JP5630125B2 - 低温靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
このような要求に対し、例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Mn:0.70〜2.50%、Ti:0.12〜0.30%、B:0.0005〜0.0015%を含み、さらにSi、P、S、Al、Nを適正量に調整して含む鋼スラブを、1250℃以上に加熱し、熱延仕上温度Ar3変態点以上950℃以下で全仕上圧下率80%で熱間圧延し、800〜500℃の範囲の冷却速度を30〜80℃/sで冷却し、500℃以下で巻取る、加工性および溶接性のよい高強度熱延鋼板の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された技術によれば、降伏点890MPa以上、引張強さ950MPa以上の高強度熱延鋼板が得られるとしている。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、大型建産機の構造部材用として好適な、降伏強さYS:960MPa以上の高強度を有し、さらにvE−40が40J以上の高靭性を有する、高強度高靭性の熱延鋼板および該高強度高靭性の熱延鋼板を安定して製造できる熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。なお、本発明は、板厚が3mm以上12mm未満程度の熱延鋼板を対象とする。
(1)質量%で、C:0.08〜0.25%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.8〜1.5%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.001〜0.05%、Ti:0.001〜0.05%、Mo:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%を含み、さらに、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、90体積%以上のマルテンサイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、圧延方向断面における旧オーステナイト粒の板厚方向の幅(バンド幅)が20μm以下である組織を有し、降伏強さYS:960MPa以上の高強度と、シャルピー衝撃試験の試験温度:−40℃における吸収エネルギーvE −40 が40J以上の高靭性を有することを特徴とする低温靭性の優れた高強度熱延鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.05%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高強度熱延鋼板。
(5)鋼素材に、該鋼素材を加熱する加熱工程と、該加熱された鋼素材を粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施す熱延工程と、冷却工程と、巻取工程を順次施し、熱延鋼板とする熱延鋼板の製造方法であって、前記鋼素材を、質量%で、C:0.08〜0.25%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.8〜1.5%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.001〜0.05%、Ti:0.001〜0.05%、Mo:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%を含み、さらに、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、前記加熱工程が、1100〜1250℃の温度に加熱する工程であり、前記熱延工程が、仕上圧延入側温度FETを900〜1100℃の範囲の温度とし、仕上圧延出側温度FDTを800〜900℃の範囲の温度とし、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率を0〜30%とする仕上圧延を施す工程であり、前記冷却工程が、熱間圧延終了後、5s以内に冷却を開始し、750〜500℃の温度範囲を、板厚中心部での冷却速度CRでマルテンサイト生成臨界冷却速度以上の冷却速度で、冷却開始から30s以内に(Ms点+50℃)以下の冷却停止温度まで冷却し、該冷却停止温度±100℃の温度範囲で10〜60s間保持する工程であり、前記巻取工程が、巻取温度を前記(冷却停止温度±100℃)の範囲の温度として、コイル状に巻き取る工程であり、90体積%以上のマルテンサイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、圧延方向断面における旧オーステナイト粒の板厚方向の幅(バンド幅)が20μm以下である組織を有し、降伏強さYS:960MPa以上の高強度と、シャルピー衝撃試験の試験温度:−40℃における吸収エネルギーvE −40 が40J以上の高靭性を有する熱延鋼板とすることを特徴とする低温靭性に優れる高強度熱延鋼板の製造方法。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
C:0.08〜0.25%
Cは、鋼の強度を上昇させる作用を有する元素であり、本発明では所望の高強度を確保するために、0.08%以上の含有を必要とする。一方、0.25%を超える過剰な含有は、溶接性を低下させるとともに、母材靭性を低下させる。このため、Cは0.08〜0.25%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.15〜0.20%である。
Siは、固溶強化、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する。このような効果は0.01%以上の含有で認められる。一方、Siの多量含有は、Cをγ相に濃化させ、γを安定化し、組織の複合化を促進し強度が低下するうえ、溶接部にSiを含む酸化物を形成し、溶接部品質を低下させる。このため、本発明では、Siの上限は1.0%とした。なお、組織の複合化を抑制する観点から、Siは0.8%以下とすることが好ましい。
Mnは、焼入性を向上させる作用を有し、焼入性向上を介し鋼板の強度を増加させる。また、Mnは、MnSを形成しSを固定することにより、Sの粒界偏析を防止してスラブ(鋼素材)割れを抑制する。このような効果を得るためには、0.8%以上の含有を必要とする。一方、1.5%を超える含有は、スラブ鋳造時の凝固偏析を助長し、鋼板にMn濃化部を残存させ、セパレーションの発生を増加させる。このMn濃化部を消失させるには、1300℃を超える温度に加熱する必要があり、このような熱処理を工業的規模で実施することは現実的でない。このため、Mnは0.8〜1.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.9〜1.4%である。また、遅れ破壊防止という観点からは、Mnは1.2%以下とすることがより好ましい。
Pは、鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、鋼の強度を上昇させる作用を有する。しかし、0.025%を超えて過剰に含有すると溶接性が低下する。このため、Pは0.025%以下に限定した。なお、好ましくは0.015%以下である。
S:0.005%以下
Sは、Pと同様に鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、0.005%を超えて過剰に含有すると、スラブ割れを生起させるとともに、熱延鋼板においては粗大なMnSを形成し、延性の低下を生じさせる。このため、Sは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.004%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.10%を超える含有は、溶接部の清浄性を著しく損なう。このため、Alは0.005〜0.10%に限定した。なお、好ましくは0.05%以下である。
Nb:0.001〜0.05%
Nbは、オーステナイト粒の粗大化、再結晶を抑制する作用を有する元素であり、熱間仕上圧延におけるオーステナイト未再結晶温度域圧延を可能にするとともに、炭窒化物として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.05%を超える過剰な含有は、熱間仕上圧延中の圧延荷重の増大をもたらし、熱間圧延が困難となる場合がある。このため、Nbは0.001〜0.05%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.04%である。
Tiは、窒化物を形成しNを固定しスラブ(鋼素材)割れを防止する作用を有するとともに、炭化物として微細析出することにより、鋼板を高強度化する。このような効果は、0.001%以上の含有で顕著となるが、0.05%を超える含有は析出強化により降伏点が著しく上昇し、靭性が低下する。また、Ti炭窒化物の溶体化には、1250℃超の高温加熱が必要となるため、オーステナイト粒の粗大化を招き、所望のバンド幅の調整が困難となる。このため、Tiは0.001〜0.05%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.035%である。
Moは、焼入性を向上させるとともに、炭窒化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果を得るためには0.1%以上含有する必要がある、一方、1.0%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Moは0.1〜1.0%に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.8%である。
Crは、焼入性を向上させ、鋼板強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える過剰の含有は、溶接性を低下させる。このため、Crは0.1〜1.0%に限定した。なお、好ましくは0.2〜0.8%である。
Bは、γ粒界に偏析し、少量の含有で焼入れ性を顕著に向上する作用を有し、所望の高強度を確保するために必須の元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0050%を超えて含有しても、効果が飽和するため、含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となる。このため、Bは0.0005〜0.0050%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0005〜0.0030%である。
V:0.001〜0.05%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上
V、Cu、Niはいずれも、鋼板の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Niは、鋼中に固溶して強度増加に寄与するとともに、靭性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.50%を超える多量のNi含有は、材料コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Niは0.01〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
Caは、SをCaSとして固定し、硫化物系介在物を球状化し、介在物の形態を制御する作用を有し、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくし、水素のトラップ能を低下させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上含有させることが望ましいが、0.005%を超えて含有すると、CaOの増加を招き、耐食性、靭性を低下させる。このため、Caは含有する場合には、0.0005〜0.005%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0005〜0.0030%である。
Nは、鋼中に不可避的に含有されるが、過剰の含有は、鋼素材(スラブ)鋳造時の割れを多発させる。このため、Nは0.005%以下に限定することが望ましい。なお、より好ましくは0.004%以下である。
Mgは、Caと同様に酸化物、硫化物を形成し、粗大なMnSの形成を抑制する作用を有するが、0.003%を超える含有は、Mg酸化物、Mg硫化物のクラスターを多発させ、靭性の低下を招く。このため、Mgは0.003%以下に限定することが望ましい。
本発明になる熱延鋼板は、上記した組成を有し、さらにマルテンサイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、圧延方向断面における旧オーステナイト粒の板厚方向の幅(バンド幅)が20μm以下である組織を有する。
本発明の好ましい製造方法では、鋼素材に、該鋼素材を加熱する加熱工程と、該加熱された鋼素材を粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施す熱延工程と、冷却工程と、巻取工程を順次施し、熱延鋼板とする。
まず、得られた鋼素材を加熱する加熱工程を施す。
加熱工程では、鋼素材を1100〜1250℃の温度に加熱する。加熱温度SRTが1100℃未満では、変形抵抗が高く圧延負荷が増大し圧延機への負荷が過大となりすぎる。一方、加熱温度が1250℃を超えて高温になると、結晶粒が粗大して低温靭性が低下するうえ、スケール生成量が増大し、歩留りが低下する。このため、鋼素材の加熱温度は1100〜1250℃とすることが好ましい。より好ましくは1240℃以下である。
また、仕上圧延は、上記した圧延温度条件でかつ、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率が0〜30%となる圧延とすることが好ましい。なお、本発明で使用する鋼素材では、未再結晶オーステナイト域は概ね950℃以下の温度域である。未再結晶オーステナイト域での累積圧下率が30%超では、バンド幅を所望の範囲に調整することができない。なお、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率は、好ましくは25%以下である。所望のバンド組織を形成する観点からは、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率が0%でもよい。また、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率が30%超では、曲げ特性が低下する。
冷却工程では、750〜500℃の温度範囲を、板厚中心部での冷却速度CRでマルテンサイト生成臨界冷却速度以上の冷却速度で、冷却開始から30s以内に(Ms点+50℃)以下の冷却停止温度まで冷却する。なお、冷却速度は750〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を用いるものとする。なお、仕上圧延スタンドを出てから、冷却開始までの時間は5s以内とすることが好ましい。熱間圧延終了から冷却開始までの時間が5sを超えると、マルテンサイト形成臨界時間を超えることになり、好ましくない。
冷却速度CRが、マルテンサイト生成臨界冷却速度未満では、マルテンサイト相および/または焼戻マルテンサイト相を主相とする所望の組織を確保できなくなる。なお、冷却速度の上限は、使用する冷却装置の能力に依存して決定されるが、反り等の鋼板形状の悪化を伴わない冷却速度とすることが好ましい。より好ましい冷却速度CRは、30〜100℃/sである。本発明で使用する鋼素材の組成範囲では、マルテンサイト生成臨界冷却速度は概ね22℃/s程度である。また、冷却停止温度が、(Ms点+50℃)超えの温度では、マルテンサイト相および/または焼戻マルテンサイト相を主相とする所望の組織を確保できなくなる。なお、好ましい冷却停止温度は(Ms点−180℃)〜(Ms点+30℃)である。また、冷却開始から冷却停止温度までの冷却時間が、30sを超えて長くなると、マルテンサイトを充分に進行させることができず、マルテンサイト相以外の第二相の組織分率が高くなり、所望の組織を確保できなくなる場合がある。
以下、さらに実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
なお、各鋼のMs点は、次のような方法で決定した値を用いた。各鋼(鋼板)から円柱状試験片を採取し、該試験片を1200℃に加熱し、300s間保持したのち、20℃/sの冷却速度で1000℃まで冷却し、該温度で1/sの歪速度で30%の圧下を加え、ついで1000℃で60s間保持する処理を行った。該処理後、引続き20℃/sの冷却速度で800℃まで冷却し、該温度で1/sの歪速度で50%の圧下を加え、ついで10〜50℃/sの冷却速度で150℃まで連続冷却した。連続冷却中の試験片の熱膨張変化を測定するとともに、冷却後、各試験片の組織観察、硬さ(ビッカース硬さ)測定を行い、熱膨張測定、組織観察、硬さ測定結果からMs点を決定した。得られた結果を表1に併記した。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向断面を研磨し、ナイタール液で腐食し、光学顕微鏡(倍率:500倍)で組織を観察した。観察位置は、鋼板表面から板厚の1/4の位置とした。また、各観察位置で各2視野以上観察し、撮像して、画像解析装置を用いてバンド幅を測定した。なお、バンド幅は、バンド境界(旧オーステナイト粒界)を明確にしたのち、板厚方向にその境界間の長さを測定し、各視野で平均値を求め、さらに各視野における値を平均し、その鋼板のバンド幅とした。また、走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて撮像し、画像解析装置を用い、組織の種類、各相の組織分率を測定した。また、走査型電子顕微鏡(倍率:10000倍)を用いて、ラス内に析出したセメンタイトの大きさについても測定した。各セメンタイト粒の面積を測定し、円相当直径に換算した。
得られた熱延鋼板の所定の位置(コイル長手方向端部で、幅方向1/4のコイルエンド部)から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるように、板状の試験片(平行部幅:25mm、標点間距離:50mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、室温で引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTS、伸びElを求めた。
得られた熱延鋼板の所定の位置(コイル長手方向端部で、幅方向1/4のコイルエンド部)の板厚中心部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−40℃での吸収エネルギーvE−40(J)を求めた。なお、試験片は3本とし、得られた吸収エネルギー値の算術平均をもとめ、その鋼板の吸収エネルギー値vE−40(J)とした。なお、板厚が10mm未満の鋼板については、10mmのフルサイズ試験片の場合の値に換算した。
得られた熱延鋼板の所定の位置から曲げ試験片(長辺側を圧延方向と直角方向とし、短辺側を板厚の5倍以上の大きさとする短柵状試験片)を採取し、180°曲げを実施し、割れの発生しない最少曲げ半径(mm)を求めた。最少曲げ半径/板厚が、4.0以下である場合を曲げ特性に優れたと評価した。
得られた熱延鋼板から、丸棒引張試験片(GL.=25mm)を採取し、陰極水素チャージをしたのち、電気亜鉛めっきを施し、鋼中に水素を封じ込めた試験片Aとした。このような処理を施さない試験片を試験片Bとし、これら試験片を歪速度:10×10-6/s(室温)で引張り、絞り値を求めた。得られた絞り値から絞り比(=(試験片Aの絞り値)/(試験片Bの絞り値))を求めた。絞り比が85%以上を耐遅れ破壊性に優れると評価した。
得られた結果を表3に示す。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.08〜0.25%、 Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.8〜1.5%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
Nb:0.001〜0.05%、 Ti:0.001〜0.05%、
Mo:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%
を含み、さらに、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、90体積%以上のマルテンサイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、圧延方向断面における旧オーステナイト粒の板厚方向の幅(バンド幅)が20μm以下である組織を有し、降伏強さYS:960MPa以上の高強度と、シャルピー衝撃試験の試験温度:−40℃における吸収エネルギーvE −40 が40J以上の高靭性を有することを特徴とする低温靭性の優れた高強度熱延鋼板。 - 前記組織が、前記マルテンサイト相または前記マルテンサイト相のラス内に平均粒径が0.5μm以下の微細セメンタイトを分散させた組織であることを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.05%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
- 鋼素材に、該鋼素材を加熱する加熱工程と、該加熱された鋼素材を粗圧延と仕上圧延とからなる熱間圧延を施す熱延工程と、冷却工程と、巻取工程を順次施し、熱延鋼板とする熱延鋼板の製造方法であって、
前記鋼素材を、質量%で、
C:0.08〜0.25%、 Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.8〜1.5%、 P:0.025%以下、
S:0.005%以下、 Al:0.005〜0.10%、
Nb:0.001〜0.05%、 Ti:0.001〜0.05%、
Mo:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%
を含み、さらに、B:0.0005〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
前記加熱工程が、1100〜1250℃の温度に加熱する工程であり、
前記熱延工程が、仕上圧延入側温度FETを900〜1100℃の範囲の温度とし、仕上圧延出側温度FDTを800〜900℃の範囲の温度とし、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率を0〜30%とする仕上圧延を施す工程であり、
前記冷却工程が、熱間圧延終了後、5s以内に冷却を開始し、750〜500℃の温度範囲を、板厚中心部での冷却速度CRでマルテンサイト生成臨界冷却速度以上の冷却速度で、冷却開始から30s以内に(Ms点+50℃)以下の冷却停止温度まで冷却し、該冷却停止温度±100℃の温度範囲で10〜60s間保持する工程であり、
前記巻取工程が、巻取温度を前記冷却停止温度±100℃の範囲の温度として、コイル状に巻き取る工程であり、
90体積%以上のマルテンサイト相または焼戻マルテンサイト相を主相とし、圧延方向断面における旧オーステナイト粒の板厚方向の幅(バンド幅)が20μm以下である組織を有し、降伏強さYS:960MPa以上の高強度と、シャルピー衝撃試験の試験温度:−40℃における吸収エネルギーvE −40 が40J以上の高靭性を有する熱延鋼板とすることを特徴とする低温靭性に優れる高強度熱延鋼板の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.05%、Cu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項5に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項5または6に記載の高強度熱延鋼板の製造方法。
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