JP6327017B2 - 厚肉かつ高強度の厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

厚肉かつ高強度の厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、建築、タンク等の安全性が強く求められる溶接構造物に好適な、厚肉かつ高強度の厚鋼板、特に、優れた降伏応力を有する厚鋼板、およびその製造方法に関する。
近年、大型の船舶、海洋構造物、橋梁、建築、タンク等の溶接構造物が建造されるようになり、それらに使用される厚鋼板の高強度化の要求が高まっている。高強度の厚鋼板を製造するためには、合金元素を添加し、その成分に応じて制御圧延や制御冷却を適正な条件で行なう必要がある。なかでも、制御冷却においては、冷却停止温度の低下と冷却速度の増加が、厚鋼板の強度の向上に大きく寄与することが知られている。
しかしながら合金元素を多く含有する厚鋼板は、強冷却した場合に、ベイナイトやマルテンサイトが生成して鋼組織中に分散するので、可動転位が導入され、厚鋼板の降伏比が低下する。その結果、引張応力の高い厚鋼板であっても、降伏応力の低下を招くという問題がある。
また、板厚が40mm以上の厚鋼板では、十分な強度を得るために、合金元素の添加量を増やす必要があり、それに伴って炭素当量Ceqも上昇する。その結果、溶接構造物を建造する際に形成される溶接継手の熱影響部(いわゆるHAZ)の靭性が劣化するという問題も生じる。合金元素の添加量を低減すれば、HAZ靭性の劣化は防止できるが、十分な強度を得ることが難しくなる。
そこで、合金元素を添加して引張応力を向上した熱延鋼板の、降伏応力も高く維持する技術が検討されている。
たとえば特許文献1には、熱間圧延の後に室温まで冷却し、さらに焼戻しを行なうことによって、熱延鋼板の引張応力と降伏応力を高く維持する技術が開示されている。しかしこの技術は、熱間圧延のための圧延装置と焼戻しのための加熱装置を直結せず、それぞれ異なる生産ライン(いわゆるオフライン)にて熱間圧延と焼戻しを行なうので、生産性の低下や製造コストの増加を引き起こす。
特許文献2、3には、制御圧延の後に制御冷却を行ない、引き続き急速に加熱して焼戻しを行なうことによって、厚鋼板の引張応力と降伏応力を調整する技術が開示されている。これらの技術は、制御圧延のための圧延装置、制御冷却のための冷却装置、および焼戻しのための加熱装置を直結して、一連の生産ライン(いわゆるオンライン)にて制御圧延から制御冷却を経て焼戻しまで行なうので、上記の特許文献1に開示された技術の問題点(すなわち生産性の低下、製造コストの増加)を解消できる。しかし、これらの技術は板厚35mm以下の厚鋼板に適用するものである。つまり、板厚40mm以上の厚鋼板にも適用可能な技術は、未だ確立されていない。
しかも、特許文献2に開示された技術は降伏比を低下させことを課題としているので、その技術を適用して製造した厚鋼板は、降伏応力が低くなり、大型の溶接構造物(たとえば船舶、海洋構造物、橋梁、建築、タンク等)に好適な厚鋼板とは言えない。
特公平5-38043号公報 特開2011-94231号公報 特開2012-193447号公報
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、降伏応力が高く、大型の溶接構造物に好適な厚鋼板を効率良く製造する技術、とりわけ板厚40mm以上の厚鋼板の製造にも適用可能な製造技術を提供することを目的とする。
本発明者は、降伏応力が高く、かつ板厚が40mm以上の厚鋼板を製造する技術について検討した。その結果、
(A)熱間圧延の後で急速に冷却(以下、急冷却という)することによって、厚鋼板の強度を高め、さらに焼戻しを行なうことによって、可動転位を消滅あるいは固着させて、降伏応力の低下を防止することができる、
(B)熱間圧延を行なう圧延装置、急冷却を行なう冷却装置、および焼戻しを行なう加熱装置を直結して、オンラインで熱間圧延から急冷却を経て焼戻しまで行なうことによって、降伏応力が高い厚鋼板を効率良く製造できる、
(C)厚鋼板の成分と、熱間圧延から急冷却を経て焼戻しに至る各工程の条件と、を適正に設定することによって、板厚が40mm以上の厚鋼板においても降伏応力を高く維持することができる
という知見を得た。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、C:0.03〜0.15質量%、Si:0.01〜0.43質量%、Mn:1.0〜2.5質量%、P:0.030質量%以下、S:0.005質量%以下、Al:0.002〜0.10質量%、Cu:0.05〜1.0質量%、Ni:0.10〜1.0質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記の(1)式で算出される炭素当量Ceqが、Ceq≦0.50を満足する組成を有する鋼素材を、950〜1250℃に加熱し、さらに圧延終了温度(Ar3点−40℃)以上かつ累積圧下率50%以上の熱間圧延を行なって板厚40mm以上の厚鋼板とし、熱間圧延を行なった圧延装置から搬送手段を介してオンラインで直結された冷却装置に厚鋼板を送給して、(Ar3点−80℃)以上の温度範囲で急冷却を開始して、1℃/秒以上の冷却速度で400℃以下まで急冷却を行なった後、冷却装置から搬送手段を介してオンラインで直結された加熱装置に厚鋼板を送給して、300〜500℃で焼戻しを行なう厚肉かつ高強度の厚鋼板の製造方法である。
Ceq=[%C]+{[%Mn]/6}+{([%Cu]+[%Ni])/15}+
{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
なお、[%C]、[%Mn]、[%Cu]、[%Ni]、[%Cr]、[%Mo]、[%V]は、それぞれC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量(質量%)を指し、含有しない場合はゼロとする。
本発明の厚鋼板の製造方法においては、鋼素材が、前記した組成に加えて、Nb:0.003〜0.050質量%、Ti:0.004〜0.030質量%、Cr:0.50質量%以下、Mo:0.22質量%以下、V:0.50質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。また、急冷却が、直接焼入れまたは加速冷却であることが好ましく、加熱装置が、インダクション加熱装置であることが好ましい。
また本発明は、C:0.03〜0.15質量%、Si:0.01〜0.43質量%、Mn:1.0〜2.5質量%、P:0.030質量%以下、S:0.005質量%以下、Al:0.002〜0.10質量%、Cu:0.05〜1.0質量%、Ni:0.10〜1.0質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記の(1)式で算出される炭素当量Ceqが、Ceq≦0.50を満足する組成を有し、母材のYSが460MPa以上、TSが570MPa以上、ELが17%以上、 −40 が100J以上、YRが0.8以上であり、溶接継手のボンド部の −20 が70J以上であることを特徴とする板厚40mm以上の厚肉かつ高強度の厚鋼板である。
Ceq=[%C]+{[%Mn]/6}+{([%Cu]+[%Ni])/15}+
{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
なお、[%C]、[%Mn]、[%Cu]、[%Ni]、[%Cr]、[%Mo]、[%V]は、それぞれC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量(質量%)を指し、含有しない場合はゼロとする。
また、前記組成に加えて、Nb:0.003〜0.050質量%、Ti:0.004〜0.030質量%、Cr:0.50質量%以下、Mo:0.22質量%以下、V:0.50質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
本発明によれば、降伏応力が高く、かつ板厚40mm以上の厚鋼板を効率良く製造できるので、産業上格段の効果を奏する。
本発明を適用して厚鋼板を製造する設備の配列を模式的に示す図である。
図1は、本発明を適用して厚鋼板を製造する設備の配列を模式的に示す図である。図1中の矢印Aは厚鋼板の進行方向を示す。
まず、その厚鋼板の素材となるスラブ(以下、鋼素材という)の成分について説明する。
C:0.03〜0.15質量%
Cは、大型の溶接構造物に好適な厚鋼板として、降伏応力を高めるために必要な元素である。C含有量が0.03質量%未満では、その効果が得られない。一方、0.15質量%を超えると、HAZの靭性が劣化する。したがって、Cは0.03〜0.15質量%の範囲内とする。
Si:0.01〜1.0質量%
Siは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。Si含有量が0.01質量%未満では、その効果が得られない。一方、1.0質量%を超えると、降伏応力向上の効果が飽和して、Si含有量の増加に見合う効果が得られない。したがって、Siは0.01〜1.0質量%の範囲内とする。
Mn:1.0〜2.5質量%
Mnは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。Mn含有量が1.0質量%未満では、その効果が得られない。一方、2.5質量%を超えると、HAZの靭性が劣化する。したがって、Mnは1.0〜2.5質量%の範囲内とする。
P:0.030質量%以下
Pは、鋼素材を製造するための溶鋼を溶製する過程で不可避的に混入する不純物(以下、不可避的不純物という)である。P含有量が0.030質量%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Pは0.030質量%以下とする。不可避的不純物であるPは、その含有量が少ないほど良いが、0.010質量%未満まで低減させるためには、溶鋼の溶製に長時間を要するので、工業的な種々の問題(たとえば生産性の低下、製造コストの増加等)を引き起こす。したがって、Pは0.010〜0.030質量%の範囲内が好ましい。
S:0.005質量%以下
Sも不可避的不純物である。S含有量が0.005質量%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Sは0.005質量%以下とする。不可避的不純物であるSは、その含有量が少ないほど良いが、0.001質量%未満まで低減させるためには、溶鋼の溶製に長時間を要するので、工業的な種々の問題(たとえば生産性の低下、製造コストの増加等)を引き起こす。したがって、Sは0.001〜0.005質量%の範囲内が好ましい。
Al:0.002〜0.10質量%
Alは、溶鋼を溶製する過程で脱酸剤として添加される元素である。Al含有量が0.002質量%未満では、その効果が得られない。一方、0.10質量%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Alは0.002〜0.10質量%の範囲内とする。
Cu:1.0質量%以下
Cuは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。しかし、Cu含有量が1.0質量%を超えると、厚鋼板の製造過程で、Cuに起因する割れ(いわゆるCu割れ)が発生し易くなる。したがって、Cuは1.0質量%以下とする。ただし、0.03質量%未満では、降伏応力向上の効果が得られない。したがって、Cuは0.03〜1.0質量%の範囲内が好ましい。
Ni:1.0質量%以下
Niは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。しかし、Ni含有量が1.0質量%を超えると、降伏応力向上の効果が飽和して、Ni含有量の増加に見合う効果が得られない。したがって、Niは1.0質量%以下とする。ただし、0.05質量%未満では、降伏応力向上の効果が得られない。したがって、Niは0.05〜1.0質量%の範囲内が好ましい。
さらに鋼素材は、上記の成分に加えて、Nb、Ti、Cr、Mo、Vの中から選ばれる1種以上を含有しても良い。
Nb:0.003〜0.050質量%
Nbは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。Nb含有量が0.003質量%未満では、その効果が得られない。一方、0.050質量%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Nbを含有する場合は、0.003〜0.050質量%の範囲内が好ましい。
Ti:0.004〜0.030質量%
Tiは、熱間圧延に先立って鋼素材を加熱する際に、TiNを生成し、オーステナイト粒を微細化することによって、厚鋼板の靭性を高める作用を有する元素である。Nb含有量が0.004質量%未満では、その効果が得られない。一方、0.030質量%を超えると、靭性向上の効果が飽和して、Ni含有量の増加に見合う効果が得られない。したがって、Tiを含有する場合は、0.004〜0.030質量%の範囲内が好ましい。
Cr:0.50質量%以下
Crは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。Cr含有量が0.50質量%を超えると、降伏応力向上の効果が飽和して、Cr含有量の増加に見合う効果が得られない。したがって、Crを含有する場合は、0.50質量%以下が好ましい。ただし、0.04質量%未満では、降伏応力向上の効果が得られない。したがって、Crは0.04〜0.50質量%の範囲内がより好ましい。
Mo:0.50質量%以下
Moは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。しかしMo含有量が0.50質量%を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Moを含有する場合は、0.50質量%以下が好ましい。ただし、0.04質量%未満では、降伏応力向上の効果が得られない。したがって、Moは0.04〜0.50質量%の範囲内がより好ましい。
V:0.50質量%以下
Vは、厚鋼板の降伏応力を高める作用を有する元素である。しかしV含有量が0.50質量%を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Vを含有する場合は、0.50質量%以下が好ましい。ただし、0.04質量%未満では、降伏応力向上の効果が得られない。したがって、Vは0.04〜0.50質量%の範囲内がより好ましい。
炭素当量Ceq:0.50以下
Ceqが0.50を超えると、厚鋼板を用いて溶接構造物を建造する際に形成される溶接継手のHAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Ceqは0.50以下とする。ここで、Ceqは下記の(1)式で算出される値である。なお、(1)式中の[%C]、[%Mn]、[%Cu]、[%Ni]、[%Cr]、[%Mo]、[%V]は、それぞれC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量(質量%)を指し、含有しない場合はゼロとする。
Ceq=[%C]+{[%Mn]/6}+{([%Cu]+[%Ni])/15}+
{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
鋼素材に添加する元素の好適な含有量と、それを限定する理由は上記の通りであり、上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に、本発明に係る厚鋼板を製造するための好適な条件について、図1を参照して、説明する。
鋼素材(すなわちスラブ)の製造手段:特に限定しない
上記の組成を有する溶鋼を転炉等で溶製し、その後、連続鋳造等で鋼素材を製造する。溶鋼の溶製は電気炉で行なっても良く、得られた溶鋼を造塊から分塊圧延を経て鋼素材としも良い。つまり、鋼素材を製造する手段は、従来から知られている常法を採用すれば良く、特に限定しない。
鋼素材の加熱温度:950〜1250℃
鋼素材を、図1に示す加熱炉1に装入して加熱する。その鋼素材から、良好な靭性を有する厚鋼板を得るためには、加熱温度を低く設定して、熱間圧延前の鋼素材のオーステナイト粒を微細化することが好ましい。ただし加熱温度が950℃未満では、鋼素材の変形抵抗が大きくなるので、熱間圧延にて圧延設備に過大な負荷が掛かり、操業に支障(たとえば設備故障等)が生じる。一方、1250℃を超えると、鋼素材のオーステナイト粒が粗大化し、その結果、得られる厚鋼板の靭性が劣化する。また、加熱炉1内における鋼素材の酸化ロスが増加するので、歩留りの低下を招く。したがって、鋼素材の加熱温度は950〜1250℃の範囲内とする。なお、厚鋼板の靭性を確保する観点から、1000〜1150℃の範囲内が好ましい。
熱間圧延の圧延終了温度:(Ar3点−40℃)以上
加熱炉1から排出された鋼素材は、搬送手段を介してオンラインで直結した圧延装置2に送給される。そして、熱間圧延を行なって鋼素材に加工歪を導入して、厚鋼板の組織の微細化を図る。こうして厚鋼板の降伏応力を向上するために、(Ar3点−40℃)以上の温度で圧延を終了する。つまり、圧延終了温度が(Ar3点−40℃)未満では、厚鋼板にフェライト相が生成し、降伏応力が低下する。一方、圧延終了温度が(Ar3点+200℃)を超えると、加工歪を導入する効果が減退するので、圧延終了温度は(Ar3点−40℃)〜(Ar3点+200℃)の範囲内が好ましい。
Ar3点(℃)は下記の(2)式で算出される値である。なお、(2)式中の[%C]、[%Mn]、[%Cu]、[%Ni]、[%Cr]、[%Mo]は、それぞれC、Mn、Cu、Ni、Cr、Moの含有量(質量%)を指し、含有しない場合はゼロとする。
Ar3=910−310[%C]−80[%Mn]−20[%Cu]−55[%Ni]−15[%Cr]−80[%Mo] ・・・(2)
熱間圧延の累積圧下率:50%以上
熱間圧延における累積圧下率が50%未満では、十分な加工歪を導入することができない。したがって、累積圧下率は50%以上とする。ただし90%を超えると、圧延装置2に過大な負荷が掛かり、操業に支障が生じるので、累積圧下率は50〜90%の範囲内が好ましい。
累積圧下率は下記の(3)式で算出される値である。なお、(3)式中のtS(mm)は鋼素材の板厚、tP(mm)は厚鋼板の板厚を指す。リバース圧延やタンデム圧延を行なって、複数回の圧下を加えた場合も同様にして算出する。
累積圧下率=100×(tS−tP)/tS ・・・(3)
熱間圧延によって得られる厚鋼板の板厚:40mm以上
本発明を適用することによって、板厚40mm以上の厚鋼板の降伏応力を高めることができ、しかもその厚鋼板を効率良く製造することが可能となる。本発明は板厚40mm未満の厚鋼板にも適用できるが、従来の技術では困難とされていた厚肉材(すなわち板厚40mm以上)に適用することによって、極めて大きい効果が期待できる。
急冷却の冷却速度:1℃/秒以上
熱間圧延を終了した厚鋼板は、搬送手段を介してオンラインで直結した冷却装置3に送給される。そして、急冷却を行なって厚鋼板の組織を微細化し、その結果、厚鋼板の降伏応力と靭性の向上を図る。急冷却における冷却速度が1℃/秒未満では、組織が粗大化して、急冷却の効果が得られない。したがって、急冷却の冷却速度は1℃/秒以上とする。ただし冷却速度が80℃/秒を超えると、厚鋼板の靭性が著しく劣化するので、1〜80℃/秒の範囲内が好ましい。
冷却装置3の冷却手段は、特に限定しない。たとえば、圧延装置から送給された厚鋼板をそのまま焼入れ水槽に投入する直接焼入れ、あるいは厚鋼板に冷却水を噴霧する加速冷却等の従来から知られている技術を用いて急冷却を行なう。
急冷却の冷却開始温度:(Ar3点−80℃)以上
急冷却の冷却開始温度が(Ar3点−80℃)を下回ると、急冷の前段階でフェライト生成量が高くなり、強度が低下するため、Ar3点−80℃以上の温度から冷却を開始する。したがって、急冷却の冷却開始温度は(Ar3点−80℃)以上とする。
急冷却の冷却停止温度:400℃以下
急冷却の冷却停止温度が400℃を上回ると、ベイナイト相が十分に分散せず、降伏応力を向上する効果が得られない。したがって、急冷却の冷却停止温度は400℃以下とする。なお、室温を下回る温度まで急冷却を行なう場合は、大規模な冷却装置が必要となるので、厚鋼板の製造コストの増加を招く。したがって、急冷却の冷却停止温度は室温〜400℃の範囲内が好ましい。
焼戻し温度:300〜500℃
急冷却を終了した厚鋼板は、搬送手段を介してオンラインで直結した加熱装置4に送給される。そして、焼戻しを行なって厚鋼板の降伏応力、靭性とともに引張応力および伸びの向上を図る。焼戻し温度が300℃未満では、降伏応力、靭性、伸びの大幅な向上が期待できない。一方、500℃を超えると、引張応力の低下を招く。したがって、 焼戻し温度は300〜500℃の範囲内とする。
加熱装置4の加熱手段は、特に限定せず、従来から知られている技術を用いて焼戻しを行なう。ただし、加熱炉1、圧延装置2、冷却装置3および加熱装置4をオンラインで直結して操業するので、短時間で加熱することが可能なインダクション加熱を採用することが好ましい。
このようにして鋼素材の成分(すなわち厚鋼板の成分)を適正に設計し、その鋼素材を加工して厚鋼板を得るまでの各工程の条件を適正に設定することによって、加熱炉1、圧延装置2、冷却装置3、加熱装置4をオンラインで直結して、効率良く操業することが可能となる。
なお、温度は鋼板表面の温度とする。ただし、炉加熱温度は板厚方向の平均温度とする。板厚方向の平均温度は鋼板表面温度(放射温度計等で測定する)から伝熱計算で求めることができる。
表1に示す成分の鋼素材(板厚tS:250〜300mm)を製造し、さらに図1に示すようなオンラインで直結した装置を用いて厚鋼板(板厚tP:60mm、100mm)を製造した。冷却装置3では、冷却水を噴霧して加速冷却を行なった。加熱装置4では、インダクション加熱を行なった。累積圧下率は67〜80%であり、その他の条件は表2に示す通りである。
Figure 0006327017
Figure 0006327017
得られた厚鋼板の1/4tPの位置から、圧延方向に対して直角(いわゆるC方向)に試験片(径:14mm、標点間距離:70mm)を採取して、引張試験を行ない、降伏応力YS(MPa)、引張応力TS(MPa)、伸びEL(%)を測定した。その結果を表3に示す。なお降伏比YRは、YSをTSで除した値である。
また、厚鋼板の1/4tPの位置から、圧延方向に対して平行(いわゆるL方向)に試験片を採取して、シャルピー衝撃試験(試験温度:−40℃)を行ない、吸収エネルギV-40(J)を測定した。シャルピー衝撃試験はそれぞれ3回ずつ行ない、得られたV-40の平均値を表3に示す。
さらに、厚鋼板を用いて溶接継手を作成し、ボンド部にノッチを入れるように溶接継手から採取した試験片を用いてシャルピー衝撃試験(試験温度:−20℃)を行ない、吸収エネルギV-20(J)を測定した。シャルピー衝撃試験はそれぞれ3回ずつ行ない、得られたV-20の平均値を表3に示す。なお、溶接継手を作成するための溶接は、フラックスを内装したワイヤ(いわゆるFCW)を用い、溶接入熱20〜30kJ/cmで炭酸ガス溶接を行なった。
Figure 0006327017
表3から明らかなように、発明例の厚鋼板(すなわち鋼板No.1〜8)は、いずれもYSが460MPa以上、TSが570MPa以上、ELが17%以上、V-40が100J以上、YRが0.8以上であり、降伏応力と靭性に優れており、しかも良好な引張応力と伸びを有することが確認できた。また、それらの厚鋼板の溶接継手のボンド部は、V-20が70J以上であり、優れたHAZ靭性を有している。
これに対して比較例の鋼板No.9〜13は、加熱炉1、圧延装置2、冷却装置3、加熱装置4の条件が本発明の範囲を外れる例であり、鋼板No.14は、鋼素材の成分が本発明の範囲を外れる例である。これらの厚鋼板(すなわち鋼板No.9〜14)は、YS、TS、EL、あるいはV-40が発明例と比べて大幅に劣っている。また、その溶接継手のV-20(すなわちHAZ靭性)も大幅に劣っている。
1 加熱炉
2 圧延機
3 冷却装置
4 加熱装置

Claims (6)

  1. C:0.03〜0.15質量%、Si:0.01〜0.43質量%、Mn:1.0〜2.5質量%、P:0.030質量%以下、S:0.005質量%以下、Al:0.002〜0.10質量%、Cu:0.05〜1.0質量%、Ni:0.10〜1.0質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記の(1)式で算出される炭素当量Ceqが、Ceq≦0.50を満足する組成を有する鋼素材を、950〜1250℃に加熱し、さらに圧延終了温度(Ar3点−40℃)以上かつ累積圧下率50%以上の熱間圧延を行なって板厚40mm以上の厚鋼板とし、前記熱間圧延を行なった圧延装置から搬送手段を介してオンラインで直結された冷却装置に前記厚鋼板を送給して、(Ar3点−80℃)以上の温度範囲で急冷却を開始して、1℃/秒以上の冷却速度で400℃以下まで前記急冷却を行なった後、前記冷却装置から搬送手段を介してオンラインで直結された加熱装置に前記厚鋼板を送給して、300〜500℃で焼戻しを行ない、母材のYSが460MPa以上、TSが570MPa以上、ELが17%以上、 −40 が100J以上、YRが0.8以上であり、溶接継手のボンド部の −20 が70J以上である厚鋼板とすることを特徴とする厚肉かつ高強度の厚鋼板の製造方法。
    Ceq=[%C]+{[%Mn]/6}+{([%Cu]+[%Ni])/15}+
    {([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
    なお、[%C]、[%Mn]、[%Cu]、[%Ni]、[%Cr]、[%Mo]、[%V]は、それぞれC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量(質量%)を指し、含有しない場合はゼロとする。
  2. 前記鋼素材が、前記組成に加えて、Nb:0.003〜0.050質量%、Ti:0.004〜0.030質量%、Cr:0.50質量%以下、Mo:0.22質量%以下、V:0.50質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の厚肉かつ高強度の厚鋼板の製造方法。
  3. 前記急冷却が、直接焼入れまたは加速冷却であることを特徴とする請求項1または2に記載の厚肉かつ高強度の厚鋼板の製造方法。
  4. 前記加熱装置が、インダクション加熱装置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の厚肉かつ高強度の厚鋼板の製造方法。
  5. C:0.03〜0.15質量%、Si:0.01〜0.43質量%、Mn:1.0〜2.5質量%、P:0.030質量%以下、S:0.005質量%以下、Al:0.002〜0.10質量%、Cu:0.05〜1.0質量%、Ni:0.10〜1.0質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記の(1)式で算出される炭素当量Ceqが、Ceq≦0.50を満足する組成を有し、母材のYSが460MPa以上、TSが570MPa以上、ELが17%以上、−40が100J以上、YRが0.8以上であり、溶接継手のボンド部の−20が70J以上であることを特徴とする板厚40mm以上の厚肉かつ高強度の厚鋼板。
    Ceq=[%C]+{[%Mn]/6}+{([%Cu]+[%Ni])/15}+
    {([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
    なお、[%C]、[%Mn]、[%Cu]、[%Ni]、[%Cr]、[%Mo]、[%V]は、それぞれC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量(質量%)を指し、含有しない場合はゼロとする。
  6. 前記組成に加えて、Nb:0.003〜0.050質量%、Ti:0.004〜0.030質量%、Cr:0.50質量%以下、V:0.50質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の厚肉かつ高強度の厚鋼板。
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