JP4403624B2 - 軟窒化用非調質鋼及び軟窒化非調質クランク軸とその製造方法 - Google Patents

軟窒化用非調質鋼及び軟窒化非調質クランク軸とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍛造後の「焼入・焼戻し」や「焼ならし」などの調質処理を行わずに軟窒化処理を施しても、高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を有する鋼と、この鋼を素材とする軟窒化非調質クランク軸、及び、そのクランク軸を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高い疲労強度が要求される自動車用等のクランク軸では、鍛造および機械加工の後に高周波焼入れや軟窒化処理などの表面処理を行うことが多い。軟窒化処理は、曲げ疲労強度向上の点では高周波焼入れより若干劣るものの、表面に硬質の化合物層を生成させるので、耐焼付き性や耐かじり性を向上させるという点で、また、捩り疲労強度の面では高周波焼入れより有利である点で著しく優れる。従って、軟窒化処理を施したクランク軸(以下「軟窒化クランク軸」という)も広く採用されている。
【0003】
図1は、従来の調質鋼および後述する本発明鋼を使用する軟窒化クランク軸の製造方法を比較した工程の略図である。ここで、(a)は従来の調質鋼を、また(b)は本発明鋼を素材とした場合の製品までの工程を示す。
【0004】
近年、コスト削減や生産リードタイムの縮小のために、図1(b)に示すように、調質処理を省略して鍛造のままで製品化する、いわゆる「非調質化」が多くの自動車部品に対して検討されているが、この「非調質化」は軟窒化クランク軸でも同様である。しかしながら、調質処理を省略することによって、以下のように劣化する性能があるので、非調質化ができない部品がある。
【0005】
先ず、第一は疲労限度であり、鍛造後に調質処理を行わずに軟窒化処理した部品(以下、「非調質軟窒化鋼部品」という)の疲労限度は、同一組成の鋼を鍛造後に調質処理してから軟窒化処理を施した部品(以下、「調質軟窒化鋼部品」)のそれよりも低い。
【0006】
第二は後述する曲げ矯正可能ひずみ量である。非調質軟窒化鋼部品では、軟窒化後の曲げ矯正時に大きなき裂を生じる。軟窒化処理によって生じた変形は、逆方向の曲げ変形を加えることによって矯正するが、その曲げにより非調質軟窒化鋼部品にき裂が発生する限界のひずみ量(以下、「曲げ矯正可能ひずみ量」という)は、調質軟窒化鋼のそれよりも小さい。一般に、曲げ矯正可能ひずみ量が小さいほど、その部分が自動車に組み込まれて使用されたとき、部品の疲労強度が低下する。
【0007】
上記したような理由によって、非調質軟窒化鋼部品は、曲げ矯正可能ひずみ量が調質軟窒化鋼部品に比べて小さいので、軟窒化処理によるひずみが大きい場合に曲げ矯正を行うクランク軸には使用できない。
【0008】
非調質鋼は、1100℃以上に加熱した後、1000℃以上で鍛造を終了し、放冷したままであるので、その組織は、粗大な旧オーステナイト粒界に沿った薄いネット状フェライトとその残りの部分のパーライトから構成される。
【0009】
それに比べて調質鋼の組織は、微細なオーステナイトから変態した、(a)微細なフェライトとパーライトの混合組織、または、(b)きわめて微細なラスと炭化物からなるマルテンサイト又はベイナイト(焼入れ・焼戻しの場合)、のいずれかである。
【0010】
また、非調質鋼のフェライト体積率は、焼準した鋼のそれと比較して小さい。これは、非調質鋼のオーステナイト粒径が大きい分だけ焼入れ性が大きく、それだけフェライト変態が抑制されることを反映するものである。
【0011】
これまでにも非調質軟窒化鋼部品の疲労限度、及び、曲げ矯正性を同時に改善する試みはなされていたが、十分に目的を達成できた例はない。
例えば、特開平7−102340号や特開平4−193931号には、析出硬化元素を高濃度に添加することによって、鍛造のままで、調質処理も軟窒化処理も施さずに高い疲労限度を得るという発明が開示されている。また、特開平8−144018号には、窒化後の硬さのみを考慮した発明が開示されている。
【0012】
これらの発明の鋼は、いずれも強力な析出硬化元素であるバナジウム(V)を高濃度に含有するので、高価である。また、耐焼付き性などが問題になる場合は、これらの高V鋼に軟窒化処理を施さなければならないが、高V鋼の軟窒化処理後の曲げ矯正性はきわめて劣っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、調質処理を行わないで軟窒化処理を施した場合であっても、繰返し曲げ時や曲げ矯正時に、応力・ひずみが集中するフィレットR部の疲労強度が高く、かつ、曲げ矯正時に発生するき裂が実際上問題とならない程度にまで小さいか、あるいは、き裂が発生する限界のひずみ量が大きい軟窒化非調質クランク軸とその製造方法を提供すること、及びそれらに適した軟窒化用非調質鋼を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明の軟窒化非調質は、所定の含有量に規定した各成分元素からなる鋼とする。そして、本発明の軟窒化非調質クランク軸は、前記本発明鋼をクランク軸に鍛造した後、自然放冷又は強制空冷し、その後は熱処理をすることなく、必要に応じて機械加工した後軟窒化処理を施すことで製造することとしている。そして、このようにすることで、調質処理を行わないで軟窒化処理を施した場合であっても、繰返し曲げ時や曲げ矯正時に、応力・ひずみが集中するフィレットR部の疲労強度が高くなると共に、曲げ矯正時に発生するき裂が実際上問題とならない程度にまで小さくなったり、あるいは、き裂が発生する限界のひずみ量が大きくなったりする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記の軟窒化用非調質鋼及び軟窒化非調質クランク軸を得るため、主としてクランク軸素材の成分調整について、試作、評価を繰り返した結果、上記の課題を解決できる本発明に至った。
【0016】
一般に、窒化処理によって形成される窒化層は、最表面の化合物層とその下の拡散層とからなる。非調質軟窒化鋼部品で疲労破壊が発生する起点は、拡散層内あるいは拡散層と母材との境界部であり、また、曲げ矯正で問題となるき裂は、拡散層でのき裂である。すなわち、疲労破壊及び曲げ矯正時の割れを支配するのは拡散層の性質である。従って、以下の説明で「表面」というときは、化合物層を除いた拡散層の表面側を意味するものとする。
【0017】
先ず、非調質軟窒化鋼部品の疲労特性について述べる。
従来の非調質軟窒化鋼部品の疲労限度が低い原因は、非調質軟窒化鋼部品では、拡散層と母材部との境界付近には引張り応力が残留することによるものと考えられる。従って、非調質軟窒化鋼部品において、疲労限度を改善するためには、この引張り残留応力を減少させるか、さらに望ましくは圧縮残留応力とすることが必要である。
【0018】
また、非調質軟窒化鋼部品では、素材が析出硬化元素を含まない鋼であっても、硬さは表面で著しく高くなり、内部に向かって急勾配で低下する。このために、表面には高い圧縮残留応力が発生するものの、境界付近ではそれと均衡する引張り残留応力が生じるものと推測される。
【0019】
このため、疲労特性を向上させる、すなわち引張り残留応力を低減させる方法としては、以下の方法が考えられる。
(a)母材の硬さを上げることにより表面から内部に向かう硬さの勾配をなだらかにすること。
(b)内部にまで窒素原子を拡散させることによって、硬さ勾配をなだらかにすること。
【0020】
次に、曲げ矯正によるき裂の発生及びその大きさについて述べる。
鋼の表面硬さが高いほど、曲げ矯正の際にはき裂を生じやすくなって、き裂長さは大きくなる。また、き裂はパーライト粒を一単位として進展するため、表面硬さが同じであれば、パーライト粒が小さいほど小さくなる傾向がある。
【0021】
このため、曲げ矯正性を向上させる方法としては、以下の方法が考えられる。
(c)表面の硬さを耐焼付き性を損なわない程度に下げること。
(d)パーライト粒を小さくすること。
【0022】
そこで、本発明者らは、上記した非調質軟窒化鋼部品の疲労特性と曲げ矯正性を向上させる具体的な方法を確認するために、以下に述べる実験を行った。
0.2〜0.4%のCを含有する中炭素鋼を基本組成として、CuとNiの含有量を変化させた14鋼種を素材として、クランク軸を模擬した図2に示す形状、寸法の試験体1を作製し、軟窒化処理後の疲労試験及び曲げ試験を行った。下記表1に14種類の試験素材の化学成分を示す。表1の最上欄の試験素材X1が基本組成(ベース材)である。それに対応して、X2 以下の試験素材は、C、Cu、Niの影響を評価するため、これらの含有量を変化させた鋼である。
【0023】
【表1】
Figure 0004403624
【0024】
素材に添加したCuは固溶強化元素であり、母材の硬さを高めるのに有効である。ただし、表面の硬さも同時に上げる効果があること、Cuの融点が低いため液体脆化と呼ばれる、鍛造時のCu相を起点とした割れを引起こす可能性があることから、適正含有量を見極める必要がある。Niも固溶強化元素であり、Cuと同様な効果を有するが、さらに、Cu相の融点を上げ、液体脆化を防ぐ効果もある。
【0025】
また、全ての素材に上記C、Cu、Niのほか、Si、P、Mn、S、Al、Ti、Ca等が添加されているが、この内、微量のTiは加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制するため、パーライト粒を小さくする効果がある。
【0026】
表1の14種の鋼を実験室レベルで溶製した素材棒鋼を1200℃に加熱して熱間鍛造した後、自然空冷し、調質処理を行うことなく、図2に示した形状、寸法の試験体1に加工し、ガス軟窒化処理(RXガス:NH3 =1:1の雰囲気中で585℃に1.5時間保持した後に油冷)を施した。なお、比較のために、クランク軸用として一般に用いられるS48C鋼(X15)を鍛造した後、焼準処理(860℃に再加熱し、15分間保持後に空冷)を行い、同じガス軟窒化処理を施した後に、同じ試験を行った。ただし、表1中のX13の素材のみ、鍛造時に割れが生じたため、その後の試験体1の製作は行わなかった。これは、Cuの含有量に対し、Niの含有量が少ないため、液体脆化が生じたことが原因と考えられる。
【0027】
疲労試験は、室温大気中、試験体1のジャーナル部2の端部およびピン部3の中央部を支持した3点曲げにより、荷重制御両振りにて繰返し周波数5Hzで実施し、破断繰返し数が107 回となる応力振幅を疲労限度と定義した。ここで、応力は、疲労き裂が発生するピン部3におけるフィレットR部4での応力(長さ1mmのひずみゲージにより長さ測定、算出)である。
【0028】
一方、曲げ矯正性は、同じ試験体1を用いた静的曲げ試験により評価した。疲労試験時にひずみゲージを貼付した場所と同一の場所にひずみゲージを貼付し、室温大気中にて曲げを負荷し、ひずみゲージの断線をき裂の発生と見なし、その時のひずみ量を曲げ矯正可能ひずみ量とした。曲げ矯正可能ひずみ量はばらつきが大きいため、1鋼種につき4個の試験体1による試験を行い、その平均値で評価した。
【0029】
図3に疲労限度とCu含有量との関係を、また、図4に疲労限度とNi/Cu含有量との関係を示す。図3に示したように、C含有量が同じであれば、Cu含有量が多いほど疲労限度が向上すること、また、Ni/Cu含有量は上記したように、0.35では鍛造時に割れが生じるため評価できないものの、図4に示したように、0.40より大きいレベルでは疲労限度はほぼ一定であることが判明した。
【0030】
図5に試験体1の母材硬さHv mat.(表面から深さが2mmの位置のビッカース硬さを用いた)と疲労限度との関係を示すが、これより、母材硬さHv mat.が大きいほど疲労限度が向上していることが判る。また、図6に母材硬さHv mat.とCu含有量との関係を示すが、これより、C含有量及びCu含有量が多いほど母材硬さHv mat.が大きいことが判る。この関係を重回帰分析すると以下の式で表される。
【0031】
Hv mat.=42.51×Cu〔%〕+228 .6 ×C 〔%〕+110
ここで、母材硬さHv mat.は、非調質で焼準材以上の疲労限度を確保するためには、180〜300の範囲内であることが必要である。さらに、機械加工時の被削性も確保するには、180〜260の範囲内とすることが望ましい。また、Ni含有量の母材硬さHv mat.への影響は、Cuほど顕著ではないが、鍛造割れの問題があるため、Ni/Cuは0.40以上とすることが望ましい。
【0032】
図7に曲げ矯正可能ひずみ量とCu含有量との関係を、また、図8に曲げ矯正可能ひずみ量とNi/Cu含有量との関係を示す。図7に示したように、C量が同じ場合には、Cu含有量があるレベル以上で曲げ矯正可能ひずみ量が急激に低下すること、また、Ni/Cu含有量は上記したように、0.35では鍛造時に割れが生じるため評価できないものの、図8に示したように、0.40より大きいレベルでは曲げ矯正可能ひずみ量はほぼ一定であることが判明した。
【0033】
図9に試験体1の表面硬さHvsur.(ビッカース硬さ)と曲げ矯正可能ひずみ量との関係を示すが、これより、表面硬さがビッカース硬さで380を超えると曲げ矯正可能ひずみ量が急激に低下することが判る。また、図10に表面硬さHvsur.とCu含有量との関係を示すが、これより、C含有量及びCu含有量が多いほど表面硬さHvsur.が大きいことが判る。この関係を重回帰分析すると以下の式で表される。
【0034】
Hvsur.=44.23×Cu〔%〕+214 .2 ×C 〔%〕+231
ここで、表面硬さHvsur.は焼準材の70%以上の曲げ矯正可能ひずみ量を確保すると共に、耐焼付き性をも確保するためには、260〜380の範囲であることが望ましい。また、Ni含有量の表面硬さHvsur.への影響はCuほど顕著ではないものの、鍛造割れの問題があるため、0.40以上とすることが望ましい。
【0035】
本発明は上記した基本的な知見と、各合金成分および不純物の作用ならびに軟窒化処理の条件に関する詳細な検討を総合してなされたものであり、本発明の軟窒化用非調質鋼は、C、Cu、Niを含有し、その質量百分率が、C:0.1〜0.6%、Cu:3.0%以下、Ni:3.0%以下で、かつ、下記の式を満足する範囲内にあり、さらに、Si:0.05〜1.50%、P:0.07%以下、Mn:0.20〜1.20%、S:0.10%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.020%以下、Ca:0.0003〜0.0030%、N:0.030%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であり、また本発明の軟窒化非調質クランク軸は、この本発明鋼から製造され、軟窒化処理されているものである。
【0036】
fn1 =44.23×Cu〔%〕+214 .2 ×C 〔%〕+231
fn2 =42.51×Cu〔%〕十228 .6 ×C 〔%〕+110
fn3 =Ni〔%〕/Cu〔%〕
但し、260 ≦fn1 ≦380
180 ≦fn2 ≦300
fn3 ≧0 .40
【0037】
また、本発明の軟窒化非調質クランク軸の製造方法は、本発明の鋼をクランク軸に鍛造した後、自然放冷又は強制空冷し、その後は熱処理をすることなく、必要に応じて機械加工した後軟窒化処理を施すものである。
【0038】
以下、本発明鋼の各構成元素の作用及び各元素の含有量を限定した理由について説明する(成分含有量の%は全て質量百分率である)。
【0039】
C:0.1〜0.6%、Cu:3.0%以下、Ni:3.0%以下で、かつ、以下の式を満足する範囲内にあること。
fn1 =44.23×Cu〔%〕+214 .2 ×C 〔%〕+231
fn2 =42.51×Cu〔%〕十228 .6 ×C 〔%〕+110
fn3 =Ni〔%〕/Cu〔%〕
但し、260 ≦fn1 ≦380
180 ≦fn2 ≦300
fn3 ≧0 .4 0
【0040】
fn1 は表面硬さ、fn2 は母材硬さ、fn3 はNiとCuの含有量の比に相当するパラメータであり、その範囲は先に説明したように、疲労限度、曲げ矯正性、鍛造割れの生じない限界に基づき設定した。
【0041】
Si:0.05〜1.50%
Siは溶製時の脱酸剤として必要であり、耐焼付き性、耐摩耗性にも効果がある。そして、これらの効果を得るには、少なくとも0.05%以上含有させることが必要である。ただし、過剰になると鍛造時の脱炭を促すので、本発明では、含有量の上限を1.50%とした。
【0042】
P:0.07%以下
Pは鋼の衝撃値及び破壊靱性値を低下させる。そして、これに伴ない曲げ矯正性も低下するので、本発明では、0.07%を許容上限値とした。
【0043】
Mn:0.20〜1.20%
Mnは固溶強化元素であり、母材硬さを高めるために、疲労限度を向上させる効果がある。しかし、過剰な添加はパーライト体積率を増加させるため、同じ表面硬さでも曲げ矯正性が低下するおそれがある。このため、本発明では、下限を0.20%、上限を1.20%とした。
【0044】
S:0.10%以下
Sは積極的に添加しなくても良い。すなわち、その含有量は不可避的不純物の範囲でもよい。しかし、Sには被削性を向上させる効果があるので、積極的に添加しても良い。その効果を得るためには、含有量を0.04%以上とすることが望ましい。但し、Sが0.10%を超えると連続鋳造スラブに欠陥を生じるので、本発明では、上限を0.10%とした。
【0045】
Al:0.05%以下
Alは過剰になると硬質の介在物が増えて、鋼の疲労限度及び被削性がともに低下する。このため、本発明では、含有量の上限を0.05%以下とした。
【0046】
Ti:0.020%以下
微量のTiは、鍛造に先立つ加熱時のオーステナイト粗成長を抑制することにより、フェライト・パーライト組織を微細化する。このため、同じ表面硬さであっても曲げ矯正性を向上させる効果がある。しかし、Tiが過剰に含有されると、鋼中Nと反応して表面から内部への硬さ勾配が急になり、疲労強度に悪影響を及ぼす。このため、本発明では、含有量の上限を0.020%とした。
【0047】
Ca:0.0003〜0.0030
aは被削性向上のため、積極的に添加する。被削性の向上に効果があるCaの含有量は0.0003%以上であるから、これ以上の含有量を確保する。一方、Caが0.0030%を超えると鋼中への大型介在物の混入が避けられない。従って、その含有量は0.0030%までにとどめるべきである。
【0048】
N:0.030%以下
Nは添加しなくても良いが、Nを添加した場合には、軟窒化時のNの拡散速度が上昇し、表面から内部にかけて硬さの勾配をゆるやかにする効果があり、疲労限度には良い影響を及ぼす。ただし、あまり添加しすぎると、その効果は飽和し、曲げ矯正性が低下するため、本発明では、上限を0.030%以下とした。
【0050】
上記した本発明の軟窒化非調質クランク軸は次に述べる方法で製造することができる。すなわち、先ず、本発明鋼を加熱し、鍛造加工を行って、目的の形状とする。この時の加熱温度は、低ければ低いほど好ましいが、低温鍛造には大きなプレス能力が必要となるため、一般的な条件として1200℃を標準とし、プレスの能力に応じて1150〜1250℃の範囲で決定する。鍛造後は、製造コストの点から自然放冷(空冷)を行う。ただし、製造時間短縮のために送風等による強制空冷を行ってもなんら問題はない。
【0051】
上記した鍛造により目的とする形状に整えた後は、一般に行われる焼準又は焼入れ・焼戻しなどの調質処理を行うことなく、必要に応じて機械加工した後軟窒化処理を施す。軟窒化処理は、例えばRXガス:NH3 =0 .8 〜1 .2 の雰囲気で、温度570〜600℃、時間60〜120分とし、その後は直接油冷することにより行う。このような条件により軟窒化処理を行えば、耐焼付き性の改善のための適正な化合物層と十分な深さの拡散層を得ることができる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験結果について説明する。
下記表2は、試験に供した本発明鋼種類(Z1〜Z)、比較鋼12種類(Z7〜Z18)、及び、S48C相当鋼2種類(Z19,Z20)の化学組成を示す一覧表である。なお。比較鋼の内、C、Cu、Niの含有量から求まるfn1 、fn2 、fn3 のいずれかが本発明の範囲外となるものを比較例1(Z7〜Z11)、本発明例のZ2をベースにして、P、Mn、Al、Ti、Ca、Pbのいずれかの含有量が本発明の範囲外となるものを比較例2(Z12〜Z18)と呼ぶ。
【0053】
【表2】
Figure 0004403624
【0054】
これらの鋼各150kgを、大気中溶解炉で溶解した後に1200℃まで加熱し、図2に示した形状及び寸法のクランク形の試験体1に熱間鍛造し、放冷した。その後、若干の機械加工を行い、軟窒化処理を施した。ただし、fn3 が本発明の範囲外であるZ11のみ、鍛造時に割れが発生したため、その後の評価は行っていない。
【0055】
ガス軟窒化は、ガス比をRXガス:NH3 =1:1とし、その雰囲気中で試験体を585℃に加熱し、90分間保持した後、150℃の油中で油冷した。そして、窒化した各試験体をそのまま各試験に供した。
【0056】
疲労試験は前述の通りで、破断繰返し数が107 回となる応力振幅を疲労限度と定義した。一方、曲げ矯正性も前述した方法と同様の方法で評価した。被削性についても全ての鋼に対して工具寿命の試験を行った。被削性の評価は、S48CにPbを0.05%添加した鋼(表2のZ20)に調質処理を施したものを基準とする相対比較によって行った。
【0057】
下記表3に、疲労、曲げ及び被削性の各試験の結果を示す。表3から明らかなように、本発明鋼を用いて製造した軟窒化非調質クランク軸(本発明例:Z1〜Z)は、疲労限度及び曲げ矯正可能ひずみ量の両方において、目標値(Z19のS48C鋼を素材とする軟窒化非調質クランク軸に対し、疲労限度が同等(588MPa)、曲げ矯正可能ひずみ量が対S48C比70%(ひずみ2.45%))を達成している。
【0058】
一方、比較例1(Z7〜Z11)の中には目標値の疲労限度と曲げ矯正可能ひずみ量を同時に達成するものは存在しない。また、比較例2(Z12〜Z18)には、疲労限度及び曲げ矯正可能ひずみ量の両方共目標値を達してはいるものの、ベース材であるZ2と比較すると低下していることが判る。
【0059】
表3中の被削性は、S48CにPbを添加したZ20と同等以上の工具寿命となったものを良好として◎印を、Pbを添加していないS48CであるZ19と同等以上の工具寿命となったものに○印を、さらにこれより工具寿命の短いものに×印を付してある。本発明品はPbを添加していないS48Cと同等以上の被削性を有することが判る。
【0060】
【表3】
Figure 0004403624
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の軟窒化非調質クランク軸熱間鍛造後、調質処理を行わずに軟窒化処理を施しても、素材鋼の表面硬さと母材硬さを適正範囲内とする本発明鋼の成分とすることにより、従来の調質処理を行った軟窒化クランク軸と同等以上の優れた疲労限度および曲げ矯正性を確保することができる。また、このクランク軸を製造する本発明法では、調質処理の工程が不要であることから、製造時間が大幅に短縮し、コスト削減にも大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は従来の軟窒化クランク軸(調質材)の製造工程を、(b)は本発明の軟窒化クランク軸(非調質材)の製造工程をそれぞれ示す図である。
【図2】疲労試験及び曲げ試験に供したクランク軸を模擬した試験体の形状を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】疲労限度とCu含有量との関係を示した図である。
【図4】疲労限度とNi/Cu含有量との関係を示した図である。
【図5】試験体の母材硬さと疲労限度との関係を示した図である。
【図6】母材硬さとCu含有量との関係を示した図である。
【図7】曲げ矯正可能ひずみ量とCu含有量との関係を示した図である。
【図8】曲げ矯正可能ひずみ量とNi/Cu含有量との関係を示した図である。
【図9】試験体の表面硬さと曲げ矯正可能ひずみ量との関係を示した図である。
【図10】表面硬さとCu含有量との関係を示した図である。
【符号の説明】
1 試験体
2 ジャーナル部
3 ピン部
4 フィレットR部

Claims (3)

  1. C、Cu、Niを含有し、その質量百分率が、C:0.1〜0.6%、Cu:3.0%以下、Ni:3.0%以下で、かつ、下記の式を満足する範囲内にあり、さらに、Si:0.05〜1.50%、P:0.07%以下、Mn:0.20〜1.20%、S:0.10%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.020%以下、Ca:0.0003〜0.0030%、N:0.030%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする軟窒化用非調質鋼。
    fn1 =44.23×Cu〔%〕+214 .2 ×C 〔%〕+231
    fn2 =42.51×Cu〔%〕十228 .6 ×C 〔%〕+110
    fn3 =Ni〔%〕/Cu〔%〕
    但し、260 ≦fn1 ≦380
    180 ≦fn2 ≦300
    fn3 ≧0 .40
  2. 請求項1に記載の鋼から製造され、軟窒化処理されていることを特徴とする軟窒化非調質クランク軸。
  3. 請求項1記載の鋼をクランク軸に鍛造した後、自然放冷又は強制空冷し、その後は熱処理をすることなく、必要に応じて機械加工をした後軟窒化処理を施すことを特徴とする軟窒化非調質クランク軸の製造方法。
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