JP5708431B2 - 溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、造船、建築、橋梁、海洋構造物およびラインパイプなどに使用される溶接熱影響部(Heat Affected Zone:以下、「HAZ」と称す。)の靭性に優れた鋼板及びその製造方法に関するものである。特に、近年要求の高まっている入熱25kJ/mmを超える大入熱溶接を施工した場合にも、HAZにおいて優れた靭性を有する鋼板に関するものである。
造船、建築、橋梁、海洋構造物およびラインパイプなどの大型構造物に用いられる溶接構造用鋼板は、溶接部の破壊に対する安全性および信頼性を高める観点から、靱性に対する要求が年々厳しさを増しており、母材鋼板の靭性と同様に、HAZにおいてもより優れた靱性を確保することが要求されている。例えば、HAZ靭性が母材靭性と比較して大幅に劣る場合、構造物が衝撃荷重を受けた場合にHAZからき裂が発生し、大規模な構造物の破壊に進展するといった危険性があるからである。
一方で、この種の大型鋼構造物の建造コストに占める溶接施工コストの割合は大きく、溶接施工コストを低減するために、高能率の溶接法が用いられるようになった。溶接施工コストを低下させるために最も有効な方法は、溶接パス数を減らすことであり、このためには溶接入熱を大きくした高能率溶接法を用いて大入熱溶接施工を行うことが望ましい。しかし、大入熱溶接を行った場合、HAZ靭性が低下することは避けられない。したがって、靭性の要求が厳しい構造物に対しては、入熱を制限して溶接パス数を増やし、能率と経済性を犠牲にして溶接施工せざるを得ないという問題点があった。
これらの問題を解決するため、これまでにも大入熱溶接HAZ靱性を改善するための種々の対策が実施されてきた。
例えば、特許文献1には、鋼材中のCa,O,Sの含有量を調整し、大入熱溶接をした際に、溶接熱影響部を微細な組織とすることにより、優れたHAZ靭性を有する大入熱溶接用鋼材に関する発明が記載されている。加えて、特許文献1には、鋼板を溶製する際の凝固段階で晶出したCaSの表面上にMnSを析出させ、さらにMnS上には、TiN、BN、AlN、VN等のフェライト生成核を析出させることにより、大入熱溶接時の高温下でも溶解しないフェライト変態生成核を微細に分散させ、HAZ組織を微細なフェライト-パーライト組織として高靭性化を達成させる発明が記載されている。
また、特許文献2には、製鋼における脱酸材をTi、Al、Caの順に添加し、さらにAlを添加することで酸化物を微細に分散させ、溶接ボンド部近傍で1400℃以上に加熱される領域のオーステナイト細粒化、粒内フェライト生成を同時に達成する溶接継手部靱性の優れた鋼材の製造方法に関する発明が記載されている。加えて、特許文献2では、Ca、Al、またはCa、Al、Tiのいずれかを含有する酸化物の微細分散、個数増加を図り、オーステナイト粒細粒化や微細フェライト生成によって優れたHAZ靭性を有する鋼材が得られるとの発明が記載されている。
特開2002-256379号公報 特開2001-288509号公報
しかし、これらの発明におけるCa含有酸化物やCa硫化物は、その一部は溶鋼中において微細に分散されるものの、凝集粗大化して介在物として存在する。これら粗大介在物が鋼中に残存すると大入熱溶接HAZにおいて金属組織を微細化したとしても靱性の低下が避けられない。また、微細に分散した介在物も、凝固後の圧延過程において破砕、延伸されることで扁平した形状となり、破壊の起点として作用するため粗大介在物と同様にHAZ靱性の低下を招く原因となる。
よって、上述のCa含有酸化物やCa硫化物による靭性改善技術は、粗大介在物や扁平した介在物の存在によりHAZ靭性改善効果には自ずと限界があった。
前述の通り、近年、鋼構造物に対する安全性および信頼性の確保に対する要求はますます高まっている。鋼板の靱性評価手法として一般的に用いられているシャルピー衝撃試験においても、従来であれば目的とする温度でくり返し試験をした場合の吸収エネルギの平均値が規定値を上回れば規格を満足するとされてきた。しかし、最近ではより安定的な高靭性が求められ、大入熱溶接HAZにおけるシャルピー衝撃試験においても、くり返し試験をした場合の吸収エネルギの最低値まで問題にされるようになってきた。
その背景は、次の(i)および(ii)の2点にある。
(i) シャルピー衝撃試験において吸収エネルギの平均値が高くても、個々の値にバラツキがあるということは、構造物の中に靱性の低い領域が存在していることを示しており、こうした特定の脆弱な部位で破壊が発生すると構造物全体に甚大な被害を及ぼす可能性が高いと考えられるようになってきたこと。
(ii) 重要な鋼構造物に対しては、安全性確認のために、例えば溶接長100m当り1回のシャルピー衝撃試験を行い合格することを求められる場合があり、このような場合には、シャルピー吸収エネルギの個々の値で安定した高靭性が得られなければ、何度も繰り返される試験にすべて合格することが困難であること。
以上の背景から、鋼板中に粗大な介在物や扁平した介在物が多数存在する場合、大入熱溶接HAZにおけるシャルピー衝撃試験時の破壊起点として作用する確率が高くなるため、安定して高靱性を得ることができず、重要構造物への適用は困難であった。
このため本発明の目的は、溶接熱影響部(HAZ)の靱性に優れた鋼板およびその製造方法を提供することにある。特に、重要構造物に用いることができ、入熱25kJ/mm以上の大入熱溶接でのHAZにおけるシャルピー衝撃試験で安定して高い吸収エネルギを示す靱性に優れた鋼板およびその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、大入熱溶接熱影響部においても安定した高靭性を有する鋼板を提供するべく、種々の検討と実験を行った。その結果、次の(a)〜(e)に示すとおり、適正な介在物制御と硬質第二相組織制御の技術を組合せることによって、新たな金属学的効果が得られるとの知見を得た。
(a) 一般に、溶接熱影響部に高靭性が要求される重要構造物には、Al添加により鋼中の酸素を固定したAlキルド鋼が用いられる。ところが、大入熱溶接を適用する場合にはAlキルド鋼では、充分な靱性を確保することが困難である。そこで上述した通り、Alに加えてCaを添加し、Caを含む介在物を利用した大入熱溶接HAZ靱性改善技術の開発が進められてきた。しかし、これらのCa添加鋼板は、溶接熱影響部においてシャルピー衝撃試験をくり返し実施した場合の個々の値のばらつきが大きく、溶接継手中に脆弱な部位が存在すると考えられる。したがって、溶接構造物の破壊安全性をさらに高めることができる鋼板開発が求められている。
(b) 発明者らは、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギ個々の値のばらつきについて鋭意研究し、鋼中の粗大介在物や圧延で延伸された介在物、または圧延により破砕され点列状に連なった介在物の集合体が、溶接熱影響部のシャルピー衝撃試験時に、き裂の発生と伝播を助長し、吸収エネルギの低値発生とばらつきの原因となっていることを見出した。また、従来より、HAZ靱性の改善に有効とされてきた金属組織の微細化だけでは、これらの低値発生を抑えられないことが判明した。なお、鋼中の粗大介在物とは、主としてAlとCaを含む酸硫化物のことである。そして、これらの介在物の内、比較的小さいサイズのものであっても圧延によって延伸、破砕され、点列状に連なった介在物群が生じることが判明した。
(c) このような粗大介在物ないし延伸された介在物、または点列状の介在物群が、シャルピー衝撃試験片のノッチ近傍に存在すれば、その周囲に発生する応力集中効果により、へき開破壊の発生およびき裂の伝播が容易となり、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギは著しく低下する。したがって、鋼板中の介在物サイズおよび形態を制御してこれらの有害な介在物の生成を防止することが、吸収エネルギの個々の値のばらつきを防止するための重要な要素となる。このためには、AlとCaを含む酸硫化物を微細分散させ、かつ圧延中にも延伸、破砕しないようにすることが肝要である。AlとCaを溶鋼中に添加した場合、ある特定の組成の酸化物では融点が低下し、溶鋼中で液体となり、その表面積を最小にするために球状化する性質があることが判明した。また、この球状化した介在物は凝固後の圧延過程においても延伸、破砕が生じないことを見出した。この効果を得るためにはCaを酸素で除した値であるCa/Oが0.5以上、1.30以下であることが必要であり、この条件を満たす介在物が分散した鋼は、介在物の長径を短径で除した値、つまり介在物のアスペクト比が1.9以下となり、球状に近い介在物が得られるとともに、大入熱溶接HAZにおいてくり返しシャルピー衝撃試験を行った場合にも安定して高い吸収エネルギ値が得られた。しかし、溶鋼中の酸素量が著しく高い場合には、鋼中の介在物の絶対量が増加するため、上述のCa/Oの値を満足しても粗大介在物の生成を避けることはできない。これを防止するためには、溶鋼中の酸素を制御する必要があるが、溶鋼中のAl含有量が0.005〜0.08質量%の範囲となるようにAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置で15分以上処理して溶鋼の酸素量を充分に下げた後、溶鋼温度を1600±70℃に保った状態でCaを添加することで粗大介在物の生成を防止し、大入熱溶接HAZ靱性のばらつきを抑制することができることを見出した。
(d) しかし、一方で、入熱25kJ/mmを超える大入熱溶接HAZではこれら介在物影響のみならず、硬質第二相組織の生成もまた、へき開破壊の発生およびき裂の伝播を助長することが判明した。つまり硬質第二相組織が生成すると介在物サイズならびに形態制御によるシャルピー吸収エネルギの改善効果が失われてしまうことが新たに判明した。
(e) その理由は、これらHAZにて生成する硬質第二相組織をつぶさに観察した結果から、マルテンサイト組織とオーステナイト相とが複合した島状マルテンサイト組織(Martensite−Austenite constituent:以下「MA」と称す。)が生成したためであると判明した。このようなMAは母相と比較して非常に硬度が高いため、介在物と同じくシャルピー衝撃試験片のノッチ近傍に存在すれば、その周囲に発生する応力集中効果により、へき開破壊の発生およびき裂の伝播が容易となり、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギを著しく低下させる原因となる。したがって、入熱25kJ/mmを超える大入熱溶接HAZの靭性を改善するためには、鋼板中の介在物形態制御に加えて、MAの生成を防止し、その生成量を大入熱HAZにおいて1%未満とする必要がある。発明者等が鋭意検討した結果、このためにはCを始めとする合金元素の制御が必要で、その組成は溶接低温割れ感受性組成であるPcm*を用いて簡便に整理することができ、Pcm*≦0.23およびPcm*−0.75C≧0.1の2つの式を同時に満足することで大入熱溶接HAZにおけるMAの生成量を面積率で1%未満に制御できることを見出した。ここで、Pcm*=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/3+Nb/2+23{B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)}と表される。ただし、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)≦0のとき、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)=0として取り扱うこととする。また各式の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す。
本発明は、このような知見に基づいて完成したものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)の溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板並びに(3)溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板の製造方法にある。
(1) 質量%で
C:0.02〜0.2%,
Si:0.03〜0.5%,
Mn:0.5〜2.0%,
P:0.02%以下,
S:0.002%未満,
Al:0.005〜0.08%,
Ti:0.003〜0.02%,
N:0.002〜0.009%,
O:0.001〜0.0035%,
Ca:0.0003〜0.0045%
を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足する化学組成を有する鋼板であって、
溶接熱影響部のミクロ組織において、島状マルテンサイトの面積率が1.0%未満であり、かつ鋼中にAlとCaを含む粒径5.0μm以下の介在物が存在し、その介在物のアスペクト比が1.9以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。

0.50≦Ca/O≦1.30 ・・・・・(1)、
Pcm*≦0.23 ・・・・・(2)、
Pcm*−0.75C≧0.1 ・・・・・(3)
ここで、
Pcm*=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/3+Nb/2+23{B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)}
ただし、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)≦0のとき、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)=0として取り扱う。
また、(1)式、(2)式および(3)式の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示し、アスペクト比とは、鋼板の圧延方向に平行な断面で観察される介在物の長径を短径で除した値を意味する。
(2) さらにFeの一部に代えて、質量%で
Cu:1.5%以下,
Ni:6.0%以下,
Cr:1.0%以下,
Mo:0.8%以下,
V:0.1%以下,
Nb:0.05%以下及び
B:0.005%以下
の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)の溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。
(3) 上記(1)または(2)に係る鋼板の製造方法であって、溶鋼中のAl含有量が0.005〜0.08質量%の範囲となるようにAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置で15分以上処理した後、溶鋼温度1530〜1670℃で溶鋼中に下記(4)式を満足する量のCaを添加し、鋳造してなる上記(1)または(2)の化学組成を有するスラブを熱間圧延することを特徴とする、溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板の製造方法。

21+2.52・O−5≦Ca≦21+2.52・O+5・・・・・(4)
ただし、Caは溶鋼1トン当たりのCa添加量(g)を、そしてOは溶鋼中の酸素量(ppm)を、それぞれ表す。
本発明によれば、溶接熱影響部(HAZ)の靱性に優れた鋼板およびその製造方法を提供することができる。特に、重要構造物に用いることができ、入熱25kJ/mm以上の大入熱溶接でのHAZにおけるシャルピー衝撃試験で安定して高い吸収エネルギを示す靱性に優れた鋼板およびその製造方法を提供することができる。
1.鋼板の化学組成について
以下、本発明に係る鋼板の化学組成について説明する。なお、含有量に関する「%」および「ppm」は、いずれも質量割合を意味する。
C:0.02〜0.2%
Cは、母材及び溶接部の強度、靭性を確保するため、0.02%以上含有させる必要がある。しかし、Cが多すぎると島状マルテンサイトの生成を助長しHAZ靭性を低下させるとともに溶接性を劣化させるため、その上限を0.2%とする。したがって、Cの含有量は0.02〜0.2%とする。
Si:0.03〜0.5%
Siは、脱酸作用を有し、鋼の予備脱酸によって鋼中に含有される。また、母材の強度確保に有効である。これらの効果を得るために、0.03%以上含有させる。しかし、過剰に含有させると島状マルテンサイトの生成を助長しHAZ靭性を劣化させるため、上限を0.5%とする。したがって、Siの含有量は0.03〜0.5%とする。なお、良好なHAZ靭性を得るために、Siの含有量の上限を0.4%以下にするのが望ましい。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは母材及びHAZ部の強度、靭性の確保に不可欠であり、そのためにMnを0.5%以上含有させる。しかし、Mnの含有量が多すぎると、HAZ靭性の劣化や、スラブの中心偏析助長による溶接性劣化などが起こるため、Mnの含有量の上限を2.0%とする。したがって、Mnの含有量は0.5〜2.0%とする。
P:0.02%以下
Pは本発明においては不純物元素である。Pの含有量が0.02%を超えると、スラブ中心の偏析が大きくなり、母材及びHAZの機械的性質を低下させ、更にはHAZの粒界破壊が起こるおそれがある。したがって、Pの含有量を0.02%以下とする。
S:0.002%未満
Sは不純物として存在し、多すぎると板厚中心部で延伸したMnSが多量に生成するため、母材及びHAZの靭性が劣化する。また、SはCaとの親和力が大きくCaSを生成して、適正な複合酸化物の生成を阻害する。したがって、Sの含有量を0.002%未満とする。
Al:0.005〜0.08%
Alは本発明において重要な元素の一つである。Alを溶鋼中に添加した場合、脱酸剤として作用し、Alを生成する。Alは溶鋼中にてクラスターを形成し、圧延を施した場合にはこれらのクラスターが分離し、点列状につらなって鋼板中に分散することとなる。この場合、点状につらなったAlはシャルピー試験時のき裂の発生起点となり、母材の靭性を劣化させる。また、Alは安定な酸化物であるため溶接によっても変化せず、最終的にHAZに残留するため、HAZ靭性をも劣化させる。
しかし、本発明ではAlとともにCaを添加することにより、鋼中にAlとCaを含む介在物を生成せしめ、破壊起点として作用することを防止する。したがって、Alは0.005%以上含有させる必要がある。一方、大量に添加すると、鋼中に固溶するAlが増加し、溶接冷却過程において残留オーステナイトのセメンタイトへの分解反応を抑制して島状マルテンサイトを増加させ、溶接部の靭性を低下させる。したがって、Al含有量の上限を0.08%とする。したがって、Alの含有量は0.005〜0.08%とする。なお、Alは0.02%以上含有させるのが好ましい。
Ti:0.003〜0.02%
TiはTiNとして析出し、HAZでのオーステナイトの粗大化抑制効果を有する。また、フェライト変態の核として作用し、その粒内組織微細化効果のために、HAZ靭性が向上する。この効果を得るには、Tiを0.003%以上含有させる必要がある。一方、Tiの含有量が多くなると固溶Tiが増加し、HAZ靭性が低下するため、Tiの含有量の上限を0.02%とする。したがって、Tiの含有量は0.003〜0.02%とする。
N:0.002〜0.009%
NはTiNの析出に極めて重要な元素の1つであり、Nの含有量が0.002%未満ではTiNの析出量が不足し、冷却時に有害なTi炭化物が生成するため、Nを0.002%以上含有させる必要がある。一方、含有量が多くなると、固溶Nが過剰となりTiNが粗大化するため、0.009%以下とする。したがって、Nの含有量は0.002〜0.009%とする。なお、Nは0.004%を超えて含有させるのが好ましい。
O:0.001〜0.0035%
O(酸素)は、本発明において最も重要な元素の1つであり、介在物の球状化のみならず、分散個数や介在物サイズとも直接的に関わるため、厳密に制御されなければならない。本発明においては、Oの含有量が少なければ少ないほど好ましいが、0.001%未満にすることは工業的に困難であり、コスト上昇に見合った効果が得られない。よってその下限を0.001%とした。一方、0.0035%を超える過剰なOは、粗大な酸化物を形成するとともに、介在物個数を必要以上に増加させ、鋼板の清浄性を劣化させるため母材およびHAZの靭性に悪影響を及ぼす。よって、その上限を0.0035%とした。したがって、Oの含有量は0.001〜0.0035%とする。
Ca:0.0003〜0.0045%
Caは、本発明において最も重要な元素の1つであり、介在物の球状化を達成するためには、AlおよびOとともに厳密に制御する必要がある。Caは脱酸材として作用するとともに、鋼中にAlとCaを含む酸化物を形成せしめ、介在物形態を制御するためにも必要な元素である。したがって、Caを0.0003%以上含有させる必要がある。しかし、大量に添加すると鋼の清浄性を低下させるとともに、Alを含まないCaO主体の酸化物を生成し、圧延で破砕され点列状に連なりやすい介在物へと変化するため、HAZの靭性を劣化させる。このため、Caの含有量を0.0045%以下とする。したがって、Caの含有量は0.0003〜0.0045%とする。
Ca/O:0.50〜1.30
溶鋼中で生成されるAlとCaを含む酸化物において、CaOとAlがほぼ1:1で共存した場合、酸化物の融点は溶鋼温度以下に低下し液化する。この時、酸化物には表面張力が作用し球状となる。この作用を利用してAlとCaを含む物の形態制御をするためには、Ca/Oを0.50〜1.30とする必要がある。Ca/Oが1.30を超えるとCaO主体の酸化物になり、また、Ca/Oが0.50未満であるとAl主体の酸化物となって、何れの場合も酸化物の融点が溶鋼温度を超えることとなり、介在物の球状化は困難となる。なお、より球状化を促進するためには、Ca/Oを0.63〜1.13とすることが望ましい。
Pcm*≦0.23かつPcm*−0.75C≧0.1
大入熱溶接HAZで生成される島状マルテンサイトは、Cのみならず他の合金元素が増加することによっても生成が助長される。Pcm*は、元来TMCP鋼の溶接低温割れ防止のためのパラメーターとして開発されたものである。しかし、このパラメーターはHAZの硬度と良い相関を持つことが知られており、HAZの硬度が高くなるとフェライト主体の組織からベイナイト主体の組織へと変化し、島状マルテンサイトも増加する。そこで本発明ではPcm*を島状マルテンサイト生成防止のための指標とするとともに、元来の溶接低温割れ特性を改善する指標とすることから、Pcm*を0.23以下と規定した。
一方、靭性もPcm*と関連する。ただし、靭性は鋼中のCが大きく影響する。よって、Pcm*にCの影響度を考慮し、Pcm*−0.75Cを靭性の指標とした。そして、靭性の確保を可能にするために、Pcm*−0.75C≧0.1を満足することが必要である。
本発明に係る鋼板は、上記の元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼板を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明に係る鋼板には、必要に応じて、次の元素の中から選んだ1種または2種以上を含有させることができる。
Cu:1.5%以下
Cuは、必要に応じて含有させることができる。Cuを含有させると、靭性を劣化させずに強度を上昇させることができる。しかし、その含有量が1.5%を超えると、鋼の焼き入れ性を過度に高め、HAZ靱性を損なう傾向が強くなる。したがって、Cuの含有量は1.5%以下とする。なお、Cuによる効果を得たい場合には、Cuを0.1%以上含有させることが好ましい。
Ni:6.0%以下
Niは、必要に応じて含有させることができる。Niの適正量を添加することによって、溶接性およびHAZ靱性に悪影響を及ぼすこともなく、母材の強度、靱性を向上させることができる。しかし、その含有量が6.0%を超えると、構造用鋼板として極めて高価になって経済性を失うので、Ni含有量は6.0%以下とする。なお、Niによるこれらの効果を得たい場合には、Niを0.1%以上含有させることが望ましい。Niによる焼入性向上効果を得たい場合には、Niを0.1%以上含有させることが望ましい。特に、Cuを共存させる場合は圧延時のひび割れ(Cuチェッキング)を防止するために、0.1%以上のNiを含有させるのが望ましい。
Cr:1.0%以下
Crは、必要に応じて含有させることができる。Crの適正量を含有させることによって、焼入性を高めることができる。一方、Crの含有量が1.0%を超えると、他の成分条件を満足させても、HAZ靭性が劣化するので、Cr含有量は1.0%以下とする。なお、Crのこの様な効果を得たい場合には、Crの含有量を0.05%以上とするのが好ましい。
Mo:0.8%以下
Moは、必要に応じて含有させることができる。Moを含有させると、母材の強度と靱性を向上させる効果がある。一方、Moの含有量が0.8%を超えると、特にHAZの硬度が高まり靱性を損なうので、Mo含有量は0.8%以下とする。なお、Moによる効果を得たい場合には、Moを0.05%以上含有させるのが好ましい。
V:0.1%以下
Vは、必要に応じて含有させることができる。Vを含有させると、主に焼戻し時の炭窒化物析出により母材の強度を向上させる効果がある。一方、Vの含有量が0.1%を超えると、母材の性能向上効果が飽和し、靱性劣化を招くので、Vの含有量は0.1%以下とする。なお、Vによる効果を得たい場合には、Vを0.005%以上含有させるのが好ましい。
Nb:0.05%以下
Nb母材組織の微細化に有効であり、母材の機械的性質を向上させる効果がある。一方、Nbの含有量が0.05%を超えると、母材ならびにHAZの靭性が劣化するので、Nbの含有量は0.05%以下とする。なお、Nbによる効果を得たい場合には、0.0040%以上含有させることが好ましい。
B:0.005%以下
Bは、必要に応じて含有させることができる。Bを含有させると焼入れ性を高めて母材やHAZの機械的性質を向上させる。一方、Bの含有量が0.005%を超えると、HAZ靭性や溶接性が劣化するので、Bの含有量は0.005%以下とする。なお、Bによる効果を得たい場合には、0.0003%以上含有させることが好ましい。
2.島状マルテンサイトについて
溶接熱影響部のミクロ組織において、島状マルテンサイトの面積率を1.0%未満とする。ここで、溶接熱影響部は入熱25kJ/mm以上の1層溶接により接合されたときの溶接熱影響部であり、島状マルテンサイトが1.0%以上であると、HAZ靭性が低下する。
3.AlとCaを含む介在物について
溶鋼中にAlおよびCaを添加した場合、AlおよびCaOの生成は避けられないが、このような介在物が生成すると母材靭性またはHAZ靭性の低下を招く。したがって、適切に介在物を制御する必要がある。以下で述べる介在物では、点列状につらなった介在物を一つの延伸した介在物と見なして差し支えない。
粒径:5.0μm以下
介在物の大きさが粗大となると、シャルピー衝撃試験において破壊の起点となるため、介在物の粒径は5.0μm以下とする。粒径が小さいほど、破壊の起点として作用しにくくなるため、介在物の粒径の下限は規定しない。
アスペクト比:1.9以下
介在物が球状化し、アスペクト比(長径/短径)が1に近い場合、シャルピー試験時の同介在物および周辺組織への応力集中が緩和されるため、靭性が向上し、安定化する。一方でアスペクト比の大きい長径化した介在物がシャルピー試験片のノッチ近傍に存在する場合、応力集中源となり、そこから発生するき裂の伝播によって、靭性が著しく低下する。このため、アスペクト比を1.9以下とする。
本発明にかかるAlとCaを含む介在物の粒径およびアスペクト比は、以下のような方法で定量的に測定すればよい。すなわち、鋼板の圧延方向に対し平行な断面、好ましくは断面中心部から観察用試料を作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000〜10000倍の倍率で、少なくとも100個以上のAlとCaを含む酸化物を観察すればよい。具体的には、画像処理により、粒径は介在物の投影面積を同じ面積の円と見立てた場合の円の直径(いわゆる円相当径)から求めればよく、アスペクト比は介在物の長径を短径で除した値の平均値を算出すればよい。なお、このときに測定した長径の平均値を、介在物の粒径として使用することに何ら問題はない。
AlおよびCaOの介在物は、Ca/Oが0.50〜1.30の範囲であれば、溶鋼中で球状化し、またこの組成の介在物は圧延によって破砕や延伸されることがないため、そのアスペクト比は小さくなる傾向がある。しかし、Ca/Oが0.50を下回るか、または1.30を超える場合には、酸化物は溶鋼中で完全に球状化せず、圧延中に破砕され点列状につらなった形状となり、アスペクト比が大きくなる傾向がある。
AlおよびCaOの介在物は、上述のAl含有量、Ca含有量およびO含有量の上限とCa/Oの条件を満たすように組成制御するとともに、後述するような製造方法により所定の粒径、アスペクト比を有する介在物とすることができる。
4.鋼板の製造方法について
本発明に係る鋼板は、たとえば、その製鋼段階に特徴をもたせることによって製造することができる。すなわち、溶鋼中のAlが0.005〜0.08%となるようにAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置(RH)にて15分以上還流処理した後、溶鋼温度を1530〜1670℃に保った状態でCaを添加してスラブを鋳造し、圧延することによって、本発明に係る鋼板の製造方法とすることができる。
最初に添加するAlは脱酸力が強いため、溶鋼中の固溶酸素と結合し、Alを生成する。この時、Alは、溶鋼中のAlが0.005〜0.08%となるようにAlを添加する。溶鋼中のAlが0.005%未満の場合には、Alによる脱酸が不十分となり、Tiの酸化物が鋼中に生成してしまい、十分に鋼中にTiNを形成することができない。また、溶鋼中のAlが0.08%を超える場合には、余分なAlが鋼中に固溶Alとして残留し、母材、ならびにHAZの靭性が劣化する。
続いて脱ガス装置(RH)にて15分以上還流することにより、粗大なAlを浮上分離させる。ここで「脱ガス装置で15分以上処理」とは、投入したAlが溶鋼中に均一に混合した後に15分以上処理することを意味する。
還流処理によりAlは基本的に除去されるが、一部溶鋼中に残留する。このような溶鋼にCaを添加すると、Al介在物が一部還元され、AlとCaを含む酸化物が形成される。このとき、溶鋼の温度を1530〜1670℃の範囲に制御することにより酸化物は液化が促進され、表面張力が作用するために、同介在物は球状化する。Caを添加する際の溶鋼の温度は、1580〜1620℃の範囲に制御することが望ましい。
また、形成されるAlとCaを含む介在物の形態は、Caの添加量に依存する。介在物の粒径およびアスペクトを調整するために、Caは次の(4)式を満足するように添加する。なお、溶鋼中の酸素量Oはその場測定を行えばよい。
21+2.52・O−5≦CaA≦21+2.52・O+5・・・・・(4)
ただし、Caは溶鋼1トン当たりのCa添加量(g)を、そしてOは溶鋼中の酸素量(ppm)を、それぞれ表す。
さらにこの後は、鋳造工程、圧延工程を経て溶接熱影響部靭性に優れた溶接構造用鋼板を製造する。本製造方法においては、製鋼段階後の鋳造および圧延は、通常の方法により行うことが出来る。圧延以後のプロセスとして、通常圧延まま、制御圧延、さらにこれと制御冷却と焼もどしの組合せ、及び焼入れ・焼もどしの組合せなどを行っても、酸化物の形態、組成は変化しないため、靭性への影響にはなんら変化はないため差し支えない。
表1に示す43種類の化学組成を有する試験鋼を、150kg真空溶解炉を用いて溶製した。このとき、溶鋼中にAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置(RH)にて還流処理した後、Caを添加して、各150kgのスラブを鋳造した。このときの溶鋼中のAl含有量(質量%)、脱ガス処理時間(分)、Caを添加する際の溶鋼温度(℃)、溶鋼中の酸素量O(ppm)および溶鋼1トン当たりのCa添加量Ca(g)を表2に示す。
Figure 0005708431
Figure 0005708431
そして、各鋼塊を鍛造して、厚さ160mmの鋼片とした。次いで、各鋼片を表3に示す温度(℃)に加熱して熱間圧延し、各仕上温度で仕上げた後に冷却した。その後、表3に示す温度(℃)で1時間保持して焼戻し熱処理を施し、板厚25〜60mmの鋼板とした。
Figure 0005708431
このようにして得た各鋼板について、開先加工した鋼板突き合わせ部に25〜95kJ/mmのエレクトロガスアーク溶接を実施した。また、それぞれの溶接熱影響部(HAZ)において小型試験片を採取し、鏡面に研磨した後、光学顕微鏡を用いて観察し、島状マルテンサイトの面積率およびAlとCaを含む粒径0.5〜5μmの介在物のアスペクト比を測定した。さらに、それぞれのHAZから、JIS4号シャルピー衝撃試験片を圧延方向と平行な方向に採取し、シャルピー衝撃試験を3回実施し、試験温度0℃での吸収エネルギーを測定した。これらの測定結果を合わせて表3に示す。なお、HAZにおけるシャルピー衝撃試験の目標値は試験温度0℃での吸収エネルギー値で100J以上である。
なお、島状マルテンサイトの面積率およびAlとCaを含む粒径0.5〜5μmの介在物のアスペクト比に関しては、以下のようにして測定をした。
島状マルテンサイトの面積率については、レペラ腐食法を用いて現出した組織を倍率1000倍で光学顕微鏡観察し、得られた像を画像解析した。そして、20視野観察分の全面積に対する島状マルテンサイトの全面積割合を算出し、その値が1.0%未満か否かを判断した。
AlとCaを含む介在物については、倍率1000倍での光学顕微鏡観察によって得られた像を画像解析し、その中で粒径0.5〜5μmのもの(粒径を算出する場合には、介在物の面積から求めた円相当径を粒径とした。)に関して、そのアスペクト比(長径/短径の比)を、20視野観察して算出した。そして、個々のAlとCaを含む粒径0.5〜5μmの介在物のアスペクト比について、算術平均した値が1.9以下か否かを判断した。
表3において、鋼の化学組成(Ca/O比、Pcm*、Pcm*−0.75Cの規定を含む)並びに溶接熱影響部(HAZ)における島状マルテンサイトの面積率およびAlとCaを含む粒径0.5〜5μmの介在物のアスペクト比が本発明で規定する範囲内にある鋼No.1〜30については、いずれも入熱量25kJ/mm以上という大入熱溶接であるにもかかわらず、HAZにおけるシャルピー衝撃試験の目標値(試験温度0℃での吸収エネルギー値:100J以上)を満足しており、HAZの靱性に優れていることが分かる。
これに対して、鋼No.31〜39は鋼の化学組成(Ca/O比、Pcm*、Pcm*−0.75Cの規定を含む)が本発明鋼の規定から外れるため、HAZにおけるシャルピー衝撃試験の目標値(試験温度0℃での吸収エネルギー値:100J以上)に達せず、HAZの靱性が劣ることが分かる。
そして、鋼No.40〜43は鋼の化学組成(Ca/O比、Pcm*、Pcm*−0.75Cの規定を含む)は本発明鋼で規定する範囲内にあるが、HAZにおける島状マルテンサイトの面積率およびAlとCaを含む粒径0.5〜5μmの介在物のアスペクト比が本発明鋼の規定から外れるため、HAZにおけるシャルピー衝撃試験の目標値(試験温度0℃での吸収エネルギー値:100J以上)に達せず、HAZの靱性が劣ることが分かる。
本発明に係る鋼板は、入熱25kJ/mm以上の大入熱溶接を経ても溶接熱影響部(HAZ)の靱性に優れているので、重要構造物に用いることができる。

Claims (3)

  1. 質量%で
    C:0.02〜0.2%,
    Si:0.03〜0.5%,
    Mn:0.5〜2.0%,
    P:0.02%以下,
    S:0.002%未満,
    Al:0.005〜0.08%,
    Ti:0.003〜0.02%,
    N:0.002〜0.009%,
    O:0.001〜0.0035%,
    Ca:0.0003〜0.0045%
    を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足する化学組成を有する鋼板であって、溶接熱影響部のミクロ組織において、島状マルテンサイトの面積率が1.0%未満であり、かつ鋼中にAlとCaを含む粒径5.0μm以下の介在物が存在し、その介在物のアスペクト比が1.9以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。

    0.50≦Ca/O≦1.30 ・・・・・(1)、
    Pcm*≦0.23 ・・・・・(2)、
    Pcm*−0.75C≧0.1 ・・・・・(3)
    ここで、
    Pcm*=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/3+Nb/2+23{B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)}
    ただし、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)≦0のとき、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)=0として取り扱う。
    また、(1)式、(2)式および(3)式の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示し、アスペクト比とは、鋼板の圧延方向に平行な断面で観察される介在物の長径を短径で除した値を意味する。
  2. さらにFeの一部に代えて、質量%で
    Cu:1.5%以下,
    Ni:6.0%以下,
    Cr:1.0%以下,
    Mo:0.8%以下,
    V:0.1%以下,
    Nb:0.05%以下及び
    B:0.005%以下
    の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。
  3. 請求項1または2に係る鋼板の製造方法であって、溶鋼中のAl含有量が0.005〜0.08質量%の範囲となるようにAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置で15分以上処理した後、溶鋼温度1530〜1670℃で溶鋼中に下記(4)式を満足する量のCaを添加し、鋳造してなる請求項1または2の化学組成を有するスラブを熱間圧延することを特徴とする、溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板の製造方法。

    21+2.52・O−5≦Ca≦21+2.52・O+5・・・・・(4)
    ただし、Caは溶鋼1トン当たりのCa添加量(g)を、そしてOは溶鋼中の酸素量(ppm)を、それぞれ表す。
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