JP5786720B2 - 引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5786720B2
JP5786720B2 JP2012000583A JP2012000583A JP5786720B2 JP 5786720 B2 JP5786720 B2 JP 5786720B2 JP 2012000583 A JP2012000583 A JP 2012000583A JP 2012000583 A JP2012000583 A JP 2012000583A JP 5786720 B2 JP5786720 B2 JP 5786720B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel plate
temperature
less
mpa
tensile
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012000583A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013139610A (ja
Inventor
章夫 大森
章夫 大森
石川 信行
信行 石川
篤美 松井
篤美 松井
伸行 末石
伸行 末石
操 石川
操 石川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2012000583A priority Critical patent/JP5786720B2/ja
Publication of JP2013139610A publication Critical patent/JP2013139610A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5786720B2 publication Critical patent/JP5786720B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、海洋構造物用や建築構造部材用として用いられる円形鋼管の素材として好適な、引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板及びその製造方法に係り、とくに温間プレスベンドあるいは温間ロールベンドによって成形される厚肉大径鋼管の素材として好適な、温間加工後の材質劣化が少ない、温間加工性に優れるものに関する。
近年、建築構造物の高層化、柱間隔の長スパン化に伴い、使用される鋼材の高強度化および厚肉化が強く要求されるようになっている。例えば、主に、建築構造物の柱材として用いられる円形鋼管では、従来、外径:600〜800mmで肉厚:20〜40mmの大きさの鋼管が中心であったが、最近では、外径:800mm以上で肉厚:40mm超の大きさの大径で厚肉の鋼管が要求されるようになっている。
厚肉大径の鋼管は、通常、プレスベンドまたはロールベンドによる成形により製造されることが多い。プレスベンドまたはロールベンドは、成形の簡便さから、通常、冷間で行う。しかし、使用する素材(鋼材)の厚肉化および高強度化に伴い、冷間成形では、使用する成形装置への負荷荷重が増大し、成形そのものが不可能になるという問題がある。
また、冷間成形は、成形に際して生じる鋼材の加工硬化により、塑性変形能の低下や靱性低下など、成形品の著しい材質劣化を伴うという問題もある。そのため、成形時の素材(鋼材)の変形抵抗を減少したり、加工硬化を少なくするために、素材(鋼材)を、熱間域あるいは温間域で成形する場合がある。
例えば、特許文献1には、厚肉鋼管丸柱の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術は、重量%で、C:0.06〜0.17%、Si:0.06〜0.5%、Mn:0.5〜1.6%、Mo:0.1〜0.25%、Ti:0.01〜0.02%、B:0.0005〜0.002%、Al:0.07%以下、N:0.004%以下を含有し、さらにNb:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.1%から選ばれた1種または2種を含有する鋼を圧延し、その鋼板を900〜1000℃に加熱し、Ar変態点以上の温度域で曲げ加工を終了する厚肉鋼管丸柱の製造方法である。特許文献1に記載された技術によれば、大きな製造設備を必要とすることなく、高強度で低降伏比を有し、均一な材質を有する厚肉鋼管丸柱を製造できることが記載されている。
しかしながら、素材(鋼材)を、熱間域あるいは温間域での鋼管とする、プレスベンドによる造管の場合には、図1に示すように、素材である鋼板1の板端部から板中央部に向けて、プレス金型2による成形を進めて鋼管とするため、鋼板温度が徐々に低下することが避けられない。加工開始から完了までに長時間を要する厚肉大径鋼管の場合には、造管加工中の温度低下量は、例えば550℃で加工を開始して完了温度が約400℃になるなど、最大150℃程度にまで達する。
そのため、熱間または温間成形後の製品(鋼管)材質を、一定範囲内に管理することは極めて困難であった。プレスベンドによる大量生産において安定して製品特性を確保するためには、加工硬化による延靱性の低下、降伏比の増加などを解決することが必要で、ロールベンドによる造管の場合にも、板端部の温度低下や鋼管毎の成形温度のばらつきは避けられず、得られる製品(鋼管)の材質ばらつきが大きな問題となることがあった
特許文献2は、低降伏比の厚肉建築用鋼管柱の製造方法に関し、重量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%、sol.Al:0.005〜0.10%、Mo:0.05〜0.25%を含有する鋼板を、Ac以上Ac以下の二相領域の温度範囲に加熱し、加工をAr以上の温度域で板端部から開始し、変態終了温度以上の温度領域で板中央部にて終了し、空冷する鋼管の製造方法により、大きな製造設備を必要とすることなく、また靭性および溶接性を損なうことなく、板厚各部において、高強度で低降伏比を有する建築用厚肉鋼管丸柱を製造可能であることが記載されている。
特許文献3は、温間加工後の材質特性に優れた高張力鋼の製造方法に関し、重量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.6%以下、Mn:0.5〜2.0%、sol.Al:0.005〜0.08%、更にNb、V、Ti、Cu、Cr、Ni、Mo、Bのうちから選ばれた1種または2種以上を含有する鋼に、900℃以下の累積圧下率を少なくとも30%以上とした熱間圧延を施し、或いは熱間圧延後に加速冷却を施した後、さらに、750〜400℃、好ましくはAc〜400℃に加熱し、直ちにまたは放冷し、加工温度を750〜250℃、望ましくはAc〜400℃として熱間加工を行う、高張力鋼の製造方法が記載されている。
特開平9−279244号公報 特開平8−283850号公報 特開昭62−54018号公報
温間または熱間加工により製造される厚肉大径の鋼管の場合、従来は、引張強さ:490MPa級〜570MPa級以下の比較的低強度の円形鋼管が要求されていたが、東京スカイツリーなど意匠性が重視される建築構造物では、溶接性に優れた、引張強さ:780MPa以上の高張力鋼管の需要が高まっている。
特許文献1〜3記載の技術による鋼管はいずれも引張強さ:780MPa未満で、更に溶接性に関する記載はない。高強度と優れた溶接性とを両立させるため、素材となる鋼板の製造時にTMCP技術が適用されるが、特許文献1では鋼板をγ域まで再加熱して曲げ加工し、鋼管丸柱とするので鋼板のTMCP技術による効果が失われるため、曲げ加工後、空冷ままで高強度が確保できる高成分系とするので、鋼管での靭性や溶接性が劣化する。
そこで、本発明は、温間加工後の材質低下の小さい、板厚40mm以上で引張強さ:780MPa以上の高張力鋼管用の高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とし、具体的には、400〜550℃の温間加工(温間成形)によって、降伏強さ:630MPa以上900MPa以下、引張強さ:780MPa以上、降伏比95%以下で、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrs:−40℃以下、かつ溶接性に優れた円形鋼管を工業的に容易にかつ安定して大量生産することができる高張力厚鋼板およびその製造方法を目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、温間加工(温間成形)後の材質低下に及ぼす各種要因の影響について、鋭意研究し、以下の知見を得た。なお、「材質低下」とは、降伏強さの低下と過度の上昇、引張強さの低下、降伏比の上昇、シャルピー試験の破面遷移温度の上昇を指す。
1.鋼板の組成を、Mo、V、Nbを含有させた組成とし、さらに、鋼板の組織を、焼戻しマルテンサイト相を主体とし、さらに、Mo、V、Nb等の析出物を最適な状態に制御したミクロ組織とすることにより、温間加工(温間成形)後の材質低下を抑制することができる。
2.Mo、V、Nbの含有は、析出強化による強度上昇が期待でき、これにより、温間加工(温間成形)温度に加熱されることに伴う強度低下を補償できる。過度の析出強化は脆化を伴うが、(1)式を満足するMo、V、Nbの含有量とすると、析出強化に伴う脆化を抑えることができる。
0.45≦(Mo+4.9V+5.8Nb)≦0.85 ‥‥(1)
(ここで、Mo、V、Nb:各元素の含有量(質量%))
3.Mo析出物(炭化物)は、温間加工(温間成形)後の強度確保に大きく寄与する。しかし、Mo析出物(炭化物)には、Vが固溶して、Mo析出物(炭化物)の安定性を大きく変動させるため、温間加工後に、安定して所望の高強度を確保することが難しくなる場合がある。温間加工後に、強度の過度の上昇や低下を抑え、安定して所望の強度と所望の靭性を確保するためには、(1)式に加えて、さらに、Mo、Vの含有量を(2)式を満足するように調整することが必要である。
4.0≦Mo/V≦16.0 ‥‥(2)
(ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
4.所望の強度と溶接性を確保するためには、溶接割れ感受性組成(Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B)を(3)式を満足するように調整することが必要である。
0.20≦C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B≦0.27 ・・・(3)
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B:各元素の含有量(質量%)、含有しないものは0とする。)
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、
C:0.06〜0.12%、
Si:0.05〜0.40%、
Mn:0.80〜1.20%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Al:0.005〜0.060%、
N:0.0040%以下、
Mo:0.20〜0.50%、
V:0.020〜0.080%を含有し、
さらにNb:0.005〜0.030%、Cu:0.10〜0.50%、Ni:0.1〜1.0%、Cr:0.10〜0.80%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を下記(1)式、下記(2)及び下記(3)式を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる組成を有し、ミクロ組織が面積率で80%以上の焼戻しマルテンサイト相からなり、該焼戻しマルテンサイト相の旧オーステナイト粒の公称粒径が12μm以上30μm以下であり、温間加工後の特性に優れることを特徴とする引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板。

0.45≦(Mo+4.9V+5.8Nb)≦0.85 ‥‥(1)
4.0≦Mo/V≦16.0 ‥‥(2)
0.20≦C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+
Mo/15+V/10+5B≦0.27 ・・・(3)
ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Nb、B:各元素の含有量(質量%)、但し、含有しないものは0とする。
2.前記組成に、さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.020%を含有することを特徴とする1に記載の引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板。
3.前記組成に、さらに、質量%で、
Ca:0.0005〜0.0050%、
REM:0.0010〜0.0050%の1種または2種を含有することを特徴とする1または2記載の引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板。
4.鋼素材を、加熱したのち、熱間圧延を行い厚鋼板とする熱間圧延工程と、該熱間圧延工程終了後の厚鋼板に、加速冷却を行う加速冷却工程と、該加速冷却工程終了後に、再加熱焼戻しを行う焼戻し工程を施す、引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法において、前記鋼素材が1ないし3の何れか一つに記載の組成を有し、前記熱間圧延工程が、加熱温度:1050〜1200℃に加熱した後、950℃以下での累積圧下量が30〜60%で、圧延終了温度:900℃以下Ar3変態点以上とする熱間圧延で、前記加速冷却工程が、熱間圧延終了後、Ar3変態点以上の温度から400℃以下の温度まで、700〜500℃の平均冷却速度で2℃/s以上の加速冷却で、前記焼戻し工程が、焼戻し温度:450〜650℃に再加熱することを特徴とする引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法。
5.鋼素材を、加熱後、熱間圧延し、400℃以下の温度まで冷却した後、再加熱焼入工程および該再加熱焼入工程後に再加熱焼戻し工程を施す、引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法において、
前記鋼素材が1ないし3の何れか一つに記載の組成を有し、前記再加熱焼入工程が、880〜980℃に再加熱した後、200℃以下の温度まで、700〜500℃の平均冷却速度で2℃/s以上の冷却を行う工程であり、前記再加熱焼戻し工程が、焼戻し温度:450〜650℃に再加熱する工程であることを特徴とする引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、温間成形後の材質低下を抑制できる、板厚40mm以上、引張強さが780MPa以上の厚鋼板を安定して製造でき、得られた厚鋼板を温間成形することにより、降伏強さ:630MPa以上900MPa以下、引張強さ:780MPa以上、降伏比95%以下で、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrs:−40℃以下と靭性に優れ、かつ溶接性に優れた円形鋼管を工業的に容易にしかも材質ばらつきが少なく、安定して大量生産することができ、鋼構造物の大型化、安全性向上、施工効率の向上等産業上格段の効果を奏する。
プレスベンド(プレス曲げ)による円形鋼管の製造方法の一例を模式的に示す説明図。
本発明では成分組成、ミクロ組織を規定する。説明において%は質量%とする。
[成分組成]
C:0.06〜0.12%
Cは、固溶して鋼の強度を増加させるとともに、Mo、V、Nb等の炭化物形成元素と結合して炭化物を形成し、析出強化により鋼の強度増加に寄与する元素である。構造用鋼材として所望の高強度を確保するために、本発明では、Cは0.06%以上の含有を必要とする。一方、0.12%を超える含有は、母材靭性および溶接熱影響部(HAZ)靭性を著しく低下させるとともに、溶接割れを誘起し、耐溶接割れ性を低下させるなどの悪影響を及ぼす。このため、Cは0.06〜0.12%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.06〜0.11%である。
Si:0.05〜0.40%
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、固溶強化によって強度を増加する効果も有する。これらの効果を確保するためには、少なくとも0.05%の含有を必要とする。一方、0.40%を超えて含有すると、母材靭性およびHAZ靱性を低下させる。このため、Siは0.05〜0.40%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.05〜0.35%である。
Mn:0.80〜1.20%
Mnは、固溶して、あるいは焼入れ性の増加を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する安価な元素である。本発明では、他のより高価な元素の含有を最小限にして、所望の強度(引張強さ:780MPa以上)を確保するために、Mnは0.80%以上の含有を必要とする。一方、1.20%を超えて含有すると、凝固時の中央偏析部への濃化が著しくなり、スラブ欠陥を増加させるなどの問題がある。また、1.20%を超えるMnの多量含有は、さらに、母材靭性およびHAZ靱性の著しい低下を招く。このため、Mnは0.80〜1.20%の範囲に限定した。
P:0.015%以下
Pは、旧γ粒界等に偏析し、鋼の靱性を低下させる元素であり、とくにマルテンサイト相やベイナイト相を有する鋼材の靱性への悪影響が大きい。このため、Pは極力低減することが望ましいが、0.015%以下まで低減すれば、上記した悪影響は許容できる範囲となる。このため、Pは0.015%以下に限定した。
S:0.003%以下
Sは、Mnと結合してMnSを形成する。S含有量が多くなると熱間圧延で伸長した粗大なMnSが増加する。粗大なMnSが増加すると、特に、板厚方向(Z方向)のシャルピー試験吸収エネルギーが低下し、板厚方向の靭性が低下する。このため、Sは極力低減することが望ましいが、0.003%以下まで低減すれば、このような悪影響は許容できる程度までになる。このため、Sは0.003%以下に限定した。
Al:0.005〜0.060%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいて、最も汎用的に使われる元素である。また、Alは、鋼中のNをAlNとして固定し、Nによる靭性低下や割れ発生を防止する作用も有する。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.060%を超える含有は、母材の靱性を低下させるとともに、溶接時に溶接金属に混入して靱性を低下させる。このため、Alは0.005〜0.060%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.010〜0.045%である。
N:0.0040%以下
Nは、鋼中に固溶して、母材靭性およびHAZ靭性を低下させる元素であり、本発明では、極力低減することが望ましい。0.0040%を超えて含有すると、上記した靭性の低下が著しくなる。このため、Nは0.0040%以下に限定した。
Mo:0.20〜0.50%
Moは、鋼中でCと結合して形成するMo炭化物の析出強化により、温間成形時の成形温度上昇による軟化を抑制する作用を有し、さらに、焼入れ性を向上させることによってフェライト生成を抑制し、マルテンサイト相を主体とする組織を形成するために必須の元素である。これらの効果を得るためには、0.20%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、HAZ靭性や耐溶接割れ性を低下させる。このため、Moは0.20〜0.50%の範囲に限定した。
V:0.020〜0.080%
Vは、Nbと同様に、炭化物を形成し析出強化によって温間成形時の成形温度上昇による軟化を抑制する作用を有する元素であり、本発明において重要な元素のひとつである。また、Vは、Mo炭化物中に固溶して、Mo炭化物の安定性を高め、温間成形中のMo炭化物の粗大化を抑制する作用を有する。このような効果を得るためには、0.020%以上の含有を必要とする。一方、0.080%を超える含有は、母材靭性およびHAZ靱性の著しい低下を招く。このため、Vは0.020〜0.080%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.040〜0.060%である。
Nb:0.005〜0.030%、Cu:0.10〜0.50%、Ni:0.1〜1.0%、Cr:0.10〜0.80%、B:0.0003〜0.0030%、の1種または2種。所望の強度と靭性を得るため、Nb、Cu、Ni、Cr、Bの1種または2種以上を含有する。
Nb:0.005〜0.030%
Nbは、微細な炭化物を形成し析出強化によって温間成形時の成形温度上昇による軟化を抑制する元素であり、本発明において重要な元素のひとつである。また、Nbは、オーステナイトの再結晶を抑制する作用を有し、制御圧延による、微細結晶粒の形成を助長する作用を有する。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.030%を超えると、HAZ靱性の著しい低下を招く。このため、Nbを添加する場合は0.005〜0.030%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.008〜0.025%である。
Cu:0.10〜0.50%
Cuは、固溶強化や焼入性の向上を介して、鋼の強度を増加させる元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上含有することが必要となるが、0.50%を超える含有は、材料(合金)コストの増加や熱間脆性による表面性状の劣化を招く。このため、含有する場合には、Cuは0.10〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
Ni:0.1〜1.0%
Niは、靱性をほとんど劣化させることなく、鋼の強度を増加させる元素である。しかも、NiはHAZ靱性への悪影響も小さい。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える多量の含有は、Niが高価であるため、材料(合金)コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Niは0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。
Cr:0.10〜0.80%
Crは、焼入性の向上を介して、鋼の強度を増加させる元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上含有することが必要となるが、0.80%を超える多量の含有は、材料(合金)コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Crは0.10〜0.80%の範囲に限定することが好ましい。
B:0.0003〜0.0030%
Bは、微量の含有で焼入れ性を向上させ、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。また、Bは、TiNが固溶するような高温に晒されるHAZの溶接ボンド部近傍で、BNを形成して、フェライト変態核として作用するとともに、固溶Nを低減して、HAZ靱性を向上させる。このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。
一方、0.0030%を超える含有は、母材靭性およびHAZ靱性の低下を招くとともに、母材の降伏強さを著しく上昇させて、所望の低降伏比を確保することが困難になる。このため、含有する場合には、Bは0.0003〜0.0030%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.0007〜0.0020%である。
0.45≦(Mo+4.9V+5.8Nb)≦0.85・・・(1)
(ここで、Mo、V、Nb:各元素の含有量(質量%))
本発明では、温間成形温度に加熱されることに伴う強度低下を補償し、析出強化に伴う脆化を抑えるため、Mo、V、Nbの含有量を、各元素の含有範囲内で(1)式を満足するように調整する。
Mo、V、Nbは、いずれも、析出物(炭化物)を形成し、析出強化を介して、温間成形後の鋼材(鋼管)強度と靭性に大きな影響を及ぼす。析出物(炭化物)を形成することにより、析出強化による強度の上昇が期待でき、温間成形温度に加熱されることに伴う強度低下を補償できるが、析出強化による強度増加が多大となると、鋼材が脆化する。
Mo、V、Nbの析出強化能は、Nbが最も大きく、次にVが、そして、Moが最も小さい。各元素の析出強化能の合計である(Mo+4.9V+5.8Nb)が、0.45未満では析出物の量が十分でなく、析出強化が不足し、温間成形温度の上昇に伴う強度低下が大きくなりすぎる。
一方、(Mo+4.9V+5.8Nb)が0.85を超えると、析出物の量が過剰となり、析出強化が大きくなりすぎて脆化し、母材靭性の低下や降伏比の増加が著しくなる。そのため、(Mo+4.9V+5.8Nb)を0.45〜0.85の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.55〜0.77である。
4.0≦Mo/V≦16.0 ‥‥(2)
(ここで、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
さらに、本発明では、Mo、Vを(2)式を満足するように調整する。適量のVを、Mo炭化物中に固溶させることにより、Mo炭化物の安定性を高め、温間成形中のMo炭化物の粗大化を抑えことができ、温間成形温度に加熱されることに伴う強度低下を安定して補償できるとともに、多大の析出強化に伴う鋼材の脆化を抑制することができる。
Mo炭化物中のV濃度は、Mo含有量とV含有量の比、Mo/V、に依存する。Mo/Vが、16.0を超えると、Mo炭化物中のV濃度が少なすぎて、上記した効果が期待できない。一方、Mo/Vが、4.0未満では、Mo炭化物中のV濃度が過剰となり、過剰な析出強化に伴う脆化が大きくなる。このため、Mo/Vは4.0〜16.0の範囲に限定した。なお好ましくは、5.0〜12.0の範囲である。
0.20≦C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B≦0.27 ・・・(3)
(ここで各元素は含有量(質量%)とし、含有しないものは0とする。)
溶接割れ感受性組成(Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B)が0.20未満では、焼入性が不足してマルテンサイト主体の組織が得られず、強度が不足したり、靱性が低下したりする。
一方、0.27を超えると溶接性が低下して、50℃を超える温度の予熱が必須となり、溶接能率が著しく低下する。このため、0.20以上0.27以下の範囲に限定した。
以上が、本発明の基本成分組成で残部Fe及び不可避不純物である。更に特性を向上させる場合、選択元素として、Ti:0.005〜0.020%、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することができる。
Ti:0.005〜0.020%
Tiは、HAZの靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。Tiは、Nとの親和力が強く、凝固時にTiNとして析出する。微細に析出したTiNは、とくにHAZでのオーステナイト粒の粗大化を抑制するとともに、フェライト変態核として、HAZの高靱性化に寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上のTi含有を必要とする。一方、0.020%を超える含有は、TiN粒子の粗大化を招くとともに、TiN中にNbを固溶してNbの析出強化能を損ねる。このため、含有する場合には、Tiは0.005〜0.020%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.008〜0.015%である。
Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種
Ca、REMはいずれも、硫化物の形態制御を介して母材の靭性および延性の向上に寄与する元素であり、また、微細な硫化物粒子を鋼中に分散させた場合には、フェライト変態核として作用し、HAZ靱性の向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。これらの効果を発揮させるには、Caでは少なくとも0.0005%、REMでは少なくとも0.0010%含有することが必要であるが、いずれも0.0050%を超えて含有すると、介在物が生成して靱性が低下する場合がある。このため、含有する場合には、Caは0.0005〜0.0050%、REMは0.0010〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
[ミクロ組織]
本発明では、ミクロ組織を面積率で80%以上の、旧オーステナイト粒の公称粒径が12μm以上30μm以下の焼戻しマルテンサイト相とする。
780MPa以上の引張強さを確保するため、焼戻しマルテンサイト相が面積率で80%以上の組織とする。焼戻しマルテンサイト相は、ラスやブロックなどの微細な下部組織で構成されるため、優れた靭性が得られ、焼戻しによって、各種炭化物やセメンタイトの析出と成長がある程度進行しているので、温間成形温度での組織変化が小さい。
焼戻しマルテンサイト相が100%の単相(焼戻しマルテンサイト単相)としてもよい。単相でない場合には、主相以外の第二相としては、フェライト、パーライト、ベイナイト等が例示できる。第二相の含有量は、合計で面積率で20%以下とすることが、所定の靭性、延性、強度を確保するうえで必要である。
温間成形中には、旧オーステナイト粒界から再結晶粒が生成したり、旧オーステナイト粒界上の析出物が粗大化したりしやすい。このため、旧オーステナイト粒界が多く存在するほど、すなわち旧オーステナイト粒径が小さいほど材質変化が起きやすくなる。
一方、旧オーステナイト粒径が大きすぎると、靱性が低下する。このため、本発明では、旧オーステナイト粒界の公称粒径を12〜30μmの範囲に限定した。ミクロ組織の観察方法は実施例において説明する。
[製造条件]
本発明に係る厚鋼板の好ましい製造方法におけるスラブ加熱温度、熱間圧延条件、加速冷却条件、焼戻し温度は以下のようである。熱間圧延後、再加熱焼入れ、焼戻しを行っても良い。特に、断らない限り、温度および冷却速度は、板厚方向平均値とする。
スラブ加熱温度:1050〜1200℃
スラブ(鋼素材と言う場合がある)は、加熱温度:1050〜1200℃に再加熱されたのち、熱延工程を施される。 加熱温度が1050℃未満では、V、Nb等の析出物(炭化物)形成元素が十分に固溶されず、これらの元素の効果が十分に発揮されない場合があるうえ、変形抵抗が増大して圧延機の負荷が大きくなる。
一方、加熱温度が1200℃を超えると、加熱時にオーステナイト粒が粗大化し、圧延後のミクロ組織が粗大になるため、母材靭性が低下する。このようなことから、鋼素材の加熱温度は、1050〜1200℃の範囲とすることが好ましい。鋼素材の製造方法はとくに限定する必要はないが、上記した組成を有するスラブを、転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法する。
熱間圧延
熱間圧延後、加速冷却を行う場合、1050〜1200℃に加熱された鋼素材に、950℃以下での累積圧下量が30〜60%で、圧延終了温度:900℃以下Ar変態点以上とする熱間圧延を行うことが好ましい。
本発明では、ミクロ組織を適度に微細化するため、950℃以下で制御圧延を行う。950℃以下での累積圧下量が30%未満では制御圧延の効果が十分でなく、組織が粗大化して靱性が低下したり、焼入性が必要以上に増加して表層が硬化しすぎる場合がある。
一方、950℃以下での累積圧下量が60%を超えると、マルテンサイトパケット・ブロックが顕著に微細化され、温間加工による材質変化を助長する大角境界が過剰に存在するようになる。このため、950℃以下での累積圧下量は30〜60%の範囲に限定することが好ましい。
圧延終了温度が900℃を超えて高温になると、組織が粗大化して、靱性が低下したり、焼入性が必要以上に増加して表層が硬化しすぎる場合がある。一方、圧延終了温度がAr変態点未満では、圧延中あるいは圧延直後にフェライトが生成し、粗大化して、靱性が低下する場合がある。このため、圧延終了温度は、900℃以下Ar変態点以上に限定することが好ましい。
なお、Ar変態点は、次式で算出する値を用いるものとする。
Ar(℃)=900−332C+6Si−77Mn−20Cu−50Ni−18Cr−68Mo
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%)、含有しない元素は0とする。)
加速冷却
加速冷却は、熱間圧延終了後、Ar変態点以上の温度から400℃以下の温度まで、700〜500℃の平均の冷却速度(以下、平均冷却速度):2℃/s以上で冷却することが好ましい。加速冷却の冷却速度が、700〜500℃の平均冷却速度で2℃/s未満では、フェライトが多量に析出するため、マルテンサイトを主相(面積率で80%以上)としたミクロ組織を得ることが難しくなる。加速冷却の冷却速度の上限はとくに規定する必要はない。
加速冷却の冷却停止温度が、400℃を超えると、フェライト、パーライト、ベイナイトが生成し、マルテンサイトを主相とするミクロ組織を確保することが難しくなる。このため、加速冷却の冷却停止温度は400℃以下に限定することが好ましい。加速冷却の冷却停止温度の下限はとくに規定する必要はない。
焼き戻し
加速冷却後、さらに強度と靭性のバランスを調整し、各種炭化物やセメンタイトの析出と成長を促すため、450〜650℃に加熱する焼き戻しを施す。
焼戻温度が450℃未満では、温間加工前に各種炭化物やセメンタイトの析出と成長を促し、温間加工中の組織変化を抑えるという所望の焼戻し効果を確保できない。一方、650℃を超えると、析出物が粗大化し、強度が低下するため、上記したMo、V、Nbによる強度上昇効果を確保できなくなる。このため、焼戻温度は450〜650℃とする。
本発明では、熱間圧延後の加速冷却に代えて、熱間圧延し、400℃以下の温度まで冷却した後、880〜980℃に再加熱し、その後に焼き入れる、再加熱焼入を行ってもよい。この場合、圧延後の冷却条件は特に限定されず、空冷でも加速冷却でもよい。焼入温度が880℃未満では、オーステナイト粒径が微細で焼入性が不足し、ミクロ組織における旧オーステナイト粒径が12μm未満となる。一方、焼入温度が980℃を超えると、旧オーステナイト粒径が30μmを超えて、靱性が低下するため、焼入温度は880〜980℃とすることが好ましい。再加熱焼入れ後、加速冷却の場合と同様の条件で焼き戻しを行う。なお、再加熱焼入れを行う場合の熱間圧延では、所望の板厚にすれば良く、加速冷却の場合の制御圧延は不要である。但し、スラブ加熱温度は、1050〜1200℃とする。以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成を有する鋼素材(スラブ)に、表2に示す条件の熱間圧延、加速冷却を施し、一部の鋼板には焼き戻しを行って、板厚:60mmの厚鋼板を製造し、供試鋼とした。一部の鋼板は、熱間圧延後、再加熱焼入れ、焼き戻しを行った。
得られた厚鋼板から、試験片を採取し、以下に述べる方法で、組織観察、引張試験およびシャルピー衝撃試験を実施した。また、温間成形後の機械的特性を調査した。
(1)組織観察
供試鋼から、組織観察用試験片を採取し、圧延方向断面(L断面)を研磨し、ナイタール液で腐食して、光学顕微鏡(倍率:400倍)および走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)で組織を観察し、撮像して、画像解析装置を用いて、組織の種類、分率を測定した。また、飽和ピクリン酸水溶液を用いた腐食により、旧オーステナイト粒界を現出し、画像解析によって公称粒径(該領域の平均面積の平方根)を求めた。
(2)引張試験
供試鋼の板厚:1/4t位置から、長さ方向が圧延方向に一致するように、JIS4号引張試験片(丸棒試験片)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、伸びEl、降伏比YR)を求めた。
(3)シャルピー衝撃試験
供試鋼の板厚(t)の1/4位置から、長さ方向を圧延方向として、Vノッチ試験片を採取し、JISZ2242の規定に準拠して、シャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。
(4)温間加工後の引張試験、衝撃試験
供試鋼から、曲げ加工用試験材(大きさ:圧延方向1000×幅方向1500mm)を採取した。得られた試験材を、加熱温度:400℃、500℃、550℃に加熱したのち、該加熱された試験材に曲げ方向が圧延方向に垂直になるような温間プレス曲げ加工を施した。
曲げ半径RはR=500mmとした。曲げ加工後、加工部の外表面側の板厚(t)の1/4位置から、試験片長さ方向が圧延方向に一致するように、JIS4号丸棒引張試験片、Vノッチ試験片を採取して、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張試験を、またJIS Z 2242の規定に準拠して、シャルピー衝撃試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、伸びEl、降伏比YR)および破面遷移温度vTrs(℃)を求め、温間成形性を評価した。
表3に試験結果を示す。400〜550℃での温間加工後、降伏強さ:630MPa以上900MPa以下、引張強さ:780MPa以上、降伏比95%以下で、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrs:−40℃以下を本発明範囲とする。本発明の規定を満足する鋼板(No.1〜19、No.30〜32)はいずれも、400℃、500℃、および550℃での曲げ加工後において、降伏強さ:630MPa以上900MPa以下、引張強さ:780MPa以上、降伏比95%以下で、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrs:−40℃以下の特性が得られた。
一方、比較例のうち、No.20〜24は成分組成は本発明範囲内であるが、ミクロ組織が本発明範囲外で、No.26〜29は、成分組成が本発明範囲外のため、400℃、500℃、および550℃での曲げ加工後において、いずれかの特性が劣っていた。
Figure 0005786720
Figure 0005786720
Figure 0005786720
1 鋼板
2 プレス金型

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.06〜0.12%、
    Si:0.05〜0.40%、
    Mn:0.80〜1.20%、
    P:0.015%以下、
    S:0.003%以下、
    Al:0.005〜0.060%、
    N:0.0040%以下、
    Mo:0.20〜0.50%、
    V:0.020〜0.080%を含有し、
    さらにNb:0.005〜0.030%、Cu:0.10〜0.50%、Ni:0.1〜1.0%、Cr:0.10〜0.80%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上を下記(1)式、下記(2)及び下記(3)式を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる組成を有し、ミクロ組織が面積率で80%以上の焼戻しマルテンサイト相からなり、該焼戻しマルテンサイト相の旧オーステナイト粒の公称粒径が12μm以上30μm以下であり、温間加工後の特性に優れることを特徴とする引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板。

    0.45≦(Mo+4.9V+5.8Nb)≦0.85 ‥‥(1)
    4.0≦Mo/V≦16.0 ‥‥(2)
    0.20≦C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B≦0.27 ・・・(3)
    ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Nb、B:各元素の含有量(質量%)、但し、含有しないものは0とする。
  2. 前記組成に、さらに、質量%で、Ti:0.005〜0.020%を含有することを特徴とする請求項1に記載の引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板。
  3. 前記組成に、さらに、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.0050%、
    REM:0.0010〜0.0050%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2記載の引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板。
  4. 鋼素材を、加熱したのち、熱間圧延を行い厚鋼板とする熱間圧延工程と、該熱間圧延工程終了後の厚鋼板に、加速冷却を行う加速冷却工程と、該加速冷却工程終了後に、再加熱焼戻しを行う焼戻し工程を施す、引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法において
    求項1ないし3の何れか一つに記載の高張力厚鋼板の製造方法であり、前記熱間圧延工程が、加熱温度:1050〜1200℃に加熱した後、950℃以下での累積圧下量が30〜60%で、圧延終了温度:900℃以下Ar3変態点以上とする熱間圧延で、前記加速冷却工程が、熱間圧延終了後、Ar3変態点以上の温度から400℃以下の温度まで、700〜500℃の平均冷却速度で2℃/s以上の加速冷却で、前記焼戻し工程が、焼戻し温度:450〜650℃に再加熱することを特徴とする引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法。
  5. 鋼素材を、加熱後、熱間圧延し、400℃以下の温度まで冷却した後、再加熱焼入工程および該再加熱焼入工程後に再加熱焼戻し工程を施す、引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法において、
    求項1ないし3の何れか一つに記載の高張力厚鋼板の製造方法であり、前記再加熱焼入工程が、880〜980℃に再加熱した後、200℃以下の温度まで、700〜500℃の平均冷却速度で2℃/s以上の冷却を行う工程であり、前記再加熱焼戻し工程が、焼戻し温度:450〜650℃に再加熱する工程であることを特徴とする引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板の製造方法。
JP2012000583A 2012-01-05 2012-01-05 引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法 Active JP5786720B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012000583A JP5786720B2 (ja) 2012-01-05 2012-01-05 引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012000583A JP5786720B2 (ja) 2012-01-05 2012-01-05 引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013139610A JP2013139610A (ja) 2013-07-18
JP5786720B2 true JP5786720B2 (ja) 2015-09-30

Family

ID=49037337

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012000583A Active JP5786720B2 (ja) 2012-01-05 2012-01-05 引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5786720B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6327017B2 (ja) * 2014-06-30 2018-05-23 Jfeスチール株式会社 厚肉かつ高強度の厚鋼板およびその製造方法
CN109563587B (zh) 2016-08-01 2021-03-12 新日铁住金株式会社 无缝钢管及其制造方法
JP6891828B2 (ja) * 2018-01-25 2021-06-18 日本製鉄株式会社 高強度継目無鋼管及びジャッキアップリグのブレーシングパイプ
CN113926892B (zh) * 2020-06-29 2024-07-12 宝山钢铁股份有限公司 抗拉强度≥980MPa级热轧超高强度双相钢零件冲压成形工艺及应用
CN113462972A (zh) * 2021-06-21 2021-10-01 山东钢铁股份有限公司 一种海洋工程用调质处理高强度耐低温h型钢及其制备方法
CN113444974A (zh) * 2021-07-02 2021-09-28 河北普阳钢铁有限公司 一种1000MPa级超高强韧钢板及其生产方法
EP4206336A1 (de) * 2021-12-29 2023-07-05 Voestalpine Grobblech GmbH Grobblech und thermomechanisches behandlungsverfahren eines vormaterials zur herstellung eines grobblechs
CN118256697B (zh) * 2024-05-30 2024-08-16 太原科技大学 一种含氮马氏体不锈轴承钢及其制备方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4193757B2 (ja) * 2004-06-08 2008-12-10 住友金属工業株式会社 超高強度ラインパイプ用鋼板およびその製造方法ならびに溶接鋼管
JP5034308B2 (ja) * 2006-05-15 2012-09-26 Jfeスチール株式会社 耐遅れ破壊特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5630125B2 (ja) * 2009-08-06 2014-11-26 Jfeスチール株式会社 低温靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5609383B2 (ja) * 2009-08-06 2014-10-22 Jfeスチール株式会社 低温靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013139610A (ja) 2013-07-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5609383B2 (ja) 低温靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP6327282B2 (ja) 高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP6477570B2 (ja) 熱延鋼板およびその製造方法
JP5786720B2 (ja) 引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法
JP5630125B2 (ja) 低温靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP4940882B2 (ja) 厚手高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5598225B2 (ja) 曲げ特性と低温靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5532800B2 (ja) 耐歪時効特性に優れた低降伏比高強度高一様伸び鋼板及びその製造方法
JP2012172256A (ja) 低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP6252291B2 (ja) 鋼板及びその製造方法
JP2018188675A (ja) 高強度熱延鋼板およびその製造方法
KR20130051518A (ko) 고강도 강판 및 그 제조 방법
JP6128042B2 (ja) 低降伏比高強度スパイラル鋼管杭およびその製造方法
JP4978146B2 (ja) 厚手高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5477089B2 (ja) 高強度高靭性鋼の製造方法
JP2019199649A (ja) 非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法
JP5509654B2 (ja) 耐pwht特性および一様伸び特性に優れた高強度鋼板並びにその製造方法
JP2007177325A (ja) 低降伏比を有する高張力厚鋼板およびその製造方法
JP2007177326A (ja) 低降伏比を有する高張力薄肉鋼板およびその製造方法
JP6197767B2 (ja) 低降伏比高強度スパイラル鋼管杭およびその製造方法
JP6086090B2 (ja) 溶接熱影響部靭性に優れた非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法
JP2011214053A (ja) 超大入熱溶接部靭性に優れた低降伏比建築構造用厚鋼板およびその製造方法
JP5082475B2 (ja) 強度−伸びバランスに優れた高靭性高張力鋼板の製造方法
JP2014005519A (ja) 低降伏比高強度スパイラル鋼管杭
JP4848960B2 (ja) 薄肉低降伏比高張力鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140825

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150519

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150611

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150630

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150713

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5786720

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250