JP3606024B2 - 高周波焼入部品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,高周波焼入部品及びその製造方法に関し、特に、従来は炭素鋼に浸炭,窒化などの表面処理を施すことにより製造される歯車等の部品に好適に適用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車,産業機械に用いられる歯車は、0.2%程度の炭素を含有する浸炭用合金鋼に鍛造,切削,旋削,歯切りを順に施すことにより所定の形状に加工し、その後に浸炭焼入れ焼戻し処理を行って歯車として必要な機能を確保するという方法で製造されている。このような浸炭プロセスによる製造は従来の歯車製造工程の主流となっているが、浸炭には800から950℃程度の温度で数時間の処理が必要なため、歯車製造ライン中に組み入れることが困難であり、生産性を向上させることに限界がある。その結果、製造コストの低減にも自ずから限度が生じていた。
【0003】
また、浸炭は通常、ガス浸炭法によるのが一般的であるが、ガス浸炭時に被処理材の表面層に不可避的に表面異常層が発生し、この異常層が疲労強度及び衝撃特性を低下させるために、疲労強度及び衝撃特性の向上に限度があった。また、浸炭焼入れ時に発生する熱処理歪みにより被処理材に変形が生じるため、熱処理条件の厳密な制御が要求される。
【0004】
上記した従来の浸炭焼入れ焼戻し処理に伴う問題点を克服するために、浸炭プロセスを前提として、鋼材中のSi,Mn,Crの量を減らすと共にMo,Ni等を添加することによりガス浸炭時に発生する表面異常層を低減し、疲労強度及び衝撃特性の改善を意図した高強度浸炭用鋼が開発されるに至っている。しかしその場合も、高価な合金元素を多量に用いるために鋼材コストの上昇を招くとともに被削性等の加工性を劣化させるため、高強度化は図れるものの製造コストの上昇を招くという問題がある.
また,JIS規格SCM435及びS55C等の機械構造用合金鋼及び炭素鋼を用いて、浸炭焼入プロセスよりも生産能率が高い高周波焼入による歯車の製造が試みられているが、これらの鋼は本来、歯車への適用を考慮して決定された化学組成でないために、浸炭プロセスにより製造される歯車のごとく自動車のトランスミッションやデファレンシャルに用いられる高強度の歯車への適用は困難であり、比較的低強度の歯車のみへの適用に留まっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
こうした高強度部品を製造する際の従来の諸問題を解決するために、たとえば特開昭60‐169544号公報には、鋼の化学組成を特定の範囲に規制することにより高周波焼入プロセスによる高強度の歯車製造を可能とする技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、前記特開昭60‐169544号公報に開示の技術では、鋼中に存在する非金属介在物のサイズが大きくて、歯車用鋼等に要求される疲労強度及び転動疲労寿命が確保できないという未解決の課題がある。
【0007】
また、上記公報に開示の化学組成では、従来の浸炭用鋼に比較して被削性が極端に低く、浸炭焼入れより高周波焼入れへのプロセスの変更による生産性の向上に限度があるという他の未解決の課題がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の未解決の課題に着目してなされたものであり、生産性の良い高周波焼入による歯車等の製造に好適で、しかも従来の浸炭プロセスで製造される歯車に比較して、切削性などに関して同等以上の特性を確保することが可能な高周波焼入部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、歯車に要求される特性を高周波焼入プロセスにおいて確保するための鋼材の化学組成を検討し、以下のような知見を得るに至った。
【0010】
すなわち、歯車には,歯元強度,歯面強度及び衝撃特性が要求される。
歯元強度は歯部が繰り返し応力を受け歯元部から疲労破壊を生じない最大の応力を意味する。この歯元強度は回転曲げ等の疲労試験による疲労強度と良い相関が有ることから、本発明者らは回転曲げ疲労試験により鋼材化学組成を検討した。
【0011】
疲労強度に影響を与える基本的な因子は、材料の硬さ及び非金属介在物である。材料硬さが低下すると疲労強度も低下する。この材料の硬さについて浸炭焼入材とほぼ同等の値を高周波焼入により確保しようとすると、約0.5重量%程度以上の炭素含有量(C量)が必要である。
【0012】
疲労強度を向上させるためには、そればかりでなくオーステナイト粒径を細粒にすることが有効になる。その理由は、疲労亀裂が旧オーステナイト粒径に沿って伸展していくため、これを細粒にすることにより疲労亀裂伝播に対する抵抗が増加することの他に、粒界に偏析してこれを脆化させるP等の元素の濃度が細粒化により減少するからである。そのオーステナイトの細粒化に対しては、急速短時間加熱の処理である高周波焼入が極めて有効である。また、オーステナイト粒の成長を抑制する析出物を形成するN,Al等の添加により一層細粒化が促進され、疲労強度の向上に有効である。
【0013】
また、素材硬さを得るためには、焼入性を確保するとの観点から合金元素の添加が必要となる。これらの合金元素は歯車のサイズに応じて適正量添加すれば良い。
【0014】
さらに、疲労強度を向上させるためには、上記したような素材硬さを確保するのみでは不十分であり、非金属介在物の低減も必要である。
すなわち、素材硬度を確保することができても、酸化物系非金属介在物が存在すると、この部分から疲労破壊を生じ、極めて疲労強度が低下するからである。特に、アルミナのような硬質な非金属介在物は有害であり,このためには含有酸素量(O量)の低減が必須である。本発明者らの検討によれば、O量を0.0015重量%以下にすることが少なくとも必要であるが、それのみでは不十分である。
【0015】
さらに本発明者らが検討した結果、従来の浸炭処理材と同等の疲労強度を確保するためには、酸化物の個数およびサイズを限定することが必要なことが明らかとなった。非金属介在物が存在すると、これを起点として疲労破壊が進行することは先述したとおりであるが、非金属介在物が大きいほどその介在物に発生する応力集中の程度が顕著となり、疲労初期亀裂が容易に発生する。
【0016】
また、その初期亀裂も、非金属介在物が大きく応力集中の程度が大きい程顕著である。大きな初期亀裂がいったん発生すると、疲労亀裂は迅速に進展して疲労破壊に至る。本発明者の検討によれば、従来の浸炭焼き入れ材以上の疲労強度を確保するためには、19μmを越えるサイズの酸化物系非金属介在物が存在しないことが必要なことが解った。
【0017】
更に、非金属介在物個数の影響を検討した結果、非金属介在物が19μm以下であっても、その個数が2.5個/mmを越えて存在すると、従来の浸炭焼き入れ材と同程度の疲労強度は得られないことが判明した。これは、非金属介在物が小さい場合、その部分より発生する初期亀裂は小さいが、これが成長すると他の非金属介在物より発生した疲労亀裂と合体して大きな疲労亀裂となり、その後急速に疲労亀裂は成長して短時間で疲労破壊に至るためである。
【0018】
以上述べたとおり、疲労強度の確保のためには、O量の限定のみでなく酸化物系非金属介在物の個数およびサイズの制御が必須である。
さらに、本発明者らは、酸化物系非金属介在物の量及びサイズを上記の範囲に低減する方法を検討した。その結果、鋼中のO量を15ppm以下に制限することにより、酸化物系非金属介在物の量は目標とする2.5個/mm以下に低減できることが判明したが、サイズについてはO量の規定のみでは不十分である。本発明者らは、鋳造時の鋳片サイズより最終的に鋼材に圧延する際の断面減少率が非金属介在物サイズと強い相関を持ち、当該断面減少率が増加するにしたがって非金属介在物サイズが減少することを見いだした。これは、圧延により、粗大な非金属介在物が機械的に砕かれることによるものである。その結果、目標とする19μm以下のサイズとするには、O量を15ppm以下に制御した鋼では、断面減少率として95%以上の圧下が必要なことが判明した。
【0019】
一方、歯車の歯面部には、繰り返し接触応力により、ピッチングと呼ばれる疲労損傷が生じる。これが生じると歯車は正常な機能を発揮することが困雛となるので、歯面強度が必要とされる。
【0020】
この歯面強度は、転動疲労試験との相関が良好であり,この試験により評価することが可能である。ただし、歯車の場合には歯面部に相対すべりが発生するので、その摩擦により著しい温度上昇が生じる。この温度上昇により鋼材は軟化し、ピッチングが発生する。これを抑制するためには、鋼の焼もどし軟化抵抗を高めるSi,Mo,V及びNb等の添加が有効であり、これらの添加により歯面強度を高めることができる。
【0021】
また、転動疲労寿命に関しては、疲労強度と同様に酸化物系非金属介在物の量及びサイズが影響するが、上記したO量の制御と共に鋳片より最終鋼材に圧延する際の断面減少率を制御することにより非金属介在物の量及びサイズを制御すれば、従来の浸炭鋼と同程度の転動疲労寿命を確保することができることが判明した。
【0022】
歯元に衝撃的な荷重が作用した場合、鋼材の衝撃特性が低いと歯元部より歯が折損し、歯車のみならず歯車の組み込まれている機械全体が回復が困難な損傷を受けるにいたる。このため衝撃特性は極めて重要な特性である。
【0023】
衝撃特性に影響を及ぽす因子としてはC量が最も影響が大きい。しかし、浸炭プロセスを経て浸炭を施された部分のC濃度は約0.8重量%程度であるのに対し、高周波焼入により同等の鋼材硬さを得るために必要なC濃度は0.5〜0.7重量%程度であるので、衝撃特性確保の観点からは高周波焼入が有利である。しかしながら、衝撃特性に影響を及ぼす因子はそればかりでなく、高周波焼入時のオーステナイト粒径及び粒界に偏析したP等の不純物元素も影響を及ぼすから、γ粒径細粒化及びP等の不純物元素の低減が衝撃特性向上の上でも有効である。しかし、非硬化部のみを比較すると浸炭用鋼の方がC量が0.2重量%程度と低く、他方、高周波焼入に適用するためにはC量を0.5〜0.75重量%と増大させる必要があるので、非硬化部に関しては従来の浸炭鋼の方が有利である。
【0024】
歯車全体として見た場合、これらの因子の作用で衝撃特性が決定されるので、高周波焼入用途鋼では、非硬化部の衝撃特性を向上させておくことが重要である。そこで本発明者らは更に非硬化部の衝撃特性向上の方策を検討した結果、鋼素材より歯車への鍛造工程における鍛造温度及びその後の冷却速度を規定することにより、歯車全体の衝撃特性を一層向上させ得ることを見いだした。
【0025】
一般に鋼材の衝撃特性は鋼のミクロ組織を微細化することにより達成されるが、本発明者らの検討では、鍛造温度域をAc3−100℃〜Ac3+200℃以上の範囲とし、この温度域での加工率を70%とし、さらにその後の冷却速度を0.005℃/s以上とすることが最も組織の微細化に有効であるとの知見を得た。
【0026】
上記したような歯車として必要とされる特性を確保するのみの対応では、高周波焼入れによる歯車の製造には不十分であり、加工性特に被削性の確保が重要である。
【0027】
浸炭プロセスの場合には、低C鋼が使用されるため、浸炭焼入前の状態では比較的高い被削性を持っている。一方、高周波焼入プロセスの場合には、浸炭鋼よりも高炭素化が必要となり、被削性確保の点で極めて不利である。
【0028】
そこで、本発明者らは高炭素鋼における被削性に及ぽす諸因子を検討した結果、以下のような知見を得るに至った。すなわち、C:0.5%以上の鋼においては、快削性元素を一定とした場合、最も被削性に影響を及ぽす因子はそのミクロ組織である。特に、フェライト量とパーライトの形態が最も顕著な影響を及ぼすことが解った。
【0029】
すなわち高炭素鋼の場合、ミクロ組織としてはフェライトーパーライト組織となるが、フェライトが増加すると被削性は向上する。フェライト量が増加することにより鋼材の硬さが減少することと、切削時の亀裂の発生部であるフェライト/パーライトの界面が増加することにより、被削性が向上するのである。
【0030】
一方、パーライトの形態も極めて大きな影響を及ぽす。すなわち、パーライトラメラーが層状に良く発達した組織の場合、パーライト部の延性が高く、切削時の亀裂の発生部はフェライト/パーライトの界面に限定される。しかし、ラメラーが発達していない組織の場合には、切削時に変形を受ける部分ではフェライト/パーライトの界面の他に、パーライト中のセメンタイト/フェライト界面からも亀裂が容易に発生するようになる。このことにより、被削性が飛躍的に向上するのである。このような未発達のパーライトを形成させるためには、鋼中の合金元素の選択及び適正化が必要であり、変態点を低下させてラメラーの層状化を促進するMn及びCrの低減が極めて効果的である。また、Moの添加は、ラメラーの層状化を抑制し、セメンタイトの分断された組織を形成させるので、被削性の向上に有効である。
【0031】
本発明は以上の知見をもとになされたものであって、その要旨とするところは以下の通りである。
すなわち、
重量比で、C:0.5〜0.75%、Si:0.5〜1.8%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.019〜0.05%、O:0.0015%以下、N:0.003〜0.015%を含有し、
さらに必要に応じて、
Mo:0.05〜0.5%、B:0.0003〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、Ni:0.1〜1.0%およびV:0.005〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも一種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなる鋼材からなり、
Ac3−100℃以上Ac3+200℃以下の温度域での加熱とその温度域における加工率70%以上の鍛造と0.005℃/s以上の冷却速度による冷却とを経て高周波焼入及び焼もどし処理を施して得ることを特徴とする高周波焼入部品である。
【0032】
ここで、
前記鋼材は、存在する酸化物系非金属介在物の個数が2.5/mm以下でかつその最大サイズが19μm以下のものとすることができる。
【0033】
また、前記鋼材は、鋳造後の鋼片より断面減少率で95%以上の圧延により製造されたものとすることができる。
本発明の製造方法に係る発明の要旨とするところは、
重量比で、C:0.5〜0.75%、Si:0.5〜1.8%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.019〜0.05%、O:0.0015%以下、N:0.003〜0.015%を含有し、
さらに必要に応じて、
Mo:0.05〜0.5%、B:0.0003〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、Ni:0.1〜1.0%およびV:0.005〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも一種以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなる鋼材を、
Ac3−100℃以上Ac3+200℃以下の温度域に加熱し、その温度域において加工率70%以上の鍛造を施し、次いで0.005℃/s以上の冷却速度により冷却し、その後高周波焼入及び焼もどし処理を施すことを特徴とする高周波焼入部品の製造方法である。
【0034】
ここで、
前記鋼材は、存在する酸化物系非金属介在物の個数が2.5/mm以下でかつその最大サイズが19μm以下のものとすることができる。
【0035】
また、前記鋼材は、鋳造後の鋼片を断面減少率95%以上で圧延して製造することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を述べる。
まず、本発明に用いる鋼材の成分等の限定理由について説明する。
【0037】
〔C:0.5〜0.75%〕
Cは高周波焼入により従来の浸炭鋼と同程度の表面硬さを得るために必須の成分であり、少なくとも0.5%以上の添加が必要である。しかし、0.75%を超えて添加すると、歯車に必要とされる衝撃特性及び被削性が劣化するので、0.75%までの添加とする。
【0038】
〔Si:0.5〜1.8%〕
Siは焼もどし軟化抵抗を向上させる元素である。このことにより歯面強度を向上させるが、従来の浸炭プロセスによる歯車と同程度の歯面強度を確保するためには、少なくとも0.5%以上の添加が必要である。しかし、1.8%を超えて添加すると、フェライトの固溶硬化により硬さが上昇し被削性の低下を招くので1.8%以下の添加とする.
〔Mn:0.1〜1.5%〕
Mnは焼入性を向上させ、高周波焼入時の硬化深さを確保する上で必須の成分であり積極的に添加するが、0.1%未満の添加ではその効果に乏しい。一方、1.5%を超えて添加すると、高周波焼入後の残留オーステナイトを増加させることにより、かえって表面硬度を低下させ疲労強度及び転動疲労寿命を低下させるので1.5%以下の添加とする。もっとも、焼入れ性を向上させながら、しかも高周波焼入れ後の残留オーステナイトの増加を確実に抑えて疲労強度及び転動疲労寿命の低下を防止するために、好ましくはMn添加量を0.1〜0.4%とする。
【0039】
〔P:0.020%以下〕
Pはオーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより歯元強度を低下させるばかりでなく、同時に衝撃特性を低下させるのでできるだけ低下させることが望ましいが0.020%まで許容される。好ましくは0.015%以下である。
【0040】
〔S:0.020%以下〕
SはMnSを形成し、これが疲労破壊の起点となることにより疲労強度を低下させるが、他方でMnSは被削性を向上させる元素でもあるので0.020%以下の添加は許容される。
【0041】
〔Al:0.019〜0.05%〕
A1は脱酸に有効な元素であり、低酸素化のために有用な元素であるとともに、Nと結合してAlNを形成し、これが高周波加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制する。これにより衝撃特性及び歯元疲労強度を向上させるので積極的に添加するが、0.019%未満の添加ではその効果が小さく、一方0.05%を超えて添加してもその効果が飽和するので0.019〜0.05%の添加とする。
【0042】
〔N:0.003〜0.015%〕
NはAlと結合してAlNを形成する。これが高周波加熱時のオーステナイトの成長を抑制することにより、衝撃特性及び疲労強度を向上させるので積極的に添加するが、0.003%未満の添加ではその効果が小さく、一方0.015%を超えて添加すると熱間変形能を低下させることにより連続鋳造時に鋳片の表面欠陥を著しく増加させるので0.003〜0.015%の添加とする。もっとも、Nによる衝撃特性及び疲労強度の向上の効果を確実に得るためには、N量の下限値を0.006%とするのが好ましい。
【0043】
本発明においては、上記の化学組成の他に、さらに
Mo:0.05〜0.5%、B:0.0003〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、Ni:0.1〜1.0%の一種以上を含有させることができる。
【0044】
これらの元素の作用及び限定理由は、以下の通りである.
〔Mo:0.05〜0.5%〕
Moは焼入性向上に有用な元素であり、焼入性を調整するために用いる。Moの添加は同時にパーライトの組織形態に著しい影響を及ぼし、セメンタイトが分断されたパーライトを形成する。この結果、被削性を著しく向上させる。また、Moは焼もどし軟化抵抗を向上させるので、歯面強度も向上させることができる。さらに、Moは粒界に偏析するP等の不純物元素を低減させることにより歯元強度及び衝撃特性を向上させる作用があり、本発明においては好適な元素であるので積極的に添加するが、0.05%未満の添加ではその効果が小さく、一方0.5%を超えて添加すると高周波焼入のような急速短時間の加熱ではオーステナイト中への溶解が困難な炭化物を形成するので0.05〜0.5%の範囲の添加とする。
【0045】
〔B:0.0003〜0.005%〕
Bは微量の添加で焼入性を向上させる元素であるので、その他の合金元素を低減させることができる。また、Bは粒界に優先的に偏析し、粒界に偏析するPの濃度を低減して歯元強度及び衝撃特性を著しく向上させる元素である。このためには0.0003%以上の添加が必要であるが、0.005%を超えて添加してもその効果は飽和するので0.005%以下の添加とする。
【0046】
〔Ti:0.005〜0.05%〕
Bの焼入性向上効果はBが単独に存在する場合に顕著であるが、一方でBはNと結合しやすい元素であり、この場合には上記した好適な効果が消失する。このBの焼入性向上効果を、B以上にNと結合しやすいTiを添加することにより十分発揮させることができるので、Tiをこのような場合に用いてもよい。もっとも0.005%未満の添加ではその効果は小さい。一方、0.05%を超えて添加するとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって歯元強度及び歯面強度を低下させるので0.05%未満の添加とする。
【0047】
また、TiNは高周波加熱時のオーステナイト粒径を細粒化する作用があるので、Tiの単独添加のみでも歯面強度及び疲労強度を向上させる作用がある。この場合にもTi添加量としては0.005〜0.05%の範囲が好適である。
【0048】
〔Ni:0.1〜1.0%〕
Niはその添加により焼入性を向上させる元素であるのみでなく、衝撃特性を改善する元素であるので、焼入性を調整する場合または衝撃特性の改善が必要とされる場合に用いても良いが、0.1%未満の添加ではその効果が小さいので0.1%以上の添加とする。一方、Niは極めて高価な元素であるので、1.0%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇し、本発明の目的に反するので1.0%未満の添加とする。
【0049】
本発明においては、またさらに、
V,Nbの一種以上を含有させることができる。これらの元素の作用を説明する。
【0050】
高周波焼入プロセスを経る場合には、被処理材の中心部の硬さを確保するために、前熱処理として焼入焼もどし処理を施す場合がある。しかし、この熱処理はコストを増大させるので、なるべくはこれを省略することが望ましい。前処理としての焼入を省略するには、高周波焼入前の素材硬さを上昇させておく必要がある。そのためには析出強化作用を有するV及びNbの添加が効果的である。
【0051】
V及びNbの添加量の限定理由は次の通りである。
〔V:0.05〜0.5%〕
Vは析出強化作用の極めて強い元素であるので、高周波焼入前の前熱処理としての焼入焼もどし処理を省略する必要の有る場合に添加するが、0.05%未満の添加ではその効果が小さく、一方、0.5%を超えて添加してもその効果が飽和するので0.05〜0.5%の添加とする。
【0052】
また,Vは鋼材の焼もどし軟化抵抗を向上させる元素であるから、歯面強度の向上に極めて有効でもある。
〔Nb:0.01〜0.5%〕
Nbは析出強化作用の極めて強い元素であるので、高周波焼入前の前熱処理としての焼入焼もどし処理を省略する必要の有る場合に添加するが、0.01%未満の添加ではその効果が小さく、一方、0.5%を超えて添加してもその効果が飽和するので0.01〜0.5%の添加とする。また、Nbの添加は鋼材の焼もどし軟化抵抗を向上させる元素であるから、歯面強度の向上に極めて有効でもある。
【0053】
〔O:0.0015%以下〕
本発明においては、疲労強度の確保のために、酸化物系非金属介在物の量(個数)および最大サイズについて、それぞれ2.5個/mm以下および19μm以下に規定する。この個数を越える酸化物系非金属介在物が存在すると、それぞれの非金属介在物より発生した疲労亀裂が合体して急速に疲労亀裂が進展し疲労破壊にいたる結果、目標とする疲労強度を確保する事が困難となるためである。また、最大サイズが19μmを越える酸化物系非金属介在物が存在すると、この非金属介在物より発生する初期亀裂が大きくなり、その結果急速に疲労亀裂が進展して早期に疲労破壊が生じるためである。
【0054】
酸化物系非金属介在物の量および最大サイズを上記した目標の値以下に制御するためには、アルミナ等の酸化物系非金属介在物を形成するOの量を低減する必要がある。そこで本発明にあっては、鋼中の酸素含有量をO:0.0015%以下に限定する。
【0055】
更に、本発明においては鋳片より鋼材へ圧延時の断面減少率を95%以上とする。これも酸化物系非金属介在物の最大サイズを目標とする19μm以下とするためであり、95%未満の断面減少率では酸化物系非金属介在物の最大サイズの目標を達成できず早期に疲労破壊が生じるからである。
【0056】
続いて、鍛造条件の限定理由について説明する。
鍛造温度としてAcl−100℃〜Ac3+200℃の範囲に限定するのは、Acl−100℃未満の温度では変形抵抗が高くて鍛造が困難であり、また、Ac3+200℃を越える温度では、初期のオーステナイト粒径が大きくまた加工後のオーステナイト粒の再結晶及び粒成長が極めて急速に生じ、このオーステナイトより変態した組織が十分に微細化しないためである。
【0057】
また、鍛造加工率を70%以上とするのは、これに満たない加工率ではオーステナイトの微細化が不十分であり、これより変態した鋼のミクロ組織は十分微細化が得られないためである。また、冷却速度を0.005℃/s以上と規定するのは、この温度を下回る冷却速度では変態組織が粗大化するため十分な効果が得られないためである。
【0058】
次に、本発明の実施例を、比較例と比べながら説明する。
(第1の実施例)
この実施例は、高周波焼入部品における材料鋼の化学組成及び鍛造条件と部品特性との関係を主として検討したものである。
【0059】
表1,表2に示す化学組成の鋼を転炉−連続鋳造プロセスにより溶製した。
【0060】
【表1】
Figure 0003606024
【0061】
【表2】
Figure 0003606024
【0062】
鋳造時の鋳片サイズはNo.13一24が200×225mmであり,その他は300×400mmであった。この鋳片をブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延したのち、直径39〜95mmの棒鋼に圧延した。この棒鋼を用いて熱間鍛造により直径30mmの棒鋼とした。この際、鍛造温度及び加工率を種々に変化させた。これらを素材として、直径8mm平滑の回転曲げ疲労試験片及び直径27mmの転動疲労試験片を作製し、15kHzの高周波焼人試験機により表面焼入を行い、その後180℃×2hの焼もどし処理を行った。また、直径30mmの鍛造材に同一の高周波焼人焼もどし処理を行い、この表面近傍より2mml0Rノッチの衝撃試験片を作製した。
【0063】
また、転炉−連続鋳造プロセスにて溶製し、上記と同じプロセスを経て直径50mmに圧延し、その後直行30mmに熱間鍛造したSCr420鋼及び改良鋼を用いて上記と同様の試験片を作製し、これらに930℃×4h(炭素ポテンシャル0.88)→焼入の浸炭処理を施し、180℃×2hの焼もどしを施した。
【0064】
表3,表4に高周波焼入焼もどし後のオーステナイト粒径,各鋼のAc3温度,鍛造条件,圧延時の断面減少率,及び酸化物系非金属介在物の個数及び最大サイズを示した。
【0065】
ここで、オーステナイト粒径は高周波焼入れまたは浸炭焼人れ後の素材の表面部よりサンプルを採取し、ピクリン酸飽和水溶液に界面活性剤を添加した腐食液により腐食してオーステナイト粒を現出し、画像解析装置によりその平均粒径を測定した。また、Ac3温度は、圧延後の鋼材より直径3mm×長さ10mmの熱膨張試験片を作製し、これを3℃/minの昇温速度で昇温して、その時の熱膨張曲線より求めた値である。また、酸化物系非金属介在物は、圧延後の鋼材より光学顕微鏡用試験片を作製した。この試験片について画像解析装置を用いて320mmの領域を検査し、その領域中に存在する非金属介在物の個数及びサイズを求め、最大サイズ及び単位面積当たりの個数を決定した。
【0066】
【表3】
Figure 0003606024
【0067】
【表4】
Figure 0003606024
【0068】
これらの試料を用いて衝撃試験,回転曲げ疲労試験及び転動疲労試験を実施した。
衝撃試験は、シャルピー衝撃試験機を用いて+20℃の条件により行った。
【0069】
疲労試験は、小野式回転曲げ疲労試験機を用いて常温で3600rpmの速度で実施した。
転動疲労試験は、試験片に直径130mmのローラを押し付けることにより、3677MPaの接触応力を与え、表面にピッチングが生じるまでの時間で寿命を評価した。
【0070】
これらの結果を表5に一括して示す。
【0071】
【表5】
Figure 0003606024
【0072】
No.1〜No.12は本発明例である。
No.13〜24及びNo.29〜31は、鍛造温度または鍛造後の冷却速度が本発明の範囲外の比較例である。
【0073】
No.25〜28は、酸化物系非金属介在物の最大サイズが本発明の範囲外の場合の比較例である。また、鋼No.33,34及び36〜39は化学組成が本発明の範囲外の比較例である。
【0074】
No.32〜40は、化学組成が本発明の範囲外の比較例である。
No.41は、浸炭鋼として多用されているJIS SCr420相当鋼(従来例)である。また、No.42はJIS鋼を改良した高強度浸炭鋼(従来例)である。
【0075】
比較例No.13〜24及びNo.29〜31は、従来の浸炭鋼(No.41)であるSCr420鋼とほぼ同等以上の特性を有しているが、本発明例に比較して衝撃特性が劣っており、No.42の高強度浸炭鋼と比較してもそれは劣っている。
【0076】
No.25〜28は、圧延時の断面減少率が94.1%であって、請求項6の本発明の範囲(95%以上)外にあり、そのため酸化物系非金属介在物の最大サイズが請求項5の本発明の範囲外にある。その結果、転動疲労寿命が従来の浸炭鋼(No.41)よりも劣っている。また、他の本発明例と比較して疲労強度が低い。
【0077】
No.32は、C量が本発明の範囲を上回る場合であり、疲労強度及び転動疲労寿命は向上しているが、衝撃値が従来浸炭鋼(No.41)を下回っている。No.33は、C量が本発明の範囲を下回る場合であり、表面硬さの不足により疲労強度及び転動疲労寿命が従来の浸炭鋼SCr420よりも極端に低下している。
【0078】
No.34は、Si量が本発明の範囲を下回る場合であり、転動疲労寿命が極端に低下している。
No.35は、Mn量が本発明の範囲を超える場合であり、残留オーステナイトの増加により転動疲労寿命が従来浸炭鋼(No.41)よりも低下している。
【0079】
No.36は、P量が本発明の範囲を超える場合であり、疲労強度及び転動疲労寿命が従来浸炭鋼(No.41)を下回っている。
No.37は、S量が本発明の範囲を超える場合であり、疲労強度及び転動疲労寿命が従来浸炭鋼(No.41)を下回っている。
【0080】
No.38は、Al量が本発明の範囲を下回る場合であり、オーステナイト粒径が粗大化し、衝撃値が従来浸炭鋼(No.41)を下回っている。
No.39は、Ti量が本発明の範囲を超える場合であり、転動疲労寿命が従来浸炭鋼(No.41)を下回っている。
【0081】
No.40は、O量が本発明の範囲を超える場合であり、このため酸化物系非金属介在物の個数及び最大サイズともに本発明の範囲を超えている。この結果、転動疲労寿命が従来浸炭鋼(No.41)を下回っている。
【0082】
すなわち、比較鋼No.13〜24以外の比較鋼の場合には、諸特性の内いずれかがSCr420あるいは高強度浸炭用鋼よりも低い値となっているのに対し、比較鋼No.13〜24の場合は衝撃値,疲労強度,転動疲労寿命のいずれの特性も従来浸炭鋼SCr420よりも優れる。
【0083】
ところが、さらに本発明例にあっては、上記比較鋼No.13〜24に比較して格段に衝撃特性が向上し、高強度浸炭鋼とほぼ同等またはそれ以上の値である。かくして、本発明を用いることにより、浸炭鋼より生産性の高い高周波焼入に歯車の製造プロセスを変更して、歯車の製造コストの低減に資するところ大であるのみならず、さらに優れた衝撃特性,疲労強度および転動疲労寿命を付与することが可能である。
【0084】
(第2の実施例)
この実施例は、高周波焼入部品における材料鋼の化学組成及び鍛造条件と部品特性との関係と共に、被削性についても検討したものである。
【0085】
表6に示す化学組成の鋼を転炉−連続鋳造プロセスにより溶製した。
【0086】
【表6】
Figure 0003606024
【0087】
表6に示す化学組成の鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延した後、直径30〜80mmの棒鋼に圧延した。この棒鋼を、熱間鍛造により棒鋼とし、これを845℃の温度に30分間保持して焼入れた後、550℃で焼もどしした。この焼入焼戻しされた棒鋼を素材として、直径27mmの転動疲労試験片を作製し、15kHzの高周波焼入試験機により表面焼入し、その後180度℃×2時間の焼もどし処理を行った。また、上記素材に同様の熱処理を施し、その表面近傍より2mml0Rノッチの衝撃試験片を作製した。
【0088】
また、表6にNo.133で示されているSCr420の規格の鋼を転炉−連続鋳造プロセスにより溶製し、上記と同じプロセスを経て直径50〜90mmの棒鋼に圧延し、その後鍛造条件を変えて直径15〜30mmまでのサイズに熱間鍛造した。このSCr420の棒鋼を用いて上記と同様の試験片を作製し、この試験片に930℃×4時間の浸炭処理(炭素ボテンシャル0.88)→焼入れ処理を施し、さらに180℃×2時間の焼もどしを施し、後述するNo.133の試験片とした。
【0089】
表7に、鍛造条件,温度等の詳細を示す。
【0090】
【表7】
Figure 0003606024
【0091】
これらの試料を用い、先の第1の実施例の場合と同様の衝撃試験,回転曲げ疲労試験及び転動疲労試験を実施した。
また、熱間鍛造のままの状態で、超硬工具P10を用いて切込2mm,送り0.25mm/rev.,切削速度200m/minの条件で切削試験を行った。被削性は、逃げ面摩擦0.2mmに達するまでの切削時間により評価した。
【0092】
これらの結果を表8に示す。
【0093】
【表8】
Figure 0003606024
【0094】
表6,表7のNo.と表8のNo.とは対応している。鋼No.101〜No.112までは本発明例である。No.111A及び112Aも本発明の例であり、No.111及び112の鋼を用いてそれぞれ焼入焼戻し処理を省略した例である。
【0095】
No.113〜No.124AはNo.101〜No.112Aと鋼の化学組成は同一であるが、鍛造条件が本発明の範囲外の比較例である。
No.125は、Siが本発明の範囲外を下回る比較例であり、転動疲労寿命が極端に低下している。
【0096】
No.126は、Mnが本発明の範囲を越える場合であり、被削性が劣化している。
No.127は、Pが本発明の範囲を越える場合であり、衝撃値及び疲労強度が低下し、No.133の従来鋼よりもその特性は劣っている。
【0097】
No.128は、Sが本発明の上限を越える場合であり、衝撃値,疲労強度及び転動疲労寿命がNo.133の従来鋼よりも劣っている。
No.129は、Alが本発明を下回る場合であり、この結果O量が増加し疲労強度及び転動疲労寿命がともに極端に低下し、No.133の従来鋼よりも極端に低下している。
【0098】
No.130は、C量が本発明の範囲を越える場合であり、被削性及び衝撃値が従来鋼よりも低下している。
No.131は、Nが本発明の範囲を下回っている比較例であり、衝撃値がNo.133の従来鋼よりも低下している.
No.132は、C量が本発明を下回る場合であり、疲労強度及び転動疲労寿命が従来鋼よりも劣っている。
【0099】
以上のように、No.125〜132の比較例はNo.133の従来例に比べていずれかの特性が劣っている。
No.113〜124Aの比較例に関しては、従来鋼の水準を満足している。しかし、本発明例のNo.101〜112Aに比べると衝撃値が低い。
【0100】
すなわち、本発明例は、衝撃値が特に向上している。
(第3の実施例)
次に、本発明の第3実施例について説明する。この実施例では、化学組成のみでなく、酸化物系非金属介在物の量及びサイズを限定した。
【0101】
表9及び表10に示す化学組成の鋼を転炉‐連続鋳造プロセスにより溶製した。
【0102】
【表9】
Figure 0003606024
【0103】
【表10】
Figure 0003606024
【0104】
これらの鋼について、第2の実施例と同様の方法により各特性の評価を行った。
表11および表12に、鍛造条件,温度等の詳細を示す。
【0105】
【表11】
Figure 0003606024
【0106】
【表12】
Figure 0003606024
【0107】
また、各特性の評価結果を表13及び表14に示す。
【0108】
【表13】
Figure 0003606024
【0109】
【表14】
Figure 0003606024
【0110】
No.134〜145は本発明例である。
一方、No.146〜157は、化学組成はNo.134〜145の発明例と同一であるが、鍛造条件が本発明の範囲外の比較例である。
【0111】
また、No.158〜169は他の本発明例である。
一方、No.170〜176は、化学組成はNo.158〜161及びNo.167〜169の発明例と同一であるが、鍛造条件が本発明の範囲外の比較例である。
【0112】
No.177〜184は化学組成が本発明の範囲外の比較例である。
No.185は従来鋼であるJIS SCr420鋼である。
No.186はJIS鋼を改良した従来例の高強度浸炭用鋼である.
No.134〜No.145の発明例は、酸化物系非金属介在物及び鍛造条件を規定しているため、いずれの特性も従来例であるNo.186の高強度浸炭用鋼と同等以上である。
【0113】
No.146〜157の比較例は、鍛造条件が本発明の範囲外であるため、No.134〜No.145の本発明例に比較して衝撃特性は劣るが、No.185のSCr420鋼よりもいずれの特性も優れている。
【0114】
No.158〜169の発明例は、No.134〜145の発明例と化学組成は同一であるが、酸化物系非金属介在物の点では劣っているため、転動疲労寿命はNo.135〜145の場合に比較して劣っている。しかし、その転動疲労寿命をはじめ、衝撃値,疲労強度,工具寿命などの特性は、いずれも従来鋼のSCr420鋼よりも優れている。
【0115】
No.170〜No.176の比較例は、発明例No.158〜161及びNo.167〜169と化学組成は同一であるが、鍛造条件が本発明の範囲外であるため、衝撃特性が劣っている。
【0116】
No.177の比較例は、Si量が本発明の範囲を下回り、転動疲労寿命が低下している。
No.178の比較例は、Mn量が本発明の範囲を越えており、被削性の劣化が著しい。
【0117】
No.179の比較例は、P量が本発明の上限を越えており、衝撃値及び疲労強度の低下が著しく、従来鋼SCr420よりもその特性は劣っている。
No.180の比較例は、S量が本発明の上限を越えており、衝撃値,疲労強度および転動疲労寿命が従来鋼SCr420よりも劣っている。
【0118】
No.181の比較例は、Al量が本発明を下回り、この結果、O量が増加して疲労強度及び転動疲労寿命がともに極端に低下し、従来鋼SCr420を下回っている。
【0119】
No.182はC量が本発明の上限を越える比較例であり、衝撃値及び被削性が従来鋼よりも低下している。
No.183の比較例は、N量が本発明の範囲を下回っており、衝撃値が従来鋼のSCr420よりも劣っている。
【0120】
No.184の比較例は、C量が本発明の範囲を下回っている場合であり、疲労強度及び転動疲労寿命が従来鋼のSC420よりも劣っている。
以上説明したように、本発明を適用することにより、浸炭プロセスを経て製造される歯車と同等以上の特性を有する歯車を、生産性の高い高周波焼入れプロセスにおいて確保することが可能である。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼の化学組成、酸化物系非金属介在物の個数及びサイズを規制し、かつ二次加工プロセスにおける熱間鍛造条件を規定することにより、従来は浸炭プロセスで製造される歯車等の機械部品に生産性の良い高周波焼入れを適用することが可能となり、その結果、浸炭品と同等以上の特性を有する部品を容易に量産できるという効果を奏する。

Claims (12)

  1. 重量比で、C:0.5〜0.75%、Si:0.5〜1.8%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.019〜0.05%、O:0.0015%以下、N:0.003〜0.015%を含有し残部Fe及び不可避的不純物よりなる鋼材からなり、Ac3−100℃以上Ac3+200℃以下の温度域での加熱とその温度域における加工率70%以上の鍛造と0.005℃/s以上の冷却速度による冷却とを経て高周波焼入及び焼もどし処理を施して得ることを特徴とする高周波焼入部品。
  2. 前記鋼材は、組成中にさらに、重量比で、Mo:0.05〜0.5%、B:0.0003〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、Ni:0.1〜1.0%の一種以上を含有していることを特徴とする請求項1記載の高周波焼入部品。
  3. 前記鋼材は、組成中にさらに、重量比で、V:0.005〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも一種を含有していることを特徴とする請求項1記載の高周波焼入部品。
  4. 前記鋼材は、組成中にさらに、重量比で、Mo:0.05〜0.5%、B:0.0003〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、Ni:0.1〜1.0%の一種以上とV:0.005〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも一種とを含有していることを特徴とする請求項1記載の高周波焼入部品。
  5. 前記鋼材中の酸化物系非金属介在物個数が2.5/mm以下でかつその最大サイズが19μm以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の高周波焼入部品。
  6. 前記鋼材は、鋳造後の鋼片より断面減少率で95%以上の圧延により製造されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の高周波焼入部品。
  7. 重量比で、C:0.5〜0.75%、Si:0.5〜1.8%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Al:0.019〜0.05%、O:0.0015%以下、N:0.003〜0.015%を含有し残部Fe及び不可避的不純物よりなる鋼材を、Ac3−100℃以上Ac3+200℃以下の温度域に加熱し、その温度域において加工率70%以上の鍛造を施し、次いで0.005℃/s以上の冷却速度により冷却し、その後高周波焼入及び焼もどし処理を施すことを特徴とする高周波焼入部品の製造方法。
  8. 前記鋼材は、組成中にさらに、重量比で、Mo:0.05〜0.5%、B:0.0003〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、Ni:0.1〜1.0%の一種以上を含有していることを特徴とする請求項7記載の高周波焼入部品の製造方法。
  9. 前記鋼材は、組成中にさらに、重量比で、V:0.005〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも一種を含有していることを特徴とする請求項7に記載の高周波焼入部品の製造方法。
  10. 前記鋼材は、組成中にさらに、重量比で、Mo:0.05〜0.5%、B:0.0003〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、Ni:0.1〜1.0%の一種以上とV:0.005〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%の少なくとも一種とを含有していることを特徴とする請求項7に記載の高周波焼入部品の製造方法。
  11. 前記鋼材中の酸化物系非金属介在物個数が2.5/mm以下でかつその最大サイズが19μm以下である請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の高周波焼入部品の製造方法。
  12. 前記鋼材は、鋳造後の鋼片を断面減少率95%以上で圧延してなることを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれかに記載の高周波焼入部品の製造方法。
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