JP2019199649A - 非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多段熱処理を行うことなく製造可能で、非調質で690MPa以上の引張強さと80%以下の降伏比とを兼ね備えた非調質低降伏比高張力厚鋼板を提供する。【解決手段】所定の成分からなり、N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比として定義されるTi/Nが、2.0以上、4.0以下である成分組成を有し、面積率で、島状マルテンサイト:15%以上、うち旧オーステナイト粒内に存在する島状マルテンサイト:4%以上、フェライト:0〜10%、を含み、残部がパーライト相、ベイナイト相、マルテンサイト相、またはそれらの混合相からなる、板厚1/4位置におけるミクロ組織を有し、引張強さが690MPa以上、降伏比が80%以下であり、板厚1/4位置における破面遷移温度が−25℃以下である、非調質低降伏比高張力厚鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、建築等の溶接構造物用として好適な非調質低降伏比高張力厚鋼板に関し、とくに、建築ボックス柱の施工に使用される、高い強度と塑性変形能力を有することにより耐震性に優れた非調質低降伏比高強度厚鋼板に関する。ここで、「非調質」とは、焼入れ焼戻しを行わずに製造した鋼板をいうものとする。
近年、建築鋼構造物などでは地震時の安全性確保の観点から、優れた耐震性を有する鋼板が要求されている。鋼板は降伏比YR(降伏強さYS/引張強さTS)が低いほど塑性変形能が高く耐震性に優れるため、建築構造物にはYRが80%以下の鋼板を使用することが義務付けられている。一方で最近では、構造物の大型化、高層化、大スパン化に伴い、従来より高い強度の鋼板が要求されるようになっている。
鋼板の強度を高めるためには、組織を硬質化する必要があるが、硬質化によりYRが高くなるため、上述の基準を満足できなくなるという課題があった。
このような問題に対し、例えば、特許文献1では、組織を軟質相であるフェライト主体の組織にすることで引張強さを590MPa以上とした、低降伏比非調質鋼板が提案されている。
また、特許文献2では、鋼板の製造過程で多段熱処理を施すことにより、引張強さ780MPa以上の低降伏比調質鋼板を製造する方法が提案されている。
特開2007−177325号公報 特開2007−177266号公報
しかし、特許文献1で提案されている低降伏比非調質鋼板は、軟質相であるフェライトを主体としているため、690MPa以上の引張強さを確保することができない。
また、特許文献2で提案されている方法では、高強度と低降伏比を両立するために多段熱処理を施す必要があるため、製造コストが増大する。
さらに、鉄骨が脆性破断に至るまでの変形能力は鋼材のシャルピー吸収エネルギーの影響を受ける。シャルピー吸収エネルギーは温度と共に減少する傾向が知られており、特に、破面遷移温度を下回ると、シャルピー吸収エネルギーが大きく低下する。したがって、破面遷移温度が低いことも同時に求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、多段熱処理を行うことなく製造可能で、非調質で690MPa以上の引張強さと80%以下の降伏比とを兼ね備え、かつ、破面遷移温度が−25℃以下である非調質低降伏比高張力厚鋼板を提供することを目的とする。また、本発明は、前記非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、鋭意検討し、以下の知見を得た。
(1)Ar3変態点以上で熱間圧延を終了した後に加速冷却を開始し、復熱後の鋼板表面温度がベイナイト変態開始温度(B点)以下、300℃以上となる温度で前記加速冷却を停止することにより、ベイナイトなどの硬質相を生成させると同時に、さらに硬質な島状マルテンサイト(Martensite-Austenite Constituent、MA)組織を旧オーステナイト粒内に多量に生成させることができる。
(2)MA中には可動転位が高密度に残留するため、MAを旧オーステナイト粒内に生成させることによってYRを下げることができる。厚鋼板の組織を、ベイナイトなどの硬質相とMAの2相組織とすることにより、非調質でも強度と低降伏比の両立を達成できる。
本発明は、上記知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
1.質量%で、
C :0.05〜0.10%、
Si:0.15〜0.40%、
Mn:0.6〜1.8%、
P :0.010%以下、
S :0.003%以下、
Al:0.05%以下、
N :0.0050%以下、
Ti:0.005〜0.020%、
Mo:0.15〜0.50%、
Nb:0.005〜0.030%、
Cr:0.05〜0.50%、および
V :0.005〜0.070%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比として定義されるTi/Nが、2.0以上、4.0以下である成分組成を有し、
面積率で、
島状マルテンサイト:15%以上、うち旧オーステナイト粒内に存在する島状マルテンサイト:4%以上、
フェライト:0〜10%、を含み、
残部がパーライト相、ベイナイト相、マルテンサイト相、またはそれらの混合相からなる、板厚1/4位置におけるミクロ組織を有し、
引張強さが690MPa以上、降伏比が80%以下であり、板厚1/4位置における破面遷移温度が−25℃以下である、非調質低降伏比高張力厚鋼板。
2.前記成分組成が、さらに質量%で、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜2.0%、および
B :0.0003〜0.0050%からなる群より選択される1または2以上を含有する、上記1に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
3.上記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1250℃の加熱温度に加熱し、
前記鋼素材を、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上、かつ、圧延終了温度が表面温度でAr3変態点以上の条件で熱間圧延して熱延鋼板とし、
前記熱延鋼板を、
表面温度で、Ar3変態点以上の冷却開始温度から300℃以上の冷却停止温度まで、
板厚の1/4位置における平均冷却速度8℃/s以上で加速冷却し、
前記加速冷却後の復熱温度をベイナイト変態開始温度以下とする、非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、多段熱処理を行うことなく製造可能で、非調質で690MPa以上の引張強さと80%以下の降伏比とを兼ね備え、かつ、破面遷移温度が−25℃以下である非調質低降伏比高張力厚鋼板を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、多段熱処理を行うことなく、前記非調質低降伏比高張力厚鋼板を製造することができる。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施形態を示すものであって、本発明はこれに限定されない。
[成分組成]
本発明の非調質低降伏比高張力厚鋼板(以下、単に「厚鋼板」という場合がある)、および前記厚鋼板の製造に用いる鋼素材は、上述した成分組成を有する必要がある。以下、前記成分組成に含まれる各成分について説明する。なお、特に断らない限り、各成分の含有量を表す「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.05〜0.10%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するのに有用な元素である。さらにCは、硬質相の体積率を増加させ、降伏比を低下させる作用を有する。前記効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。そのため、C含有量は0.05%以上、好ましくは0.06%以上とする。一方、0.10%を超える含有は、溶接性と靭性を顕著に低下させる。そのため、C含有量は0.10%以下、好ましくは0.09%以下とする。
Si:0.15〜0.40%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶し鋼材の強度を増加させる。前記効果を得るためには0.15%以上の含有を必要とする。そのため、Si含有量は、0.15%以上、好ましくは0.17%以上とする。一方、0.40%を超える含有は、母材の靱性を低下させるとともに、溶接熱影響部(HAZとも言う)靱性を顕著に低下させる。そのため、Si含有量は0.40%以下、好ましくは0.30%以下とする。
Mn:0.6〜1.8%
Mnは、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。また、Mnは他の合金元素に比べて安価である。したがって、他の高価な合金元素の含有を最小限に抑えることを目的の一つとする本発明では、所望の高強度(引張強さ690MPa以上)を確保するために、Mn含有量を0.6%以上、好ましくは0.8%以上とする。一方、1.8%を超える含有は、母材の靱性およびHAZ靱性を著しく低下させる。そのため、Mn含有量は1.8%以下、好ましくは1.6%以下とする。
P:0.010%以下
Pは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であるが、靱性、とくに溶接部の靱性を低下させる。したがって、P含有量はできるだけ低減することが望ましい。0.010%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、P含有量は0.010%以下とする。一方、P含有量は低ければ低いほど好ましいため、P含有量の下限は特に限定されない。しかし、過度の低減は精錬コストの上昇を招く場合がある。そのため、コスト低減という観点からは、P含有量を0.0005%以上とすることが好ましく、0.001%以上とすることがより好ましい。
S:0.003%以下
Sは、鋼中ではMnS等の硫化物系介在物として存在し、母材および溶接部の靱性を劣化させる。また、Sは、鋳片中央偏析部などに多量に偏在して鋳片等における欠陥を発生しやすくする。このような傾向は0.003%を超える含有で顕著となる。そのため、S含有量は0.003%以下とする。なお、S含有量の下限は特に限定されないが、過度のS低減は精錬コストを高騰させ、経済的に不利となるため、S含有量は0.001%程度以上とすることが好ましい。
Al:0.05%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいては、脱酸剤として、もっとも汎用的に使われる。しかし、0.05%を超える含有は、母材の靱性を低下させるとともに、溶接時に溶接金属に混入して溶接金属部靱性を低下させる。そのため、Al含有量は0.05%以下、好ましくは0.045%以下とする。一方、Al含有量の下限は特に限定されないが、Alの添加効果を高めるという観点からは、Al含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
N:0.0050%以下
Nが鋼中に固溶していると、冷間加工後に歪時効を起こし、靭性を劣化させる。そのため、N含有量はできるだけ低減することが望ましい。0.0050%を超えて含有すると、靭性の劣化が著しくなる。そのため、N含有量は0.0050%以下とする。一方、N含有量は低ければ低いほど好ましいため、N含有量の下限は特に限定されない。しかし、過度の低減は精錬コストの上昇を招く場合がある。そのため、コスト低減という観点からは、N含有量を0.0005%以上とすることが好ましく、0.0010%以上とすることがより好ましい。
Ti:0.005〜0.020%
Tiは、Nとの親和力が強い元素であり、凝固時にはTiNとして析出する。その結果、鋼中の固溶Nが減少するため、Nの歪時効による冷間加工後の靭性劣化が抑制される。また、析出したTiNは、HAZの組織を微細化して、HAZ靭性の向上にも寄与する。これらの効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。そのため、Ti含有量は0.005%以上、好ましくは0.007%以上とする。一方、0.020%を超えて含有すると、TiN粒子が粗大化し、上記した効果が期待できなくなる。そのため、Ti含有量は0.020%以下、好ましくは0.015%以下とする。
Mo:0.15〜0.50%
Moは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素である。TS:690MPa以上の鋼板を安定して製造するためには0.15%以上の含有を必要とする。そのため、Mo含有量は0.15%以上、好ましくは0.20%超とする。一方、0.50%を超えて添加すると溶接性や耐HIC性が劣化する。そのため、Mo含有量は0.50%以下、好ましくは0.40%以下とする。
Nb:0.005〜0.030%
Nbは、焼入れ性向上効果を有する元素である。前記効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。そのため、Nb含有量は0.005%以上、好ましくは0.010%以上とする。一方、0.030%を超えて添加すると、HAZ靭性および母材靭性が劣化する。そのため、Nb含有量は0.030%以下、好ましくは0.025%以下とする。
Cr:0.05〜0.50%
Crは、焼入性向上を介して母材の強度を増加させる効果を有し、厚鋼板の高強度化に有用な元素である。前記効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。そのため、Cr含有量は0.05%以上、好ましくは0.10%以上とする。一方、0.50%を超える含有は、合金コストの増加を招く。そのため、Cr含有量は0.50%以下、好ましくは0.40%以下とする。
V:0.005〜0.070%
Vは、析出強化によって、強度を増加させる効果を有する元素である。前記効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。そのため、V含有量は0.005%以上、好ましくは0.010%以上とする。一方、0.070%を超えて添加すると、HAZ靭性および母材靭性が劣化する。そのため、V含有量は0.070%以下、好ましくは0.060%以下とする。
本発明の一実施形態においては、以上の各元素を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成とすることができる。
また、本発明の他の実施形態においては、上記成分組成は、さらにCu、Ni、およびBからなる群より選択される1または2以上を、以下に述べる量で任意に含有することができる。
Cu:0.05〜1.0%
Cuは、固溶強化および焼入性向上により厚鋼板の強度を向上させる効果を有する元素である。前記効果を得るためには、0.05%以上含有することが好ましい。そのため、Cuを添加する場合、Cu含有量は0.05%以上、好ましくは0.10%以上とする。一方、1.0%を超える含有は合金コストの増加や熱間脆性による表面性状の劣化を招く。そのため、Cuを添加する場合、Cu含有量を1.0%以下、好ましくは0.50%以下とする。
Ni:0.05〜2.0%
Niは、靱性をほとんど劣化させることなく、鋼板の強度を増加させる効果を有する元素である。しかも、HAZ靱性への悪影響も小さいので、厚鋼板の高強度化にきわめて有用な元素である。前記効果を得るためには、0.05%以上含有することが望ましい。そのため、Niを添加する場合、Ni含有量を0.05%以上、好ましくは0.10%以上とする。一方、Niは高価な元素であるため、2.0%を超える含有は合金コストの増加を招く。そのため、Niを添加する場合、Ni含有量を2.0%以下、好ましくは1.0%以下とする。
B:0.0003〜0.0050%
Bは、焼入れ性の向上を介し、鋼の強度増加に寄与する元素である。前記効果を得るためには、0.0003%以上含有することが望ましい。そのため、Bを添加する場合、B含有量を0.0003%以上、好ましくは0.0006%以上とする。一方、0.0050%を超える含有は母材やHAZの靭性を劣化させる。そのため、Bを含有する場合、B含有量を0.0050%以下、好ましくは0.0030%以下とする。
Ti/N:2.0〜4.0
上記成分組成は、さらに、N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比として定義されるTi/Nが、2.0以上、4.0以下という条件を満たす必要がある。以下、その理由について説明する。
本発明の厚鋼板においては、N含有量に見合う量のTiを含有させることによって、固溶NをTiNとして固定する。そのためには、Ti/Nを2.0以上とする必要がある。Ti/Nが2.0未満では、Nに比べてTiが少なすぎ、多くのNが固溶Nとして残存する。そしてその結果、HAZ靭性が低下し、溶接部からの脆性破壊発生により部材変形性能が低下する。Ti/Nは、2.5以上とすることが好ましい。
一方、Ti/Nが4.0を超えると、TiN粒子が粗大化して、所望の効果を確保できなくなる。そのため、Ti/Nは4.0以下とする必要がある。Ti/Nは、3.5以下とすることが好ましい。
[ミクロ組織]
本発明の厚鋼板は、面積率で、島状マルテンサイト:15%以上、フェライト:0〜10%、を含み、残部がパーライト相、ベイナイト相、マルテンサイト相、またはそれらの混合相からなる、板厚1/4位置におけるミクロ組織を有する。以下、厚鋼板のミクロ組織を上記の範囲に限定する理由について説明する。
(島状マルテンサイト)
島状マルテンサイト(MA)は、YSよりもTSを顕著に向上させる組織であり、低YR化および高靭性化に寄与する、とりわけ重要な組織である。この効果を得るために、MAの面積率を15%以上とし、うち旧オーステナイト粒内に存在するMAの面積率を4%以上とする。MAの面積率は、20%超とすることが好ましい。一方、MAの面積率の上限は特に限定されないが、MAの面積率が過度に高くなると靭性が低下する場合がある。そのため、MAの面積率は30%以下とすることが好ましい。なお、ここで「旧オーステナイト粒内に存在するMAの面積率」とは、旧オーステナイト粒内に存在するMAの、組織全体に対する面積率を指すものとする。また、前記MAの面積率は、旧オーステナイト粒内に存在するMAを含む、全MAの面積率を指すものとする。
(フェライト)
フェライトは軟質相であるため、面積率が10%を超えると所望の強度を満足できない。そのため、フェライトの面積率を10%以下とする。一方、強度を向上させるという観点からは、フェライトの面積率は低ければ低いほど好ましいため、フェライト面積率の下限は0%とする。
(残部組織)
上記以外の残部組織は、強度確保の観点から、硬質相である下記(1)〜(4)のいずれかの相とする。
(1)パーライト相
(2)ベイナイト相
(3)マルテンサイト相
(4)上記(1)〜(3)より選択される2相または3相の混合相
なお、厚鋼板のミクロ組織とその面積率は、後述するように、厚鋼板の圧延方向に垂直な断面を、400倍の光学顕微鏡と2000倍の走査電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
[引張特性]
本発明の非調質低降伏比高張力厚鋼板は、以下に述べる引張特性を備える。なお、これらの特性は、実施例に記載した条件で引張試験を行うことで測定できる。
TS:690MPa以上
本発明の非調質低降伏比高張力厚鋼板は、690MPa以上の引張強さ(TS)を備える。一方、TSの上限については特に限定されないが、例えば、800MPa以下であってよく、780MPa以下であってもよい。
YR:80%以下
本発明の非調質低降伏比高張力厚鋼板は、80%以下の降伏比(YR)を備える。なお、ここで降伏比YR(%)は、(降伏強さYS/引張強さTS)×100(%)である。一方、YRの下限については特に限定されないが、例えば、70%以上であってよい。
vTrs:−25℃以下
本発明では、靭性の指標である破面遷移温度(vTrs)を−25℃以下とする。ここで、前記破面遷移温度は、板厚1/4位置における値とする。一方、破面遷移温度が低いほど靭性に優れるため、破面遷移温度の下限は特に限定されない。しかし、通常は、−45℃以上であってよい。なお、前記破面遷移温度は、シャルピー衝撃試験により測定することができ、具体的には、実施例に記載した方法で求めることができる。
[板厚]
本発明において、「厚鋼板」とは、板厚19mm以上の鋼板を指すものとする。なお、板厚の上限は特に限定されないが、50mm以下とすることが好ましい。
[製造方法]
次に、本発明の一実施形態における非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法について説明する。
本発明の厚鋼板は、上述した成分組成を有する鋼素材に対して、次の(1)〜(3)の処理を特定の条件で順次施すことで製造することができる。以下、各工程について説明する。
(1)加熱
(2)熱間圧延
(3)加速冷却
[鋼素材]
鋼素材としては、上記成分組成を有するものであれば任意のものを用いることができる。また、前記鋼素材は、特に限定されることなく、任意の方法で製造することができる。例えば、上記した成分組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉等を用いる常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で所定寸法の鋳片(鋼素材)とすることができる。なお、鋳片にさらに熱間圧延を施して所望の寸法形状とした鋼片を鋼素材として用いることもできる。また、造塊−分塊圧延法により製造した鋼片を鋼素材として用いることもできる。
[加熱]
加熱温度:1050〜1250℃
次に、前記鋼素材を加熱する(加熱工程)。前記加熱においては、鋼素材を1050〜1250℃以下の加熱温度に加熱する。前記加熱温度が1050℃未満では、焼入れ性が低下し、所望の強度を確保することができない。そのため、前記加熱温度は1050℃以上、好ましくは1080℃以上とする。一方、前記加熱温度が1250℃より高いと、結晶粒が粗大化し、靭性が劣化する。そのため、前記加熱温度は1250℃以下、好ましくは1150℃以下とする。
[熱間圧延]
次いで、加熱された前記鋼素材に熱間圧延を施して熱延鋼板とする(熱間圧延工程)。前記熱間圧延の条件について、以下、説明する。なお、以下の説明における温度は、特に断らない限り鋼板の表面温度を表すものとする。
950℃以下の温度域での累積圧下率:30%以上
ミクロ組織を適度に微細化するため、鋼板の表面温度が950℃以下の温度域で累積圧下率:30%以上の制御圧延を行う。前記温度域での累積圧下率が30%未満では、圧下量の不足により組織が微細化せず、また焼入性が増加しすぎて、所望の靭性を確保できなくなる。そのため、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率を30%以上とする。一方、前記累積圧下率の上限は特に限定されないが、50%以下とすることが好ましい。
圧延終了温度:Ar3変態点以上
Ar3変態点未満の温度で圧延を行うと、圧延中に粗大なフェライトが生成し、所望の高強度を確保できなくなる。そのため、圧延終了温度をAr3変態点以上とする。一方、前記圧延終了温度の上限は特に限定されないが、870℃以下とすることが好ましい。なお、Ar3変態点としては、下記(1)式を用いて算出した値を用いるものとする。
Ar3変態点(℃)=900−332C+6Si−77Mn−20Cu−50Ni−18Cr−68Mo…(1)
ここで、上記(1)式における元素記号(C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、およびMo)は、各元素の含有量(質量%)を指す。鋼中に含まれていない元素の含有量はゼロとする。
[加速冷却]
次いで、前記熱延鋼板を加速冷却する(加速冷却工程)。前記加速冷却においては、冷却開始温度、冷却停止温度および平均冷却速度を、以下の範囲とする。
冷却開始温度:Ar3変態点以上
加速冷却を開始する温度(冷却開始温度)がAr3変態点未満であると、粗大なフェライトが生成し、所望の高強度を確保できなくなる。そのため、加速冷却を開始する温度である冷却開始温度を、Ar3変態点以上とする。
冷却停止温度:300℃以上
加速冷却を停止する温度(冷却停止温度)が300℃未満であると、MAの面積率を所望の値とすることができず、所望の降伏比を得ることができない。そのため、冷却停止温度を300℃以上とする。
平均冷却速度:8℃/s以上
加速冷却における平均冷却速度が8℃/s未満では、フェライトが多量に生成してしまい、所望の強度を得ることができない。そのため、前記平均冷却速度は8℃/s以上とする。なお、前記平均冷却速度は、上記冷却開始温度から冷却停止温度までの温度域における、板厚1/4位置の温度での平均冷却速度を指すものとする。
上記加速冷却終了後は、特に限定されないが、通常は放冷(空冷)すればよい。前記放冷は、例えば、室温まで行うことができる。
[復熱]
復熱温度:BS点以下
加速冷却を停止した時点における鋼板の温度は、表面よりも内部において高い状態にある。そのため、加速冷却停止後、鋼板の表面温度は鋼板内部からの伝熱によって上昇する(復熱)。冷却停止後の復熱で表面温度がベイナイト変態開始温度(BS点)を超えると、フェライトが多量に生成してしまい、所望の引張強度を満足できない。そのため、上記加速冷却後の復熱温度をベイナイト変態開始温度(B点)以下とする。なお、ここで「復熱温度」とは、加速冷却を停止した後、復熱によって鋼板の表面温度が最も高くなった際の温度を指すものとする。
なお、BS点としては、下記(2)式を用いて算出した値を用いるものとする。
S(℃)=830−270C−90Mn−37Ni−70Cr−83Mo…(2)
ここで、上記(2)式における元素記号(C、Mn、Ni、Cr、およびMo)は、各元素の含有量(質量%)を指す。鋼中に含まれていない元素の含有量はゼロとする。
なお、上記した加速冷却および復熱の後、強度および靭性の調整を目的として、任意に、焼戻を施してもよい。前記焼戻は、400℃以上700℃以下の焼戻温度で行うことが好ましい。焼戻温度が400℃未満では、所望の効果を期待できない。一方、700℃を超える焼戻温度では、強度低下が著しくなる。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。
表1に示す成分組成を有する鋼素材に対し、表2に示す条件での加熱、熱間圧延、および加速冷却を順次施して、表2に示した板厚を有する非調質厚鋼板を製造した。なお、表2に示した累積圧下率は表面温度950℃以下の温度域での累積圧下率である。また、表2に示した冷却開始温度および冷却停止温度は表面温度、平均冷却速度は、板厚の1/4位置における平均冷却速度である。
得られた厚鋼板から試験片を採取し、組織観察、引張試験、および衝撃試験を実施した。得られた結果を表3に示す。なお、試験方法は次のとおりとした。
(1)組織観察
板厚全厚の組織観察用試験片の圧延方向に平行な断面を鏡面に研磨し、ナイタール液でエッチング後にピクリン酸ソーダ液中で電解エッチングを行う2段エッチング法を用いてMAを現出させた。その後、前記断面における板厚1/4位置を光学顕微鏡(倍率:400倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて観察した。前記観察では、3視野以上でミクロ組織を撮像し、画像解析により、組織の種類および島状マルテンサイトの面積率および旧オーステナイト(旧γ)粒内に存在する島状マルテンサイトの面積率を求めた。
(2)引張試験
引張方向が圧延方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠して、JIS5号全厚引張試験片を採取した。得られた試験片を用いて、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。また、得られた測定値から、降伏比YR(=YS/TS×100%)を算出した。
(3)衝撃試験
板厚1/4位置から、JIS Z 2242に準拠して、Vノッチ衝撃試験片を採取した。得られた試験片を用いてシャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。なお、vTrsが、−25℃以下である場合を靭性に優れるとした。
本発明の条件を満たす非調質低降伏比高張力厚鋼板は、いずれも引張り強さ:690MPa以上、降伏比:80%以下、破面遷移温度:−25℃以下であり、高強度、低降伏比であるとともに、靭性にも優れていた。一方、本発明の条件を満たさない厚鋼板は、強度、降伏比、および靭性のうち、少なくとも1つの特性が劣っていた。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.05〜0.10%、
    Si:0.15〜0.40%、
    Mn:0.6〜1.8%、
    P :0.010%以下、
    S :0.003%以下、
    Al:0.05%以下、
    N :0.0050%以下、
    Ti:0.005〜0.020%、
    Mo:0.15〜0.50%、
    Nb:0.005〜0.030%、
    Cr:0.05〜0.50%、および
    V :0.005〜0.070%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
    N含有量(質量%)に対するTi含有量(質量%)の比として定義されるTi/Nが、2.0以上、4.0以下である成分組成を有し、
    面積率で、
    島状マルテンサイト:15%以上、うち旧オーステナイト粒内に存在する島状マルテンサイト:4%以上、
    フェライト:0〜10%、を含み、
    残部がパーライト相、ベイナイト相、マルテンサイト相、またはそれらの混合相からなる、板厚1/4位置におけるミクロ組織を有し、
    引張強さが690MPa以上、降伏比が80%以下であり、板厚1/4位置における破面遷移温度が−25℃以下である、非調質低降伏比高張力厚鋼板。
  2. 前記成分組成が、さらに質量%で、
    Cu:0.05〜1.0%、
    Ni:0.05〜2.0%、および
    B :0.0003〜0.0050%からなる群より選択される1または2以上を含有する、請求項1に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、1050〜1250℃の加熱温度に加熱し、
    前記鋼素材を、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上、かつ、圧延終了温度が表面温度でAr3変態点以上の条件で熱間圧延して熱延鋼板とし、
    前記熱延鋼板を、
    表面温度で、Ar3変態点以上の冷却開始温度から300℃以上の冷却停止温度まで、
    板厚の1/4位置における平均冷却速度8℃/s以上で加速冷却し、
    前記加速冷却後の復熱温度をベイナイト変態開始温度以下とする、非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
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