JP6028759B2 - 鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、板厚6mm以上で、鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い鋼板およびその製造方法に関し、引張強度が780MPa以上の高張力鋼材として好適なものに関する。
近年、建設産業機械、タンク、ペンストック、ラインパイプ等の鋼材使用分野では、構造物の大型化、軽量化を背景として、使用する鋼材の高強度化が指向されると共に、鋼材使用量が急激に増加している。
特に、建設産業機械用の鋼板では、高強度化による薄肉化を図る事で、構造物の重量を低減し、エネルギー消費量を低減するための検討が進んでいるが、薄肉化に伴う剛性の低下が課題で、その解決のため、ヤング率を高めることが検討されている。
特許文献1は、高強度鋼の剛性向上やヤング率向上に関する特許文献の一つで、フェライト+オーステナイト2相温度域で熱間圧延することで集合組織を発達させることが記載されている。特許文献2、3、4は、薄鋼板を対象として、γ単相域での熱間圧延時にせん断変形による集合組織を発達させてヤング率を高めることを提案している。
特開2008−13831号公報 特開2005−273001号公報 特開2008−274395号公報 特開2007−291483号公報
特許文献1に記載のヤング率に優れた厚鋼板は、フェライト+オーステナイト2相温度域で累積圧下率50%以上の熱間圧延を施すことで、板厚中央部における(200)面および(211)面、表面下1mmにおける(110)面のX線回折集積密度を高め、かつ{100}面、{211}面、{110}面、{111}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対し5°以内に揃ったフェライト粒コロニーの平均長軸長さを、板厚中央部で60μm以下、表面下1mmで30μm以下とすることにより、ヤング率を向上させる技術である。
しかしながら、特許文献1記載の方法は、対象とする引張強度レベルが600MPa級と低く、ヤング率を高めるために、フェライト相分率を確保するとともに、フェライト相に加工集合組織を発達させるようにフェライト+オーステナイト2相温度域での強加工を必要とするため、製造安定性などに課題があった。
また、特許文献2、3、4は、オーステナイト単相域での熱間圧延時に鋼板表面をせん断変形させることにより、{110}<223>方位と{110}<111>方位の集合組織を発達させ、圧延方向のヤング率を高める技術である。しかし、いずれも薄鋼板を対象とし、圧延スタンドにおける圧延ロールと鋼板の摩擦係数、有効歪み量および圧下率を規定して製造するもので、厚鋼板に適用することはできない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、板厚が6mm以上の厚鋼板で、引張強度が780MPa以上で、鋼板表面での圧延方向のヤング率が220GPa以上となる高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、厚鋼板を対象として、強度を780MPa以上とし、鋼板表面における圧延方向のヤング率を高めることについて鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
(1)鋼板表面における圧延方向のヤング率を高めるためには、鋼板表面で{110}<111>および{112}<111>集合組織を発達させることが有効である。
(2)そのためには、鋼板表面から板厚の1/2位置までの未再結晶温度域でのパス圧下率、パス間時間、累積圧下率を適正に規定することが必要である。
(3)引張強度を780MPa以上とする場合、特定成分組成の鋼を熱間圧延後、Ar3変態点以上から冷却速度10℃/s以上で400℃以下まで冷却し、焼もどし温度を適正に規定した焼戻し処理することが必要である。
(4) また、圧延機および冷却装置と同一の製造ライン上に設置された加熱装置を用いると、焼戻し処理時間が短縮されて短納期対応が可能となる。
本発明は得られた知見に基づき、更に検討を加えてなされたものであって、すなわち、本発明は、
1. 成分組成が、質量%で、C:0.06〜0.25%、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、及びMo:0.01〜1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板表面圧延方向のヤング率が220GPa以上であることを特徴とする鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
2.成分組成が、質量%で、C:0.06〜0.25%、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、及びMo:0.01〜1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、旧γ粒径が15〜40μmで、かつ鋼板表面における{110}<111>および{112}<111>集合組織の集積度が3以上で鋼板表面圧延方向のヤング率が220GPa以上であることを特徴とする鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
3.更に、成分組成が、質量%で、Cu:2%以下、Ni:4%以下、Cr:2%以下、W:2%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする1または2に記載の鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
4.更に、成分組成が、質量%で、B:0.0003〜0.003%、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
5.1乃至4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAr変態点以下に冷却後、Ac変態点以上に再加熱して、未再結晶域での1パス圧下率10〜20%、パス間時間20s以下、累積圧下率40%以上の圧延を含んだ熱間圧延を行い、その後、Ar変態点以上から冷却速度10℃/s以上で400℃以下の温度まで冷却した後、Ac1点以下に焼もどすことを特徴とする鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板の製造方法。
6.1乃至4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAr変態点以下に冷却後、Ac変態点以上に再加熱して、未再結晶域でのパス圧下率10〜20%、パス間時間が20s以下、累積圧下率が40%以上の圧延を含んだ熱間圧延を行い、その後、Ar変態点以上から冷却速度10℃/s以上で250℃以下の温度まで冷却した後、圧延機および冷却装置と同一の製造ライン上に設置された加熱装置を用いて、平均昇温速度1℃/s以上で、Ac1点以下に焼もどすことを特徴とする鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強度が780MPa以上の高強度を有するとともに、鋼板表面における圧延方向のヤング率が220GPa以上で、剛性が高い高張力厚鋼板を安価に安定して製造することができ、産業上極めて有用である。
本発明の、成分の限定理由を説明する。説明において%は質量%とする。
C:0.06〜0.25%
Cは、構造用鋼に求められる強度を得るために必要不可欠な元素であるが、多量に含有すると、溶接熱影響部のマルテンサイトの生成量が多くなり靭性を低下させるので、上限を0.25%とした。また、0.06%より含有量が少ないと、十分な強度が得られず、合金元素の大量含有が必要になり溶接性が低下するので、下限を0.06%とする。好ましくは0.12〜0.22%、より好ましくは、0.12〜0.18%である。
Si:0.01〜0.8%
Siは脱酸剤として作用し、本発明では適度な脱酸を行うために0.01%以上含有する必要があるが、0.8%を超えて含有すると、母材および溶接熱影響部の靭性が顕著に低下するとともに溶接性が著しく低下する。このため、Siの範囲を0.01〜0.8%とした。好ましくは、0.05〜0.8%である。
Mn:0.5〜2%
Mnは母材強度を確保する観点から0.5%以上含有する必要がある。一方、2%より多く含有すると、過剰に焼入性を高め、溶接熱影響部の靭性を著しく低下させることから、2%以下とする必要がある。好ましくは、0.6〜1.6%である。
P:0.015%以下
Pは、0.015%を超えて含有すると、母材および溶接熱影響部の靭性を著しく低下させるため、0.015%以下に制限する。
S:0.005%以下
Sは、0.005%を超えて含有すると、母材および溶接熱影響部の靭性を顕著に低下させるため、0.005%以下とする。
Al:0.005〜0.1%
Alは溶鋼を十分に脱酸するために、0.005%以上含有する必要がある。一方、0.1%より多く含有すると、母材中に固溶するAl量が多くなり、母材靭性を低下させるので、0.1%以下に制限する必要がある。好ましくは、0.01〜0.06%である。
N:0.0005〜0.008%
Nは、Tiなどと窒化物を形成することによって組織を微細化し、母材および溶接熱影響部の靭性を向上させる効果を有するために含有する。しかし、0.0005%未満の含有では組織微細化の効果が十分ではなく、一方、0.008%を超える含有では、母材中に固溶するN量が増大し、母材靭性を著しく低下させ、さらに溶接熱影響部においても粗大な炭窒化物を形成し靭性を低下させるので、0.0005〜0.008%の範囲に制限する必要がある。好ましくは、0.001〜0.006%である。
Mo:0.01〜1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.03%以下の1種または2種以上
Mo:0.01〜1%
Moは、母材の高強度化に有効な元素であるが、0.01%未満ではその効果が不十分である一方、多量に含有すると合金炭化物の析出による強度の上昇を引き起こし、靭性を低下させるので0.01〜1%とする。好ましくは、0.2〜0.8%である。
Nb:0.001〜0.1%
Nbは鋼の強化に有効な元素であり、特に集合組織の発達に大きく寄与する元素であるが、0.001%未満ではその効果が不十分であり、0.1%を超える含有は母材の靭性を著しく低下させるので、0.001〜0.1%とする。好ましくは0.001〜0.05%である。
V:0.001〜0.5%
Vは母材の強度・靭性の向上に効果があり、また、VNとして析出することで固溶Nの低下に有効であるが、0.001%未満の含有ではその効果が不十分であり、0.5%より多く含有すると硬質なVCの析出により靭性が低下するので、0.001〜0.5%にする。好ましくは、0.01〜0.1%である。
Ti:0.03%以下
Tiは圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイトの粗大化を効果的に抑制し、母材および溶接熱影響部の靭性を向上させる。しかし、0.03%より多く含有すると、Ti窒化物が粗大化し母材および溶接熱影響部の靭性を低下させるので0.03%以下に制限する必要がある。
以上が本発明の基本成分組成で残部はFeおよび不可避的不純物である。本発明の高張力鋼は、上記基本成分組成に加えて、さらに強度を高める目的でCu、Ni、Cr、Wの1種または2種以上を含有することができる。
Cu:2%以下
Cuは低温靭性を損なうことなく鋼の強度の向上が図れるが、2%より多く含有すると熱間圧延時に鋼板表面に割れを生じるので2%以下とする。
Ni:4%以下
Niは、鋼の強度および溶接熱影響部の靭性を向上させる有益な元素である。しかし、Ni含有量が4%を超えると経済性が劣る。従って、Niを含有する場合にはその含有量を4%以下とする。好ましくは2%以下である。
Cr:2%以下
Crは、強度および靭性の向上に有効な元素であるが、Cr含有量が2%を超えると、溶接性が低下する。従ってCrを含有する場合にはその含有量を2%以下とする。好ましくは、0.1%〜1%である。
W:2%以下
Wは強度を向上する作用を有している。その効果を得るために0.05%以上含有することが好ましい。しかしながら、2%を超えると溶接性が低下する。従って、Wを含有する場合は、その含有量を2%以下とする。好ましくは、0.05〜2%である。
本発明は、上記組成に加えて、さらに材質を改善する目的でB、Ca、REMの1種または2種以上を含有することができる。
B:0.0003〜0.003%
Bは、オーステナイト粒界に偏析することで粒界からのフェライト変態を抑制し、焼入性を高める効果を有するが、この効果を十分に発揮させるためには0.0003%以上含有する必要がある。しかし、0.003%を超えて含有すると、析出物となり焼入性を低下させ、靭性が低下するので、上限を0.003%とする。好ましくは0.0005〜0.0020%である。
Ca:0.01%以下
Caは硫化物系介在物の形態制御に必要不可欠な元素である。しかし0.01%を超える含有は、清浄度の低下を招く。従って硫化物系介在物の形態制御のために、Caを含有する場合には、その含有量を0.01%以下に限定する。
REM:0.02%以下
REMもCaと同様に鋼中で酸化物および硫化物を形成して材質を改善する効果があるが、0.02%より多く含有してもその効果が飽和するため、0.02%以下とする。
次に、本発明のミクロ組織の限定理由を説明する。
[集合組織]
鋼板表面における圧延方向のヤング率を220GPa以上とするため、鋼板の表面での集合組織として、ヤング率が高い<111>方向が圧延方向に配向した{110}<111>および{112}<111>の集積度を3以上とする。当該集積度が3未満では、圧延方向のヤング率は220GPa未満となり、鋼板の剛性を高めることができない。なお、本発明で、鋼板の表面とは、板表面から板厚方向に少なくとも1/10板厚位置(板厚の1/10位置)までの領域を指す。
[旧γ粒径]
旧γ粒径を15〜40μmとするのは、旧γ粒径が15μm未満では、焼入性が低下し十分な強度が確保できず、旧γ粒径が40μmを超える場合は靭性が著しく低下するためである。
本発明では、所望の強度、靭性を確保するために、マルテンサイト+下部ベイナイト+残留オーステナイト組織分率を95%以上とする。
次に、本発明の製造条件の限定理由について述べる。なお、この発明における鋼板の温度規定は、板厚中心部の温度であり、鋼板の表面実測温度から計算により求める。平均冷却速度や平均昇温速度は、板厚中心部にて規定するが、板厚中心近傍はほぼ同様の温度履歴となるため、板厚中心部のみに限定されるものではない。
[圧延条件]
鋳片を、Ar3変態点以下に冷却することなくそのまま熱間圧延を開始しても、一度冷却した鋳片をAc3変態点以上に再加熱した後に熱間圧延を開始してもよい。鋼がオーステナイト化される温度域で圧延を開始すれば、本発明の有効性は失われない。なお、本発明は、転炉法・電気炉法等で溶製されたいかなる鋼や、連続鋳造・造塊法等で製造されたいかなるスラブについても有効であるので、特に鋼の溶製方法や製造方法は特定しない。
熱間圧延は、未再結晶温度域で1パスをパス圧下率10〜20%、パス間時間20s以下で行い、且つ未再結晶温度域での累積圧下率を40%以上、圧延終了温度Ar3変態点以上とする。パス圧下率が20%を超えると、圧延時に鋼板表面近傍に導入されるせん断歪が小さくなり、集合組織の発達が小さくなる。
一方、パス圧下率が10%未満では、パス数の増加に伴い圧延時の温度低下が大きくなり、Ar3変態点以上のオーステナイト域での圧延が難しくなるとともに、圧延能率の低下が大きくなるため、パス圧下率は10〜20%とする。
更に、パス間時間を20s以下、かつ、未再結晶域での累積圧下率を40%にすることで、圧延時のせん断歪の累積効果が大きくなり、所望の集合組織が発達する。なお、本発明で熱間圧延は、上述した未再結晶域での圧延を含んでいれば良く、他の圧延条件が含まれることを妨げない。
[冷却条件]
熱間圧延終了後、引張強度780MPa以上の母材強度を確保し、ヤング率を高めるため、Ar3変態点以上の温度から冷却速度10℃/s以上で所定の冷却停止温度まで強制冷却を施す。冷却停止温度は、400℃以下とし、冷却停止後、焼戻し処理を圧延機および冷却装置と同一の製造ライン上に設置された加熱装置を用いて行う場合は、250℃以下とする。
冷却は、オーステナイトの未再結晶域で導入したせん断歪により発達した加工集合組織を、マルテンサイト変態させて所望の集合組織の母材組織とするため、少なくとも、オーステナイト域の冷却速度を、10℃/s以上とし、オーステナイトからマルテンサイトへの変態を完了させ、母材を強化して引張強度780MPa以上とするため、停止温度を400℃以下とする。
[焼戻し]
冷却後、Ac1点以下の温度に焼もどしを行う。焼もどしは、平均昇温速度を1℃/s以上とし、鋼板温度をAc1点以下に加熱することで、加熱時のCの拡散を抑制して、マルテンサイトラス界面の粗大な炭化物の生成を効果的に抑制し、マルテンサイトラス間に生成する炭化物サイズを100nm以下とするので、靭性が向上する。
焼もどし後の100℃以下までの冷却速度は、冷却中の析出物の粗大化に起因する靭性の劣化を防止するように、平均冷却速度を0.05℃/s以上、20℃/s以下とすることが望ましい。
焼戻しは、圧延機及び直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と同一の製造ライン上に直結して設置された加熱装置を用いて行ってもよい。直結化により圧延・焼入れ処理から焼もどし処理までに要する時間を短くすることが可能となり、生産性の向上、熱エネルギーの低減効果がもたらされる。加熱装置としてソレノイド型誘導加熱装置が利用できる。
次に本発明の有用性を実施例によってさらに説明する。
表1に示す化学成分の鋼A〜Oを溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行い鋼板とした。圧延後、引き続き直接焼入れし、次いで、雰囲気炉およびソレノイド型誘導加熱装置を用いて焼もどし処理を行った。
ソレノイド型誘導加熱装置を用いた場合、板厚中心部の平均昇温速度は鋼板の通板速度によって管理した。なお、焼もどし温度にて保持する場合には、鋼板を往復させて加熱することによって、±5℃の範囲で保持した。
また、加熱後の冷却は空冷とした。焼もどし温度や焼入れ温度などの板厚中心部における温度は、放射温度計による表面の逐次における温度測定結果から、伝熱計算によって求めた。
引張試験はJIS Z 2241に準拠して行い、板厚20mm以下ではJIS5号試験片により、板厚20mm超では板厚の1/4から採取したJIS4号試験片により降伏強度および引張強度を測定した。試験片採取方向は、圧延方向とした。
靭性はJIS Z 2242に規定の衝撃試験片を採取し、板厚の1/4部より採取した試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって得られる破面遷移温度(vTrs)で評価した。試験片採取方向は、圧延方向とした。
旧γ粒径は、鋼板の圧延方向の断面を光学顕微鏡で10視野観察し、各結晶粒の円相当径の平均値により評価した。
集合組織は、鋼板表面から板厚の1/4まで、板面に平行な面について板厚方向1mm毎に試験片を採取し、(110)、(200)、(211)正極点図を測定し、これらを用いて3次元集合組織を計算し、Φ2=45°断面における各結晶方位のX線ランダム強度の最大値により評価した。
また、ヤング率は、板厚2mm×幅10mm×長さ60mmの板状試験片を採取し、共振法によって測定した。
各特性の目標値は、降伏応力が685MPa以上、引張強度が780MPa以上、vTrsが−40℃以下、表面1mmでの圧延方向のヤング率220GPa以上とした。
表2に鋼板製造条件、および得られた鋼板の降伏強度、引張強度、破面遷移温度(vTrs)、旧γ粒径、表面1mmから板厚中心までの集合組織強度、ヤング率をそれぞれ示す。成分組成または製造条件が本発明範囲外の比較例は、上記目標値および前述したミクロ組織の集積度({110}<111>および{112}<111>の集積度を3以上)のいずれかまたは全てを満足することができなかった。
Figure 0006028759
Figure 0006028759

Claims (6)

  1. 成分組成が、質量%で、C:0.06〜0.25%、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、及びMo:0.01〜1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板表面における圧延方向のヤング率が220GPa以上であることを特徴とする鋼板表面圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
  2. 成分組成が、質量%で、C:0.06〜0.25%、Si:0.01〜0.8%、Mn:0.5〜2%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、及びMo:0.01〜1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、旧γ粒径が15〜40μmで、かつ鋼板表面における{110}<111>および{112}<111>集合組織の集積度が3以上で、鋼板表面圧延方向のヤング率が220GPa以上であることを特徴とする鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
  3. 更に、成分組成が、質量%で、Cu:2%以下、Ni:4%以下、Cr:2%以下、W:2%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
  4. 更に、成分組成が、質量%で、B:0.0003〜0.003%、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAr変態点以下に冷却後、Ac変態点以上に再加熱して、未再結晶域での1パス圧下率10〜20%、パス間時間20s以下、累積圧下率40%以上の圧延を含んだ熱間圧延を行い、その後、Ar変態点以上から冷却速度10℃/s以上で400℃以下の温度まで冷却した後、Ac1点以下に焼もどすことを特徴とする鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板の製造方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼を鋳造後、Ar変態点以下に冷却することなく、あるいはAr変態点以下に冷却後、Ac変態点以上に再加熱して、未再結晶域でのパス圧下率10〜20%、パス間時間が20s以下、累積圧下率が40%以上の圧延を含んだ熱間圧延を行い、その後、Ar変態点以上から冷却速度10℃/s以上で250℃以下の温度まで冷却した後、圧延機および冷却装置と同一の製造ライン上に設置された加熱装置を用いて、平均昇温速度1℃/s以上で、Ac1点以下に焼もどすことを特徴とする鋼板表面における圧延方向のヤング率が高い高張力厚鋼板の製造方法。
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