JP7167482B2 - 窒化用非調質鋼およびクランクシャフト - Google Patents

窒化用非調質鋼およびクランクシャフト Download PDF

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Description

この発明は、窒化処理後の曲げ矯正性が要求されるクランクシャフト等の部品に好適に用いられる窒化用非調質鋼およびこれを用いたクランクシャフトに関する。
自動車用クランクシャフトは、一般的には鋳造もしくは鍛造にて製造され、強度や剛性が重視される場合は、炭素鋼もしくは低合金鋼に熱間鍛造を施したものが用いられる。そして、更に高強度化が必要とされる場合は、高周波焼入れやガス軟窒化処理等の表面硬化処理が施される。
ガス軟窒化処理は、NH3を含んだ雰囲気中でA1変態点以下の温度(500℃~650℃程)に加熱することにより、鋼材表面に窒素および炭素を浸入させ、窒素の固溶または微細な炭窒化物の析出により表層を硬化させる方法である。かかるガス軟窒化処理は、高周波焼入れや調質処理(焼入、焼戻し処理)に比べて、熱処理温度が低く熱処理歪みが小さいという特徴がある。しかしながら、ガス軟窒化処理においてもクランクシャフトのような部品では曲がりが生じ易く、その結果、真直性が確保出来なくなった場合には、曲り矯正加工を行うこととなる。
このため、クランクシャフトの製造に用いられる鋼材には強度とともに十分な曲げ矯正性が求められる。ここで曲げ矯正性とは、窒化処理や軟窒化処理を施すことで生じる変形(曲り)の矯正加工(元の形状に戻す加工)を、容易且つ厳密に行うことができることを意味する。矯正性が低い場合、変形矯正の際に、元の形状に戻らなかったり、部品表面に疲労強度の低下に繋がる亀裂が入ったりする。
しかしながら、一般的に強度(疲労強度)と曲げ矯正性はトレードオフの関係にあり、疲労強度を高めるために表層の硬度を高くすると、曲げ矯正性は逆に低下する傾向が認められ、例えば700MPa以上といった高い疲労強度が求められるクランクシャフトでは、特に曲げ矯正性が悪化してしまう問題があった。
このような問題に対し、下記特許文献1では「非調質型窒化クランクシャフト」についての発明が示され、そこにおいて表面から0.05mm位置のHV硬さを380~600とし、かつ、ピンフィレット部、ジャーナルフィレット部およびピン部の化合物層深さを5μm以下とすることで、高い曲げ疲労強度とともに十分な曲げ矯正性を得るようになした点が開示されている。しかしながらこの特許文献1に記載のものは、窒化処理後に所定部位での化合物層深さを5μm以下とするための追加工や軟窒化処理条件の変更が必要となり製造コストが増加してしまう。
また、下記特許文献2では「軟窒化クランクシャフト及びその製造方法」についての発明が示され、そこにおいて、熱間鍛造および機械加工の後に歪開放熱処理を施すことで、蓄積された残留応力を解放するとともに残留γを分解し、その後に実施される軟窒化処理での曲りを防止するようになした点が開示されている。しかしながらこの特許文献2に記載のものも、新たに熱処理工程(歪開放熱処理)が追加されるため、製造コストが増加してしまう問題がある。
特開2014-129607号公報 特開2014-218683号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、製造コストの増加に繋がるような新たな工程を追加することなく所定の疲労強度を確保しつつ十分な曲げ矯正性を確保することが可能な窒化用非調質鋼およびこれを用いたクランクシャフトを提供することを目的としてなされたものである。
而して本発明の請求項1は、「窒化用非調質鋼」に関するもので、質量%で、C:0.20~0.50%、Si:0.05~0.60%、Mn:0.80~1.70%、S:0.001~0.20%、Cu:0.60~1.20%、Ni:0.01~1.00%、Cr:0.05~0.50%、Ti:0.002~0.040%、N:0.005~0.040%、残部がFe及び不可避的不純物であり、且つ下記式(1),式(2)を満たし、主としてフェライト・パーライトの2相組織からなることを特徴とする。
F1≧0.30・・式(1)
F2≧11.9・・式(2)
但しF1=0.20[C]+0.04[Mn]+0.18[Cu]+[Cr]
F2=-13[C]-25[Si]+3[Mn]+2[Cu]+5[Ni]-15[Cr]+15
(F1,F2の式中[ ]は、[ ]内元素の含有質量%を表す)
請求項2のものは、請求項1において、質量%で、Mo:0.10%以下、Al:0.05%以下、Ca:0.0003~0.0060%、Pb:0.300%以下、の何れか1種若しくは2種以上を更に含有することを特徴とする。
請求項3は、「クランクシャフト」に関するもので、請求項1,2の何れかに記載の鋼からなり、表層に窒化層が形成されていることを特徴とする。
窒化処理された部品(鋼材)は表層に窒化層が形成される。窒化層は、主としてFe23N(ε相)およびFe4N(γ′相)から成る化合物層と、その直下に形成されマトリックス中に窒素が拡散している窒素拡散層(以下、単に拡散層と称する)から成る。ガス軟窒化処理では窒素に加え炭素の浸入も加わる。
本発明者が、窒化層の性状が曲げ矯正性に及ぼす影響を調べたところ、化合物層の厚みの減少に伴い曲げ矯正性が高まること、また化合物層に占めるγ′相の比率の増加に伴い曲げ矯正性が高まることを確認した。そして、化合物層の厚みの減少および化合物層に占めるγ′相の比率の増加は、いずれも鋼中のCu量を増やすことで実現可能であることを見出した。
また曲げ矯正性を高めるためには、窒化層におけるパーライト延性を向上させることも有効であり、鋼中のNi量およびMn量を増やすことでパーライト延性を向上させることが可能であることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて、化合物層厚さ・構造等を制御することにより疲労強度と曲げ矯正性の両立を図ったものである。具体的には、疲労強度に及ぼす合金成分の影響を定式化した指数F1と、曲げ矯正性に及ぼす合金成分の影響を定式化した指数F2とを設け、これら指数F1、F2を満たすように各合金元素の含有量を規定することで、所定の疲労強度と十分な曲げ矯正性の両立を図っている。
次に本発明における各化学成分の限定理由を以下に詳述する。尚、以降の説明では、特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味するものとする。
「請求項1の化学成分について」
C:0.20~0.50%
Cは、強度を高めるのに有効な元素である。必要な強度を得るには0.20%以上の添加を必要とする。但し、過剰な添加は鍛造硬度が高くなりすぎ機械加工性が悪化する。また曲げ矯正性も悪化する。このため、その上限を0.50%とする。好適なCの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.30~0.45%である。
Si:0.05~0.60%
Siは、鋼の脱酸元素として有効な元素である。また硬度を高める効果もある。その効果を得るため0.05%以上の添加が必要である。但し、0.60%より多く添加されると曲げ矯正性の悪化を招くため、その上限を0.60%とする。好適なSiの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.05~0.35%である。
Cu:0.60~1.20%
Cuは、化合物層の厚さ・構造を変化させ曲げ矯正性を高めるのに有効な元素である。またCuは耐力を高める効果もある。これらの効果を得るため0.60%以上添加する。
但し、過剰な添加は熱間鍛造後の硬さが高くなり被削性の低下を招くほか、コストアップの要因にもなることから、その上限を1.20%とする。好適なCuの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.70~1.10%である。
図1(A)は化合物層の厚さに及ぼすCu量の影響を示す。
図1(A)では、0.40C-0.10Si-1.40Mn-0.50Ni-0.050S-0.15Cr-0.025Ti-0.025Nを基本成分とし、Cu量を0.15%、0.49%、0.99%、1.5%と変化させた4種類の試験片を、600℃、2時間の条件でガス軟窒化処理した際、試験片表面に形成された化合物層の厚みを示している。同図によれば、Cu量の増加に伴い化合物層の厚みが減少していることが分かる。
図1(B)は化合物層の構造に及ぼすCu量の影響を示す。
図1(B)では、上記4種類の試験片での化合物層に占めるε相の比率およびγ′相の比率を示している。同図によれば、Cu量の増加に伴い化合物層に占めるγ′相の比率が増加(一方、ε相の比率が低下)していることが分かる。
図2は、上記試験片における窒化層組織を示している。同図において最表層の白く見える層は試料保護のためのNiメッキで、その下に化合物層及び主にフェライト・パーライトを呈する拡散層が認められる。同図に示すように化合物層は、ポーラス層と緻密層からなる。図1(A)で示す化合物層厚さは、ポーラス層を含んだ化合物層の厚さである。また図2では、化合物層におけるε相およびγ′相を濃淡(ε相を白、γ′相を灰色)で区別して表している。
この図2を見ても、鋼中のCu含有量を高めることで、形成される化合物層の厚さを薄くするとともに化合物層に占めるγ′相の比率を高めることが可能であることが分かる。
尚、図2において、拡散層の、化合物層と接する領域の一部において、他とは異なる色で表されているのは、N濃度の高い領域に生じたオーステナイトである。
Ni:0.01~1.00%
Niは、窒化層におけるパーライト延性を高めて曲げ矯正性を向上させるために有効な元素である。その効果を得るため0.01%以上含有させる。但し、過剰な添加は熱間鍛造後の硬さが高くなり被削性の低下を招くほか、コストアップの要因にもなることから、その上限を1.00%とする。好適なNiの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.20~1.00%である。
Mn:0.80~1.70%
Mnは、強度を高めるのに有効な元素である。またNiと同様に曲げ矯正性を向上させる効果がある。またMn系硫化物を形成し被削性を向上させる効果もある。
0.80%より少ないと疲労強度が低下し、1.70%より多いと高硬度化により機械加工性の悪化を招き、また曲げ矯正性が悪化する。このため含有量は0.80~1.70%とする。好適なMnの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.90~1.60%である。
S:0.001~0.20%
Sは、鋼材中で硫化物を形成し機械加工性を向上させる効果がある。その効果を得るため0.001%以上添加する。但し、過剰な添加は介在物量を増加させ疲労強度の低下を招くため、その上限を0.20%とする。好適なSの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.030~0.100%である。
Cr:0.05~0.50%
Crは、疲労強度向上に寄与する元素である。その効果を得るため0.05%以上添加する。但し、過剰に添加すると窒化物が多量に生成し曲げ矯正性の悪化を招くため、その上限を0.50%とする。好適なCrの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.05~0.30%である。
Ti:0.002~0.040%
Tiは、鍛造時のオーステナイト粒の粗大化を防止し、曲げ矯正性向上に寄与する元素である。その効果を得るため0.002%以上添加する。但し、過剰な添加はコストアップの要因となるため、その上限を0.040%とする。好適なTiの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.005~0.035%である。
N:0.005~0.040%
Nは、鍛造時のオーステナイト粒の粗大化を防止し、曲げ矯正性向上に寄与する元素である。その効果を得るため0.005%以上添加する。但し、過剰な添加は粗大な炭窒化物を生成し、疲労強度低下の要因となるため、その上限を0.040%とする。好適なNの範囲は、諸特性のバランスに優れた0.007~0.035%である。
F1≧0.30・・式(1)
但しF1=0.20[C]+0.04[Mn]+0.18[Cu]+[Cr]
F1は、疲労強度に関する指数である。C,Mn,Cu,Crは、疲労強度を高める効果がある。C,Mn,Cu,Crの係数は、それぞれ疲労強度向上に対する寄与度を表している。本発明では、F1の値を0.30以上とすることで700MPa以上の高い曲げ疲労強度を得ることができる。F1の値は、好ましくは0.35以上である。
F2≧11.9・・式(2)
但しF2=-13[C]-25[Si]+3[Mn]+2[Cu]+5[Ni]-15[Cr]+15
F2は、曲げ矯正性に関する指数である。Cuは化合物層厚さ・構造を変化させ、またMn,Niはマトリックスの延性を高めて、それぞれ曲げ矯正性を高める効果がある。
一方、C,Si,Crは、曲げ矯正性を悪化させる元素である。
F2におけるC,Si,Mn,Cu,Ni,Crの係数は、それぞれ曲げ矯正性向上に対する寄与度を表している。本発明では、F2の値が11.9以上あれば実際のクランクシャフト製造工程において、亀裂の発生なく矯正加工を行なうことができるとの知見の下、指数F2の下限値を11.9と規定している。F2の値は、好ましくは12.0以上である。

本発明の窒化用非調質鋼は、上記のような組成を有するとともに、熱間鍛造後においてその組織が主としてフェライト・パーライトの2相組織からなるものである。
一般に、非調質鋼を用いたクランクシャフトは、熱間鍛造→機械加工→研削仕上→軟窒化→曲げ矯正(室温)→研磨仕上げの各工程を経て製造されるが、本発明の窒化用非調質鋼は、曲げ矯正性に優れているため、軟窒化処理の後に曲げ矯正加工を経て製造されるクランクシャフトに好適に用いることができる。
「請求項2の化学成分について」
Mo:0.10%以下
Moは、強度向上に寄与する元素である。但し、過剰に添加すると硬度が高くなり被削性が悪化するため、添加量は0.10%以下とする。
Al:0.05%以下
Alは、溶製時の脱酸剤として使用される元素である。但し、過剰に添加されると軟窒化時に窒化物が生成し曲げ矯正性が悪化するため、その上限を0.05%とする。
Ca:0.0003~0.0060%
Caは、被削性を向上させる効果を有する元素である。その効果を得るためには0.0003%以上添加する必要がある。但し、過剰に添加しても効果は飽和するため、上限を0.0060%とする。
Pb:0.300%以下
Pbは、被削性を向上させる効果を有する元素である。但し、0.300%より多く添加しても効果は飽和するため、その上限を0.300%とする。
以上のような本発明によれば、製造コストの増加に繋がるような新たな工程を追加することなく所定の疲労強度を確保しつつ十分な曲げ矯正性を確保することが可能な窒化用非調質鋼およびこれを用いたクランクシャフトを提供することができる。
(A)は化合物層厚さに及ぼすCu量の影響を示した図である。(B)は化合物層の構造に及ぼすCu量の影響を示した図である。 Cu量の異なる各試験片の窒化層の組織を示した図である。 試験片作製時の熱間鍛造条件を示した図である。 曲げ疲労強度および曲げ矯正性を評価するための試験片形状を表した図である。 試験片作製時の軟窒化処理条件を示した図である。 曲げ矯正性を評価するため方法を示した図である。 各実施例および比較例のF1値と疲労限度との関係を示した図である。 各実施例および比較例のF2値と限界変位量との関係を示した図である。
次に本発明の実施例を以下に説明する。ここでは、溶解・鋳造→粗鍛造→熱間模擬鍛造→機械加工→軟窒化処理の工程を経て製造された試験片を用いて、曲げ疲労強度および曲げ矯正性について評価した。
1.試験片の製造
真空誘導溶解炉にて下記表1に示す化学成分の鋼塊150kgを溶製し、熱間で粗鍛造してΦ70mmの丸棒に加工し、その後大気中で放冷して室温まで冷却した。その後、
Φ70mm丸棒材を図3に示すように1250℃加熱し、1000~1150℃の温度で鍛造し、45mm角の棒状片を作製した。熱間鍛造後は大気中で放冷して室温まで冷却した。棒状片の鍛造後の組織はフェライト・パーライトであった。
次に45mm角の棒状片に機械加工を施し、図4に示す形状の試験片10を作製した。
Figure 0007167482000001
2.ガス軟窒化処理
上記のようにして作製した試験片10に対しガス軟窒化処理を行った。
ガス軟窒化処理は、オリエンタルエンヂニアリング(株)製の多目的表面改質装置を使用し、(NH3+CO2+N2)の混合ガスを用いて、図5で示すように600℃で120分保持して行なった、その後、試験片10を120℃の油中にて冷却した。
3.曲げ疲労強度評価および曲げ矯正性評価
得られた軟窒化後の試験片を用いて、曲げ疲労強度および曲げ矯正性について評価した。
(曲げ疲労強度評価)
軟窒化後の試験片を用いて、JIS Z 2274に準拠した方法で小野式回転曲げ疲労試験を行った。試験条件は回転数2500rpm,試験温度は室温の条件である。
疲労強度の評価は、繰返し数107回で破断しない最大応力を疲労限度とし、疲労限度が700MPa以上であった場合を「○」、700MPa未満であった場合を「×」とした。その結果が表1に示してある。尚、表中ではこれら○、×の評価と併せて、括弧書きで実際に測定された疲労限度(単位:MPa)も併せて示してある。
図7は、各実施例および比較例のF1値と疲労限度との関係を示した図である。同図によれば、F1値と疲労限度との間には一定の相関が認められ、F1を0.30以上とすることで700MPa以上の疲労限度が得られていることが分かる。
(曲げ矯正性評価)
曲げ疲労強度の評価と同様に、軟窒化後の試験片10を用いて曲げ矯正性を評価した。図6に示すように試験片10の平行部14両側のR部12,12に歪ゲージを接着した後、試験片10の両端部を支点間距離182mmで支持した状態で、平行部14に治具を用いて下向きの荷重を加え、R部12,12に接着した何れかの歪ゲージが断線した時点での平行部14の下向きの変位量δ(mm)を測定した。
ここで、変位量δ(mm)と試験片10の表層硬さ(Hv)との間には、δ=-0.1[Hv]+38.6で表される比例関係があり、その傾きは略一定であることから、この評価では、上記変位量δに加えて試験に供した試験片10の硬さ(Hv)を求め、上記関係式を利用して表層硬さ0Hvのときの変位量を算出し、これを同一硬さに換算した場合の各試験片の限界変位量δ0とした。
そして曲げ矯正性の評価は、限界変位量δ0が28mm以上の場合を「○」、28mm未満の場合を「×」とした。その結果が表1に示してある。尚、表中ではこれら○、×の評価と併せて、括弧書きで実際に算出された限界変位量δ0(単位:mm)も併せて示してある。
ここで評価基準となる限界変位量δ0の値を28mmとしたのは、限界変位量δ0がこれ以上あれば、実際のクランクシャフト製造工程において、亀裂の発生なく矯正加工を行なうことができるとの知見に基づいている。
なお、試験片の硬さ測定ではビッカース硬さ試験機を用い、JIS Z2244に規定された試験方法により、表面下0.05mmの位置の硬さの5点平均を表層硬さとして測定した。この時の試験荷重は300gとした。
図8は、各実施例および比較例のF2値と限界変位量δ0との関係を示した図である。同図によれば、F2値と限界変位量δ0との間には一定の相関が認められ、F2を11.9以上とすることで28mm以上の限界変位量δ0が得られていることが分かる。
表1の評価結果により、以下のことが分かる。
比較例1は、Cu量とN量、更に曲げ矯正性を表す指数F2の値が本発明の下限値を下回っており、曲げ矯正性の評価が「×」であった。
比較例2は、Cu量が本発明の上限値を上回って過剰に添加されるも、曲げ矯正性を表す指数F2の値は本発明の下限値を下回っている例である。この比較例2においても、曲げ矯正性の評価が「×」であった。
比較例3および比較例4は、各元素の個別含有量は本発明の成分範囲を満足するも、いずれも疲労強度を表す指数F1の値が本発明の下限値を下回っており、疲労強度の評価が「×」であった。
比較例5は、Cu量と曲げ矯正性を表す指数F2の値が本発明の下限値を下回っており、曲げ矯正性の評価が「×」であった。
比較例6は、Ti量が本発明の上限値を上回って過剰に添加される一方、Cu量と曲げ矯正性を表す指数F2の値が本発明の下限値を下回っている例であるが、曲げ矯正性の評価が「×」であった。
これに対し、指数F1,F2を含めて各元素が本発明の成分範囲を満たす実施例1~20は、疲労強度、曲げ矯正性ともに評価は「○」で、疲労強度と曲げ矯正性の両立が図られており、本実施例の組成から成る鋼であれば、軟窒化処理の後に曲げ矯正加工を経て製造されるクランクシャフトに好適に用いることができる。
以上本発明の窒化用非調質鋼について詳しく説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (3)

  1. 質量%で
    C:0.20~0.50%
    Si:0.05~0.60%
    Mn:0.80~1.70%
    S:0.001~0.20%
    Cu:0.60~1.20%
    Ni:0.01~1.00%
    Cr:0.05~0.50%
    Ti:0.002~0.040%
    N:0.005~0.040%
    残部がFe及び不可避的不純物であり、且つ下記式(1),式(2)を満たし、
    主としてフェライト・パーライトの2相組織からなることを特徴とする窒化用非調質鋼。
    F1≧0.30・・式(1)
    F2≧11.9・・式(2)
    但しF1=0.20[C]+0.04[Mn]+0.18[Cu]+[Cr]
    F2=-13[C]-25[Si]+3[Mn]+2[Cu]+5[Ni]-15[Cr]+15
    (F1,F2の式中[ ]は、[ ]内元素の含有質量%を表す)
  2. 請求項1において、質量%で
    Mo:0.10%以下
    Al:0.05%以下
    Ca:0.0003~0.0060%
    Pb:0.300%以下
    の何れか1種若しくは2種以上を更に含有することを特徴とする窒化用非調質鋼。
  3. 請求項1,2の何れかに記載の鋼からなり、表層に窒化層が形成されていることを特徴とするクランクシャフト。
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