接焼入れに比べ圧延集合組織の発達が抑制され、曲げ加工性が向上すると共に、オーステナイト粒径の微細化が可能となり、高い強度と優れた靱性を両立することができる。
ここに、焼入れ温度がAc点未満では、焼入れ前のオーステナイト化が十分ではないため、目標のマルテンサイト主体組織が得られず、鋼板の強度や靱性が十分とはならない。
また、平均冷却速度が2℃/s未満では、マルテンサイト変態前にベイナイトなどのマルテンサイト変態温度より高温で変態する組織が生成するため、目標のマルテンサイトを主体とした組織が得られずに、鋼板の強度や靱性が低下するという問題が生じる。また、冷却停止温度が300℃を超えると、鋼板内部でのマルテンサイト変態が完了せず、鋼板の強度や靱性が低下するので、冷却停止温度は300℃以下とする。
上記した冷却条件において、平均冷却速度は鋼板の板厚方向における冷却速度の平均値とし、冷却停止温度は復熱完了直後の鋼板表面の温度とする。また、Ac温度は、例えば以下の式によって計算される。
Ac=854−179.4[%C]+44.4[%Si]−13.9[%Mn]−17.8[%Ni]−1.7[%Cr]
(焼戻し条件)
冷却後、鋼板の強度と靱性を調整するため、焼戻し処理を行う。焼戻しによる靱性の向上と、Vの強度上昇効果を得るために、本発明における焼戻し温度は、550℃超を必要とする。一方、焼戻し温度が680℃を超えると、マルテンサイト組織が回復し、鋼板の強度の低下を招くとともに靱性が低下する。従って、焼戻し温度は550℃超680℃以下の範囲とする。
上記の焼戻し温度は、鋼板表面温度の測定値から伝熱計算によって求めた板厚中心部の温度である。また、焼戻し温度における保持時間は、特に規定しないが、生産性の観点から、30分以下とすることが望ましい。
なお、焼戻し処理に用いる加熱装置は、誘導加熱、通電加熱、赤外線輻射加熱、雰囲気加熱等のいずれの方式でも良い。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜N)を溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、熱間圧延を行い種々の板厚の鋼板とした。これらの熱間圧延では、スラブ加熱温度を1100〜1150℃、圧延仕上温度を900〜950℃とし、圧延後は放冷とした。鋼A〜Gの成分は本発明の範囲内で、鋼H〜Nは本発明の範囲外の比較鋼である。
ついで、得られた熱延鋼板に対し、表2に示す条件で焼入れ処理および焼戻し処理を行った。また、比較のため、直接焼入れ焼戻し処理も行った。そのときのスラブ加熱温度は1125℃、圧延仕上温度は800℃、直接焼入れ開始温度は770℃とした。
焼戻し温度や焼入れ温度などの板厚中心部における温度は、放射温度計による表面の逐次における温度測定結果から、伝熱計算によって求めた。
金属組織は、板厚方向1/2の位置から組織観察用試験片を採取し、圧延方向断面を観察面として観察した。また、マルテンサイトの体積分率は、ナイタール液で組織を現出し、光学顕微鏡で観察した視野(250×200μm)について画像処理により測定した。さらに、マルテンサイト組織における旧オーステナイト粒の粒径は、同様に採取した組織観察用試験片に対してオーステナイト粒界を優先的に腐食する腐食液による腐食処理を実施後、光学顕微鏡で観察した視野(500×400μm)について旧オ−ステナイト粒径(円相当径)の平均値を線分法にて測定した。
引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行い、丸棒引張試験片により降伏強度および引張強度を測定した。靱性は、シャルピー衝撃試験によって得られる−40℃での吸収エネルギー値で評価した。引張強さの目標値は1150MPa以上、吸収エネルギーの目標値は3本の平均値が70J以上である。
曲げ特性はJIS Z 2204の1号曲げ試験片を用い、JIS Z 2248に準拠した曲げ試験を行った。このときの曲げ半径を板厚の1.5倍、曲げ角度を90度としたときの割れの有無で評価した。
溶接部靱性は、溶接入熱:3kJ/mmをシミュレートした再現熱サイクル試験片を作製し、シャルピー衝撃試験によって得られる−40℃での吸収エネルギー値で評価した。目標値は、吸収エネルギーの目標値は3本の平均値が50J以上とした。
表2に、鋼板の製造条件、組織および機械的特性を示す。
Figure 2012036499
Figure 2012036499
同表より、鋼板成分および製造方法が共に本発明の適性範囲内である実施例No.1〜8、11、13および15は、強度、靱性、曲げ特性およびHAZ(溶接熱影響部)靱性のいずれもが目標値を満足している。
一方、No.9、10および16は、直接焼入れ焼戻しにより製造したため、曲げ特性が目標を満足しなかった。No.12は、焼戻し温度が低いため強度は高いものの靱性が目標を満足しなかった。No.14は、焼戻し温度が高いため、強度が目標を満足しなかった。No.17〜23の比較例はいずれも、成分組成が本発明の適正範囲外であるため、いずれかの特性が目標値から外れていた。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.25%、
    Si:0.05〜1.5%、
    Mn:0.5〜2.0%、
    Cr:0.01〜2.2%、
    Mo:0.08〜1.4%、
    V:0.03〜0.1%、
    Al:0.005〜0.1%、
    N:0.0005〜0.006%、
    P:0.02%以下、
    S:0.005%以下および
    B:0.0003〜0.003%
    を含有し、かつ下記(1)式の関係を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、体積分率で95%以上がマルテンサイト組織でかつ、該マルテンサイト組織における旧オーステナイト粒の平均粒径が円相当径で20μm以下の鋼組織を有し、引張強さが1150MPa以上であることを特徴とする曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板。

    0.8≦0.5[%Cr]+1.2[%Mo]+5[%V]≦2.1・・・(1)
    但し、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)
  2. 前記鋼板が質量%で、さらに
    Nb:0.05%以下、
    Ti:0.1%以下、
    Cu:2%以下および
    Ni:4%以下
    のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板。
  3. 前記鋼板が質量%で、さらに
    Ca:0.01%以下、
    REM:0.02%以下および
    Mg:0.01%以下
    のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板。
  4. 質量%で、
    C:0.10〜0.25%、
    Si:0.05〜1.5%、
    Mn:0.5〜2.0%、
    Cr:0.01〜2.2%、
    Mo:0.08〜1.4%、
    V:0.03〜0.1%、
    Al:0.005〜0.1%、
    N:0.0005〜0.006%、
    P:0.02%以下、
    S:0.005%以下および
    B:0.0003〜0.003%
    を含有し、かつ下記(1)式の関係を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を、熱間圧廷により熱延板としたのち、Ac点以上の温度に再加熱後、2℃/s以上の平均冷却速度で300℃以下の温度まで冷却し、ついで、550℃超680℃以下の範囲で焼戻し処理を施すことを特徴とする曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板の製造方法。

    0.8≦0.5[%Cr]+1.2[%Mo]+5[%V]≦2.1・・・(1)
    但し、[%M]は、M元素の鋼中含有量(質量%)
  5. 前記鋼板が質量%で、さらに
    Nb:0.05%以下、
    Ti:0.1%以下、
    Cu:2%以下および
    Ni:4%以下
    のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼板が質量%で、さらに
    Ca:0.01%以下、
    REM:0.02%以下および
    Mg:0.01%以下
    のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項4または5に記載の曲げ加工性および低温靱性に優れる高張力鋼板の製造方法。
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