JP4256632B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。詳しくは本発明は、電子写真方式の複写機及びプリンターに用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。さらに詳しくは、高画質の画像が得られる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法で可視画像を形成させる場合には、まず感光体ドラム上に静電潜像を形成させ、次いでこれをトナーにより現像した後、転写紙などに転写させ、次いで熱等により定着させて可視画像を形成させる。
従来、一般的に用いられているトナーは、種々の方法で製造されたスチレン・アクリレート系共重合体或いはポリエステル等のバインダー樹脂及び着色剤に、必要に応じて帯電制御剤、磁性体等を乾式混合した後、押出機等で溶融混練し、次いで粉砕、分級することによりトナーを得る方法、いわゆる溶融混練粉砕法によって製造されてきた。
【0003】
一方、近年プリンターや複写機が具備すべき性能として、高画質化及び高速化が求められている。高画質化を達成するためには、トナーの平均粒子径が実質的に10μm以下、特に3〜8μm程度と小さく、かつ粒度分布が狭いことが必要である。また高速化を達成するためには、低温定着性が必要とされる。
しかし、溶融混練粉砕法で得られる従来のトナーにおいては、製造時にトナーの粒径を制御することが難しく、平均粒径が3〜8μmの範囲の粒子径の小さいトナーを製造すると、必然的に所望粒径以下の微粉が多量に副生成され、これを分級工程で排除することは困難であった。また、低温定着性のトナーを製造するためには低軟化点の樹脂を配合する必要があるが、溶融混練粉砕法によるトナーの製造工程には粉砕工程があるため、脆性を妨げる低軟化点樹脂の使用は不可能であった。
【0004】
溶融混練粉砕法の欠点を改善する方法として、水系媒体に重合性単量体、着色剤、重合開始剤等の混合液を懸濁分散させて好適な粒度の液滴を形成させた後に、重合させてトナー粒子を得る懸濁重合法が提案され、実施されている。また、乳化重合で得られた重合体一次粒子のエマルジョンに着色剤及び随意に帯電制御剤等を添加し凝集及び熟成を行ってトナー粒子を得る乳化重合法も提案されている。これらの重合法と呼ばれる製造方法でトナーを得る場合には、粒子径の制御が容易であるので、小粒子径で粒度分布の狭いトナーが得られ、また粉砕工程が不要であるので低軟化点樹脂を使用したトナーの製造が可能であり、高解像度及び低温定着性に優れたトナーを得ることができる。
【0005】
上記のように重合法によって製造されたトナーでは低温定着が可能であるが、トナー貯蔵時にブロッキングなどの問題点が発生することもある。
この問題点を解決するため、懸濁重合法により軟化点が低い微小粒子を製造し、この表面に高軟化点の樹脂を水媒体中で付着させてカプセル化トナーを製造することが提案されている。また、乳化重合法により製造された凝集・熟成粒子の表面に重合体の外層を形成させたカプセル化トナーも提案されており、一般に優れた性能を有していることが示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
他方、懸濁重合法や乳化重合法による重合トナーには、残存モノマーや低揮発分などが含まれており、臭気が強いという問題があり、特に、印字途中で刺激のある臭気を発し、不快感を与えるという問題があった。また、残存モノマー量が多いと、感光体へのフィルミングが発生し易いという問題点もあった。
【0007】
残存モノマー量を少なくし、臭気を抑制する方法として、例えば、重合性単量体に脱水処理したカーボンブラックを添加し、これを加熱重合させて転化率40%以下のプレポリマーを作製し、次いで、該プレポリマーをラジカル重合開始剤を含む懸濁水溶液中に加えて、残留重合性単量体が0.5%以下になるまで懸濁重合させる方法が提案されているが、この方法は、プレポリマーを調製する工程が必要であり、工程が煩雑である。
【0008】
また、懸濁重合後、得られる樹脂のガラス転移点以上の温度で加熱し、重合終了時の水量に対して5〜50重量%の水を留去することにより、樹脂中の残存モノマーを200ppm以下とする方法が提案されているが、この方法は、脱水工程が必要であり、工程が煩雑であるだけではなく、脱水にエネルギーを必要とし、さらには、脱水中に重合体粒子が凝集し易いという欠点がある。
【0009】
このようにトナーにおいては、環境問題等の観点から重合体中に残存するモノマーを減少させることが求められているが、一般に生成した重合体から残存モノマーを除去することは容易でもなく、経済的でもないことが多いことから、重合体を得るための重合の段階でのモノマー量の低減を試みることが多い。
しかるに本発明者らが、乳化重合法による重合トナーの製造において、重合段階でのモノマー量の低減を試みたところ、モノマー量の低減が過度になると、特に高温領域にも定着性が有効なトナー、特に動的粘弾性において200℃における貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の値が400Pa以上のトナーを製造する場合、生成トナー粒子の円形度が上がらず、真球にすることが困難になるという問題点の生ずることが判明した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、乳化重合法による重合トナーの製造において、特に高温領域にも定着性が有効なトナー、例えば動的粘弾性において200℃における貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の値が400Pa以上のトナーを製造する場合、凝集工程及びその後のトナー粒子の円形度を調整する段階で残存するモノマーの量が少な過ぎると円形度が上がらず真球にすることが困難となること、従って重合段階では意図的に特定量の残存モノマーを維持した方が円形度を改善しうること、並びにトナー粒子の円形度を調整する段階以降の工程で残存モノマーの量を減少させることが可能であり、それによって生成トナー粒子中のモノマー量の低減という課題も達成し得ることを見出して、本発明に到達した。
【0011】
即ち本発明の要旨は、乳化重合で得られた重合体一次粒子を含有する乳化重合ラテックスに少なくとも着色剤を添加し分散させて得られる重合体一次粒子含有分散液中で共凝集を起こさせて粒子凝集体を生成させる凝集工程、並びに凝集工程で得られた粒子凝集体含有分散液中で粒子凝集体中の凝集粒子間の融着を起こさせる熟成工程、を含むトナーの製造方法において、上記乳化重合ラテックスが、その中の重合体成分に対して未反応モノマーを1000〜3000ppm含有すること、及び熟成工程において粒子凝集体含有分散液に熱分解性ラジカル発生剤を添加することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法、に存する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明は、乳化重合法による重合トナーの製造方法であり、基本的に、乳化重合により重合体一次粒子を含有する乳化重合ラテックスを得る乳化重合工程、得られた重合体一次粒子を含有する乳化重合ラテックスに着色剤、及び必要に応じて帯電制御剤、ワックス及びその他の添加剤等を添加し分散させて得られる重合体一次粒子含有分散液中で共凝集を起こさせて粒子凝集体を生成させる凝集工程、並びに凝集工程で得られた粒子凝集体含有分散液中で粒子凝集体中の凝集粒子間の融着を起こさせてトナー粒子を生成させる熟成工程、から構成されている。凝集工程以降の段階で粒子凝集体に樹脂微粒子を付着または固着させることによってカプセル化トナーを製造することもできる。
【0013】
先ず、乳化重合工程について説明する。
乳化重合工程においては、乳化剤を含有する水性媒体に、逐次、モノマーを添加することにより、エマルション内でモノマーの重合を進行させて、重合体一次粒子を含有する乳化重合ラテックスを製造する。
上記乳化剤としては、公知のカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤が使用される。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
【0014】
カチオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロリド、ドデシルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルピリジニウムクロリド、ドデシルピリジニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
また、アニオン界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0015】
さらに、ノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイル蔗糖等が挙げられる。
トナー粒子中にワックスを含有させる場合、ワックスは上記のように凝集工程で添加してもよいが、重合体一次粒子自体がワックスを含むように乳化重合工程で添加してもよく、好ましい。その方法としては、乳化剤の存在下で乳化させて得られたワックス微粒子をシードとしてモノマー混合物をシード乳化重合する方法、モノマーにワックスを溶解しておき、それを乳化重合する方法等が挙げられる。
【0016】
上記ワックスとしては、公知のワックス類の任意のものを使用することができるが、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン系ワックス;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸とから得られる多価アルコールカルボン酸エステル、または部分エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。
【0017】
乳化重合に供するモノマーは、目的に応じて選定され、特に限定されないが、好ましくは、ブレンステッド酸性基(以下、単に酸性基ということがある)を有するモノマー若しくはブレンステッド塩基性基(以下、単に塩基性基ということがある)を有するモノマー、及びブレンステッド酸性基又はブレンステッド塩基性基のいずれをも有さないモノマー(以下、その他のモノマーということがある)を使用する。これらモノマー同士は別々に加えてもよいし、予め複数のモノマーを混合しておいてから添加してもよい。更に、モノマー添加続行中にモノマー組成を変更することも可能である。また、モノマーはそのまま添加してもよいし、予め水や乳化剤などと混合して調製した乳化液として添加することもできる。この際の乳化剤としては、前記の界面活性剤から1種又は2種以上の併用系が選択される。
【0018】
上記ブレンステッド酸性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有するモノマー等が挙げられる。
また、上記ブレンステッド塩基性基を有するモノマーとしては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0019】
これら酸性基を有するモノマー及び塩基性基を有するモノマーは、それぞれ対イオンを伴って塩として存在していてもよい。また、重合体一次粒子を構成するモノマー混合物中のブレンステッド酸性基又はブレンステッド塩基性基を有するモノマーの配合率は、好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上であり、また、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0020】
また、上記その他のモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等のアクリル酸アミド類を挙げることができる。この中では特にスチレン、ブチルアクリレート等が好ましい。
【0021】
また、重合体一次粒子に用いられる樹脂は、架橋されているものが好ましい。架橋は、乳化重合系に少なくとも2つの官能基を有するモノマー(多官能性モノマー)を配合することによってなされる。
この場合の、上述のモノマーと共用される架橋剤としては、ラジカル重合性を有する多官能性モノマーが用いられ、例えばジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有するモノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることが可能である。
【0022】
モノマー混合物中の上記多官能性モノマーの配合率は、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上であり、また、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。また、トナーのテトラヒドロフラン(THF)不溶分が15〜80重量%となるのが好ましく、トナーの動的粘弾性測定において200℃における貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”の好ましい値はともに400Pa以上、より好ましくは800Pa以上、更に好ましくは1000Pa以上である。
【0023】
これらのモノマーは単独で、または混合して用いられるが、その際、重合体一次粒子のガラス転移温度が40〜80℃となることが好ましい。ガラス転移温度が80℃を越えると定着温度が高くなりすぎたり、OHP透明性の悪化が問題となることがあり、一方重合体のガラス転移温度が40℃未満の場合は、トナーの保存安定性が悪くなる場合がある。
【0024】
本発明方法において、乳化重合を行う際の重合開始剤としては、公知の水溶性重合開始剤を用いることができる。具体的には例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、及びこれら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。これら重合開始剤はモノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加してもよく、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
【0025】
本発明では、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することもできる。そのような連鎖移動剤の具体的な例としては、t―ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。連鎖移動剤は単独でも2種類以上の併用でもよく、モノマー100重量部に対して通常0〜5重量部の範囲で用いられる。
【0026】
以上のようにして得られる重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02〜3μmの範囲であり、好ましくは0.05〜3μm、更に好ましくは0.1〜2μmであり、特に好ましくは0.1〜1μmである。なお、平均粒径は、例えば日機装製「マイクロトラックUPA(ultra particle analyzer)」(以下、UPAという)を用いて測定することができる。粒径が0.02μm より小さくなると凝集速度の制御が困難となり易い。また、3μmより大きいと凝集して得られるトナー粒径が大きくなりすぎるため、トナーとして高解像度を要求される用途には不適当となる。
【0027】
さて、本発明においては、上記乳化重合で得られた重合体一次粒子を含有する乳化重合ラテックスが、その中の重合体成分に対して未反応モノマーを1000〜3000ppmの範囲で含有している必要がある。未反応モノマーの量は、好ましくは1500〜3000ppm、より好ましくは2000〜3000ppmである。未反応モノマー量が1000ppm未満であるとトナー粒子の円形度向上効果が小さく、他方、3000ppmを越えると後の段階で残存モノマーを減少させることが困難となり易い。
【0028】
乳化重合ラテックス中の未反応モノマーの調整は、例えば、該乳化重合ラテックスの製造工程において、重合時の温度の低減化や重合開始剤添加後の重合時間の短縮などによって行うことができる。
次に、凝集工程について説明する。
凝集工程においては、上記重合体一次粒子、着色剤一次粒子、及び必要に応じて帯電制御剤微粒子、ワックス微粒子、その他の内添剤を、それぞれ乳化して乳化液とし、これらを共凝集して粒子凝集体とする。凝集を行う各成分のうち、帯電制御剤分散液は、凝集工程の途中で添加してもよく、凝集工程後に添加してもよい。
【0029】
上記着色剤の具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して3〜20重量部となるように用いられる。なお、本明細書において「バインダー樹脂」の量は、後記樹脂微粒子を使用する場合、重合体一次粒子を構成する樹脂成分と樹脂微粒子を構成する樹脂成分とを併せたものの量を意味する。
【0030】
上記着色剤一次粒子としては、実質的に水に不溶である有機顔料を乳化剤の存在下で水中に乳化させてエマルションの状態としたものが好ましく、この場合の着色剤一次粒子の体積平均粒径としては、0.01〜3μmが好ましい。
また、上記帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができ、例えば、正帯電性帯電制御剤として4級アンモニウム塩、塩基性・電子供与性の金属物質が挙げられ、負帯電性帯電制御剤として金属キレート類、有機酸の金属塩、含金属染料、ニグロシン染料、アミド基含有化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物及びそれらの金属塩、ウレタン結合含有化合物、酸性もしくは電子吸引性の有機物質が挙げられる。
【0031】
また、カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正帯電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩化合物が、負帯電性帯電制御剤としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物、4,4’−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕等のヒドロキシナフタレン化合物が好ましい。その使用量はトナーに所望の帯電量により決定すればよいが、通常はバインダー樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部用い、更に好ましくは0.1〜10重量部用いる。
【0032】
帯電制御剤も水中で平均粒径0.01〜3μmのエマルション(帯電制御剤一次粒子)として使用することが好ましい。
凝集工程には、加熱して凝集を行う方法、及び電解質を加えて凝集を行う方法があり、これらを併用してもよい。
加熱して凝集を行う場合、凝集温度として具体的には、5℃〜Tgの温度範囲(但し、Tgは重合体一次粒子のガラス転移温度)が用いられ、(Tg−10)℃〜(Tg−5)℃の範囲が好ましい。上記温度範囲であれば、通常、電解質を用いることなく好ましいトナー粒径に凝集させることができる。
【0033】
また、加熱して凝集を行う場合、凝集工程に引き続いて熟成工程を行う場合には、凝集工程と熟成工程とが連続的に行われ、その境界が曖昧となる場合があるが、(Tg−20)℃〜Tgの温度範囲に少なくとも30分間保持する工程があれば、これを凝集工程とみなすこととする。
凝集は、所定の温度で通常少なくとも30分保持することにより、所望の粒径のトナー粒子とすることが好ましい。所定の温度までは一定速度で昇温してもよいし、段階的に昇温してもよい。保持時間は、(Tg−20)℃〜Tgの範囲で30分以上8時間以下が好ましく、1時間以上4時間未満がさらに好ましい。このようにすることによって、小粒径であり、かつ粒度分布のシャープなトナーを得ることができる。
【0034】
また、混合分散液(重合体一次粒子含有分散液)に電解質を添加して凝集を行う場合、使用する電解質は、有機塩、無機塩のいずれでもよいが、好ましくは1価あるいは2価以上の多価の金属塩が用いられる。具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgCl2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO4)3、Fe2(SO4)3、CH3COONa、C6H5SO3Na等が挙げられる。
【0035】
電解質の添加量は、電解質の種類によっても異なるが、通常は混合分散液の固形成分100重量部に対して、0.05〜25重量部が用いられる。好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。
電解質添加量が上記範囲より著しく少ない場合には、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた凝集粒子の平均粒径が3μm以下となるなどの問題を生じる傾向にある。また、電解質添加量が上記範囲より著しく多い場合には、急速で制御の困難な凝集となりやすく、得られた凝集粒子の中に25μm以上の粗粉が混じったり、凝集体の形状がいびつで不定形の物になるなどの問題を生じる傾向にある。
【0036】
また、電解質を加えて凝集を行う場合には、凝集温度は5℃〜Tgの温度範囲が好ましい。
凝集工程には、通常の攪拌槽が用いられ、形状としては、略円筒状のものあるいは略球状のものが好ましく用いられる。反応槽の形状が略円筒状の場合、底面の形状には特に制限はないが、通常の略円弧状のものが好ましく用いられる。
【0037】
攪拌効率を良好にするためには、混合分散液の体積は、反応槽の体積の2/3以下が好ましく、3/5以下が更に好ましい。また、混合分散液の体積が反応槽の体積に比べて極端に小さいと、泡立ちが激しく増粘が大きくなり、粗粉粒子が発生しやすく、攪拌翼の形状によっては攪拌されない場合があり、また、生産効率も低下するので、この比率は、1/10以上が好ましく、1/5以上が更に好ましい。
【0038】
凝集工程に用いる攪拌翼としては、公知の各種の形状の攪拌翼を用いることが出来る。市販の攪拌翼としては、例えば、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック社製)、サンメラー翼(三菱重工社製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業社製)、Hi−Fミキサー翼(綜研化学社製)、ダブルヘリカルリボン翼(神鋼パンテック社製)等の攪拌翼を挙げることができる。また、攪拌槽にはバッフルを設けてもよい。通常はこれらの攪拌翼の中から、反応液の粘度その他の物性、あるいは反応形態、反応槽の形状及び大きさ等により好適なものを選択し使用されるが、好ましい攪拌翼としては具体的には、ダブルヘリカルリボン翼またはアンカー翼が挙げられ、中でもダブルヘリカルリボン翼が更に好ましい。
【0039】
上記凝集工程の際に未反応モノマーを減少させるための何らかの手段が講じられなければ、得られる粒子凝集体含有分散液中には前記乳化重合ラテックス中と同程度の未反応モノマーが残存することとなるが、この熟成工程に供される粒子凝集体含有分散液は、その中の重合体成分に対して未反応モノマーを1000〜3000ppm含有するのが好ましい。
【0040】
次に、熟成工程について説明する。
熟成工程においては、上記凝集工程で得られた粒子凝集体含有分散液中で粒子凝集体中の凝集粒子間の融着を起こさせてトナー粒子を生成させる。
具体的には、凝集工程で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、Tg〜(Tg+80)℃、好ましくは(Tg+20)℃〜(Tg+80)℃の温度範囲であり、かつ重合体一次粒子の軟化点以下の温度範囲で、粒子凝集体中の凝集した粒子間の融着を起こさせる。上記したように、熟成工程に供される粒子凝集体含有分散液が適当量の未反応モノマーを含有していると、この熟成工程において得られるトナー粒子の形状を容易に球状に近いものすることができ、形状制御も容易となる。
【0041】
熟成工程の時間は、通常1時間から24時間であり、好ましくは1時間から10時間である。また、熟成工程は、凝集工程に用いた攪拌槽と同様な攪拌槽を用いて行うことができる。
さて、上記熟成工程に供された粒子凝集体含有分散液はかなりの量の未反応モノマーを含有しているが、この残存モノマーは、熟成工程において粒子凝集体含有分散液に熱分解性ラジカル発生剤を添加することによって容易に除去することができる。
【0042】
上記熟成工程で用いられる熱分解性ラジカル発生剤としては、通常重合開始剤として用いられる公知の水溶性重合開始剤を用いることができる。具体的には例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、及びこれら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。中でも過硫酸塩が好ましい。熱分解性ラジカル発生剤の添加量は、粒子凝集体含有分散液中の重合体成分に対して、通常0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜2重量%、更に好ましくは0.4〜1重量%である。
【0043】
カプセル化トナーを製造する場合には、上記熟成工程以前又は熟成工程中に粒子凝集体含有分散液に樹脂微粒子を添加し該樹脂微粒子を粒子凝集体に付着又は固着させる。
樹脂微粒子は、乳化剤により水または水を主体とする液中に分散してエマルションとして用いる。樹脂微粒子は、乳化重合によって得られたものが好ましい。また、樹脂微粒子は実質的にワックスを含まないものが好ましい。なお、実質的にワックスを含まないとは、樹脂微粒子中のワックス含有量が、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下であることを意味する。樹脂微粒子が実質的にワックスを含まない場合は、定着機によってトナーが定着される前にはトナー表面部にワックスが浸出しにくく、装置汚れを防ぐことができ、また、耐ブロッキング性も良好となる。
【0044】
樹脂微粒子としては、好ましくは体積平均粒径が0.02〜3μm、更に好ましくは0.05〜1.5μmであって、前述の重合体一次粒子に用いられるモノマーと同様なモノマーを重合して得られたもの等を用いることができる。
また、樹脂微粒子に用いられる樹脂は架橋されているのが好ましい。架橋剤としては、上述の重合体一次粒子に用いられる多官能性モノマーが使用できる。樹脂微粒子に架橋樹脂を用いる場合の架橋度は、テトラヒドロフラン不溶分として通常5重量%以上であり、10重量%以上が好ましく、15重量%以上が更に好ましく、20重量%以上が特に好ましい。また、通常70重量%以下である。
【0045】
上記の各工程を経ることにより得られたトナー粒子は、公知の方法に従って固液分離し、トナー粒子を回収し、次いで、これを必要に応じて、洗浄した後、乾燥する。乾燥後のトナー中に残存する未反応モノマー量は100ppm以下が好ましく、更に好ましくは50ppm以下である。
また、本発明方法で得られたトナーは、必要により流動化剤等の添加剤と共に用いることができ、そのような流動化剤としては、具体的には、疎水性シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の微粉末を挙げることができ、通常、バインダー樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部用いられる。
【0046】
さらに、本発明方法で得られたトナーは、マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末やスチレン樹脂、アクリル樹脂等の抵抗調節剤や滑剤などを内添剤又は外添剤として用いることができる。これらの添加剤の使用量は所望する性能により適宜選定すればよく、通常バインダー樹脂100重量部に対し0.05〜10重量部程度が好適である。
【0047】
本発明の静電荷像現像用トナーは2成分系現像剤又は非磁性1成分系現像剤のいずれの形態で用いてもよい。2成分系現像剤として用いる場合、キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質またはそれらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性キャリア等公知のものを用いることができる。樹脂コーティングキャリアの被覆樹脂としては一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの混合物等が利用できる。
【0048】
【実施例】
次に本発明の具体的態様を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の例で「部」とあるのは「重量部」を意味する。また、平均粒径、粒度分布、重量平均分子量、ガラス転移点(Tg)、50%円形度、残存モノマー量、粘弾性及びテトラヒドロフラン不溶分は、それぞれ下記の方法により測定した。
【0049】
体積平均粒径、個数平均粒径、粒度分布:ホリバ社製LA−500、日機装社製マイクロトラックUPA(以下、UPAと略す)、コールター社製コールターカウンターマルチサイザーII型(以下、コールターカウンターと略す)により測定した。
重量平均分子量(Mw)および分子量ピーク(Mp):以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0050】
【表1】
測定条件
装置:東ソー社製GPC装置 HLC−8020、
カラム:ポリマーラボラトリー 社製PL−gel Mixed−B 10μ、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
試料濃度:0.1重量%、
検量線:標準ポリスチレン。
【0051】
ガラス転移温度(Tg):パーキンエルマー社製DSC7により測定した。30℃から100℃まで7分で昇温し、100℃から−20℃まで急冷し、−20℃から100℃まで12分で昇温し、2回目の昇温時に観察されたTgの値を用いた。
50%円形度:フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製「FPIA−2000」)にてトナーを測定し、下記式より求められた値の50%における累積粒度値に相当する円形度を用いた。
【0052】
【数1】
円形度=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長
残存モノマー量:以下の条件のガスクロマトグラフィー(GC)によって測定した。
【0053】
【表2】
測定条件
カラム:DB−1 0.32mmID×25m、0.52μm薄膜、
キャリアガス:ヘリウム 2.0ml/min、
オーブン温度:50℃(5分)〜80℃、5℃/min、
注入口:200℃、
注入量:1μL、
検出器:FID 200℃、
メイクアップガス:ヘリウム 40ml/min。
【0054】
粘弾性:以下の条件で測定した。
【0055】
【表3】
測定条件
装置:RDAII(レオメトリック社製)
試料の作製:トナーを加熱(50℃)し、加圧成型して直径約8mm、厚さ3〜5mmの円柱状に調整する。
測定:直径7.9mmのパラレルプレートを用い、昇温速度2℃で室温から200℃まで測定する。
歪:初期を0.1%に設定し、自動モードで測定する。
周波数:6.28rad/sec
テトラヒドロフラン不溶分:トナー1gをテトラヒドロフラン50gに加え、25℃で24時間静置溶解し、セライト10gを用いて濾過し、濾液の溶媒を除去してテトラヒドロフラン可溶分を定量し、1gから差し引いてテトラヒドロフラン不溶分を算出した。
実施例1
[現像用トナーの製造−1(T―1)]
(ワックス分散液−1)
脱塩水68.33部、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(ユニスターH−476、日本油脂製)30部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオゲンSC、第一工業製薬製、有効成分66%)1.67部を混合し、90℃にて高圧剪断をかけて乳化し、エステルワックス微粒子の分散液を得た。LA−500で測定したエステルワックス微粒子の平均粒径は340nmであった。
(重合体一次粒子分散液−1)
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(容積60リットル、内径400mm)にワックス分散液−1 28部、15%ネオゲンSC水溶液1.2部、及び脱塩水393部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、8%過酸化水素水溶液1.6部、及び8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。
【0056】
その後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0057】
【表4】
[モノマー類]
スチレン 79部(5530g)
アクリル酸ブチル 21部
アクリル酸 3部
ブロモトリクロロメタン 0.45部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.8部
[乳化剤水溶液]
15%ネオゲンSC水溶液 1部
脱塩水 25部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 9部
8%アスコルビン酸水溶液 9部
重合反応終了後、冷却し、乳白色の重合体分散液を得た。重合体のTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)は122,000、分子量ピーク(Mp)は56,000、UPAで測定した平均粒子径は195nm、Tgはワックスの融点と重なり不明瞭であったが55〜60℃の間であった。残存スチレンモノマー量は1,845ppmであった。
(樹脂微粒子分散液−1)
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器(容積60リットル、内径400mm)に15%ネオゲンSC水溶液5部、及び脱塩水372部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温して、8%過酸化水素水溶液1.6部、及び8%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加した。
【0058】
その後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0059】
【表5】
[モノマー類]
スチレン 88部(6160g)
アクリル酸ブチル 12部
アクリル酸 2部
ブロモトリクロロメタン 0.5部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.4部
[乳化剤水溶液]
15%ネオゲンSC水溶液 2.5部
脱塩水 24部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 9部
8%アスコルビン酸水溶液 9部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体分散液を得た。重合体のTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)は87,000、分子量ピーク(Mp)は58,000、UPAで測定した平均粒子径は123nm、Tgは85℃であった。残存スチレンモノマー量は2200ppmであった。
(着色剤微粒子分散液−1)
ピグメントブルー15:3の水分散液(EP−700 Blue GA、大日精化製、固形分35%)。UPAで測定した平均粒径は150nmであった。
(現像用トナーの製造−1)
【0060】
【表6】
重合体一次粒子分散液−1 95部(197g;固形分として)
樹脂微粒子分散液−1 5部(固形分として)
着色剤微粒子分散液−1 4.6部(固形分として)
15%ネオゲンSC水溶液 1.5部(固形分として)
5%過硫酸ナトリウム水溶液 0.44部(固形分として)
上記の各成分を用いて、以下の手順によりトナーを製造した。
【0061】
反応器(容積2L、バッフル付きダブルヘリカルリボン翼)に重合体一次粒子分散液と15%ネオゲンSC水溶液を仕込み、均一に混合してから着色剤微粒子分散液を添加し、均一に混合した。得られた混合分散液を攪拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(固形分として0.4部)。その後攪拌しながら25分かけて55℃に昇温して60分保持し、さらに30分かけて63℃に昇温して20分保持した。樹脂微粒子分散液、硫酸アルミニウム水溶液(固形分として0.04部)の順に添加し、30分保持した後、15%ネオゲンSC水溶液(固形分として3.5部)、脱塩水170部及び5%過硫酸ナトリウム水溶液(固形分として0.44部)を添加してから100分かけて92℃に昇温して3時間保持した。その後冷却し、濾過、水洗し、乾燥することによりトナーを得た。このトナー中の残存スチレンモノマー量は乾燥前で102ppm(固形分換算)であった。これを40℃で48時間送風乾燥し、残存スチレンモノマー量が30ppmのトナーを得た。
【0062】
このトナー100部に対し、疎水性の表面処理をしたシリカ(アエロジル社製、R974)を0.6部混合攪拌し、現像用トナー(T―1)を得た。
(トナーの評価−1)
現像用トナー(T―1)のコールターカウンターによる体積平均粒径は7.5μm、粒径の5μm以下の割合は2.5%、15μm以上の割合は0.8%、粒径0.6〜2.12μmの粒子数割合は0.39%であった。また、Dv/Dn=1.13であり、50%円形度は0.96であった。このトナー(T−1)のテトラヒドロフラン不溶分は70重量%、貯蔵弾性率G’は400Pa、損失弾性率G”は620Paであった。
比較例1
過硫酸ナトリウムを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。このトナー中の残存スチレンモノマーの量は、350ppmであった。
【0063】
【発明の効果】
本発明により、トナーの製造工程において円形度の向上と生成トナー粒子中のモノマー量の低減とを共に達成することのできる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
Claims (4)
- 乳化重合で得られた重合体一次粒子を含有する乳化重合ラテックスに少なくとも着色剤を添加し分散させて得られる重合体一次粒子含有分散液中で共凝集を起こさせて粒子凝集体を生成させる凝集工程、並びに凝集工程で得られた粒子凝集体含有分散液中で粒子凝集体中の凝集粒子間の融着を起こさせる熟成工程、を含むトナーの製造方法において、上記乳化重合ラテックスが、その中の重合体成分に対して未反応モノマーを1000〜3000ppm含有すること、熟成工程において粒子凝集体含有分散液に熱分解性ラジカル発生剤を添加すること、及びトナー中の未反応モノマーの量が100ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 熟成工程に供される粒子凝集体含有分散液が、その中の重合体成分に対して未反応モノマーを1000〜3000ppm含有する、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 熟成工程以前又は熟成工程中に粒子凝集体含有分散液に樹脂微粒子を添加し該樹脂微粒子を粒子凝集体に付着又は固着させる、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- トナーの動的粘弾性において、200℃における貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”が400Pa以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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