JP3015924B2 - 強靱鋼の製造方法 - Google Patents
強靱鋼の製造方法Info
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- JP3015924B2 JP3015924B2 JP3133070A JP13307091A JP3015924B2 JP 3015924 B2 JP3015924 B2 JP 3015924B2 JP 3133070 A JP3133070 A JP 3133070A JP 13307091 A JP13307091 A JP 13307091A JP 3015924 B2 JP3015924 B2 JP 3015924B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は強靱な厚鋼板の製造法に
関するものである。
関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼構造の大型化にともない、より強靱な
鋼の開発が求められている。通常、引張り強度60kg
f/mm2 以上の鋼は焼入れによりマルテンサイトもし
くはベイナイト変態を生じさせ、その後の焼戻し処理に
おいて過飽和固溶炭素をFeもしくは他の金属元素との
炭化物として析出せしめる方法で製造されている。この
ような製造法としては、例えば特公昭63−42806
号公報に記載がある。
鋼の開発が求められている。通常、引張り強度60kg
f/mm2 以上の鋼は焼入れによりマルテンサイトもし
くはベイナイト変態を生じさせ、その後の焼戻し処理に
おいて過飽和固溶炭素をFeもしくは他の金属元素との
炭化物として析出せしめる方法で製造されている。この
ような製造法としては、例えば特公昭63−42806
号公報に記載がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような製
造法は製造に要する時間も長く、製造費用も多大である
ために製造コストが高いなどの問題点を含んでいる。そ
の原因のひとつには焼戻し工程における熱処理(昇温、
保持、冷却)に著しく時間を消費するということが挙げ
られる。また、金属学的な見地からも現在の焼戻し方法
が、強度、靱性などの機械的特性に対して最適な金属組
織状態を与えているとは言い難く、さらに強靱で低コス
トな高強度鋼の製造方法が求められている。
造法は製造に要する時間も長く、製造費用も多大である
ために製造コストが高いなどの問題点を含んでいる。そ
の原因のひとつには焼戻し工程における熱処理(昇温、
保持、冷却)に著しく時間を消費するということが挙げ
られる。また、金属学的な見地からも現在の焼戻し方法
が、強度、靱性などの機械的特性に対して最適な金属組
織状態を与えているとは言い難く、さらに強靱で低コス
トな高強度鋼の製造方法が求められている。
【0004】本発明の目的はこのような強靱鋼の製造方
法を提供しようとするものである。
法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記のような従
来法の欠点を有利に排除し得る強靱鋼の製造方法であ
り、その要旨とするところは次のとおりである。 (1) 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を鋳造後A
r3 点以下に冷却することなくあるいはAc3 点以上に
再加熱し、熱間圧延を行い、一度Ar3 点以下に冷却
し、その後にAc 3 点以上の温度に加熱し、焼入れを行
った後、さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法において、
焼入れ時の冷却をAr3 点以上の温度から5℃/秒以上
の冷却速度で500℃以下の温度まで行い、焼戻しは4
50℃以上Ac1 点以下の所定の焼戻し温度までの昇温
速度を1℃/秒以上とし、焼戻し温度での保持を行わず
その後の冷却速度を0.05℃/秒以上20℃/秒以下
で冷却することを特徴とする生産効率の高い強靱鋼の製
造方法。
来法の欠点を有利に排除し得る強靱鋼の製造方法であ
り、その要旨とするところは次のとおりである。 (1) 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を鋳造後A
r3 点以下に冷却することなくあるいはAc3 点以上に
再加熱し、熱間圧延を行い、一度Ar3 点以下に冷却
し、その後にAc 3 点以上の温度に加熱し、焼入れを行
った後、さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法において、
焼入れ時の冷却をAr3 点以上の温度から5℃/秒以上
の冷却速度で500℃以下の温度まで行い、焼戻しは4
50℃以上Ac1 点以下の所定の焼戻し温度までの昇温
速度を1℃/秒以上とし、焼戻し温度での保持を行わず
その後の冷却速度を0.05℃/秒以上20℃/秒以下
で冷却することを特徴とする生産効率の高い強靱鋼の製
造方法。
【0006】(2) 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 さらに、 Cu:3.0%以下 Ni:10.0%以下 Cr:10.0%以下 Mo:3.5%以下 Co:10.0%以下 W :2.0%以下 Ti:0.1%以下 Nb:0.1%以下 V :0.2%以下 B :0.003%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなる鋼を鋳造後Ar3 点以下に冷却する
ことなくあるいはAc3 点以上に再加熱し、熱間圧延を
行い、一度Ar3 点以下に冷却し、その後にAc 3 点以
上の温度に加熱し、焼入れを行った後、さらに焼戻しを
行う鋼板の製造方法において、焼入れ時の冷却をAr3
点以上の温度から5℃/秒以上の冷却速度で500℃以
下の温度まで行い、焼戻しを450℃以上Ac1 点以下
の所定の焼戻し温度までの昇温速度を1℃/秒以上と
し、焼戻し温度での保持を行わずその後の冷却速度を
0.05℃/秒以上20℃/秒以下で冷却することを特
徴とする生産効率の高い強靱鋼の製造方法。
避的不純物からなる鋼を鋳造後Ar3 点以下に冷却する
ことなくあるいはAc3 点以上に再加熱し、熱間圧延を
行い、一度Ar3 点以下に冷却し、その後にAc 3 点以
上の温度に加熱し、焼入れを行った後、さらに焼戻しを
行う鋼板の製造方法において、焼入れ時の冷却をAr3
点以上の温度から5℃/秒以上の冷却速度で500℃以
下の温度まで行い、焼戻しを450℃以上Ac1 点以下
の所定の焼戻し温度までの昇温速度を1℃/秒以上と
し、焼戻し温度での保持を行わずその後の冷却速度を
0.05℃/秒以上20℃/秒以下で冷却することを特
徴とする生産効率の高い強靱鋼の製造方法。
【0007】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明の基本となる考え方は以下の通りである。まず、金
属学的な見地から直接焼入れを含む焼入れ、焼戻しで製
造される鋼の強度、靱性について考えてみるとそれはま
ず第一に金属組織の微細さに依存している。通常、焼入
れ、焼戻しで製造される鋼の金属組織はマルテンサイト
とベイナイトからなり、その結晶粒が微細であるほど強
靱である。また、金属組織中に存在する炭化物は析出強
化に寄与することや破壊の起点となり得るという観点か
ら微細に分散していることが望ましい。さらにマルテン
サイト変態などの変態により導入された転位や加工され
たオーステナイトから引き継がれた転位が金属組織中に
多く残存することによって強度が上昇し、場合によって
は可動転位が延性を促進することによって鋼の靱性を増
す。一連の製造工程において上述のような金属組織状態
を具現化し、なおかつ、生産性を阻害しない方法を実現
することが必要である。本発明においては、焼戻し方法
を刷新することによりこれを実現するものである。
発明の基本となる考え方は以下の通りである。まず、金
属学的な見地から直接焼入れを含む焼入れ、焼戻しで製
造される鋼の強度、靱性について考えてみるとそれはま
ず第一に金属組織の微細さに依存している。通常、焼入
れ、焼戻しで製造される鋼の金属組織はマルテンサイト
とベイナイトからなり、その結晶粒が微細であるほど強
靱である。また、金属組織中に存在する炭化物は析出強
化に寄与することや破壊の起点となり得るという観点か
ら微細に分散していることが望ましい。さらにマルテン
サイト変態などの変態により導入された転位や加工され
たオーステナイトから引き継がれた転位が金属組織中に
多く残存することによって強度が上昇し、場合によって
は可動転位が延性を促進することによって鋼の靱性を増
す。一連の製造工程において上述のような金属組織状態
を具現化し、なおかつ、生産性を阻害しない方法を実現
することが必要である。本発明においては、焼戻し方法
を刷新することによりこれを実現するものである。
【0008】一般に焼戻し工程で生じる主たる冶金現象
は、固溶炭素原子がセメンタイトとして排出する、
固溶炭素原子がFe以外の金属元素との炭化物として析
出する、変態時に生じた金属組織中に残留する多数の
転位が消滅あるいは著しく減少する、マルテンサイ
ト、ベイナイトの結晶粒が回復成長する、の4点である
ことが知られている。これらの現象は一般に焼戻しの温
度が高いほどその進行が速い。従って、高温に長時間保
持し、焼戻しが過剰に行われた鋼の状態はセメンタイト
やその他の炭化物が粗大化し、固溶炭素は少なく、変形
初期に容易に移動できる転位や強化に寄与する転位もあ
まり残存しないものとなる。このような状態の鋼は強度
が低く、靱性の点でも劣る。一方、焼き戻しが不十分な
鋼は固溶炭素原子や転位が多量に含有され、結晶粒の成
長もそれほど進んでいないので極めて強度が高い。しか
しながら炭素原子の過剰の固溶による靱性の劣化が著し
い。従来法によれば固溶炭素を排出し、かつ転位を多く
残留させ、析出および結晶粒を微細なままに保つために
低温で長時間の保持を行う手段がとられていた。従っ
て、生産性が極めて低い。
は、固溶炭素原子がセメンタイトとして排出する、
固溶炭素原子がFe以外の金属元素との炭化物として析
出する、変態時に生じた金属組織中に残留する多数の
転位が消滅あるいは著しく減少する、マルテンサイ
ト、ベイナイトの結晶粒が回復成長する、の4点である
ことが知られている。これらの現象は一般に焼戻しの温
度が高いほどその進行が速い。従って、高温に長時間保
持し、焼戻しが過剰に行われた鋼の状態はセメンタイト
やその他の炭化物が粗大化し、固溶炭素は少なく、変形
初期に容易に移動できる転位や強化に寄与する転位もあ
まり残存しないものとなる。このような状態の鋼は強度
が低く、靱性の点でも劣る。一方、焼き戻しが不十分な
鋼は固溶炭素原子や転位が多量に含有され、結晶粒の成
長もそれほど進んでいないので極めて強度が高い。しか
しながら炭素原子の過剰の固溶による靱性の劣化が著し
い。従来法によれば固溶炭素を排出し、かつ転位を多く
残留させ、析出および結晶粒を微細なままに保つために
低温で長時間の保持を行う手段がとられていた。従っ
て、生産性が極めて低い。
【0009】本発明者等の研究により、焼戻し時の昇温
速度を従来法に比して増加させ、焼戻し温度での保持を
行わず冷却することによって、炭素原子をセメンタイト
として析出させて固溶量を減少させ、靱性を良好に保ち
得ることが判った。また同時に従来法では昇温・保持中
に生じていた(従来法では昇温速度が遅く、保持時間が
長い)結晶粒および析出物の粗大化や転位の著しい減少
を防ぐことができ、従来より強度、靱性の優れた鋼を製
造できることが判明した。このような現象は昇温速度が
大きい場合に特徴的な現象であり、新しい発見である。
速度を従来法に比して増加させ、焼戻し温度での保持を
行わず冷却することによって、炭素原子をセメンタイト
として析出させて固溶量を減少させ、靱性を良好に保ち
得ることが判った。また同時に従来法では昇温・保持中
に生じていた(従来法では昇温速度が遅く、保持時間が
長い)結晶粒および析出物の粗大化や転位の著しい減少
を防ぐことができ、従来より強度、靱性の優れた鋼を製
造できることが判明した。このような現象は昇温速度が
大きい場合に特徴的な現象であり、新しい発見である。
【0010】また本発明法においては昇温時間がきわめ
て短いことから焼戻しにともなう前述のからのごと
き強度、靱性を支配する冶金現象は従来法では昇温・保
持中に生じているのに対して冷却中にも生じているもの
と推定される。従って、本発明法によれば単に強度、靱
性に優れた鋼を製造するばかりでなく、冷却時の冷却速
度を制御することにより、焼戻しが不十分で靱性を損な
わない範囲で、焼戻しの進行を制御し、その材質を制御
することも可能である。
て短いことから焼戻しにともなう前述のからのごと
き強度、靱性を支配する冶金現象は従来法では昇温・保
持中に生じているのに対して冷却中にも生じているもの
と推定される。従って、本発明法によれば単に強度、靱
性に優れた鋼を製造するばかりでなく、冷却時の冷却速
度を制御することにより、焼戻しが不十分で靱性を損な
わない範囲で、焼戻しの進行を制御し、その材質を制御
することも可能である。
【0011】次に、生産性の見地からは図1に示すよう
に昇温速度を増加させ、保持を行わないために焼戻しに
要する実処理時間を大幅に減少させることができ、生産
性を著しく向上することが可能となるのである。即ち、
本発明法を適用することによって、従来法に比してきわ
めて短時間で、強度、靱性に優れた鋼の製造が可能なの
である。
に昇温速度を増加させ、保持を行わないために焼戻しに
要する実処理時間を大幅に減少させることができ、生産
性を著しく向上することが可能となるのである。即ち、
本発明法を適用することによって、従来法に比してきわ
めて短時間で、強度、靱性に優れた鋼の製造が可能なの
である。
【0012】このような新しい発見に基づき本発明法に
おける鋼の化学成分、製造条件を詳細に調査した結果、
本発明者らは請求項1、2に示したような強靱な厚鋼板
の製造方法を創案した。以下に本発明の構成要件の限定
の理由について述べる。Cは鋼の強化を行うのに有効な
元素であり、0.02%未満では十分な強度が得られな
い。一方、その含有量が0.25%を超えると、溶接性
を劣化させる。
おける鋼の化学成分、製造条件を詳細に調査した結果、
本発明者らは請求項1、2に示したような強靱な厚鋼板
の製造方法を創案した。以下に本発明の構成要件の限定
の理由について述べる。Cは鋼の強化を行うのに有効な
元素であり、0.02%未満では十分な強度が得られな
い。一方、その含有量が0.25%を超えると、溶接性
を劣化させる。
【0013】Siは脱酸元素として、また鋼の強化元素
として有効であるが、0.05%未満の含有量ではその
効果がない。一方、0.60%を超えると、鋼の表面性
状を損なう。Mnは鋼の強化に有効な元素であり、0.
03%未満では十分な効果が得られない。一方、その含
有量が3.50%を超えると鋼の加工性を劣化させる。
として有効であるが、0.05%未満の含有量ではその
効果がない。一方、0.60%を超えると、鋼の表面性
状を損なう。Mnは鋼の強化に有効な元素であり、0.
03%未満では十分な効果が得られない。一方、その含
有量が3.50%を超えると鋼の加工性を劣化させる。
【0014】Alは脱酸元素として添加されるが、0.
005%未満の含有量ではその効果がなく、0.10%
を超えると、鋼の表面性状を劣化させる。TiおよびN
bはいずれも微量の添加で結晶粒の微細化と析出強化の
面で有効に機能するので溶接部の靱性を劣化させない範
囲で使用してもよい。このような観点からその添加量の
上限を0.1%とする。
005%未満の含有量ではその効果がなく、0.10%
を超えると、鋼の表面性状を劣化させる。TiおよびN
bはいずれも微量の添加で結晶粒の微細化と析出強化の
面で有効に機能するので溶接部の靱性を劣化させない範
囲で使用してもよい。このような観点からその添加量の
上限を0.1%とする。
【0015】Cu,Ni,Cr,Mo,Co,Wはいず
れも鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、本発明の場
合、その添加により鋼の強度を高めることができる。し
かし、過度の添加は鋼の靱性および溶接性を損なうた
め、Cu:3.0%以下、Ni:10.0%以下、C
r:10.0%以下、Mo:3.5%以下、Co:1
0.0%以下、W:2.0%以下に限定する。
れも鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、本発明の場
合、その添加により鋼の強度を高めることができる。し
かし、過度の添加は鋼の靱性および溶接性を損なうた
め、Cu:3.0%以下、Ni:10.0%以下、C
r:10.0%以下、Mo:3.5%以下、Co:1
0.0%以下、W:2.0%以下に限定する。
【0016】Vは析出強化により鋼の強度を高めるのに
有効であるが、過度の添加は鋼の靱性を損なうために、
その上限を0.10%とする。Bは鋼の焼入れ性を向上
させる元素である。本発明における場合、その添加によ
り鋼の強度を高めることができるが、過度の添加はBの
析出物を増加させ鋼の靱性を損ねるのでその含有量の上
限を0.0025%とする。
有効であるが、過度の添加は鋼の靱性を損なうために、
その上限を0.10%とする。Bは鋼の焼入れ性を向上
させる元素である。本発明における場合、その添加によ
り鋼の強度を高めることができるが、過度の添加はBの
析出物を増加させ鋼の靱性を損ねるのでその含有量の上
限を0.0025%とする。
【0017】次に、本発明における製造条件に就いて述
べる。本発明はいかなる鋳造条件で鋳造された鋼片につ
いても有効であるので、特に鋳造条件を特定する必要は
ない。また、鋳片を冷却することなく、そのまま熱間圧
延を開始しても一度冷却した鋳片をAc3 点以上に再加
熱した後に圧延を開始してもよい。なお、本発明におい
ては圧延あるいは圧延後の冷却の条件に就いては特に規
定するものではないが、これはAr3 点以上の温度の圧
延であれば、いかなる圧延、冷却を行っても本発明の有
効性が失われないからである。ただし、本発明では焼戻
しにより鋼中の結晶粒、炭化物を微細な状態に保つとい
う目的があるので、本発明の効果を最大限に利用するた
めには焼戻しに先立つ加熱、焼入れ後に結晶粒が微細で
あることや、炭化物形成元素が固溶しているか、あるい
は微細に析出していることが望ましい。従って、制御圧
延や加速冷却を行って、圧延、冷却後の結晶粒や炭化物
を微細にしておくことが好ましい。
べる。本発明はいかなる鋳造条件で鋳造された鋼片につ
いても有効であるので、特に鋳造条件を特定する必要は
ない。また、鋳片を冷却することなく、そのまま熱間圧
延を開始しても一度冷却した鋳片をAc3 点以上に再加
熱した後に圧延を開始してもよい。なお、本発明におい
ては圧延あるいは圧延後の冷却の条件に就いては特に規
定するものではないが、これはAr3 点以上の温度の圧
延であれば、いかなる圧延、冷却を行っても本発明の有
効性が失われないからである。ただし、本発明では焼戻
しにより鋼中の結晶粒、炭化物を微細な状態に保つとい
う目的があるので、本発明の効果を最大限に利用するた
めには焼戻しに先立つ加熱、焼入れ後に結晶粒が微細で
あることや、炭化物形成元素が固溶しているか、あるい
は微細に析出していることが望ましい。従って、制御圧
延や加速冷却を行って、圧延、冷却後の結晶粒や炭化物
を微細にしておくことが好ましい。
【0018】次に、焼入れ前の加熱温度をAc3 点以上
の温度としたのはAc3 点未満の温度では鋼の全体がオ
ーステナイトへ変態せず、フェライト等の前組織が残留
してしまい焼入れにも引き継がれ、強度の低下や金属組
織の不均一さのために靱性が劣化してしまうからであ
る。また、本発明では焼戻しにより鋼中の固溶炭素原
子、結晶粒、炭化物、転位の状態を制御するものである
から、フェライトやパーライトからなる組織に対しては
固溶炭素や転位が残存しておらず、炭化物もかなり成長
していると考えられるので、その有効性は期待できな
い。従って、焼入れ後の金属組織としてはマルテンサイ
トもしくはベイナイトであることが必要である。そこで
Ar3 点以下の冷却速度を5℃/秒以上と限定した。ま
た、冷却の終了温度を500℃以下と限定したのはこれ
を超えるとマルテンサイト、ベイナイトの組織が得られ
ないからである。
の温度としたのはAc3 点未満の温度では鋼の全体がオ
ーステナイトへ変態せず、フェライト等の前組織が残留
してしまい焼入れにも引き継がれ、強度の低下や金属組
織の不均一さのために靱性が劣化してしまうからであ
る。また、本発明では焼戻しにより鋼中の固溶炭素原
子、結晶粒、炭化物、転位の状態を制御するものである
から、フェライトやパーライトからなる組織に対しては
固溶炭素や転位が残存しておらず、炭化物もかなり成長
していると考えられるので、その有効性は期待できな
い。従って、焼入れ後の金属組織としてはマルテンサイ
トもしくはベイナイトであることが必要である。そこで
Ar3 点以下の冷却速度を5℃/秒以上と限定した。ま
た、冷却の終了温度を500℃以下と限定したのはこれ
を超えるとマルテンサイト、ベイナイトの組織が得られ
ないからである。
【0019】次に、焼戻し条件についてであるが、焼戻
し温度を450℃以上としたのはこれ未満では温度が低
すぎ固溶炭素を短時間で容易に析出させることができな
いからである。また、焼戻し温度をAc1点以下とした
のはAc1点を超えると変態が生じてしまい、強度の低
下や組織の不均一さのために靱性が劣化してしまうから
である。焼戻し中の昇温速度を1℃/秒以上としたの
は、それ未満では昇温中に転位の回復、組織・析出物の
粗大化、固溶炭素原子の析出が生じてしまい、強度、靱
性を高めることができないからである。
し温度を450℃以上としたのはこれ未満では温度が低
すぎ固溶炭素を短時間で容易に析出させることができな
いからである。また、焼戻し温度をAc1点以下とした
のはAc1点を超えると変態が生じてしまい、強度の低
下や組織の不均一さのために靱性が劣化してしまうから
である。焼戻し中の昇温速度を1℃/秒以上としたの
は、それ未満では昇温中に転位の回復、組織・析出物の
粗大化、固溶炭素原子の析出が生じてしまい、強度、靱
性を高めることができないからである。
【0020】最後に、焼戻し後の冷却速度を0.05℃
/秒以上20℃/秒以下としたのは、0.05℃/秒未
満では冷却中に転位の回復、結晶粒や析出物の粗大化、
固溶炭素原子の析出が過剰に進行し、高い強度が得られ
なくなるからである。また20℃/秒としたのはこれを
超えると焼戻しが不十分となり固溶炭素原子の排出が十
分に行われず、靱性の劣化を生じるからである。
/秒以上20℃/秒以下としたのは、0.05℃/秒未
満では冷却中に転位の回復、結晶粒や析出物の粗大化、
固溶炭素原子の析出が過剰に進行し、高い強度が得られ
なくなるからである。また20℃/秒としたのはこれを
超えると焼戻しが不十分となり固溶炭素原子の排出が十
分に行われず、靱性の劣化を生じるからである。
【0021】
【実施例】次に本発明の有効性を実施例に基づいて示
す。表1、2は実施例の鋼の成分を示すものである。こ
のような成分の鋼を表3〜8に示す製造条件で製造した
場合に、同じく表3〜8に示すような強度、靱性、焼戻
しに要した処理時間が得られた。
す。表1、2は実施例の鋼の成分を示すものである。こ
のような成分の鋼を表3〜8に示す製造条件で製造した
場合に、同じく表3〜8に示すような強度、靱性、焼戻
しに要した処理時間が得られた。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
【表7】
【0029】
【表8】
【0030】
【発明の効果】本発明法は比較法に比べ明らかに生産性
が高く、強度・靱性に優れた鋼を製造することが可能で
あり、本発明は有効である。
が高く、強度・靱性に優れた鋼を製造することが可能で
あり、本発明は有効である。
【図1】昇温速度と焼戻しの実処理時間の関係を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 崇史 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 中央研究本部内 (56)参考文献 特開 平2−270914(JP,A) 特開 平4−358022(JP,A) 特開 平3−68715(JP,A) 特開 平3−223420(JP,A) 特開 平4−311515(JP,A) 特開 昭57−79116(JP,A) 特開 昭58−31025(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/02 C21D 6/00
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を鋳造後A
r3 点以下に冷却することなくあるいはAc3 点以上に
再加熱し、熱間圧延を行い、一度Ar3 点以下に冷却
し、その後にAc 3 点以上の温度に加熱し、焼入れを行
った後、さらに焼戻しを行う鋼板の製造方法において、
焼入れ時の冷却をAr3 点以上の温度から5℃/秒以上
の冷却速度で500℃以下の温度まで行い、焼戻しは4
50℃以上Ac1 点以下の所定の焼戻し温度までの昇温
速度を1℃/秒以上とし、焼戻し温度での保持を行わず
その後の冷却速度を0.05℃/秒以上20℃/秒以下
で冷却することを特徴とする生産効率の高い強靱鋼の製
造方法。 - 【請求項2】 重量%で C :0.02〜0.25% Si:0.05〜0.60% Mn:0.3〜3.50% Al:0.10%以下 さらに、 Cu:3.0%以下 Ni:10.0%以下 Cr:10.0%以下 Mo:3.5%以下 Co:10.0%以下 W :2.0%以下 Ti:0.1%以下 Nb:0.1%以下 V :0.2%以下 B :0.003%以下 の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなる鋼を鋳造後Ar3 点以下に冷却する
ことなくあるいはAc3 点以上に再加熱し、熱間圧延を
行い、一度Ar3 点以下に冷却し、その後にAc 3 点以
上の温度に加熱し、焼入れを行った後、さらに焼戻しを
行う鋼板の製造方法において、焼入れ時の冷却をAr3
点以上の温度から5℃/秒以上の冷却速度で500℃以
下の温度まで行い、焼戻しを450℃以上Ac1 点以下
の所定の焼戻し温度までの昇温速度を1℃/秒以上と
し、焼戻し温度での保持を行わずその後の冷却速度を
0.05℃/秒以上20℃/秒以下で冷却することを特
徴とする生産効率の高い強靱鋼の製造方法。
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---|---|---|---|
JP3133070A JP3015924B2 (ja) | 1991-06-04 | 1991-06-04 | 強靱鋼の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP3133070A JP3015924B2 (ja) | 1991-06-04 | 1991-06-04 | 強靱鋼の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH04358023A JPH04358023A (ja) | 1992-12-11 |
JP3015924B2 true JP3015924B2 (ja) | 2000-03-06 |
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ID=15096143
Family Applications (1)
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JP3133070A Expired - Lifetime JP3015924B2 (ja) | 1991-06-04 | 1991-06-04 | 強靱鋼の製造方法 |
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JP (1) | JP3015924B2 (ja) |
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-
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- 1991-06-04 JP JP3133070A patent/JP3015924B2/ja not_active Expired - Lifetime
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