JP3015923B2 - 強靱鋼の製造方法 - Google Patents
強靱鋼の製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は強靱な厚鋼板の製造法に
関するものである。
関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼構造の大型化にともない、より強靱な
鋼の開発が求められている。通常、引張り強度60kg
f/mm2 以上の鋼は焼入れによりマルテンサイトもし
くはベイナイト変態を生じさせ、その後の焼戻し処理に
おいて過飽和固溶炭素をFeもしくは他の金属元素との
炭化物として析出せしめる方法で製造されている。この
ような製造法は製造に要する時間も長く、製造費用も多
大である。近年、このような通常の焼入れ焼戻し処理の
欠点を補うべく圧延後そのまま焼入れを行う直接焼入れ
技術が開発された。この方法は製造費用の低減、鋼の強
靱化の面である程度の効果を生んでいる。
鋼の開発が求められている。通常、引張り強度60kg
f/mm2 以上の鋼は焼入れによりマルテンサイトもし
くはベイナイト変態を生じさせ、その後の焼戻し処理に
おいて過飽和固溶炭素をFeもしくは他の金属元素との
炭化物として析出せしめる方法で製造されている。この
ような製造法は製造に要する時間も長く、製造費用も多
大である。近年、このような通常の焼入れ焼戻し処理の
欠点を補うべく圧延後そのまま焼入れを行う直接焼入れ
技術が開発された。この方法は製造費用の低減、鋼の強
靱化の面である程度の効果を生んでいる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような製造法とし
ては、例えば特公昭53−6616号公報、特公昭55
−49131号公報、特公昭58−3011号公報等に
記載がある。しかしこのような技術では焼戻し工程が従
来の形式をとどめているため、その低生産性に起因して
製造コストが高いなどの問題点を含んでいる。それは焼
戻し工程が熱処理(加熱、保持、冷却)自体に著しく時
間を消費するということと熱処理工程が圧延、冷却の製
造ラインとは別の製造ラインで行われ、搬送等に余分な
時間を消費するということに起因している。また、金属
学的な見地からも現在の焼戻し方法で強度、靱性などの
機械的特性に対して最適な金属組織状態が得られている
とは言い難く、さらに強靱で低コストな高強度鋼の製造
方法が求められてきた。
ては、例えば特公昭53−6616号公報、特公昭55
−49131号公報、特公昭58−3011号公報等に
記載がある。しかしこのような技術では焼戻し工程が従
来の形式をとどめているため、その低生産性に起因して
製造コストが高いなどの問題点を含んでいる。それは焼
戻し工程が熱処理(加熱、保持、冷却)自体に著しく時
間を消費するということと熱処理工程が圧延、冷却の製
造ラインとは別の製造ラインで行われ、搬送等に余分な
時間を消費するということに起因している。また、金属
学的な見地からも現在の焼戻し方法で強度、靱性などの
機械的特性に対して最適な金属組織状態が得られている
とは言い難く、さらに強靱で低コストな高強度鋼の製造
方法が求められてきた。
【0004】本発明の目的はこのような強靱鋼の製造方
法を提供しようとするものである。
法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記のような従
来法の欠点を有利に排除し得る強靱鋼の製造方法であ
り、その要旨とするところは次のとおりである。 (1) 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を鋳造後、
Ar3点以下に冷却することなく、あるいはAc3点以上
に再加熱し、熱間圧延を行い、その後、直接焼入れ、あ
るいは加速冷却し、さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法
において、圧延機および直接焼入れ装置もしくは加速冷
却装置と同一の製造ライン上に設置された加熱装置を用
い、圧延、冷却、焼戻しを連続的に行い、圧延後の冷却
をAr3点以上の温度から5℃/秒以上の冷却速度で5
00℃以下の温度まで行い、焼戻しを450℃以上Ac
1点以下の所定の焼戻し温度までの昇温速度を1℃/秒
以上とし、焼戻し温度での保持を行わず、その後の冷却
速度を0.05℃/秒以上20℃/秒以下で冷却するこ
とを特徴とする生産効率の高い強靱鋼の製造方法。
来法の欠点を有利に排除し得る強靱鋼の製造方法であ
り、その要旨とするところは次のとおりである。 (1) 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を鋳造後、
Ar3点以下に冷却することなく、あるいはAc3点以上
に再加熱し、熱間圧延を行い、その後、直接焼入れ、あ
るいは加速冷却し、さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法
において、圧延機および直接焼入れ装置もしくは加速冷
却装置と同一の製造ライン上に設置された加熱装置を用
い、圧延、冷却、焼戻しを連続的に行い、圧延後の冷却
をAr3点以上の温度から5℃/秒以上の冷却速度で5
00℃以下の温度まで行い、焼戻しを450℃以上Ac
1点以下の所定の焼戻し温度までの昇温速度を1℃/秒
以上とし、焼戻し温度での保持を行わず、その後の冷却
速度を0.05℃/秒以上20℃/秒以下で冷却するこ
とを特徴とする生産効率の高い強靱鋼の製造方法。
【0006】(2) 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 さらに、 Cu:3.0%以下 Ni:10.0%以下 Cr:10.0%以下 Mo:3.5%以下 Co:10.0%以下 W :2.0%以下 Ti:0.1%以下 Nb:0.1%以下 V :0.2%以下 B :0.003%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなる鋼を鋳造後、Ar3点以下に冷却す
ることなく、あるいはAc3点以上に再加熱し、熱間圧
延を行い、その後、直接焼入れ、あるいは加速冷却し、
さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法において、圧延機お
よび直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と同一の製造
ライン上に設置された加熱装置を用い、圧延、冷却、焼
戻しを連続的に行い、圧延後の冷却をAr3点以上の温
度から5℃/秒以上の冷却速度で500℃以下の温度ま
で行い、焼戻しを450℃以上Ac1点以下の所定の焼
戻し温度までの昇温速度を1℃/秒以上とし、焼戻し温
度での保持を行わず、その後の冷却速度を0.05℃/
秒以上20℃/秒以下で冷却することを特徴とする生産
効率の高い強靱鋼の製造方法。
避的不純物からなる鋼を鋳造後、Ar3点以下に冷却す
ることなく、あるいはAc3点以上に再加熱し、熱間圧
延を行い、その後、直接焼入れ、あるいは加速冷却し、
さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法において、圧延機お
よび直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と同一の製造
ライン上に設置された加熱装置を用い、圧延、冷却、焼
戻しを連続的に行い、圧延後の冷却をAr3点以上の温
度から5℃/秒以上の冷却速度で500℃以下の温度ま
で行い、焼戻しを450℃以上Ac1点以下の所定の焼
戻し温度までの昇温速度を1℃/秒以上とし、焼戻し温
度での保持を行わず、その後の冷却速度を0.05℃/
秒以上20℃/秒以下で冷却することを特徴とする生産
効率の高い強靱鋼の製造方法。
【0007】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明の基本となる考え方は以下の通りである。まず、金
属学的な見地から直接焼入れを含む焼入れ、焼戻しで製
造される鋼の強度、靱性について考えてみると、それは
まず第一に金属組織の微細さに依存している。通常、焼
入れ、焼戻しで製造される鋼の金属組織はマルテンサイ
トとベイナイトからなり、その結晶粒が微細であるほど
強靱である。また、金属組織中に存在する炭化物は析出
強化に寄与することや破壊の起点となり得るという観点
から微細に分散していることが望ましい。さらにマルテ
ンサイト変態などの変態により導入された転位や加工さ
れたオーステナイトから引き継がれた転位が金属組織中
に多く残存することによって強度が上昇し、場合によっ
ては可動転位が延性を促進することによって鋼の靱性を
増す。一連の製造工程において上述のような金属組織状
態を具現化し、なおかつ、生産性を阻害しない方法を実
現することが必要であり、本発明においては、主に焼戻
し工程を刷新することによりこれを実現するものであ
る。
発明の基本となる考え方は以下の通りである。まず、金
属学的な見地から直接焼入れを含む焼入れ、焼戻しで製
造される鋼の強度、靱性について考えてみると、それは
まず第一に金属組織の微細さに依存している。通常、焼
入れ、焼戻しで製造される鋼の金属組織はマルテンサイ
トとベイナイトからなり、その結晶粒が微細であるほど
強靱である。また、金属組織中に存在する炭化物は析出
強化に寄与することや破壊の起点となり得るという観点
から微細に分散していることが望ましい。さらにマルテ
ンサイト変態などの変態により導入された転位や加工さ
れたオーステナイトから引き継がれた転位が金属組織中
に多く残存することによって強度が上昇し、場合によっ
ては可動転位が延性を促進することによって鋼の靱性を
増す。一連の製造工程において上述のような金属組織状
態を具現化し、なおかつ、生産性を阻害しない方法を実
現することが必要であり、本発明においては、主に焼戻
し工程を刷新することによりこれを実現するものであ
る。
【0008】一般に焼戻し工程で生じる主たる冶金現象
は、固溶炭素原子がセメンタイトとして排出する、
固溶炭素原子がFe以外の金属元素との炭化物として析
出する、変態時に生じた金属組織中に残留する多数の
転位が消滅あるいは著しく減少する、マルテンサイ
ト、ベイナイトの結晶粒が回復成長する、の4点である
ことが知られている。これらの現象は一般に焼戻しの温
度は高いほどその進行が速い。従って、高温に長時間保
持し、焼戻しが過剰に行われた鋼の状態はセメンタイト
やその他の炭化物が粗大化し、固溶炭素は少なく、変形
初期に容易に移動できる転位や強化に寄与する転位もあ
まり残存しないものとなる。このような状態の鋼は強度
が低く、靱性の点でも劣る。一方、焼戻しが不十分な鋼
は固溶炭素原子や転位が多量に含有され、結晶粒の成長
もそれほど進んでいないので極めて強度が高い。しかし
ながら炭素原子の過剰の固溶による靱性の劣化が著し
い。従来法によれば固溶炭素を排出し、かつ転位を多く
残留させ、析出および結晶粒を微細なままに保つために
低温で長時間の保持を行う手段がとられていた。従っ
て、生産性が極めて低い。
は、固溶炭素原子がセメンタイトとして排出する、
固溶炭素原子がFe以外の金属元素との炭化物として析
出する、変態時に生じた金属組織中に残留する多数の
転位が消滅あるいは著しく減少する、マルテンサイ
ト、ベイナイトの結晶粒が回復成長する、の4点である
ことが知られている。これらの現象は一般に焼戻しの温
度は高いほどその進行が速い。従って、高温に長時間保
持し、焼戻しが過剰に行われた鋼の状態はセメンタイト
やその他の炭化物が粗大化し、固溶炭素は少なく、変形
初期に容易に移動できる転位や強化に寄与する転位もあ
まり残存しないものとなる。このような状態の鋼は強度
が低く、靱性の点でも劣る。一方、焼戻しが不十分な鋼
は固溶炭素原子や転位が多量に含有され、結晶粒の成長
もそれほど進んでいないので極めて強度が高い。しかし
ながら炭素原子の過剰の固溶による靱性の劣化が著し
い。従来法によれば固溶炭素を排出し、かつ転位を多く
残留させ、析出および結晶粒を微細なままに保つために
低温で長時間の保持を行う手段がとられていた。従っ
て、生産性が極めて低い。
【0009】本発明者等の研究によれば、焼戻し時の昇
温速度を従来法に比して増加させ、焼戻し温度での保持
を行わず冷却することによって、炭素原子をセメンタイ
トとして析出させて固溶量を減少させ、靱性を良好に保
ち得ることが判った。また同時に従来法では昇温・保持
中に生じていた(従来法では昇温速度が遅く、保持時間
が長い)結晶粒および析出物の粗大化や転位の著しい減
少を防ぐことができ、従来より強度、靱性の優れた鋼を
製造できることが判明した。このような現象は昇温速度
が大きい場合に特徴的な現象であり、新しい発見であ
る。
温速度を従来法に比して増加させ、焼戻し温度での保持
を行わず冷却することによって、炭素原子をセメンタイ
トとして析出させて固溶量を減少させ、靱性を良好に保
ち得ることが判った。また同時に従来法では昇温・保持
中に生じていた(従来法では昇温速度が遅く、保持時間
が長い)結晶粒および析出物の粗大化や転位の著しい減
少を防ぐことができ、従来より強度、靱性の優れた鋼を
製造できることが判明した。このような現象は昇温速度
が大きい場合に特徴的な現象であり、新しい発見であ
る。
【0010】また本発明法においては昇温時間がきわめ
て短いことから焼戻しにともなう前述のからのごと
き強度、靱性を支配する冶金現象は従来法では昇温・保
持中に生じているのに対して冷却中にも生じているもの
と推定される。従って、本発明法によれば単に強度、靱
性に優れた鋼を製造するばかりでなく、冷却時の冷却速
度を制御することにより、焼戻しが不十分で靱性を損な
わない範囲で、焼戻しの進行を制御し、その材質を制御
することも可能である。
て短いことから焼戻しにともなう前述のからのごと
き強度、靱性を支配する冶金現象は従来法では昇温・保
持中に生じているのに対して冷却中にも生じているもの
と推定される。従って、本発明法によれば単に強度、靱
性に優れた鋼を製造するばかりでなく、冷却時の冷却速
度を制御することにより、焼戻しが不十分で靱性を損な
わない範囲で、焼戻しの進行を制御し、その材質を制御
することも可能である。
【0011】次に、生産性の見地からは図1に示すよう
に昇温速度を増加させ、保持を行わないために焼戻しに
要する実処理時間を大幅に減少させることができる。さ
らに、焼戻しの実処理時間を短時間にできたことにより
焼戻し工程(焼戻し装置)を図2に示すように圧延・冷
却工程(圧延機・冷却装置)と同一製造ライン上に直結
することができる。このような直結化により圧延・冷却
と焼戻しの間の搬送その他による付加的な所要時間を排
除することが可能となり生産性を著しく向上することが
可能となるのである。
に昇温速度を増加させ、保持を行わないために焼戻しに
要する実処理時間を大幅に減少させることができる。さ
らに、焼戻しの実処理時間を短時間にできたことにより
焼戻し工程(焼戻し装置)を図2に示すように圧延・冷
却工程(圧延機・冷却装置)と同一製造ライン上に直結
することができる。このような直結化により圧延・冷却
と焼戻しの間の搬送その他による付加的な所要時間を排
除することが可能となり生産性を著しく向上することが
可能となるのである。
【0012】即ち、本発明法を適用することによって、
従来法に比してきわめて短時間で、強度、靱性に優れた
鋼の製造が可能なのである。このような新しい発見に基
づき本発明法における鋼の化学成分、製造条件を詳細に
調査した結果、本発明者らは請求項1、2に示したよう
な強靱な厚鋼板の製造方法を創案した。
従来法に比してきわめて短時間で、強度、靱性に優れた
鋼の製造が可能なのである。このような新しい発見に基
づき本発明法における鋼の化学成分、製造条件を詳細に
調査した結果、本発明者らは請求項1、2に示したよう
な強靱な厚鋼板の製造方法を創案した。
【0013】以下に製造方法の限定の理由について述べ
る。Cは鋼の強化を行うのに有効な元素であり、0.0
2%未満では十分な強度が得られない。一方、その含有
量が0.25%を超えると、溶接性を劣化させる。Si
は脱酸元素として、また鋼の強化元素として有効である
が、0.05%未満の含有量ではその効果がない。一
方、0.60%を超えると、鋼の表面性状を損なう。
る。Cは鋼の強化を行うのに有効な元素であり、0.0
2%未満では十分な強度が得られない。一方、その含有
量が0.25%を超えると、溶接性を劣化させる。Si
は脱酸元素として、また鋼の強化元素として有効である
が、0.05%未満の含有量ではその効果がない。一
方、0.60%を超えると、鋼の表面性状を損なう。
【0014】Mnは鋼の強化に有効な元素であり、0.
03%未満では十分な効果が得られない。一方、その含
有量が3.50%を超えると鋼の加工性を劣化させる。
Alは脱酸元素として添加される。0.005%未満の
含有量ではその効果がなく、0.10%を超えると鋼の
表面性状を劣化させる。TiおよびNbはいずれも微量
の添加で結晶粒の微細化と析出強化の面で有効に機能す
るので溶接部の靱性を劣化させない範囲で使用してもよ
い。このような観点からその添加量の上限を0.1%と
する。
03%未満では十分な効果が得られない。一方、その含
有量が3.50%を超えると鋼の加工性を劣化させる。
Alは脱酸元素として添加される。0.005%未満の
含有量ではその効果がなく、0.10%を超えると鋼の
表面性状を劣化させる。TiおよびNbはいずれも微量
の添加で結晶粒の微細化と析出強化の面で有効に機能す
るので溶接部の靱性を劣化させない範囲で使用してもよ
い。このような観点からその添加量の上限を0.1%と
する。
【0015】Cu,Ni,Cr,Mo,Co,Wはいず
れも鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、本発明の場
合、その添加により鋼の強度を高めることができる。し
かし、過度の添加は鋼の靱性および溶接性を損なうた
め、Cu:3.0%以下、Ni:10.0%以下、C
r:10.0%以下、Mo:3.5%以下、Co:1
0.0%以下、W:2.0%以下に限定する。
れも鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、本発明の場
合、その添加により鋼の強度を高めることができる。し
かし、過度の添加は鋼の靱性および溶接性を損なうた
め、Cu:3.0%以下、Ni:10.0%以下、C
r:10.0%以下、Mo:3.5%以下、Co:1
0.0%以下、W:2.0%以下に限定する。
【0016】Vは析出強化により鋼の強度を高めるのに
有効であるが、過度の添加は鋼の靱性を損なうために、
その上限を0.10%とする。Bは鋼の焼入れ性を向上
させる元素である。本発明における場合、その添加によ
り鋼の強度を高めることができるが、過度の添加はBの
析出物を増加させ、鋼の靱性を損ねるので、その含有量
の上限を0.0025%とする。
有効であるが、過度の添加は鋼の靱性を損なうために、
その上限を0.10%とする。Bは鋼の焼入れ性を向上
させる元素である。本発明における場合、その添加によ
り鋼の強度を高めることができるが、過度の添加はBの
析出物を増加させ、鋼の靱性を損ねるので、その含有量
の上限を0.0025%とする。
【0017】次に、本発明における製造条件に就いて述
べる。本発明はいかなる鋳造条件で鋳造された鋼片につ
いても有効であるので、特に鋳造条件を特定する必要は
ない。また鋳片を冷却することなく、そのまま熱間圧延
を開始しても一度冷却した鋳片をAc3点以上に再加熱
した後に圧延を開始しても良い。なお、本発明において
は圧延の条件に就いては特に規定するものではないがこ
れはAr3点以上の温度の圧延であればオーステナイト
の再結晶が生じない状態での圧延、いわゆる制御圧延を
行っても、行わない場合でも本発明の有効性が失われな
いからである。
べる。本発明はいかなる鋳造条件で鋳造された鋼片につ
いても有効であるので、特に鋳造条件を特定する必要は
ない。また鋳片を冷却することなく、そのまま熱間圧延
を開始しても一度冷却した鋳片をAc3点以上に再加熱
した後に圧延を開始しても良い。なお、本発明において
は圧延の条件に就いては特に規定するものではないがこ
れはAr3点以上の温度の圧延であればオーステナイト
の再結晶が生じない状態での圧延、いわゆる制御圧延を
行っても、行わない場合でも本発明の有効性が失われな
いからである。
【0018】次に、圧延後の冷却条件に就いて述べる。
本発明では焼戻しにより鋼中の固溶炭素原子、結晶粒、
炭化物、転位の状態を制御するものであるから、フェラ
イトやパーライトからなる組織に対しては固溶炭素や転
位が残存しておらず、炭化物もかなり成長していると考
えられるのでその有効性は期待できない。従って、冷却
後の金属組織としてはマルテンサイトもしくはベイナイ
トであることが必要である。そこで、Ar3点以下の冷
却速度を5℃/秒以上と限定した。また冷却の終了温度
を500℃以下と限定したのはこれを超えるとマルテン
サイト、ベイナイトの組織が得られないからである。
本発明では焼戻しにより鋼中の固溶炭素原子、結晶粒、
炭化物、転位の状態を制御するものであるから、フェラ
イトやパーライトからなる組織に対しては固溶炭素や転
位が残存しておらず、炭化物もかなり成長していると考
えられるのでその有効性は期待できない。従って、冷却
後の金属組織としてはマルテンサイトもしくはベイナイ
トであることが必要である。そこで、Ar3点以下の冷
却速度を5℃/秒以上と限定した。また冷却の終了温度
を500℃以下と限定したのはこれを超えるとマルテン
サイト、ベイナイトの組織が得られないからである。
【0019】次に、焼戻し条件についてであるが、焼戻
しは圧延・冷却工程(圧延機・冷却装置)と同一製造ラ
イン上に直結して設置された焼戻し装置で行うものとし
た。これは直結化により圧延・冷却と焼戻しの間の搬
送、その他による付加的な所要時間を排除することが可
能となり生産性を著しく向上することが可能となるので
ある。焼戻し装置の加熱方式は通電加熱、誘電加熱、赤
外線輻射加熱、強制対流加熱、雰囲気加熱などで所要の
昇温速度が達成されればそのようなものでもよい。
しは圧延・冷却工程(圧延機・冷却装置)と同一製造ラ
イン上に直結して設置された焼戻し装置で行うものとし
た。これは直結化により圧延・冷却と焼戻しの間の搬
送、その他による付加的な所要時間を排除することが可
能となり生産性を著しく向上することが可能となるので
ある。焼戻し装置の加熱方式は通電加熱、誘電加熱、赤
外線輻射加熱、強制対流加熱、雰囲気加熱などで所要の
昇温速度が達成されればそのようなものでもよい。
【0020】次に、焼戻しの熱処理条件で焼戻し温度を
450℃以上としたのはこれ未満では温度が低過ぎ、固
溶炭素を短時間で容易に析出させることができないから
である。また焼戻し温度をAc1点以下としたのはAc1
点を超えると変態が生じてしまい、強度の低下や組織の
不均一さのために靱性が劣化してしまうからである。焼
戻し中の昇温速度を1℃/秒以上としたのは、それ未満
では昇温中に転位の回復、組織・析出物の粗大化、固溶
炭素原子の析出が生じてしまい、強度、靱性を高めるこ
とができないからである。
450℃以上としたのはこれ未満では温度が低過ぎ、固
溶炭素を短時間で容易に析出させることができないから
である。また焼戻し温度をAc1点以下としたのはAc1
点を超えると変態が生じてしまい、強度の低下や組織の
不均一さのために靱性が劣化してしまうからである。焼
戻し中の昇温速度を1℃/秒以上としたのは、それ未満
では昇温中に転位の回復、組織・析出物の粗大化、固溶
炭素原子の析出が生じてしまい、強度、靱性を高めるこ
とができないからである。
【0021】最後に焼戻し後の冷却速度を0.05℃/
秒以上20℃/秒以下としたのは0.05℃/秒未満で
は冷却中に転位の回復、結晶粒や析出物の粗大化、固溶
炭素原子の析出が過剰に進行し、高い強度が得られなく
なるからである。また上限を20℃/秒としたのはこれ
を超えると焼戻しが不十分となり、固溶炭素原子の排出
が十分に行われず、靱性の劣化を生じるからである。
秒以上20℃/秒以下としたのは0.05℃/秒未満で
は冷却中に転位の回復、結晶粒や析出物の粗大化、固溶
炭素原子の析出が過剰に進行し、高い強度が得られなく
なるからである。また上限を20℃/秒としたのはこれ
を超えると焼戻しが不十分となり、固溶炭素原子の排出
が十分に行われず、靱性の劣化を生じるからである。
【0022】
【実施例】次に本発明の実施例によって、その有効性を
示す。表1、2は実施例の鋼の成分を示すものである。
このような成分の鋼を表3〜8に示す製造条件で製造し
た場合に、同じく表3〜8に示すような強度、靱性、直
接焼入れあるいは加速冷却の終了から焼戻し保持終了ま
でに要した時間が得られた。
示す。表1、2は実施例の鋼の成分を示すものである。
このような成分の鋼を表3〜8に示す製造条件で製造し
た場合に、同じく表3〜8に示すような強度、靱性、直
接焼入れあるいは加速冷却の終了から焼戻し保持終了ま
でに要した時間が得られた。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【表8】
【0031】
【発明の効果】本発明法は比較法に比べ明らかに生産性
が高く、強度・靱性に優れた鋼を製造することが可能で
あり、本発明は有効である。
が高く、強度・靱性に優れた鋼を製造することが可能で
あり、本発明は有効である。
【図1】昇温速度と焼戻しの実処理時間の関係を示す。
【図面2】本発明を実施するための焼戻し装置を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 崇史 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 中央研究本部内 (56)参考文献 特開 平2−270914(JP,A) 特開 平3−68715(JP,A) 特開 平4−358023(JP,A) 特開 平3−223420(JP,A) 特開 平4−311515(JP,A) 特開 昭58−31025(JP,A) 特開 昭57−79116(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/02 C21D 6/00
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を鋳造後、
Ar3点以下に冷却することなく、あるいはAc3点以上
に再加熱し、熱間圧延を行い、その後、直接焼入れ、あ
るいは加速冷却し、さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法
において、圧延機および直接焼入れ装置もしくは加速冷
却装置と同一の製造ライン上に設置された加熱装置を用
い、圧延、冷却、焼戻しを連続的に行い、圧延後の冷却
をAr3点以上の温度から5℃/秒以上の冷却速度で5
00℃以下の温度まで行い、焼戻しを450℃以上Ac
1点以下の所定の焼戻し温度までの昇温速度を1℃/秒
以上とし、焼戻し温度での保持を行わず、その後の冷却
速度を0.05℃/秒以上20℃/秒以下で冷却するこ
とを特徴とする生産効率の高い強靱鋼の製造方法。 - 【請求項2】 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 さらに、 Cu:3.0%以下 Ni:10.0%以下 Cr:10.0%以下 Mo:3.5%以下 Co:10.0%以下 W :2.0%以下 Ti:0.1%以下 Nb:0.1%以下 V :0.2%以下 B :0.003%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなる鋼を鋳造後、Ar3点以下に冷却す
ることなく、あるいはAc3点以上に再加熱し、熱間圧
延を行い、その後、直接焼入れ、あるいは加速冷却し、
さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法において、圧延機お
よび直接焼入れ装置もしくは加速冷却装置と同一の製造
ライン上に設置された加熱装置を用い、圧延、冷却、焼
戻しを連続的に行い、圧延後の冷却をAr3点以上の温
度から5℃/秒以上の冷却速度で500℃以下の温度ま
で行い、焼戻しを450℃以上Ac1点以下の所定の焼
戻し温度までの昇温速度を1℃/秒以上とし、焼戻し温
度での保持を行わず、その後の冷却速度を0.05℃/
秒以上20℃/秒以下で冷却することを特徴とする生産
効率の高い強靱鋼の製造方法。
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