JP3267164B2 - 窒化用鋼および窒化鋼製品の製造方法 - Google Patents
窒化用鋼および窒化鋼製品の製造方法Info
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Description
に窒化処理を施しても、高い切欠き疲労限度および優れ
た曲げ矯正性をもつ窒化用鋼、およびその窒化用鋼を用
いて窒化鋼製品を製造する方法に関する。本発明鋼は、
窒化処理を施した後に曲げ矯正を行うことが多い、例え
ば、自動車用クランクシャフトのような部品の素材とし
て好適である。
ドおよびナックル等の自動車用部品は、機械構造用炭素
鋼などの鋼片を所定の形状に熱間鍛造し、その後、疲労
限度向上を目的に調質処理(焼準処理または焼入れ−焼
戻し処理)を行って製造されている。高い疲労強度を必
要とする一部のクランク軸などでは、調質処理の後、さ
らに窒化処理を施す。
明鋼を素材として、上記の窒化処理部品(以下、この明
細書では、上記のような「部品」を含めて、窒化処理後
のものを「製品」と記す)を製造する工程を示した図で
ある。ここで(a)は従来鋼を、(b)は本発明鋼を、
それぞれ素材とした場合の工程である。いずれの場合
も、窒化処理は耐焼付き性、耐かじり性、および高い疲
労限度を製品に付与するために行われる。
(b)に示すように調質処理を省略し、鍛造のままで窒
化処理を施して製品にする、いわゆる非調質鋼の採用が
多くの自動車部品について検討されている。しかしなが
ら、調質処理を省略することによって劣化する性能があ
り、このために調質処理を省略できない部品がある。
窒化処理を施した部品(以下「非調質窒化鋼部品」とい
う)の疲労限度は、同一組成の鋼を鍛造後に調質処理を
行って窒化処理を施した部品(以下「調質窒化鋼部品」
という)のそれよりも低い。
に大きな亀裂を生じる。窒化処理によって生じた変形
は、逆方向の曲げ変形を加えることによって矯正する
が、その曲げにより非調質窒化鋼部品に発生する亀裂
は、調質窒化鋼部品のそれよりも大きい。この亀裂が大
きいほど、例えば自動車用部品として使用されたときの
疲労限度が低くなる。
は、本発明者の研究によれば、その長さが 0.10mm 以下
であれば実用上問題がない。そこで、本明細書では曲げ
矯正によって発生する亀裂の長さが 0.10mm 以下であれ
ば、「曲げ矯正性が良い」という。
裂長さが 0.10mm を大きく超えるのが普通なので、窒化
処理後のひずみが大きい場合に曲げ矯正を行って製造す
るクランクシャフトなどには使用できない。非調質鋼
は、1100℃以上に加熱した後、1000℃以上で鍛造を終了
し、放冷したままなので、その組織は巨大な旧オーステ
ナイト粒界に沿った薄いネット状フェライトとその残り
の部分のパーライトから構成される。それに較べて調質
鋼の組織は、微細なオーステナイトから変態した下記の
いずれかの組織である。(a) 微細なフェライトとパーラ
イトの混合組織(焼準の場合)、 (b) きわめて微細な
ラスと炭化物からなるマルテンサイトまたはベイナイト
組織(焼入れ−焼戻しの場合)。また、非調質鋼のフェ
ライト体積率は、焼準した鋼のそれに比較して小さい。
これは、非調質鋼ではオーステナイト粒径が大きい分だ
け焼入れ性が大きいので、冷却時にパーライトに変態し
やすく、それだけフェライトへの変態が抑制されるから
である。
び曲げ矯正性を同時に改善する試みがなされたことはあ
るが、それを達成した例はない。析出硬化元素を高濃度
に添加することによって、鍛造のままで、調質処理も窒
化処理も施さずに高い疲労限度を得る発明が提案されて
いる。特開昭64−684245号公報、特開平4−19391号公
報および特開平7−102340号公報などで提案されている
のがそのような発明である。これらはいずれも強力な析
出硬化元素であるバナジウム (V) を高濃度に含有する
鋼であり、高価である。また、耐焼付き性などが問題に
なる場合は、これらの高V鋼に窒化処理を施さなければ
ならないが、窒化処理後の高V鋼の曲げ矯正性はきわめ
て劣るものとなる。
は、調質処理を行わなくても、窒化処理後に高い切欠き
疲労限度と優れた曲げ矯正性を持つ窒化用鋼を提供する
ことにある。具体的には、応力あるいはひずみが集中す
る切欠き部(クランク軸ではフィレット部に相当)にお
いても、窒化鋼製品としての使用中の繰返し曲げに対し
て疲労限度が高く、また、製品の製造過程における曲げ
矯正の際に発生する亀裂が実用上問題とならない程度に
まで小さい鋼を提供することにある。
SのS48C鋼と同等以上の性能、即ち、 応力集中
係数2の切欠き試験片で疲労限度が 21kgf/mm2以上、
試験片表面での値で 1.5%のひずみを負荷して曲げ
矯正を行ったときの亀裂の長さが 0.10mm 以下、という
性能を同時に具備できる窒化用鋼を提供するのが本発明
の第1の目的である。
素材とする窒化鋼製品の製造方法を提供することにあ
る。
用鋼と、(2) の窒化鋼製品の製造方法を要旨とする。
n:0.20〜0.60%、P:0.08%以下、S:0.10%以下、s
ol.Al:0.010%以下、Ti:0.005〜0.013%、Ca:0.0003
〜0.0030%およびN:0.010 〜0.030 %を含有し、残部
がFeおよび不純物からなり、不純物中のCrが0.10%以
下、Vが0.01%以下であることを特徴とする窒化用鋼
(C:0.30〜0.40%、Si:0.05〜0.40%、Mn:0.20〜0.
60%、P:0.08%以下、S:0.02〜0.10%、sol.Al:0.
005%以下、Ti:0.005〜0.013%、Ca:0.0003〜0.0030
%、Pb:0.20%以下およびN:0.010 〜0.030 %を含有
し、不純物中のCrが0.10%以下、Vが0.01%未満である
鋼を除く)。この鋼は、更に0.03〜0.20重量%のPbを含
んでもよい。 (2) 上記(1) の窒化用鋼を熱間で鍛造加工した後に、調
質処理を行うことなく、窒化処理を施すことを特徴とす
る窒化鋼製品の製造方法。鍛造の後の切削等の機械加
工、および窒化処理の後の曲げ矯正を必要に応じて行う
ことができる。
れる窒化層は、最表面の化合物層とその下の拡散層から
なる。非調質窒化鋼製品で疲労破壊が発生する起点は、
拡散層内あるいは拡散層と母材の境界部であり、また曲
げ矯正で問題となる亀裂は拡散層での亀裂である。結
局、拡散層の性質が前記の性能を決めることになる。そ
こで、以下の説明において「表面」というときは、化合
物層を除いた拡散層の表面側を意味することとする。 1. 非調質窒化鋼製品の疲労限度が低い原因: 非調質窒化鋼製品では、拡散層と母材部の境界付近には
引張応力が残留する。
応力を減少させる必要であり、さらに圧縮残留応力とす
ることが望ましい。非調質窒化鋼では、析出硬化元素を
含まない鋼であっても、硬さは表面で著しく高くなり、
内部に向かって急勾配で低下する。このために、表面に
は高い圧縮残留応力が発生するものの、境界付近ではそ
れと均衡する引張残留応力が生じていると推測される。
非調質窒化鋼製品において、表面のみ硬さが著しく高
く、かつ硬化層深さが小さいということは、非調質窒化
鋼では外部から入った窒素が内部に入りにくく表面にと
どまっていることを意味する。亀裂起点となる境界部の
高い引張残留応力を低減するには、内部にまで窒素原子
を拡散させることによって硬さ勾配をなだらかにして、
硬さを奥まで分布させることが必要である。
く、パーライト中では著しく小さい。
によって窒素の拡散が阻害されるからである。非調質鋼
ではフェライトが旧オーステナイト粒界に薄く集中して
いるために、窒素の内部への拡散はそのフェライトを通
ってしかできない。これに対して、焼準処理、または焼
入れ−焼戻し処理を行った組織では、微細なフェライト
が粒界に限らず組織全体に分布しているので、組織全体
にわたって拡散経路が存在する。このために、調質鋼で
は窒化処理を施すと表面から内部にまで緩やかな硬度分
布ができると推定される。
も疲労限度を低下させる原因として挙げられる。 2. 曲げ矯正による亀裂の発生の原因: 窒化処理後の鋼製品の表面硬さが高いほど曲げ矯正の
際、割れを生じやすく、亀裂長さは大きくなる。しか
し、亀裂長さは表面硬さだけでは一義的に決まらない。
亀裂は、パーライト粒を一単位として進展する。したが
って、パーライト粒が小さいほど亀裂は小さくなる傾向
がある。
前記の課題を解決するには、第1に非調質鋼の組織の改
善、換言すれば、その組織を調質鋼の組織に近づけるこ
と、第2に窒化処理後の表面硬さを抑えること、具体的
には表面硬さを上昇させる元素の使用を避けること、が
重要であると言える。そこで、具体的に組織等を改善す
る方法を確認するために、本発明者らは以下に述べる実
験を行った。即ち、炭素(C)の含有量が 0.38 %の中
炭素鋼を基本組成として、各種元素の含有量を変えた 3
1 鋼種について、応力集中係数2の切欠き試験片を用い
て窒化処理後の疲労試験および曲げ試験を行った。表1
に試験に供した 31 種類の鋼の化学組成を示す。表1の
最上欄の鋼X1が基本組成である。X2以下の鋼はC、Si、
Mn、P、Cr等の影響を知るためのそれらの含有量を変化
させた鋼である。上記の鋼を 1250 ℃に加熱し、熱間鍛
造により 30mm 径の丸棒とし、調質処理を施すことな
く、切欠き小野式回転曲げ疲労試験片に加工し、ガス軟
窒化処理 (N2 : NH3 =1:1の雰囲気中で 570
℃に3時間保持した後に油冷)を施した。なお、比較の
ために自動車部品用鋼材として用いられるJISのS4
8C鋼を鍛造した後、焼準処理(860 ℃に再加熱し、15
分間保持後に空冷) を行い、同じ窒化処理を施した後
に、同じ試験に供した。
度 50Hz で実施し、破断繰り返し数が107回となる公称
応力振幅 (kgf/mm2)を疲労限度と定義した。一方、曲
げ矯正性は同じ試験片による4点曲げ試験により評価し
た。室温大気中においてひずみ最大となる部位(ゲージ
長 0.5mmのひずみゲージ使用) でひずみ速度約 100μm
/sec にて荷重を負荷し、ひずみ量が1.5%に達した時
点で除荷した後、試験片断面を切り出し、亀裂長さを測
定した。図2は、疲労限度および4点曲げによる亀裂長
さに及ぼすC、Si、MnおよびPの影響を示した図であ
る。同図左端に前記の焼準材の疲労限度(21 kgf/m
m2)および曲げによる亀裂長さ( 0.10mm )を目安として
示す。図3は、同じく疲労限度および亀裂長さに及ぼす
Al、Cr、N、TiおよびVの影響を示した図である。これ
らの試験結果および組織の観察からつぎのような結論が
得られた。
ナイト粒成長を抑制する。
向上する。これは、固溶窒素量が増えるからである。
化後の表面硬さが抑制でき、曲げ矯正性を改善すること
ができる。
疲労限度が向上する。本発明は、上記の基本的な知見を
基にし、さらに各合金成分の作用と適正含有量について
の詳細な検討を加えて成されたものである。まず、本発
明の窒化用鋼の化学組成を前記のように定めた理由を説
明する。以下、成分含有量に関する%は「重量%」を意
味する。 C:0.30〜0.43% Cは、鋼製品の引張り強度を確保するのに有効な元素で
あり、そのためには0.30%以上の含有量が必要である。
しかし0.43%を超える過大な濃度になると、粒内からフ
ェライトが発生しにくくなり、非調質鋼の組織を調質鋼
のそれに近づけることができなくなるので0.43%以下と
する。 Si:0.05〜0.40% Siは、鋼の溶製時の脱酸元素として必須であり、含有量
として0.05%以上は必要である。しかし、0.40%を超え
る過剰な含有量は鍛造時に表面脱炭を促進し、図2に示
したように疲労限度低下の原因となるので、0.05〜0.40
%とする。 Mn:0.20〜0.60% Mnの含有量を低く抑えることにより、粒内からフェライ
トを発生させ、非調質鋼の組織を焼準材のそれに近づけ
ることができ、図2に示すように疲労限度を高く維持す
ることができる。そこで本発明ではMn含有量の上限を0.
60%とした。一方、鋼の溶製時の脱酸のため、また硫黄
(S)に起因する高温延性の低下を防止するために、0.
20%以上のMnは必要である。従って、Mn含有量の適正範
囲は0.20〜0.60%である。
ように、0.08%までのPには非調質窒化鋼製品の曲げ矯
正により発生する亀裂の長さを大きくせずに疲労限度を
改善する効果があるので0.08%までは許容する。なお、
上記の効果を狙って積極的に添加する場合には、0.02〜
0.08%の含有量とすることが望ましい。0.02%以上でな
いと顕著な効果が得られない。他方、Pの含有量が0.08
%を超えると鋼製品の靱性が著しく劣化し、曲げ矯正性
が悪化する。
不純物レベルであってもよいが、特に被削性を重視する
場合には、0.10%までの含有を許容する。Sが0.10%を
超えると介在物が大きくなり、疲労限度の低下を招く。 sol.Al: 0.010%以下 Alは、鋼の脱酸剤として有効な元素である。しかし、通
常レベルの含有量であっても、Alは窒素 (N) をAlNと
して固定して固溶窒素を少なくすることにより疲労限度
を低下させ、また、窒化処理により表面を硬化させ、曲
げ矯正性を劣化させるという好ましくない作用を持つ
(図3参照)。従って、Alは極力少なくすることが望ま
しい。脱酸のためにAlを添加しても、その含有量は最小
限にとどめるべきである。従って、本発明では、sol.Al
としての含有量を 0.010%以下とした。なお、その含有
量は実質的に0であってもよい。
ナイト粒成長を抑制し、それにより変態後のフェライト
−パーライト組織を微細化する。その結果、非調質鋼の
組織を焼準材のそれに近づけることができ、また、図3
に示したとおり、曲げ矯正時に発生する亀裂を小さくす
ることができる。
の微細化が曲げ特性に及ぼす影響は比較的小さいが、Ti
の添加は有効である。特に、本発明で定める組成範囲の
中でもC含有量およびMn含有量の多い成分系では、フェ
ライト体積率が低くなるので、Ti添加は曲げ特性改善に
大きく寄与する。このような効果を発揮させるために、
0.005〜0.013 %のTiを含有させる。0.013%を超える
と、前記のAlと同様に、TiNを生成させ、鋼中の固溶N
を減少させて疲労限度を低下させる。 Ca:0.0003〜0.0030% 前述のような自動車部品等は、熱間鍛造で成形した後、
窒化処理の前に機械加工によって最終形状にすることが
多い。従って、切削工具の寿命を考えると、素材の窒化
用鋼は被削性が良好であることが望ましい。
って、本発明鋼では 0.0003〜0.0030%のCaの含有させ
る。良好な被削性を確保するには 0.0003%以上含有さ
せる必要があるが、0.0030%を超えると大型の介在物が
生成し、疲労限度の低下が避けられない。
と介在物が多くなり疲労限度が著しく低下する。そこ
で、被削性が重要でない場合には意図的に添加しなくて
もよい。特に優れた被削性が要求される場合には、0.03
〜0.20%の範囲で含有させることが好ましい。0.03%以
上でないと顕著な被削性の向上は得られない。0.20%を
超えると窒化鋼製品の疲労限度が著しく低下する。
に有効な元素である。この効果を得るためには 0.010%
以上は必要である。しかし、0.030%までで疲労限度向
上の効果は飽和し、それを超えると曲げ矯正性の悪化が
著しくなる。従って、Nの適正含有量は 0.010〜0.030
%である。
有されていると窒化処理により窒化物を生成し、表面硬
さを過度に高めることにより曲げ矯正性を劣化させる
(図3参照)。しかし、鋼の溶製に際してスクラップを
使用することを考慮すれば、Crの含有量を0.10%以下に
するには精錬コストが大幅に増大するので、0.10%まで
の含有は許容することとする。
せ、図3に示したように、曲げ矯正性を劣化させる。従
って、Vは不可避的不純物として 0.01 %以下に抑える
べきである。0.01%を超えると、上記の悪影響が著しく
なるからである。次に、本発明の窒化鋼製品の製造方法
について述べる。これまでに述べた組成の本発明の窒化
用鋼を加熱し、熱間鍛造加工により目的の形状とする。
その鍛造加工の条件には特に制約はなく、通常行われて
いる方法でもよいが、望ましいのは、鍛造前の加熱を表
面温度で1150〜1250℃として15分以上行うことである。
図1に示したように鍛造加工後に、必要に応じて切削等
の機械加工を行うこともある。目的とする形状に整えた
後に、焼準または焼入れ−焼戻しなどの調質処理を行う
ことなく、窒化処理を施す。
オン窒化またはタフトライド処理等すべての窒化方法が
使用できる。窒素原子の拡散経路を確保した組織、固溶
窒素や燐による強化、および析出硬化元素の制限など
は、窒化処理の方法に大きな影響を及ぼさず、本発明の
窒化用鋼にはどの方法も有効だからである。なお、下記
の条件で行う軟窒化処理が、本発明鋼に特に相応しい。 ガス比(N2 /NH3) … 0.5〜2.0 処理温度 … 530〜610 ℃ 処理時間 … 2〜4時間 上記の窒化処理の後の冷却は、油冷、放冷等、適宜選択
できる。
種類の化学組成を示す一覧表である。これらの鋼を 50k
g 大気中溶解炉で溶製した後に、1250℃まで加熱し、 9
00℃以上の温度で 30mm 径の丸棒に熱間鍛造し放冷し
た。その丸棒から切欠き小野式回転曲げ疲労試験片 (切
欠き部の直径8ミリ、開き角 60 度、切欠き底半径 0.8
mm、応力集中係数は2)を採取し、ガス軟窒化を施し
た。ガス軟窒化は、ガス比N2 :NH3 =1:1の
雰囲気中で試験片を 570℃に加熱し3時間保持した後、
150℃の油中に入れて油冷する、という方法で実施し
た。窒化した試験片をそのまま各試験に供した。疲労試
験は室温大気中にて繰返し速度 50Hz で実施し、破断繰
り返し数が107回となる公称応力振幅を疲労限度と定義
した。一方、曲げ矯正性は同じ形状の試験片の4点曲げ
試験により評価した。室温大気中でひずみ最大となる部
位でのひずみ速度を約 100μ/sec として荷重を負荷
し、ひずみ量が 1.5%に達した時点で除荷し、試験片断
面を切り出し、拡散層中の亀裂長さを測定した。
命を調べる試験を行った。これは、JISのS48C鋼
にPbを0.05%添加した鋼に調質処理を施したものを基準
材とし、この基準材を切削した場合と同等以上の工具寿
命となったものを被削性良好とした。
削性試験の結果をまとめたものである。同表から明らか
なように、本発明鋼は、疲労限度および曲げによる亀裂
長さの両方において目標値(S48C鋼を素材とする調
質窒化鋼製品の疲労限度である 21kgf/mm2 以上、曲
げによる亀裂長さ0.10mm以下) を達成している。比較鋼
の中には目標値の疲労限度と曲げによる亀裂長さを同時
に達成するものは存在しない。表3の被削性の欄で
「○」としたのは、前記の基準材を切削した場合と同等
以上の工具寿命があったもの(被削性良好)である。同
じく「×」は基準材を切削した場合よりも工具寿命が短
かったものである。本発明鋼のうちPbを添加したもの
(Z5)は、疲労限度と曲げ矯正性の目標を同時に満たし
たうえ、さらに良好な被削性をも備えている。
理を施しても、組織改善効果によって調質鋼と同等以上
の優れた疲労限度および曲げ矯正性を確保できる。調質
処理を省略することにより、工程短縮、省エネルギー等
の大きな実益が得られ、製品の製造コストの削減ができ
る。本発明鋼および本発明方法は、窒化処理を施す自動
車用クランクシャフトなどの製造にきわめて好適であ
る。
製造工程の概略図、(b) は本発明の非調質鋼を素材とす
る窒化鋼製品の製造工程の概略図、である。
すC、Si、MnおよびPの影響を示す図である。
すAl、Cr、N、TiおよびVの影響を示す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】重量%で、C:0.30〜0.43%、Si:0.05〜
0.40%、Mn:0.20〜0.60%、P:0.08%以下、S:0.10
%以下、sol.Al:0.010%以下、Ti:0.005〜0.013%、C
a:0.0003〜0.0030%、およびN:0.010 〜0.030 %を
含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のCr
が0.10%以下、Vが0.01%以下であることを特徴とする
窒化用鋼(C:0.30〜0.40%、Si:0.05〜0.40%、Mn:
0.20〜0.60%、P:0.08%以下、S:0.02〜0.10%、so
l.Al:0.005%以下、Ti:0.005〜0.013%、Ca:0.0003
〜0.0030%およびN:0.010 〜0.030 %を含有し、不純
物中のCrが0.10%以下、Vが0.01%未満である鋼を除
く)。 - 【請求項2】重量%で、C:0.30〜0.43%、Si:0.05〜
0.40%、Mn:0.20〜0.60%、P:0.08%以下、S:0.10
%以下、sol.Al:0.010%以下、Ti:0.005〜0.013%、C
a:0.0003〜0.0030%、Pb:0.03〜0.20%およびN:0.0
10 〜0.030 %を含有し、残部がFeおよび不純物からな
り、不純物中のCrが0.10%以下、Vが0.01%以下である
ことを特徴とする窒化用鋼(C:0.30〜0.40%、Si:0.
05〜0.40%、Mn:0.20〜0.60%、P:0.08%以下、S:
0.02〜0.10%、sol.Al:0.005%以下、Ti:0.005〜0.01
3%、Ca:0.0003〜0.0030%、Pb:0.20%以下および
N:0.010 〜0.030 %を含有し、不純物中のCrが0.10%
以下、Vが0.01%未満である鋼を除く)。 - 【請求項3】請求項1または2に記載の窒化用鋼を熱間
で鍛造加工した後に、調質処理を行うことなく、窒化処
理を施すことを特徴とする窒化鋼製品の製造方法。
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