JP3620913B2 - 射出成形に適する耐熱性樹脂組成物、その製造方法及び焼付塗装成形品 - Google Patents
射出成形に適する耐熱性樹脂組成物、その製造方法及び焼付塗装成形品 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は射出成形に適するポリアミド系の耐熱性樹脂組成物、その製造方法及び焼付塗装成形品に関する。本発明は、耐熱性、強度、剛性、低吸水性、表面平滑性、塗装性、低コスト性に優れている等の工業的な有利性から、インナーパネル、アームレスト等の自動車内装部品、ドアハンドル、ホイルカバー、フェンダーパネル、パンパー等の自動車外装部品、シリンダヘッドカバー、インテークマニホールド等の自動車機関部品に好適である。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は機械的強度、耐油性、耐熱性等に優れ、最も代表的なエンジニアリングプラスチックの一つとして、多量に利用されている。しかしながら、このポリアミド樹脂は寸法安定性、吸湿性、高荷重下での熱変形性、乾燥時の耐衝撃性等の性質が劣るという欠点を有している。この欠点を補うため、寸法安定性、電気的特性、高荷重下での熱変形性、耐水性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂とを、相溶化剤としてのスチレン系化合物とα、β−不飽和ジカルボン酸無水物を添加することにより、ポリマーアロイ化した樹脂組成物が提案されている。(特公昭59−33614号公報)。
【0003】
しかしながら、ポリフェニレンエーテル樹脂は溶融加工温度が高く、且つ流動性が悪く、添加できる比率は、最高で40〜50%程度が限度であるため、上記したポリマーアロイ化したポリアミド系樹脂組成物は、高荷重下での熱変形性が必ずしも十分でないという問題がある。
又、これをさらに補うために、ガラス繊維等の繊維状フィラーを強化材として添加する技術は、公知である(特開平6−220318号公報)。しかしながら、この公報技術によれば成形品の表面外観、特に表面平滑性が十分でなく、塗装した場合には、塗装した後の鮮映性は満足出来るものではないという問題もある。
【0004】
更にポリアミド樹脂60〜90重量%とポリプロピレン樹脂10〜40重量%からなるポリアミド/ポリプロピレン樹脂100重量部と、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、チタン酸カリウムのうちの少なくとも1種からなるフィラ−20〜250重量部からなるポリアミド系樹脂組成物が知られている(特開平6−100775号公報)。このものでは、強度、低吸水性、しぼ転写性等が確保される。この公報技術では、フィラーとしてワラストナイトは開示されているものの、フィラーは専らガラス繊維を主眼とするものであり、ワラストナイトの繊維径、アスペクト比等についての開示はない。
【0005】
更に又従来技術として、18000〜40000の数平均分子量(Mn)をもつポリアミド樹脂、エチレン系アイオノマ−樹脂、ワラストナイトからなるパリソン特性を高めた中空成形用樹脂組成物が知られている(特公平6−19017号公報)。ワラストナイトは、この実施例では平均繊維径5〜7μm、アスペクト比15〜60としている。この様にアスペクト比が15〜60と大きな領域のワラストナイトを含む樹脂組成物は、射出成形には不向きであり、射出成形というよりもブロー成形用である。その主たる理由は、アスペクト比が大きなワラストナイトによる補強機能により、ブロー成形の際に溶融パリソンの形態保持や肉厚一定性を確保できるからである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記した特公平6−19017号公報に係る技術に係る樹脂組成物は、前述した様にブロー成形の際にパリソン特性を高めるためのパリソン成形用樹脂組成物であり、混合するワラストナイトは所要の機能を発揮し得る様に、ワラストナイトの繊維径、アスペクト比はブロー成形の際に良好なパリソン特性を得る様に大き目に設定されている。
【0007】
ワラストナイトが上記した範囲から外れると、つまりワラストナイトのアスペクト比が15〜60の領域よりも小さくなると、溶融パリソン特性が低下し、ブロー成形の際にパイプ状の溶融パリソンの形態保持性が低下する(本公報に記載)。従ってブロー成形の際にパイプ状の溶融パリソンの垂下性が過大となり、パリソンの肉厚変動が過大となり、良好なブロー成形品は得られない。ちなみにこの公報技術の比較例によれば、ワラストナイトのアスペクト比を1〜5とした場合には、パリソン特性が×に評価されている。
【0008】
本発明は上記した公報に係るポリアミド系の樹脂組成物とは異なり、強化フィラーとしてワラストナイトを用いた場合において射出成形用に適するポリアミド系の耐熱性樹脂組成物を提供するものであり、しかも耐熱性、強度、剛性、低吸水性、表面平滑性、焼付塗装性をバランス良く確保できる射出成形に適するポリアミド系の耐熱性樹脂組成物、その製造方法及びポリアミド系の焼付塗装成形品を提供することを解決すべき課題とする。
【0009】
更に請求項2は、塗膜を形成する場合において、耐候性試験における塗膜の密着性を更に高めるのに有利なポリアミド系の耐熱性樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る射出成形に適する耐熱性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(PA)90〜65重量%とポリプロピレン樹脂(PP)10〜35重量%とからなるポリアミド/ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、相溶化剤2.2〜10重量部、平均繊維径が3〜15μ、平均アスペクト比が1〜14のワラストナイト20〜100重量部を含有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る射出成形に適する耐熱性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(PA)90〜65重量%と、
ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリルーエチレンースチレン樹脂(AES)及びアクリロニトリルーブタジエンースチーレン樹脂(ABS)の少なくとも1種10〜35重量%とからなるポリアミド系アロイ樹脂100重量部に対して、
相溶化剤2.2〜10重量部、エポキシ樹脂2.2〜10重量部、
平均繊維径が3〜15μm、平均アスペクト比が1〜14のワラストナイト20〜100重量部を含有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係る射出成形に適する耐熱性樹脂組成物の製造方法は、液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練し、固化してペレット状組成物を得る工程と、
ペレット状組成物と相溶化剤と少なくともポリアミド樹脂とを溶融混練し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る工程を順に実施することを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に係る射出成形に適する耐熱性樹脂組成物の製造方法は、液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイトと相溶化剤とを混練してペレット状組成物を得る工程と、
該ペレット状組成物と少なくともポリアミド樹脂とを溶融混練し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る工程を順に実施することを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に係る焼付塗装成形品は、請求項1または請求項2の耐熱性樹脂組成物を主成分とする射出成形された成形品と、成形品に焼付塗装された塗膜とをもつことを特徴とするものである。
【0015】
【実施の形態】
○汎用樹脂であるポリプロピレン樹脂(以下PPともいう)を用いる請求項によれば、ポリアミド樹脂(以下PAともいう)とポリプロピレン樹脂とをポリマーアロイ化したことにより、低コストで、満足する低吸水性をもつ耐熱性樹脂組成物が得られる。
【0016】
○本発明で用いられるポリアミド樹脂は主鎖に−CONH−結合を有するナイロン4、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11等が挙げられる。中でもコスト、供給面から有利なナイロン6(以下PA6ともいう)、ナイロン66(以下PA66ともいう)が好適に用いられる。
【0017】
○本発明で用いられるポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体、もしくはプロピレンにエチレン、1−ブテン及び1−ヘキセン等を共重合させたものが好ましく、これらの1種又は2種以上のブレンド物が好ましい。
ポリアミド樹脂とポリプロピレン樹脂とのポリアミド系アロイ樹脂の場合には、ポリアミド樹脂/ポリプロピレン樹脂=90/10〜65/35(重量%)に配合する。特に好ましいのは70/30〜80/20(重量%)である。
【0018】
○本発明で用いられるワラストナイトはケイ酸カルシウムまたはケイ酸カルシウムを主成分とするものである。本発明で用いられるワラストナイトは、平均繊維径が3〜15μ、平均アスペクト比が1〜14を有するものである。平均繊維径、平均アスペクト比がこの範囲を外れると、射出成形に適する度合が低下すると共に、成形品における引張強度、曲げ強度、熱変形温度、表面平滑性が悪くなる。好ましくは平均繊維径が3〜10μ、平均アスペクト比が5〜13である。
【0019】
○このワラストナイトには、ベース樹脂との密着性を向上させる目的としてシラン系カップリング剤が表面処理されている事が望ましい。シラン系カップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ヘキサメチルシラン、ビニルメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
シラン系カップリング剤の添加量はワラストナイト100重量部に対して0.1〜1重量部が好ましい。0.1重量部未満ではワラストナイト表面を充分に覆う事ができず、又1重量部を越えるとシラン系カップリング剤が厚くなりすぎ、得られた樹脂組成物が脆くなる傾向にある。特に好ましい添加量は0.3〜0.7重量部である。
【0021】
このワラストナイトの添加量はポリアミド樹脂/ポリプロピレン樹脂=100重量部に対して20〜100重量部であり、好ましくは30〜50重量部である。ワラストナイトが20重量部より少ないと、樹脂を補強する効果が十分でない。また100重量部より多いと、樹脂の流動性が悪くなり、溶融混練が困難となる。
【0022】
○PA/PPをポリマーアロイ化させる相溶化剤としては、変性ポリプロピレン樹脂が好ましい。変性ポリプロピレン樹脂とは不飽和カルボン酸またはその無水物により変性したポリプロピレン樹脂である。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸が好ましく、無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸無水物等が挙げられる。特に無水マレイン酸が好ましい。
【0023】
この様に相溶化剤として変性ポリプロピレン樹脂を用いた場合には、その添加量はポリアミド樹脂/ポリプロピレン樹脂=100重量部に対して2.2〜10重量部が好ましい。それ未満ではポリマーアロイ化が不完全で且つ塗装時の塗膜密着性が悪くなり、10重量部を越えると引張強度、熱変形温度が悪くなる。特に好ましい添加量は5〜7重量部である。
【0024】
○又、PA/AES、PA/ABSをアロイ化させる相溶化剤としては、グリシジル化合物をもつポリエチレンを主鎖に、ビニル系ポリマーであるアクリロニトリルースチレン樹脂(AS)をグラフトしたグラフトコポリマーが好ましい。その添加量は、PA/PP樹脂100重量部に対する変性ポリプロピレン樹脂と同じにできる。グリシジル化合物は、次の結合鎖をもつ化合物を意味する。
【0025】
なおPA/AESはPAとAESとをアロイ化するという意味である。他の形態も同様である。
【0026】
○本発明の耐熱性樹脂組成物は前記した所定の成分を、所定の割合で公知の方法を用いて混練して製造される。公知の方法としては、射出成形等、1軸又は2軸押出機による混練方法が挙げられる。
○請求項3に係る方法は、まず、液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練したペレット状組成物を作製し、射出成形の際にペレット状組成物に相溶化剤及び少なくともポリアミド樹脂を添加し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る方法である。この方法によれば、ペレット状組成物を得る際に、溶融粘度の低いポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練するので、繊維状フィラーであるワラストナイトの破損が軽減、回避され易く、またワラストナイトの均一分散性も向上する。
【0027】
○請求項4に係る方法は、まず、液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイトと相溶化剤とを混練したペレット状組成物を作製し、射出成形の際にペレット状組成物に少なくともポリアミド樹脂を添加し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る方法である。この方法によれば、ペレット状組成物を得る際に、溶融粘度の低いポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練するので、繊維状フィラーであるワラストナイトの破損が軽減、回避され易く、また、ワラストナイトの均一分散性も向上する。
【0028】
○請求項5に係る焼付塗装成形品によれば、上記した請求項1の耐熱性樹脂組成物、または請求項2の耐熱性樹脂組成物を主成分とする成形品に焼付塗装され、塗膜が形成される。塗装方法としては特に制限は無く、スプレー塗装法、静電塗装法等公知の方法を採用できる。塗料の種類としては一般に合成樹脂塗料として用いられる塗料を利用でき、ラッカー塗料、ウレタン塗料、アクリルメラミン塗料、アルキッドメラミン塗料、エポキシ塗料が挙げられる。本発明に係る耐熱性樹脂組成物を主成分とする成形品が成形されているので、成形品の耐熱性は高く、160℃前後においても変形をおこさないため、高温焼付塗装(150℃前後)も可能である。
【0029】
○本発明で用いるエポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールA、エピクロロヒドリンとビスフェノールF、エピクロロヒドリンとノボラック樹脂、エピクロロヒドリンとテトラブロモビスフェノールAから製造されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を採用できる。好ましくはエピクロロヒドリンとビスフェノールAから製造されるものが良い。
【0030】
例えばエポキシ当量300〜5000の固形エポキシ樹脂で、ポリアミド系アロイ樹脂100重量部に対して、添加量は2.2〜10重量部が好ましい。2.2重量部未満では反応が起こり難く塗膜密着性の向上が見られない。また10重量部を越えると引張強度、熱変形温度が低くなる。特に好ましい添加量は3〜5重量部である。
【0031】
エポキシ樹脂によればエポキシ当量が300以下では一般的には半固形〜液状であり、樹脂中へ混合する事が困難となり易い。又、エポキシ当量が5000を越えると、塗膜密着性を向上させる効果を出すためには添加量が10重量部を越えることになり、コストが高くなり実用的でない。
請求項3、4の方法においては、エポキシ樹脂を添加する場合には、例えば、ペレット状組成物にポリアミド樹脂と共に添加することができる。
【0032】
○上記した様にエポキシ樹脂を含む耐熱性樹脂組成物によれば、塗膜を形成した場合には、耐候性試験後の塗膜の密着性が良くなる。その理由は次の様に考えられる。即ち、〔化1〕から理解できる様に、添加されたエポキシ樹脂はエポキシ基が開環して成形品のベースであるポリアミドと反応することにより強固に結合する。更に〔化1〕から理解できる様に、添加されたエポキシ樹脂はエポキシ基と塗料(例えばメラミン塗料)との反応により塗膜と強固に結合する。つまりエポキシ樹脂が成形品と塗膜と反応することにより、成形品と塗膜との密着性が向上すると考えられる。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【発明の効果】
○本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、特定の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比を持った微細な繊維状フィラーであるワラストナイトを用い、このワラストナイト20〜100重量部を添加して補強しているので、高荷重下での熱変形性(耐熱性)、強度、剛性及び成形品の表面外観性が向上する。
【0036】
更に本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、上記した特定範囲のワラストナイトを採用しており、射出成形に適するものである。この点、アスペクト比が大きなワラストナイトを採用しているブロー中空成形用の樹脂組成物を得る特公平6−19017号公報に係る技術とは異なる。
ポリプロピレン樹脂を用いる本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、ポリプロピレン樹脂とポリアミド樹脂とをポリマーアロイ化しているので、ポリアミド樹脂の吸湿性を小さくする効果がある。また溶融粘度の低いポリプロピレン樹脂が添加されているので、繊維状フィラーであるワラストナイトが充填された樹脂組成物であっても、射出成形の際における成形加工性は良くなる。
【0037】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、相溶化剤として、不飽和カルボン酸又はその無水物により変性したポリプロピレン樹脂を用いれば、成形樹脂表面に極性基が生じる。従って塗装する場合において、この極性基が塗料として反応するため、塗膜の密着性が向上する。
○エポキシ樹脂を含む本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、塗膜を施した場合には、耐候性試験を行った際の塗膜の密着性を向上できる。
【0038】
○請求項3及び4に係る方法によれば、ポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練してペレット状組成物を得た後に、射出成形の際にそのペレット状組成物と少なくともポリアミド樹脂とを添加する方法である。このペレット状組成物を得るに際の混練時において、ポリプロピレン樹脂はポリアミド樹脂に比較して融点が低く流動性に富み、溶融混練の際において粘性を低めに維持できるため、繊維状フィラーであるワラストナイトの損傷や破損を軽減、回避するのに有利である。従って目標どおりの樹脂組成物の特性を得るのに有利である。
【0039】
更にポリプロピレン樹脂は前述の様に溶融混練時においてポリアミド樹脂に比較して流動性に富み、粘性を低めに維持できるため、繊維状フィラーであるワラストナイトの均一分散性を高めるのに有利である。従って樹脂組成物や成形品における強度等のバラツキを軽減、回避でき、目標どおりの樹脂組成物や成形品の特性を得るのに有利である。
【0040】
○更に請求項3、4に係る方法によれば、ペレット状組成物はポリアミド樹脂ではなく、吸水性の少ないポリプロピレン樹脂を用いて形成されているため、ペレット状組成物のハンドリング時や保管時などにおいて吸湿が小さくなり、樹脂組成物の品質が安定するという利点が得られ、目標どおりの樹脂組成物や成形品の特性を得るのに有利である。
【0041】
○請求項5に係る焼付塗装成形品によれば、上記した樹脂組成物を主成分とする成形品は高温領域における熱変形性が良いので、高温領域における焼付塗装が可能となる。従って塗膜の密着性向上に有利である。殊にエポキシ樹脂を含む耐熱性樹脂組成物で成形品が成形されている場合には、耐候性試験を行っても塗膜密着性は良好となる。
【0042】
【実施例】
<実施例1、2>
実施例1、2によれば、ワラストナイトAとして平均繊維径が5μ、平均アスペクト比が12のものを用いる。この例では、ワラストナイトA100重量部に対して、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBM903 信越化学工業(株)製)を0.6重量部シラン系カップリング剤として添加している。
【0043】
PA66樹脂としてレオナ1402S(商品名、旭化成工業(株)製)を表1に示す割合でワラストナイトAと共に混合して、2軸押出機(40mm径、L/D=30、シリンダー温度260〜280℃)で溶融混練を行い、PA66/ワラストナイトAからなるPA系のマスタ−ペレット(サイズ:φ2mm×3mm)を作製した。
【0044】
このPA系のマスタ−ペレットに、PP樹脂(商品名J−785H、出光石油化学工業(株)製)、相溶化剤Aとして無水マレイン酸変性PP樹脂(商品名アドマーQE800、三井石油化学工業(株)製)をドライブレンドして、射出成形機にてシリンダー温度260〜280℃、金型温度70〜80℃の条件で試験片を成形した。この試験片について物性の測定を行った。。
【0045】
さらに塗料として、アルキッドメラミン系塗料(商品名アミラックTM−13関西ペイント(株)製)を用い、イソプロピルアルコ−ルで脱脂した成形品である試験片にスプレー塗布して30〜40μの塗膜を形成し、その後に140℃×20分焼付を施した後、塗装性の評価を行った。結果を表1に示す。なお表1〜表3中の評価項目は下記によった。
【0046】
【0047】
【表1】
【0048】
表1から理解できる様に実施例1、2によれば、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温度、吸水率、10点平均粗さの材料物性は良好であった。更に、塗装後の鮮映性、熱変形、塗膜密着性も良好あった。更にコストも低廉であった。
<実施例3、4>
実施例3、4では実施例1、2と基本的に同条件で製造した。但し、実施例1、2で用いたPA66樹脂の代わりに、PA6樹脂(商品名アミランCM1017、東レ(株)製)を用いる。そして表1に示す割合で配合、混練して試験片を形成した。その試験片について同様に評価した。結果を表1に示す。
【0049】
表1から理解できる様に、実施例3、4においても引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温度、吸水率、10点平均粗さの材料物性は良好であった。更に、熱変形の評価は△であるものの、塗装後の鮮映性、塗膜密着性も良好あった。更にコストも一層低廉であった。
<実施例5、6>
この例では実施例1、2と基本的に同条件で製造した。但し、マスタ−ペレットを得るにあたり、PA66樹脂の代わりにPP樹脂(商品名J−785H、出光石油化学工業(株)製)を用いた。そしてPP樹脂とワラストナイトAとを混練してPP系のマスタ−ペレット(サイズ:φ3mm×4mm)を形成した。次にそのPP系のマスタ−ペレットにPA66樹脂と相溶化剤Aとをブレンドして、射出成形機にて射出成形し、試験片を形成した。試験片について同様に物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0050】
表2から理解できる様に、実施例5、6においても引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温度、吸水率、10点平均粗さの材料物性は良好であった。特に引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温度、吸水率において、実施例1、2よりも良好であった。特にワラストナイトAが40重量部含まれている実施例6では、引張強度が880kg/cm2 と高く、曲げ強度が1420kg/cm2 と高く、曲げ弾性率が60000kg/cm2 と高く、熱変形温度も190℃と実施例1、2よりも良好であった。勿論、実施例3、4よりも良好であった。
【0051】
また、表2に示す様に実施例5、6共に塗料焼付による熱変形の評価は○であり、塗装後の鮮映性の評価は5であり、実施例1〜4よりも良好な結果であった。更に塗膜密着性も良好あった。更にコストも低廉であった。
ところで上記した実施例5、6によれば、液状のPP樹脂とワラストナイトとを混練してPP系のマスタ−ペレットを得た後に、そのPP系のマスタ−ペレット、相溶化剤及びポリアミド樹脂を添加して溶融混練し、射出成形する方法である。この実施例5、6によれば、PP系のマスタ−ペレットを得る際の混練時において、PP樹脂はPA樹脂に比較して融点が低く流動性に富み粘性を低めに維持できるため、繊維状フィラーであるワラストナイトの損傷や破損を軽減、回避するのに有利である。従って目標どおりの耐熱性樹脂組成物の特性を得るのに有利である。更に粘性を低めに維持できるPP樹脂を用いるため、繊維状フィラーであるワラストナイトの均一分散性を高めるのに有利である。従って強度等のバラツキを軽減、回避でき、目標どおりの耐熱性樹脂組成物の特性を得るのに有利であり、これにより表2から理解できる様に実施例1、2よりも、もちろん実施例3、4よりも、良好な結果が得られたものと推察される。
【0052】
<実施例7、8>
この例では、実施例5、6と同じ材料組成比であるが、マスターペレットを得るにあたり、PP樹脂、相溶化剤とワラストナイトAを共に混合後、溶融混練を行い、PP/相溶化剤/ワラストナイトAからなるPP系のマスターペレット(サイズ:φ3mm×4mm)を作製した。
【0053】
このPP系マスターペレットにPA66樹脂を表2に示す割合でドライブレンドし、射出成形機にてシリンダー温度260〜280℃、金型温度70〜80℃の条件で試験片を形成した。その試験片について同様に物性の測定を行った。結果を表2に示す。表2から理解できる様に、実施例7、8の物性、塗装性は実施例5、6とあまり差が見られない。このことからPP系のマスターペレットは、PP/ワラストナイトA又は、PP/相溶化剤/ワラストナイトAでも良い事がわかる。
【0054】
【表2】
○更に、比較例について説明する。次の比較例1〜比較例7では、実施例1、2と同様にポリアミド樹脂としてPA66樹脂を用いる。
【0055】
<比較例1>
この例ではPA66樹脂のみが採用され、PP樹脂が採用されていない。即ちPA66樹脂と、実施例1で用いたワラストナイトAとを用い、これらを表3に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。そしてその試験片を実施例と同様に評価した。結果を表3に示す。表3から理解できる様に、比較例1ではPA66樹脂のみが用いられているため、強度は良好であり、熱変形温度も220℃とかなり良好であった。しかし実施例と同様なワラストナイトAを用いているものの、10点平均粗さは6.1μmとかなり悪かった。塗装後の鮮映性も3と悪かった。塗膜密着性も初期密着性及び耐温水試験後においても、×の評価であった。従って比較例1の結果から、PA系樹脂だけでは良好な特性が得られず、PP樹脂とのアロイ化が有効であることがわかる。
【0056】
<比較例2>
この例ではPA66樹脂の他に、ポリフェニレンエーテル樹脂(以下PPE樹脂ともいう)としてノリルPP0534(商品名、日本ジーイープラスチックス(株)製)、相溶化剤Bとして無水マレイン酸で変性したPPにポリスチレンをグラフトした化合物であるモディパーA8100(商品名、日本油脂(株)製)を用いる。そしてこれらを表3に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表3に示す。この例ではワラストナイトは配合されていないので、10点平均粗さは1.0μmと極めて小さいものの、PA66樹脂が少ないことも併せて、引張強度、曲げ強度や曲げ弾性率は低かった。更に熱変形温度も120℃と低く、塗料焼付による熱変形の評価も×であり、価格も高かった。
【0057】
<比較例3>
この例はワラストナイトの代わりに市販のガラス繊維を用いる。即ち、比較例2の組成に、平均繊維径が11μ、平均繊維長3mmのガラス繊維(ECS10・871F、セントラル硝子(株)製)を表3に示す割合で配合して混練し、試験片を形成した。その試験片について同様に評価した。結果を表3に示す。この例ではワラストナイトではなく、ガラス繊維が配合されているので引張強度、曲げ強度や曲げ弾性率、熱変形温度は高いものの、10点平均粗さは12.2μmと過大であり、塗装後の鮮映性の評価は1とかなり悪く、価格も高かった。
【0058】
<比較例4>
この例は実施例1と基本的に同じであるが、ワラストナイトの種類が異なる。即ち、実施例1、2で用いたワラストナイトAよりも微小なワラストナイトBを用いた。ワラストナイトBは、平均繊維径が2.5μ、平均アスペクト比が4である。そして表3に示す割合で配合して混練し、試験片を形成した。この試験片を同様に評価した。結果を表3に示す。この例では微小なワラストナイトBを用いているので、10点平均粗さや塗装後の鮮映性は良好であるものの、強度、剛性は充分ではなく、熱変形温度も90℃とかなり低かった。塗料焼付による熱変形の評価も×であった。従って適切な繊維径及びアスペクト比をもつワラストナイトの選択が有効であることがわかる。
【0059】
<比較例5>
この例は実施例1と基本的に同じであるが、ワラストナイトの種類が異なる。即ち、実施例1、2で用いたワラストナイトAよりも大きなワラストナイトCを用いる。ワラストナイトCは、平均繊維径が18μ、平均アスペクト比が6である。そして表3に示す割合で配合して混練し、試験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表3に示す。この例では大きなワラストナイトCを用いているので、10点平均粗さは11.2μmと過大であり、塗装後の鮮映性の評価は1とかなり悪かった。従って適切な繊維径及びアスペクト比をもつワラストナイトの選択が有効であることがわかる。
【0060】
<比較例6、7>
比較例6では実施例1と同様なワラストナイトAを用いるものの、相溶化剤Aが2重量部と少ない。比較例7では実施例1と同様なワラストナイトAを用いるものの、PA66樹脂が60重量%と少なく、PP樹脂が40重量%と多めである。そして同様に試験片を形成し、評価した。結果を表3に示す。この例ではワラストナイトAを用いているため、10点平均粗さは良好であるものの、比較例6では塗膜密着性の評価は、初期密着性、耐温水試験後においても×であった。比較例6では相溶化剤Aが2重量部と低めであり、ポリマーアロイ化が必ずしも充分ではなく、且つ塗装時の塗装密着性が悪くなったためと推察される。PA樹脂が少ない比較例7では、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温度は低かった。
○次の比較例8〜比較例14では、実施例3、4と同様にPA6樹脂を採用する。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
<比較例8>
この例はPA6樹脂を用いる点を除いて比較例1と基本的に同じである。そして表4に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。この例においても比較例1と同様に10点平均粗さは大きく、塗装後の鮮映性も充分ではなかった。塗膜密着性も充分ではなかった。
【0064】
<比較例9>
この例はPA6樹脂を用いる点を除いて比較例2と基本的に同じである。そして表4に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。この例でも比較例2と同様に、10点平均粗さは良好であるものの、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率は小さかった。
【0065】
<比較例10>
この例はPA6樹脂を用いる点を除いて比較例3と基本的に同じである。従って平均繊維径が11μ、平均繊維長3mmのガラス繊維を用いる。そして表4に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。この例でも比較例3と同様に、ガラス繊維を用いているため10点平均粗さは過大であり、塗装後の鮮映性の評価も1であった。
【0066】
<比較例11>
この例はPA6樹脂を用いる点を除いて比較例4と基本的に同じである。従ってワラストナイトAよりも微小なワラストナイトBが用いられている。そして表4に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。この例でも比較例4と同様に10点平均粗さは小さいものの、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率は小さかった。熱変形温度も低かった。
【0067】
<比較例12>
この例はPA6樹脂を用いる点を除いて比較例5と基本的に同じである。従ってワラストナイトAよりも大きなワラストナイトCが用いられている。そして表4に示す割合で配合し、混練して試験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。この例も比較例5と同様に10点平均粗さは過大であり、塗装後の鮮映性の評価も1であった。
【0068】
<比較例13、14>
比較例13は、PA6樹脂を用いる点を除いて比較例6と基本的に同じである。比較例14は、PA6樹脂を用いる点を除いて比較例7と基本的に同じである。そして表4に示す割合で、混練して試験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。
【0069】
(ワラストナイトの破損試験)
混練の際におけるワラストナイトの破損率を調べた。まず混練前のワラストナイトをSEM観察し、混練前のワラストナイト100本の長さL、径D、アスペクト比L/Dを求め、平均値をそれぞれ求めた。
そして試験例Aとして、PP樹脂とワラストナイトとを2軸押出機を用いて、240〜250℃、スクリュー回転:140rpmの条件で混練してPP系マスタ−ペレットを形成した。そして、PP系マスタ−ペレットを500℃で1時間加熱して燃焼させた後に、残ったワラストナイトを同様にSEM観察し、混練後のワラストナイト100本の長さL、径D、アスペクト比L/Dの平均値を求めた。
【0070】
試験例Bとして、PP樹脂に代えてPA66樹脂を用い、PA66樹脂とワラストナイトとを2軸押出機を用いて、270〜280℃、スクリュー回転:140rpmの条件で混練してPP系マスタ−ペレットを形成した。そして、PA系マスタ−ペレットを500℃で1時間加熱して燃焼させた後、残ったワラストナイトをSEM観察し、混練後のワラストナイトの長さL、径D、アスペクト比L/Dのそれぞれの平均値を同様に求めた。
【0071】
結果を表5に示す。表5から理解できる様に、混練前のワラストナイトは繊維長さLが60μm、繊維径が5μm、アスペクト比が12であった。
混練時の粘性を小さくできるPP樹脂が採用されているPP系マスタ−ペレットに係る試験例Aによれば、表5から理解できる様に、混練後のワラストナイトは繊維長さLが55μmでありアスペクト比も11であった。一方、混練時の粘性が大きくなるPA樹脂が採用されているPA系マスタ−ペレットに係る試験例Bによれば、表5から理解できる様に、混練後のワラストナイトは繊維長さLが40μmと短くなり、アスペクト比も8と低めであった。
【0072】
これはPP系マスタ−ペレットでは、PP樹脂はPA樹脂に比較して、混練の際に流動性に富み粘性も低いため、混練の際にワラストナイトが折損、破損しにくいためであると推察される。
【0073】
【表5】
(吸水試験)
マスタ−ペレットにおける吸水率を調べる試験を行った。試験例Cとして、PA66樹脂(70重量%)とワラストナイト(30重量%)とを2軸押出機で混練したペレットを射出成形にてPA系試験片(75mm×25mm×3mm)を形成した。
【0074】
試験例Dとして、PP樹脂(30重量%)とワラストナイト(70重量%)とを2軸押出機で混練したペレットを射出成形にてPP系試験片を形成した。そしてこれらの試験片を23℃の蒸留水に24時間〜360時間〜726時間〜1008時間浸漬し、その重量変化を測定し、これから吸水率を求め、表6に示した。表6から理解できる様に試験例CではPA66樹脂でマスタ−ペレットを形成しているため、吸水率が高い。一方、試験例DではPP樹脂でマスタ−ペレットを形成しているため、吸水率が低くく、1008時間浸漬したとしても0.07%と小さかった。
【0075】
【表6】
この様に試験例A〜Dの結果を考慮すると、ポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練し、固化してペレット状組成物を得る方法を実施すれば、吸水性の問題、混練時におけるワラストナイトの破損の問題を軽減、回避するのに有利であることがわかる。
【0076】
<実施例9〜実施例12>
実施例9〜実施例12は基本的には実施例1〜実施例4に準じるものである。実施例9〜実施例12における配合割合、材料特性、塗装性について表7に示す。
実施例9〜実施例12によれば、実施例1〜4で用いたワラストナイトAをPA樹脂に混合して2軸押出機で溶融混練を行い、PA/ワラストナイトAからなるマスターペレット(サイズ:φ2mm×3mm)を作製した。その後、このマスターペレットに相手樹脂として、実施例9及び実施例10ではAES樹脂、実施例11及び実施例12ではPP樹脂をそれぞれ混合した。更に実施例9及び実施例10では相溶化剤Cをブレンドし、実施例11及び実施例12では、実施例1で用いた相溶化剤Aをブレンドし、射出成形機にてシリンダー温度260〜280℃、金型温度70〜80℃の条件で試験片を成形した。エポキシ樹脂は各相溶化剤をブレンドするときに添加した。前記した相溶化剤Cは、グリシジル化合物をもつポリエチレンを主鎖にビニル系ポリマーであるAS樹脂をグラフトした化合物であり、モディパーA4400(日本油脂(株))製を用いた。
【0077】
上記した各試験片について物性の測定を前述同様に行った。
更に塗料として、実施例1、2と同様に、アルキッドメラミン系塗料を用い、試験片にスプレー塗布して30〜40μmの塗膜を形成し、その後実施例1、2と同様に焼付処理した。
上記例によれば、PA66樹脂として実施例1と同様にレオナ1402S(旭化成工業(株))を用いた。PA6樹脂として実施例3と同様にアミランCM1017(東レ(株))を用いた。PP樹脂として実施例1と同様にJ−785HP(出光石油科学工業(株)製)を用いた。AES樹脂としてUB−500P(住友ダウ(株))を用いた。エポキシ樹脂としてエポキシ当量が2712であるエピクロン HMー091(大日本インキ化学工業(株)製)を用いた。
【0078】
表7に示す実施例9〜実施例12によれば、塗膜密着性の試験として、前述同様な初期密着試験、耐温水試験の他に、耐候性試験を行った。耐候性試験では、塗膜を備えた試験片を用い、サンシャインカーボンウェザメータの照射光に1000時間暴露した後に、碁盤目塗膜剥離試験を行った。
試験結果を表7に示す。表7に示す様に実施例9〜実施例12によれば初期密着試験、耐温水試験共に、試験片100個中のうち、塗膜が剥離したものは0、つまり0/100であり、評価は○であった。更に耐候性試験においても、試験片100個中のうち、塗膜が剥離したものは0/100であり、塗膜の密着性は良好であった。
【0079】
【表7】
なお表7の配合単位は重量部を示す。
【0080】
<試験例1〜試験例8>
表7と表8との比較から理解できる様に、試験例1は実施例9に対応し、試験例2は実施例10に対応し、試験例3は実施例11に対応し、試験例4は実施例12に対応するものである。但し実施例9〜実施例12ではエポキシ樹脂が含まれているが、試験例1〜試験例4ではエポキシ樹脂は含まれていない。試験例5ではエポキシ樹脂が少ない。
【0081】
試験例1〜試験例6についても、前述同様に、塗膜に対して耐候性試験を行った。表8から理解できる様に、塗膜の密着性において初期密着試験と耐温水試験とでは塗膜の密着性の評価は○であり良好であったが、耐候性試験では試験例1〜試験例5では塗膜の密着性に対する評価は×であった。
但し表8から理解できる様に、エポキシ樹脂が適量含まれている試験例6においては、初期密着試験、耐温水試験ばかりでなく、耐候性試験においても塗膜の密着性の評価は○であった。このことからエポキシ樹脂の適量添加が塗膜の耐候性向上に対して良好であることがわかる。
【0082】
上記した試験例1、2ではPA樹脂とアロイ化する樹脂としてAES樹脂を採用しているが、ABS樹脂でも同様の結果が得られた。従って請求項2に係るポリアミド系アロイ樹脂としては、PA/PP、PA/AES、PA/ABSを採用できる。
【0083】
【表8】
【0084】
(適用例)
図1は車両のドア把手として機能するアウトサイドハンドル10を示す。11はキーが装入される装入孔、12は手指が差し込まれる差込凹部である。これは、実施例1〜6のいずれか一方に係る耐熱樹脂組成物を射出成形して成形されている。そしてその表面にアルキッドメラミン系塗料を塗装し、焼付処理して、塗膜が形成されている。この成形品を構成する耐熱性樹脂組成物は耐熱性が優れているので、塗膜の密着性が良好であった。しかも表面平滑性、強度、剛性、耐吸水性等が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】アウトサイドハンドルに適用した例を示す正面図である。
【符号の説明】
図中、10はアウトサイドハンドルを示す。
Claims (5)
- ポリアミド樹脂(PA)90〜65重量%とポリプロピレン樹脂(PP)10〜35重量%とからなるポリアミド/ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、
相溶化剤2.2〜10重量部、平均繊維径が3〜15μ、平均アスペクト比が1〜14のワラストナイト20〜100重量部を含有することを特徴とする射出成形に適する耐熱性樹脂組成物。 - ポリアミド樹脂(PA)90〜65重量%と、
ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリルーエチレンースチレン樹脂(AES)及びアクリロニトリルーブタジエンースチーレン樹脂(ABS)の少なくとも1種10〜35重量%とからなるポリアミド系アロイ樹脂100重量部に対して、
相溶化剤2.2〜10重量部、エポキシ樹脂2.2〜10重量部、
平均繊維径が3〜15μm、平均アスペクト比が1〜14のワラストナイト20〜100重量部を含有することを特徴とする耐熱性樹脂組成物。 - 液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練し、固化してペレット状組成物を得る工程と、
該ペレット状組成物と相溶化剤と少なくともポリアミド樹脂とを溶融混練し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る工程を順に実施することを特徴とする射出成形に適する耐熱性樹脂組成物の製造方法。 - 液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイトと相溶化剤とを混練してペレット状組成物を得る工程と、
該ペレット状組成物と少なくともポリアミド樹脂とを溶融混練し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る工程を順に実施することを特徴とする射出成形に適する耐熱性樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1または請求項2の耐熱性樹脂組成物を主成分とする射出成形された成形品と、該成形品に焼付塗装された塗膜とをもつ焼付塗装成形品。
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