JP2016047956A - 低降伏比高強度スパイラル鋼管杭およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】板厚5mm以上26mm以上の熱延鋼板を素材とするスパイラル鋼管からなる高強度スパイラル鋼管杭である。質量%で、C:0.10%超0.20%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.10%以下、N:0.01%以下、さらに、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Ti:0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイニティックフェライト相を主相とし、第二相としてマルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上を合計で、体積率で10%以上50%未満含む組織と、を有し、管軸方向の降伏強さYS:450MPa以上、引張強さTS:570MPa以上、降伏比YR:90%以下の低降伏比高強度で、かつシャルピー衝撃試験の試験温度:0℃の吸収エネルギーvE0:27J以上の高靭性を有する高強度スパイラル鋼管杭で、耐震性に優れる。
【選択図】なし
Description
(1)板厚5mm以上26mm以下の熱延鋼板を素材としたスパイラル鋼管からなる鋼管杭であって、該鋼管杭が、質量%で、C:0.10%超0.20%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.10%以下、N:0.01%以下を含み、さらに、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Ti:0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイニティックフェライト相を主相とし、第二相としてマルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上を合計で、体積率で10%以上50%未満含む組織と、を有し、管軸方向の強度が、降伏強さYS:450MPa以上、引張強さTS:570MPa以上、降伏比YR:90%以下で、かつ管軸方向と直交する方向で、シャルピー衝撃試験の試験温度:0℃における吸収エネルギーvE0:27J以上を有することを特徴とする低降伏比高強度スパイラル鋼管杭。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする低降伏比高強度スパイラル鋼管杭。
(3)熱延鋼板を素材としたスパイラル鋼管からなるスパイラル鋼管杭の製造方法であって、前記スパイラル鋼管が、板厚5 mm以上26mm以下の熱延鋼板をスパイラル状に加工しながら、前記熱延鋼板の端部同士を溶接してスパイラル鋼管としたものであり、かつ前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.10%超0.20%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.10%以下、N:0.01%以下を含み、さらに、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Ti:0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、加熱温度:1100℃以上に加熱し、粗圧延と、仕上圧延終了温度:800℃以上とする仕上圧延とを施す熱延工程と、前記熱延工程終了後、さらに平均冷却速度:15〜30℃/sで、冷却停止温度:450〜600℃まで加速冷却し、コイル状に巻き取る冷却工程とを、順次施して製造された鋼板であることを特徴とする低降伏比高強度スパイラル鋼管の製造方法。
(4)(3)において、前記鋼素材の前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする低降伏比高強度スパイラル鋼管杭の製造方法。
Cは、炭化物として析出し析出強化を介して、さらにマルテンサイト変態および/またはベイナイト変態に伴う変態強化を介して、強度増加に寄与する元素である。このような効果を得て所望の高強度を確保するためには、0.10%超の含有を必要とする。なお、0.10%超えるCの含有は、高価な合金元素の多量含有を必要とすることなく、変態強化により、降伏比の増加を伴うことなく強度増加に有効に寄与する。なお、熱間圧延後の冷却条件を適正化することにより、0.20%までのC増加に伴う悪影響を抑制することができる。一方、0.20%を超える含有は、溶接性を低下させ、溶接熱影響部特性を低下させる。また、0.20%を超えて添加すると必要以上に炭化物が析出し、降伏比が高くなる。このため、Cは0.10%超0.20%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.12〜0.18%である。
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが望ましい。一方、0.5%を超える含有は、溶接時に溶接部で素材起因のSi酸化物が増加し、溶接部特性を低下させる。このため、Siは0.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.35%以下である。
Mnは、焼入れ性向上を介して強度増加、靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.2%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、焼入れ性が著しく高まり、鋼管杭として所望の靭性を確保できにくくなる。このためMnは0.2〜2.0%に限定した。なお、好ましくは1.0〜1.7%である。
Pは、鋼中では不可避的不純物として存在し、溶接性に悪影響を及ぼす元素であり、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。しかし、過度の低減は、精錬コストの高騰を招く。鋼管杭として必要な溶接性の観点からは、0.05%までは許容できる。このため、Pは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.03%以下である。
Sは、鋼中では硫化物系介在物として存在し、とくに粗大なMnSとなりやすい。粗大なMnSは、脆性破壊の起点として作用し、靭性を低下させる要因となる。このことから、本発明ではSは、できるだけ低減することが望ましい。しかし、過度の低減は精錬コストの高騰を招く。鋼管杭として必要な靭性という観点からは、0.05%までは許容できる。このため、Sは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.01%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.10%を超える含有は、鋼の清浄度が低下し、靭性を低下させる。このため、Alは0.10%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.05%である。
Nは、Alと結合しAlNを形成し、結晶粒の微細化を介して靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましいが、0.01%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、Nは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
Nb、V、Tiはいずれも、炭化物を形成し析出強化により強度増加に寄与するとともに、窒化物を形成し結晶粒微細化を介して組織の微細化により靭性向上に寄与する元素であり、選択して1種または2種以上を含有する。
Caは、MnS等の硫化物の形態を、伸長した形態から球状の形態に制御する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るためには、0.0005%以上含有こることが望ましい。一方、0.005%を超える含有は、Ca酸化物、Ca硫化物が過剰になり、靭性劣化に繋がる。このため、含有する場合には、Caは0.005%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0005〜0.002%である。
本発明スパイラル鋼管杭における高強度、高靭性を確保するためには、素材となる熱延鋼板の組織をベイニティックフェライトを主相とする組織とする必要がある。なお、ここでいう「主相」とは、組織全体に対する体積率で50%超えである場合をいう。ベイニティックフェライトの組織分率が、組織全体に対する体積率で90%以上では、マルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上を合計で、体積率で10%以上を確保できなくなる。このため、ベイニティックフェライトの組織分率が、組織全体に対する体積率で50%超え90%以下とした。なお、「ベイニティックフェライト」には、ベイニティックフェライト(BF)以外に、アシキュラーフェライト、ウッドマンステッテン状フェライト、針状フェライト、フェライトも含む。
本発明スパイラル鋼管杭における所望の高強度を降伏比の増加を伴うことなく、確保するために、マルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上を合計で、体積率で10%以上含有する必要がある。マルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上が合計で、10%未満では、所望の高強度(好ましくはTS:600MPa以上)を確保したうえで、スパイラル鋼管杭の軸方向の降伏比を90%以下、好ましくは85%以下に抑えることができない。なお、マルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上が合計で50%以上になると、強度が増加しすぎて、靭性が低下するうえ、スパイラル鋼管杭の軸方向の降伏比を90%以下に抑えることができない。このようなことから、マルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上は、合計で、体積率で10%以上50%未満に限定した。なお、好ましくは10〜40%である。マルテンサイトには、焼戻マルテンサイト、島状マルテンサイトをも含むものとする。
本発明で使用する鋼素材には、炭化物形成元素として、Nb、V、Tiのうちから選ばれた1種以上を含有する。これら合金元素の炭化物を利用して十分な析出強化を得るためには、鋼素材中に生成したこれら粗大な炭化物を一旦溶解させる必要がある。このため、加熱温度は1100℃以上に限定する。加熱温度が1100℃未満では炭化物が未固溶となり、所望の高強度を確保できなくなる。一方、加熱温度が過剰に高くなると、組織が粗大化する等の問題が献念されるため、1300℃以下とすることが好ましい。
粗圧延は、とくにその条件を限定する必要はなく、常用の粗圧延条件がいずれも適用できる。一方、仕上圧延は、仕上圧延終了温度:800℃以上とする圧延とする。仕上圧延終了温度が800℃未満では、圧延負荷の増大を招くうえ、圧延中にフェライト相が生成し、所望の高強度を確保できない場合がある。このため、仕上圧延終了温度は800℃以上に限定する。なお、好ましくは800〜890℃である。
平均冷却速度が、15℃/s未満では、ポリゴナルフェライト相の生成が著しくなり、所望のベイニティックフェライト相を主相とする組織を確保することが難しくなる。一方、30℃/sを超えると、マルテンサイト相あるいはベイナイト相の生成が多くなりすぎて、所望の組織を確保できなくなる。このようなことから、冷却工程における平均冷却速度は15〜30℃/sの範囲に限定する。なお、より好ましくは15〜25℃/sである。ここでいう平均冷却速度は、仕上圧延終了温度から冷却停止温度までの温度域における平均冷却速度である。また、これら温度は、鋼板の板厚1/2位置での値である。
冷却停止温度が、600℃を超えて高温となると、所望のベイニティックフェライト相を主相とする組織を確保することが難しくなる。一方、450℃未満では、マルテンサイト相あるいはベイナイト相の生成が多くなりすぎて、所望の組織を確保できなくなる。このようなことから、冷却停止温度は450〜600℃の範囲の温度に限定する。なお、好ましくは500〜590℃である。ここでいう冷却停止温度は表面での温度とする。
(1)組織観察
得られた鋼管杭から、組織観察用試験片を採取し、管軸方向(L方向)断面が観察面となるように、研磨し、腐食(ナイタール液腐食)し、光学顕微鏡(倍率:400倍)および走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)により、組織を観察し、組織の同定およびその分率(体積率)を測定した。
(2)引張試験
得られた鋼管杭から、引張方向が管軸方向となるように、引張試験片(JIS 12号C引張試験片)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、降伏比YR(=YS/TS×100%))を求めた。
(3)衝撃試験
得られた鋼管杭から、試験片長手方向が管軸方向と直交する方向(C方向)となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して衝撃試験を試験温度:0℃で行い、吸収エネルギーvE0を求めた。なお、試験は各3本ずつ行い、それらの平均値をその鋼管杭の吸収エネルギーvE0とした。
Claims (4)
- 板厚5mm以上26mm以下の熱延鋼板を素材としたスパイラル鋼管からなる鋼管杭であって、
該鋼管杭が、質量%で、
C :0.10%超0.20%以下、 Si:0.5%以下、
Mn:0.2〜2.0%、 P :0.05%以下、
S :0.05%以下、 Al:0.10%以下、
N :0.01%以下
を含み、さらに、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Ti:0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
ベイニティックフェライト相を主相とし、第二相としてマルテンサイト相、ベイナイト相、パーライトのうちの1種または2種以上を合計で、体積率で10%以上50%未満含む組織と、を有し、
管軸方向の強度が、降伏強さYS:450MPa以上、引張強さTS:570MPa以上、降伏比YR:90%以下で、かつ管軸方向と直交する方向で、シャルピー衝撃試験の試験温度:0℃における吸収エネルギーvE0:27J以上を有することを特徴とする低降伏比高強度スパイラル鋼管杭。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の低降伏比高強度スパイラル鋼管杭。
- 熱延鋼板を素材としたスパイラル鋼管からなるスパイラル鋼管杭の製造方法であって、
前記スパイラル鋼管が、板厚5 mm以上26mm以下の熱延鋼板をスパイラル状に加工しながら、前記熱延鋼板の端部同士を溶接してスパイラル鋼管としたものであり、かつ
前記熱延鋼板が、質量%で、
C :0.10%超0.20%以下、 Si:0.5%以下、
Mn:0.2〜2.0%、 P :0.05%以下、
S :0.05%以下、 Al:0.10%以下、
N :0.01%以下
を含み、さらに、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Ti:0.10%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、加熱温度:1100℃以上に加熱し、粗圧延と、仕上圧延終了温度:800℃以上とする仕上圧延とを施す熱延工程と、前記熱延工程終了後、さらに平均冷却速度:15〜30℃/sで、冷却停止温度:450〜600℃まで加速冷却し、コイル状に巻き取る冷却工程とを、順次施して製造された鋼板であることを特徴とする低降伏比高強度スパイラル鋼管の製造方法。 - 前記鋼素材の前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項3に記載の低降伏比高強度スパイラル鋼管杭の製造方法。
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