JP4218902B2 - コポリマーと疎水性キャビティを有する高分子有機化合物とを含む組成物 - Google Patents

コポリマーと疎水性キャビティを有する高分子有機化合物とを含む組成物 Download PDF

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Description

本発明は改良されたポリマー形成方法に関し、特に、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物を用い、水性系中で、重合単位として、水への溶解度が小さい少なくとも一つのモノマーを含むポリマーを形成する改良された方法に関する。
溶液重合及びエマルション重合を含む水性重合は、一般に、広く行われており、溶液重合の場合、原料モノマー及び得られるポリマーは水溶性であり、エマルション重合の場合、原料モノマーは、水への溶解度はそれほど低いわけではない。しかしながら、水性重合が、
(a)水への溶解度が小さい少なくとも一つのモノマーの溶液重合である場合;又は、
(b)水への溶解度が非常に小さい少なくとも一つのモノマーのエマルション重合の場合には、いくつかの問題がある。また、水性溶液重合の生成物が、水への溶解度が小さい最終ポリマーである場合も問題がある。
これらの問題には、
(1)攪拌シャフトの周囲でのモノマーだまり及び最終製品中のモノマーの液滴の存在によって示される水への溶解度が小さいモノマーの不十分な転化;
(2)多量のゲル又は凝塊;
(3)溶液重合中のエマルション若しくは懸濁ポリマーの生成、又はエマルション重合中の大きな懸濁ポリマー粒子の生成;
(4)相分離又はモノマーの液滴若しくは大きな懸濁粒子又はクリーミング;及び
(5)示差走査熱量計により測定される複数のガラス転移温度によって示される2つの型のモノマーの重合中の不均一な分布に起因する、水への溶解度が大きいモノマー及び水への溶解度が小さいモノマーの異常な(非動的な)分布;
が含まれる。
特にランダムな配置でポリマーを形成する際のこれらの問題を克服するための:
(a)(i)水への溶解度の小さい他のモノマー;又は、
(ii)水への溶解度の大きいモノマー;を有する水への溶解度の小さいモノマーから、水性系中、水性溶液重合又はエマルション重合によって;
(b)水への溶解度が大きいモノマーから形成された場合でも、水への溶解度が小さいポリマーを得る;という試みは、従来、水への溶解度が小さいモノマー又は最終ポリマーを溶解する際、次のような補助手段:
(a)モノマーの総重量を基準として、少なくとも約5〜30重量%の有機溶媒の添加;
(b)水への溶解度の小さいモノマー用の溶媒として機能するコモノマーの使用;又は、
(c)大量の界面活性剤の使用;
の少なくとも一つがなければ満足するものにはならなかった。
例えば、米国特許4,268,641号は、反応を容易にする芳香族、飽和脂肪族、脂環式及びハロゲン化溶媒を含む有機溶媒を必要とする溶液重合による、アクリル酸と疎水性非イオン性界面活性アクリレートとのコポリマー合成を開示している。また、米国特許4,734,205号は、重合を生じさせるために大量の界面活性剤を必要とする、アクリルアミド、アクリル酸又はその塩と、疎水性アルキルアクリルアミド又はアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーの合成を開示している。
米国特許第4,268,641号明細書 米国特許第4,734,205号明細書
有機溶媒又は大量の界面活性剤の添加は、安全性、健康及び環境問題を引き起こす。また、溶媒の添加は、それが添加される水性系を不安定にさせることもある。
本発明者は、水への溶解度が小さいモノマー又は最終ポリマーの溶解を促進する有機溶媒又は大量の界面活性剤を添加することなく、また、有機溶媒及び大量の界面活性剤に伴う安全性、健康、環境及び安定性の問題を生じさせることなく、重合単位として、水への溶解度が小さい少なくとも一つのモノマーを含むポリマーを、溶液又はエマルション重合によって、水性系中で形成する方法を見い出した。
本発明は、重合単位として、水への溶解度が小さい少なくとも1つのモノマーを含むポリマーを形成する水性重合法であって、
(a)水への溶解度が小さい少なくとも一つのモノマーを、疎水性キャビティ(hydrophobic cavity)を有する高分子有機化合物と複合化する(complex)工程;及び、
(b)ポリマーの総重量を基準として、約0.1重量%〜約100重量%の前記の複合化されたモノマーの水への溶解度が小さいモノマー成分と、ポリマーの総重量を基準として、約0重量%〜約99.9重量%の水への溶解度が大きい少なくとも一つのをモノマーとを、水性系において重合させる工程:
を含む方法に関する。
また、該方法は、水への溶解度が小さいポリマーの水性溶液の形成にも有用である。該方法は、従来、水への溶解度が小さいモノマーの溶解を促進させる有機溶媒、コモノマー又は大量の界面活性剤を添加しないとうまく製造できなかった、水への溶解度が小さいモノマーの水溶液ポリマー又はエマルションポリマー、特にランダムコポリマーを、水性系中で重合させるために有用である。また、該方法は、水溶液及びエマルション重合で使用される水への溶解度が小さい連鎖移動剤の効率を改良するのに有用である。
本明細書で使用される用語”水溶性(water soluble)”とは、水中で完全に溶解することを意味し;用語”水への溶解度が小さい(having low water solubility)”とは、水への溶解度が25〜50℃で200ミリモル/リットル以下であることを意味し;用語”水への溶解度が非常に小さい(having very low water solubility)”とは、水への溶解度が25〜50℃で50ミリモル/リットル以下であることを意味し;及び用語”水への溶解度が大きい(having high water solubility)”とは、水への溶解度が25〜50℃で200ミリモル/リットルより大きいことを意味する。本明細書で使用される用語”(メタ)アクリレート”とは、メタクリレート及びアクリレートを意味し、用語”(メタ)アクリル”とは、メタクリル及びアクリルを意味し、及び用語”(メタ)アクリルアミド”とは、メタクリルアミド及びアクリルアミドを意味する。本明細書で使用される用語”水性系”とは、水を連続相とし、ポリマーを形成し、又はポリマーを貯蔵及び供給するために、有機溶媒又は大量の界面活性剤を必要としない系で形成され、供給されるポリマーを意味する。
重合方法
本発明は、重合単位として、水への溶解度が小さい少なくとも1つのモノマーを含むポリマーを形成する水性重合法であって、
(1)水への溶解度が小さいモノマーを、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物と複合化する工程;及び、
(2)ポリマーの総重量を基準として、約0.1重量%〜約100重量%の前記の複合化されたモノマーの水への溶解度が小さいモノマー成分と、ポリマーの総重量を基準として、約0重量%〜約99.9重量%の水への溶解度が大きい少なくとも一つのをモノマーとを、水性系において重合させる工程:
を含む方法である。
また、該方法は、水への溶解度が小さいポリマーの水性溶液の形成にとっても有用である。溶液ポリマーの場合、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物を、ポリマーが形成された後、任意の第3工程において該ポリマーから解離する(decomplex)ことができる。エマルションポリマーの場合、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物は、ポリマーが形成される際又は前に、ポリマーから自動的に解離すると考えられており、更なる解離は必要ではない。
本発明は、有機溶媒又は大量の界面活性剤を使用することなくポリマーを製造する方法を提供するものであるが、これらの溶媒及び界面活性剤は重合中に存在させることができる。しかしながら、重合中、溶媒が存在せず、またより低量の界面活性剤しか存在しないことが好ましい。重合工程において、有機溶媒及び大量の界面活性剤を含むことも可能である。
複合化工程
本発明の第1工程では、水への溶解度が小さいいずれかのモノマーと疎水性キャビティを有する高分子有機化合物とを複合化する。本発明の方法で有用な疎水性キャビティを有する高分子有機化合物には、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体;シクロイヌロヘキソース(cycloinulohexose)、シクロイヌロヘプトース(cycloinuloheptose)及びシクロイヌロクトース(cycloinuloctose)などの疎水性キャビティを有する環状少糖類;カリキサレン(calyxarene);及びキャビタンド(cavitand)が挙げられる。
本発明の方法において有用なシクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体は、個別の重合条件のもとに選択されるシクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体の溶解度によってのみ制限される。本発明の方法に有用である適当なシクロデキストリンには、制限されるものではないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンが挙げられる。本発明の方法に有用である適当なシクロデキストリン誘導体には、制限されるものではないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンのメチル、トリアセチル、ヒドロキシプロピル及びヒドロキシエチル誘導体が挙げられる。好ましいシクロデキストリン誘導体はメチル−β−シクロデキストリンである。
本発明の方法で有用なシクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトースなどの疎水性キャビティを有する環状少糖類は、Takaiなどの、Journal of OrganicChemistry,1994,volume59,number11,2967−2975ページに説明されている。
本発明の方法で有用なカリキサレンは、米国特許第4,699,966号、国際公開番号WO89/08092号、並びに日本国特許公開番号1988/197544号及び1989/007837号に開示されている。
本発明の方法に有用なキャビタンドはイタリア特許出願22522A/89、及びMoranなどの、Journal of the American Chemical Society,volume184,1982,5826−5828ページに開示されている。
本発明の方法により重合を行うのに有用な水への溶解度が小さいモノマーには、制限されるものではないが、第一アルケンなどのα,β−エチレン性不飽和モノマー;スチレン及びアルキル置換スチレン;α−メチルスチレン;ビニルトルエン;ビニル2−エチルヘキサノエート、ビニルネオデカノエートなどのC〜C30カルボン酸のビニルエステル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;オクチルアクリルアミド及びマレイン酸アミドなどのN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;ステアリルビニルエーテルなどの、(C〜C30)アルキル基を有するビニルアルキル又はビニルアリールエーテル;メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の(C〜C30)アルキルエステル;脂肪酸及び脂肪アルコールから誘導されるものなどのような(メタ)アクリル酸の不飽和ビニルエステル;ペンタエリトリトール(pentaerythritol)トリアクリレートなどの多官能性モノマー;コレステロールから誘導されるモノマーなどが挙げられる。疎水性モノマーは、ヒドロキシ、アミド、アルデヒド、ウレイド、ポリエーテルなどの官能基を含むことができる。また、本発明の方法は、モノマーの水への溶解度が25〜50℃で少なくとも200ミリモル/リットルであるが、それらの最終ホモポリマーは、水への溶解度が25〜50℃で200ミリモル/リットル以下であるもの、例えば、エチレン、酢酸ビニル、C1837−(エチレンオキシド)20メタクリレート及びC1225−(エチレンオキシド)23メタクリレートのような、長鎖アルコキシ−又はアルキルフェノキシ(ポリアルキレンオキシド)(メタ)アクリレートなどの界面活性剤モノマーを重合する場合に有用である。
疎水性キャビティを有する高分子有機化合物は、2つの方法:
(1)疎水性キャビティを有する高分子有機化合物を、水への溶解度が小さいモノマーと別途混合し、他のモノマーと共に複合化された混合物を反応容器に充填する方法;又は、
(2)疎水性キャビティを有する高分子有機化合物を、モノマー混合物の充填前、充填中、又は充填後に、反応容器に添加する方法;
のいずれかで、水への溶解度が小さいモノマーと複合化することができる。
水への溶解度が小さいモノマーと複合化される、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物のモル比は、高分子有機化合物のタイプ及びモノマーのタイプにより変化する。一般に、高分子有機化合物とモノマーとのモル比は、約5:1〜約1:5000、好ましくは約1:1〜約1:1000、及びもっとも好ましくは約1:1〜約1:500である。溶液中で会合するポリマーを形成する溶液重合の場合には、余分な高分子有機化合物が最終ポリマー溶液の粘度の低減に役立つため、化学量論の範囲、例えば約5:1〜約1:2のモル比を有することが好ましい。もしそうでなければ、触媒量(catalytic range)、例えば約1:10〜約1:1000のモル比でのみ一般に必要とされている。
重合化工程
本発明の第2工程は、ポリマーの総重量を基準として、約0.1重量%〜約100重量%の複合化されたモノマーの水への溶解度が小さいモノマー成分を、ポリマーの総重量を基準として約0重量%〜約99.9重量%の水への溶解度が大きい少なくとも一つのモノマー又は水への溶解度が小さい他のモノマーと、水性系中で重合させることである。
本発明の方法で有用である水への溶解度が大きい適当な任意のモノマーには、制限されるものではないが、アクリル酸及びメタクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、(メタ)アクリロキシプロピオン酸、イタコン酸、マレイン酸又は無水物、フマル酸、クロトン酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルフマル酸、モノアルキルイタコン酸などの少なくとも一つのカルボン酸基を含むモノマーのような酸官能基を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノマー;酸置換(メタ)アクリレート及びスルホエチルメタクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸のような酸置換(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノエチルメタクリレート、tert−ブチルアミノエチルメタクリレート及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどを含むアミン−置換メタクリレートのような、塩基性置換(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド;アクリロニトリル;ジアセトンアクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド及び置換(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクロレイン;メチルアクリレートなどが挙げられる。
反応混合物は、最低限:
(a)疎水性キャビティを有する少なくとも一つの高分子化合物;
(b)水への溶解度が小さい少なくとも一つのモノマー;及び
(c)水;
を含む。
本発明のポリマーは、当業者によく知られた公知のフリーラジカル水性溶液重合又はエマルション重合手段によって調製することができる。該重合は、バッチ、半連続又は連続反応で行うことができる。また、該重合は、逐次重合の一部として行うこともできる。本発明は、有機溶媒を使用することなくポリマーを製造する方法を提供するが、これらの溶媒は、実際には重合中存在していてもよい。しかしながら、溶媒は重合中存在しないことが好ましい。
フリーラジカル開始剤は、水性溶液及びエマルション重合中で利用される。適当なフリーラジカル開始剤は、過酸化水素;tert−ブチルヒドロペルオキシド;ナトリウム、カリウム、リチウム及びアンモニウムの過硫酸塩が挙げられる。還元剤、例えば、アルカリ金属のピロ亜硫酸塩、ヒドロ亜硫酸塩、及び次亜硫酸塩などの重亜硫酸塩;及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの還元糖を、レドックス系を形成する開始剤と組み合わせて使用することができる。開始剤の量は、充填されたモノマーの0.01重量%〜約2重量%であり、これと対応して0.01重量%〜約2重量%の範囲の還元剤を使用することができる。鉄塩などの遷移金属触媒も使用することができる。
重合温度としては、水性エマルション及び溶液重合中、約10℃〜120℃の範囲である。過硫酸塩系の場合、温度は60℃〜90℃の範囲が好ましい。レドックス系においては、温度は20℃〜70℃の範囲が好ましい。
エマルションポリマーの場合、モノマーエマルション又はポリマーエマルションを製造するために使用される乳化剤又は分散剤は、アニオン性、カチオン性、又は非イオン性である。また、いずれか2つの型の混合物も使用することができる。適当な非イオン性乳化剤には、制限されるものではないが、エトキシル化(ethoxylated)オクチルフェノール、エトキシル化ノニルフェノール、エトキシル化脂肪アルコールなどが挙げられる。適当なアニオン性乳化剤には、制限されるものではないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルフェノール、オクチルフェノール及び脂肪アルコールの硫酸及びエトキシル化誘導体、エステル化スルホ琥珀酸などが挙げられる。適当なカチオン性乳化剤には、制限されるものではないが、塩化ラウリルピリジニウム、酢酸セチルジメチルアミン、(C〜C18)塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。乳化剤の量は、充填されるモノマーの総量を基準として、約0.1重量%〜約10重量%である。
解離工程(Decomplexation Step)
溶液重合によって形成されるポリマーの本発明の方法の任意の第3工程では、解離剤(decomplexing agents)、すなわち疎水性キャビティを有する高分子有機化合物に親和性を有する材料を添加することによって、該ポリマーから、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物を解離する。溶液重合の場合、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物は、ポリマーを形成した後、該ポリマーから解離することができる。エマルションポリマーの場合、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物は、ポリマーが形成される前に、ポリマーから自動的に解離され、更なる解離は一般的には必要でない。
適当な解離剤には、制限されるものではないが、非イオン性、アニオン性及びカチオン性界面活性剤を含む公知の界面活性剤;及び、例えば、エタノールやTEXANOL(商品名)溶媒などの有機溶媒が挙げられる。有機溶媒は好ましくはない。本発明者は、解離を完全に行うためには、ポリマーに添加された、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物1モル当たり、解離剤を約1〜10モル用いることが好ましいことを見い出した。
複合化工程及び解離工程は、いずれも、反応体を添加、混合することによって容易に行われる。特別な精製工程や分離工程は室温では要求されない。本発明の方法によって製造されるポリマーを含む配合中に、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物を解離するのに有効な量でいずれかの解離剤を含む場合には、解離工程を行わせるための界面活性剤の更なる添加は不要である。
会合性増粘剤として作用する、本発明の方法によって製造される溶液コポリマーは、米国特許第5,137,571号に説明されているように、有利に使用することができる。この特許は、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体を用いる会合性増粘剤の粘度を抑制する方法を開示している。本発明の溶液コポリマーを形成した後、それらがシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体から解離される前に、溶液コポリマーを、コーティング組成物中に直接添加し、そこで解離を行わせることができる。
連鎖移動剤
他の態様において、本発明者はまた、本発明の方法が水性溶液及びエマルション重合中で使用される、水への溶解度が小さい連鎖移動剤の効率を改良するのに有用であることを見い出した。本発明の方法は、エマルション重合反応中、生成ポリマーの分子量を減らすのに必要な、水への溶解度が小さい連鎖移動剤の使用量を減らす。該方法には:
(1) 水への溶解度の小さい連鎖移動剤を疎水性キャビティを有する高分子有機化合物と複合化させる工程;及び、
(2) エマルション重合反応系に該複合体を添加する工程;
を含む。これら2つの工程は、その場で行うことができ、別個の容器中で行う必要はない。
水への溶解度が小さい典型的な連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、チオフェノールのような疎水性メルカプタン;疎水性ポリメルカプタン;ブロモトリクロロメタンのような疎水性ハロゲン化合物などが挙げられる。
水への溶解度が小さい連鎖移動剤と複合化された疎水性キャビティを有する高分子有機化合物とのモル比は、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物のタイプと水への溶解度が小さい連鎖移動剤のタイプによって変化する。一般に、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物と、水への溶解度が小さい連鎖移動剤とのモル比は、約1:1〜約1:5000、好ましくは約1:2〜1:1000である。
水への溶解度が小さいモノマーの添加
本発明の方法は、従来、疎水性モノマーの溶解を促進するための、溶媒又は界面活性剤の添加なしでは製造することができなかった、水への溶解度の小さいモノマーのコポリマー、特にランダムコポリマーを形成するために使用することができる。本明細書で使用される”ランダムコポリマー”とは、モノマー単位がランダムに配置され、モノマー単位の反復ブロックを形成しない、少なくとも2つの異なるモノマーから形成されるポリマーを意味する。エマルションポリマーの場合、ランダム性の有無は:
(1)攪拌機のシャフト付近にたまるモノマー及び最終製品中のモノマーの液滴の存在によって示される、水への溶解度が小さいモノマーの不十分な転化;
(2)多量のゲル又は凝塊;
(3)エマルション重合中の大きな懸濁ポリマーの生成;
(4)相分離又はモノマーの液滴若しくは大きな懸濁粒子のクリーミング;及び、(5)示差走査熱量計によって測定される複数のガラス転移温度によって示される2つの型のモノマーの重合中の不均一な分布に起因する、水への溶解度が大きいモノマーと水への溶解度が小さいモノマーとの異常な(非動的な)分布;
によって判定することができる。
溶液ポリマーの場合、ランダム性の有無は、どのくらい効果的に溶液ポリマーが増粘できるかによって判定することができ、複合化されたものと解離されたものとのポリマーの溶解された溶液の粘度を比較することによって決定することができる。2つの溶液の粘度がほぼ同じ場合は、水への溶解度が小さいモノマーは、水への溶解度が大きいモノマーと共には、ポリマー中に組み込まれていない。解離された溶解された溶液の粘度が、複合化された溶液の粘度よりも大きい場合には、水への溶解度が小さいモノマーはポリマー中に組み込まれており、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物を解離したときに、相互作用を起こし、増粘させるために使用できる。
本発明の方法によって形成されるコポリマーは:
(a)コポリマーの総重量を基準として、約1.0重量%〜約99.0重量%の、水への溶解度の小さいモノマー;及び、
(b)コポリマーの総重量を基準として、約1.0重量%〜約99.0重量%の、少なくとも一つの水への溶解度の大きいモノマー;
のランダム配列を有するが、ランダムコポリマーは、有機溶媒又は大量の界面活性剤の非存在下に、水中で、水性溶液又はエマルション重合によって形成することができる。
本発明の新規なコポリマーは、疎水性基体の耐水性及び接着性を改良する方法など、疎水性が望まれるいかなる方法においても有用であり、例えば、ペイント、木材コーティング、インキを含む建築用及び工業用コーティング;紙用コーティング;織布及び不織布用結合剤及び仕上げ剤;接着剤;マスチック;床磨き剤;皮革コーティング;プラスチック;プラスチック用添加剤;石油添加剤などのような用途において有用である。また、本発明の新規なコポリマーにより、例えば、増粘剤、レオロジー改良剤、分散剤;配合用化学物質など、水への溶解度が小さいモノマーと水への溶解度が大きいモノマーのいずれも必要とされるポリマーを形成することもできる。
以下の実施例は本発明の特定の態様及び実施態様を説明するものであり、それらによって本発明が制限されるものと解釈してはならない。
注記:
以下の略語が実施例で使用される:
LA ラウリルアクリレート
LMA ラウリルメタクリレート
BA ブチルアクリレート
EA エチルアクリレート
2−EHA 2−エチルヘキシルアクリレート
MMA メチルメタクリレート
MAA メタクリル酸
AA アクリル酸
AM アクリルアミド
VA 酢酸ビニル
1837−(EO)20MA C1837−(エチレンオキシド)20メタクリレートC1225−(EO)23MA C1225−(エチレンオキシド)23メタクリレートHEA ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA ヒドロキシエチルメタクリレート
NVP n−ビニルピロリドン
Tg(℃) ガラス転移温度(摂氏度)
g グラム
μ ミクロン
実施例1:溶液重合…モノマー混合物中のシクロデキストリン
本実施例では、溶液重合を、メカニカルスターラー、温度調整装置、コンデンサー、モノマー及び開始剤供給ライン及び窒素供給口を備えた4つ口の4リットルの丸底フラスコ中で行った。脱イオン水を、表1(HO #1)に示されたグラムで、室温で該反応フラスコに添加した。内容物を、窒素をパージして攪拌しながら55℃に加熱した。モノマー混合物、脱イオン水(HO #2)及びメチル−β−シクロデキストリンを表1に示されたグラムで添加し、反応混合物を形成した。
Figure 0004218902
Figure 0004218902
注記*:C1837−(EO)20H及び3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートから調製されたC1837−(EO)20MAの類似体
脱イオン水10g中に溶解された、6.7gの硫酸第二鉄溶液(0.15%)及び0.2gの亜二チオン酸ナトリウムからなる第1の開始剤混合物を反応フラスコに添加した。脱イオン水55g中に溶解された、モノマーの総重量を基準として、0.2%の過硫酸アンモニウムと0.2%の亜硫酸水素ナトリウムからなるレドックス開始剤混合物を調製した。反応混合物及びレドックス開始剤の混合物は、2時間かけて反応フラスコに別々に供給された。最終ポリマー生成物は、粘稠な溶液として得られた。次の表は、最終ポリマーの組成(ポリマーの総重量を基準とした重量%で示す)を示す。
Figure 0004218902
Figure 0004218902
実施例2:溶液重合…反応がまへ添加されるシクロデキストリン
本実施例では、溶液重合を、メカニカルスターラー、温度調整装置、コンデンサー、モノマー及び開始剤供給ライン及び窒素供給口を備えた4つ口の4リットルの丸底フラスコ中で行った。脱イオン水(HO #1)及びメチル−β−シクロデキストリンを、表3に示されたグラムで、室温で該反応フラスコに添加した。内容物を、窒素をパージして攪拌しながら60℃に加熱した。モノマー混合物及び脱イオン水(HO #2)を表3に示されたグラムで調製し、反応混合物を形成した。
Figure 0004218902
脱イオン水10g中に溶解された、6.7gの硫酸第二鉄溶液(0.15%)及び0.2gの亜二チオン酸ナトリウムからなる第1の開始剤混合物を反応フラスコに添加した。脱イオン水135g中に溶解された、モノマーの総重量を基準として、0.2%の過硫酸アンモニウムと0.2%の亜硫酸水素ナトリウムからなるレドックス開始剤混合物を調製した。反応混合物及びレドックス開始剤の混合物は、2時間かけて反応フラスコに別々に供給された。最終ポリマー生成物は、粘稠な溶液として得られた。次の表は、最終ポリマーの組成(ポリマーの総重量を基準とした重量%で示す)を示す。
Figure 0004218902
実施例3:溶液ポリマーの特性
実施例1及び2の水への溶解度の小さいモノマーが実際に最終ポリマーに組み込まれているかどうか及びどのくらいの量かを測定するため、複合化された最終ポリマーの溶解された溶液の粘性(CSSV)及びドデシルベンゼンスルホネート又はラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤で解離された最終ポリマーの溶解された溶液の粘性(DSSV)を、一定の粘度になるまで、解離剤で滴定することによって測定した。結果を表5に示す。
Figure 0004218902
Figure 0004218902
ポリマーへの界面活性剤モノマーの実際の添加は、解離剤(界面活性剤)を添加したときの粘度の上昇によって示された。滴定によって測定された十分な量の界面活性剤が、ポリマーを完全に解離するために加えられた。メチル−β−シクロデキストリンを該ポリマーから解離すると、該ポリマーの疎水性モノマー部が放出され、該ポリマーが添加されている溶液を増粘させた。界面活性剤モノマーを含まない対照では、ポリマーに疎水性成分が組み込まれていないため、変化がなかった。比較例では、界面活性剤モノマーが、僅かながらポリマーに組み込まれているため、僅かな変化があった。
疎水性の量が増加したことは、増粘効果の増大によって示された(溶液ポリマー1−S及び2−S、並びに溶液ポリマー4−S、5−S及び6−S)。
疎水性部分の大きさの影響は、より大きな疎水性部分の増粘効果の増大によって示された(溶液ポリマー3−S…より大きな疎水性物質と7−S…より小さな疎水性物質との比較)。
実施例4:エマルション重合…反応がまに添加されるシクロデキストリン
本実施例では、エマルション重合を、メカニカルスターラー、温度調整装置、コンデンサー、モノマー及び開始剤供給ライン及び窒素供給口を備えた4つ口の4リットルの丸底フラスコ中で行った。
方法A
脱イオン水(HO #1)及びTriton(商品名)XN−45Sアニオン性界面活性剤(Triton#1)を、表6に示されたグラムで、室温で該反応フラスコに添加した。内容物を、窒素をパージして攪拌しながら85℃に加熱した。脱イオン水(HO #2)のモノマーエマルション、Triton(商品名)XN−45Sアニオン性界面活性剤(Triton#2)及びモノマーを表6に示されたグラムで調製した。
85℃で、モノマーエマルションの総重量の3重量%を反応がまに添加し、次に、脱イオン水25g中の炭酸ナトリウム0.35重量%(モノマーの総重量基準)及び脱イオン水30g中の過硫酸ナトリウム0.35重量%(モノマーの総重量基準)を添加した。発熱が収まった後、メチル−β−シクロデキストリン及びTriton XN−45S(Triton#3)アニオン性界面活性剤を、表6に示されたグラムで添加した。モノマーエマルションの残量を、3時間かけて、脱イオン水210g中の過硫酸ナトリウム0.05%(モノマーの総重量基準)からなる開始剤溶液と共に供給した。
方法B
脱イオン水(HO #1)、Triton(商品名)XN−45Sアニオン性界面活性剤(Triton#1)、メチル−β−シクロデキストリン及び氷酢酸を、表6に示されたグラムで、室温で反応フラスコに添加した。内容物を、窒素をパージ下、攪拌しながら75℃に加熱した。脱イオン水(HO #2)、Triton(商品名)XN−45Sアニオン性界面活性剤(Triton#2)及びモノマーのモノマーエマルションを表6に示されたグラムで調製した。t−ブチルヒドロペルオキシド1.7g、脱イオン水105g中の過硫酸アンモニウム1.8g及び脱イオン水105g中の亜硫酸水素ナトリウム2.7gを調製した。
75℃で、脱イオン水10g中の亜硫酸水素ナトリウム0.2g、脱イオン水10g中の過硫酸アンモニウム0.44g及び硫酸第一鉄の溶液15g(0.15重量%)を反応フラスコに添加した。モノマーエマルション及び開始剤溶液を3時間かけて温度を75℃で維持しながら供給した。
表7は、最終ポリマーの組成(ポリマーの総重量を基準とした重量%で示す)を示す。
注記**:方法Bによって調製;その他は方法Aによって調製
Figure 0004218902
Figure 0004218902
Figure 0004218902
Figure 0004218902
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実施例5:エマルションポリマーのキャラクタリゼーション
実施例4の水への溶解度が小さいモノマーが実際に最終ポリマーにランダムに組み込まれているかどうかを決定するため、いくつかの手段を使用した。第1には、攪拌渦周辺の、水への溶解度が非常に小さいモノマーだまりの欠如が、水への溶解度が非常に小さいモノマーの最終ポリマーへの良好な転化を示した。第2には、(そのままか、遠心分離によるか、あるいはクリーム相から)収集され及び光学顕微鏡検査法によって特性決定される、1〜10ミクロンの大きな粒子及びモノマーの液滴の欠如が、水への溶解度が非常に小さいモノマーの最終ポリマーへの良好な組み込みを示した。第3には、ゲル(100メッシュの篩を通して収集される)の生成の欠如が、重合が一般的に良好に行われたことを示した。最後に、文献データを用いたコポリマーの計算値と、20℃/分の加熱速度で示差走査熱量計によって測定されるものとがほぼ同じガラス転移温度であることが、非常に水への溶解度の小さいモノマーが良好に組み込まれ、ランダムコポリマーを形成したことを示した。結果を表8に示す。
Figure 0004218902
Figure 0004218902
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実施例6:連鎖移動剤
本実施例では、エマルション重合を、メカニカルスターラー、温度調整装置、コンデンサー、モノマー及び開始剤供給ライン及び窒素供給口を備えた4つ口の5リットルの丸底フラスコ中で行った。1,200gの脱イオン水、0.53gの炭酸ナトリウム、1.13gのSolusol(商品名)スルホン化エステル界面活性剤(75%の水溶液)及び表9に示された量のメチルβ−シクロデキストリン(50.8%の水溶液)を反応フラスコに室温で添加した。
Figure 0004218902
内容物を、窒素をパージして攪拌しながら80℃に加熱した。1gの過硫酸ナトリウム及び174gの脱イオン水からなる開始剤溶液を調製し、35gの開始剤溶液を反応がまに充填した。252gの脱イオン水、21.53gのSolusol(商品名)スルホン化エステル界面活性剤(75%の水溶液)、250gのn−ビニルピロリドン、740gのエチルアクリレート及び20gのn−ドデシルメルカプタンからなる乳化されたモノマー混合物を調製した。脱イオン水135g中の10gのメタクリル酸からなるメタクリル酸溶液を調製した。
80℃で、乳化されたモノマー混合物、メタクリル酸溶液及び開始剤溶液の残量を、4時間かけて反応フラスコに添加した。乳化されたモノマー混合物、メタクリル酸溶液及び開始剤溶液の残量を反応フラスコに供給した後、分散液を80℃で30分間保持し、次に室温まで冷却した。最終ポリマーの組成は、25NVP/74EA/1MAAであった。
各エマルションポリマーの分子量をゲル透過クロマトグラフィーによって測定した。表10は分子量のデータを示す。
Figure 0004218902
このデータから、メチルβ−シクロデキストリンをn−ドデシルメルカプタン(疎水性連鎖移動剤)で複合化することにより、疎水性連鎖移動剤が添加されるエマルションポリマーの重量平均及び数平均分子量を減少させるという点で、n−ドデシルメルカプタンの効率が改良されるということが分かった。メチルβ−シクロデキストリン(疎水性連鎖移動剤)の量を増すと、n−ドデシルメルカプタンの効率は更に改良された。
実施例7:用途試験
ラテックスフィルムを、エマルションポリマー19−E、24−E、25−E及び26−Eから、それぞれ10gを直径4インチのペトリ皿中で乾燥することによって調製した。小さな試験片を該フィルムから切り出し、計量し、脱イオン水中に浸漬した。該試験片を定期的に取り出し、表面水を軽くたたいて除去し、計量して、吸収された水の量を測定した。結果を、フィルムの総重量に基づく吸収された水の重量%で、表11に報告する。
Figure 0004218902
このデータから、より疎水性のモノマーから形成されたエマルションポリマー(2−EHAからのエマルションポリマー25−E及びBAからのエマルションポリマー26−Eに対する、LMAからのエマルションポリマー19−E及び24−E)は、同一の条件下でより少ない量の水を吸収するということが分かった。

Claims (2)

  1. (a)重合単位として以下を含む水性系におけるエマルジョンコポリマー
    i)該コポリマーの総重量を基準として、1.0重量%〜99.0重量%の水への溶解度が25〜50℃で200ミリモル/リットル以下であるモノマー(ただし、モノマーは塩化ビニルではない);及び、
    ii)該コポリマーの総重量を基準として、1.0重量%〜99.0重量%の水への溶解度が25〜50℃で200ミリモル/リットルより大きい少なくとも一つのモノマー(ただし、モノマーは塩化ビニルではない):及び
    (b)シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトース、シクロイヌロクトース及びカリキサレンからなる群から選択される疎水性キャビティを有する高分子有機化合物:を含み、
    前記コポリマーは、有機溶媒なしで連続相の水中で供給され、かつ示差走査熱量計によって20℃/分の割合で測定すると単一のガラス転移温度を示す、コーティング組成物。
  2. i)のモノマーが25〜50℃で50ミリモル/リットル以下の水への溶解度を有し、およびii)の少なくとも一つのモノマーが25〜50℃で50ミリモル/リットルより大きい水への溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
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