JP5028760B2 - 高張力鋼板の製造方法および高張力鋼板 - Google Patents

高張力鋼板の製造方法および高張力鋼板 Download PDF

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Description

この発明は、応力除去焼鈍処理(以下、PWHT:post welded heat treatmentという)がなされる高張力鋼板の製造方法および高張力鋼板に関し、特に、焼入れ・焼戻し材の焼戻し処理時における板厚中心部の昇温速度を規定することによって、従来材よりもPWHT前とPWHT後の強度・靭性バランスに優れる高張力鋼板の製造方法およびこの方法により製造された高張力鋼板に関するものである。
タンク・ペンストック等に用いられる高張力鋼板は、構造物作製時に施される溶接処理後にPWHTを実施することによって、残留応力の緩和・溶接硬化部の軟化・水素逸散等を行い、構造物の変形や脆性破壊の発生の防止が図られる場合が多い。
近年、タンク・ペンストック等の鋼構造物の大型化が指向され、鋼材の高強度化・厚肉化のニーズが高揚している。しかし、鋼材を高強度化・厚肉化すると、PWHT条件もより高温かつ長時間の厳しい条件となる傾向があり、しばしば処理後の強度低下や靭性劣化を引き起こした。
このため、例えば、特公昭59−232234号公報(特許文献1)、特公昭62−93312号公報(特許文献2)、特公平9−256037号公報(特許文献3)、特公平9−256038号公報(特許文献4)等に、合金元素の最適化、加工熱処理技術の適用、またはPWHT前の熱処理の活用等によって、PWHT後の強度および靭性の優れた鋼板の製造方法が開示されている。
特公昭59−232234号公報 特公昭62−93312号公報 特公平9−256037号公報 特公平9−256038号公報
しかし、上記特許文献1〜4等に開示されている方法によっても、寒冷地で使用される場合等に求められるPWHT後の厳しい強度・靭性特性には対応できないという問題があり、PWHT後の強度・靭性バランスがより優れた高張力鋼板の製造方法が求められていた。
この発明は、従来技術における上記問題点を克服すべく、特に焼入れ・焼戻し材の焼戻し処理時における板厚中心部の昇温速度を規定することによって、セメンタイトを微細分散析出させ、PWHT前およびPWHT後の強度・靭性の劣化の主な要因となる熱処理時のセメンタイトの凝集・粗大化を抑制して、PWHT前およびPWHT後の強度・靭性バランスが従来材よりも極めて優れた高張力鋼板の製造を可能とする方法を提供するものであり、その要旨とするところは次の通りである。
請求項1記載の発明は、質量%で、C:0.02〜0.18%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部:Feおよび不可避的不純物からなる鋼を鋳造後、Ar3変態点以下に冷却することなく、あるいはAc3変態点以上に再加熱し、所定の板厚に熱間圧延した後、引続きAr3変態点以上から直接焼入れ、あるいは加速冷却によって400℃以下の温度まで冷却した後、圧延機および直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と同一の製造ライン上に直結して設置された加熱装置を用いて、460℃からAc1変態点以下の所定の焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s以上として、板厚中心部の最高到達温度を520℃以上に焼戻すことに特徴を有するものである。
請求項2記載の発明は、請求項1の方法によって製造した応力除去焼鈍処理用の高張力鋼板に特徴を有するものである。
この発明によれば、PWHT前およびPWHT後の強度・靭性バランスに極めて優れた高張力鋼板の製造が可能となる。
先ず、この発明における成分の限定理由について述べる。なお、化学成分組成割合を示す%は、何れも質量%である。
(C:0.02〜0.18%)
Cは、強度を確保するために含有するが、0.02%未満ではその効果が不十分である。一方、0.18%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。従って、C含有量を0.02〜0.18%の範囲内に限定する。さらに、好適には、0.03〜0.17%の範囲内である。
(Si:0.05〜0.5%)
Siは、製鋼段階の脱酸材および強度向上元素として含有するが、0.05%未満ではその効果が不十分である。一方、0.5%を超えると、セメンタイトの生成を抑制する効果により、焼戻し温度を520℃以上としてもセメンタイトの十分な微細分散析出状態が得られず、PWHT前およびPWHT後の母材および溶接熱影響部の靭性が劣化する。従って、Si含有量を0.05〜0.5%の範囲内に限定する。さらに、好適には、0.1〜0.45%の範囲内である。
(Mn:0.5〜2.0%)
Mnは、強度を確保するために含有するが、0.5%未満ではその効果が不十分である。一方、2.0%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が著しく劣化する。従って、Mn含有量を0.5〜2.0%の範囲内に限定する。さらに、好適には、0.9〜1.7%の範囲内である。
(Al:0.005〜0.1%)
Alは、脱酸材として添加されると同時に、結晶粒径の微細化にも効果があるが、0.005%未満の場合にはその効果が十分でない。一方、0.1%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。従って、Al含有量を0.005〜0.1%の範囲内に限定する。さらに、好適には、0.01〜0.04%の範囲内である。
(N:0.0005〜0.008%)
Nは、Ti等と窒化物を形成することによって組織を微細化し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させる効果を有するために添加するが、0.0005%未満では組織の微細化効果が十分にもたらされない。一方、0.008%を超える添加は固溶N量が増加するために母材および溶接熱影響部の靭性を損なう。従って、N含有量を0.0005〜0.008%の範囲内に限定する。さらに、好適には、0.001〜0.006%の範囲内である。
(P:0.03%以下、S:0.03%以下)
P、Sは、何れも不純物元素であり、0.03%を超えると健全な母材および溶接継手を得ることができなくなる。従って、P、S含有量を0.03%以下に限定する。さらに、好適には、Pは、0.02%以下、Sは、0.006%以下である。
この発明では、所望の特性に応じてさらに以下の成分を含有することができる。
(Cu:2%以下)
Cuは、固溶強化および析出強化により強度を向上する作用を有しているが、その効果を得るためには、0.05%以上が好ましい。しかしながら、Cu含有量が2%を超えると、鋼片加熱時や溶接時に熱間での割れを生じやすくする。従って、Cuを添加する場合には、その含有量を2%以下に限定する。さらに、好適には、0.1〜1.8%の範囲内である。
(Ni:4%以下)
Niは、靭性および焼入れ性を向上する作用を有しているが、その効果を得るためには、0.1%以上が好ましい。しかしながら、Ni含有量が4%を超えると、経済性が劣る。従って、Niを添加する場合には、その含有量を4%以下に限定する。さらに、好適には、0.2〜3.5%の範囲内である。
(Cr:2%以下)
Crは、強度および靭性を向上する作用を有しており、また、高温強度特性に優れるが、その効果を得るためには、0.1%以上が好ましい。しかしながら、Cr含有量が2%を超えると、溶接性が劣化する。従って、Crを添加する場合には、その含有量を2%以下に限定する。さらに、好適には、0.2〜1.8%の範囲内である。
(Mo:1%以下)
Moは、焼入れ性および強度を向上する作用を有しており、また高温強度特性に優れるが、その効果を得るためには、0.05%以上が好ましい。しかしながら、Mo含有量が1%を超えると、経済性が劣る。従って、Moを添加する場合には、その含有量を1%以下に限定する。さらに、好適には、0.1〜0.9%の範囲内である。
(Nb:0.05%以下)
Nbは、マイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加するが、その効果を得るためには、0.005%以上が好ましい。しかしながら、0.05%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Nbを添加する場合には、その含有量を0.05%以下に限定する。さらに、好適には、0.01〜0.04%の範囲内である。
(V:0.5%以下)
Vは、マイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加するが、その効果を得るためには、0.01%以上が好ましい。しかしながら、0.5%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Vを添加する場合には、その含有量を0.5%以下に限定する。さらに、好適には、0.02〜0.4%の範囲内である。
(Ti:0.03%以下)
Tiは、圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイト粒の成長を抑制し、母材ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させるが、その効果を得るためには、0.001%以上が好ましい。しかしながら、その含有量が0.03%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Tiを添加する場合には、その含有量を0.03%以下に限定する。さらに、好適には、0.002〜0.025%の範囲内である。
(B:0.003%以下)
Bは、焼入れ性を向上する作用を有しているが、その効果を得るためには、0.0001%以上が好ましい。しかしながら、0.003%を超えると、靭性を劣化させる。従って、Bを添加する場合には、その含有量を0.003%以下に限定する。さらに、好適には、0.0002〜0.0025%の範囲内である。
(Ca:0.01%以下)
Caは、硫化物系介在物の形態制御に不可欠な元素であるが、その効果を得るためには、0.0005%以上が好ましい。しかしながら、0.01%を超える添加は、清浄度の低下を招く。従って、Caを添加する場合には、その含有量を0.01%以下に限定する。さらに、好適には、0.001〜0.009%の範囲内である。
(REM:0.02%以下)
REMは、鋼中でREM(O、S)として硫化物を生成することによって結晶粒界の固溶S量を低減して耐SR割れ特性を改善するが、その効果を得るためには、0.001%以上が好ましい。しかしながら、0.02%を超える添加は、清浄度の低下を招く。従って、REMを添加する場合には、その添加量を0.02%以下に限定する。さらに、好適には、0.002〜0.019%の範囲内である。
(Mg:0.01%以下)
Mgは、溶銑脱硫材として使用する場合があるが、その効果を得るためには、0.0005%以上が好ましい。しかしながら、0.01%を超える添加は、清浄度の低下を招く。従って、Mgを添加する場合には、その添加量を0.01%以下に限定する。さらに、好適には、0.001〜0.009%の範囲内である。
次に、この発明における好適な組織について、以下に述べる。
この発明の母材の組織は、引張強度が570N/mm2以上、780N/mm2未満の場合には、ベイナイトの体積率が50vol%以上で、残部がマルテンサイトを主体とする組織から構成され、また、引張強度が780N/mm2以上の場合には、マルテンサイトの体積率が50vol%以上、残部がベイナイトを主体とする組織から構成されることが好ましい。なお、ベイナイトとマルテンサイト組織の体積率は、得られた鋼板から金属組織観察用試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面を試薬で腐食し、光学顕微鏡を用いてミクロ組織を200倍で観察し、各5視野撮像し、組織を同定し、さらに、画像解析装置を用いてベイナイトとマルテンサイトの面積率を求め、5視野の平均をベイナイトとマルテンサイト組織の体積率とした。
また、この発明は、急速加熱焼戻しによるセメンタイトの微細分散析出に特徴を有するが、セメンタイトの平均粒子径が70nmを超えると強度・靭性バランスに劣るため、セメンタイトの平均粒子径は、70nm以下が好ましく、さらに、好適には、65nm以下である方が良い。さらに、好適には、粒子径が350nmを超えるセメンタイトは、5000nm四方の視野中にて3個以下が好ましく、さらに、好適には、2個以下である方が良い。
なお、セメンタイトの観察は、例えば、薄膜または抽出レプリカのサンプルを用いて、透過型電子顕微鏡にて行う。粒子径は、画像解析による円相当径にて評価し、平均粒子径は、任意の5視野以上の5000nm四方の視野中で観察されるセメンタイトの粒子径を全て測定して、その単純平均値とする。
次に、この発明における製造条件の限定理由について述べる。
(鋳造条件)
この発明は、いかなる鋳造条件で製造された鋼材についても有効であるので、特に鋳造条件を限定する必要はない。
(熱間圧延条件)
鋳片をAr3変態点以下に冷却することなく、そのまま熱間圧延を開始しても、一度冷却した鋳片をAc3変態点以上に再加熱した後に熱間圧延を開始しても良い。これは、この温度域で圧延を開始すれば、この発明の有効性は失われないためである。なお、この発明においては、Ar3変態点以上で圧延を終了すれば、その他の圧延条件に関して特に規定するものではない。これは、Ar3変態点以上の温度の圧延であれば、再結晶域で圧延を行っても未結晶域で圧延を行っても、この発明の有効性は発揮されるためである。
(直接焼入れあるいは加速冷却)
熱間圧延終了後、母材強度および母材靭性を確保するため、Ar3変態点以上の温度から400℃以下まで強制冷却を施すことが必要である。鋼板の温度が400℃以下になるまで冷却する理由は、オーステナイトからマルテンサイトもしくはベイナイトへの変態を完了させ、母材を強化するためである。このときの冷却速度は、1℃/s以上とするのが好ましい。
(焼戻し装置の設置方法)
焼戻しは、圧延機および直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と同一の製造ライン上に直結して設置された加熱装置を用いて行うものとした。これは、直結化によって圧延・焼入れ処理から焼戻し処理までに要する時間を短くすることが可能となり、生産性の向上がもたらされるためである。
(焼戻し条件−1)
焼入れ時には自動焼戻しによって若干のセメンタイトが生成する。なお、自動焼戻しとは、C量が低い材料は、MS点が高温となるため、冷却中に一部の過飽和なCがセメンタイトを形成する。このような冷却中に生じる焼戻し現象である。この状態にある焼入れ材を460℃からAc1変態点以下の所定の焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s以上、好ましくは2℃/s以上と高速にして、520℃以上に焼戻すと、セメンタイトが旧オーステナイト粒界やラス境界のみではなく粒内にも析出することによって、セメンタイトが微細分散析出し、PWHT前およびPWHT後の強度・靭性の劣化の主な要因となるセメンタイトの凝集・粗大化が抑制され、この結果、PWHT前およびPWHT後の強度・靭性バランスが従来材よりも向上することが本発明者等による研究から明らかとされた。以上より、460℃からAc1変態点以下の所定の焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s以上として、板厚中心部の最高到達温度を520℃以上に焼戻すこととした。
(焼戻し条件−2)
更に、本発明者等は、上記焼戻し条件−1によるセメンタイトの微細分散析出のメカニズムを詳細に調べた結果、自動焼戻しによって若干のセメンタイトが生成している焼入れ材を昇温した場合、鋼板の温度が460℃までは自動焼戻しによって生じたセメンタイトが溶解し、460℃を超えると旧オーステナイト粒界やラス境界からセメンタイトの核生成・成長が生じ、さらに鋼板の温度が520℃を超えると、粒内からセメンタイトの核生成・成長が生じるようになるといった知見を得た。この知見を基に、520℃以上の焼戻し処理を行う場合には、焼戻し開始温度から460℃までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s未満と低速にすることにより、焼入れ時に自動焼戻しによって生成したセメンタイトを充分に溶解させる時間を与え、更に、460℃以上Ac1変態点以下の所定の焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s以上、好ましくは2℃/s以上と高速にすることによって、旧オーステナイト粒界やラス境界からのセメンタイトの核生成・成長をなるべく抑制し、520℃以上で生じる粒内からのセメンタイトの核生成・成長を促進させると、上記焼戻し条件−1によって焼戻し処理を施した場合よりも、更に微細なセメンタイトの分散析出状態が得られ、PWHT後の強度・靭性バランスが焼戻し条件−1の場合と比較して向上する。具体的には、焼戻し条件−1よりも焼戻し条件−2の方がPWHT前およびPWHT後の靭性がそれぞれ良くなることが実験的に検証された。
以上より、焼戻し開始温度から460℃までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s未満で、かつ460℃以上Ac1変態点以下の所定の焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s以上として、板厚中心部の最高到達温度を520℃以上に焼戻すこととした。
なお、この発明における鋼板の温度は、板厚中心部の位置での温度であり、鋼板表面の放射温度計等による実測温度から計算により管理される。
この発明は、転炉法・電気炉法等で溶製されたいかなる鋼や、連続鋳造・造塊法等で製造されたいかなるスラブについても有効であるので、特に鋼の溶製方法やスラブの製造方法を特定する必要は無い。
焼戻し時の加熱方式は、誘導加熱、通電加熱、赤外線輻射過熱、雰囲気加熱等、所要の昇温速度が達成される方式で良い。
焼戻し時における平均昇温速度の規定は、板厚中心部にて行ったが、板厚中心部近傍はほぼ同様の温度履歴となるため、板厚中心部のみに限定されるものではない。
また、焼戻し時の昇温過程は、所定の平均昇温速度さえ得られれば、この発明は有効であるので、直線的な温度履歴を取っても、途中の温度で滞留するような温度履歴を取っても構わない。従って、平均昇温速度は、昇温開始温度と昇温終了温度の温度差を昇温に要した時間で除算することにより求められる。
焼戻し温度における保持は特に必要ではない。保持する場合には、生産性の低下や析出物の粗大化に起因する靭性の劣化を防止すべく、60sec以下とすることが望ましい。
焼戻し後の冷却速度については、冷却中における析出物の粗大化を防止すべく、焼戻し温度〜200℃までにおける板厚中心部の平均冷却速度を0.05℃/s以上とすることが望ましい。なお、昇温速度を変更する温度は、460℃が好ましいが、装置の精度や操業上の問題等からこの変更温度が460℃±40℃の420℃〜500℃の範囲内であっても、冷却開始温度〜460℃、460℃〜焼戻し温度の平均昇温速度がこの発明の所定の範囲を満足すれば良い。
次に、この発明を実施例によって更に説明する。
表1に示す鋼A〜Uを溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行った。圧延後、引続き直接焼入れし、次いで、直列に設置した2台のソノレイド型誘導加熱装置を用いて、焼戻し開始から460℃までは1台目の誘導加熱装置により、460℃から所定の焼戻し温度までは2台目の誘導加熱装置にて連続的に焼戻し処理を行った(昇温速度を変更する温度:460℃)。また、板厚中心部の平均昇温速度は、鋼板の通板速度によって管理した。なお、焼戻し温度にて保持する場合には、鋼板を往復させて加熱することによって、±5℃の範囲内で保持を行った。また、加熱後の冷却は空冷とした。
さらに、上記焼入れ・焼戻し材に(580〜690℃)×(1h〜24hr)の条件でPWHTを施した。加熱・冷却条件等は、JIS-Z-3700に準拠した。
表1にPCM、Ac1変態点、Ac3変態点、Ar3変態点の値を併せて示し、表外にこれらの算出式を示す。
以上の鋼板製造条件を表2に、これらの製造条件で製造した鋼板の引張強度および板厚中心部の脆性・延性破面遷移温度(vTrs)を表3に示す。引張強度は、全厚引張試験片により測定し、靭性は、板厚中心部より採取した試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって得られる破面遷移温度vTrsで評価した。
材料特性の目標は、鋼A〜FおよびM、NのPWHT前およびPWHT後の引張強度:570MPa以上、vTrs:−50℃以下、鋼G〜LおよびO〜UのPWHT前およびPWHT後の引張強度:780MPa以上、vTrs:−40℃以下で、かつ、鋼A〜UのPWHT前およびPWHT後の引張強度差:40MPa以内、vTrs差:20℃以内とした。
Figure 0005028760
Figure 0005028760
Figure 0005028760
表3から明らかなように、この発明法により製造した鋼板No.1〜20(本発明例)のPWHT前およびPWHT後の引張強度とvTrs、PWHT前とPWHT後の引張強度差とvTrs 差は、何れも、目標値を満足している。
なお、本発明例である鋼板No.9と10とを比較すると、焼戻し開始〜460℃までの板厚中心部の平均昇温速度が1℃未満である鋼板No.10は、これと同一成分で、焼戻し開始〜460℃までの板厚中心部の平均昇温速度が1℃を超える鋼板No.9と比べてPWHT前およびPWHT後の靭性値が向上している。同様に、本発明例である鋼板No.11と12とを比較すると、鋼板No.12は、鋼板No.11と比べてPWHT前およびPWHT後の靭性値が向上している。焼戻し開始〜460℃までの板厚中心部の平均昇温速度が1℃未満で焼戻し処理を施した場合は、さらに微細なセメンタイトの分散析出状態が得られ、PWHT後においても引張強度と靭性バランスがさらに向上することが確認された。
これに対して、比較例である鋼板No.21〜35は、PWHT前およびPWHT後の引張強度、PWHT前およびPWHT後のvTrs、PWHT前とPWHT後の引張強度差、PWHT前とPWHT後のvTrs 差の内、少なくとも2つが上記目標範囲を外れている。以下、これらの比較例を個別に説明する。
化学成分が本発明範囲から外れている鋼板No.21、22、23は、PWHT前およびPWHT後の引張強度、PWHT前およびPWHT後のvTrs、PWHT前とPWHT後の引張強度差、PWHT前とPWHT後のvTrs差の内、何れか2つの目標値を達成することができなかった。
スラブ加熱温度が本発明範囲から外れている(AC3変態点未満の800℃)鋼板No.24は、PWHT前およびPWHT後の引張強度、PWHT前およびPWHT後のvTrs、PWHT前とPWHT後のvTrs差が何れも目標値に達していない。
直接焼入れ停止温度が本発明範囲から外れている(AC3変態点未満の730℃)鋼板No.25は、PWHT前およびPWHT後の引張強度、PWHT前およびPWHT後のvTrs 、PWHT前とPWHT後のvTrs差が何れも目標値に達していない。
直接焼入れ停止温度が本発明範囲から外れている(400℃超えの450℃)鋼板No.26は、PWHT前およびPWHT後の引張強度、PWHT前およびPWHT後のvTrs 、PWHT前とPWHT後のvTrs差が何れも目標値に達していない。
焼戻し開始〜460℃までの平均昇温速度および460℃〜焼戻し温度までの平均昇温速度の何れもが本発明範囲から外れている鋼板No.27、28、29、30は、PWHT後の引張強度、PWHT前およびPWHT後のvTrs、PWHT前とPWHT後の引張強度差、PWHT前とPWHT後のvTrs 差が何れも目標値に達していない。
460℃〜焼戻し温度までの平均昇温速度が本発明範囲から外れている鋼板No.31、32、33、34、35は、PWHT前およびPWHT後のvTrs 、PWHT前とPWHT後の引張強度差、PWHT前とPWHT後のvTrs差が何れも目標値に達していない。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.18%、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.5〜2.0%、
    Al:0.005〜0.1%、
    N:0.0005〜0.008%、
    P:0.03%以下、
    S:0.03%以下、
    残部:Feおよび不可避的不純物
    からなる鋼を鋳造後、Ar3変態点以下に冷却することなく、あるいはAc3変態点以上に再加熱し、所定の板厚に熱間圧延した後、引続きAr3変態点以上から直接焼入れ、あるいは加速冷却によって400℃以下の温度まで冷却した後、圧延機および直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と同一の製造ライン上に直結して設置された加熱装置を用いて、460℃からAc1変態点以下の所定の焼戻し温度までの板厚中心部の平均昇温速度を1℃/s以上として、板厚中心部の最高到達温度を520℃以上に焼戻すことを特徴とする、応力除去焼鈍処理用の高張力鋼板の製造方法。
  2. 請求項1の方法によって製造した応力除去焼鈍処理用の高張力鋼板。
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