JP4226890B2 - 低香味ミネラル含有酵母とその製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、臭い、味が改善された、ミネラルを高濃度に含有する酵母、並びにその製造方法および用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵母は、昨今、酵母中の栄養成分(例えば、細胞壁成分(グルカン等)、良質なタンパク質、ビタミンB群、核酸等)に注目され、ダイエット食品等、栄養補給の素材として、重要な食品素材となってきた。酵母エキスや乾燥酵母はそのまま摂取することも可能であるが、ジュース(例えば、特許文献1参照)、お茶ふりかけ(例えば、特許文献2参照)、飲料、ゼリーおよび氷菓類等の飲食物(例えば、特許文献3参照)に添加し、摂取することも多く試みられてきた。しかしながら、酵母には、特有の臭い(香気)があり、かつ旨味(呈味)が強いために、これらの酵母添加食品は食しにくいものであった。そのため、魚介類またはその加工品を使用する食品等、特有の香味を利用またはマスキングできるような食品に酵母を添加することも試みられた(例えば、特許文献4)。
【0003】
一方、酵母は、培地に金属を添加すると、その金属を菌体中に取り込むことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。亜鉛、鉄、銅、マンガン、セレン、モリブデン、クロム等の微量元素は生体において重要な働きをしており、これらの金属を培地中に添加すれば、食品に強化したい元素の供給素材として酵母が利用できることになる。この点に着目し、10,000ppmの亜鉛を取り込んだ酵母を製造する技術が検討されてきた(例えば、特許文献5参照)。また、このような亜鉛を高い濃度で含有する酵母を利用した食品も検討されてきた(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、このようなミネラル高含有酵母にあっても酵母特有の不快な香気成分および呈味の問題があった。そのため、やはり、酵母の香味を感じさせない程度に食品に添加するか、若しくは酵母の香味を利用するような食品に添加するか、または添加可能な食品を選択する等せねばならなかった。酵母の香味は、酵母を利用した食品の開発にとって大きな障壁となっていた。
【0004】
【特許文献1】
特開昭50-5568号公報(2〜4頁)
【特許文献2】
実開昭昭62-99991号公報
【特許文献3】
特開昭60-120962号公報
【特許文献4】
特公平2-2582号公報
【特許文献5】
特開平8-332082号公報(段落[0009]〜[0014])
【特許文献6】
特開2000-125811号公報(段落[0018]〜[0028])
【非特許文献1】
B. Volesky, H. A. MayPhilips; Biosorption of heavy metals by Saccharomyces cerevisiae; Appl Microbiol Biotechnol(1995)42: 797-806
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ミネラル以外の栄養素も含めてバランスよく酵母の栄養素を摂取しようとする場合、食品中へは重量あたり、約1%以上の乾燥酵母の配合が望ましい。しかしながら、従来の乾燥酵母は、例えば、野菜ジュースに1%(重量)添加した場合であっても、野菜の香り、味といった製品の品位を壊してしまう。また、ミネラル以外の栄養素も含めてバランスよく酵母の栄養素を摂取するという観点からは、酵母菌体に含有させるべき微量元素の種類および量の設計も重要である。
【0006】
香味が低減され、かつ所望の微量元素を適量含み、所望の食品に所望の量で添加可能な酵母は、食品一般への種々栄養成分の強化に役立つのみならず、高齢者の栄養補給および生活習慣病の改善等に有用な素材であることは疑いもない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酵母について、香味低減および微量元素含有量の設計の観点から、種々の検討を行った。その結果、特定の株の酵母を用いて適切な条件の下で調製すると、ミネラルを高濃度に含有する乾燥酵母菌体が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
本発明はすなわち、
(a)内標比で、ジメチルジスルフィド含有量が0.165以下、ヘキサナール含有量が0.085以下、ヘプタナール含有量が0.100以下、3-メチルチオプロパナール含有量が0.045以下、ベンツアルデヒド含有量が0.080以下、ジメチルトリサルファイド含有量が0.090以下、オクタナール含有量が0.012以下、ベンゼンアセトアルデヒド含有量が0.007およびノナナール含有量が0.019以下である(好ましくは、ジメチルジスルフィド含有量が0.160以下、ヘキサナール含有量が0.060以下、ヘプタナール含有量が0.095以下、3-メチルチオプロパナール含有量が0.025以下、ベンツアルデヒド含有量が0.065以下、ジメチルトリサルファイド含有量が0.045以下、オクタナール含有量が0.011以下、ベンゼンアセトアルデヒド含有量が0.007以下およびノナナール含有量が0.017以下であり;より好ましくは、ジメチルジスルフィド含有量が0.150以下、ヘキサナール含有量が0.040以下、ヘプタナール含有量が0.090以下、3-メチルチオプロパナールを実質的に含まず、ベンツアルデヒド含有量が0.045以下、ジメチルトリサルファイドを実質的に含まず、オクタナール含有量が0.010以下、ベンゼンアセトアルデヒド含有量が0.005以下およびノナナール含有量が0.014以下である)こと;
(a')内標比で、酢酸エチル含有量が0.200以下、3-メチルプロパナール含有量が0.035以下、2-メチルプロパナール含有量が0.065以下、イソアミルアルコール含有量が0.210以下、ジメチルジスルフィド含有量が0.165以下、酪酸エチル含有量が0.025以下、酢酸イソアミル含有量が0.025以下、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.011以下およびベンツアルデヒド含有量が0.080以下である(好ましくは、酢酸エチル含有量が0.120以下、3-メチルプロパナール含有量が0.035以下、2-メチルプロパナール含有量が0.065以下、イソアミルアルコール含有量が0.120以下、ジメチルジスルフィド含有量が0.165以下、酪酸エチル含有量が0.015以下、酢酸イソアミル含有量が0.015以下、2,5-ジメチルピラジン含有量を実質的に含まずおよびベンツアルデヒド含有量が0.020以下であり;より好ましくは、酢酸エチル含有量が0.045以下、3-メチルプロパナール含有量が0.035以下、2-メチルプロパナール含有量が0.065以下、イソアミルアルコール含有量が0.120以下、ジメチルジスルフィド含有量が0.070以下、酪酸エチル含有量が0.015以下、酢酸イソアミル含有量が0.015以下、2,5-ジメチルピラジンを実質的に含まずおよびベンツアルデヒド含有量が0.020以下であり;さらに好ましくは、酢酸エチル含有量が0.040以下、3-メチルプロパナール含有量が0.035以下、2-メチルプロパナール含有量が0.065以下、イソアミルアルコール含有量が0.080以下、ジメチルジスルフィド含有量が0.060以下、酪酸エチル含有量が0.015以下、酢酸イソアミル含有量が0.015以下、2,5-ジメチルピラジンを実質的に含まずおよびベンツアルデヒド含有量が0.020以下である)こと;
(b)水溶性窒素が全窒素量の16%以下(好ましくは13%以下、より好ましくは10%以下)であること;
(c)ミネラルの(好ましくは亜鉛、鉄、銅およびマンガンから選択される1種の;より好ましくは亜鉛の)含有量が、3,000ppm〜300,000ppmである(好ましくは3,000ppm〜10,000ppmであり、より好ましくは3,000ppm〜9,000ppmである)こと、
の各条件のうち、(a)を満たし、好ましくは(a)と他の少なくとも1つ、より好ましくは(a)と他の2つを満たす酵母を提供する。また、(a')を満たし、好ましくは(a')と他の少なくとも1つ、より好ましくは(a')と他の2つを満たす酵母を提供する。
【0009】
本明細書で「酵母」というとき、特に示した場合を除き、ビール酵母、パン酵母、清酒酵母を含む。また、圧搾酵母、乾燥酵母、活性乾燥酵母、死滅酵母、殺菌乾燥酵母などの種々の形態の酵母菌体を含む。また、酵母菌体と実質的に同じ組成からなる酵母菌体由来物(例えば、酵母菌体の破砕物、粉末)を含む。本発明の酵母の形態としては、保存性、安定性、運搬・保管の容易性、食品に添加する場合の利便性等の観点からは、殺菌乾燥酵母であることが好ましい。
【0010】
本発明の(a)の条件でいう、ジメチルジスルフィド、ヘキサナール、ヘプタナール、3-メチルチオプロパナール、ベンツアルデヒド、ジメチルトリサルファイド、オクタナール、ベンゼンアセトアルデヒドおよびノナナール、あるいは(a')の条件でいう、酢酸エチル、3-メチルプロパナール、2-メチルプロパナール、イソアミルアルコール、ジメチルジスルフィド、酪酸エチル、酢酸イソアミル、2,5-ジメチルピラジンおよびベンツアルデヒドは、主要な酵母の香気成分と考えられるものである。
【0011】
本発明の(a)の条件に係る9つの香気成分のうち、ジメチルジスルフィド、ヘキサナール、ヘプタナール、3-メチルチオプロパナール、ベンツアルデヒドおよびジメチルトリサルファイドの6成分が重要であると考えられるから、本発明はまた、
(a)内標比で、ジメチルジスルフィド含有量が0.165以下、ヘキサナール含有量が0.085以下、ヘプタナール含有量が0.100以下、3-メチルチオプロパナール含有量が0.045以下、ベンツアルデヒド含有量が0.080以下およびジメチルトリサルファイド含有量が0.090以下である(好ましくは、ジメチルジスルフィド含有量が0.160以下、ヘキサナール含有量が0.060以下、ヘプタナール含有量が0.095以下、3-メチルチオプロパナール含有量が0.025以下、ベンツアルデヒド含有量が0.065以下およびジメチルトリサルファイド含有量が0.045以下であり;より好ましくは、ジメチルジスルフィド含有量が0.150以下、ヘキサナール含有量が0.040以下、ヘプタナール含有量が0.090以下、3-メチルチオプロパナールを実質的に含まず、ベンツアルデヒド含有量が0.045以下およびジメチルトリサルファイドを実質的に含まない)こと;
(b)水溶性窒素が全窒素量の20%以下(好ましくは19%以下、より好ましくは18%以下)であること;
(c)ミネラルの(好ましくは亜鉛、鉄、銅およびマンガンから選択される1種の;より好ましくは亜鉛の)含有量が、3,000ppm〜300,000ppmである(好ましくは3,000ppm〜10,000ppmであり、より好ましくは3,000ppm〜9,000ppmである)こと、
の各条件のうち、(a)を満たし、好ましくは(a)と他の少なくとも1つ、より好ましくは(a)と他の2つを満たす酵母を提供する。
【0012】
さらに本発明の(a)の条件に係る9つの香気成分のうち、ジメチルトリスルフィドおよび3-メチルチオプロパナールが特に重要であると考えられるから、これら2成分のうち少なくとも一方を実質的に含まない酵母は、本発明の特に好ましい態様の一つである。
【0013】
酵母の香気成分の濃度または量は、当業者に周知の各種の方法により測定することができる。本明細書において酵母の香気成分の含有量に言及するときは、特に示した場合を除き、一定量の乾燥酵母菌体あたりの含有量(重量/重量)をいい、乾燥酵母菌体粉末の水溶液ないし水懸濁液を用いたヘッドスペース法により測定した値をいう。また、本発明において香気成分に関し「内標比」というときは、特に示した場合を除き、シクロヘキサノールを内標とし、乾燥酵母菌体粉末水溶液のヘッドスペースのガスクロマトグラム測定値に基づき算出した比をいう。詳細には、乾燥酵母菌体粉末の5%水溶液(重量/重量)5.25gに、内標として1%シクロヘキサノールを4.5μL添加したものを15mLクリアーバイアルに入れ、攪拌しながら40℃に保温する。温度が安定したら上部より吸着用ファイバーを挿入して吸着部を露出した状態で40℃で1時間保持する。その後、吸着用ファイバーを取り出してガスクロマトグラムに装着して各成分を測定し、内標のピーク面積を分母とし、それぞれの成分のピーク面積を分子として「内標比」を算出する。
【0014】
同一の乾燥酵母菌体について測定した内標比がばらつく場合は、例えば、適切な回数繰り返し測定を行って平均値を算出するか、または本明細書の実施例1の記載にしたがって乾燥酵母菌体を調製し、これを対照として用いて測定する等、技術常識にしたがって、その酵母が本発明の範囲に該当するか否かを判断することができる。
【0015】
ある酵母において各香気成分の含有量が本発明で示される範囲であれば、その酵母は、従来の酵母と比較して香気が低減されており、香気の観点から従来は酵母を添加し得なかった食品に添加することができ、あるいは従来は酵母の添加量を控えざるを得なかった食品に対しても、より多くの量で添加することができる。
【0016】
本発明の酵母の香気成分の含有量は、本発明の酵母が従来の酵母と比較して香気が低減されていることから、従来の酵母を基準とした相対値でも表すことができる。この場合、従来酵母の標準としては、本明細書の比較例1にしたがって調製された乾燥パン酵母、本明細書の比較例2で用いた市販のビール酵母を用いることができる。例えば、比較例1にしたがって調製された乾燥パン酵母または本明細書の比較例2で用いた市販のビール酵母を標準として用いた場合、9つの香気成分に関する本発明の(a)の条件は、「ジメチルジスルフィド含有量、ヘキサナール含有量、ヘプタナール含有量、3-メチルチオプロパナール含有量、ベンツアルデヒド含有量、ジメチルトリサルファイド含有量、オクタナール含有量、ベンゼンアセトアルデヒド含有量およびノナナール含有量が、標準酵母と比較して、1/2以下(好ましくは1/3以下、より好ましくは1/4以下)に低減されているか、実質的に含まないこと」に置き換えることができ、また、9つの香気成分に関する本発明の(a')の条件は、「酢酸エチル、3-メチルプロパナール、2-メチルプロパナール、イソアミルアルコール、ジメチルジスルフィド、酪酸エチル、酢酸イソアミル、2,5-ジメチルピラジンおよびベンツアルデヒドからなる群より選択される3種以上(好ましくは4種以上(例えば、酢酸エチル、3-メチルプロパナール、ジメチルジスルフィド、2,5-ジメチルピラジンの4種)、より好ましくは6種以上、さらに好ましくはすべて)の成分の含有量が標準酵母と比較して、4/5以下(好ましくは3/4以下、より好ましくは2/3以下、さらに好ましくは1/2以下)であること」に置き換えることができる。本発明はこのような酵母をも提供する。
【0017】
上記(b)の条件でいう水溶性窒素は、呈味に関与すると考えらえれる成分である。したがって、酵母中の水溶性窒素が少量であるほうが呈味が少なく好ましい。本発明はこのような酵母をも提供する。
【0018】
酵母中の水溶性窒素の量は、ケルダール法等の当業者に周知の各種の方法により測定することができる。本明細書において酵母中の水溶性窒素の量に言及するときは、特に示した場合を除き、一定量の酵母に含まれる、水溶性窒素分÷酵母の全窒素量×100により算出される値をいう。また、本発明において「水溶性窒素」というときは、特に示した場合を除き、一定量の乾燥酵母粉末について全窒素量および水へ溶出した窒素量それぞれをケルダール法を用いて測定し、得られた値に基づいて算出した水溶性窒素の全窒素に占める割合(%)をいう。詳細には、対照となる酵母の乾燥粉末形態のもの2gに蒸留水10gを添加し、充分に攪拌した後、5分間静置する。その後、遠心分離し、上清を0.2μmフィルターでろ過することにより微粒子を除去する。得られた溶液について、ケルダール法を用いて窒素量を測定し(水に溶出した窒素量)、他方同量の乾燥酵母の全窒素量もケルダール法にて測定する。そして、計算式[水に溶出した窒素量]÷[全窒素量]×100により、水溶性窒素の全窒素量(%)を算出する。
【0019】
同一の乾燥酵母菌体について測定した水溶性窒素の値がばらつく場合は、例えば、適切な回数繰り返し測定を行って平均値を算出するか、または本明細書の実施例1の記載にしたがって乾燥酵母菌体を調製し、これを対照として用いて測定する等、技術常識にしたがって、その酵母が本発明の範囲に該当するか否かを判断することができる。
【0020】
水溶性窒素は酵母菌体中で種々の分子量のポリペプチドまたはアミノ酸等として存在するが、分子量約10,000以上、分子量約10,000〜5,000、分子量約5,000〜1,700、分子量約1,700〜730、分子量未満730(アミノ酸残基6〜7個程度)の各種ポリペプチドおよびアミノ酸のうち、特に味に関係するのは比較的低分子のポリペプチドおよび/またはアミノ酸であると考えられる。そこで、呈味低減の観点からは、低分子のポリペプチドおよび/またはアミノ酸が少量である酵母が、例えば、水溶性窒素としてのアミノ酸含量が少ない酵母、すなわち
(b’)水溶性窒素に占めるアミノ酸比率が4.0以下である(好ましくは3.6以下であり、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.1以下である)こと、
なる条件を満たす酵母が好ましい。
【0021】
酵母中のアミノ酸の量は、アミノ酸アナライザーを用いる等、当業者に周知の各種の方法により測定することができる。本明細書において酵母中の水溶性窒素に占めるアミノ酸比率に言及するときは、特に示した場合を除き、一定量の酵母の水抽出液中に含まれる、アミノ酸量÷全窒素量により算出される値をいう。また、本発明において「水溶性窒素に占めるアミノ酸比率」というときは、特に示した場合を除き、一定量の乾燥酵母粉末を水で溶出し、得られた抽出液中の窒素量およびアミノ酸量を、それぞれケルダール法およびアミノ酸アナライザーにより測定し、得られた値に基づいて算出したアミノ酸量の水溶性窒素に占める割合をいう。詳細には、対照となる酵母の乾燥粉末形態のもの2gに蒸留水10gを添加し、充分に攪拌した後、5分間静置する。その後、遠心分離し、上清を0.2μmフィルターでろ過することにより微粒子を除去する。得られた溶液について、ケルダール法を用いて窒素量(水溶性窒素量)を測定し、他方、得られた溶液を必要により希釈してアミノ酸アナライザーに供してアミノ酸量を測定する。そして、計算式[アミノ酸量]÷[水溶性窒素量]により、水溶性窒素に占めるアミノ酸比率(%)を算出する。
【0022】
同一の乾燥酵母菌体について測定した水溶性窒素に占めるアミノ酸比率がばらつく場合は、例えば、適切な回数繰り返し測定を行って平均値を算出するか、または本明細書の実施例1の記載にしたがって乾燥酵母菌体を調製し、これを対照として用いて測定する等、技術常識にしたがって、その酵母が本発明の範囲に該当するか否かを判断することができる。
【0023】
ある酵母において水溶性窒素量および/または水溶性窒素に占めるアミノ酸比率が本発明で示される範囲であれば、その酵母は、従来の酵母と比較して呈味が低減されており、呈味の観点から従来は酵母を添加し得なかった食品に添加することができ、あるいは従来は酵母の添加量を控えざるを得なかった食品に対しても、より多くの量で添加することができる。
【0024】
本発明の酵母の水溶性窒素量および/または水溶性窒素に占めるアミノ酸比率は、本発明の酵母が従来の酵母と比較して呈味が低減されているとの観点からは、従来の酵母を基準とした相対値で表すことができる。この場合、従来酵母の標準としては、本明細書の比較例1にしたがって調製された乾燥パン酵母、本明細書の比較例2で用いた市販のビール酵母を用いることができる。
【0025】
上記(c)の条件でいうミネラルには、生体において重要な働きをしている亜鉛、鉄、銅、マンガン、セレン(セレニウム)、モリブデン、クロム、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム、ヨウ素、ナトリウム等のミネラルが含まれる。それぞれを所望の濃度に酵母に含有させるには、種々の既存の方法を適用することができる。
【0026】
例えば、ミネラルとして亜鉛を所望の濃度で含有させた酵母の製造方法としては、前掲特許文献5(特開平8-332082号)に記載された方法を参照することができる。高濃度で亜鉛を含む酵母は、亜鉛を特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」による亜鉛の一日の必要所要量(〜6月未満で1.2mg、6月〜1歳未満で4mg、1〜2歳で5mg、3〜5歳で6mg、6〜8歳で6mg、9〜11歳で7mg、12〜14歳で8mg、15〜17歳の男性で10mg、同女性で9mg、18歳〜29歳の男性で11mg、同女性で9mg、30歳〜49歳の男性で12mg、同女性で10mg、50歳〜69歳の男性で11mg、同女性で10mg、70歳以上の男性で10mg、同女性で9mg、妊婦・授乳婦は各所要量+3mg)、許容上限摂取量(18歳〜69歳で30mg)、過剰摂取による他のミネラル(例えば、銅)の吸収抑制を考慮したり、下記の表1に例示したような酵母の他の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、3,000ppm〜300,000ppm、好ましくは3,000ppm〜10,000ppm、より好ましくは3,000ppm〜9,000ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0027】
【表1】
Figure 0004226890
【0028】
例えば、ミネラルとして鉄を所望の濃度で含有させた酵母の製造方法としては、前掲特許文献5(特開平8-332083号)に記載された方法を参照することができる。高濃度で鉄を含む酵母は、鉄を特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」による鉄の一日の必要所要量(成人男性10mg、成人女性12mg)、許容上限摂取量(40mg)を考慮したり、酵母の他の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、亜鉛と同様の含有量とするか、または3,000ppm〜300,000ppm、好ましくは3,000ppm〜40,000ppm、より好ましくは3,000ppm〜20,000ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0029】
例えば、ミネラルとして銅を所望の濃度で含有させた酵母の製造方法としては、前掲非特許文献1(B. Volesky, H. A. MayPhilips; Biosorption of heavy metals by Saccharomyces cerevisiae; Appl Microbiol Biotechnol(1995)42: 797-806)に記載された方法を参照することができる。高濃度で銅を含む酵母は、銅を特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」による銅の一日の必要所要量(成人男性1.8mg、成人女性1.6mg)、許容上限摂取量(9mg)を考慮したり、他の酵母の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、亜鉛と同様の含有量とするか、または300ppm〜30,000ppm、好ましくは300ppm〜8,000ppm、より好ましくは300ppm〜4,000ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0030】
また、例えば、ミネラルとしてマンガンを所望の濃度で含有させた酵母は、公知のミネラル酵母製造方法に準じて製造することができる。高濃度でマンガンを含む酵母は、マンガンを特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」による銅の一日の必要所要量(成人男性4.0mg、成人女性3.0mg)、許容上限摂取量(10mg)を考慮したり、他の酵母の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、亜鉛と同様の含有量とするか、または300ppm〜30,000ppm、好ましくは300ppm〜10,000ppm、より好ましくは300ppm〜8,000ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0031】
また、例えば、ミネラルとしてセレンを所望の濃度で含有させた酵母の製造方法としては、特公平6-16702号に記載された方法を参照することができる。高濃度でセレンを含む酵母は、セレンを特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」によるセレンの一日の必要所要量(成人男性60μg、成人女性45μg)、許容上限摂取量(250μg)を考慮したり、他の酵母の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、10ppm〜1,000ppm、好ましくは10ppm〜600ppm、より好ましくは10ppm〜200ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0032】
例えば、ミネラルとしてモリブデンを所望の濃度で含有させた酵母は、公知のミネラル酵母製造方法に準じて製造することができる。高濃度でモリブデンを含む酵母は、モリブデンを特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」によるモリブデンの一日の必要所要量(成人男性30μg、成人女性25μg)、許容上限摂取量(250μg)を考慮したり、他の酵母の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、10ppm〜1,000ppm、好ましくは10ppm〜600ppm、より好ましくは10ppm〜200ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0033】
例えば、ミネラルとしてクロムを所望の濃度で含有させた酵母の製造方法としては、特公昭60-15309号または特開昭61-158776号に記載された方法を参照することができる。高濃度でクロムを含む酵母は、クロムを特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」によるクロムの一日の必要所要量(成人男性35μg、成人女性30μg)、許容上限摂取量(250μg)を考慮したり、他の酵母の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、10ppm〜1,000ppm、好ましくは10ppm〜600ppm、より好ましくは10ppm〜200ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0034】
例えば、ミネラルとしてマグネシウムを所望の濃度で含有させた酵母の製造方法としては、前掲特許文献5(特開平8-332081号)に記載された方法を参照することができる。高濃度でマグネシウムを含む酵母は、マグネシウムを特に強化したい食品に添加する場合に有用である。他方、「第6次改訂日本人の栄養所要量」によるマグネシウムの一日の必要所要量(成人男性310mg、成人女性250mg)、許容上限摂取量(700mg)を考慮したり、他の酵母の栄養成分をもバランス良く食品に添加すべきとの観点からは、含量は一定範囲内であることが好ましい。例えば、30,000ppm〜300,000ppm、好ましくは30,000ppm〜10,000ppm、より好ましくは30,000ppm〜9,000ppmとなるように、含量を調節するとよい。
【0035】
本発明の酵母には、特定の量のミネラルの複数種の組み合わせ、例えば、亜鉛、鉄、銅、マンガン、セレン、モリブデン、クロム、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム、ヨウ素およびナトリウムよりなる群から選択される2種以上、亜鉛、鉄、銅およびマンガンよりなる群から選択される2種以上、亜鉛、鉄、銅およびマンガンの組み合わせ、または亜鉛および銅として、含有される場合もある。
【0036】
酵母のミネラル含有量は、当業者に周知の各種の方法により測定することができる。本発明において酵母に関して「ミネラルの含有量」というときは、特に示した場合を除き、乾燥酵母菌体の単位重量あたりに含まれる量をいう。例えば、以下の方法により、測定・算出することができる。
【0037】
亜鉛:原子吸光光度法による。詳細には、乾燥酵母菌体1〜2gをビーカーに秤取し、灰化し(500℃で5〜6時間)、20%塩酸5mLを加えて蒸発乾固し(水浴上)、10%塩酸5mLを加えて加温し(30分間)、ろ過し(ろ紙 No.5A)、そして定容する(メスフラスコ(100mL))。得られた溶液について、原子吸光光度計により吸光度を測定する(波長:213.8nm、フレーム:空気−アセチレン)。
【0038】
鉄:o-フェナントロリン吸光光度法による。詳細には、乾燥酵母菌体2gを秤取し、灰化し(500℃で1〜5時間)、塩酸抽出し、ろ過し、そして定容する。25mLメスフラスコに分取し、1%アスコルビン酸溶液1mLを添加し、0.5% o-フェナントロリン溶液2mLを添加し、25%クエン酸ナトリウム溶液でpH3.5に調整し、定容後、3時間以上放置する。得られた溶液について吸光光度計により吸光度を測定する(セル:1cm、波長:510nm)。
【0039】
銅:APDC抽出・原子吸光光度法による。詳細には、乾燥酵母菌体5gをケルダールフラスコに秤取し、硝酸20mL、次いで硫酸5mLを加え、加熱分解し、放冷し、水、次いで20%塩酸10mLを加え、煮沸し、分液ロート(200mL)に移す。50%クエン酸アンモニウム溶液10mLを加え、中和し(アンモニア水、指示薬:チモールブルー)、放冷し、水を加えて100mLとする。3%ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム溶液(APDC)5mLを加え、放置し(5分間)、酢酸ブチル5mLを加え、振とうし(5分間)、静置する。得られた酢酸ブチル層について、原子吸光光度計により吸光度を測定する(波長:234.8nm、フレーム:空気−アセチレン)。
【0040】
マンガン:原子吸光光度法による。詳細には、乾燥酵母菌体1〜2gをビーカーに秤取し、灰化し(500℃で5〜6時間)、20%塩酸5mLを加えて蒸発乾固し(水浴上)、10%塩酸5mLを加えて加温し(30分間)、ろ過し(ろ紙 No.5A)、そして定容する(メスフラスコ(100mL))。得られた溶液について原子吸光光度計により吸光度を測定する(波長:279.4nm、フレーム:空気−アセチレン)。
【0041】
セレン:2,3-ジアミノナフタレン蛍光光度法による。詳細には、乾燥酵母菌体をケルダールフラスコに秤取し、硝酸10〜20mL、次いで過塩素酸10〜15mLを加え、加熱分解し、放冷し、10%塩酸3mLを加え、加温し(沸騰水浴中で30分間)、トールビーカーに移す(100mL容)。0.1mol/L EDTA溶液4mL、次いで20%塩酸ヒドロキシルアミン溶液2mLを加え、10%塩酸または10%アンモニア水でpH調整する(pH1〜1.5)。水で約50mLとし、0.1% 2,3-ジアミノナフタレン5mLを加え、加温し(水浴中、50℃で30分間)、分液ロート(200mL容)に移し、シクロヘキサン10mLを加え、振とうし(5分間)、静置する。得られたシクロヘキサン層について、蛍光分光光度計により測定する(励起波長:378nm、蛍光波長:520nm)。
【0042】
モリブデン:IPC発光分析法による。詳細には、乾燥酵母菌体をビーカーに秤取し、灰化し(電気炉、500℃で5〜6時間)、20%塩酸を加え、蒸発乾固し(100℃ホットプレート)、10%塩酸(試験溶液が1%塩酸になるように添加)を加え、次いで水を少量添加する。加温し(100℃ホットプレートで30分間)、ろ過し(ろ紙 No.5A)、そして定容する(メスフラスコ)。得られた溶液についてICP発光分析装置により測定する。
【0043】
クロム:総クロムとして、ジフェニルカルバジド吸光光度法(融解)により測定する。詳細には、乾燥酵母菌体0.5〜2gをジルコニウムるつぼに秤取し、灰化し(500℃で5〜6時間)、過酸化ナトリウム2gを加え、融解し(600℃で5分間)、融解後直ちにビーカー(300mL)にるつぼごと移し、水を加えて内容物を溶かす。得られた液を煮沸し(5分間)、定容し(メスフラスコ(100mL))、ろ過し(ろ紙 No.5B)、分取し(Crとして1〜10μgをビーカーに移す)。(1+9)硫酸3mLを加え、0.3%過マンガン酸カリウム溶液2滴を加え、煮沸し(5分間)、急冷し、20%尿素溶液5mLを加え、2%亜硝酸ナトリウム溶液を加え、メスフラスコ(50mL)に写し、1%ジフェニルカルバジド溶液1mLを加え、定容し、10分間放置する。得られた溶液について吸光光度計により吸光度を測定する(波長:540nm)。
【0044】
マグネシウム:原子吸光光度法による。詳細には、乾燥酵母菌体2gを秤取し、灰化し(500℃で1〜5時間)、塩酸乾固し、塩酸抽出し、ろ過し、そして定容する。得られた溶液を分取し、0.5%ストロンチウム溶液となるように塩化ストロンチウム溶液を加え、定容し、原子吸光光度計により吸光度を測定する(波長:285.2nm、フレーム:空気−アセチレン)。
【0045】
本発明に用いられる酵母は、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母であり、好ましくはサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)であり、より好ましくはサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)FT-4株(FERM BP-8081)である。
【0046】
本発明に用いられる代表的なパン酵母であるサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)FT-4株は、本明細書の実施例に記載された手順により得られたものであるが、その菌学的性質は以下に記載したとおりである。この菌株は、日本国つくば市東1丁目1番地1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所へ2002年6月20日付けで寄託され、FERM BP-8081の受託番号が付与されている。
【0047】
<サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)FT-4株の菌学的性質>
(1) 形状 YPD培地で培養した菌体を顕微鏡にて観察した。
(2) 大きさ 同様にYPD培地で培養した菌体を顕微鏡にて観察した。
(3) 胞子形成 YPD寒天培地で培養した菌体をSharman寒天培地に接種し、20〜25℃で3〜10日間培養し、顕微鏡で胞子形成の有無を確認した。尚、YPD培地、YPD寒天培地およびSharman寒天培地の組成を表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 0004226890
【0049】
(4) 炭素源の資化性と発酵性:資化性の分析は、YPD寒天培地で培養した新鮮な菌体を一白金耳滅菌水5mLに懸濁した後、滅菌水にて2回菌体を遠心集菌洗浄し、再度、滅菌水5mLに懸濁した液を各種炭素源を添加、滅菌した培地(Yeast nitrogen base 0.67g、各種炭素源0.1g、水10mL)5mLを入れたチューブ(Sarstedt tube 101mm×16.5mm)に0.1mL接種し30℃にて48時間振とう培養後、660nmの吸光度を測定し生育状況を濁度で判定した。発酵性は、同様に調整した菌体懸濁液を同培地10mLとダーラム管を入れたガラス試験管(180mm×15mm)に0.1mL接種し、30℃にて1週間静置培養した後、ダーラム管中の気泡の有無を確認した。
(5) 硝酸塩の資化性:Sarstedtチューブに硝酸塩培地(Yeast carbon base 1.17g、硝酸カリウム7.8g、水10mL)5mLを分注、滅菌し、炭素源の資化性試験と同様に調整した菌体懸濁液を0.1mL接種し、30℃で48時間振とう培養後、660nmの吸光度を測定し生育状況を濁度で判定した。
(6) ビタミン要求性:Sarstedtチューブにビタミン欠乏培地(Vitamin free-base1.67g、各ビタミン溶液0.5mL、水10mL)5mLを分注、滅菌(ビタミン溶液は滅菌冷却後、無菌フィルターを通し添加)した後、炭素源の資化性試験と同様に調整した菌体懸濁液を0.1mL接種し、30℃で48時間振とう培養後、660nmの吸光度を測定し生育状況を濁度で判定した。
【0050】
【表3】
Figure 0004226890
【0051】
表3の結果から供試菌株はサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)と同定される。
なお、この菌株に関しては、本願と同じ出願人により、国際出願PCT/JP02/06844が出願されている。
【0052】
殺菌酵母である本発明の酵母は、上記のような酵母から、例えば糖蜜培地を用いて、シード培養(前培養)、本培養、洗浄、殺菌、乾燥等の工程を経て製造することができる。シード培養や本培養のための培地としては、従来の酵母生産に用いられる培地、例えば糖蜜培地を用いることができる。培地へのミネラルの添加、糖の補給も、目的に応じて適宜行うことができる。本培養終了後、得られた酵母は、所望により遠心分離や水等の適切な液体での数回の洗浄によって、培地および培地成分を除去し、酵母液とすることができる。これを殺菌し、所望により乾燥して、殺菌酵母または乾燥殺菌酵母とすることができる。
【0053】
本発明者らは、さらなる検討により、特定の殺菌法を用いて得られた殺菌酵母は、従来品に比較してさらに香気・呈味が低減されうることを見いだした。より詳細には、殺菌酵母の製造において、通電加熱により殺菌上有効な温度、例えば130℃で、好ましくは125℃以下で、より好ましくは120℃以下で、さらに好ましくは115℃以下で行うと、驚くべき程度にまで香気・呈味が低減されうることがわかった。
【0054】
通電加熱殺菌(ジュール加熱殺菌ということもある)は、殺菌対象に直接電気を通電させることにより、対象自体を自己発熱させ、殺菌する方法である(例えば、特許平5-33024号、特開2002-17244号参照)。一般に食品の加熱殺菌は、任意の殺菌温度に達した後その温度で一定時間保持し、完全な殺菌を行うが、通常のの加熱方法は間接的(熱源から、熱伝導、対流等によって食品に熱が伝わる)であるから、熱源に近い面から加熱が始まる。そのため中心温度が意図した温度に達するまで時間がかかり、また、熱源に近い面は意図した以上の温度にまで加熱されてしまうことがある。これに対し、通電加熱殺菌は、自己発熱であるため、急速加熱が可能であり、また加熱管内の対象物を比較的均一に加熱することができる。そのため、対象の加熱劣化が少なく、製品ロス少ない、食材の色、味、香りを損なわない等の利点が得られる。このような観点から、通電加熱殺菌は、これまでかまぼこ等の水産すり身、ジャム、あん等の製造工程での殺菌に用いられてきた。しかしながら、また、酵母の殺菌のために用いるのは本発明が初めてである。
【0055】
本発明者らの検討によれば、酵母を対象として通電加熱を行おうとすると、予備加熱時(50℃〜60℃)に発泡が生じるという不都合があった。これは、主として殺菌対象に含まれる炭酸ガスが原因と考えられた。そこで、予備加熱温度および/または背圧を適当な範囲に設定することを試みた。その結果、発泡をコントロールすることができるようになり、酵母への通電加熱殺菌の適用が可能となった。そればかりか、酵母の場合は通電加熱殺菌により香気・呈味がより低減されるという、これまで通電加熱殺菌が適用されてきた食品においては存在しなかった効果が得られることがわかった。
【0056】
すなわち、本発明は、
(d’)酵母が通電加熱により殺菌上有効な温度で(好ましくは125℃以下で、より好ましくは120℃以下で、さらに好ましくは115℃以下で)、殺菌されたものであること、
なる条件を満たす酵母をも提供する。通電加熱の際、発泡による不安定化を生じないような温度で、例えば、60℃以上、好ましくは65℃、より好ましくは70℃で予備加熱を行うことができる。また、同様の観点から、背圧を0.20Mpa〜0.50Mpa、好ましくは0.25Mpa〜0.45Mpa、より好ましくは0.30Mpa〜0.40Mpaとすることができる。予備加熱温度が65℃〜75℃であり、背圧が0.32Mpa〜0.38Mpaである通電加熱殺菌によりえられた酵母は、本発明の好ましい態様の一つである。
【0057】
通電加熱以外の通常の加熱殺菌方法、例えば、高周波、マイクロ波、赤外線または遠赤外線を用いた加熱殺菌方法、熱源としてプレートを用いた殺菌方法であっても、殺菌を実質的に130℃以下(好ましくは125℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは115℃以下)で行うことが可能であれば、同様の香気・呈味の低減効果が得られると考えられる。したがって、本発明は、
(d)酵母が130℃以下で(好ましくは125℃以下で、より好ましくは120℃以下で、さらに好ましくは115℃以下で)殺菌されたものであること、
なる条件を満たす酵母をも提供する。殺菌を実質的に130℃以下(好ましくは125℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは115℃以下)で行うとは、熱源に近い面が130℃以下に加熱されることがなく、かつ熱源に遠い部分であっても殺菌上有効な温度で殺菌されるように加熱を行うことを意味し、これは、例えば殺菌のための設備の設定温度を、例えば105℃以下、110℃以下とする等により達成可能である。
【0058】
殺菌のための設備としては、公知のものを用いることができる。また、殺菌を行う段階は、殺菌が有効に行われ、かつ酵母の香気・呈味の低減が達成される限り、特に限定されない。
【0059】
上述の殺菌条件により製造される酵母であって、ミネラルの、好ましくは亜鉛、鉄、銅およびマンガンから選択される1種の、より好ましくは亜鉛の含有量が、3,000ppm〜300,000ppm、好ましくは3,000ppm〜10,000ppm、より好ましくは3,000ppm〜9,000ppmである酵母は、本発明の好ましい態様の一つである。
【0060】
本発明はまた、香味・呈味の低減された本発明の酵母を含む栄養強化食品素材およびそのような栄養強化食品素材を含む食品をも提供する。本明細書でいう「食品」は、特に示した場合を除き、経口摂取されるもの一般をいい、食品および飲料が含まれる。例えば、治療食(濃厚流動食、嚥下障害用食品、その他の治療食)、アスリート向け製品(飲料、粉末プロテイン)、栄養調理食品(ブロック状食品、飲料、ゼリー飲料、粉末、シリアル)、デザート(プリン、チルドゼリー、ドライゼリー、ババロア、ヨーグルト、チーズ)、ペースト状食品(ジャム、ピーナッツクリーム、チョコクリーム、ゴマペースト、海苔佃煮、マヨネーズ、練りわさび、練り辛子)、米・麺類(生麺、チルド麺、スナック麺、即席麺、うどん、そば、中華麺、スパゲッティ、米飯、おかゆ、もち)、パン類(食パン)、皮類(餃子用、シュウマイ用、ワンタン用、春巻き用)、総菜(ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、シュウマイ、春巻き、ふりかけ、お茶漬け、佃煮、ハム、ソーセージ、ベーコン、水産練り製品(かまぼこ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ、魚卵加工品)、豆腐)、ミックス粉(バッター粉ミックス、お好み焼きミックス、ホットケーキミックス)、液体(ドレッシング、カレー、シチュー、ラーメンスープ、スパゲッティソース、スープ(うどん用、そば用、コンソメスープ、ポタージュスープ、コーンスープ、トマトスープ、シーフードスープ)、醤油、ソース、加工酢、みりん、みりん風調味料、たれ(焼き肉用、すき焼き用、しゃぶしゃぶ用、焼き鳥用、豆腐用)、麺つゆ)、飲料(豆乳、粉末飲料、ジュース、コーヒー、ココア、紅茶、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、炭酸飲料、機能性飲料)、菓子(スナック、クッキー、ビスケット、生菓子、羊羹類、クラッカー、プレッツェル、キャラメル、チョコレート、アイスクリーム、キャンディ、錠菓、グミ菓子、ガム、ウエハース、米菓、落雁、ケーキ)、サプリメント(ハードカプセル、ソフトカプセル、打錠)、果実加工品、野菜加工品(漬物)、油脂加工品(マーガリン)、大豆加工品(きな粉)、牛乳または乳製品(バター)、調味料(顆粒、フリーズドライみそ汁、フリーズドライ固形スープ、乾燥調味料、味噌)、その他(納豆、卵豆腐、茶碗蒸し、トマト加工品)が含まれる。
【0061】
本発明の酵母または酵母を含む栄養強化食品素材の食品への配合量は、その食品の対象となる者(例えば、成人、子供、高齢者、男性、女性、病者、健常者、アスリート)、目的とする効果(例えば、特定の成分の補給・強化、栄養バランスの改善、疾病の予防・治療、健康維持)、その食品が摂取される場面・頻度(例えば、家庭、学校、病院・施設、ジム、給食として、弁当として、毎食、毎日、定期的に、恒常的に、必要な都度)等を考慮して、適宜設計することができる。より詳細には、配合量については、例えば、1以上の本発明の酵母の成分に着目し、その成分の補給のために、成人男子に一日に必要とされる量の約1/10〜全量が一食当たりに含まれるような比で配合することができる。
【0062】
また、配合の段階も、適宜選択することができる。本発明の酵母の特性を著しく損なわない限り配合の段階は特に制限されない。例えば、食品製造の初期の段階に原材料に配合することができる。
【0063】
本発明の酵母または酵母を含む栄養強化食品素材(以下、「本発明の酵母等」ということもある。)の添加により、所望のミネラル成分の補給・強化と、酵母由来の他の栄養成分をバランスよく含有しつつ、酵母由来の香味・呈味が低減され、栄養バランスのみならず、味・香りに優れた各種食品を得ることができる。
【0064】
本発明の酵母等は、治療食(濃厚流動食、嚥下障害用食品、その他の治療食)に添加することができる。
本発明の酵母等は、アスリート向け製品(飲料、粉末プロテイン)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、アスリート向け食品に良好なのどごしと口腔内への残存感の減少をも与えうる。
【0065】
また、本発明の酵母等は、栄養調理食品(ブロック状食品、飲料、ゼリー飲料、粉末、シリアル)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、栄養調理食品に粉臭さの減少と香ばしい香りの上昇をも与えうる。
【0066】
また、本発明の酵母等は、デザート(プリン、チルドゼリー、ドライゼリー、ババロア、ヨーグルト、チーズ)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、デザートにざらつき感の減少をも与えうる。
【0067】
また、本発明の酵母等は、ペースト状食品(ジャム、ピーナッツクリーム、チョコクリーム、ゴマペースト、海苔佃煮、マヨネーズ、練りわさび、練り辛子)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、ペースト状食品に保型性の向上、乾燥臭や刺激臭の低減をも与えうる。
【0068】
また、本発明の酵母等は、米・麺類(生麺、チルド麺、スナック麺、即席麺、うどん、そば、中華麺、スパゲッティ、米飯、おかゆ、もち)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、米・麺類に歯切れのよい食感を与えると同時に、米・麺類の粉臭さを抑制しうる。
【0069】
また、本発明の酵母等は、総菜(ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、シュウマイ、春巻き、ふりかけ、お茶漬け、佃煮、ハム、ソーセージ、ベーコン、水産練り製品(かまぼこ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ、魚卵加工品)、豆腐)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、総菜および水産練り製品において獣臭を軽減し、焼成時のロースト感向上、植蛋臭のマスキング、テクスチャー向上等に寄与しうる。
【0070】
また、本発明の酵母等は、ミックス粉(バッター粉ミックス、お好み焼きミックス、ホットケーキミックス)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、ミックス粉において、粉っぽさの軽減、ロースト感の向上、サク感および歯切れの向上等に寄与しうる。
【0071】
また、本発明の酵母等は、液体(ドレッシング、カレー、シチュー、ラーメンスープ、スパゲッティソース、スープ(うどん用、そば用、コンソメスープ、ポタージュスープ、コーンスープ、トマトスープ、シーフードスープ)、醤油、ソース、加工酢、みりん、みりん風調味料、たれ(焼き肉用、すき焼き用、しゃぶしゃぶ用、焼き鳥用、豆腐用)、麺つゆ)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、液体おいて、コク味、熟成感を向上させうる。
【0072】
また、本発明の酵母等は、飲料(豆乳、粉末飲料、ジュース、コーヒー、ココア、紅茶、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、炭酸飲料、機能性飲料)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、飲料に対し、乾燥臭の軽減と溶解性の向上をもたらしうる。
【0073】
また、本発明の酵母等は、菓子(スナック、クッキー、ビスケット、生菓子、羊羹類、クラッカー、プレッツェル、キャラメル、チョコレート、アイスクリーム、キャンディ、錠菓、グミ菓子、ガム、ウエハース、米菓、落雁、ケーキ)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、菓子において、酸化臭の軽減、サク感の向上、ロースト感の向上、歯への付着抑制に寄与しうる。
【0074】
また、本発明の酵母等は、サプリメント(ハードカプセル、ソフトカプセル、打錠)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、サプリメントの溶解性の向上と口腔内への付着軽減に寄与しうる。
【0075】
また、本発明の酵母等は、調味料(顆粒、フリーズドライみそ汁、フリーズドライ固形スープ、乾燥調味料、味噌)に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、調味料の固結軽減、流動性向上、コク味向上に寄与しうる。
【0076】
また、本発明の酵母等は、納豆、卵豆腐、茶碗蒸し、トマト加工品に添加することができる。本発明の酵母等の添加は、これらの食品において、刺激臭の軽減、青臭さのマスキング、あと味(渋み等)の軽減に寄与しうる。
【0077】
【実施例】
<サッカロミセス・セレビジエFT-4株の育種とスクリーニング>
少なくとも強い冷凍耐性を有するサッカロミセス・セレビジエに属する二倍体酵母菌株(当社YFイースト)の胞子を発芽させて得た一倍体酵母菌株と、冷凍耐性を有しないが酵母特有の異味、異臭が弱いサッカロミセス・セレビジエに属する二倍体酵母菌株(当社保有の清酒用酵母)の胞子を発芽させて得た一倍体酵母菌株とを有性生殖交配させることにより多数の二倍体酵母菌株を得た。
【0078】
次にこれらの菌株について冷凍耐性の一次スクリーニングを実施した。13mL容チューブにYPD液体培地3mLを入れ、121℃、15分滅菌した後、各菌株を一白金耳、接種し30℃において20時間振とう培養した。得られた菌体を3,000rpm、15分遠心分離し集菌後、冷水にて2回洗浄、集菌した。集菌した菌体にLF培地(グルコース10g、マルトース30g、スクロース30gを蒸留水にて1Lにメスアップ)3mLを加え、30℃にて1時間静置発酵後、3,000rpm、10分遠心分離し、上清のエタノール含有量をバイオセンサーBF-4(王子計測機器社製)にて測定した後、再度、vortexにて懸濁して-20℃で2週間冷凍保存した。2週間後、30℃で1時間、解凍しつつ発酵させた後、3,000rpm、10分遠心分離し、上清のエタノール含有量をバイオセンサーBF-4(王子計測機器社製)にて測定した。得られた数値から冷凍前のエタノール生成量を引いた値を解凍後の生成量とし、最終エタノール濃度に占める割合が40%以上の菌株を選抜した。
【0079】
冷凍耐性の二次スクリーニングは500mL容バッフル付き三角フラスコに100mLのYPD液体培地を分注し、121℃、15分滅菌した後、各菌株を一白金耳、接種し30℃において20時間振とう培養した。培養液を遠心チューブに移し、3000rpm、15分遠心分離、集菌後、冷水にて2回洗浄、菌体を得た。
【0080】
次に得られた菌株の低糖生地発酵力を測定した。低糖生地の原料をグラムミキサーに投入し、ミキシングタイム2分、目標捏上温度30℃にて生地を調製した。次いで、得られた生地を30℃の恒温器中にて60分間発酵させ、発酵終了後、30gに分割、丸目をした後、その生地玉を-20℃で冷凍した。1日後に38℃で120分間、解凍しつつ発酵させた際に発生する炭酸ガス発生量をファーモグラフ(アトー社製)にて測定し、冷凍1日後の発酵力とした。一方、1ヶ月冷凍した同じ生地を38℃で120分間、解凍しつつ発酵させた際に発生する炭酸ガス発生量を同様にファーモグラフにて測定し、冷凍1ヶ月後の発酵力とした。冷凍1日後の発酵力を100として、冷凍1ヶ月後の発酵力の割合を発酵力残存率とし、この値が80%以上の菌株を選抜した。
【0081】
次に得られた冷凍耐性菌株の酵母特有の異味、異臭についてスクリーニングを実施した。一次スクリーニングは各菌株を上記試験と同様に500mLバッフル付き三角フラスコにて培養、集菌、洗浄し、菌体を得た。これらの菌体について被験者10名にて官能試験を実施、酵母特有の異味、異臭が少ない菌株を選抜した。
【0082】
二次スクリーニングは菌体を蒸留水にて固形分20%に調整後、ビーズ破砕し上清のイソ酪酸含有量をガスクロマトグラフィー(島津社製)にて測定した。得られたイソ酪酸含有量が菌体乾燥固形分あたり200ppm以下の菌体を選抜した。
【0083】
上記の条件を満たし、製パン試験においても良好な結果が得られた菌株が4株選択され、内、一つをサッカロミセス セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)FT-4株と命名した。
【0084】
<実施例1(亜鉛酵母の製造)>
500mLバッフル付き三角フラスコにYPD培地200mLを入れ、加熱殺菌後、FT-4株(FERM BP-8081)を一白金耳移植し、30℃、24時間振とう培養し(フラスコ培養)、その培養液を30Lジャーファーメンター中の糖蜜培地15Lに接種し、下記培養条件で培養した(30L培養)。この培養液をシード用酵母とした。300Lジャーファーメンターに本培養用培地150Lを調整後、加熱殺菌後、シード用酵母を全量接種し、下記培養条件で培養した(300L培養)。
【0085】
【表4】
Figure 0004226890
【0086】
培養終了後、直ちに培養液を遠心分離し、菌体分離後、培養液と同量の水で3回懸濁、遠心分離を繰り返し、残存硫酸亜鉛等の培地成分を除去した。最終的に水分65〜67%の酵母液が得られた。
【0087】
この酵母液を、プレート殺菌機にて110〜115℃、13秒で殺菌し、80℃に冷却した。
冷却後、直ちに、スプレードライヤー(アトマイザー式スプレー乾燥機「モービルマイナー"2000"」ニロジャパン株式会社製)にて入り口温度180℃、出口温度約90℃にて乾燥し、水分約2〜5%、亜鉛含量約5,800ppmの乾燥酵母を得た。
【0088】
<実施例2(通電殺菌による乾燥酵母の製造)>
FT-4株(FERM BP-8081)を用い、実施例1と同様に、フラスコ培養、30L培養、300L培養を行った。得られた水分65〜67%の酵母液を、流速80L/hrにて通電加熱殺菌機(フロンティアエンジニアリング社製)に送り、余熱機(熱交換機)にて70℃に昇温し、その後、ジュール加熱管(15A)2本にて通電加熱した。105℃、110℃、115℃、120℃または125℃で13秒保持し、殺菌した。系内は0.35Mpaに保持した。
【0089】
その後、熱交換機にて、約30℃に冷却した。殺菌酵母液を、再度60℃に昇温し、直ちに、スプレードライヤー(アトマイザー式スプレー乾燥機「モービルマイナー"2000"」ニロジャパン株式会社製)にて、入り口温度180℃、出口温度約90℃で乾燥し、水分約2〜5%、亜鉛含量約5,800ppmの乾燥酵母を得た。
【0090】
<比較例1>
実施例1の方法と同様に、パン酵母(商品名「45イースト」、日本たばこ産業(株)製)を植菌し、フラスコ培養、30L培養、300L培養を行い、プレート殺菌後、スプレードライヤーにて乾燥して、パン酵母を得た。
【0091】
<評価1>
(1)香気成分の分析:
製造例1の乾燥酵母、比較例1のパン酵母、および市販の乾燥ビール酵母(アサヒビール薬品株式会社製 ビール酵母食品(栄養補助食品))について、香気成分を分析した。
【0092】
i)抽出方法:
乾燥酵母の香気成分抽出は、75μm Carboxen-PDMS (Black)(スペルコ社製)(以下、「吸着用ファイバー」という。)を使用した固相抽出により行った。
【0093】
乾燥酵母粉末それぞれの5%水溶液5.25gに、1%cyclohexanolを内標として4.5μL添加し、15mLクリアーバイアル(スペルコ社製27159)に入れ、スターラーにて攪拌しながら40℃に保温した。温度が安定したら、上部より吸着用ファイバーを挿入し、吸着部を露出した状態で保温温度40℃で1時間保持した。その後、吸着用ファイバーを取り出してGC-MSに装着し、分析を行った。
【0094】
ii)分析方法:
香気成分の分析に用いた器機・条件は、以下のとおりであった。
器機・条件
GC-MS:HP6890シリーズ(ヒューレッドパッカード社製);
カラム:PTA-5(スペルコ社製) 30m*0.32mm*1.5μm;
流速:1.5mL/min(44cm/sec);
注入温度:250℃;
昇温条件:40℃〜250℃
(40℃で2min保持後10℃/minで昇温し、250℃達温後、2min保持);
イオン化電圧: 70.1eV
得られたガスクロマトグラムから、内標のピーク面積を分母とし、それぞれの物質のピーク面積を分子として、内標との比率でヘッドスペースの香気成分を算出した。結果は表5に示した。
【0095】
【表5】
Figure 0004226890
【0096】
製造例1の乾燥酵母は、他の乾燥パン酵母、乾燥ビール酵母に比べ、ジメチルジスルフィド、ヘキサナール、ヘプタナール、3メチルチオプロパナール、ベンツアルデヒド、ジメチルトリサルファイド、オクタノール、ベンゼンアセトアルデヒドおよびノナナールが減少、もしくは検出限界以下であった。
【0097】
<評価2(官能評価)>
製造例1の乾燥酵母、比較例1のパン酵母および市販の乾燥ビール酵母(アサヒビール薬品株式会社製 ビール酵母食品(栄養補助食品))について、官能評価を実施した。
【0098】
評価は、20代〜50代の官能試験について訓練された20名により、臭いについては、香気の不快な臭いが強い(5)〜香気の不快な臭いが無い(0)、の6段階評価とし、味については、呈味が非常に強い(5)〜呈味が非常に弱い(0)、の6段階評価とし、評点法を用いて実施した。結果は表6に示した。
【0099】
【表6】
Figure 0004226890
【0100】
製造例1の乾燥酵母は、他の乾燥パン酵母、乾燥ビール酵母に比べ、味、臭いとも低減されていることがわかった。
香気が強いと、加工食品等への栄養強化として添加した場合に、製品の品位を壊すため、添加量が制限される。香気はできるだけ少ない方が良く、かつ不快な臭いがない方が、製品設計上においても有利である。このような観点から、製造例1の乾燥酵母は、他の酵母と比べ、勝っているといえる。
【0101】
<評価3(通電殺菌を用いた乾燥酵母の香気成分の分析)>
実施例2の乾燥酵母との香気成分を比較した。測定は、評価1と同一の条件で実施した。製造例1の乾燥酵母と比較した結果を表7に示した。
【0102】
【表7】
Figure 0004226890
【0103】
<評価4(通電殺菌を用いた乾燥酵母の官能試験)>
実施例2で得られた乾燥酵母について、上記評価2と同様の官能評価を実施した。結果を、実施例1で得られた乾燥酵母と比較して表8に示した。
【0104】
【表8】
Figure 0004226890
【0105】
実施例2の通電殺菌による乾燥酵母は、実施例1のプレート殺菌による乾燥酵母と比べて、香気および香味の点でさらに良好であることが明らかになった。特に、110℃〜115℃で殺菌したものが呈味および香気がより低減されていた。
【0106】
<評価5(水溶性窒素の測定)>
実施例1の乾燥酵母と比較例1のパン酵母、市販の乾燥ビール酵母(アサヒビール薬品株式会社製 ビール酵母食品(栄養補助食品))ついて、水溶性窒素の含量について比較検討した。
【0107】
それぞれの酵母サンプルを2g秤量し、蒸留水10g添加し、充分に攪拌した後、5分間静置した。その後、遠心分離し、上清を0.2μmフィルターでろ過することにより残存酵母等の微粒子を除去した。得られた溶液について、ケルダール法を用いて窒素量を測定した。また各乾燥酵母の全窒素もケルダール法にて測定した。
【0108】
評価は、水溶性窒素浸出率(%)として、水分へ移行した窒素分/酵母全窒素×100で示した。結果を表9に示した。
【0109】
【表9】
Figure 0004226890
【0110】
実施例1の酵母の窒素浸出は、パン酵母、ビール酵母に比べて、約半分であることがわかった。酵母中の水溶性窒素が少量であるほうが呈味が少なく、食品に添加した場合に最終製品の味のバランスを壊さない。そのため、水溶性窒素が少量である酵母は、よりたくさんの量を食品に添加することができ、酵母の種々の栄養成分を食品の栄養強化のために利用しやすくなる。また、そのまま摂取する場合においても、呈味が少ないほうが摂取しやすい。したがって実施例1の乾燥酵母は、食品素材として、大変優れているといえる。
【0111】
<実施例3(実施例1の乾燥酵母を使った食品の製造)>
実施例1の乾燥酵母を用いて、野菜ジュース、ゼリー飲料、ふりかけを製造した。
【0112】
【表10】
Figure 0004226890
【0113】
【表11】
Figure 0004226890
【0114】
【表12】
Figure 0004226890
【0115】
<比較例2>
実施例1の乾燥酵母の代わりに比較例1の酵母、市販の乾燥ビール酵母(アサヒビール薬品株式会社製 ビール酵母食品(栄養補助食品))を用いて、実施例3と同様の配合で野菜ジュース、ゼリー飲料、ふりかけを試作した。
【0116】
<評価5>
20代〜50代の官能試験について訓練された20名により、味(商品性)については、商品として非常においしくない(5)〜商品として非常においしい(0)、臭い(香気)については、香気の不快な臭いが強い(5)〜香気の不快な臭いが無い(0)で、評点法を用いて評価した。結果は表13に示した。
【0117】
【表13】
Figure 0004226890
【0118】
(野菜ジュース)
野菜ジュースには各酵母を1%添加したが、実施例1の乾燥酵母を添加したものは、比較例1のパン酵母、市販のビール酵母の場合に比べて、野菜の風味を壊さず、不快臭の少ないのものであると評価された。比較例1のパン酵母または市販のビール酵母を添加したものは、野菜ジュースにふさわしくない呈味を感じる者が多く、かつ、通常の野菜ジュースにはない不快な臭いを感じる者が多かった。
【0119】
また、実施例1の酵母は、野菜の風味を壊さないばかりか、トマト、セロリーの風味を強める効果も認められ、特に、トマトとの相性は良好であった。
(ゼリー飲料)
ゼリー飲料には乾燥酵母を1%添加したが、実施例1の乾燥酵母を添加したものは、酵母の呈味香気が認識されず、通常のヨーグルト味と感じられた。また、酵母の添加により、ヨーグルトのこく味をより感じさせることがわかった。
【0120】
(ふりかけ)
実施例1の酵母を添加したふりかけは、比較例1のパン酵母または市販のビール酵母の場合と比較して、特に酵母臭を感じさせないばかりか、のりとの相性が非常によく、ふりかけとしてはむしろ添加したほうが良好であることがわかった。
【0121】
<実施例4(実施例2の酵母を使った食品の製造例)>
実施例3と同様の配合で、実施例1の乾燥酵母の代わりに実施例2の乾燥酵母を用いて、野菜ジュース、ゼリーおよびふりかけを製造した。
【0122】
<評価6(実施例4で得られた食品の官能評価)>
官能試験について訓練された20代〜50代の20名により、実施例3で得た食品と実施例4で得た食品との臭いと味とを比較評価した。
【0123】
味(商品性)については、実施例4の食品が実施例3の食品に比べ、非常においしくない(2)〜非常においしい(-2)、臭い(香気)については、香気の不快な臭いが強い(2)〜香気の不快な臭いが無い(-2)で、野菜ジュース、ゼリー飲料、ふりかけそれぞれについて一対比較法を用いて評価した。結果を表14に示した。
【0124】
【表14】
Figure 0004226890
【0125】
(野菜ジュース)
実施例4のジュースは、実施例3のジュースと比較し、さらにトマト、セロリーに加えてにんじんの香りを引き立て、野菜感あふれるジュースとなった。
【0126】
(ゼリー飲料)
実施例4のゼリー飲料は、実施例3のゼリー飲料と比較し、さらにヨーグルトのこく味を増し、発酵乳との相性のよさがはっきりと感じられるようになった。ヨーグルト味をマイルドにし、こく味を付与することがわかった
(ふりかけ)
実施例4のふりかけは、実施例3のふりかけと比較し、のりとの相性のよさに併せて、ごまとの相性のよさが認められ、ごまの香りと風味豊かなふりかけとなった。
【0127】
<実施例5(殺菌温度の検討)>
FT-4株(FERM BP-8010)を500mLバッフルつきフラスコにYPD培地200mLをいれ、加熱殺菌後、一白金耳移植し、30℃、24時間振とう培養し(フラスコ培養)、その培養液を30Lジャーファーメンター中の糖蜜培地15Lに接種し、下記培養条件で培養した(30L培養)。培養物をシード用酵母とした。300Lジャーファーメンターに本培養培地150Lを調整後、加熱殺菌し、シード用酵母を全量接種し、下記培養条件で培養した(300L培養)。
【0128】
【表15】
Figure 0004226890
【0129】
培養終了後、直ちに培養液を遠心分離し、菌体分離後、培養液と同量の水で3回懸濁、遠心分離を繰り返し、残存硫酸亜鉛等培地成分を除去した。最終的に水分65〜67%の酵母液が得られた。
【0130】
この酵母液を、殺菌のため、プレート殺菌機にて、105℃、110℃でそれぞれ13秒で殺菌し、80℃に冷却した。
冷却後、直ちに、スプレードライヤー(アトマイザー式スプレー乾燥機「モービルマイナー"2000"」ニロジャパン株式会社製)にて、入り口温度180℃、出口温度約90℃で乾燥し、水分約2〜5%、亜鉛含量約5,800ppmの乾燥酵母を得た。
【0131】
<評価7>
実施例1で得られた乾燥酵母と、実施例5で得られた乾燥酵母とについて、官能評価を実施した。それぞれの5gの乾燥酵母を100mLの脱イオン水に溶解し、40℃に保温したものを被験サンプルとして供した。評価は、20代〜50代の官能試験について訓練された20名で実施した。
【0132】
味については、実施例1で得られた酵母と比較して、呈味が非常につよい(5)〜変わらない(3)〜呈味が非常に強い(0)、臭いについては香気が強い(5)〜変わらない(3)〜香気が無い(0)で評価した。結果は表16に示した。
【0133】
実施例5の酵母は、実施例1で得られた酵母に比較して呈味・香気ともより少なく、より好ましいものと評価された。
【0134】
【表16】
Figure 0004226890
【0135】
<評価8(アミノ酸分析)>
実施例1で得られた乾燥酵母、実施例2得られた乾燥酵母について水溶性窒素に占める遊離アミノ酸量を測定した。
【0136】
それぞれの乾燥酵母1gを、10gの蒸留水に溶解し、遠心後、上清を0.2μmのろ紙で濾過したもの(以下、単に「上清」という。)を試料とした。上清を1/10に希釈し、アミノ酸アナライザー(L-8500 日立製作所製)により分析し、アミノ酸量を算出した。また、ケルダール法で、上清の総窒素量も測定した。結果を表17に示した。
【0137】
【表17】
Figure 0004226890
【0138】
アミノ酸比率は、実施例1の乾燥酵母では3.69であった。一方、呈味・香気ともより低く、良好であった実施例2の乾燥酵母のアミノ酸比率は2.5以下であり、より低かった。特に105℃、110℃、115℃、120℃において殺菌した酵母のアミノ酸比率がとりわけ低く、余計な呈味がより少ないと考えられるため、食品素材として有利であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例1で得られた亜鉛含量の高い乾燥酵母、比較例1の得られた通常のパン酵母および市販のビール酵母それぞれの香気成分を比較したグラフである(評価1参照)。
【図2】 図2は、9つの香気成分の含有量について、実施例1で得られた亜鉛含量の高い乾燥酵母および実施例2において各温度において通電加熱殺菌を実施して得られた各々の乾燥酵母とを比較したグラフである。

Claims (11)

  1. 以下の酵母を、亜鉛含有培地で培養し、殺菌することにより得られる殺菌乾燥酵母:
    清酒酵母と冷凍耐性を有する酵母との交配により生じた酵母株の群から、酵母特有の異味・異臭が少なく、冷凍耐性が大きく及び発酵能が低糖生地においても優れた株をスクリーニングして得られる、下記の性質を有する酵母またはその子孫もしくは変異株であることを特徴とする、サッカロミセス・セレビジエ (Saccharomyces cerevisiae) に属する酵母:
    ア)冷凍耐性を有する、
    イ)YPD液体培地に接種して、30℃、20時間震盪培養して得られる菌体中のイソ酪酸含量が、乾燥菌体を基準として 200ppm 以下である、
    ウ)低糖生地からの発酵能を有する。
  2. 以下の条件を満たす、請求項1に記載の殺菌乾燥酵母:
    (a)内標比で、ジメチルジスルフィド含有量が0.165以下、ヘキサナール含有量が0.085以下、ヘプタナール含有量が0.100以下、3-メチルチオプロパナール含有量が0.045以下、ベンツアルデヒド含有量が0.080以下およびジメチルトリサルファイド含有量が0.090以下であること。
  3. 以下の条件を満たす、請求項2に記載の殺菌乾燥酵母:
    (a)内標比で、ジメチルジスルフィド含有量が0.165以下、ヘキサナール含有量が0.085以下、ヘプタナール含有量が0.100以下、3-メチルチオプロパナール含有量が0.045以下、ベンツアルデヒド含有量が0.080以下、ジメチルトリサルファイド含有量が0.090以下、オクタナール含有量が0.012以下、ベンゼンアセトアルデヒド含有量が0.007およびノナナール含有量が0.019以下であること。
  4. さらに、以下の条件のうち少なくとも1つを満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌乾燥酵母:
    (b)水溶性窒素が全窒素量の20%以下であること;
    (c)亜鉛の含有量が、3,000ppm〜300,000ppmであること。
  5. 以下の条件を満たす、請求項1に記載の殺菌乾燥酵母:
    (a’)内標比で、酢酸エチル含有量が0.200以下、3-メチルプロパナール含有量が0.035以下、2-メチルプロパナール含有量が0.065以下、イソアミルアルコール含有量が0.210以下、ジメチルジスルフィド含有量が0.165以下、酪酸エチル含有量が0.025以下、酢酸イソアミル含有量が0.025以下、2,5-ジメチルピラジン含有量が0.011以下およびベンツアルデヒド含有量が0.080以下であること。
  6. さらに、以下の条件のうち少なくとも1つを満たす、請求項5に記載の殺菌乾燥酵母:
    (b’)水溶性窒素に占めるアミノ酸比率が4.0以下であること;
    (c)亜鉛の含有量が、3,000ppm〜300,000ppmであること。
  7. 130℃以下で殺菌する工程を含む、請求項1〜6のいずれか
    1項に記載された殺菌乾燥酵母の製造方法。
  8. 通電加熱により殺菌上有効な温度で殺菌する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載された殺菌乾燥酵母の製造方法。
  9. 酵母が、サッカロミセス・セレビジエFT-4株(FERM BP-8081)である、請求項1〜6いずれか1項に記載の殺菌乾燥酵母。
  10. 請求項1〜6及び9のいずれか1項に記載の殺菌乾燥酵母を含む、栄養強化食品素材。
  11. 請求項10に記載の栄養強化食品素材を含む食品。
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