JP4207436B2 - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、好適に成形用途に用いられる樹脂組成物に関する。特に塗装を施して外観部品として使用される用途の適用に好適な塗膜密着性、良好な表面外観を有し、かつ耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、導電性、滞留安定性をも兼備する成形品を与えるポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂はその優れた特性を活かし、電気・電子部品、自動車部品、機械部品など非常に広範に用いられている。また、他の樹脂とのアロイ化や各種充填材・改質剤の添加により、その特性をさらに改良・向上させる検討も多く行われている。
【0003】
例えば、耐衝撃性を改良する手法としては、熱可塑性エラストマーなどの耐衝撃性改良剤を含有せしめる方法が知られているが、かかる成分を用いると耐熱性や寸法安定性などが低下する問題があった。
【0004】
逆に、耐熱性や寸法安定性を向上させるために繊維状あるいは非繊維状の充填材を含有せしめる方法が知られているが、かかる成分を用いると耐衝撃性などが低下し、加えて、充填材として繊維状充填材を用いた場合は成形品表面に繊維状充填材が浮き出し、成形品の表面外観を悪化させる問題があった。
【0005】
また、成形品に塗装を施す場合には塗膜密着性が要求されるが、ポリアミド樹脂は塗料の種類や塗装条件によっては塗膜密着性が十分ではない場合がある。塗膜密着性改善のため、一般に脱脂洗浄、プライマー塗装、プラズマ照射等の表面処理が施されるが、工程が煩雑になるためこれらの工程を省略できるような塗膜密着性が良好な樹脂材料が求められている。
【0006】
塗膜密着性を改良する技術として、例えば、特開平8−269323公報ではポリアミド系アロイ樹脂組成物にエポキシ樹脂を添加する方法が開示されている。しかしながら、一般にエポキシ樹脂はポリアミド樹脂と反応性を有するため、射出成形機中などで溶融状態で滞留させると反応が過度に進行し、ポリアミド樹脂組成物の諸特性が変化する問題がある。
【0007】
さらに、塗装効率が良好な塗装方法の例として、静電塗装が挙げられるが、静電塗装を施すためには、被塗装物に導電性が必要である。そこで、一般的に絶縁体である樹脂に導電性を付与するために、カーボンブラックや金属粒子などを含有せしめる方法が知られているが、かかる成分を用いると耐衝撃性などが低下する問題があった。
【0008】
このように、塗装を施して外観部品として使用される用途の適用に好適な塗膜密着性、良好な表面外観を有し、かつ耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、導電性、滞留安定性をも兼備する成形品を与えるポリアミド樹脂組成物はこれまで得られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、塗装を施して外観部品として使用される用途の適用に好適な塗膜密着性、良好な表面外観を有し、かつ耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、導電性、滞留安定性をも兼備する成形品を与えるポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題は主として、
(1)(A)ポリアミド樹脂35〜80重量%、(B)耐衝撃性改良剤5〜35重量%、(C)平均粒径0.5〜10μmの充填材5〜30重量%、(D)グラファイト、制電性樹脂の両方を含んでなる導電性付与材3〜40重量%(E)数平均分子量が10000以下のエポキシ基含有化合物0.1〜10重量%からなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物全体の重量を1としたときの(E)エポキシ基含有化合物の重量の割合を、該エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で除した値(添加量/エポキシ当量)が1.5×10-5〜5×10-5であるポリアミド樹脂組成物、
(2)(E)エポキシ基含有化合物のエポキシ当量が2000以下である上記(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0011】
(3)(C)充填材がタルクである上記(1)または(2)いずれか記載のポリアミド樹脂組成物、
(4)(D)導電性付与材の含有量が、グラファイト5〜30重量%、制電性樹脂3〜20重量%であり、合計3〜40重量%である上記(1)〜(3)いずれか記載のポリアミド樹脂組成物、
により達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる(A)ポリアミド樹脂とは、アミノカルボン酸、ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分として得られるポリアミドであり、その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノカルボン酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられる。本発明は、これら構成成分から誘導されるポリアミド単独重合体もしくは共重合体を各々単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
本発明においては、耐熱性の点から200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂を用いることが好ましい。その具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、およびこれらの混合物ないしは共重合体などが挙げられる。
【0014】
とりわけ好ましいポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、およびナイロン6T/6コポリマーを挙げることができ、更にこれらのポリアミド樹脂を耐衝撃性、成形加工性、相溶性などの必要特性に応じて混合物として用いることも好適である。
【0015】
このポリアミド樹脂の重合度は、98%濃硫酸にポリアミド樹脂を1重量%溶解した溶液の25℃で測定した相対粘度として、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものを用いることが好ましい。
【0016】
本発明において(A)ポリアミド樹脂の割合は35〜80重量%であることが必要であり、好ましくは40〜75重量%である。35重量%未満では耐熱性に劣り、また、80重量%を超えると耐衝撃性に劣るためである。
【0017】
本発明で用いる(B)耐衝撃性改良剤とは、(A)ポリアミド樹脂とアロイ化した際に耐衝撃性を改良する成分を言い、例えばオレフィン系化合物および/または共役ジエン系化合物を重合して得られる(共)重合体などが挙げられる。
【0018】
上記(共)重合体としては、エチレン系共重合体、共役ジエン系重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが挙げられる。
【0019】
ここで、エチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさし、エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体などの中から選択することができる。
【0020】
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などが挙げられ、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。非共役系ジエンとしては5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどが挙げられ、好ましくは5−メチリデン−2−ノルブルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどである。α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられ、その誘導体としてはアルキルエステル、アリールエステル、グリシジルエステル、酸無水物、イミドを例として挙げることができる。
【0021】
また、共役ジエン系重合体とは少なくとも1種以上の共役ジエンを構成成分とする重合体であり、例えば1,3−ブタジエンの如き単独重合体や1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンから選ばれる1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。これらの重合体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0022】
共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素からなるブロック共重合体またはランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体の芳香環以外の二重結合以外の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0023】
さらに、樹脂組成物中の上記耐衝撃性改良剤の分散粒子径を微細に制御するために、さらに種々の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体やビニル単量体をグラフト反応あるいは共重合して得られる(共)重合体も好ましく使用できる。耐衝撃性改良剤に対して、グラフト反応あるいは共重合されている不飽和カルボン酸および/またはその誘導体やビニル単量体の量は0.01〜20重量%が好ましい。グラフト反応あるいは共重合に用いる不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられる。また、それらの誘導体としては、アルキルエステル、グリシジルエステル、ジ−またはトリ−アルコキシシリル基を有するエステル、酸無水物またはイミドなどが挙げられ、中では、グリシジルエステル、ジ−またはトリ−アルコキシシリル基を有する不飽和カルボン酸エステル、酸無水物、イミドが好ましい。
【0024】
不飽和カルボン酸またはその誘導体の好ましい例としては、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジルエステル、シトラコン酸ジグリシジルエステル、ブテンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテンジカルボン酸モノグリシジルエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸イミド、イタコン酸イミド、シトラコン酸イミドなどであり、特にメタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸イミドが好ましく使用できる。また、ビニル単量体の例としてはスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物を例示することができ、これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体あるいはビニル単量体は2種以上を併用してもよい。なお、これら不飽和カルボン酸またはその誘導体あるいはビニル単量体をグラフトさせる方法については公知の手法を用いることができる。
【0025】
また、ポリアミド系エラストマーやポリエステル系エラストマーを用いることもできる。これらの耐衝撃性改良材は2種以上併用することも可能である。
【0026】
このような耐衝撃性改良剤の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、(「g」はグラフトを表わす、以下同じ)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−マレイミド共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−N−フェニルマレイミド共重合体およびこれら共重合体の部分ケン化物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/グリシジルエーテル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−N−フェニルマレイミド共重合体、エチレン/ブテン−1−g−N−フェニルマレイミド共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリトリメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリトリメチレングリコール共重合体などを挙げることができる。この中で、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体がさらに好ましく、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
【0027】
本発明において(B)耐衝撃性改良剤の割合は5〜35重量%であることが必要であり、好ましくは5〜30重量%である。5重量%未満では耐衝撃性に劣り、また、35重量%を超えると耐熱性や寸法安定性に劣るためである。
【0028】
本発明のポリアミド樹脂組成物は(C)充填材を含有する。この充填材としては一般に樹脂用フィラーとして用いられる公知のものが用いられ、本発明のポリアミド樹脂組成物の強度、剛性、耐熱性、寸法安定性などを改良できる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、アルミノシリケート、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどが挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上用いることも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で処理して使用してもよい。また、モンモリロナイトについては、有機アンモニウム塩で層間イオンをカチオン交換した有機化モンモリロナイトを用いてもよい。
【0029】
これら充填材の中でも、表面外観に優れる点で非繊維状充填材を用いることが好ましい。さらに、非繊維状充填材の中でも、寸法安定性、耐熱性に優れる点でタルクが好ましい。
【0030】
本発明で用いる(C)充填材の平均粒径は0.5〜10μmであることが必要であり、1〜7μmがさらに好ましい。平均粒径が0.5μm未満のタルクでは凝集がおこりやすく耐衝撃性に劣り、また平均粒径が10μmを超えると耐衝撃性や成形品の表面外観として十分な成形品が得られないためである。なお、平均粒径は、レーザー回折法により測定した粒径の50%積算値として求めることができる数平均粒径である。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる(C)充填材の割合は5〜30重量%であることが必要であり、好ましくは5〜25重量%である。5重量%未満では耐熱性、寸法安定性に劣り、30重量%を越えると耐衝撃性、表面外観に劣るためである。
【0032】
本発明で用いる(D)導電性付与材とは、(A)ポリアミド樹脂に添加した時にポリアミド樹脂組成物の導電性を改良する成分を意味する。その特性としては、体積固有抵抗1×1010Ω・cm未満、表面固有抵抗1×1012Ω未満のいずれか、または両方を満足する材料が好ましい。
【0033】
このような導電性付与材としては、導電性、耐熱性、耐衝撃性など諸特性のバランスの点でグラファイト、制電性樹脂を併用する。
【0034】
グラファイトにはいわゆる天然グラファイトと人工グラファイトがあるが、本発明ではいずれのグラファイトも用いることができ、またこれらを併用してもよい。このグラファイトの形状には鱗片状、鱗状、土状などがあるが、耐熱性や寸法安定性の点から鱗片状または鱗状が好ましい。また、これらを併用してもよい。
【0035】
グラファイトの平均粒径は1〜30μmが好ましく、さらに好ましくは1〜15μmである。平均粒径が1μm未満では耐熱性や寸法安定性が不足するなど物性バランスが崩れるだけでなく、微粉の飛散による作業環境の悪化を引き起こし、また製造が困難である。また30μmを超えると表面外観が低下する。なお、平均粒径は、レーザー回折法により測定した粒径の50%積算値として求めることができる数平均粒径である。
【0036】
グラファイトの含有量は、導電性と諸特性のバランスの点で、本発明のポリアミド樹脂組成物全体に対して5〜30重量%が好ましい。
【0037】
制電性樹脂とは表面固有抵抗として1×1012Ω未満の樹脂を意味し、その種類には特に制限はない。この制電性樹脂としては、相溶性が良好で他物性を損なわずに制電効果や導電性の改良効果が得られるため、ポリアミド単位とポリオキシアルキレン単位を主たる構成成分とする共重合体が好ましい。
【0038】
このポリアミド単位は、炭素原子数10以下のアミノカルボン酸またはラクタムもしくは炭素原子数10以下のジアミンと炭素原子数10以下のジカルボン酸の塩から誘導されるものであり、これらの原料となる化合物の例としては、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸および10−アミノデカン酸等のアミノカルボン酸、カプロラクタム、エナントラクタムおよびカプリルラクタムなどのラクタム、およびエチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどから選ばれる脂肪族、脂環族、芳香族ジアミンとアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などから選ばれる脂肪族、脂環族、芳香族ジカルボン酸とからなる塩などを挙げることができ、これらは単独または2種以上の混合物の形で用いることができる。これらの内で、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩が特に好ましく用いられる。
【0039】
また、ポリオキシアルキレン単位の例としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシペンタメチレン、ポリオキシヘキサメチレン、ポリオキシエチレン/プロピレン、ポリオキシエチレン/テトラメチレンなどが挙げられ、中でもポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン/プロピレン、ポリオキシエチレン/テトラメチレンが好ましい。
【0040】
該ポリオキシアルキレン成分の数平均分子量は200〜6000の範囲が好ましく、250〜4000の範囲がより好ましい。数平均分子量が200未満では、得られる制電性樹脂の機械的性質が著しく劣り、数平均分子量が6000を超えると導電性が損なわれるため好ましくない。
【0041】
制電性樹脂の含有量は、導電性と諸特性のバランスの点で本発明のポリアミド樹脂組成物全体に対して3〜20重量%が好ましい。
【0042】
以上のような、本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる(D)導電性付与材の割合は3〜40重量%であることが必要であり、好ましくは5〜30重量%である。3重量%未満では導電性が不十分であり、また40重量%を越えると耐熱性や耐衝撃性のバランスの点で劣るためである。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂組成物は(E)数平均分子量が10000以下のエポキシ基含有化合物を含有する。塗膜密着性の点でより好ましい数平均分子量は7000以下である。エポキシ基含有化合物とは、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物を意味する。中でも塗膜密着性と滞留安定性の点で1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に2個のエポキシ基を有する化合物がさらに好ましい。
【0044】
このようなエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、オロカテロール、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノールのグリシジルエーテル系エポキシ基含有化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのジオールのジグリシジルエーテル系エポキシ基含有化合物、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルジオールのジグリシジルエーテル系エポキシ基含有化合物、グリシジルエステル系エポキシ基含有化合物、グリシジルアミン系エポキシ基含有化合物、フェノール型エポキシ基含有化合物、クレゾール型エポキシ基含有化合物、脂環式エポキシ基含有化合物、シリコン変性エポキシ基含有化合物、ゴム変性エポキシ基含有化合物、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油、ナフタレン骨格を持ったエポキシ基含有化合物、ジシクロペンタジエン骨格を持ったエポキシ基含有化合物、リモネン骨格を持ったエポキシ基含有化合物などを挙げることができ、併用してもよい。これらについては、ハロゲン化されているもの、水素添加されているものでもよい。これらエポキシ基含有化合物は液体、固体いずれも用いることができるが、ハンドリング性の点で固体が好ましい。
【0045】
エポキシ基含有化合物の割合は0.1〜10重量%であることが必要である。塗膜密着性と諸物性のバランスの点で0.3〜8重量%がより好ましい。0.1重量%未満では塗膜密着性などに劣り、10重量%を越えると耐熱性などが低下するためである。
【0046】
さらに本発明では、樹脂組成物全体の重量を1としたときのエポキシ基含有化合物の重量の割合をエポキシ当量で除した値(割合/エポキシ当量)が1.5×10-5〜5×10-5の範囲内にあることが必要である。塗膜密着性と滞留安定性の点で2×10-5〜4×10-5の範囲内がより好ましい。
【0047】
エポキシ基含有化合物のエポキシ当量は塗膜密着性の点で2000以下であることが好ましく、100〜1500がより好ましい。エポキシ当量が2000を越えると、十分な塗膜密着性を得るためにエポキシ基含有化合物を多く添加する必要があり、結果として耐熱性などが低下する場合があるため好ましくない。
【0048】
ここで、樹脂組成物全体の重量を1としたときのエポキシ基含有化合物の重量の割合をエポキシ当量で除した値(割合/エポキシ当量)について説明する。エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ基含有化合物のグラム数を意味する。したがって、樹脂組成物全体の重量を1としたときのエポキシ基含有化合物の重量の割合をエポキシ当量で除した値(割合/エポキシ当量)は、樹脂組成物1g中に含まれるエポキシ基のグラム当量を表す。
【0049】
本発明においては、この値を1.5×10-5〜5×10-5の範囲に調整することが重要である。この範囲内に調整することにより、塗膜密着性向上効果と共に滞留安定性をも兼備する実用価値の高い材料を設計し得るのである。この値が1.5×10-5未満では塗膜密着性向上効果および滞留安定性向上効果が十分ではなく、またこの値が5×10-5を越えると滞留安定性が低下するのである。
【0050】
ここで言う滞留安定性とは、溶融状態での滞留有無での特性変化の小ささを意味する。すなわち、熱可塑性樹脂を射出成形機中などで溶融状態で滞留させると、熱分解や、アロイ系の場合には反応が起こり、その結果特性変化が生じるのであるが、その際の特性変化の小ささを意味するものである。
【0051】
エポキシ基含有化合物を含有するポリアミド樹脂の場合、一般に溶融状態で滞留させると両者の反応により特性変化が生じ易い。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂組成物全体の重量を1としたときのエポキシ基含有化合物の重量の割合をエポキシ当量で除した値(割合/エポキシ当量)を1.5×10-5〜5×10-5の範囲に調整した本発明の樹脂組成物においては、エポキシ基含有化合物を含有しない場合よりも特性変化が小さくなる、すなわち滞留安定性が向上することを見出したのである。
【0052】
これは、樹脂組成物全体の重量を1としたときのエポキシ基含有化合物の重量の割合をエポキシ当量で除した値(割合/エポキシ当量)を、かかる範囲に規定を設けることにより、エポキシ当量が小さく添加量が多い場合には、エポキシ基が多く存在することでエポキシ基含有化合物とポリアミド樹脂の過剰な反応に起因すると考えられる滞留安定性低下が生じること、更に、エポキシ当量が大きく添加量が少ない場合には、エポキシ基が少ないためにポリアミド樹脂と耐衝撃性改良剤との反応に起因すると考えられる滞留安定性低下が生じることを効果的に解決できるためである。逆に言えば、この値を1.5×10-5〜5×10-5の範囲とした場合には、エポキシ基含有化合物とポリアミド樹脂の反応が適度に進行することにより、ポリアミド樹脂と耐衝撃性改良剤との反応の進行に遅延が生じると考えられ、その結果滞留安定性低下を効果的に解決できるのである。
【0053】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの誘導体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、着色防止剤(次亜リン酸塩等)、他の重合体を含有することができる。
【0054】
次に本発明のポリアミド樹脂組成物を得る方法について例を挙げて説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、各成分を公知の混練方法により溶融混練して得ることができる。その混練方法としてはバッチ式または連続式のいずれも採用できるが、連続式の方が生産性の面で好ましい。混練装置としては、単軸および二軸押出機、混練機、ニーダーなどが挙げられ、特に制限があるわけではないが、二軸押出機が生産性などの面で好ましい。押出機を用いる場合には、各原料を一括して押出機に供給する方法や、任意の複数の成分をあらかじめ溶融混練し、ペレット化しておき、それと残りの成分を押出機に供給する方法が挙げられる。さらに、供給口を2つ以上有する押出機を使用する場合には、第一の(上流側の)供給口から任意の1ないし複数の成分を供給し、第二以降の(下流側の)供給口から残りの任意の1ないし複数の成分を供給する方法をとることもできる。
【0055】
本発明のポリアミド樹脂組成物を成形する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、押出成形、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられ、特に限定されないが、生産性などの点から射出成形や射出圧縮成形が好ましい。
【0056】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、フューエルリッド、フロントフェンダー、リアフェンダー、ドアパネル、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、トランクリッドなどの車両用外装部品、携帯電話、ノート型パソコン、携帯用オーディオ機器などの移動情報通信機器の筐体などに好適に用いることができる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。実施例で使用した評価方法は以下のとおりである。
【0058】
a.耐衝撃性:ノッチ付きIzod衝撃強度
東洋精機社製Izod衝撃強度試験機を使用し、厚さ1/8インチの試料を用いて、ASTM D256−87に従って測定した。この測定により得られた測定値が大きいほど、耐衝撃性に優れると言える。
【0059】
b.滞留安定性
射出成形機中で20分滞留させた後、Izod衝撃試験片を成形し、得られたIzod衝撃試験片を用いてa項と同様にしてノッチ付きIzod衝撃強度を測定し、a項記載のIzod衝撃強度との変化率を求めた。この測定により得られた測定値が小さいほど、滞留安定性に優れると言える。
【0060】
c.耐熱性:荷重0.46MPa、および1.86MPa下での荷重たわみ温度
東洋精機社製HDT−TESTERを使用し、高さ1/2インチ、幅1/4インチの試料を用いて、ASTM D648−82に従って測定した。この測定により得られた測定値が大きいほど、耐熱性に優れると言える。
【0061】
d.導電性:表面固有抵抗
東亜電波工業社製ULTRA MEGOHMMETER model SM−10Eを使用し、印加電圧500Vで、角板の表面固有抵抗を測定した。この測定により得られた測定値が小さいほど、導電性に優れると言える。
【0062】
e.塗膜密着性:碁盤目剥離試験
スプレーガンを用いてポリエステル/メラミン系塗料で角板を塗装し、130℃×20分の条件で焼付した。23℃、50%RHの条件にて2日放置した後、剥離試験を行った。剥離試験は、カッターナイフで1mm間隔で縦横11本の切り込みを入れ、100個の升目を作り、セロハン粘着テープを用いて行い、剥離数を求めた。この測定により得られた測定値が小さいほど、塗膜密着性に優れると言える。
【0063】
実施例1〜5、比較例1〜6
以下の各材料を表1に示す割合で配合し、日本製鋼所社製二軸押出機TEX−30で溶融混練後ペレット化した。
【0064】
A.使用した材料
(A)ポリアミド樹脂:”アミラン”CM3001N(東レ社製)。
【0065】
(B)耐衝撃性改良剤:”N−タフマー”MH5020(三井化学社製)。
【0066】
(C)充填材:タルクLMS100(富士タルク工業社製)、平均粒径6μm。
【0067】
(D−1)導電性付与材1:イプシロンカプロラクタム60重量部、平均分子量400のポリエチレングリコール40重量部および該ポリエチレングリコールの末端基量に当量のアジピン酸の混合物を減圧型溶融重合缶に仕込み、撹拌下に溶融減圧重合を行って得た制電性樹脂。この試料を射出成形し、上記測定法で求めた表面固有抵抗は1011Ωであった。
【0068】
(D−2)導電性付与材2:グラファイトJ−CPB(日本黒鉛製)、平均粒径3μm。
【0069】
(E−1)エポキシ基含有化合物1:エピコート1002(数平均分子量1060、エポキシ当量650)(ジャパンエポキシレジン社製)。
【0070】
(E−2)エポキシ基含有化合物2:エピコート1004(数平均分子量1600、エポキシ当量925)(ジャパンエポキシレジン社製)。
【0071】
(E−3)エポキシ基含有化合物3:エピコート1009(数平均分子量3750、エポキシ当量2850)(ジャパンエポキシレジン社製)。
【0072】
(E−4)エポキシ基含有化合物4:ブレンマーCP−30(数平均分子量3800、エポキシ当量530)(日本油脂社製)。
【0073】
得られたペレットを80℃、12時間の条件で真空乾燥した後、住友重機械工業社製射出成形機SG75H−MIVで試験片と80×80×3mmの角板を成形した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すとおり、実施例は各特性が良好である。
【0076】
比較例2はエポキシ基含有化合物を含有していないため、滞留安定性と塗膜密着性に劣る。
【0077】
比較例3はエポキシ基含有化合物の添加量が多いため、耐熱性に劣る。
【0078】
比較例4はエポキシ基含有化合物の割合をエポキシ当量で除した値が小さいため、塗膜密着性に劣る。
【0079】
比較例5はエポキシ基含有化合物の割合をエポキシ当量で除した値が大きいため、滞留安定性に劣る。
【0080】
比較例6は導電性付与材を含有していないため、導電性に劣る。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、塗装を施して外観部品として使用される用途の適用に好適な塗膜密着性、良好な表面外観を有し、かつ耐衝撃性、寸法安定性、耐熱性、導電性、滞留安定性をも兼備する成形品を与えるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
Claims (4)
- (A)ポリアミド樹脂35〜80重量%、(B)耐衝撃性改良剤5〜35重量%、(C)平均粒径0.5〜10μmの充填材5〜30重量%、(D)グラファイト、制電性樹脂の両方を含んでなる導電性付与材3〜40重量%(E)数平均分子量が10000以下のエポキシ基含有化合物0.1〜10重量%からなるポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂組成物全体の重量を1としたときの(E)エポキシ基含有化合物の重量の割合を、該エポキシ基含有化合物のエポキシ当量で除した値(割合/エポキシ当量)が1.5×10-5〜5×10-5であるポリアミド樹脂組成物。
- (E)エポキシ基含有化合物のエポキシ当量が2000以下である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- (C)充填材がタルクである請求項1または2いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- (D)導電性付与材の含有量が、グラファイト5〜30重量%、制電性樹脂3〜20重量%であり、合計3〜40重量%である請求項1〜3いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
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