JP4236737B2 - 金属箔の接着性増強 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属箔のポリマー基材に対する接着性を増大するための金属箔の処理方法を関する。詳細には、本発明は、金属箔を金属箔酸化性溶液と接触させ、これを、クロム化合物を含む浴中で電気分解し、次いでこれをシラン溶液と接触させる工程を含む金属箔の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属箔、たとえば銅箔はしばしば誘電体基材に積層される。得られた積層体は数多くの加工技術に供されると同時に、必然的に摩耗および引き裂き(tear)にさらされる。これに関して、高い剥離強度を有する積層体を提供することが望ましい。高い剥離強度により、積層体は加工(化学物質および種々のエッチング剤(例えば塩酸)への暴露)の間、および通常の摩耗および引き裂きの過程(熱分解、物理的振動など)にわたって、その構造保全(structural integrity)を維持することが可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
金属箔は典型的には表面粗さが増大するように処理され、その結果、得られる積層体の剥離強度が増大する。しかし、増大した高レベルな表面粗さを有する金属箔は「跡写り(treatment transfer)」する。跡写りは金属箔から誘電体基材への金属物質の所望されない移動である。跡写りは剥離強度および誘電体基材の絶縁特性を低下させる。跡写りはまた金属箔をエッチングした後、見苦しい黄色の汚れをもたらす。従って、積層体中に組み入れられた場合に高い剥離強度を示すのみならず、誘電体基材の絶縁特性に影響を与えない金属箔を提供することが望ましい。
【0004】
金属箔が表面粗さを増大するように処理される場合、典型的には電気分解法が利用される。例えば、銅または亜鉛の結節状層または樹状層は、金属箔上に電着され、表面粗さを増大する。この方法は、銅または亜鉛の結節状層の付与に莫大な電気が必要であるため、時間がかかるだけでなく、高価である。従って、金属箔処理の効率および対費用効果の増大が望まれる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法は、金属箔の処理方法であって、
該金属箔を、金属箔酸化剤および約5g/l未満の水酸化物化合物、または水および少なくとも約7ppmの溶存酸素のいずれかを含む第1の溶液に接触させる工程;
該金属箔を、クロム含有電解浴に接触させ、そして該電解浴を電気分解する工程であって、ここで該浴が約0.1〜約5g/lのクロム化合物を含む、工程;および
該金属箔を約0.1〜約10%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させる工程
を順次包含し、
ただし、該金属箔が該第1の溶液との接触後、還元剤と接触しない。
【0006】
一つの実施態様において、前記金属箔酸化剤は、亜塩素酸塩化合物、次亜塩素酸塩化合物、および過硫酸塩化合物のうち少なくとも1つから選択される。
【0007】
一つの実施態様において、前記水酸化物化合物はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、あるいは水酸化アンモニウムを含む。
【0008】
一つの実施態様において、前記第1の溶液は約3g/l未満の水酸化物化合物を含む。
【0009】
一つの実施態様において、前記金属箔を酸性溶液に接触させる工程および必要であれば前記第1の溶液に接触させる前に該金属箔をリンスする工程をさらに含む。
【0010】
一つの実施態様において、前記酸性溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸のうち少なくとも1種類を含む。
【0011】
一つの実施態様において、前記クロム化合物は酸化クロムである。
【0012】
一つの実施態様において、前記金属箔酸化剤のg/lと前記水酸化物化合物のg/lとの比は少なくとも約20:1である。
【0013】
一つの実施態様において、さらに前記金属箔は亜鉛を含む金属層がないことによって特徴付けられる。
【0014】
本発明の方法は、銅箔と誘電体基材との間の接着を増強する方法であって、
該銅箔を、20〜約180g/lのアルカリ金属亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩および約5g/l未満のアルカリ金属水酸化物を含む第1の溶液に接触させる工程;
該金属箔を、クロム含有電解浴に接触させ、そして該電解浴を電気分解する工程であって、ここで該浴が約1〜約3g/lのクロム化合物を含む、工程;および
該銅箔を、約0.1〜約5%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させる工程
を順次包含し、
ただし、該銅箔が該第1の溶液との接触後、還元剤と接触しない。
【0015】
一つの実施態様において、前記第1の溶液は約50〜約160g/lの前記アルカリ金属亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩を含む。
【0016】
一つの実施態様において、前記第1の溶液は約3g/l未満の水酸化ナトリウムを含む。
【0017】
一つの実施態様において、前記第1の溶液は約3g/l未満のアルカリ金属水酸化物を含む。
【0018】
一つの実施態様において、前記銅箔を酸性溶液に接触させる工程および必要であれば前記第1の溶液に接触させる前に該銅箔をリンスする工程をさらに含む。
【0019】
一つの実施態様において、前記銅箔を前記第1の溶液に接触させた後、該銅箔をリンスする工程をさらに含む。
【0020】
一つの実施態様において、前記アルカリ金属亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩のg/lと前記アルカリ金属水酸化物のg/lとの比は少なくとも約50:1である。
【0021】
一つの実施態様において、前記クロム化合物は酸化クロムである。
【0022】
本発明の方法は、銅箔と誘電体基材との間の接着を増強する方法であって、
該銅箔を、水および約8ppm〜約20ppmの溶存酸素を含む金属箔酸化剤溶液に接触させ、それにより該銅箔に酸化物層を形成する工程;
該金属箔を、クロム含有電解浴に接触させ、そして該電解浴を電気分解し、それにより酸化物層上にクロム含有層を形成する工程であって、ここで該浴が約1〜約3g/lのクロム化合物を含む、工程;および
該銅箔を、約0.1〜約5%(v/v)のシラン化合物を含むシラン溶液に接触させ、それによりクロム含有層上にシラン含有層を形成する工程
を順次包含する。
【0023】
一つの実施態様において、前記酸化物層は約1〜約25の厚みを有する。
【0024】
一つの実施態様において、前記金属箔酸化剤溶液は約15℃〜約30℃の温度であり、かつ前記金属箔は約2〜約50秒間該金属箔酸化剤溶液に接触する。
【0025】
一つの実施態様において、前記酸化物層は約15未満の厚みを有する。
【0026】
一つの実施態様において、前記クロム化合物は酸化クロムである。
【0027】
1つの実施態様において、本発明は金属箔の処理方法に関し、この方法は金属箔を、金属箔酸化剤および約5g/l未満の水酸化物化合物、または水および少なくとも約7ppmの溶存酸素のいずれかを含む第1の溶液に接触させる工程、金属箔をクロム含有電解浴に接触させ、そしてこの電解浴を電気分解する工程(ここでこの浴が約0.1〜約5g/lのクロム化合物を含む)、およびこの金属箔を、約0.1〜約10%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させる工程を順次包含する。ただし、この金属箔は第1の溶液との接触後、還元剤と接触しない。
【0028】
1つの実施態様において、本発明は金属箔の処理方法に関し、この方法は、金属箔を金属箔酸化剤および約5g/l未満の水酸化物化合物、または水および少なくとも約7ppmの溶存酸素のいずれかを含む第1の溶液に接触させる工程;金属箔をクロム含有電解浴中と接触させ、そしてこの電解浴を電気分解する工程であって、ここでこの浴が約0.1〜約5g/lのクロム化合物を含む、工程;およびこの金属箔を約0.1〜約10%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させる工程を順次包含するが、ただし、この金属箔は第1の溶液との接触後、還元剤と接触しない。
【0029】
他の実施態様において、本発明は金属箔の処理方法に関し、この方法は金属箔を金属箔酸化剤および約5g/l未満の水酸化物化合物を含む第1の溶液に接触させる工程;この金属箔を、クロム含有電解浴に接触させ、そしてこの電解浴を電気分解する工程であって、ここでこの浴が約0.1〜約5g/lのクロム化合物を含む、工程;およびこの金属箔を約0.1〜約10%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させる工程を順次包含するが、ただし、この金属箔は第1の溶液との接触後、還元剤と接触しない。
【0030】
他の実施態様において、本発明は金属箔の処理方法に関し、この方法は金属箔を、約20〜約180g/lのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩および約3g/l未満のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を含む第1の溶液に浸漬させる工程、必要であれば、この金属箔をリンスする工程、金属箔をクロム含有電解浴に接触させ、そして該電解浴を電気分解する工程(ここで浴は、約1〜約3g/lのクロム化合物を含む)、およびこの金属箔を約0.1〜約5%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させる工程を順次包含するが、ただし、金属箔は第1の溶液と浸漬した後、還元剤と接触しない。
【0031】
さらに他の実施態様において、本発明は銅箔と誘電体基材との間の接着を増強する方法に関し、この方法は、銅箔を20〜約180g/lのアルカリ金属亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩および5g/l未満のアルカリ金属水酸化物を含む第1の溶液に接触させる工程、この金属箔を、クロム含有電解浴に接触させ、そしてこの電解浴を電気分解する工程(ここで浴が約1〜約3g/lのクロム化合物を含む)、およびこの銅箔を約0.1〜約5%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させる工程を順次包含するが、ただし、この銅箔は第1の溶液との接触後、還元剤と接触しない。
【0032】
他の実施態様において、本発明は金属箔を処理する方法に関し、この方法は、金属箔を、水および少なくとも約7ppmの溶存酸素を含む金属箔酸化剤溶液に接触させる工程、金属箔をクロム含有電解浴に接触させ、そしてこの電解浴を電気分解する工程(ここで浴は約0.1〜約5g/lのクロム化合物を含む)、およびこの金属箔を、約0.1〜約10%(v/v)のシラン化合物を含むシラン溶液に接触させる工程を順次包含する。
【0033】
他の実施態様において、本発明は金属箔を処理する方法に関し、この方法は、金属箔を、脱イオン水および約7.5ppmの溶存酸素を含む金属箔酸化剤溶液に浸漬させる工程、必要であれば、この金属箔をリンスする工程、金属箔をクロム含有電解浴に接触させる工程、そしてこの電解浴を電気分解する工程(ここで浴は、約1〜約3g/lのクロム化合物を含む)、およびこの銅箔を、約0.1〜約5%(v/v)のシラン化合物を含むシラン溶液に浸漬させる工程を順次包含する。
【0034】
さらに他の実施態様において、本発明は銅箔と誘電体基材との間の接着を増強する方法に関し、この方法は、銅箔を、水および約8ppm〜約20ppmの溶存酸素を含む金属箔酸化剤溶液に接触させ、それによりこの銅箔に酸化物層を形成する工程、この金属箔を、クロム含有電解浴に接触させ、そして電解浴を電気分解し、それにより酸化物層上にクロム含有層を形成する工程(ここで該浴は約1〜約3g/lのクロム化合物を含む)、およびこの銅箔を、約0.1〜約5%(v/v)のシラン化合物を含むシラン溶液に接触させ、それによりクロム含有層上にシラン含有層を形成する工程を順次包含するが、ただし、この銅箔が第1の溶液との接触後、還元剤と接触しない。
【0035】
本発明によれば、部分的に、加工中に構造保全を保持する能力のために、高い剥離強度を示す金属箔を提供することが可能である。本発明はまた、積層体中に組み入れられた場合に跡写りがわずかであるか、あるいは跡写りしない金属箔を提供する。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される金属箔は好ましくは電気伝導性であり、銅箔および銅をベースとした合金が特に好ましい。他の例としては、アルミニウム、ニッケル、錫、銀、金およびそれらの合金が挙げられる。金属箔は2つの技術のうちの1つを用いて作製される。鍛錬した(wrought)金属または圧延金属の箔は、銅または銅合金のストリップまたはインゴットの厚みを、圧延のようなプロセスによって機械的に薄くすることによって製造される。電着箔は、銅イオンのような金属イオンを、回転するカソードドラム上に電気的に析出させ、そして次にその析出したストリップをカソードから剥がすことによって製造される。電着銅箔が特に好ましい。
【0037】
金属箔は典型的には見かけの厚みが約0.0002インチから約0.02インチの範囲である。金属箔の厚みは時には重量で表され、そして典型的には本発明の箔は約1/8〜約14oz/ft2の範囲の重量および厚みを有する。特に有用な金属箔は1/2、1または2oz/ft2の重量を有する金属箔であり、そして特に1/2、1または2oz/ft2の重量を有する銅箔である。
【0038】
電着金属箔は、滑らかな、あるいは光沢のある(ドラム)側面と、粗いまたはつや消しの(金属の析出成長端)側面を有する。本発明に従って処理され得る金属箔(電着または鍛錬)の片側または両側は、粗いまたはつや消しの側面、光沢側面、または両方の側面であり得る。これらの側面は、「標準プロフィール表面」、「低プロフィール表面」または「極低プロフィール表面」であり得る。特に好ましい実施態様は、つや消しの面および標準プロフィール表面を有する箔の使用を伴う。用語「標準プロフィール表面」は、本明細書において、約7ミクロンから約12ミクロンのRtmを有する箔表面を意味する。用語「低プロフィール表面」は、約7ミクロン以下のRtmを有する箔表面を意味する。用語「極低プロフィール表面」は、約4ミクロン以下のRtmを有する箔表面を意味する。Rtmは5つの連続的なサンプリングの測定の各々からの極大ピーク−谷垂直測定(peak-to-valley vertical measurement)の平均であり、そしてRank Taylor Hobson, Ltd., Leicester, Englandから市販の、Surtronic 3プロフィールメータを用いて測定され得る。
【0039】
1つの実施態様において、本発明の金属箔は、亜鉛を含む付加金属層が存在しないことで特徴づけられ得る。これは亜鉛を含む層および亜鉛を含む合金層を包含する。いくつかの例において、亜鉛は金属箔酸化剤に有害な影響を与え、劣った特性しか有さない処理金属箔を生じる。
【0040】
1つの実施態様において、本発明の金属箔は、本発明の方法が実施される片側または両側のベース表面上にいかなる付加粗面処理をも施さないことで特徴づけられ得る。箔の側面の「ベース表面」との用語は、以下で説明するタイプの箔特性の改良または増強、および/または表面粗さの増大のための、引き続くいかなる処理にも供されていない、未加工の箔表面を意味する。用語「付加粗面処理(added surface roughening)」は、箔の表面の粗さを増大させる目的で箔のベース表面上で行われる、本発明の方法によらない任意の処理を意味する。1つの実施態様において、付加粗面処理はRtmを3ミクロン以上増加させ、そして他の実施態様において、付加粗面処理はRtmを10ミクロン以上増加させる。
【0041】
1つの実施態様において、表面粗さを追加する銅処理のような金属処理は本発明の方法から除外される。金属処理は、箔のベース表面上で、結節状(nodular)または樹状形態で電気分解的に析出する銅または亜鉛、および結節状または樹状形態で成長する酸化銅を含む。そのベース表面のつや消し側上に天然の比較的粗い層(鋸歯形状)を有する金属箔は、本発明の範囲から除外されない。
【0042】
1つの実施態様において、標準プロフィール表面の粗さを越えて粗さを増大させる、圧延の間あるいは引き続く研磨によって鍛錬金属箔に与えられる機械的粗さは、付加粗面処理と見なされ、従ってこれは本発明によれば除外される。1つの実施態様において、標準プロフィール表面の粗さを越えて粗さを増大させる、電着の間に電着金属箔に与えられる粗さは、付加粗面処理と見なされる。1つの実施態様において、標準プロフィール表面の粗さを越えてその箔の粗さを増大させる、金属箔のベース表面に与えられる任意の粗さは、付加粗面処理と見なされる。1つの実施態様において、低プロフィール表面の粗さを越えてその箔の粗さを増大させる、金属箔のベース表面に与えられる任意の粗さは、付加粗面処理と見なされる。1つの実施態様において、極低プロフィール表面の粗さを越えてその箔の粗さを増大させる、金属箔のベース表面に与えられる任意の粗さは、付加粗面処理と見なされる。
【0043】
1つの実施態様において、金属箔の片側または両側のベース表面は、本発明の方法に供される前には未処理である。用語「未処理」は、本明細書において、箔特性の改良または増強、および/または表面粗さの増大を目的とする引き続く処理を受けていない、金属箔のベース表面を意味する。1つの実施態様において、未処理の箔は、そのベース表面に接着した天然の非樹状または非結節状の酸化銅または他の金属あるいは合金の層を有する。この天然の非樹状層は付加金属処理ではない。
【0044】
1つの実施態様において、箔の片側または両側のベース表面は、本発明の方法に供される前に、箔特性の改良または増強を目的として(しかし表面粗さの付加のためでなく)、1つまたはそれ以上の表面処理層で処理される。本発明の方法に供されない箔のいずれの側面も、任意に、その面に付加されたそのような1つまたはそれ以上の処理層を有し得る。これらの表面処理は当該分野で公知である。
【0045】
たとえば、表面処理は、本発明の方法を実施する前に、表面粗さを増大させない金属層を施工することを包含し、ここでこの金属は、インジウム、錫、ニッケル、コバルト、銅−錫合金、およびそれらの2つ以上の混合物である。このタイプの金属層は時としてバリア層と呼ばれる。これらの金属層は、好ましくは約0.01〜約1ミクロン、より好ましくは約0.05〜約0.1ミクロンの範囲の厚みを有する。
【0046】
表面処理はまた、本発明の方法を実施する前に、表目粗さを増大させない金属層を施工することを包含し、ここでこの金属は、錫、ニッケル、モリブデン、アルミニウム、またはこれらの2つ以上の混合物である。このタイプの金属層は時として、安定化層と呼ばれる。これらの安定化層は、箔のベース表面に施工され得、あるいはこれらはバリア層の施工の前に施工され得る。これらの安定化層は、好ましくは約0.005〜約0.05ミクロン、より好ましくは約0.01〜約0.02ミクロンの範囲の厚みを有する。
【0047】
1つの実施態様において、箔の片側または両側が、まず少なくとも1つのバリア層で処理される。他の実施態様において、箔の片側または両側が、まず少なくとも1つの安定化層で処理される。さらに他の実施態様において、本発明の方法の実施の前に、箔の片側または両側が、まず少なくとも1つのバリア層で処理され、次に処理された層のうち少なくとも1つが少なくとも1つの安定化層で処理される。
【0048】
本発明による金属箔は、単層の金属箔、たとえば銅箔、アルミニウム箔またはニッケル箔、あるいは合金の箔であり得る。本発明による金属箔は、金属または合金の複数の層を含む箔であり得、たとえば銅および真鍮の層から構成される箔である。いずれの所与の金属箔においても金属層の数に特に限定はない。
【0049】
本発明の方法は少なくとも3つの工程を順次行うことを伴う。第1に、金属箔を金属箔酸化剤溶液に接触させる。この金属箔を次にクロム含有電解浴と接触させ、そして電気分解する。その後、金属箔をシラン溶液に接触させる。用語「順次」は3工程を列挙した順番に行うことを意味する。すなわち、クロム含有電解浴との接触は、金属箔を金属箔酸化剤溶液に接触させた後であって、かつシラン溶液に接触させる前に行わなければならない。しかし、この3工程は必ずしも互いの工程の直後に行う必要はなく、追加の工程を行い得る。たとえば、リンスする工程を、金属箔を金属箔酸化剤溶液に接触させた後であるが、金属箔をクロム含有電解浴と接触させる前に行い得る。従って、用語「順次」は本発明の3つの必須の工程に関し、本発明の方法の種々の実施態様における任意の追加工程には関しない。
【0050】
1つの実施態様において、金属箔を酸性溶液に接触させることを伴う。酸性溶液は、約5未満、そして好ましくは約3未満、そしてより好ましくは約2未満のpHを有する。酸性溶液は、酸と、水、極性有機溶媒(たとえばアルコールおよびグリコール)、およびそれらの混合物のような溶媒とを含む。
【0051】
金属箔を酸性溶液と接触させることは、金属箔から表面の酸化物を除去するか、他の方法で金属箔の表面を清浄にする働きをする。従って、酸性溶液との接触は後の処理工程を容易にする。
【0052】
金属箔は、ディッピング(dipping)、噴霧、ぬぐい操作(wipe)、浸漬(immerse)などを包含するが、これらに限定されない任意の従来の手段によって、酸性溶液と接触する。好ましい実施態様において、金属箔は酸性溶液中に浸漬される。他の好ましい実施態様において、酸性溶液の温度は約20℃から約60℃、そしてより好ましくは約30℃から約40℃である。
【0053】
酸性溶液は酸と適切な溶媒とを含み、この溶媒は、極性溶媒または水と極性溶媒との組み合わせも使用され得るが、典型的には水である。無機酸または有機酸のいずれもが使用され得るが、無機酸が好ましい。酸性溶液において使用され得る無機酸の具体例としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、およびヨウ化水素酸のようなハロゲン酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、過塩素酸、ホウ酸、ならびに亜リン酸およびリン酸のようなリン含有酸、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。硝酸および硫酸が好ましい無機酸である。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸などのようなカルボン酸およびポリカルボン酸;ジメチルリン酸およびジメチルホスフィン酸のような有機リン酸;またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-ペンタンスルホン酸、1-ヘキサンスルホン酸、1-ヘプタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのようなスルホン酸、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
好ましい実施態様において、金属箔を酸性溶液と接触させた後、金属箔は任意に、中性の溶液、そしてほとんどの場合水、そして好ましくは脱イオン水でリンスされる。このリンス溶液は、好ましくは、(特に、水および溶存酸素を含む酸化性溶液を使用する実施態様において)上昇したレベルの溶存酸素を含まない。この中和またはリンス溶液は、金属箔の表面を中和することに加えて、過剰の酸を金属箔表面から除去する働きをする。
【0055】
金属箔は、金属箔酸化剤および水酸化物化合物か、または金属箔の表面を酸化するのに十分な量の、その中の溶存酸素を有する水のいずれかを含む金属箔酸化剤溶液と接触する。金属箔は、ディッピング(dipping)、噴霧、ぬぐい操作(wipe)、浸漬(immerse)などを含む任意の従来の手段によって、この溶液と接触するが、金属箔をこの溶液に浸漬することが好ましい。電流の印加は、必要ない。
【0056】
ひとつの実施態様において、金属箔は、金属箔酸化剤および水酸化物化合物を含む金属箔酸化剤溶液と接触する。この実施態様において、溶液の温度は、約10℃から約90℃、そしてより好ましくは約40℃から約80℃である。ひとつの実施態様において、金属箔は約2〜約20秒間、そしてより好ましくは、約5〜約10秒間、金属箔酸化剤溶液中に置かれる。
【0057】
金属箔酸化剤は、金属箔の表面を酸化し得る化学的化合物である。金属箔酸化剤は、アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属酸化剤を含む。本明細書中で用いる用語「アンモニウム」は、アンモニウムイオン(NH4 +)と、有機アンモニウムイオン(例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムおよびテトラブチルアンモニウムイオンなど)との両方を含む。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびルビジウムを含む。ナトリウムおよびカリウムが好ましい。アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムを含む。マグネシウムおよびカルシウムが好ましい。金属箔酸化剤の例は、アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩(perborate)、過塩素酸塩、過ヨウ素酸塩、ならびに過硫酸塩が挙げられる。
【0058】
具体的な例としては、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラエチルアンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、過ホウ酸カリウム、過塩素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過硫酸カリウム、硝酸ルビジウム、過塩素酸ルビジウム、硝酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カルシウム、硝酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、および過塩素酸ストロンチウムが挙げられる。好ましい金属箔酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、および過硫酸ナトリウムが挙げられる。金属箔酸化剤は、約20〜約180g/l、および好ましくは約30〜約170g/l、およびより好ましくは約50〜約160g/lの範囲の量で溶液中に存在する。
【0059】
水酸化物化合物は、水酸化物イオンを溶液中に提供し得る任意の化合物である。水酸化物化合物の例としては、アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。水酸化物化合物の具体的な例としては、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムが挙げられる。水酸化物化合物は、約5g/lを越えない量で、好ましくは約3g/lを越えない量で、より好ましくは約2g/lを越えない量で、そしてより好ましくは約1.5g/lを越えない量で、溶液中に存在する。
【0060】
この実施態様において、金属箔酸化剤溶液は、適切な溶媒(例えば、水、極性有機溶媒(例えばアルコールおよびグリコール)および/またはそれらの混合物)を含む。水溶液が好ましい。様々な添加剤が、金属箔酸化剤溶液に含まれ得る。
【0061】
1つの実施態様において、金属箔酸化剤の水酸化物化合物に対するg/lの比は、少なくとも約20:1である。別の実施態様において、金属箔酸化剤の水酸化物化合物に対する比は、少なくとも約30:1である。好ましい実施態様において、金属箔酸化剤の水酸化物化合物に対する比は、少なくとも約50:1である。最も好ましい実施態様において、金属箔酸化剤の水酸化物化合物に対する比は、少なくとも約60:1である。この比は、酸化性溶液と金属箔との間の適切な相互作用のために必要である。
【0062】
この実施態様において、酸化物層は、約50から約250Åの厚さを有するが、約250Å未満である。別の実施態様において、金属箔の上に得られる酸化物層の厚さは、約75から約200Åであるが、約200Å未満である。別の実施態様において、金属箔の上に得られる酸化物層の厚さは、約100から約175Åであるが、約175Å未満である。
【0063】
金属箔酸化剤を含む溶液は、酸化物層の金属箔上の形成をもたらす。比較的少ない量の水酸化物化合物が溶液中に存在する結果として、酸化物層の質は向上する。このことは、部分的には、針状黒色酸化物層の形成の防止による。結果として、本発明に従って処理された金属箔を含む積層体において、向上した剥離強度が、電気分解的に金属箔を処理することなく、得られ得る。
【0064】
別の実施態様において、金属箔酸化剤溶液は、金属箔の表面を酸化するのに十分な量の溶存酸素をその中に含有する水を含む。この実施態様において、金属箔酸化剤溶液の温度は、約2℃から約50℃である。他の実施態様において、金属箔酸化剤溶液の温度は約10℃から約40℃である。さらに別の実施態様において、金属箔酸化剤溶液の温度は約15℃から約30℃である。ひとつの実施態様において、金属箔は、約1〜約100秒間、金属箔酸化溶液に接触する。別の実施態様において、金属箔は、約2〜約50秒間、金属箔酸化剤溶液に接触する。さらに別の実施態様において、金属箔は、約5〜約25秒間、金属箔酸化剤溶液に接触する。
【0065】
好ましい実施態様において、水は脱イオン水であるが、水道水もまた使用され得る。金属箔酸化剤溶液の水は、少なくとも約7ppmの溶存酸素を含む。好ましい実施態様において、金属箔酸化剤溶液の水は、少なくとも約7.5ppmの溶存酸素を含む。ひとつの実施態様において、水は、約8ppmから約20ppmの溶存酸素を含む。別の実施態様において、水は、約9ppmから約15ppmの溶存酸素を含む。比較的高いレベルの溶存酸素を有する水を取得することによるか、または水に純粋な酸素ガスもしくは酸素含有ガスを、所望の溶存酸素レベルに到達するまで通気することにより、特定のレベルの溶存酸素の水が、得られ得る。酸素含有ガスの例には、空気、ならびに酸素と、不活性かつ非反応性のガス(例えば、水素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノン)の1つ以上との混合物が挙げられる。本発明のプロセスの間、金属箔酸化剤溶液は、周期的にもしくは連続的に通気されて、溶存酸素の所望の最低レベルもしくは範囲を維持する。
【0066】
金属箔酸化剤溶液の酸素レベルは、周期的にまたは連続的に、溶存酸素量を測定する任意の公知の手段を用いて測定され得る。例えば、ひとつの装置は、Yellow Springs Instrument Companyの、商品名YSI Model 57 Series Dissolved Oxygen Meter である。Winkler法に基づく、試薬法もまた使用され得る。ビュレット滴定法、デジタル滴定機法、または液滴計測滴定法を用いる溶存酸素試薬セット、溶存酸素試薬AccuVacアンプル、および溶存酸素用のPocket ColorimeterTMは、Hach Companyから市販されている。
【0067】
この実施態様において、金属箔酸化剤溶液は、必要に応じて、金属を含まない溶液(すなわち、金属箔酸化剤溶液は、添加金属または金属化合物の非存在により特徴付けられる)である。水道水および脱イオン水中の微量の金属または金属化合物は、耐用され得る。別の実施態様において、金属箔酸化剤溶液は、有機溶媒を含まない(すなわち、金属箔酸化剤溶液は、添加有機溶媒の非存在により特徴付けられる)。さらに別の実施態様において、少量(約2重量%未満もしくは約1重量%未満)の有機溶媒が、水道水または脱イオン水に存在し得る。
【0068】
金属箔と金属箔酸化剤溶液との接触により形成された酸化物層は、非常に薄い。別の実施態様において、酸化物層は、約1から約25Åの厚さを有するが、約25Å未満である。別の実施態様において、金属箔の上に得られる酸化物層の厚さは、約2から約20Åであるが、約20Å未満である。別の実施態様において、金属箔の上に得られる酸化物層の厚さは、約3から約15Åであるが、約15Å未満である。
【0069】
水および少なくとも7ppmの溶存酸素を含む金属箔酸化剤溶液は、比較的薄い酸化剤層の金属箔上の形成をもたらす。特定の量の溶存酸素が溶液中に存在する結果として、酸化物層の質は向上する。このことは、部分的には、金属箔酸化剤溶液が強力(aggressive)な酸化剤ではないために針状黒色酸化物層の形成が防止されることによる。結果として、本発明に従って処理された金属箔を含む積層体において、向上した剥離強度が、電気分解的に金属箔を処理することなく、得られ得る。
【0070】
ほとんどの実施態様において、特に、金属箔酸化剤および水酸化物化合物を含む酸化性溶液が用いられる場合、金属箔が酸化性溶液に接触した後、金属箔は、還元剤と接触しない。還元剤は、酸化性溶液、特に金属箔酸化剤と接触している金属箔の表面に悪影響を与える。還元剤との接触が存在しないことの結果として、向上した剥離強度が、本発明に従って処理された金属箔を含む積層体において得られ得る。還元剤としては、ホルムアルデヒド、次亜リン酸塩、ヒドラジン、およびアミンボラン(amine boranes)が挙げられる。還元剤としてはまた、低級アルコール、アルデヒド、低級カルボン酸、およびそれらのエステル、アンモニア、ヒドロジン、窒素含有低級アミン、金属水素化物およびホウ素化合物の触媒的熱分解(catalytic pyrolysis)から誘導されるものなどのような還元性ガスも挙げられる。触媒的熱分解は、水素または一酸化炭素ガスの生成を含む。
【0071】
好ましい実施態様において、金属箔が金属箔酸化性溶液に接触した後、金属箔は、必要に応じて、中性溶液でリンスされ、そしてほとんどの例において、水およびとりわけ脱イオン水でリンスされる。中性化溶液(neutralizing solution)またはリンス溶液は、過剰の酸化剤および/または水酸化物イオンを金属箔の表面から除去する機能を果たす。
【0072】
金属箔が金属箔酸化性溶液に接触し、そして必要に応じてリンスされた後、金属箔は、クロム含有電解浴中に置かれる。クロム含有電解浴は、クロム化合物および必要に応じて性能増強添加剤を含む水溶液である。カソードクロム(cathodic chrome)層が電気分解的に金属箔の上に堆積するように、電流が浴に印加される。クロム化合物は、カソードクロムまたはクロムの薄層を堆積し得る任意の化合物である。クロム化合物の例としては、酸化クロム(例えば、三酸化クロム)、クロム酸無水物(chromium anhydride)、クロム酸、六価クロム化合物、ニクロム酸塩(例えば、ニクロム酸カリウムおよびニクロム酸ナトリウム)、およびクロム酸塩(例えば、クロム酸カリウム、クロム酸ナトリウムおよびクロム酸マグネシウム)。クロム化合物は、クロム含有電解浴中に、約0.1から約5g/l、そして好ましくは約1から約3g/lの量で存在する。
【0073】
必要に応じて使用される性能増強添加剤には、亜鉛塩(例えば、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、および硫酸亜塩)のような亜鉛化合物、およびリン化合物(例えば、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、リン酸塩、ピロリン酸塩およびポリリン酸塩)が挙げられる。
【0074】
ひとつの実施態様において、電着工程の間のクロム含有電解浴の温度は、約15℃から約30℃、そして好ましくは約20℃から約25℃である。クロム含有電解浴のpHは、特定の実施態様の特定のクロム化合物の性質(identity)に依存し、従って臨界的(critical)ではない。ひとつの実施態様において、クロム含有電解浴に印加される電流密度は、約10〜約40ASFである。他の実施態様において、電流密度は約15〜約35ASFであり、そしてより好ましくは約20〜約30ASFである。比較的に薄いがしかし均一なカソードクロム層を金属箔酸化剤処理された金属箔表面に形成することを可能にするのに十分な時間の間、金属箔は、クロム含有電解浴中に置かれる。1つの実施態様において、金属箔は約2〜約20秒間、そしてより好ましくは、約5〜約10秒間、クロム含有電解浴中に置かれる。
【0075】
ひとつの実施態様において、得られるカソードクロム層の厚さは、約25から約125Åである。好ましい実施態様において、得られるカソードクロム層の厚さは、約50から約100Åである。カソードクロム層の厚さは、金属箔の表面全体にわたって、実質的に均一であり、金属箔の表面の任意の輪郭に従う。
【0076】
好ましい実施態様において、金属箔がクロム含有電解浴に接触した後、金属箔は、必要に応じて中性溶液、そしてほとんどの例において水およびとりわけ脱イオン水でリンスされる。中性化またはリンス溶液は、金属箔の表面から過剰な浴の溶液を除去する機能を果たす。
【0077】
金属箔が金属箔酸化性溶液およびクロム含有電解浴に接触した後、金属箔は、適切な溶媒中のシラン化合物含有溶液に接触する。シラン化合物は、溶液中に、約0.1〜約10% v/v、そして好ましくは約0.2〜約5% v/v、そしてより好ましくは約0.3〜約3% v/vの量で存在する。好ましいシラン化合物は、シランカップリング剤である。好ましいシランカップリング剤は、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、およびアルコキシシラン化合物である。
【0078】
1つの実施態様において、シラン化合物は式
【0079】
【化1】
Figure 0004236737
で表され得る。ここでG1,G2、G3、G4、G5およびG6は独立して、ハロゲン、ヒドロカルビルオキシ、またはヒドロキシ基であり;R1は炭化水素基または窒素含有炭化水素基であり;そしてnは0または1である。1つの実施態様において、G1,G2、G3、G4、G5およびG6の各々は独立して、クロロ、アルコキシ、アルコキシアルコキシまたはアルコキシアルコキシアルコキシであり、そしてR1は炭素原子約10個までのアルキレンまたはアレーン基、あるいはモノアミノ−またはポリアミノ−置換の炭素原子約10個までのアルキレンまたはアレーン基である。1つの実施態様において、G1,G2、G3およびG6の各々は、炭素原子約10個までのアルコキシ、アルキルアルコキシ、アルコキシアルコキシ、またはアルコキシアルコキシアルコキシ基であり、そしてnは0である。
【0080】
これらのシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラキス(2-エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2-エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2-メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(1-メトキシ-2-プロポキシ)シラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル] アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、および 1,8-ビス(トリクロロシリル)オクタンが挙げられる。
【0081】
他の実施態様において、シラン化合物は式
【0082】
【化2】
Figure 0004236737
で表される化合物であり得る。ここでR2、R3、R4およびR5は、独立して水素、ハロゲン基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロキシ基、有機官能性基であり、この有機官能基は、他の基材(たとえばプリプレグ)と反応性であるか、あるいは親和性を有する。有機官能基の例としては、アミノ含有、ヒドロキシ含有、アルコキシ含有の炭化水素、アルケン含有炭化水素、芳香族、複素環、およびエポキシ含有基が挙げられる。1つの実施態様において、R3、R4およびR5の各々は、クロロ、メトキシまたはエトキシであり、そしてR2は有機官能性基である。1つの実施態様において、R4およびR5の各々は、クロロ、メトキシまたはエトキシであり、そしてR2およびR3は有機官能性基である。
【0083】
これらのシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン; テトラエトキシシラン; ジアミノシラン; N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン; 3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン; 3-アミノプロピルトリエトキシシラン; ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン; β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン; 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン; 3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン; 3-クロロプロピルトリメトキシシラン; ビニルトリクロロシラン; ビニルトリエトキシシラン; ビニル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン; アミノプロピルトリメトキシシラン; N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン; N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン; 3-アセトキシプロピルトリメトキシシラン; N-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン ; 3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン; アリルトリエトキシシラン; アリルトリメトキシシラン; 4-アミノブチルトリエトキシシラン; (アミノエチルアミノメチル) フェネチルトリメトキシシラン; N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン; N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリス (2-エチルヘキソキシ)シラン; 6-(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン; アミノ-フェニルトリメトキシシラン; 3-(1-アミノプロポキシ)-3、3-ジメチル-1-プロペニルトリメトキシシラン; 3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン; 3-アミノプロピルトリエトキシシラン; 3-アミノプロピルトリメトキシシラン; ω-アミノウンデシルトリメトキシシラン; 3-[2-N-ベンジルアミノエチルアミノプロピル]トリメトキシシラン; ビス (2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン; 8-ブロモオクチルトリメトキシシラン; ブロモフェニルトリメトキシシラン; 3-ブロモプロピルトリメトキシシラン; 2-クロロエチルトリエトキシシラン; p-(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン; クロロメチルトリエトキシシラン; クロロフェニルトリエトキシシラン; 3-クロロプロピルトリエトキシシラン; 3-クロロプロピルトリメトキシシラン; 2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン; 3-(シアノエトキシ)-3, 3-ジメチル-1-プロペニルトリメトキシシラン; 2-シアノエチルトリエトキシシラン; 2-シアノエチルトリメトキシシラン; (シアノメチルフェネチル)トリメトキシシラン; 3-シアノプロピルトリエトキシシラン; 3-シクロペンタジエニルプロピルトリエトキシシラン; (N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン; ジエチルホスフェートエチルトリエトキシシラン; (N, N-ジメチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン; 2-(ジフェニルホスフィノ)エチルトリエトキシシラン; 2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン; 3-ヨードプロピルトリメトキシシラン; 3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン; 3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン; 3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン; メタクリルオキシプロペニルトリメトキシシラン; 3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン; 3-メタクリルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン; 3-メトキシプロピルトリメトキシシラン; N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン; 0-4-メチルクマリニル-N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]カルバメート; 7-オクト-1-エニルトリメトキシシラン; N-フェネチル-N'-トリエトキシシリルプロピルウレア(N-phenethl-N'-triethoxysilyl propylourea); N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン; 3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン; 3-チオシアネートプロピルトトリエトキシシラン; N-(3-トリエトキシシリルプロピル)アセチルグリシンアミド; N-(トリエトキシシリルプロピル)ダンシイルアミド; N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-2,4-ジニトロフェニルアミン; トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート; N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダソール; N-トリエトキシシリルプロピル-o-メントカルバメート; 3-(トリエトキシシリルプロピル)-p-ニトロベンズアミド; N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸; N-(トリエトキシシリルプロピル)ウレア; 1-トリメトキシシリル-2-(p,m-クロロメチル)フェニルエタン; 2-(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド; β-トリメトキシシリルエチル-2-ピリジン; トリメトキシシリルオクチルトリメチルアンモニウムブロミド; トリメトキシシリルプロピルシナメート; N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチル-N,N-ジアリルアンモニウムクロリド; トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン; N-[(3-トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミントリ酢酸三ナトリウム塩; トリメトキシシリルプロピルイソチオウロニウムクロリド; N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロール; N-トリメトキシシリルプロピルトリ-N-ブチルアンモニウムブロミド; N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド; ビニルトリエトキシシラン; ビニルトリイソプロポキシシラン; ビニルトリメトキシシラン; ビニルトリス-t-ブトキシシラン; ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン; ビニルトリイソプロペンオキシシラン; ビニルトリス(t-ブチルペルオキシ)シラン; 2-アセトキシエチルトリクロロシラン; 3-アクリルオキシプロピルトリクロロシラン; アリルトリクロロシラン; 8-ブロモオクチルトリクロロシラン; ブロモフェニルトリクロロシラン; 3-ブロモプロピルトリクロロシラン; 2-(カルボメトキシ)エチルトリクロロシラン; 1-クロロエチルトリクロロシラン; 2-クロロエチルトリクロロシラン; p-(クロロメチル)フェニルトリクロロシラン; クロロメチルトリクロロシラン; クロロフェニルトリクロロシラン; 3-クロロプロピルトリクロロシラン; 2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン; (3-シアノブチル)トリクロロシラン; 2-シアノエチルトリクロロシラン; 3-シアノプロピルトリクロロシラン; (ジクロロメチル)トリクロロシラン; (ジクロロフェニル)トリクロロシラン; 6-ヘキソ-1-エニルトリクロロシラン; 3-メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン; 3-(4-メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン; 7-オクト-1-エニルトリクロロシラン; 3-(N-フタルイミド)プロピルトリクロロシラン; 1-トリクロロシリル-2-(p,m-クロロメチルフェニル)エタン; 4-[2(トリクロロシリル)エチル]シクロヘキセン; 2-[2-(トリクロロシリル)エチル]ピリジン; 4-[2(トリクロロシリル)エチル]ピリジン; 3-(トリクロロシリル)プロピルクロロホルメート; およびビニルトリクロロシランが含まれる。
【0084】
上記のシラン化合物の2つ以上の混合物もまた使用され得る。たとえば、1つの実施態様において、シラン化合物はN-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、または3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランをテトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランと組み合わせたものである。
【0085】
シラン溶液は水、水とアルコールとの混合物、または適切な有機溶媒中の分散体または溶液の形態であり得、あるいはシラン混合物の水性乳濁液、または適切な有機溶媒中のシラン化合物の溶液の水性乳濁液であり得る。従来の有機溶媒が使用され得る。これらは、アルコール、エーテル、ケトン、およびそれらと脂肪族または芳香族の炭化水素との混合物、あるいはN,N-ジメチルホルムアミドのようなアミドとの混合物を包含する。有用な溶媒は、良好な湿潤特性および乾燥特性を有する溶媒であり、そしてたとえば、水、エタノール、イソプロパノール、およびメチルエチルケトンが挙げられる。シラン化合物の水性懸濁液は、従来の分散剤および界面活性剤(非イオン性界面活性剤を包含する)を使用して従来の方法で形成され得る。金属箔をシラン溶液に接触する工程は、所望であれば数回繰り返され得る。しかし、通常1回の工程で有用な結果が得られ、それゆえ1回の工程が通常は好ましい。接触は、逆ローラーコーティング、ドクターブレードコーティング、ディッピング、浸漬、ペイント塗および噴霧を包含する公知の施工方法によって達成される。
【0086】
シラン溶液は典型的には好ましくは約15℃から約45℃、より好ましくは約20℃から約30℃の温度である。処理金属箔をシラン溶液と接触させた後、金属箔は、表面の乾燥を促進するため、好ましくは約60℃から約170℃、より好ましくは約90℃から約150℃の温度まで、好ましくは約0.03〜約5分間、より好ましくは約0.2〜約2分間加熱され得る。金属箔上のシラン化合物の乾燥膜厚は、好ましくは約0.002〜約0.1ミクロン、より好ましくは約0.005〜約0.02ミクロンである。
【0087】
1つの実施態様において、金属箔が本発明によって処理された後、電気分解工程は全く実施されない。別の実施態様において、クロム含有電解浴を含む電気分解工程以外は、電気分解工程は全く実施されない。さらなる電気分解工程を省略することにより、金属箔の作成法を簡略化し、そしてプリントされた回路基板のための積層体の製造を簡略化する。
【0088】
本発明によって処理された金属箔は誘電体基材は結合されて、寸法安定性および構造安定性を与え得る。本発明の処理金属箔は、処理金属箔と誘電体基材との間の結合強度および剥離強度を増強する。この処理金属箔の利点は、この箔が付加銅粗面処理を回避しながらなお、誘電体基材との有効な結合強度または剥離強度を示すことである。他の利点は、処理金属箔の金属粒子が、次いで積層する誘電体基材に移動または拡散しないことである。これらの箔は標準プロフィール表面、低プロフィール表面、および極低プロフィール表面さえを有し得、そしてなお所望の剥離強度を提供する。本発明の箔を用いれば、つや消し側または光沢側のいずれもが、処理後、誘電体基材に有効に結合し得る。
【0089】
有用な誘電体基材は、部分的に硬化した樹脂(通常、エポキシ樹脂(たとえば、二官能性、4官能性、および多官能性のエポキシド))で含浸されたガラス織布強化材料であり得る。他の有用な樹脂は、ホルムアルデヒドと尿素、またはホルムアルデヒドとメラミンとの反応から製造されるアミノタイプ樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、シリコーン、ポリアミド、ポリイミド、ジアリルフタレート、フェニルシラン、ポリベンズイミダゾール、ジフェニルオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、シアネートエステルなどを包含する。これらの誘電体基材は時として、プリプレグと呼ばれる。
【0090】
積層体の調製においては、プリプレグ材料および金属箔の両方について、ロールに巻き上げられた材料の長いウェブ(web)の形態で提供されることが有用である。ひとつの実施態様においてこれらの金属箔およびプリプレグの長いウェブは、連続プロセスを用いて積層される。このプロセスにおいて、処理された金属箔(この金属箔に接着した接着促進層を有する)の連続ウェブは、積層構造を形成するための積層条件下で、運ばれてプリプレグ材料の連続ウェブに接触する。次いで、この積層構造は、長方形のシートにカットされ、次いで長方形のシートは、積み上げられるか、または集積(assemble)されて集合物(assemblage)の積み重ね(stack)とされる。
【0091】
ひとつの実施態様において、処理された金属箔およびプリプレグ材料の長いウェブは、最初に、長方形のシートにカットされ、次いで、積層に供される。このプロセスにおいて、処理された金属箔の長方形のシートおよびプリプレグ材料の長方形のシートは、次いで、積み上げられるか、または集積(assemble)されて集合物の積み重ねとされる。
【0092】
各集合物は、そのいずれかの側面を処理された金属箔のシートを有するプリプレグシートを含み得、そしていずれの例においても、処理された金属箔の側面(または側面のうちの1つの面)は、プリプレグに隣接するように配置される。集合物は、通常の積層温度および積層プレスのプレート間圧力に供され得、処理された金属箔の間のプリプレグのシートのサンドイッチを含む積層体を調製し得る。
【0093】
プリプレグは、部分的に硬化した2段階樹脂(two-stage resin)を含浸したガラス強化繊維織布から構成され得る。熱および圧力をかけることで、銅箔は、プリプレグに強固に押しつけられ、そしてこの集合物(assemblage)が供される温度は、樹脂の活性化に供されて硬化(すなわち樹脂の架橋)が起こり、そしてそのことにより箔がプリプレグ誘電体基材に強固に結合する。一般的に言って、積層操作は、約250から約750psiの範囲の圧力、約175℃から235℃の範囲の温度、および約40分から約2時間の積層サイクルを含む。完成した積層体は、次いで、プリント基板(printed circuit boards、PCB)に使用され得る。
【0094】
1つの実施態様において、積層体は、複層回路基板を作製するプロセスの部分として、サブトラクティブ(subtractive)な銅エッチングプロセスに供されて、電気伝導性の線または電気伝導性パターンを形成する。次いで、第2の処理が、上記で議論された技術を用いて、エッチングされたパターン上で行われ、次いで、第2のプリプレグがエッチングされたパターンに接着される;第2の処理された金属箔表面は、エッチングされたパターンと第2のプリプレグの間に位置し、そしてエッチングされたパターンと第2のプリプレグの両方に接着する。複層回路基板を作製する技術は、当該分野で周知である。同様に、サブトラクティブなエッチングプロセスは周知であり、その例は、米国特許第5,017,271号に開示され、これは本明細書中に参考として援用される。
【0095】
多くの製造方法が、積層体からPCBを調製するために利用することができる。さらに、PCBについての無数の可能な最終用途があり、ラジオ、テレビ、コンピューターなどが挙げられる。
【0096】
本発明により得られる1つの利点は、本発明によって得られ得る、処理された金属箔が、積層体に導入された場合に、優れた剥離強度を示すことである。なぜなら、本発明は、処理された金属箔が、処理された金属箔の加工(processing)の間、構造保全(structual integrity)を維持することを、可能にするからである。別の利点は、処理された金属箔が、積層体に導入された際に、跡写り(treatment transfer)をほとんど示さないかまたは示さないことである。さらに別の利点は、処理された金属箔が、例えば、処理された金属箔に接触し得る塩酸に対する向上した耐性を有することである。
【0097】
限定を意図しないが、以下の実施例は、本発明の種々の新規な局面を例示する。別段の指示のない限り、以下の実施例ならびに明細書および特許請求の範囲全体にわたって、すべての部および百分率は重量により、すべての温度は摂氏であり、そしてすべての圧力は大気圧である。
【0098】
【実施例】
実施例1
銅箔を、150g/l亜塩素酸ナトリウム、2g/l水酸化ナトリウムを含む溶液に、約80℃で、15秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。2g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして25ASFの電流密度を15秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、1% v/vジアミノシランおよび0.5% v/vエポキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例2
銅箔を、140g/l亜塩素酸ナトリウム、3g/l水酸化ナトリウムを含む溶液に、約70℃で、5秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。1g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして20ASFの電流密度を18秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、1% v/vジアミノシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例3
銅箔を、120g/l亜塩素酸カリウム、1.5g/l水酸化カリウムを含む溶液に、約60℃で、8秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。3g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を20秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、0.5% v/vエポキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例4
銅箔を、100g/l亜塩素酸ナトリウム、1g/l水酸化ナトリウムを含む溶液に、約50℃で、10秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。4g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を20秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、3% v/vジアミノシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例5
しんちゅう安定化層を有する銅箔を、140g/l亜塩素酸ナトリウム、2g/l水酸化ナトリウムを含む溶液に、約70℃で、15秒間浸漬する。複層金属箔を脱イオン水でリンスする。0.5g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。複層金属箔を浴中に置き、そして35ASFの電流密度を20秒間印加する。複層金属箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、複層金属箔を、2% 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例6
ニッケル箔を、150g/l亜塩素酸ナトリウム、2g/l水酸化ナトリウムを含む溶液に、約80℃で、15秒間浸漬する。ニッケル箔を脱イオン水でリンスする。3g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。ニッケル箔を浴中に置き、そして25ASFの電流密度を15秒間印加する。ニッケル箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、ニッケル箔を、1% v/v N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾールおよび1% v/vテトラエトキシシラン、を含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例7
銅箔を、8.8ppmの溶存酸素を含有する酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約20℃で5秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。約11Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。2g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を5秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、1% v/vジアミノシランおよび0.5% v/vエポキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例8
銅箔を、8.8ppmの溶存酸素を含有する含有酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約20℃で10秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。約9Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。1g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして20ASFの電流密度を18秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、1% v/vジアミノシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例9
銅箔を、7.4ppmの溶存酸素を含有する含有酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約25℃で5秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。約16Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。3g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を10秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、0.5% v/vエポキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例10
銅箔を、7.4ppmの溶存酸素を含有する含有酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約15℃で10秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。約5Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。3g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を10秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、0.5% v/vエポキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例11
銅箔を、7.4ppmの溶存酸素を含有する含有酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約15℃で15秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。約8Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。3g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を10秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、0.5% v/vエポキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例12
銅箔を、10ppmの溶存酸素を含有する含有酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約18℃で5秒間浸漬する。銅箔を脱イオン水でリンスする。約9Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。4g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。銅箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を5秒間印加する。銅箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、銅箔を、3% v/vジアミノシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例13
しんちゅう安定化層を有する銅箔を、10ppmの溶存酸素を含有する含有酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約18℃で10秒間浸漬する。複層金属箔を脱イオン水でリンスする。約6Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。0.5g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。複層金属箔を浴中に置き、そして25ASFの電流密度を3秒間印加する。複層金属箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、複層金属箔を、2% 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
実施例14
ニッケル箔を、10ppmの溶存酸素を含有する含有酸素通気された脱イオン水を含む溶液中に、約18℃で15秒間浸漬する。ニッケル箔を脱イオン水でリンスする。約7Åの厚さの酸化物層を箔上に検出する。3g/lの三酸化クロムを含む水性電解浴を調製する。ニッケル箔を浴中に置き、そして15ASFの電流密度を10秒間印加する。ニッケル箔を再び脱イオン水中でリンスする。次いで、ニッケル箔を、1% v/v N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾールおよび1% v/vテトラエトキシシランを含む水溶液中に浸漬し、そして乾燥する。
【0099】
本発明をその好ましい実施態様に関連して説明してきたが、本明細書を読むことにより、当業者には、それらの様々な方法が明らかになることが理解されるべきである。従って、本明細書中に開示された発明が、添付された請求の範囲の範囲に入る、そのような改変をカバーすることを意図することが理解されるべきである。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、高い剥離強度を有する積層体が提供される。本発明によれば、高い剥離強度により、積層体は加工(化学物質および種々のエッチング剤(例えば塩酸)への暴露)の間、および通常の摩耗および引き裂きの過程(熱分解、物理的振動など)にわたって、その構造保全(structural integrity)を維持することが可能となる。
【0101】
本発明によれば、金属箔は典型的には表面粗さが増大するように処理され、その結果、得られる積層体の剥離強度が増大する。本発明によれば、積層体中に組み入れられた場合に高い剥離強度を示すのみならず、誘電体基材の絶縁特性に影響を与えない金属箔が提供される。
【0102】
本発明によれば、金属箔処理の効率および対費用効果の増大が得られる。
【0103】
本発明によれば、部分的に、加工中に構造保全を保持する能力のために、高い剥離強度を示す金属箔を提供することが可能である。本発明はまた、積層体中に組み入れられた場合に跡写りがわずかであるか、あるいは跡写りしない金属箔を提供する。
【0104】
本発明によれば、本発明によって得られ得る、処理された金属箔が、積層体に導入された場合に、優れた剥離強度を示す。なぜなら、本発明は、処理された金属箔が、処理された金属箔の加工(processing)の間、構造保全(structual integrity)を維持することを、可能にするからである。本発明によればまた、処理された金属箔が、積層体に導入された際に、跡写り(treatment transfer)をほとんど示さないかまたは示さない。さらに本発明によれば、処理された金属箔が、例えば、処理された金属箔に接触し得る塩酸に対する向上した耐性を有する。

Claims (30)

  1. 金属箔の処理方法であって、
    該金属箔を、金属箔酸化剤および5g/l未満の水酸化物化合物、または水および少なくとも7ppmの溶存酸素のいずれかを含む第1の溶液に接触させて、該金属箔上に、1〜25Åの厚みを有する酸化物層を形成する工程であって、該金属箔酸化剤:該水酸化物化合物の比が、少なくとも60:1である、工程;
    該金属箔を、クロム含有電解浴に接触させ、そして該電解浴を電気分解して、該酸化物層上にクロム含有層を形成する工程であって、ここで該浴が0.1〜5g/lのクロム化合物を含む、工程;および
    該金属箔を0.1〜10%(v/v)のシラン化合物を含む第2の溶液に接触させて、該クロム含有層上にシラン含有層を形成する工程
    を順次包含し、
    ただし、該金属箔が該金属箔酸化剤溶液との接触後、還元剤と接触しない、方法。
  2. 前記金属箔酸化剤が亜塩素酸塩化合物、次亜塩素酸塩化合物、および過硫酸塩化合物のうち少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記水酸化物化合物がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、あるいは水酸化アンモニウムを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記第1の溶液が3g/l未満の水酸化物化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記金属箔を酸性溶液に接触させる工程および必要であれば前記第1の溶液に接触させる前に該金属箔をリンスする工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記酸性溶液が、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸のうち少なくとも1種類を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記クロム化合物が酸化クロムである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記金属箔酸化剤のg/lと前記水酸化物化合物のg/lとの比が少なくとも20:1である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. さらに前記金属箔が亜鉛を含む金属層がないことによって特徴付けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 請求項1に記載の方法であって、
    ここで、前記金属箔を前記第1の溶液に接触させる工程が、該金属箔を該第1の溶液中に浸漬させる工程を包含し、該第1の溶液が、脱イオン水および少なくとも7.5ppmの溶存酸素を含み、
    ここで、該金属箔を前記第2の溶液に接触させる工程が、該金属箔を該第2の溶液中に浸漬させる工程を包含し、該第2の溶液が0.1〜5%(v/v)のシラン化合物を含む、
    方法。
  11. 前記金属箔を前記第1の溶液に浸漬させる工程の後に、該金属箔をリンスする工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
  12. 前記金属箔を前記第1の溶液に接触させる前記工程が、該金属箔を該第1の溶液に浸漬させる工程を包含し、該第1の溶液が3g/l未満の水酸化ナトリウムを含み、該金属箔を前記第2の溶液に接触させる前記工程が、該金属箔を該第2の溶液中に浸漬させる工程を包含し、該第2の溶液が0.1〜5%(v/v)のシラン化合物を含む、請求項1に記載の方法。
  13. 前記金属箔を前記第1の溶液に浸漬させる工程の後に、該金属箔をリンスする工程をさらに包含する、請求項12に記載の方法。
  14. 前記第1の溶液が3g/l未満のアルカリ金属水酸化物を含む、請求項12または13に記載の方法。
  15. 前記アルカリ金属亜塩素酸塩または次亜塩素酸塩のg/lと前記アルカリ金属水酸化物のg/lとの比が少なくとも50:1である、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記金属箔を酸性溶液に接触させる工程および必要であれば前記第1の溶液に接触させる前に該金属箔をリンスする工程をさらに含む、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記金属箔を前記第1の溶液に接触させた後、該金属箔をリンスする工程をさらに含む、請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記クロム化合物が酸化クロムである、請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記金属箔が銅箔である、請求項1に記載の方法。
  20. 前記第1の溶液が水および8ppm〜20ppmの溶存酸素を含み;前記クロム含有電解浴が1〜3g/lのクロム化合物を含み;そして前記シラン溶液が0.1〜5%(v/v)のシラン化合物を含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記金属箔酸化剤溶液が15℃〜30℃の温度であり、かつ前記金属箔が2〜50秒間該金属箔酸化剤溶液に接触する、請求項19〜20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記酸化物層が15Å未満の厚みを有する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記クロム化合物が酸化クロムである、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 積層構造体を作製する方法であって、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法によって処理された箔を、積層条件下で誘電体基材に接触させる工程を包含する、方法。
  25. 10ミクロン以上Rtmを増加させる付加粗面処理が存在しないことによって特徴付けられる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
  26. 3ミクロン以上Rtmを増加させる付加粗面処理が存在しないことによって特徴付けられる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記金属箔の処理表面が、標準プロフィール表面を有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記金属箔の処理表面が、低プロフィール表面を有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記金属箔の処理表面が、極低プロフィール表面を有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
  30. 前記金属箔の処理表面が、光沢のある側面である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
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