JP4411594B2 - 冷間加工用金型 - Google Patents

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Description

本発明は、冷間加工用金型、特に家電、携帯電話や自動車関連部品を成形するのに適した冷間加工用金型に属する。
従来、冷間加工用金型の母材に使用されてきた冷間ダイス鋼には、JIS SKD11が多用されているが、一部ではこれに対して、新たに被削性、靭性、二次硬化硬さを向上させる試みがなされている。例えば、C,Crの添加量を調整することでSKD11のマトリックス(基地)組成を極力維持しながら未固溶炭化物を減らし、被削性や靭性を改良した10%CrSKD(特許文献1参照)と呼ばれるもの、SKD11のマトリックス組成を極力維持しながら未固溶炭化物量を減らした上に、更にMo量を高めることで二次硬化能を高めた8%CrSKD(特許文献2参照)と呼ばれるものがある。
特開平11−279704号公報 特開平01−011945号公報
上述の手法は、母材を構成する冷間ダイス鋼に求められる諸特性を向上するのに有効なものである。しかし、これらはいずれも焼戻し時に生じる変寸が大きいところに課題があり、つまり、焼戻しの二次硬化領域にて発生する膨張量が大きいことから、熱処理後の加工工数の増加に繋がるものである。
この焼戻し時の膨張変寸の発生は、先に施された焼入れ時の残留応力の解放(残留オーステナイトの分解)が原因であって、これは、従来、二次硬化を期待して添加されるMo等が形成する焼戻し炭化物の析出により促進されるものである。また、残留オーステナイトは、造塊時に形成され、もとより存在する未固溶の一次炭化物によって拘束されれば、その焼戻し時の分解は抑制されるが、一次炭化物は被削性の劣化要因となることから低減することが好ましく、これによってやはり残留オーステナイトの分解は促進され、変寸は助長される。
近年、金型加工業においては、加工技術の発達により、熱処理前の加工工数こそ激減してはいるが、熱処理後の加工、調整の工数は以前よりあまり変化しておらず、特にこの熱処理後の工程改善が急務となっている。また、冷間加工用金型においては、その使用中の作業面、更には硬質化処理を施した作業面であっても、早期に生じるかじり等が問題であり、これは金型寿命を短くする要因であることから、作業面の機械的特性の向上も課題である。
そこで本発明は、焼入れ、焼戻し時に発生する変寸を抑制することで、金型製作工数を依然として引き上げていた熱処理後の加工、調整工程を削減できる、特に冷間加工用金型材料に適した冷間ダイス鋼を母材として、作業面の機械的特性にも優れた冷間加工用金型を提供するものである。
まず、本発明者らは、冷間ダイス鋼の焼戻し時において、その求められる諸特性の全てを維持するためには根本的な抑制が難しい変寸を、逆に相殺手段を検討することで抑制する手法について検討した。加えて、焼戻し時のマトリックスに起こる組織状態を詳細に調査し、焼戻し炭化物そのものには二次硬化への寄与度が薄いことも突きとめた。このような知見をして、変寸を抑制できかつ、硬度も上昇できる新たな手段を見いだしことで、その他の特性をも十分に備えた冷間ダイス鋼を達成できる手段を確立した。
そして、上記の冷間ダイス鋼を母材に使用してこそ、その作業面には耐かじり性に優れる硬質皮膜を、使用中の剥離なく形成できることを突きとめ、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.7〜1.6%未満、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.05%未満(0%を含む)、S:0.01〜0.12%、Cr:7.0〜13.0%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+W/2):0.5〜1.7%、V:0.7%未満(0%を含む)、Ni:0.3〜1.5%、Cu:0.1〜1.0%、Al:0.1〜0.7%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼を母材とし、作業面には硬質皮膜を有する冷間加工用金型である。
好ましくは、上記の母材は、質量%で、Ni/Al:1〜3.7を満たす上記の鋼であり、あるいはさらに、質量%で、(Cr−4.2×C):5以下かつ、(Cr−6.3×C):1.4以上の関係を満たす鋼である。また、0.3%以下のNbを含有することも望ましい。
そして、上記の硬質皮膜は、MX型化合物であることが望ましい、本発明の冷間加工用金型である。
本発明であれば、母材の熱処理変寸および変形が少なくなるため、熱処理後の手直しによる仕上げ加工が低減/省略できることから、金型製造のコスト低減が可能になる。さらに、金型製作の納期短縮や、より複雑な形状の金型の熱処理にも対応の可能性が広がる。そして、その作業面に硬質皮膜を形成して仕上げた金型は、皮膜の耐剥離性に優れ、寿命が向上するため、産業上極めて有益な技術となる。
本発明の特徴は、冷間ダイス鋼に求められる諸特性の維持に係り根本的な抑制が難しい変寸を、逆に相殺することで抑制する手法を採用したところにある。しかも、その熱処理硬化挙動を詳細に見直すことで突きとめた、二次硬化能の不足についても、変寸の抑制と同時にその二次硬化能をも補う手段であって、その結果、被削性や耐摩耗性といった他の必要特性をも阻害せずに、優れた変寸抑制特性と高硬さを達成できる手段を見いだしたところにある。
そして、このような設計がなされた冷間ダイス鋼であるからこそ、これを母材とする冷間加工用金型は、その作業面に形成した硬質皮膜の耐剥離性に優れ、よって、優れた耐かじり性を達成できるところにある。
すなわち、本発明は、一次炭化物を低減し、諸特性を満足できる範囲で、できるだけ変寸の発生を抑制し得る成分組成を基に、適正量のNi,Alを添加し、しかも、それに応じた適正量のCuをも添加した、変寸制御特性および高硬度特性に優れた冷間ダイス鋼を提案し、それを母材にして作業面に硬質皮膜を形成した冷間加工用金型である。
最初に、本発明の金型を構成する、母材の合金設計について述べる。本発明の母材中のNi,Alは、それらが金属間化合物を形成し、上記工具鋼の二次硬化領域での焼戻し時(時効時)に析出することで、収縮方向の変寸に働くことから、残留オーステナイトの分解による上記の膨張を相殺することができる。そして、このNi−Al系金属間化合物を工具鋼の二次硬化領域温度でこそ析出させることが、上記の相殺効果を発揮する上で重要であって、そのための作用効果を有するCu量の調整も適正に行なうものである。
さらに、本発明者らは、特に膨張変寸の問題が多発する、残留オーステナイトの分解と焼戻し炭化物の析出する高温焼戻し時の熱処理において、そのマトリックスがどのような組織変化を呈しているのかを、透過型電子顕微鏡による観察を利用して詳細に調査した。その結果、変寸を促進する焼戻し炭化物については、耐摩耗性の向上にこそ大きく寄与するものの、特に二次硬化の寄与要因として従来考えられてきた微細な炭化物の析出はほとんど確認されず、二次硬化の程度はマトリックス側の要因によるところが大きいことを知見した。
本発明の母材が採用するNi−Al系金属間化合物の場合、それらは析出強化元素としての二次硬化作用も有することから、上記の変寸相殺作用に加えて、二次硬化作用をも更に補完し、よって、被削性や耐摩耗性といった他の必要特性を阻害せずに、優れた耐変寸特性と高硬度特性を達成できるのである。
この金属間化合物による析出強化は、従来、マルエージング鋼等への適用が多く見られる手段であるが、0.2(質量%)以上のCを含む工具鋼の分野、特に本発明の対象とするような冷間工具鋼の分野では使用されてこなかった。本発明では、その変寸相殺特性に加えて、工具鋼自体に考えられてきた焼戻し炭化物による二次硬化作用が実は薄いものであることをも知見し、このような金属間化合物の利用にまで着目できたものであるが、それであっても、そのNiやAl個々には工具鋼の要求特性を阻害する作用もあることから、工具鋼の成分組成、そしてCuとの相互かつ適正な合金設計が必要となる。
次に、焼入れ時に発生する変寸について述べると、その程度は焼入れ時のマトリックス中の固溶C量に左右され、すなわち、マルテンサイト組織中に固溶するCによって結晶格子が押し広げられ、膨張するものである。従来鋼の場合は、その焼入れ時の固溶C量がSKD11にならって0.6(質量%)の付近になるように全体の合金設計がされているが、本発明の冷間工具鋼は、その固溶C量を下げ、0.53%付近を目標にした成分設計を行っている。
そして、これをCu,Ni,Alという固溶C量を低下させる元素の添加によっても達成しており、焼入れ時の膨張を抑制する設計則としている。このような固溶C量を達成するに好ましい要件は、本発明の基本組成とCu,Ni,Al量の適正な添加量に加えて、冷間ダイス鋼全体としての添加C,Cr量を(Cr−4.2×C):5以下かつ(Cr−6.3×C):1.4以上に調整することである。望ましくは、(Cr−6.3×C):1.7以上である。
これらをまとめた概念図が図1である。本発明の母材を成す冷間工具鋼は、SKD11よりも大きな二次硬化が起こるのにも関わらず、より変寸を抑えることが可能なものであることを示している。本発明の要点は、(1)焼入れ時の固溶C量を減少させることと、(2)Cu,Ni,Alの添加により二次硬化時のマトリックスの体積変化を相殺するという2点が同時に満たされているところである。(1)についての考え方は、固溶C量を汎用焼入れ温度である1030℃前後で0.53%前後にすることが産業上最も重要である。(2)についての考え方は、CuとNiの添加により、熱間、冷間加工性の劣化が懸念されるが、それを防止可能なレベルでかつ最大の析出強化を引き起こすバランスに調整することが重要である。
以下、本発明の母材を成す冷間工具鋼を構成する成分組成について説明する。なお、各元素の含有量を示す%の表記は、質量%である。
Cは一部が基地中に固溶して強度を付与し、一部は炭化物を形成することで耐摩耗性や耐焼付き性を高める重要な元素である。ここで、鋼中のCが固溶Cと炭化物になる割合は主にCrとの相互作用で決まるため、CはCrとの相互作用を認識して同時に規定することが必須である。しかし、被削性と熱処理変形安定性の両者をバランスよく満たす実用的な冷間ダイス鋼とするためにも、Cの成分範囲は単独において0.7〜1.6%とする。好ましくは、0.9〜1.3%である。
Siは本発明の母材にとって重要な元素である。Siは通常、脱酸剤として0.3%程度が添加されるが、本発明では焼入れ時の膨張を抑えた成分設計としている結果として焼入れ硬さの低下が懸念されるので、焼戻し時の490℃付近までの軟化現象を抑制するために通常よりも高い0.5%以上とすることが重要である。なお、過多の含有はデルタフェライトの形成を起こすため、上限を3.0%とする。好ましくは、0.9〜2.0%である。
MnもSiと同様、脱酸剤として使用され、最低でも0.1%を含有する。しかし、過度に含有すると切削性を阻害するので、上限を3.0%に規定した。好ましくは、0.1〜1.0%である。
Crは焼入れ性を高めるとともに、炭化物を形成するのに欠かせない元素である。ここで、Cの時に同様、鋼中のCrが固溶Crと炭化物になる割合はCとの相互作用によって決まるため、やはりその含有量はCとの相互作用を認識して同時に規定することが必須である。しかし、被削性と熱処理変形安定性の両者をバランスよく満たす実用的な冷間ダイス鋼とするためにも、Crの成分範囲は単独において7.0〜13.0%とする。好ましくは、8.0〜11.0%である。
MoとWは同様の作用効果を付与し、その程度は原子量の関係から(Mo+W/2)で規定することができる。Mo,Wは工具鋼の二次硬化を担う元素とされ、特にバイト、ドリル等の小物製品への適用で高硬度を必要とする高速度工具鋼に多く添加される。本発明においても、Mo,Wは二次硬化を発揮するマトリックス状態に大きく寄与するものであることから添加を必要とするが、0.5%より少ないと十分な効果が得られず、一方、これらの元素は上記の通り変寸を助長することから、冷間金型等の大物製品にとって過多の添加はよくない。よって、本発明の母材では(Mo+W/2)で0.5〜1.7%と規定した。好ましくは、0.75〜1.5%である。
AlはNiと結合してNiAlもしくはNiAlといったNi−Al系金属間化合物を形成し、析出による二次硬化を担う。また、この析出反応によりマトリックスが収縮するため、工具鋼における二次硬化時の膨張反応を相殺し、その結果、変寸を抑制する。そして特筆すべきは、母材特性の向上に加えて、金型の作業面に形成した硬質皮膜の耐剥離性をも向上させることから、本発明の金型製品としてのトータル特性を左右する、本発明の母材にとっての重要元素である。
近年、冷間加工用金型においては、耐かじり性に優れた、例えばVやNb,Ti等の炭化物、炭窒化物といった、MX型化合物の硬質皮膜を金型表面に形成する表面処理が発達してきている。しかし、それであっても、この皮膜が金型使用中の早期に剥離すれば、母材と被加工材との焼付きによって早期のかじり発生に繋がる。すなわち、上記の硬質皮膜には母材中のCを膜中に吸蔵して形成されるものも存在し、そのために膜直下のマトリックスのC濃度が低下すると、そのような脱炭層は皮膜剥離の原因となる。そこで、本発明の母材中のAlは、マトリックスのC拡散を促進することから、上記の硬質皮膜下の脱炭層に母材中のCを拡散・供給する作用を有し、硬質皮膜下のマトリックスのC欠乏を抑制できる。よって、金型使用中の硬質皮膜の耐剥離性が向上する。
本発明の、適量のAlが添加された母材は、それ自身の硬度向上および変寸抑制に優れると共に、上記の問題が懸念される硬質皮膜の形成に対しても、その耐剥離性の向上に寄与することから、様々な硬質皮膜の形成に対応できる。特に、マトリックス中のCを吸蔵するMX型化合物の硬質皮膜を形成するものについては、優れた効果を発揮し、好ましい使用形態である。なお、この硬質皮膜については、それ自身の割れを防止する上で、厚さを20μm以下とすることが望ましい。加えて、本発明のAlは、金型作業面を窒化するような場合の、その硬化能を高める作用も有することから、事前に窒化処理を行なった金型作業面に硬質皮膜を形成してもよい。
以上、本発明の母材中のAlについては、それが0.1%より少ないと上記の十分な効果は得られず、一方、0.7%を超える過多のAlは著しいデルタフェライトの形成を起こすので、0.1〜0.7%に規定する。好ましくは、0.1〜0.5%、さらに好ましくは、0.15〜0.45%である。
Niは、上記の通り、Alと結合してNi−Al系金属間化合物を形成・析出し、二次硬化と変寸の抑制を同時に達成する、本発明の母材にとっての重要元素である。また、後述のCuを含有する本発明の母材にとって、赤熱脆性を抑える有益な元素でもある。しかし、0.3%より少ないと十分な効果は得られず、一方、1.5%を越える過多の含有はFe中のCの固溶限を上げ、焼鈍状態の加工性を阻害するため、0.3〜1.5%とした。好ましくは、0.4〜1.5%、さらに好ましくは、0.5〜1.3%である。
さらには、Ni/Al:1〜3.7の関係を満たすよう、母材中のNi,Al量を調整することで、金属間化合物の形成に参加しない、マトリックス中のNi,Al量を調整することができる。特に金属間化合物の析出後において、マトリックス中のNi量を低減できるので、熱処理(時効)後の被削性を良好に保つことができる。好ましくは、Ni/Al:1.2〜3.7、より好ましくは、1.3〜3.7、さらに好ましくは、2.5〜3.5である。
Cuは、そのCu金属相が約480℃以上から析出し始め、これが金属間化合物の析出核になることから、本来はより高温で析出する上記のNi−Al系金属間化合物をちょうど工具鋼の二次硬化温度付近で析出させることを可能にする。よって、本発明のNi−Al系金属間化合物の析出による変寸相殺効果および二次硬化を最大限に発揮できる。しかし、Cuは多量に添加すると赤熱脆性が起こるため、本発明では0.1〜1.0%に規定することが重要である。好ましくは、0.2〜0.8%である。
Sは被削性を向上させる有益な、本発明の母材を成す冷間ダイス鋼にとっての必須元素である。しかし、過多に含有すると靭性を低下させるので、0.01〜0.12%とした。好ましくは、0.03〜0.09%である。
Nbは組織中の炭化物の分布を均一化し、熱処理変形を小さくする働きがあることから、本発明の母材にとっては、その含有の好ましい元素である。特に0.03%以上の含有が好ましいが、その含有によりマトリックス中に形成されるMX型化合物の量が多すぎると被削性を害するので、0.3%以下の含有が望ましい。
また、以下の元素は下記の範囲内であれば本発明の母材に含まれてもよい。
Pは靭性を阻害する元素であることから、0.05%未満、好ましくは0.02%以下に規制する。Vは焼入れ性の向上の上で添加することができるが、被削性を阻害する元素であることから、含有する場合であっても0.7%未満、好ましくは0.5%以下に制限する。
本発明は、以上を満たす母材からなる冷間加工用金型であって、その母材は、残部を実質的にFeとする鋼とすることができる。例えば上述の元素種以外はFeと他の元素は総計で20%以下、10%以下、5%以下といった冷間ダイス鋼や、残部はFeおよび不可避的不純物で構成される冷間ダイス鋼であれば、優れた変寸抑制特性と二次硬化を同時に達成でき、その作業面に形成した硬質皮膜の耐剥離性にも優れる。本発明では、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼とする。
大気中の高周波誘導溶解により、表1に示す残部Feおよび不可避的不純物の組成に調整した本発明No.1〜6、比較例No.1〜3のインゴットを得た。ここで比較例No.1はJIS SKD11、比較例No.2は8%CrSKD、比較例No.3は10%CrSKDと呼称される材料である。
まず、これらのインゴットより断面寸法80×80mmの部位を採取し、それに熱間加工を施して断面寸法15mm×15mmの線状素材とし、焼鈍処理後に8mmφ×80mmLの試験片を作製して、長手方向の寸法の測定を行った。そして、これらに1030℃の焼入れ(気圧0.506MPaの窒素冷却)と、続く2回の、それぞれの試料が二次硬化を起こす高温焼戻しを行なって硬さを60〜63HRC前後に調質し、その状態で再び寸法の測定を行った。なお、比較例No.2(8%CrSKD)は約525℃の焼戻し温度で二次硬化を迎え、それ以外の試料は約510℃の焼戻し温度で二次硬化を迎える。そして、本発明No.1〜6の調質硬さは全てSKD11(比較例No.1)よりも高く、優れた二次硬化能を示した。
それぞれの試料における熱処理前後での寸法変化量、すなわち二次硬化時の変寸量を図2に示す。この熱処理変寸量は、上記の熱処理前後の長手方向の寸法測定結果より、以下の式で算出したものである。
熱処理変寸量=[(熱処理後の寸法−熱処理前の寸法)
/熱処理前の寸法]×100
比較例No.2は膨張量が最も多く、変寸が大きい。これはMoを過多に含有するためである。比較例No.1,3はMo当量(Mo+W/2)が1.0%辺りの適度に調整されてこそいるが、やはり0.05%程度の膨張を起こしている。これに対し、適正量のNi,Cu,Alが添加された本発明No.1〜6は、熱処理変寸が0.01%以下に抑制されており、二次硬化領域でのNi−Al系金属間化合物の析出反応による膨張の相殺が作用していることが分かる。
次に、焼鈍処理後材より図3に示す形状のテストピースを作製した。なお、図3の矢印(1)(正面図左から2.5mm)、矢印(2)(正面図左から5.0mm)、矢印(3)(正面図左から7.5mm)の位置におけるクリアランス(隙間寸法)は0.5mmである。そして、実施例1に同じ熱処理を行なった後に、改めて同位置のクリアランスを測定して、それらの変化量から下記の計算式による“ねじれ量”を求めた。
ねじれ量=|[(1)〜(3)の平均変化量]
−[(1)もしくは(3)のうちの、上記平均量から最も離れた方の値]|
計算したねじれ量の結果を図4に示す。比較例No.1のねじれ量が最も大きいが、これはマルテンサイトへの固溶C量が多く、未固溶炭化物量も多いことから、マトリックスの膨張と未固溶炭化物の拘束によって生じる内部歪が大きいことによるものである。そして、未固溶炭化物の少ない比較例No.2,3であっても大きなねじれが発生しているが、Ni−Al系金属間化合物の析出によりマトリックスの内部歪が相殺されている本発明No.1〜6は、ねじれ量も少ないことが分かる。しかも適量のNbを含む本発明No.6は、±0.0001mmの測定精度においてねじれが確認されない良好な結果を得た。
表1のうち、本発明No.6と比較例No.1(SKD11)のインゴットを用いて、それを熱間加工した後の焼鈍処理後材に粗加工し、実施例1に同じ熱処理、最後に仕上加工を行なって、厚板成形用の冷間加工用金型を作製した。そして、それらの作業面に、下記のPVD(物理蒸着法)およびCVD(化学蒸着法)の2種の表面処理による硬質皮膜を形成して実型(金型A,B)とし、使用状況を評価した。
PVD処理を適用した金型Aは、前処理として作業面にプラズマ窒化(520℃)を行ない、その後に金型をPVD処理温度に調整(500℃)、そしてVターゲットを用いたメタンと窒素ガス雰囲気での反応性成膜によるVCN硬質皮膜を形成した。CVD処理を適用した金型Bは、成膜室に設置した金型を1000℃に昇温した後、TiClのガスを成膜室に導入し、熱化学反応により作業面にTiC硬質皮膜を形成した。そして、このCVD処理後には500℃の焼戻し処理を行って実型とした。これらの硬質皮膜は、いずれもNaCl型の結晶構造を有するMX型化合物が主相となっており、PVDによる硬質皮膜の厚さは約12μm、CVDによる硬質皮膜の厚さは約7μmであった。CVDによる硬質皮膜の形成状況を、図5の断面ミクロ写真に示しておく。
そして、上記の本発明No.6および比較例No.1を母材にして作製した計4個の金型A,Bを用いて、軟鋼の板曲げ加工を行ない、寿命を調査した。結果を表2に示す。
金型Aにおいては、比較例No.1を母材としたものは、硬質皮膜の早期剥離に起因したかじりの発生により、約1300回の寿命であった。一方、本発明No.6の母材に硬質皮膜を形成した金型は、硬質皮膜の耐剥離性に優れており、高寿命を達成した。9000回の時点において、若干の皮膜の剥離こそ認められるものの、かじりは発生しておらず、継続使用が可能であり、比較例No.1のものの6倍以上の寿命に到達した。
そして、金型Bにおいても同様の結果が得られ、本発明No.6の母材に硬質皮膜を形成した金型は、硬質皮膜の耐剥離性に優れており、高寿命を達成した。9000回の時点においても皮膜の剥離は認められず、継続使用が可能であり、やはり比較例No.1のものの6倍以上の寿命向上に到達した。
冷間ダイス鋼の焼戻しによる寸法および硬さの変化を示す図であり、本発明の効果を説明する図である。 冷間ダイス鋼の熱処理前後での寸法変化量を示す図である。 冷間ダイス鋼の熱処理前後でのねじれ量を測定するための、本発明の実施例で使用するテストピースを示す図である。 冷間ダイス鋼の熱処理前後でのねじれ量を示す図である。 本発明の冷間加工用金型の一例を示す、その硬質皮膜の断面ミクロ写真である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.7〜1.6%未満、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.05%未満(0%を含む)、S:0.01〜0.12%、Cr:7.0〜13.0%、MoまたはWの1種あるいは2種を(Mo+W/2):0.5〜1.7%、V:0.7%未満(0%を含む)、Ni:0.3〜1.5%、Cu:0.1〜1.0%、Al:0.1〜0.7%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼を母材とし、作業面には硬質皮膜を有することを特徴とする冷間加工用金型。
  2. 母材は、質量%で、Ni/Al:1〜3.7を満たすことを特徴とする請求項1に記載の冷間加工用金型。
  3. 母材は、質量%で、(Cr−4.2×C):5以下かつ、(Cr−6.3×C):1.4以上の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の冷間加工用金型。
  4. 母材は、質量%で、0.3%以下のNbを含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の冷間加工用金型。
  5. 硬質皮膜は、MX型化合物であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の冷間加工用金型。
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