JP6146429B2 - 調質高張力厚鋼板及びその製造方法 - Google Patents

調質高張力厚鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、曲げ加工性および靭性に優れた調質高張力厚鋼板及びその製造方法に関するものである。
建築、橋梁、貯蔵タンク、圧力容器などの鉄鋼構造物の製造に用いられる鋼板は、強度と靭性が優れていることはもちろん、成形時の加工性に優れていることが要求される。一般的に、鋼板の強度が上がるほど曲げ加工性は悪くなる。
そこで、強度と加工性を両立するために、鋼板表層部のみ軟化させる方法が提案されている。
例えば、特許文献1、特許文献2では圧延後に加速冷却し、その後に誘導加熱することにより、表層のみ軟化させる方法が提案されている。しかし、特許文献1、特許文献2の技術では、既存の設備に加え、新たな加熱設備が必要となり、鋼板の製造コストが高くなる。
また、鋼板表層部のみ軟化させ、鋼板内部の強度を確保する方法である、特許文献3に記載の技術は、圧延中に加速冷却を行い、その際に加速冷却を複数に分け、かつ所定の温度域で圧延を行う工程を含むことを特徴としている。しかし、特許文献3に記載の技術では、冷却中、もしくは直後でも圧延を行うには新たな冷却装置が必要である。また、加速冷却は温度制御が難しいため、特許文献3で提案されている圧延や冷却条件を満たし安定的に鋼板を製造することは難しく、歩留まりが悪い。
特開2011−195961号公報 特開2005−298963号公報 特開平9−165652号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、強度と加工性を両立するために、鋼板表層部のみ軟化させ、鋼板内部の強度を確保する方法において、新たな設備を使用しない場合であっても、強度と加工性を両立させた調質高張力厚鋼板を安定して製造できる技術を提供することにある。
通常、熱間圧延を施してなる厚鋼板を、所定の温度T℃以上まで加熱して焼ならしを行う際に、厚鋼板全体がT℃以上になってから厚鋼板を加熱炉から取り出す。しかし、この方法で厚鋼板の表層を軟化させようとすると、厚鋼板内部まで粗大なフェライトが生成し、鋼板全体の強度が下がってしまう。
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
焼ならし処理において、昇温途中で加熱炉から厚鋼板を取り出すことによって、厚鋼板の表層と内部で温度差をつけることができる。これを利用すれば、表層に粗大なフェライトを形成させ、内部は微細なフェライトを形成させることができる。微細なフェライトは粗大なフェライトよりも結晶粒の細粒化効果により強度が高いため、鋼板全体の強度を保ちつつ、表層の強度を下げて曲げ加工性を高めることができる。
また、加熱炉の温度を高くするほど、昇温過程で鋼板表層と鋼板内部の温度差が大きくなる。
本発明は以上の知見に基づいて完成されたものであり、具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1)質量%で、C:0.04〜0.30%、Si:0.50%以下、Mn:2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.006%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060%以下、Ti:0.005〜0.30%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、板厚方向に厚鋼板表面からtmm(t=(厚鋼板板厚t)×0.1)までの領域である厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が30μm以上であり、板厚中央位置から板厚方向に±2mmの領域である厚鋼板中央部の平均フェライト粒径が15μm以下であり、さらに、前記厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が前記厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00〜5.00倍であることを特徴とする、調質高張力厚鋼板。
(2)さらに質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の調質高張力厚鋼板。
(3)(1)又は(2)に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1000〜1250℃の温度に加熱し、圧延仕上温度を800℃以上とする熱間圧延を施す熱延工程と、前記熱延工程後の厚鋼板に焼きならし処理を施す焼ならし工程と、を備え、前記焼きならし工程では、厚鋼板を加熱炉から取り出すときの、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度(T)、板厚方向の厚鋼板中心温度(T)が、下記(式1)〜(式4)を満たすことを特徴とする、板厚方向に厚鋼板表面からtmm(t=(厚鋼板板厚t)×0.1)までの領域である厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が30μm以上であり、板厚中央位置から板厚方向に±2mmの領域である厚鋼板中央部の平均フェライト粒径が15μm以下であり、さらに、前記厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が前記厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00〜5.00倍である調質高張力厚鋼板の製造方法。
c3+30≦T(℃)≦Ac3+120 (式1)
(℃/min)≧−0.0036×t+0.54 (式2)
c3≦T(℃)≦Ac3+20 (式3)
−T≧30(℃) (式4)
ただし、Ac3=937−476.5C+56Si−19.7Mn+136.3Ti+198.4Alであり(元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。)、
は、厚鋼板の表面温度がTになる5分前の、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度をTs−5としたときに、V=(T−Ts−5)/5で表され、
tは、前記焼きならし処理を施される厚鋼板の厚みである。
なお、本発明の鋼板の製造方法は、焼ならし工程において鋼板の表層と板厚中央に温度差を設けるものであるため、ある程度、厚い鋼板でなければ適用は難しい。このため本発明の製造方法は10mm〜80mmの板厚の鋼板に好適に適用できる。
本発明の調質高張力厚鋼板は、強度及び曲げ加工性に優れ、安定して製造可能である。
また、本発明の調質高張力厚鋼板を製造する際には既設の加熱炉を使用することができ、従来技術のように新たな設備を使用する必要はない。なお、本発明の鋼板はとりわけ引張強度550MPa以上を有するものとした。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
成分組成
本発明の調質高張力厚鋼板は、質量%で、C:0.04〜0.30%、Si:0.50%以下、Mn:2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.006%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060%以下、Ti:0.005〜0.30%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。また、本発明の調質高張力厚鋼板は、任意成分として、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含んでもよい。以下、各成分について説明する。なお、成分組成の説明における「%」は「質量%」を意味する。
C:0.04〜0.30%
Cは、鋼の強度を増加させ、鉄鋼構造物に必要な強度を付与するのに有用な元素である。「鉄鋼構造物に必要な強度」とは、用途によって異なるが、本明細書では、調質高張力厚鋼板の引張強度(TS)が550MPa以上であることを意味する。このような効果を得るためには、Cの含有量を0.04%以上とする必要がある。好ましくは、0.10%以上である。一方、Cの含有量が0.30%を超えると、鋼の溶接性と靭性が顕著に低下する。このため、Cの含有量は0.30%以下とする。好ましくは、0.20%以下である。
Si:0.50%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶し鋼の強度を増加させる。これらの効果を得るためには、Siの含有量は0.01%以上であることが好ましい。より好ましくは0.10%以上である。一方、Siの含有量が0.50%を超えると、鋼の靱性が低下する。このため、Siの含有量は0.50%以下の範囲に限定した。好ましくは0.40%以下である。
Mn:2.0%以下
Mnは、固溶して鋼の強度を増加させる元素である。また、鋼中のSと化合してMnSを形成しSによる靭性低下を防止する。これらの効果を得るためにはMnの含有量を0.4%以上にすることが好ましい。より好ましくは1.0%以上である。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、溶接後の母材の靱性および溶接熱影響部(HAZ)の靱性が著しく低下する。このため、Mnの含有量は2.0%以下に限定した。好ましくは1.8%以下である。
P:0.020%以下
Pは靱性、特に溶接部の靱性を低下させる元素であり、本発明ではP含有量をできるだけ低減することが望ましく、Pを含まなくてもよいものの、Pの含有量の過度の低減は、精錬コストを高騰させ経済的に不利となる。このため、厚鋼板の製造コストを抑える観点からPの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。一方、Pの含有量が0.020%を超えると、上記した悪影響が顕著となるため、Pの含有量は0.020%以下に限定した。好ましくは0.016%以下である。
S:0.006%以下
Sは、鋼中ではMnS等の硫化物系介在物として存在し、オーステナイト(γ)からフェライト(α)への変態の核となり、溶接部の靭性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、Sの含有量を0.0010%以上とすることが好ましい。一方、Sの含有量が0.006%を超えると、鋼の中央偏析部などに多量のMnSが生成し、靭性は低下する。また、0.006%を超えるSの含有は、鋳片等における欠陥を発生させやすくする。そこで、Sの含有量は0.006%以下とする。このため、Sの含有量は0.0010〜0.006%の範囲にすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0010〜0.0025%である。
Al:0.05%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素である。高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいては、脱酸剤として、Alが最も汎用的に使われる。このような効果を得るためには、Alの含有量を0.01%以上とすることが好ましい。また、Alの含有量が0.05%を超えると、溶接後のHAZ靱性が低下するとともに、溶接時に溶接金属にAlが混入して溶接金属の靱性も低下する。このため、Alの含有量は0.05%以下に限定した。好ましくは0.04%以下である。
N:0.0060%以下
Nは、鋼中に固溶している場合には、冷間加工後に歪時効を起こし靭性を劣化させる。このため、Tiなどの窒化物形成元素を添加して窒化物として固定することにより、固溶窒素は可能な限り低減することが好ましい。TiNなどの窒化物は、粒界をピンニングして結晶粒の粗大化を防止し、あるいは、フェライト変態核として作用し、HAZ靭性の向上に寄与する。このため、Nは0.0010%以上とすることが好ましい。一方、Nの含有量が0.0060%を超えると、Tiなどの窒化物形成元素により窒化物として固定しても、窒化物が粗大になり、靭性の劣化が著しくなる。このため、Nの含有量は0.0060%以下に限定した。好ましくは0.0050%以下である。
Ti:0.005〜0.30%
Tiは、Nとの親和力が強い元素であり、凝固時にTiNとして析出し、鋼中の固溶Nを減少させ、冷間加工後のNの歪時効による靭性劣化を低減する作用を有する。また、Tiは、HAZの組織改善を介して、HAZ靭性の向上にも寄与する。このような効果を得るためには、Tiの含有量を0.005%以上とする。一方、Tiの含有量が0.30%を超えると、TiN粒子が粗大化し、上記した効果が期待できなくなる。このため、Tiの含有量は0.005〜0.30%の範囲に限定した。
上記した成分が基本の成分であるが、これら基本成分に加えて、必要に応じて、選択元素として、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有できる。
Ca、Mg、REMはいずれも、硫化物の形態制御を介して、鋼の延性向上、溶接後の母材の靭性向上に寄与する。また、これらの元素を含み、微細な硫化物粒子が鋼中に分散した場合、分散した硫化物粒子がフェライト変態核として作用することによってHAZ靱性が向上する。これらの効果を得るためには、Caであればその含有量が0.0005%以上であることが好ましく、REMであればその含有量が0.0010%以上であることが好ましく、Mgであればその含有量が0.0010%以上であることが好ましい。また、Ca、Mg、REMのそれぞれの含有量が0.0050%を超えると、過剰な介在物が生成し、靱性が低下する。したがって、Ca、Mg、REMの含有量は上記範囲にあることが好ましい。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、例えば、O:0.005%以下が許容できる。
鋼組織
次いで、本発明の調質高張力鋼板の鋼組織について説明する。本発明の調質高張力厚鋼板においては、板厚方向に厚鋼板表面からtmm(t=(厚鋼板板厚t)×0.1)までの領域である厚鋼板表層部と、板厚中央位置から板厚方向に±2mmの領域である厚鋼板中央部が、以下の特徴を有する。
なお、厚鋼板表層部と厚鋼板中央部との間の領域がある場合、当該領域の鋼組織は、厚鋼板表層部と同様の鋼組織、厚鋼板中央部と同様の鋼組織、これら以外の鋼組織のいずれでもよい。「これら以外の鋼組織」とは、例えば、平均フェライト粒径が、厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00倍未満の鋼組織である場合が例示できる。
本発明の調質高張力厚鋼板において、厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が30μm以上であり、厚鋼板中央部の平均フェライト粒径が15μm以下である。厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が30μm未満になると、表層軟化の効果が小さく十分な曲げ加工性が得られない。また、厚鋼板中央部の平均フェライト粒径が15μmを超えると、細粒化強化が少なく鋼板全体の強度が低下してしまう。さらに、厚鋼板表層部の平均フェライト粒径は、厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00〜5.00倍である。厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00倍未満になると、厚鋼板表層部と厚鋼板中央部との強度差が小さく、十分な曲げ加工性と鋼板全体の強度を両立できない。また、5.00倍を超えると、表層が軟化し過ぎてしまい、鋼板全体の強度が低下してしまう。なお、組織中にフェライトが含まれない場合には、フェライト粒径が便宜的に0であるとして、厚鋼板中央部の平均フェライト粒径と厚鋼板表層部の平均フェライト粒径の比を求めるものとする。
また、本発明の効果をより高いものとするためには、厚鋼板表層部の平均フェライト粒径は40〜70μmであることが好ましく、厚鋼板中央部の平均フェライト粒径は3〜15μmであることが好ましい。
本発明の厚鋼板表層部にはフェライト相が含まれる。厚鋼板表層部におけるフェライト相の含有量は面積率で40〜90%であることが好ましい。より好ましくは50〜80%である。また、鋼板の引張強度を550MPa以上とするため、厚鋼板表層部にはフェライト相以外に、パーライト、ベイナイト相を含むことが好ましい。パーライト、ベイナイト相はフェライト相よりも硬質であり、引張強度の向上に寄与する。パーライト、ベイナイト相の含有量(面積率)は合計で10〜60%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%である。
また、本発明の厚鋼板中央部にはフェライト相が含まれる。厚鋼板中央部におけるフェライト相の含有量は面積率で40〜90%であることが好ましい。より好ましくは50〜80%である。また、鋼板の引張強度を550MPa以上とするため、厚鋼板中央部にはフェライト相以外に、パーライト、ベイナイト相を含むことが好ましい。パーライト、ベイナイト相の含有量(面積率)は合計で10〜60%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%である。
調質高張力厚鋼板の製造方法
次いで、本発明の調質高張力厚鋼板の製造方法について説明する。本発明の調質高張力厚鋼板は以下の方法で製造されることが好ましい。
好ましい製造方法は、上記成分組成を有する鋼スラブを加熱し、熱間圧延を施す熱延工程と、熱延工程後の厚鋼板に焼きならし処理を施す焼ならし工程と、を備える。
一般的に、焼ならしとは、Ac3以上の温度に加熱してフェライト相からオーステナイト相に変態させ、その後、空冷して、再度、オーステナイト相からフェライト相に変態させることにより、組織の微細化、均一化をはかるための熱処理である。
熱間圧延工程は、上記鋼スラブを1000〜1250℃の温度に加熱し、圧延仕上温度を800℃以上とする熱間圧延を施す工程である。
上記鋼スラブの加熱温度が1000℃未満では得られる調質高張力厚鋼板の強度が低下する場合があり、一方、1250℃を超えると、組織が粗大化して、調質高張力厚鋼板の靱性が低下したり、その後の熱間圧延、焼きならし工程を経ても、所望のフェライト粒径が得られなくなったりする場合がある。このため、鋼スラブの加熱温度は1000℃〜1250℃の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは1080℃〜1150℃である。
また、熱間圧延における圧延仕上温度が800℃未満であると、圧延能率が低下する。よって、圧延仕上温度は800℃以上とする。
焼ならし工程とは、上記熱延工程で得られた厚鋼板に焼ならし処理を施す工程である。本発明の焼ならし工程は、熱延工程後、厚鋼板をフェライト変態が完了する400℃程度以下まで一旦、冷却し、その後、加熱炉で加熱し、その後、厚鋼板を加熱炉から取り出し空冷する方法で行われることが好ましく、以下この方法について説明する。なお、加熱炉とは、通常の熱処理のための炉であり、本発明の調質高張力厚鋼板を製造するために必要な新たな設備ではない。このように、既存設備を利用できる点が本発明の特徴の一つである。
本発明の調質高張力厚鋼板の製造においては、上記焼きならし工程で、厚鋼板を加熱炉から取り出すタイミングが重要である。具体的には、厚鋼板を加熱炉から取り出すときの、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度(T)、板厚方向の厚鋼板中心温度(T)が、下記(式1)〜(式4)を満たす。
c3+30≦T(℃)≦Ac3+120 (式1)
(℃/min)≧−0.0036×t+0.54 (式2)
c3≦T(℃)≦Ac3+20 (式3)
−T≧30(℃) (式4)
ただし、Ac3=937−476.5C+56Si−19.7Mn+136.3Ti+198.4Alであり(元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。)、
は、厚鋼板表面温度(T)の5分前の、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度をTs−5としたときに、V=(T−Ts−5)/5で表され、
tは、前記焼きならし処理を施される厚鋼板の厚みである。
式1において、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度TをAc3+30℃以上とするのは以下の理由による。厚鋼板表面温度TがAc3+30℃未満では、厚鋼板表層部におけるオーステナイト結晶粒が成長しない。その結果、焼きならし後の冷却においてオーステナイトから変態して生ずるフェライト結晶粒も小さく、厚鋼板表面の平均フェライト粒径を30μm以上とすることができない。このため、厚鋼板表面温度TをAc3+30℃以上とする。好ましくはAc3+40℃以上である。
また、式1においてTがAc3+120(℃)を超えると、粗大なオーステナイトが形成されるため、オーステナイトから変態して生ずるフェライトが粗大になり、厚鋼板表層部における平均フェライト粒径が厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の5.00倍を超えてしまい、鋼板強度が低下する。そこで、TはAc3+120(℃)以下とした。
式3について、加熱条件から伝熱計算で算出した、板厚方向の厚鋼板中心温度T(℃)が、Ac3以上Ac3+20(℃)以下であれば、鋼板内部のフェライトをより細粒にして、調質高張力厚鋼板に十分な強度を持たせることができる。Ac3以上に加熱することでフェライトを一旦、オーステナイトに変態させ、その後の冷却において再度、フェライトに変態させることで、微細なフェライト粒からなる組織とすることができる。一方、板厚方向の厚鋼板中心温度T(℃)が、Ac3+20(℃)を超えると、オーステナイト粒が成長するため、その後の冷却において、オーステナイトから、再度フェライトに変態させても、フェライト結晶粒は大きくなり、所望の組織が得られなくなる。フェライトをより細粒にする観点からは厚鋼板中心温度T(℃)は、Ac3以上であれば、低いほど好ましいが、Ac3未満になると、焼きならしによる結晶粒の調整ができなくなるため、Ac3+10(℃)を目標として温度制御することが好ましい。
式4に示すように、厚鋼板表面温度と厚鋼板中心温度の温度差は30℃以上とする。厚鋼板表層と厚鋼板中央の温度差が30℃未満であると、鋼板表層と厚鋼板中央のフェライト結晶粒径の差が小さく、鋼板表層の平均フェライト粒径を、厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00倍以上とすることができない。このため、厚鋼板表面温度と厚鋼板中心温度の温度差は30℃以上とする。
式2について、V(℃/min)を−0.0036×t+0.54以上とするのは以下の理由による。通常の焼きならしは、厚鋼板全体が加熱炉の温度に達してから、厚鋼板を加熱炉内で5分程度保持して取り出す。このため、通常の焼ならしでは、Tに達する5分前の温度をTs−5℃とすると、(T−Ts−5)/5は0となる。しかし、本工程では、加熱炉から厚鋼板を取り出すときに、厚鋼板表層と厚鋼板内部に温度差を持たせる必要があるため、昇温途中で加熱炉から厚鋼板を取り出す。厚鋼板中心温度、厚鋼板表面温度が前記、式1、式3、式4を満足するように、昇温途中で厚鋼板を加熱炉から取り出すタイミングを、加熱炉の温度がAc3+30〜Ac3+200℃、厚鋼板の板厚tが15mm〜60mmの条件で、伝熱計算により検討したところ、V(℃/min)を−0.0036×t+0.54以上にすれば、厚鋼板表層と厚鋼板内部の温度差が、30℃以上となることが確認された。
上記のようなタイミングで厚鋼板を加熱炉から取り出すことで、本発明の調質高張力厚鋼板が得られる。
なお、加熱炉から取り出した後は、空冷により厚鋼板を冷却する。このとき、厚鋼板の冷却速度を鋼厚鋼板中心温度で0.3℃/s以上1.0℃/s以下とすることが好ましい。冷却速度は800℃から500℃までの平均冷却速度である。この冷却速度で冷却することにより、フェライト相に加えて、パーライトとベイナイト相の含有量(面積率)が合計で10〜60%である組織を得ることができる。
表1に示す成分組成を有する鋼スラブ(厚み250mm)を、加熱し、その後、熱間圧延した。熱間圧延により得られた厚鋼板を、一旦、300℃以下まで冷却し、その後、加熱して焼ならし処理をした。具体的な製造条件は表2に示した。
なお、表2に示す条件のうち「鋼板取出時表面温度」は、厚鋼板を加熱炉から取り出すときの、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度(T)である。また、「鋼板取出時中心温度」は、厚鋼板を加熱炉から取り出すときの、加熱条件から伝熱計算で算出した、板厚方向の厚鋼板中心温度である。
以上のように製造した厚鋼板について以下の評価を行った。
[組織観察]
鋼板の組織は、圧延方向に垂直な断面のサンプルを採取し、断面を鏡面まで研磨後、硝酸メタノール溶液で腐食し、鋼板表面から板厚方向にtmm(t=(厚鋼板板厚t)×0.1)まで、および板厚中央部から板厚方向に±2mmの範囲を光学顕微鏡により400倍で当該範囲を、画面が連続した複数枚で写真撮影し、写真より当該範囲の相を同定し、各相の面積分率を決定した。主な相の含有量を表3に示した。また、上記で撮影した写真より、フェライト粒数n個、フェライトの面積A(mm)を求め、厚鋼板表層部、厚鋼板中央部のフェライト相の平均フェライト粒径D(mm)を、下記式5により導出した。測定結果を表3に示した。
D=1/(n/A)−1/2 (式5)
[引張り特性]
圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験をおこない、降伏応力(YS)、引張強度(TS)を測定した。測定結果を表3に示した。引張強度(TS)が550MPa以上を良好と評価できる。
[曲げ加工性]
JIS Z2248(2006年)に基づき、鋼材サンプル(幅100mm×長さ300mm×鋼板の元厚のまま;tmm)を用いて、曲げ半径R=板厚(t)の条件で押曲げ法による180度曲げ試験を行った。曲げ試験後のサンプルに裂け傷やその他の欠陥が無ければ、曲げ加工性が良好であるとした。
[母材靭性]
各鋼板の板厚1/2位置の圧延方向と垂直な方向から、JIS Z 2202(1998年)の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242(1998年)の規定に準拠して各鋼板について各温度3本のシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度0℃での吸収エネルギーを求め、母材靭性を評価した。試験温度−40℃での吸収エネルギー(vE−40と言う場合がある)の3本の平均値が200J以上を母材靭性に優れるものとした。
表4に示す通り、本発明の調質高張力厚鋼板は、十分な引張特性、加工性、母材靭性を有する。
Figure 0006146429
Figure 0006146429
Figure 0006146429

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.04〜0.30%
    Si:0.28〜0.50%
    Mn:2.0%以下
    P:0.020%以下
    S:0.006%以下
    Al:0.05%以下
    N:0.0060%以下
    Ti:0.005〜0.30%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    板厚方向に厚鋼板表面からtmm(t=(厚鋼板板厚t)×0.1)までの領域である厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が30μm以上であり、板厚中央位置から板厚方向に±2mmの領域である厚鋼板中央部の平均フェライト粒径が15μm以下であり、さらに、前記厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が前記厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00〜5.00倍であることを特徴とする、調質高張力厚鋼板。
  2. さらに質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%、Mg:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の、調質高張力厚鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1000〜1250℃の温度に加熱し、圧延仕上温度を800℃以上とする熱間圧延を施す熱延工程と、
    前記熱延工程後の厚鋼板に、該厚鋼板をフェライト変態が完了するまで冷却し、その後、加熱炉で加熱して焼きならし処理を行う焼ならし工程と、を備え、
    前記焼きならし工程では、厚鋼板を加熱炉から取り出すときの、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度(T)、板厚方向の厚鋼板中心温度(T)が、下記(式1)〜(式4)を満たすことを特徴とする、板厚方向に厚鋼板表面からtmm(t=(厚鋼板板厚t)×0.1)までの領域である厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が30μm以上であり、板厚中央位置から板厚方向に±2mmの領域である厚鋼板中央部の平均フェライト粒径が15μm以下であり、さらに、前記厚鋼板表層部の平均フェライト粒径が前記厚鋼板中央部の平均フェライト粒径の2.00〜5.00倍である調質高張力厚鋼板の製造方法。
    c3+30≦T(℃)≦Ac3+120 (式1)
    (℃/min)≧−0.0036×t+0.54 (式2)
    c3≦T(℃)≦Ac3+20 (式3)
    −T≧30(℃) (式4)
    ただし、Ac3=937−476.5C+56Si−19.7Mn+136.3Ti+198.4Alであり(元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。)、
    は、厚鋼板の表面温度が前記Tになる5分前の、加熱条件から伝熱計算で算出した厚鋼板表面温度をTs−5としたときに、V=(T−Ts−5)/5で表され、
    tは、前記焼きならし処理を施される厚鋼板の厚みである。
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