JP5368820B2 - 耐震性に優れた建築構造用780MPa級低降伏比円形鋼管およびその製造方法 - Google Patents

耐震性に優れた建築構造用780MPa級低降伏比円形鋼管およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、主に耐震性が要求される建築鉄骨用途向けの円形鋼管、およびその製造方法に関するものであり、特に引張強さが780MPa以上(780MPa級)で、降伏比が90%以下の高強度低降伏比円形鋼管、およびこうした円形鋼管を製造するための有用な方法に関するものである。
建築用鋼材は建築構造物の耐震性を確保するために、弾性変形後の塑性変形により地震エネルギーを吸収するという思想の下に、降伏応力YSと引張強さTSとの比(YS/TS)で示される降伏比YRの上限が規定されている。
上記のような建築構造物に適用される円形鋼管は、鋼板をプレス曲げ加工等によって成形されるため、加工硬化に起因した材質変化が生じ、降伏比YRや鋼管表裏面の硬さが上昇し靭性が低下する。特に、円形鋼管の直径Dと鋼管厚tの比(D/t)が20以下となるような強曲げ加工の成形を行った円形鋼管の外面側は、板厚中央部と比較して硬さの上昇が大きく、また引張応力場となっているため、延性の低下により脆性破壊が生じる危険性がある。
即ち、大地震時の荷重を受けて変形した場合には、亀裂は外面側から発生しやすく、円形鋼管は四面ボックス柱では発生しない固有の問題を有している。特に、付属金型等を円形鋼管に溶接したときには、熱影響部(HAZ)の硬化部が脆性破壊の発生起点となり、更に円形鋼管外周面の延性の延性低下が脆性破壊を発生伝播させることが問題となる。
ところで、冷間成形によって鋼管を製造する方法としては、ラインパイプ用鋼管に適用されているUOE成形法(Uing press−Oing press−expander法)の他、プレスベンド冷間成形法(以下、単に「プレスベンド法」と呼ぶことがある)が基本的に採用されている。上記成形法のうち、鋼板厚さが厚く(例えば、板厚:30mm超)、強曲げ加工が必要な場合にはプレスベンド法が採用されることになる。
上記プレスベンド法では、鋼板の一部(直線部)を型押し曲げ加工し、順次型押し位置を移動させて円形に成形する方法であり、加工能力が高い方法である。こうしたプレスベンド法で、円形鋼管を成形したときには、特に円形鋼管における外表面の硬化が顕著になるのであるが、こうした硬さを低減する方法としては、590MPa級鋼管では鋼管成形後、応力除去焼鈍(Stress Relieving:以下、「SR熱処理」と呼ぶことがある)を行なうことが知られている。
しかしながら、780MPa級鋼管の場合、SR熱処理の適用を前提として、従来からの引張強さTS:780MPa以上の鋼板を適用すると、合金元素の添加量が多いため金属組織中にマルテンサイトや下部ベイナイト等の極めて硬質な組織を含有しており、この硬質組織が主体となると低降伏比YRの特性(以下、「低YR特性」と呼ぶことがある)の確保は勿論のこと、SR熱処理後も鋼管母材靭性の確保が非常に困難であり、鋼管表面の硬さは依然として硬い。一方、鋼管表面の硬さを低減するため、SR熱処理温度を高温にすれば、鋼管厚中央部の硬さも低下し、円形鋼管としての要求強度である引張強さTS:780MPa以上を確保することは困難であった。
更に、建築材料に対する要求は、高強度化や低降伏比特性等の機械的性質は勿論のこと、建設コスト低減のための大入熱溶接特性や良好な溶接性を確保することも重要であり、むやみに合金元素を添加することはできない。
上記のような鋼管に関する技術として、これまでも様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、490MPa以上のプレスベンド冷間成形円形鋼管の製造方法について提案されている。この技術は、490MPa級の円形鋼管の技術としては有用なものであるが、鋼管の表・裏面の夫々から深さ1mmまでの表層部におけるビッカース硬さHvが140〜200程度であり、鋼管厚中央部の硬さは更に低くなることから、780MPa以上の引張強さTSを得ることはできない。
また特許文献2には、主組織をフェライトとして、硬質第二相の分率を10〜70%とした厚鋼板について開示されている。この技術では、その組織からして引張強さTS:780MPa以上を安定して確保することはできない。その製造方法についても、「冷却停止温度が500℃以下」の規定だけでは、硬質相の安定確保は困難であり、また組織制御の要点となる圧延終了温度:Ar3変態点以上、且つ冷却速度:5℃/秒以下であり、板厚方向に均一な金属組織と硬さを安定して得ることはできない。
特許文献3には、化学成分組成を適切に調整した鋼素材を用い、圧延終了温度をAr3変態点以上の温度域とする熱間圧延を施し、次いで、Ar3変態点以上の温度域から300℃以下への焼入れ後、Ac1〜Ac1+150℃の温度域へ再加熱する際、再加熱温度までの加熱速度が1℃/秒以下で且つAc1〜Ac+150℃の温度域での滞留時間が90秒以内であるような、高強度・高靭性鋼の製造方法について提案されている。
しかしながらこの技術では、金属組織や板厚方向の硬さ分布については考慮されておらず、プレス曲げ成形を施した場合には、外面側の硬さの硬化を抑制できず、円形鋼管としたときの良好な耐震性は発揮されないことが予想される。また製造方法において、二相域への急速加熱と滞留時間が短いために、板厚方向に均一な組織を得ることができないという問題がある。
一方、特許文献4には、超大入熱HAZ靭性に優れる建築構造物用高強度厚肉鋼板を製造するための方法が提案されている。この技術は、建築構造物として超大入熱溶接したときの良好なHAZ靭性を確保する技術である。しかしながら、この技術では対象とする鋼板は基本的に低強度のものであり(700MPa以下)、板厚方向の硬さ分布については考慮されておらず、またC含有量が比較的高く、圧延温度も高く設定されているので、プレスベンド法による成形後の円形鋼管では、外面側の硬さが高くなり、良好な耐震性を発揮することができない。
また特許文献5には、造管後の表面硬度と降伏比が低い高強度鋼管素材について、提案されている。この技術では、鋼管素材の強度を780MPa級とするものであるが、その成分系からして780MPa以上の強度を安定して得ることは困難である。また、製造方法において、二相域焼入れ温度について何ら規定されておらず、板厚方向に均一な金属組織と硬さを得ることはできない。
特許文献6には、板厚方向の硬さ分布を均一にした高強度高靭性鋼板を製造するための方法について開示されている。この技術では、圧延途中で一旦水冷し、復熱させた後に再度圧延を行うという特殊な製造方法を適用して、表層部に微細な加工フェライトを生成させ、表面の硬さを低減することによって、板厚方向の硬さ分布の均一化を図るものである。
しかしながら、この技術では、表層部が板厚内部よりも軟化する可能性があり、安定した材質を得るための量産面での製造管理が難しいという問題がある。また、この技術では、円形鋼管に加工した後の硬さについては、考慮されていない。
特開2007−270304号公報 特開2003−3229号公報 特開2006−283187号公報 特開2005−68519号公報 特開2003−293075号公報 特開平5−148544号公報
本発明は、こうした状況の下でなされたものであって、その目的は、建築鉄骨用途では最も高強度クラスに位置する引張強さTS:780MPa級の鋼管について、高強度と低降伏比の両立を達成すると共に、鋼管成形時の曲げ加工に起因した鋼管外面側の硬さを低減することにより、延性を確保し、併せて外表面への溶接時の耐割れ性を向上させることにより、耐震性向上に寄与できる円形鋼管、およびこうした円形鋼管を製造するための有用な方法を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の円形鋼管とは、C:0.01〜0.06%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.60〜2.50%、Al:0.025〜0.090%、Cu:0.15〜0.70%、Ni:0.90〜1.60%、Cr:0.50〜1.35%、Mo:0.10〜0.30%、Ti:0.008〜0.025%、B:0.0005〜0.0025%、N:0.0030〜0.0060%およびCa:0.0005〜0.0040%を夫々含有すると共に、下記(1)式で示されるPCM値が0.30%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、該不可避的不純物のうちP:0.012%以下(0%を含まない)、S:0.005%以下(0%を含まない)およびO:0.0040%以下(0%を含まない)に夫々抑制し、且つ下記(A)〜(C)の要件を満足する点に要旨を有するものである。
PCM値=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+([B]×5) …(1)
但し、[C],[Si],[Mn],[Cu],[Ni],[Cr],[Mo],[V]および[B]は、夫々C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,VおよびBの含有量(質量%)を示す。
(A)鋼管の表・裏面の夫々から深さ2mmまでの表層部を除く中央部の平均ビッカース硬さHvが230〜310である、
(B)鋼管のミクロ組織において、ベイニティックフェライト相の分率が80面積%以上であり、マルテンサイト相の分率が5面積%以下である、
(C)鋼管の表・裏面の夫々から深さ2mmまでの表層部の平均ビッカース硬さHvが、前記中央部の平均ビッカース硬さHvの1.3倍以下である。
上記のような円形鋼管を製造するに当たっては、前記化学成分からなる鋳片を950〜1200℃に加熱した後、仕上げ圧延温度を800〜930℃の範囲として熱間圧延を行なって所定の板厚とし、次いでt/4(t:板厚)の位置における冷却速度が2〜25℃/秒で、表面温度が350℃以下となるまで水冷し、その後、温度:700〜900℃の範囲に再加熱して焼入れ処理を行い、450〜700℃の温度範囲で焼戻しして鋼板とし、得られた鋼板を用いてプレスベンド法によって円形鋼管に成形するようにすれば良い。
本発明によれば、鋼板(鋼管を構成する鋼板)の化学成分組成を適正に調整すると共に、ミクロ組織中の各相の面積分率を適切に制御し、且つ厚さ方向の硬さ分布を適切にすることによって、780MPa以上の高強度と低降伏比の両立を達成すると共に、鋼管成形時の曲げ加工に起因した鋼管外面側の硬さを低減して延性を確保し、併せて溶接による耐割れ性をも向上させることにより、耐震性向上に寄与できる円形鋼管が実現できた。
本発明者らは、780MPa以上の高強度と低降伏比の両立を達成すること、およびプレス曲げ加工時の加工硬化に起因した円形鋼管外面側の硬化を低減するために、様々な角度から検討した。その結果、まず鋼管(即ち、鋼板)の基本的なミクロ組織として、ベイニティックフェライト相の分率(面積分率)を80%以上とし、マルテンサイト相の面積分率を5%以下とすることが重要である[前記(B)の要件]ことが判明した。ここで、ベイニティックフェライト相とは、フェライトより低温で変態する低Cのベイナイト組織の相であり、グラニュラーベイニティックフェライト組織、広義の上部ベイナイト組織や下部ベイナイト組織等を含むが、ポリゴナルフェライト組織や粒界フェライト組織は含まない(例えば、「鋼のベイナイト写真集−1」:日本鉄鋼協会ベイナイト調査研究部会、1992)。また、マルテンサイト相は、MA(Martensite−Austenite Constituent)を含む。
低Cのベイニティックフェライト組織は、炭化物が少なく冷却速度依存性が小さいため鋼板の板厚方向の硬さの均一性が高く、また通常のポリゴナルフェライトと比べて転位密度が高いことから変形歪みに対する加工硬化量は小さくなる。こうしたことから、鋼管にした後の厚さ方向の硬さ分布の均一化に寄与することになる。ベイニティックフェライト相の面積分率が80%未満となり、マルテンサイト等の硬質相の面積分率が多くなると、円形鋼管外面側の硬度が上昇して変形能が劣化し、破断伸びが低下することになる。こうしたことから、ベイニティックフェライトの面積分率は少なくとも80%以上とする必要があり、好ましくは85%以上とするのが良い。
一方、マルテンサイト相については、鋼管(鋼板)靭性確保という観点から、その面積分率を5%以下に抑える必要がある。即ち、マルテンサイト相の面積分率が5%を超えると、硬質のマルテンサイトが破壊の起点となって、著しく靭性が劣化するという不都合が生じる。尚、本発明の円形鋼管のミクロ組織は上記のように制御されていれば良いが、残部としてベイナイト相やフェライト相等が一部含まれていても良い。
上記のようなミクロ組織とするためには、製造条件も適切に制御する必要があるが、その前提として、鋼板の化学成分組成も適切に制御する必要がある。その基本的な方向としては、Cの含有量を低減することによる円形鋼管の表面硬さの低減と、それを前提として高強度と低降伏比を維持するために、Crの適正添加によるベイニティックフェライトの生成、およびそのベイニティックフェライトへのCu,Niの固溶による強化と、Bによるオーステナイト粒界からのフェライト変態制御による強化機構を活用することが有効である。
鋼板の強度を向上させるために有効な手段は、合金元素量を増加させることである。特に、780MPa級という高強度を達成するためには、合金元素の添加量を比較的多くして、それらによる各種強化機構を利用することが必要である。しかしながら、こうした合金元素の増大は、耐割れ性といった溶接性や溶接継手の機械的特性の劣化を招くことになる。本発明者らは、適正な合金元素の添加とその含有量を適正化することによって、高強度と低YR特性の両立と、曲げ加工による加工硬化を低減できることを見出したのである。
上記した各要件(ミクロ組織および化学成分組成)を満足させることによって、板厚方向の硬さ分布を均一化させると共に、加工硬化量を安定化させ、円形鋼管外面下2mmまでの領域(鋼板表面から深さ2mmまでの表層部)と、鋼管厚方向中央部[t/2部(t:板厚)]のビッカース硬さHvの比を抑制でき、円形鋼管としての耐震性が向上できたのである。
上記した観点から、本発明の円形鋼管の化学成分組成が決定されたのであるが、上記した合金成分(C,Cr,Ni,B)を含め、各元素の範囲限定理由について説明する。本発明では、上記のように、C:0.01〜0.06%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.60〜2.50%、Al:0.025〜0.090%、Cu:0.15〜0.70%、Ni:0.90〜1.60%、Cr:0.50〜1.35%、Mo:0.10〜0.30%、Ti:0.008〜0.025%、B:0.0005〜0.0025%、N:0.0030〜0.0060%およびCa:0.0005〜0.0040%を夫々含有すると共に、前記(1)式で示されるPCM値を適正な範囲に制御する必要があるが、これらの元素の範囲限定理由は、次の通りである。
[C:0.01〜0.06%]
Cは、鋼板の強度を高める効果があり、硬さを制御するために重要な元素であると共に、耐割れ性等の溶接性を劣化させる元素でもある。C含有量が0.01%未満であると、必要な母材(鋼管)強度を確保することができない。しかしながら、C含有量が0.06%を超えると、表層部のマルテンサイト変態により、板厚方向の硬さ分布が大きくなる。また、溶接部に島状マルテンサイト(MA)が過剰に生成してHAZが硬くなり過ぎ、割れが発生しやすくなり、地震時の破壊の発生点となる。尚、C含有量の好ましい下限は0.02%であり、好ましい上限は0.05%である。
[Si:0.10〜0.40%]
Siは、鋼管の強度向上に有効な元素である。こうした強化機構を発揮させるためには、Siは0.10%以上含有させることが必要である。しかしながら、Si含有量が過剰になると、母材靭性、HAZ靭性や溶接性が劣化するので、0.40%以下とする。尚、Si含有量の好ましい下限は0.15%であり、好ましい上限は0.35%である。
[Mn:1.60〜2.50%]
Mnは、焼入れ性を向上させ、強度と靭性を確保する上で有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnは1.60%以上含有させる必要がある。しかしながらMnを過剰に含有させると、靭性が劣化するので、上限を2.50%とする。尚、Mn含有量の好ましい下限は1.80%であり、好ましい上限は2.20%である。
[Al:0.025〜0.090%]
Alは、脱酸、およびフリー窒素の固定によりBの焼入れ性を確保するために必要な元素である。これらの効果を発揮させるためには、0.025%以上含有させる必要があるが、過剰に含有させると、アルミナ系の粗大な介在物を形成し母材靭性が低下するので、0.090%以下とする必要がある。尚、Al含有量の好ましい下限は0.035%であり、好ましい上限は0.080%である。
[Cu:0.15〜0.70%]
Cuは、固溶強化によって、母材強度を向上させるのに有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cuは0.15%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cu含有量が過剰になると、ガス切断時にCu割れが生じることがあるので、0.70%以下とする必要がある。尚、Cu含有量の好ましい下限は0.25%であり、好ましい上限は0.65%である。
[Ni:0.90〜1.60%]
Niは、母材靭性・HAZ靭性の向上および焼入れ性を高めて強度を向上させると共に、Cu割れおよび溶接割れを防止にも有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Niは0.90%以上含有させる必要がある。しかしながら、Ni含有量が過剰になると、耐溶接割れ性が劣化し、圧延時にスケール疵が発生しやすくなるので、1.60%以下とする必要がある。尚、Ni含有量の好ましい下限は1.10%であり、好ましい上限は1.35%である。
[Cr:0.50〜1.35%]
Crは、焼入れ性を高めて強度を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Crは0.50%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、耐溶接割れ性が劣化するので、1.35%以下とする必要がある。尚、Cr含有量の好ましい下限は0.60%であり、好ましい上限は1.25%である。
[Mo:0.10〜0.30%]
Moは、焼入れ性を高めて強度を向上させる元素であり、また炭化物を生成しやすい元素である。Moによる焼入れ性向上効果を発揮させるためには、Moは0.10%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mo含有量が過剰になると、焼入れ性が過剰となり、耐溶接割れ性が劣化するので、0.30%以下とする必要がある。尚、Mo含有量の好ましい下限は0.15%であり、好ましい上限は0.25%である。
[Ti:0.008〜0.025%]
Tiは、Nと窒化物(TiN)を形成して熱間圧延前の加熱時におけるオーステナイト粒(γ粒)の粗大化を防止し、靭性向上に効果がある元素である。また、Nを固定することによりBの焼入れ性を確保するのに有効である。これらの効果を発揮させるためには、Tiは0.008%以上含有させる必要がある。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、TiNが粗大化して母材靭性が劣化するので、0.025%以下とする必要がある。尚、Ti含有量の好ましい下限は0.010%であり、好ましい上限は0.018%である。
[B:0.0005〜0.0025%]
フリーBはγ粒界に存在し、焼入れ性を向上させて母材強度の向上をはかる上で有効な元素である。Bの含有量が0.0005%未満であると、母材強度の向上効果が少なく、引張強度:780MPa以上の強度を確保できなくなる。しかしながら、B含有量が過剰になると、介在物が生成し母材靭性が劣化するので、0.0025%以下とする必要がある。尚、B含有量の好ましい下限は0.0008%であり、好ましい上限は0.0020%である。
[N:0.0030〜0.0060%]
Nは、TiNを生成し、熱間圧延前の加熱時および溶接時におけるγ粒の粗大化を防止し、母材靭性やHAZ靭性を向上させるのに有効な元素である。Nの含有量が0.0030%未満であると、TiNが不足し、加熱γ粒が粗大になり、靭性が劣化するので、0.0030%以上含有させる必要がある。またN含有量が過剰になって0.0060%を超えると、曲げ加工による脆化により、鋼管の靭性が劣化する。尚、N含有量の好ましい下限は0.0035%であり、好ましい上限は0.0055%である。
[Ca:0.0005〜0.0040%]
Caは、MnSの球状化による耐溶接割れ性に対する無害化に有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Caは0.0005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Ca含有量が0.0040%を超えて過剰になると、介在物を粗大化させ、母材靭性を劣化させる。尚、Ca含有量の好ましい下限は0.0015%であり、好ましい上限は0.0030%である。
[PCM値:0.30%以下]
前記(1)式で表わされるPCM値は、溶接施工による低温割れを防止する指標として最も一般的な要件である。溶接割れを防止するためには、PCM値を0.30%以下とする必要がある。PCM値は、好ましくは0.28%以下とするのが良い。
本発明の円形鋼管において、上記成分の他は、Feおよび不可避的不純物(例えば、P,S,O等)からなるものであるが、溶製上不可避的に混入する微量成分(許容成分)も含み得るものであり(例えば、Zr,H等)、こうした円形鋼管も本発明の範囲に含まれるものである。但し、不可避的不純物としてのP,S,O等については、下記の観点から、夫々下記の範囲に抑制する必要がある。
[P:0.012%以下(0%を含まない)]
不可避的不純物であるPは、母材、溶接部の靭性に悪影響を及ぼすものであり、こうした不都合を招かない上でもその含有量が0.012%以下に抑制する必要があり、好ましくは0.010%以下とするのが良い。
[S:0.005%以下(0%を含まない)]
Sは、MnSを形成して耐溶接割れ性を劣化させるので、できるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、S含有量は0.005%以下に抑制する必要があり、好ましくは0.003%以下とするのが良い。
[O:0.0040%以下(0%を含まない)]
Oは種々の元素と結合して酸化物を形成する。その酸化物は、場合によっては粗大化し、母材靭性を劣化させる原因となる。こうした観点から、O含有量は0.0040%以下とする必要があり、これよりも含有量が過剰になると、酸化物が粗大化することになる。好ましくは、0.0030%以下に抑制するのが良い。
本発明の円形鋼管においては、鋼管の表・裏面(鋼管を構成する鋼板の表・裏面)の夫々から深さ2mmまでの表層部を除く中央部の平均ビッカース硬さHvが230〜310であることも必要である[前記(A)の要件]。このビッカース硬さHvは引張強さTSと相関があり、所望の引張強さTSと降伏比YRを得るためには、鋼管厚中央部の平均ビッカース硬さHvが230〜310であることも必要である。このときの平均ビッカース硬さHvとは、鋼管厚断面の表面から深さ4mmの位置から裏面側の方向に裏面から4mmの位置までの硬さを2mm間隔で連続的に測定し、その値を平均化したものである。鋼管厚中央部の平均ビッカース硬さHvが230未満では、低降伏比YRは確保できるが、引張強さTSが780MPa未満となり強度を満たさなくなる。また、鋼管厚中央部の平均ビッカース硬さHvが310を超えると、引張強さTSが大きくなり過ぎ、降伏比YRも高くなる。
本発明の円形鋼管においては、鋼管の表・裏面の夫々から深さ2mmまでの表層部の平均ビッカース硬さHvが、前記鋼管厚中央部の平均ビッカース硬さHvの1.3倍以下であることも必要である[前記(C)の要件]。この表層部の平均ビッカース硬さHvとは、表面から深さ1mmと2mmの位置、および裏面から深さ1mmと2mmの位置の4点の平均値である。
表層部と鋼管厚中央の硬さの比が1.3倍を超えると、表層部の塑性変形能が低下するため、大地震時の大荷重による引張応力が作用したとき表層部の延性が追随できず、表面から亀裂が発生する危険性がある。更に、付属金物溶接がある場合は、溶接によるHAZ硬化部が亀裂発生の起点となり、表層部の低延性低靭性部を脆性亀裂が発生伝播し、円形鋼管が脆性破断する可能性がある。この比の値は、好ましくは1.25倍以下である。
本発明の円形鋼管を製造するには、上記の様な化学成分からなる鋳片を950〜1200℃に加熱した後、仕上げ圧延温度を800〜930℃の範囲として熱間圧延を行なって所定の板厚とし、次いでt/4(t:板厚)の位置における冷却速度が2〜25℃/秒で、表面温度が350℃以下となるまで水冷し、その後、温度:700〜900℃の範囲に再加熱して焼入れ処理を行い、450〜700℃の温度範囲で焼戻しして鋼板とし、得られ鋼板を用いてプレスベンド法によって円形鋼管に成形すれば良いが、各工程の条件を規定した理由は次の通りである。
[鋳片を950〜1200℃に加熱]
この加熱温度は、熱間圧延前の組織制御に大きく影響する。加熱温度が950℃未満であると、圧延最終パス(仕上げ圧延)温度が800℃未満となり、水冷前に表面からフェライトが析出し780MPa以上の母材強度を確保できなくなると共に、板厚方向の硬さ分布が均一にならない。一方、加熱温度が1200℃を超えると、γ粒径の粗大化により母材靭性が劣化する。
[仕上げ圧延温度を800〜930℃の範囲として熱間圧延を行なって所定の板厚とする]
制御冷却(加速冷却)は、その前の組織制御が重要であり、そのためには制御圧延での圧延終了温度(仕上げ圧延温度)と冷却開始温度を管理する必要がある。仕上げ圧延温度が800℃未満であると、冷却開始前にフェライトが析出し、所望の強度を得ることができない。また、仕上げ圧延温度が930℃を超えると、冷却前組織が粗大となり、母材靭性が劣化し、板厚方向の硬さ分布が大きくなる。仕上げ圧延温度は、好ましくは900℃以下とするのが良い。
[t/4(t:板厚)の位置における冷却速度が2〜25℃/秒]
圧延後の冷却工程(DQ)は、組織制御のために重要な工程である。冷却速度が2℃/秒未満では、所望の組織であるベイニティックフェライト(ベイナイト)の面積分率:80%以上を確保できなくなる。冷却速度が大きい方が、ベイニティックフェライト組織を微細化し靭性が向上するが、25℃/秒を超えた場合には、表面近くの組織において、有害組織であるマルテンサイト(MAを含む)が増大し、母材靭性が劣化すると共に、強度が過大となり表面が硬化するため延性(伸び性能)が低下する。尚、冷却速度を測定する位置として、t/4(t:板厚)としたのは、鋼板の平均的な性能を発揮する位置だからである。
[冷却停止温度:鋼板の表面温度が350℃以下]
冷却停止温度によって、マルテンサイトや下部ベイナイトの存在形態が変化し、強度が変わる。冷却停止温度が350℃を超えると、板厚中央部で低温変態組織が少なくなり、強度が低下すると共に、板厚方向で変態組織や板厚さ方向の硬さ分布が不均一となる。板厚方向に均一に変態させるため、冷却停止温度は350℃以下とする必要がある。
[温度:700〜900℃の範囲に再加熱して焼入れ処理」
低YR特性を実現する軟質相と硬質相の複合組織を得るためには、Ac1とAc3の間の二相域の温度に加熱することが有効な手段である。そのための温度が700〜900℃であり、二相域の温度に加熱することにより、一部は焼戻しにより軟質組織となり、一部はオーステナイト相に逆変態してその後の冷却で硬質組織となる。この二相域温度の制御で硬質相の面積分率や硬度を変化させ、YS,TS,YRを制御することができる。再加熱温度が700℃未満の場合は、780MPa以上の強度を確保できない。再加熱温度が900℃を超えると、強度は高いが85%以下の低YRを達成できない。700〜900℃へ再加熱した後、一部がオーステナイトに逆変態しており、その後の焼入れ(水冷)により、オーステナイト相がそのまま硬質相に変態する。尚、この硬質相と軟質相の組織は極めて微細なため、光学顕微鏡では判別が困難であり、これら硬質相と軟質相を合わせた複合組織全体をベイニティックフェライト(ベイナイト)相とする。
[450〜700℃の温度範囲で焼戻し(T)をする]
焼戻し処理は、強度を低下させるが、降伏比YRを低下させ、靭性を向上させ、また表面部の硬さを低下させるのに有効である。その場合、焼戻し熱処理が450〜700℃の温度範囲であれば、強度の過度な低下を抑え、適正な降伏比YR、靭性を得ることができ表面硬さを低減できる。焼戻し温度が450℃未満であると、靭性向上と表面硬さの低下が十分ではない。一方、焼戻し温度が700℃を超えると、所望の強度(TS,YS)を得ることはできない。
[プレスベンド法によって円形鋼管に成形]
鋼板をプレス曲げ法によって、冷間曲げを行って円形鋼管とする。前述のように、ラインパイプに適用されるような板厚:30mm以下の鋼板であれば、UOE成形法によって円形鋼管が製造されるが、建築構造物用円形鋼管では、板厚が厚く、強度が高い場合には、プレスベンド法(即ち、プレス曲げ加工)によって円形鋼管に成形する必要がある。こうした方法の適用では、D/t:10〜20もの強加工を行うため、表面の曲げ加工歪が大きく、表面の加工硬化が大きい。そのため、上記のように製造した鋼板を用いて、プレス曲げ成形を行うことによって、表面硬さの低い、円形鋼管を製造することができる。
[円形鋼管の熱処理]
円形鋼管への成形後、SR熱処理は実施してもしなくても良い。本発明方法によれば、高強度でYRが低く、鋼管厚方向の硬さ分布の均一性が優れているため、基本的にはSR熱処理は行わなくても良いが、D/t≦15程度の強曲げ加工を行なった場合は、YRが90%を超える可能性があるため、その場合はSR熱処理を行なうことができ、その熱処理温度は350〜650℃の温度範囲とする。350℃未満では、YR低減効果はない。一方、650℃を超えると、YR、TSの低下が大きく、780MPa以上の強度を確保できない。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することは勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
下記表1、2に示す化学成分組成の鋼を通常の溶製方法によって溶製し、鋼片とした後、熱間圧延、加速冷却(圧延後の冷却)、二相域焼入れ、焼戻しを施し、鋼板を製造した。得られた鋼板を用いて、プレスベンド法によって円形鋼管に成形した。尚、表1、2には、前記(1)式で規定されるPCM値についても示した。このときの製造条件を、下記の通りである。
[製造条件]
鋼No.1〜5、7〜60のものについては、鋳片を1150±50℃に加熱した後、仕上げ圧延温度(表面温度)を900±30℃の範囲として熱間圧延を行ない、板厚:60mmとし、次いでt/4(t:板厚)の位置における冷却速度を5〜25℃/秒に制御し、冷却停止時の表面温度を250℃以下とした。更に、二相域熱処理(Q’)温度を700〜850℃として焼入れ処理(一部空冷)を行い、450〜650℃の温度範囲で焼戻して鋼板とし、得られ鋼板を用いてプレスベンド法によって円形鋼管に成形した。このときの曲げ加工度は、円形鋼管の直径をD(mm)、鋼板の厚さをt(mm)としたとき、D/tが10(t/D=0.1)である。
一方、鋼No.61〜64については、以下の条件を変えて鋼板を製造し、円形鋼管に成形した。鋼No.61は、上記条件のうち、焼戻し温度を720℃とした。鋼No.62は、上記条件のうち、二相域熱処理温度を930℃として焼入れた後の焼戻し温度を400℃とした。鋼No.63は、上記条件のうち、仕上げ圧延温度を750℃として圧延し冷却後の再加熱(Q’)温度を680℃とした。鋼No.64は、上記条件のうち、二相域熱処理を行なったままで、その後の焼戻しを行わなかった。これらの鋼板から、円形鋼管への成形は鋼No.1〜5、7〜60と同様に、D/t=10で行なった。
Figure 0005368820
Figure 0005368820
得られた各円形鋼管について、鋼管のミクロ組織(各相の面積分率)および硬さを下記の方法で評価すると共に、材質(降伏強度YS、引張強さTS、降伏比YRおよび靭性vE-20)および溶接性を下記の方法によって評価した。
[ミクロ組織および硬さの測定方法]
ミクロ組織を画像解析により、ベイニティックフェライト相およびマルテンサイト相の面積分率を測定すると共に、鋼管表層部のビッカース硬度(Hv0)と中央部のビッカース硬度Hv1を測定し(荷重:98N)、その硬さ比(Hv0/Hv1)を求めた。このときの硬さHv0、硬さHv1の測定は、厚さ方向に2mm間隔で測定し、その平均値を求めたものである(例えば、表層部のビッカース硬さHv0は、表・裏面の夫々から深さ2mまでの硬さの平均値となる)。
[降伏強度YS、引張強さTSの評価方法]
円形鋼管の外面側から鋼管のt/4部(tは鋼管厚:鋼管を構成する鋼板の厚さ)における管軸方向(鋼板の主圧延方向に相当)に、JIS Z 2201 4号試験片を採取してJIS Z 2241の要領で引張試験を行ない、鋼管の降伏応力YS(上降伏点YPまたは0.2%耐力σ0.2)、引張強さTS、降伏比YR(降伏応力YS/引張強度TS)を測定した。合格基準は、2回での平均値で、降伏応力YS:630MPa以上、引張強さTS:780〜930MPa、降伏比YR:90%以下である。
[靭性評価方法]
円形鋼管の外面側から鋼管のt/4部(tは鋼管厚:鋼管を構成する鋼板の厚さ)における管軸方向(鋼板の主圧延方向)に、JIS Z 2204 Vノッチ衝撃試験片を採取してJIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を行ない(3回試験の平均値)、温度:−20℃での平均吸収エネルギーvE-20を測定した。この平均吸収エネルギーvE-20が47J以上を合格とした。
[溶接性(耐溶接割れ性)]
JIS Z 3101に規定された溶接熱影響部(HAZ)の最高硬さ試験に準拠して、円形鋼管の外面側に溶接ビードを置き、最高硬さを測定した。また円形鋼管の外側に付属金物を溶接し、浸透探傷試験による表面割れの有無、超音波探傷試験による内部割れの有無について調査した。
鋼板のミクロ組成および硬さ分布(鋼板中央部の硬さ、硬さ比)を下記表3、4に、材質(降伏応力YS、引張強さTS、降伏比YRおよび靭性vE-20)および溶接性の評価結果を下記表5、6に示す。尚、下記表5、6には、「溶接性」として、HAZの最高硬さ(Hv)を示した。
Figure 0005368820
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Figure 0005368820
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これらの結果から、次のように考察できる。まず、鋼No.1〜5、7〜32のもの(表1、3、5)は、本発明で規定する要件を満足するものであり、全ての特性において目標値を満足するものとなっている(総合評価:○)。
これに対して、鋼No.33〜64のもの(表2、4、6)では、本発明で規定するいずれかの要件を満足しないものであり、少なくともいずれかの要求特性が劣化している(総合評価×)。
[実施例2]
前記表1に示した鋼No.1〜5、7〜11のもの(化学成分組成が本発明で規定する範囲を満足するもの)を用い、下記表7に示す各種製造条件(DQ−Q’−T)によって、鋼板を製造した(実験No.1〜5、7〜21)。得られた鋼板(板厚:60mm)を用いて、プレスベンド法によって円形鋼管に成形した。得られた円形鋼管について、実施例1と同様にして材質(降伏応力YS、引張強さTS、降伏比YRおよび靭性vE-20)および溶接性を評価した。
尚、表7の実験No.12、13は鋼片加熱温度が本発明で規定する範囲を外れるもの、実験No.14、15は仕上げ圧延温度が本発明で規定する範囲を外れるもの、実験No.15、16は冷却速度が本発明で規定する範囲を外れるもの、実験No.17は冷却停止温度が本発明で規定する範囲を外れるもの、実験No.18、19は焼入れ温度(焼入れ時の加熱温度)が本発明で規定する範囲を外れるもの、実験No.20、21は焼戻し温度が本発明で規定する範囲を外れるもの、を夫々示している。
Figure 0005368820
この結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足する円形鋼管を得るためには、製造条件も適切に制御する必要があることが分かる。

Claims (2)

  1. C:0.01〜0.06%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.60〜2.50%、Al:0.025〜0.090%、Cu:0.15〜0.70%、Ni:0.90〜1.60%、Cr:0.50〜1.35%、Mo:0.10〜0.30%、Ti:0.008〜0.025%、B:0.0005〜0.0025%、N:0.0030〜0.0060%およびCa:0.0005〜0.0040%を夫々含有すると共に、下記(1)式で示されるPCM値が0.30%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、該不可避的不純物のうちP:0.012%以下(0%を含まない)、S:0.005%以下(0%を含まない)およびO:0.0040%以下(0%を含まない)に夫々抑制し、且つ下記(A)〜(C)の要件を満足することを特徴とする耐震性に優れた建築構造用780MPa級低降伏比円形鋼管。
    PCM値=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+([B]×5) …(1)
    但し、[C],[Si],[Mn],[Cu],[Ni],[Cr],[Mo],[V]および[B]は、夫々C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,VおよびBの含有量(質量%)を示す。
    (A)鋼管の表・裏面の夫々から深さ2mmまでの表層部を除く中央部の平均ビッカース硬さHvが230〜310である、
    (B)鋼管のミクロ組織において、ベイニティックフェライト相の分率が80面積%以上であり、マルテンサイト相の分率が5面積%以下である、
    (C)鋼管の表・裏面の夫々から深さ2mmまでの表層部の平均ビッカース硬さHvが、前記中央部の平均ビッカース硬さHvの1.3倍以下である。
  2. 請求項1に記載の円形鋼管を製造するに当り、前記化学成分からなる鋳片を950〜1200℃に加熱した後、仕上げ圧延温度を800〜930℃の範囲として熱間圧延を行なって所定の板厚とし、次いでt/4(t:板厚)の位置における冷却速度が2〜25℃/秒で、表面温度が350℃以下となるまで水冷し、その後、温度:700〜900℃の範囲に再加熱して焼入れ処理を行い、450〜700℃の温度範囲で焼戻しして鋼板とし、得られた鋼板を用いてプレスベンド法によって円形鋼管に成形することを特徴とする耐震性に優れた建築構造用780MPa級低降伏比円形鋼管の製造方法。
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