JP3915284B2 - 非調質窒化鍛造部品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化処理後に高い疲労強度および優れた曲げ矯正性をもつ窒化用非調質鋼および非調質窒化鍛造部品の製造方法に関する。本発明の窒化用非調質鋼は、自動車エンジン等に使用されるクランク軸の用途に好適である。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車エンジン用クランク軸のように高い疲労強度が要求される鍛造部品では、熱間鍛造後、冷却し、必要に応じ機械加工を行った後、高周波焼入れや窒化処理などの表面強化の処理を行うことが多い。窒化処理は疲労強度向上の点では高周波焼入れに若干劣るものの、表面に硬質の化合物層が生成し、耐焼付き性や耐かじり性の点では著しく優れるため、窒化処理を行う鍛造部品(以下、窒化鍛造部品という)も多い。
【0003】
図1は、調質鋼および非調質鋼の窒化鍛造部品の製造法を示す工程図であり、同図(a) は調質鋼の場合、同図(b) は非調質鋼の場合である。同図(a) に示すように、調質鋼では鋼片は熱間鍛造後、放冷または空冷(非図示)され、調質処理により金属組織形態が調整されるのに対し、同図(b) では、鋼片は鍛造のままの組織である。次いで、窒化処理を行う。ただし、同図に示すように、クランク軸のような機械加工が必要な鍛造部品の場合、窒化処理後では表面が硬化し、機械加工が困難なため、窒化処理前に必要に応じて旋盤、ドリル等の切削あるいは研削などの機械加工を行う。また、窒化処理後の鍛造部品には曲がりが生じる場合があり、必要に応じ適当な曲げ矯正を行って製品とする。
【0004】
近年、図1(b) に示すように、コスト削減や生産リードタイムの縮小のために調質処理を省略して鍛造のままで製品に供する、いわゆる非調質化が多くの窒化鍛造部品に対して検討されている。しかしながら、調質処理を省略することによってある種の性能が劣化することがあり、非調質化できない部品もある。
【0005】
性能劣化の第一には、疲労強度低下の問題がある。鍛造後に調質処理を行わずに窒化処理を施した部品(以下、非調質窒化鍛造部品という)の疲労限度は、同一組成の鋼を鍛造後に調質処理を行って窒化処理を施した部品(以下、調質窒化鍛造部品という)のそれよりも低い。
【0006】
第二には、曲げ矯正性劣化の問題がある。これは鍛造部品が窒化処理時の加熱および冷却により変形し、曲げ矯正しなければならないときの問題である。曲げ矯正時には表面に大きな塑性ひずみが発生しき裂を生じる。非調質窒化鍛造部品にき裂が発生する限界のひずみ量(以下、曲げ矯正可能ひずみ量という)は、調質窒化鍛造部品のそれよりも小さい。一般に、曲げ矯正時にき裂が発生することによって部品の疲労限度は著しく低くなる。
【0007】
窒化鍛造部品の中でもクランク軸は窒化処理後に曲げ矯正を行うことが多いので、非調質鋼の適用が困難である。
【0008】
これまで、析出硬化元素を高濃度に含有させることによって、鍛造のままで、調質処理を施さずに高い疲労限度を得る発明がなされた。
【0009】
例えば、特開平8-144018号公報には、Cr、V、Alを適量含有させ、窒化処理による表面硬化をねらうとともに、窒化による芯材の強度低下を防止できるとする鋼材が開示されている。
【0010】
特開平1−177338号公報には、Mn、Cr、Mo、Vを適量含有させ、窒化処理による表面硬化により疲労強度を向上させるとする鋼材が開示されている。
【0011】
これらはいずれも強力な析出硬化元素であるバナジウム(V)やクロム(Cr)を高濃度に含有した鋼であり高価である。また窒化処理後の曲げ矯正性は、後述する実施例が示すようにきわめて劣るものとなる。また、これらの公報には、疲労限度および曲げ矯正性を同時に改善する技術は開示されていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、鍛造後の調質が不要で、窒化処理後の曲げ矯正時に発生するき裂がない、またはき裂が発生する限界のひずみ量が高く、かつ疲労限度の高い窒化用非調質鋼および非調質窒化鍛造部品の製造方法を提供することにある。具体的には、代表的な焼入焼もどし処理を行ったS48C鋼の窒化調質鍛造部品に対比して、疲労限度は1.2倍以上、曲げ矯正可能ひずみ量は同等以上の性能を有する窒化用非調質鋼と非調質窒化鍛造部品の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
一般に、窒化処理によって形成される窒化層は、最表面の化合物層とその下の拡散層からなる。拡散層と母材部の境界付近には、高い残留応力が生じている。非調質窒化鍛造部品で疲労破壊が発生する起点は、拡散層内あるいは拡散層と母材の境界部であり、また曲げ矯正で問題となるき裂は拡散層表面でのき裂である。以下の説明で「表面」というとき、化合物層を除いた拡散層の表面側をいうものとする。
【0014】
本発明者らは非調質窒化鍛造部品の疲労強度および曲げ矯正性について種々検討し、以下の知見を得た。
【0015】
(a) 非調質窒化鍛造部品の疲労限度が低い原因は以下による。非調質窒化鍛造部品の残留応力は疲労限度を低下させる主たる原因である。
【0016】
非調質窒化鍛造部品では析出硬化元素を含まない鋼であっても、硬さは表面で著しく高くなり、内部に向かって急勾配で低下する。そのため、表面には高い圧縮残留応力が発生するが、母材と拡散層との境界付近では、この圧縮残留応力と均衡する引張残留応力が生じている。
【0017】
拡散層と母材との境界付近で引張残留応力が高くなるのは、拡散層側表面のみ硬さが著しく高く、かつ硬化層深さが小さいことから来ているものと推定される。これは外部から入った窒素が内部に入りにくく表面にとどまっていることを意味する。この原因を窒化処理時の窒素の拡散挙動から見ると、下記のように考えられる。
【0018】
非調質鋼は、1100℃以上に加熱後1000℃以上で鍛造を終了し、そのまま放冷または空冷するので、組織は巨大な旧オーステナイト粒界に沿った薄いネット状フェライトと、残りの部分のパーライトから構成される。また、非調質鋼のフェライト体積率は、調質鋼(焼準処理)のそれに比較して小さい。これは、非調質鋼のオーステナイト粒径が大きい分だけ焼入れ性が大きく、フェライト変態が抑制されるためである。
【0019】
これに対して、調質鋼の組織は微細なオーステナイトから変態した、微細なフェライトとパーライトの混合組織(焼準の場合)、またはきわめて微細なラス(網目状組織)と炭化物からなるマルテンサイトまたはベイナイト組織(焼入れ焼戻しの場合)、のいずれかである。
【0020】
窒化処理を行う時、窒素の拡散速度はフェライト中では大きく、パーライト中では層状セメンタイトに拡散を阻害されるために拡散速度は著しく小さい。
【0021】
非調質鋼ではフェライトが旧オーステナイト粒界に薄く集中しているために、内部への窒素の拡散はフェライトを通ってしかできない。従って、外部から入った窒素は内部に入りにくい。このため、拡散層深さが浅くなって硬さ分布は急勾配になり、母材部の境界付近に引張残留応力が発生すると考えられる。
【0022】
これに対して、調質処理を行った組織では微細なフェライトが粒界に限らず組織全体に分布しているので、組織全体にわたって窒素の拡散経路が存在する。そのため、調質鋼では窒化処理を施すと表面から内部にまで緩やかな硬さ分布ができ、引張残留応力は小さいと推定される。
【0023】
(b) 非調質窒化鍛造部品の曲げ矯正可能ひずみ量が低下する原因は以下による。鋼の表面硬さが高いほど曲げ矯正の際き裂を生じやすい。しかし、き裂長さは表面硬さだけでは一義的に決まらない。前述したように、非調質鋼の組織はフェライト変態が抑制された混粒となる。曲げ矯正時に発生するき裂は、パーライト粒を一単位として進展し粒界のフェライトで停止するため、一旦き裂が発生するとき裂長さは大きくなる。これに対して調質鋼では、微細なフェライト粒が組織全体に分布しているので、曲げ矯正によってき裂が発生してもさほど進展しないと考えられる。
【0024】
以上をまとめると、
(a) 窒化層深さが浅いことが、疲労強度低下の原因になっている、
(b) 窒化処理後の表面硬さを上昇させると、曲げ矯正性を悪化させる、
ことに集約される。
【0025】
従って非調質窒化鍛造部品では、き裂の起点となる拡散層/母材境界層の高い引張残留応力を低減するため、母材を窒素原子が拡散しやすい組織にして、拡散層の厚さを大きくし、硬さ勾配をなだらかにすることと、窒化によって表面を過度に硬化させないことが必要である。
【0026】
以上の検討から、窒化用鋼としてはフェライト主体組織とするか、それが困難な場合はフェライト+パーライト組織よりもマルテンサイトあるいはベイナイトの単相組織が望ましい。
【0027】
非調質にてマルテンサイトあるいはベイナイト組織が得られればよいが、マルテンサイト単相とするには焼入性向上元素であるCrなどを多量に含有させる必要があり、曲げ矯正性の点から好ましくない。発明者らは、ベイナイト組織が緩冷却によって得られることに着目し、適正な化学組成の範囲および適正な窒化処理条件を見出した。
【0028】
上記の知見に基づいて完成した本発明の要旨は以下の(1)
〜(3) にある。
(1) 化学組成が重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.05〜0.60%、Mn:1.00〜3.00%、P:0.10%以下、Cr:0〜0.15%、V:0〜0.02%、Cu:0.50〜1.50%、Ni:Cu含有量の0.4倍以上、B:0.0020〜0.0040%、N:0.0020〜0.0060%、Ti:0.0040〜0.026%、S:0〜0.10%、Ca:0〜0.0030%、Pb:0〜0.20%を含有し、B、NおよびTiの含有量が、Bsol =B-(11/14){N-(14/48)Ti}で定義されるBsolで0.0010〜0.0030%であり、残部がFeおよび不可避的不純物元素からなることを特徴とする窒化用非調質鋼。
【0029】
(2) 前記(1) 項に記載の窒化用非調質鋼において、S:0.04〜0.10%、Ca:0.0003〜0.0030%、Pb:0.05〜0.20%のうち1種以上の元素を含有することを特徴とする窒化用非調質鋼。
【0030】
(3) 化学組成が重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.05〜0.60%、Mn:1.00〜3.00%、P:0.10%以下、Cr:0〜0.15%、V:0〜0.02%、Cu:0.50〜1.50%、Ni:Cu含有量の0.4倍以上、B:0.0020〜0.0040%、N:0.0020〜0.0060%、Ti:0.0040〜0.026%、S:0〜0.10%、Ca:0〜0.0030%、Pb:0〜0.20%を含有し、B、NおよびTiの含有量が、Bsol =B-(11/14){N-(14/48)Ti}で定義されるBsolで0.0010〜0.0030%であり、残部がFeおよび不可避的不純物元素からなる鋼材を熱間鍛造後、放冷または空冷し、必要に応じて機械加工を行い、熱処理をすることなく窒化処理を500〜580℃で行い、引き続き不活性ガス雰囲気中、500〜580℃で後熱処理を行い、その後、放冷、空冷または炉冷することを特徴とする非調質窒化鍛造部品の製造方法。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の各構成元素の作用および各元素の化学組成を限定した理由は次の通りである。以下の組成%は重量%を示す。
【0032】
C:0.15〜0.35%、
Cは強度および疲労強度確保のため必要な成分である。さらにベイナイト単相組織を得るための基本成分である。0.15%未満では強度不足かつベイナイト生成が困難である。しかし0.35%を超えて含有させると、鍛造性や被削性が劣化する。したがって上限を0.35%とした。好適範囲は0.20〜0.30%である。
【0033】
Mn:1.00〜3.00%、
Mnは、製鋼時の脱酸剤として不可欠であるとともに強度確保のため、またベイナイト単相組織を得るために効果的な元素である。そのため、下限は1.00%としなければならない。3.00%を超えて過剰に含有させると被削性が劣化するとともに曲げ矯正性が低下する。従って、Mn含有量は1.00〜3.00%とする。好適範囲は1.50〜2.50%である。
【0034】
Cr:0〜0.15%、
Crは不純物として混入する以外は添加しない。少ないほどよい。Crを含有すると窒化処理により窒化物を生成し表面の硬さを高め、曲げ矯正性を顕著に劣化させるためである。しかし、含有量を過度に低減させると精錬コストが増大するので、0.15%までは許容する。
【0035】
V:0〜0.02%、
VはCrと同様の作用で曲げ矯正性を顕著に劣化させるので、少ないほどよい。不純物として混入する以外には添加しない。しかし、含有量を過度に低減させると精錬コストが増大するので、0.02%までは許容する。
【0036】
Cu:0.50〜1.50%、
Cuは析出強化元素として母材の強度増加による疲労強度向上に効果的であり、特に窒化時の加熱により著しく析出し強度が向上するので、クランク軸のように窒化前の軟らかい状態で機械加工を済ませるものについては有効な元素である。ただし、強化量は窒化処理時の温度に敏感であり、これについては後述する。析出効果を得るためには0.50%以上含有させる必要がある。一方、1.50%を超えて含有させても効果は飽和し、鍛造中に脆化するので0.50%〜1.50%とする。
【0037】
Ni:Cu含有量の0.4倍以上、
Cuは液体脆化を生じやすい元素であり、前記のようにCuを含有させると熱間鍛造中に材料が割れることがある。これを防止するため、Cuと金属化合物をつくるNiを含有させる。その含有量はCuの0.4倍以上が必要である。
【0038】
B、TiおよびN:
Bsol =B−(11/14){N−(14/48)Ti}で定義されるBsol として0.0010〜0.0030%とする。
【0039】
この関係式はベイナイト組織を確保するための固溶Bを基本に導出したものである。Bを微量含有させると焼入れ性が向上するため、ベイナイト組織が容易に形成される。この効果を得るためには少なくとも固溶Bの状態で0.0010%以上を確保する必要がある。固溶Bが0.0030%を超えると靭性が損なわれるので、0.0030%を超えないようにする。
【0040】
含有Bがすべて固溶Bとはならない。BはNと結合してBNを形成しやすく、固溶Bが失われるためである。従って、Ti添加によってNを固定する必要があり、Tiの含有量は、固溶Bを上述のように確保するべく決められる。B、N、Tiの原子量から上述のBsol の式が得られる。
【0041】
Bは0.0020〜0.0040%、Nは0.0020〜0.0060%、Tiは0.0040〜0.026%で、好ましい範囲は0.0040〜0.0250%である。
【0042】
その他の元素:
Si:鋼材の常用元素としてのSiは脱酸剤として使用する元素であり、通常の0.05〜0.60%の範囲である。
【0043】
P:
Pは強化元素として有効な元素であるが、本発明のようにCu等による強化が得られるのであれば特に下限値を規定するものではない。多量に含有すると靭性が劣化するため、上限を0.100%とする。
【0045】
さらに、被削性が要求される場合には、下記3元素のうち1種以上を意図的に含有させることが望ましい。
【0046】
S:0.04〜0.10%、
Sは被削性の向上に効果があり、0.04%以上が望ましく、0.10%を超えると連続鋳造スラブに中心偏析等の欠陥を生じる。従って、0.04〜0.10%とするのが望ましい。さらに好適範囲は0.04〜0.07%である。
【0047】
Ca:0.0003〜0.0030%、
Caは被削性の向上に効果があるので、0.0003%以上含有するのが望ましく、0.0030%を超えると大型介在物の混入が避けられないので、0.0003〜0.0030%とするのが望ましい。さらに好適範囲は0.0010〜0.0030%である。
【0048】
Pb:0.05〜0.20%、
Pbは被削性の向上に効果があるので0.05%以上含有するのが望ましく、0.20%を超えて含有すると介在物が多くなり疲労限度が著しく低下する。従って0.05〜0.20%とするのが望ましい。さらに好適範囲は0.05〜0.16%である。
【0049】
つぎに上記の本発明鋼による窒化クランク軸の製造方法について述べる。
本発明の鋼材を加熱し、鍛造加工を行い目的の形状とする。鍛造時の加熱温度は低いほど好ましいが、その分プレスの能力が必要となるため、一般的な条件として1200℃を標準とし、プレスの能力に応じて1150〜1250℃の範囲で決める。
【0050】
鍛造後は製造コストの点から放冷(大気中の自然冷却)とするのが好ましい。ただし、製造時間短縮のため送風等による若干の空冷を行っても問題はない。その後、窒化処理までの間に焼準または焼入れ焼もどしなどの調質処理を行う必要はない。
【0051】
冷却後の材料には必要に応じて切削、研削などの機械加工を行う。その後窒化処理を行う。
【0052】
ここでは窒化処理として雰囲気ガスによる軟窒化処理を例に述べる。
窒化処理の効果の指標とするパラメータは表面硬さ(ここでは深さ0.05mmすなわち拡散層の化合物層直下の硬さ)と窒化層深さである。これは、先にも述べたように、曲げ矯正性は表面硬さに強く依存し、疲労強度は窒化層深さに強く依存するためである。
【0053】
これら2つの指標について軟窒化温度および軟窒化時間、さらに軟窒化後の後熱処理温度、冷却方法等について広範囲に検討を行った結果、以下の結論が得られた。
【0054】
なお、窒化処理雰囲気のガス混合比については従来の条件、すなわち、NH3 :RXガス=1:1にて効果が得られることを確認している。また、RXガスとは、浸炭性を持つ吸熱性ガスであり、CO、N2 、H2 からなるガスである。
【0055】
軟窒化処理:
一般に軟窒化温度の上昇及び長時間化により表面硬さおよび有効硬化層深さは単調に増加する。しかしながら、本発明に係るベイナイト組織鋼の組織は軟窒化温度に相当する500〜600℃で組織および硬さが顕著に変化する。これは過飽和に固溶した炭素およびCuがそれぞれFex C(x=2または3)およびCu析出物として析出し強度向上に寄与するが、さらに進行すると析出物が粗大化し強度に寄与しなくなるためである。
【0056】
さらに引き続き行う後熱処理の効果を含め、実用窒化層深さを最大にし、かつ表面硬さを最小にする適正な条件が存在する。定量的に検討を行った結果、十分な窒化層深さを得るには500℃以上が必要で、また析出物による強化の寄与を失わないためには580℃以下とすべきである。好ましくは530〜560℃であり、さらに545〜555℃が好ましい。なお、この温度は通常軟窒化処理で用いられている温度(570〜580℃)より低い。
【0057】
また窒化処理時間については、時間とともに窒化層深さは深くなるが、効果が飽和することを考慮し、通常の窒化処理と同じ3hr程度とするのがよい。もちろん必要に応じて処理時間を変化させてもかまわない。
【0058】
なお、窒化処理方法は前記のガス軟窒化のほか、短時間で処理可能な窒化方法ならいずれでも可能であり、たとえば塩浴窒化、イオン窒化を行ってもよい。その場合も前記の500〜580℃の温度で処理するべきである。
【0059】
軟窒化後の後熱処理:
軟窒化による硬さ分布を好ましい形状、すなわち曲げ矯正性の点から表面硬さを低く、疲労限度の点から窒化層深さを深くためには、適当な温度で保持すればよい。これは表面に濃縮したN原子を試験片内部に拡散させるためである。ただし軟窒化処理と同様、高い温度ではFex CやCu析出物が粗大化し強度すなわち硬さが低下するため適正な温度が存在する。
【0060】
定量的に検討した結果、硬さ分布を適切な形にするためには500℃以上が必要で、また析出物による強化の寄与を失わないためには580℃以下とすべきであることが明らかになった。好ましくは530〜560℃であり、さらに好ましくは545〜555℃である。
【0061】
また時間については、時間とともに硬さ分布は適正な形状に変化するが、長時間処理しても効果が飽和することを考慮し、1〜3hr程度とするのがよい。
【0062】
この処理は通常の軟窒化処理のように軟窒化後、油焼入したものを再加熱して行ってもよいが、別の製造工程が一つ増えることになり、非調質化による工程省略の効果がなくなる。したがって軟窒化後、同じ軟窒化炉の中での継続して後熱処理するのが効果的である。具体的には、軟窒化処理後、炉内を窒素ガス、Arガス等の不活性ガスで置換し、あるいは雰囲気を真空にして高温を保持するのがよい。
【0063】
冷却方法:
後熱処理後の冷却方法によって残留応力分布が異なる。
従来の窒化鍛造鋼材料では軟窒化処理後、油焼入することにより、表面に高い圧縮残留応力を発生させ、表面の疲労限度は増加させている。しかし、本発明鋼ではむしろ母材部−拡散層境界での疲労き裂の発生が問題である。この部位の残留応力は表面の残留応力と均衡する引張応力となるため好ましくない。残留応力測定を行った結果、空冷以下の速度で冷却すれば試験片内部に発生する引張残留応力は無視しうるほどに小さくなるので、空冷、放冷または炉冷とする。液体冷却を用いてはならない。生産リードタイムの点からは、炉冷では冷却に数時間〜数十時間かかるため冷却ファンを用いた空冷が好ましい。
【0064】
【実施例】
表1に、試作した本発明例および比較例の鋼を24種類(Z1〜Z24)および従来例の鋼であるS48C鋼の2鋼種(Z25〜26)の化学組成を示す。以下、鋼種番号と試験片番号とを対応させて記す。
【0065】
【表1】
【0066】
図2はクランク軸を模擬した試験片の形状を示す概要図で、同図(a) は側面図、同図(b) は正面図である。同図において、1はジャーナル部、2はピン部、3はフィレットR部である。
【0067】
表1に示す鋼を150kg大気中溶解炉で溶製した後に、得られた鋼片を1200℃まで加熱し、図2に示す粗形状に熱間鍛造し放冷した。
【0068】
ただし従来例については熱間鍛造後、焼入れ焼戻し処理として、850℃で30分保持後水冷し、引き続き610℃で30分保持後空冷した。なお、供試材Z17は熱間鍛造時に割れたので、試験を中止した。これは、Cuの含有量が高いため、熱間での脆化によると考えられる。
【0069】
各試験片について組織を調査したところ、Z11とZ13を除き、体積率で95%以上のベイナイト組織であった。またZ11とZ13では体積率で20%以上のパーライトが見られた。Z11についてはC量が不足しており、Z13ではMn量が不足しているためと考えられる
試験片のピン部2を旋盤で機械加工した後、以下の条件で軟窒化処理を行った。本発明例および比較例の試験片については、ガス比RX:NH3 =1:1の雰囲気中で試験片を550℃に加熱し180分保持した後、ガスをArガスと置換し、引き続き550℃で180分保持しその後空冷した。
【0070】
また従来例の鋼種については従来通りの条件として、ガス比RX:NH3 =1:1の雰囲気中に試験片を570℃に加熱し180分保持した後、150℃の油中に焼入し、後熱処理は行わなかった。
【0071】
鋼種Z1については、軟窒化条件の影響を詳細に明らかにするため、軟窒化処理温度、後熱処理温度、冷却方法の各条件を種々変化させ試験を行った。
【0072】
表2に鋼種Z1から採取した試験片(Z1−1〜Z1−15)の軟窒化条件、後熱処理条件および冷却条件を示す。
【0073】
【表2】
【0074】
疲労試験は室温大気中で、試験片のジャーナル部1の端部およびピン部2の中央部を支持した3点曲げ荷重制御両振りにて、繰返し速度5Hzで実施し、破断繰返し数が107 回となる応力振幅を疲労限度と定義した。この応力は、疲労き裂が発生するピン部2のフィレットR部3における応力であり、長さ1mmのひずみゲージによる測定値から換算したものである。
【0075】
一方、曲げ矯正性は同試験片による静的曲げ試験により評価した。疲労試験時にひずみゲージを貼付した場所と同一の場所にひずみゲージを貼付し、室温大気中にて曲げを負荷し、ひずみゲージの断線をき裂の発生と見なし、その時のひずみ量を曲げ矯正可能ひずみ量とした。曲げ矯正可能ひずみ量はばらつきが大きいため、1鋼種につき4回の試験を行い、その平均値で評価した。
【0076】
また被削性についてもZ17を除くすべての鋼に対して工具寿命の試験を行った。
表3に、疲労、曲げおよび被削性の試験結果を示す。
【0077】
【表3】
【0078】
表3に示すように、本発明例の試験片は、疲労限度および曲げ矯正可能ひずみ量の両方において目標値(S48Cを素材とする軟窒化調質クランク軸と対比して疲労強度は2割り増しの60kgf/mm2 、曲げ矯正可能ひずみ量は同等の1.5%)を達成していた。これに対して、比較例の試験片は目標値の疲労限度と曲げ矯正可能ひずみ量を同時に達成するものは存在しなかった。Z15,Z23,Z24は、それぞれ、Sが過大(Z15)、Caが過大(Z23)、Pbが過大(Z24)であるため、疲労限度が満足すべきものではなかった。これらは被削性向上のために添加したS、Ca、Pbが悪影響を及ぼしたものと考えられる。
【0079】
被削性は、S48C鋼にPbを0.05%含有する鋼に調質処理を行ったクランク軸を基準とした。これと同等以上の工具寿命となったものを良好(○)とした。本発明例の鋼種のうちS、CaまたはPbを所定量含有したもの(表1の本発明例1)は、疲労限度と曲げ矯正性を同時に満たし、かつ良好な被削性をもつことがわかった。
【0080】
一方、本発明例の鋼種の内、S、CaまたはPbを所定量含有しないもの(表1の本発明例2)は目標値の疲労限度と曲げ矯正可能ひずみ量を同時に達成するが被削性は劣っていた。
【0081】
表4には各種の軟窒化処理条件および後熱処理条件で処理を行った試験片の試験結果を示す。本発明の範囲内の処理にて疲労強度と曲げ矯正性の目標値を達成できることがわかった。
【0082】
【表4】
【0083】
【発明の効果】
本発明による窒化用非調質鋼を用いれば、従来の調質処理を行った窒化鍛造部品と同等以上の疲労限度と、従来と同等の曲げ矯正性を確保できる。また、この窒化鍛造部品の製造においては調質処理を省略できるため、大きなコスト削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】調質鋼および非調質鋼の窒化鍛造部品の製造法を示す工程図であり、同図(a) は調質鋼の場合、同図(b) は非調質鋼の場合である。
【図2】クランク軸を模擬した試験片の形状を示す概要図で、同図(a) は側面図、同図(b) は正面図である。
【符号の説明】
1 ジャーナル部
2 ピン部
3 フィレットR部
Claims (3)
- 化学組成が重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.05〜0.60%、Mn
:1.00〜3.00%、P:0.10%以下、Cr:0〜0.15%、V:0〜0.02%、Cu:0.50〜1.50%、Ni:Cu含有量の0.4倍以上、B:0.0020〜0.0040%、N:0.0020〜0.0060%、Ti:0.0040〜0.026%、S:0〜0.10%、Ca:0〜0.0030%、Pb:0〜0.20%を含有し、B、NおよびTiの含有量が、Bsol =B-(11/14){N-(14/48)Ti}で定義されるBsol で0.0010〜0.0030%であり、残部がFeおよび不可避的不純物元素からなることを特徴とする窒化用非調質鋼。 - 請求項1に記載の窒化用非調質鋼において、S:0.04〜0.10%、Ca:0.0003〜0.0030%、Pb:0.05〜0.20%のうち1種以上の元素を含有することを特徴とする窒化用非調質鋼。
- 化学組成が重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.05〜0.60%、Mn:1.00〜3.00%、P:0.10%以下、Cr:0〜0.15%、V:0〜0.02%、Cu:0.50〜1.50%、Ni:Cu含有量の0.4倍以上、B:0.0020〜0.0040%、N:0.0020〜0.0060%、Ti:0.0040〜0.026%、S:0〜0.10%、Ca:0〜0.0030%、Pb:0〜0.20%を含有し、B、NおよびTiの含有量が、Bsol =B-(11/14){N-(14/48)Ti}で定義されるBsol で0.0010〜0.0030%であり、残部がFeおよび不可避的不純物元素からなる鋼材を熱間鍛造後、放冷または空冷し、必要に応じて機械加工を行い、熱処理をすることなく窒化処理を500〜580℃で行い、引き続き不活性ガス雰囲気中、500〜580℃で後熱処理を行い、その後、放冷、空冷または炉冷することを特徴とする非調質窒化鍛造部品の製造方法。
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