JP5407478B2 - 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5407478B2
JP5407478B2 JP2009076200A JP2009076200A JP5407478B2 JP 5407478 B2 JP5407478 B2 JP 5407478B2 JP 2009076200 A JP2009076200 A JP 2009076200A JP 2009076200 A JP2009076200 A JP 2009076200A JP 5407478 B2 JP5407478 B2 JP 5407478B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
toughness
heat input
steel plate
affected zone
strength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009076200A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010229453A (ja
Inventor
圭治 植田
伸一 鈴木
伸夫 鹿内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2009076200A priority Critical patent/JP5407478B2/ja
Publication of JP2010229453A publication Critical patent/JP2010229453A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5407478B2 publication Critical patent/JP5407478B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、建築、橋梁、造船、海洋構造物、ラインパイプ等に供して好適な引張強さが780MPa以上で板厚12mm以上の高強度厚鋼板に係り、特に、溶接入熱400kJ/cmを超える1層超大入熱溶接で溶接熱影響部の靭性に優れ、軟化域が生じないものに関する。
建築,土木および橋梁等の各分野で使用される鋼構造物は,一般に溶接接合によって所望形状に仕上げられている。このような構造物においては,安全性の観点から,使用される鋼材の母材靭性は勿論のこと,溶接熱影響部の靭性に優れることが要求される。
近年では,建築構造物の大型化に伴い,使用鋼材の高強度化、厚肉化が要望されるとともに,溶接施工の能率向上と施工コストの低減の観点から,1層大入熱溶接の適用範囲が拡大し、例えば,建築構造の柱−梁溶接では,2電極サブマージアーク溶接などの溶接入熱が400kJ/cmを超えるような大入熱溶接が適用されている。
また,大地震が頻発することから建築構造物の耐震性向上も重要な課題で,溶接継手部で,高い靭性を有することが要求されるようになっている。例えば,柱−梁接合部については,試験温度0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが70Jを超えることが要求されている。
鋼材に大入熱溶接を適用した場合,最も靭性が劣化する領域は溶接熱影響部(以下,HAZともいう)のボンド部で、溶接時に溶融点直下の高温に曝されるため,オーステナイトの結晶粒が最も粗大化し易く,また引き続く冷却によって,島状マルテンサイトを含む脆弱な上部ベイナイト組織に変態し易いことが靭性低下の原因となっている。
また、溶接継手部にも母材と同等以上の強度を有することが要求されるが、大入熱溶接部のHAZは、高温のオーステナイト域から非常に遅い速度(例えば、板厚50mmを2電極サブマージアーク溶接の1層溶接で入熱約500kJ/cmで冷却した場合は、800〜500℃の冷却速度が0.4℃/sec程度)で冷却されるため軟化する。
1層大入熱溶接部のHAZにおける、靭性低下と軟化は、特に、鋼材の強度と靭性を確保するために、合金元素を多量に添加して熱処理を施す、引張強さが780MPa以上の高張力鋼板において、溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成が助長され、変態強化が消失するため顕著となる。
特許文献1は700MPa超級非調質厚鋼板およびその製造方法に関し、鋼組成を極低炭素でかつ高合金元素とし、鋼板のミクロ組織をベイニティックフェライト相とすることにより、高強度とHAZで高靭性を達成することが記載されている。
特許文献2は溶接性に優れた低降伏比高張力鋼板に関し、鋼中に焼入れ性元素であるMn、CrおよびMoを積極添加するとともに、介在物制御の観点からN、Ti、ZrおよびHfを厳格に制御することにより、溶接割れ性、溶接部高靭性と、鋼板の高強度低降伏比を達成することが記載されている。
特許文献3は溶接性に優れた高張力鋼の製造方法に関し、Cuの析出硬化を活用して炭素当量を低下させて、高強度化と高溶接性および大入熱溶接部の高靭性を達成することが記載されている。
特許文献4は大入熱溶接部の熱影響部靭性が優れた低降伏比高張力鋼板およびその製造方法に関し、鋼板のミクロ組織を粒界析出フェライトとベイナイトとすることにより、鋼板の高強度、低降伏比と、大入熱溶接部の高靭性を達成することが記載されている。
特開2004−232056号公報 特開2001−226740号公報 特開平5−163527号公報 特開平9−202936号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された製造方法では、高価なMoやNiを多量に添加することが不可避で、製造コストが上昇することが懸念され、さらに、溶接入熱量が400kJ/cmを超える1層大入熱溶接部での高靭性を安定して達成することが困難である。
特許文献3に記載された技術では、Cuの多量添加が不可欠であり、圧延中の鋼板表面割れ等、表面性状が劣化するだけでなく、大入熱溶接部の靭性が不十分である。特許文献4に記載された技術では、鋼板および大入熱HAZにおいて780MPa以上の高強度を満足することが困難である。
そこで、本発明は、溶接入熱量が400kJ/cmを超える1層大入熱溶接部での高靭性を安定して達成する、引張強さが780MPa以上の高強度厚鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するため,厚鋼板を対象に母材強度,1層大入熱HAZ部の靭性および硬度を決定する各種要因のうち、大入熱HAZ組織の制御因子に関して鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
1.母材の引張強さが780MPa以上、溶接入熱量が400kJ/cmを超える1層大入熱溶接部での靭性(試験温度0℃のシャルピー衝撃エネルギー)が70J以上、大入熱溶接部の最軟化硬度がHV250以上を安定して達成するためには、鋼組成を適切に選定して、大入熱溶接熱影響部のミクロ組織中に、脆化組織である島状マルテンサイトを含む脆弱な上部ベイナイト組織が生成することを極力抑制することが重要である。
2.更に、C、Mn、Cu、Ni、CrおよびMo等の焼入れ性向上元素の添加量バランスを厳格に管理して、大入熱溶接熱影響部のミクロ組織を靭性の高い下部ベイナイト組織に制御することが重要である。
3.更に、TiおよびNの添加量を厳格に調整して,大入熱溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の成長を抑制することが重要である.
4.更に、Caの添加量を厳格に調整して、大入熱溶接熱影響部における酸硫化物を微細に制御することが重要である。
本発明は、得られた知見に、さらに検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1. 鋼組成が、質量%で、
C:0.03〜0.09%
Si:0.05〜0.40%
Mn:1.0〜3.0%
Cr:0.3〜3.0%
P:0.02%以下
S:0.0050%以下
Al:0.01〜0.05%
Ti:0.005〜0.03%
N:0.0025〜0.0070%
Ca:0.0005〜0.005%
を含有し、かつ下記(1)式の値が30〜42(%)で、残部がFeおよび不可避的不純物からなる,引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板。
27C+9Mn+4(Cu+Ni)+8(Cr+Mo) (1)
但し、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%)で含有しない元素は0とする。
2.1に記載した鋼組成に、質量%でさらに、
Cu:0.1〜0.9%
Ni:0.1〜2.0%
Mo:0.1〜1.0%
を含有し、かつ下記(1)式の値が30〜42(%)で、残部がFeおよび不可避的不純物からなる,引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板。
27C+9Mn+4(Cu+Ni)+8(Cr+Mo) (1)
但し、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%)で含有しない元素は0とする。
3.1または2に記載した鋼組成に、質量%でさらに、
Nb:0.05%以下、
V:0.1%以下、
B:0.005%以下
REM:0.02%以下
Mg:0.005%以下
を含有し、かつ下記(1)式の値が30〜42(%)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる,引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板。
27C+9Mn+4(Cu+Ni)+8(Cr+Mo) (1)
但し、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%)で含有しない元素は0とする。
4.1〜3のいずれか1項に記載の鋼組成からなる鋳片または鋼片を,1050〜1250℃に再加熱後、圧延終了温度が750℃以上となる熱間圧延を行うことを特徴とする引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板。
5.熱間圧延後,Ac変態点以上の温度域に再加熱し,保持後、室温まで冷却することを特徴とする、4に記載の引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板の製造方法。
6.熱間圧延後あるいは前記Ac変態点以上の温度域への再加熱、保持、冷却後に、加熱温度が400〜650℃の焼戻し処理を施すことを特徴とする、4または5に記載の引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強さ780MPa以上を有し,溶接入熱量が400kJ/cmを超える1層大入熱溶接部の靭性に優れた、板厚12mm以上の厚鋼板が得られ、鋼構造物の大型化、鋼構造物の耐震性の向上や施工能率向上に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。
本発明では成分組成を規定する。説明において%は質量%とする。
成分組成
C:0.03〜0.09%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するために必要な元素でその効果を得るため、また大入熱溶接HAZの強度を確保するため0.03%以上の含有を必要とする。
一方、0.09%を超える含有は、大入熱溶接HAZのミクロ組織中の島状マルテンサイトが増大し、靭性を顕著に劣化させる。また,耐溶接割れ性を劣化させるとともに、母材の低温靭性も劣化させるため、0.03〜0.09%の範囲に限定する。好ましくは、0.04〜0.08%である。
Si:0.05〜0.40%
Siは、脱酸材として作用し、製鋼上、少なくとも0.05%必要であるが、0.40%を超えて含有すると、母材の靭性、溶接性が劣化するだけでなく、大入熱溶接HAZのミクロ組織中の島状マルテンサイトが増大し、HAZ靭性が顕著に劣化するため、0.05〜0.40%の範囲に限定する。好ましくは、0.10〜0.35%である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、鋼の焼入れ性を増加させる効果を有し、本発明では、大入熱溶接HAZのミクロ組織を、上部ベイナイト組織の生成を抑制し、下部ベイナイト主体組織とするため、1.0%以上含有する。一方、3.0%を超えて含有すると、母材の靭性および溶接性が著しく劣化するため、1.0〜3.0%の範囲に限定する。好ましくは、1.1〜2.8%である。
Cr:0.3〜3.0%
Crは、鋼の焼入れ性を増加させる効果を有し、本発明では、大入熱溶接HAZのミクロ組織を、上部ベイナイト組織の生成を抑制し、下部ベイナイト主体組織とするため、0.3%以上含有する。一方、3.0%を超えて含有すると、母材の靭性および溶接性が著しく劣化するため、0.3〜3.0%の範囲に限定する。好ましくは、0.5〜2.8%である。
P:0.02%以下
Pは、鋼の強度を増加させ靭性を劣化させる元素で、特に大入熱溶接HAZでは島状マルテンサイトの生成を助長する効果を有し、靭性を劣化させるので、0.02%を上限とし、可能なかぎり低減することが望ましい。尚、過度のP低減は精錬コストを高騰させ経済的に不利となるため、0.003%以上とすることが望ましい。
S:0.0050%以下
Sは母材の低温靭性や延性を劣化させるため、0.0050%を上限として可能なかぎり低減することが望ましい。
Al:0.01〜0.05%
Alは、脱酸剤として作用し、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスに於いて、もっとも汎用的に使われる。また、鋼中のNをAlNとして固定し、母材および大入熱溶接HAZの靭性向上に寄与する。このような効果を得るため、0.01%以上を含有する。
一方、0.05%を超えて含有すると、母材の靭性が低下するとともに、溶接時に溶接金属部に混入して、溶接金属の靭性を劣化させるため、0.05%以下に限定する。好ましくは、0.015〜0.045%である。
Ti:0.005〜0.03%
Tiは、Nとの親和力が強く凝固時にTiNとして析出し、大入熱溶接HAZでのオーステナイト粒の粗大化を抑制してHAZの高靭化に寄与する重要な添加元素である。このような効果を確保するため,0.005%以上を添加する。
一方,0.03%を超えて添加するとTiN粒子が粗大化して,オーステナイト粒の粗大化抑制効果が飽和するため,0.005〜0.03%とする。好ましくは、0.008〜0.025%である。
N:0.0025〜0.0070%
NはTiNを形成するため必要で、大入熱溶接HAZでのオーステナイト粒の粗大化抑制に必要なTiN量を確保するため,0.0025%以上とする。
一方,0.0070%を超えて含有すると、固溶N量の増加により,母材および溶接部靭性が著しく低下するため、0.0070%以下に限定する。好ましくは,0.0030〜0.0065%である。
Ca:0.0005〜0.005%
Caは、酸硫化物の形態制御に有効であり、靭性に悪影響を及ぼす粗大なMnS等の生成を抑制して、微細なCa酸硫化物を形成するとともに、大入熱溶接HAZのオーステナイト結晶粒を微細化して、靭性を向上させる有用な元素である。このような効果を得るためには0.0005%以上を添加する。一方、0.005%を越えると、Ca酸硫化物が粗大化し靭性に悪影響を及ぼすため、0.005%以下に限定する。好ましくは、0.0008〜0.0045%である。
27C+9Mn+4(Cu+Ni)+8(Cr+Mo):30〜42% (1)
但し、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%)で含有しない元素は0とする。
パラメータ式、27C+9Mn+4(Cu+Ni)+8(Cr+Mo)は、大入熱溶接熱影響部の焼入れ性の指標で、上記成分範囲内において30〜42%となるように、各元素の含有量を調整する。
本パラメータ式の値が30%未満では、大入熱溶接HAZの焼入れ性が不足し、HAZのミクロ組織が、脆化組織である島状マルテンサイトを含む脆弱な上部ベイナイト組織に変態し,所望の大入熱溶接部の高靭性が確保できず、大入熱溶接継手部の軟化が顕著となる。
一方、本パラメータ式の値が42%を超えると、母材靭性および大入熱溶接HAZ靭性が著しく劣化するとともに,耐溶接割れ性が劣化するため、30〜42%とする。好ましくは、31〜40%である。
本発明では、上記基本成分系に加えて、必要に応じ、Cu、Ni、Moの1種または2種以上を含有することができる。
Cu:0.1〜0.9%、Ni:0.1〜2.0%、Mo:0.1〜1.0%の1種または2種以上
CuおよびNiは、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素で、大入熱溶接HAZ靭性への影響も小さいため、必要に応じ選択して添加する。
Cuを添加する場合は、そのような効果を得るため、0.1%以上とし、0.9%を超えると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状を劣化させるため、0.1〜0.9%とする。尚、好ましくは0.15〜0.7%である。
Niを添加する場合は、そのような効果を得るため、0.1%以上とし、2.0%を超えると、効果が飽和し、経済的に不利になるため、0.1〜2.0%とする。尚、好ましくは0.15〜1.7%である。
Moは、鋼の焼入れ性を増加させる効果を有し、本発明では、大入熱溶接HAZのミクロ組織として、上部ベイナイト組織の生成を抑制し、下部ベイナイト主体組織とするため、0.1%以上とする。
一方、1.0%を超えると、母材靭性および耐溶接割れ性に悪影響を及ぼすため、添加する場合は、0.1〜1.0%とする。尚、好ましくは0.15〜0.6%である。
本発明では、さらに、必要に応じ、Nb、V、B,REM、Mgの1種または2種以上を含有することができる。
Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、B:0.005%以下の1種または2種以上
Nb、V、Bは、いずれも鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて適宜含有できる。
Nbは、添加する場合、0.005%以上含有することが好ましいが、0.05%を超えると、大入熱溶接HAZでは島状マルテンサイトの生成を助長する効果を有し、大入熱HAZ靭性を劣化させるため、0.05%以下とする。
Vは、添加する場合、0.01%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えると、母材靭性および大入熱HAZ靭性を劣化させるため、0.1%以下とする。
B:0.005%以下
Bは,焼入れ性を向上して,鋼の強度を増加させる。また,大入熱溶接時には,溶接熱影響部において脆弱な上部ベイナイト相を抑制し,下部ベイナイト組織の生成を促進し,固溶窒素を窒化物として固着することにより,靭性を向上させる。
一方,0.005%を超えると、焼入れ性を著しく増加させ,母材の靭性,延性の劣化をもたらすため,0.005%以下とする。
REM:0.02%以下およびMg:0.005%以下の1種または2種
REMおよびMgは、いずれも靭性向上に寄与し、所望する特性に応じて選択して添加する。
REMを、添加する場合、0.002%以上とすることが好ましいが、0.02%を超えても効果が飽和するため、0.02%を上限とする。
Mgは、大入熱溶接HAZのオーステナイト結晶粒を微細化して靭性を向上させる有用な元素で、添加する場合は、0.001%以上とすることが好ましい。一方、0.005%を超えても効果が飽和するため、0.005%を上限とする。上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
製造条件
以下の説明において、温度に関する「℃」表示は,板厚の1/2における温度を意味するものとする。
鋼素材加熱温度:1050℃〜1250℃
上述した組成の鋳片または鋼片の鋼素材を転炉,電気炉,真空溶解炉等,通常公知の方法による溶鋼から作成し、1050℃〜1250℃に再加熱する。再加熱温度が1050℃未満では,熱間圧延での変形抵抗が高く,1パス当たりの圧下量が大きく取れなくなることから,圧延パス数が増加し,圧延能率の低下を招くとともに,鋼素材(スラブ)中の鋳造欠陥を圧着することができない場合が生じる。一方,再加熱温度が1250℃を超えると,加熱時のスケールによって表面疵が生じやすく,圧延後の手入れ負荷が増大するため,1050〜1250℃の範囲とする。
熱間圧延終了温度:750℃以上
圧延終了温度が750℃未満の場合,変形抵抗が高くなるため,圧延荷重が増大し,圧延機への負担が大きくなる。また,厚肉材を750℃未満の圧延温度まで低下させるためには,圧延途中で待機する必要があり,生産性を大きく阻害する。このため,熱間圧延の圧延終了温度を750℃以上とした。
なお,板厚が70mmを超える極厚鋼板の場合には,ザク圧着のために1パスあたりの圧下率が15%以上となる圧延パスを少なくとも1パス以上確保することが望ましい。
圧延終了後の冷却方法には空冷、加速冷却を含み、所望する機械的特性に応じて,適宜選定する。なお、冷却速度が60℃/sを超えると,鋼板位置による温度制御が困難となり,材質ばらつきが生じるため、60℃/s未満とすることが望ましい。冷却速度は板厚方向の各位置における冷却速度を平均した平均冷却速度とする。
熱処理
本発明では,鋼板に、焼もどし処理を施しても良い。再加熱温度400℃以上650℃以下の焼もどし処理により,母材の靭性および延性を向上させる。このような効果を得るためには,焼もどし温度を400℃以上とする必要があるが,650℃を超えると母材強度が大幅に低下する。
このため,焼もどし処理は,400〜650℃で行うことが望ましい。保持時間について規定しないが、1hr超になると、母材強度が大幅に低下するので、1hr以内が望ましく,熱処理炉内の均熱が良ければ,短時間の保持でもかまわない。
なお、本発明では熱間圧延と焼きもどし処理の間に,再加熱、焼きならし、もしくは焼入れ処理を施してもよい。厚鋼板をAc変態点以上の温度域に再加熱して保持することにより,厚鋼板内部まで均一なオーステナイト相とした後,空冷もしくは加速冷却を行うと,厚鋼板内の組織が一層、均質化および微細化される。
加熱温度の上限については規定していないが,1100℃超になると鋼板表面性状が劣化するために,好ましくは1100℃以下とする。また,保持時間についても規定していないが,1hr超になるとオーステナイト粒の粗大化により,母材の靭性が劣化するので1hr以内が望ましく,熱処理炉内の均熱が良ければ,短時間の保持でも良い。
冷却方法には空冷、加速冷却を含み、所望する機械的特性に応じて,適宜選定する。
平均冷却速度の上限については特に規定しないが,条切り歪を低減するという観点からは80℃/s以下とすることが望ましい。
なお,Ac点は化学組成との相関が概ね次(2)式で整理できる。
Ac=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr (2)
(ただし,C,Si,Mn,Ni,Cr:各元素の含有量(質量%))
ミクロ組織
本発明の鋼板のミクロ組織はベイニティックフェライトあるいはベイニティックフェライトとマルテンサイトの混合組織であり、パーライトおよびセメンタイト等の組織が混在すると強度が低下するため、面積分率は少ない方が良い。但し、パーライトおよびセメンタイト等の組織が面積分率で15%以下の場合には影響が無視できるため含有してもよい。また、ベイニティックフェライト中に、硬質第2相として混在する島状マルテンサイトは靭性の低下を招くため、極力低減することが好ましく、面積分率で5%以下とすることが望ましい。
転炉-取鍋精錬-連続鋳造法で、表1に示す種々の成分組成に調製した鋼スラブを,表2に示す種々の熱間圧延条件により板厚55mmの鋼板とし、一部の鋼板には、熱処理を施した。
各鋼板の板厚1/4位置から,JIS4号引張試験片を採取し,JIS Z 2241(1998年)の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性を調査した。
また,同じく各鋼板の板厚1/4位置から,JIS Z 2202(1998年)の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242(1998年)の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、0℃における吸収エネルギー(vE)を求め、母材靭性を評価した。
また,各鋼板から採取した継手用試験板に,V開先を施し,2電極サブマージアーク溶接(溶接入熱量:450kJ/cm)により,溶接継手を作製し、シャルピー衝撃試験と硬さ試験を行った。
シャルピー衝撃試験は切欠き位置を板厚方向1/4tのボンド部とするJIS4号衝撃試験片を採取し,試験温度:0℃で実施し、継手ボンド部の0℃における吸収エネルギー(vE)を求めた。
硬さ試験は板厚1/4t位置において、母材から溶接継手部にかけて荷重10kgf、1mmピッチでビッカース硬度試験を実施し、硬度分布を調査した。
得られた結果を、供試鋼板の製造条件と共に表3に示す。鋼No.1〜8−1は発明例でいずれも,引張強さ780MPa以上、且つ0℃での吸収エネルギー vEoが70J超えの高強度、且つ高靭性の母材特性を有する。
また、溶接入熱:450kJ/cmの1層大入熱溶接施工を施した場合であっても,ボンド部でのvEが70J以上と優れた溶接熱影響部靭性が得られるとともに、溶接継手部の最軟化部硬度がHV250以上と高い溶接継手強度が得られることが認められる。
一方、成分組成が本発明の範囲を外れる比較例(鋼No.9〜18)は、母材強度、母材靭性,大入熱溶接部靭性、大入熱溶接継手硬度の、いずれか、あるいは複数の特性が目標値を満足しない。また、鋼No.8−2は、焼戻し処理の加熱温度が740℃と高く、母材強度(引張強さTS)が780MPa未満となった比較例である。
Figure 0005407478
Figure 0005407478
Figure 0005407478

Claims (4)

  1. 鋼組成が、質量%で、
    C:0.03〜0.09%
    Si:0.05〜0.40%
    Mn:1.0〜3.0%
    Cr:0.3〜3.0%
    P:0.02%以下
    S:0.0050%以下
    Al:0.01〜0.05%
    Ti:0.005〜0.03%
    N:0.0025〜0.0070%
    Ca:0.0005〜0.005%
    を含有し、かつ下記(1)式の値が30〜42(%)で、残部がFeおよび不可避的不純物からなる,引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板。
    27C+9Mn+4(Cu+Ni)+8(Cr+Mo) (1)
    但し、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%)で含有しない元素は0とする。
  2. 請求項1に記載の鋼組成からなる鋳片または鋼片を,1050〜1250℃に再加熱後、圧延終了温度が750℃以上となる熱間圧延を行うことを特徴とする、引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板の製造方法。
  3. 熱間圧延後,Ac変態点以上の温度域に再加熱し,保持後、室温まで冷却することを特徴とする、請求項に記載の引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板の製造方法。
  4. 熱間圧延後あるいは前記Ac変態点以上の温度域への再加熱、保持、冷却後に、加熱温度が400〜650℃の焼戻し処理を施すことを特徴とする、請求項または請求項に記載の引張強さ(TS)が780MPa以上の1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板の製造方法。
JP2009076200A 2009-03-26 2009-03-26 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法 Active JP5407478B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009076200A JP5407478B2 (ja) 2009-03-26 2009-03-26 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009076200A JP5407478B2 (ja) 2009-03-26 2009-03-26 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010229453A JP2010229453A (ja) 2010-10-14
JP5407478B2 true JP5407478B2 (ja) 2014-02-05

Family

ID=43045537

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009076200A Active JP5407478B2 (ja) 2009-03-26 2009-03-26 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5407478B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5903907B2 (ja) * 2011-02-02 2016-04-13 Jfeスチール株式会社 引張強さ(TS)が780MPa以上の大入熱溶接熱影響部の靭性と小入熱溶接熱影響部の耐硬化特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5699798B2 (ja) * 2011-05-18 2015-04-15 Jfeスチール株式会社 大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた低降伏比高張力鋼材およびその製造方法
JP5720447B2 (ja) * 2011-07-11 2015-05-20 Jfeスチール株式会社 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼板
JP5924058B2 (ja) * 2011-10-03 2016-05-25 Jfeスチール株式会社 溶接熱影響部の低温靭性に優れた高張力鋼板およびその製造方法
CN103388111A (zh) * 2013-07-26 2013-11-13 宝鸡石油钢管有限责任公司 一种低温韧性优良的油气输送用直缝埋弧焊管及其制造方法
JP6226163B2 (ja) * 2014-10-28 2017-11-08 Jfeスチール株式会社 溶接熱影響部の低温靭性に優れる高張力鋼板とその製造方法
JP6299676B2 (ja) * 2015-06-09 2018-03-28 Jfeスチール株式会社 高張力鋼板およびその製造方法
TWI756226B (zh) * 2016-06-30 2022-03-01 瑞典商伍德赫爾恩股份有限公司 用於工具架之鋼
CN112695254A (zh) * 2020-10-30 2021-04-23 南京钢铁股份有限公司 一种中锰低镍高性能海洋环境用钢及制备方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4655670B2 (ja) * 2005-02-24 2011-03-23 Jfeスチール株式会社 低降伏比且つ溶接部靭性に優れた高強度溶接鋼管の製造方法
JP4768447B2 (ja) * 2006-01-11 2011-09-07 株式会社神戸製鋼所 溶接熱影響部の靭性に優れた耐候性鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010229453A (ja) 2010-10-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5277648B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高張力鋼板並びにその製造方法
JP5573265B2 (ja) 引張強度590MPa以上の延靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5407478B2 (ja) 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5130796B2 (ja) 大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法
JP4897125B2 (ja) 高強度鋼板とその製造方法
JP5476763B2 (ja) 延性に優れた高張力鋼板及びその製造方法
JP4730088B2 (ja) 低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5354164B2 (ja) 低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5439973B2 (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、pwht後の落重特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2011174154A (ja) レーザ溶接用またはレーザ・アークハイブリッド溶接用の引張強さが1100MPa以上の高張力鋼板の製造方法
JP5034290B2 (ja) 低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2012122111A (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、PWHT後の落重特性に優れたTMCP−Temper型高強度厚鋼板の製造方法
JP4120531B2 (ja) 超大入熱溶接熱影響部靱性に優れる建築構造用高強度厚鋼板の製造方法
JP2019199649A (ja) 非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法
JP4998708B2 (ja) 材質異方性が小さく、耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材およびその製造方法
JP4096839B2 (ja) 超大入熱溶接熱影響部靱性に優れた低降伏比高張力厚鋼板の製造方法
JP2005256037A (ja) 高強度高靭性厚鋼板の製造方法
JP5200600B2 (ja) 高強度低降伏比鋼材の製造方法
JP4770415B2 (ja) 溶接性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法
JP5028761B2 (ja) 高強度溶接鋼管の製造方法
JP5515954B2 (ja) 耐溶接割れ性と溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板
JP4924047B2 (ja) 表面残留応力の絶対値が150N/mm2以下の耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法
JP4923968B2 (ja) 耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材
JP5008879B2 (ja) 強度および低温靭性の優れた高張力鋼板および高張力鋼板の製造方法
JP4497009B2 (ja) 疲労き裂伝播特性と靱性に優れた厚鋼板及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120223

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20120321

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120327

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130815

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130827

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130917

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131008

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131021

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5407478

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250