JPH08269323A - 射出成形に適する耐熱性樹脂組成物、その製造方法及び焼付塗装成形品 - Google Patents

射出成形に適する耐熱性樹脂組成物、その製造方法及び焼付塗装成形品

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JPH08269323A
JPH08269323A JP8005026A JP502696A JPH08269323A JP H08269323 A JPH08269323 A JP H08269323A JP 8005026 A JP8005026 A JP 8005026A JP 502696 A JP502696 A JP 502696A JP H08269323 A JPH08269323 A JP H08269323A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐熱性、強度、剛性、低吸水性、表面平滑性、
焼付塗装性に優れた射出成形に適する耐熱性樹脂組成物
を提供する。 【解決手段】PA樹脂90〜65重量%とPP樹脂10
〜35重量%とからなるPA/PP樹脂100重量部に
対して、相溶化剤2.2〜10重量部、ワラストナイト
20〜100重量部を含有する耐熱性樹脂組成物であ
る。ワラストナイトは、平均繊維径が3〜15μm、平
均アスペクト比1〜14である。まずPP樹脂とワラス
トナイトとを混練してマスタ−ペレットを得、次にマス
タ−ペレットとPA樹脂、相溶化剤とを混練し、射出成
形し、成形品を得る。成形品に焼付塗装して塗膜を形成
する。耐候性を考慮すれば、エポキシ樹脂を含むことも
好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は射出成形に適するポ
リアミド系の耐熱性樹脂組成物、その製造方法及び焼付
塗装成形品に関する。本発明は、耐熱性、強度、剛性、
低吸水性、表面平滑性、塗装性、低コスト性に優れてい
る等の工業的な有利性から、インナーパネル、アームレ
スト等の自動車内装部品、ドアハンドル、ホイルカバ
ー、フェンダーパネル、パンパー等の自動車外装部品、
シリンダヘッドカバー、インテークマニホールド等の自
動車機関部品に好適である。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド樹脂は機械的強度、耐油性、
耐熱性等に優れ、最も代表的なエンジニアリングプラス
チックの一つとして、多量に利用されている。しかしな
がら、このポリアミド樹脂は寸法安定性、吸湿性、高荷
重下での熱変形性、乾燥時の耐衝撃性等の性質が劣ると
いう欠点を有している。この欠点を補うため、寸法安定
性、電気的特性、高荷重下での熱変形性、耐水性に優れ
たポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂とを、
相溶化剤としてのスチレン系化合物とα、β−不飽和ジ
カルボン酸無水物を添加することにより、ポリマーアロ
イ化した樹脂組成物が提案されている。(特公昭59−
33614号公報)。
【0003】しかしながら、ポリフェニレンエーテル樹
脂は溶融加工温度が高く、且つ流動性が悪く、添加でき
る比率は、最高で40〜50%程度が限度であるため、
上記したポリマーアロイ化したポリアミド系樹脂組成物
は、高荷重下での熱変形性が必ずしも十分でないという
問題がある。又、これをさらに補うために、ガラス繊維
等の繊維状フィラーを強化材として添加する技術は、公
知である(特開平6−220318号公報)。しかしな
がら、この公報技術によれば成形品の表面外観、特に表
面平滑性が十分でなく、塗装した場合には、塗装した後
の鮮映性は満足出来るものではないという問題もある。
【0004】更にポリアミド樹脂60〜90重量%とポ
リプロピレン樹脂10〜40重量%からなるポリアミド
/ポリプロピレン樹脂100重量部と、ガラス繊維、炭
素繊維、マイカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、
チタン酸カリウムのうちの少なくとも1種からなるフィ
ラ−20〜250重量部からなるポリアミド系樹脂組成
物が知られている(特開平6−100775号公報)。
このものでは、強度、低吸水性、しぼ転写性等が確保さ
れる。この公報技術では、フィラーとしてワラストナイ
トは開示されているものの、フィラーは専らガラス繊維
を主眼とするものであり、ワラストナイトの繊維径、ア
スペクト比等についての開示はない。
【0005】更に又従来技術として、18000〜40
000の数平均分子量(Mn)をもつポリアミド樹脂、
エチレン系アイオノマ−樹脂、ワラストナイトからなる
パリソン特性を高めた中空成形用樹脂組成物が知られて
いる(特公平6−19017号公報)。ワラストナイト
は、この実施例では平均繊維径5〜7μm、アスペクト
比15〜60としている。この様にアスペクト比が15
〜60と大きな領域のワラストナイトを含む樹脂組成物
は、射出成形には不向きであり、射出成形というよりも
ブロー成形用である。その主たる理由は、アスペクト比
が大きなワラストナイトによる補強機能により、ブロー
成形の際に溶融パリソンの形態保持や肉厚一定性を確保
できるからである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した特公平6−1
9017号公報に係る技術に係る樹脂組成物は、前述し
た様にブロー成形の際にパリソン特性を高めるためのパ
リソン成形用樹脂組成物であり、混合するワラストナイ
トは所要の機能を発揮し得る様に、ワラストナイトの繊
維径、アスペクト比はブロー成形の際に良好なパリソン
特性を得る様に大き目に設定されている。
【0007】ワラストナイトが上記した範囲から外れる
と、つまりワラストナイトのアスペクト比が15〜60
の領域よりも小さくなると、溶融パリソン特性が低下
し、ブロー成形の際にパイプ状の溶融パリソンの形態保
持性が低下する(本公報に記載)。従ってブロー成形の
際にパイプ状の溶融パリソンの垂下性が過大となり、パ
リソンの肉厚変動が過大となり、良好なブロー成形品は
得られない。ちなみにこの公報技術の比較例によれば、
ワラストナイトのアスペクト比を1〜5とした場合に
は、パリソン特性が×に評価されている。
【0008】本発明は上記した公報に係るポリアミド系
の樹脂組成物とは異なり、強化フィラーとしてワラスト
ナイトを用いた場合において射出成形用に適するポリア
ミド系の耐熱性樹脂組成物を提供するものであり、しか
も耐熱性、強度、剛性、低吸水性、表面平滑性、焼付塗
装性をバランス良く確保できる射出成形に適するポリア
ミド系の耐熱性樹脂組成物、その製造方法及びポリアミ
ド系の焼付塗装成形品を提供することを解決すべき課題
とする。
【0009】更に請求項2は、塗膜を形成する場合にお
いて、耐候性試験における塗膜の密着性を更に高めるの
に有利なポリアミド系の耐熱性樹脂組成物を提供するこ
とを解決すべき課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る射出成形
に適する耐熱性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(PA)
90〜65重量%とポリプロピレン樹脂(PP)10〜
35重量%とからなるポリアミド/ポリプロピレン樹脂
100重量部に対して、相溶化剤2.2〜10重量部、
平均繊維径が3〜15μ、平均アスペクト比が1〜14
のワラストナイト20〜100重量部を含有することを
特徴とするものである。
【0011】請求項2に係る射出成形に適する耐熱性樹
脂組成物は、ポリアミド樹脂(PA)90〜65重量%
と、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリルー
エチレンースチレン樹脂(AES)及びアクリロニトリ
ルーブタジエンースチーレン樹脂(ABS)の少なくと
も1種10〜35重量%とからなるポリアミド系アロイ
樹脂100重量部に対して、相溶化剤2.2〜10重量
部、エポキシ樹脂2.2〜10重量部、平均繊維径が3
〜15μm、平均アスペクト比が1〜14のワラストナ
イト20〜100重量部を含有することを特徴とするも
のである。
【0012】請求項3に係る射出成形に適する耐熱性樹
脂組成物の製造方法は、液状のポリプロピレン樹脂とワ
ラストナイトとを混練し、固化してペレット状組成物を
得る工程と、ペレット状組成物と相溶化剤と少なくとも
ポリアミド樹脂とを溶融混練し、請求項1の耐熱性樹脂
組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐
熱性樹脂組成物を得る工程を順に実施することを特徴と
するものである。
【0013】請求項4に係る射出成形に適する耐熱性樹
脂組成物の製造方法は、液状のポリプロピレン樹脂とワ
ラストナイトと相溶化剤とを混練してペレット状組成物
を得る工程と、該ペレット状組成物と少なくともポリア
ミド樹脂とを溶融混練し、請求項1の耐熱性樹脂組成
物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性
樹脂組成物を得る工程を順に実施することを特徴とする
ものである。
【0014】請求項5に係る焼付塗装成形品は、請求項
1または請求項2の耐熱性樹脂組成物を主成分とする射
出成形された成形品と、成形品に焼付塗装された塗膜と
をもつことを特徴とするものである。
【0015】
【実施の形態】
○汎用樹脂であるポリプロピレン樹脂(以下PPともい
う)を用いる請求項によれば、ポリアミド樹脂(以下P
Aともいう)とポリプロピレン樹脂とをポリマーアロイ
化したことにより、低コストで、満足する低吸水性をも
つ耐熱性樹脂組成物が得られる。
【0016】○本発明で用いられるポリアミド樹脂は主
鎖に−CONH−結合を有するナイロン4、ナイロン
6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナ
イロン612、ナイロン11等が挙げられる。中でもコ
スト、供給面から有利なナイロン6(以下PA6ともい
う)、ナイロン66(以下PA66ともいう)が好適に
用いられる。
【0017】○本発明で用いられるポリプロピレン樹脂
は、プロピレン単独重合体、もしくはプロピレンにエチ
レン、1−ブテン及び1−ヘキセン等を共重合させたも
のが好ましく、これらの1種又は2種以上のブレンド物
が好ましい。ポリアミド樹脂とポリプロピレン樹脂との
ポリアミド系アロイ樹脂の場合には、ポリアミド樹脂/
ポリプロピレン樹脂=90/10〜65/35(重量
%)に配合する。特に好ましいのは70/30〜80/
20(重量%)である。
【0018】○本発明で用いられるワラストナイトはケ
イ酸カルシウムまたはケイ酸カルシウムを主成分とする
ものである。本発明で用いられるワラストナイトは、平
均繊維径が3〜15μ、平均アスペクト比が1〜14を
有するものである。平均繊維径、平均アスペクト比がこ
の範囲を外れると、射出成形に適する度合が低下すると
共に、成形品における引張強度、曲げ強度、熱変形温
度、表面平滑性が悪くなる。好ましくは平均繊維径が3
〜10μ、平均アスペクト比が5〜13である。
【0019】○このワラストナイトには、ベース樹脂と
の密着性を向上させる目的としてシラン系カップリング
剤が表面処理されている事が望ましい。シラン系カップ
リング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、メ
チルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピル
トリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ヘ
キサメチルシラン、ビニルメトキシシラン等が挙げられ
る。
【0020】シラン系カップリング剤の添加量はワラス
トナイト100重量部に対して0.1〜1重量部が好ま
しい。0.1重量部未満ではワラストナイト表面を充分
に覆う事ができず、又1重量部を越えるとシラン系カッ
プリング剤が厚くなりすぎ、得られた樹脂組成物が脆く
なる傾向にある。特に好ましい添加量は0.3〜0.7
重量部である。
【0021】このワラストナイトの添加量はポリアミド
樹脂/ポリプロピレン樹脂=100重量部に対して20
〜100重量部であり、好ましくは30〜50重量部で
ある。ワラストナイトが20重量部より少ないと、樹脂
を補強する効果が十分でない。また100重量部より多
いと、樹脂の流動性が悪くなり、溶融混練が困難とな
る。
【0022】○PA/PPをポリマーアロイ化させる相
溶化剤としては、変性ポリプロピレン樹脂が好ましい。
変性ポリプロピレン樹脂とは不飽和カルボン酸またはそ
の無水物により変性したポリプロピレン樹脂である。不
飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等
のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボ
ン酸が好ましく、無水物としては、無水マレイン酸、無
水イタコン酸等のジカルボン酸無水物等が挙げられる。
特に無水マレイン酸が好ましい。
【0023】この様に相溶化剤として変性ポリプロピレ
ン樹脂を用いた場合には、その添加量はポリアミド樹脂
/ポリプロピレン樹脂=100重量部に対して2.2〜
10重量部が好ましい。それ未満ではポリマーアロイ化
が不完全で且つ塗装時の塗膜密着性が悪くなり、10重
量部を越えると引張強度、熱変形温度が悪くなる。特に
好ましい添加量は5〜7重量部である。
【0024】○又、PA/AES、PA/ABSをアロ
イ化させる相溶化剤としては、グリシジル化合物をもつ
ポリエチレンを主鎖に、ビニル系ポリマーであるアクリ
ロニトリルースチレン樹脂(AS)をグラフトしたグラ
フトコポリマーが好ましい。その添加量は、PA/PP
樹脂100重量部に対する変性ポリプロピレン樹脂と同
じにできる。グリシジル化合物は、次の結合鎖をもつ化
合物を意味する。
【0025】 なおPA/AESはPAとAESとをアロイ化するとい
う意味である。他の形態も同様である。
【0026】○本発明の耐熱性樹脂組成物は前記した所
定の成分を、所定の割合で公知の方法を用いて混練して
製造される。公知の方法としては、射出成形等、1軸又
は2軸押出機による混練方法が挙げられる。 ○請求項3に係る方法は、まず、液状のポリプロピレン
樹脂とワラストナイトとを混練したペレット状組成物を
作製し、射出成形の際にペレット状組成物に相溶化剤及
び少なくともポリアミド樹脂を添加し、請求項1の耐熱
性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を含む請求項
2の耐熱性樹脂組成物を得る方法である。この方法によ
れば、ペレット状組成物を得る際に、溶融粘度の低いポ
リプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練するので、
繊維状フィラーであるワラストナイトの破損が軽減、回
避され易く、またワラストナイトの均一分散性も向上す
る。
【0027】○請求項4に係る方法は、まず、液状のポ
リプロピレン樹脂とワラストナイトと相溶化剤とを混練
したペレット状組成物を作製し、射出成形の際にペレッ
ト状組成物に少なくともポリアミド樹脂を添加し、請求
項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプロピレン樹脂を
含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る方法である。こ
の方法によれば、ペレット状組成物を得る際に、溶融粘
度の低いポリプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練
するので、繊維状フィラーであるワラストナイトの破損
が軽減、回避され易く、また、ワラストナイトの均一分
散性も向上する。
【0028】○請求項5に係る焼付塗装成形品によれ
ば、上記した請求項1の耐熱性樹脂組成物、または請求
項2の耐熱性樹脂組成物を主成分とする成形品に焼付塗
装され、塗膜が形成される。塗装方法としては特に制限
は無く、スプレー塗装法、静電塗装法等公知の方法を採
用できる。塗料の種類としては一般に合成樹脂塗料とし
て用いられる塗料を利用でき、ラッカー塗料、ウレタン
塗料、アクリルメラミン塗料、アルキッドメラミン塗
料、エポキシ塗料が挙げられる。本発明に係る耐熱性樹
脂組成物を主成分とする成形品が成形されているので、
成形品の耐熱性は高く、160℃前後においても変形を
おこさないため、高温焼付塗装(150℃前後)も可能
である。
【0029】○本発明で用いるエポキシ樹脂としては、
エピクロロヒドリンとビスフェノールA、エピクロロヒ
ドリンとビスフェノールF、エピクロロヒドリンとノボ
ラック樹脂、エピクロロヒドリンとテトラブロモビスフ
ェノールAから製造されるグリシジルエーテル型エポキ
シ樹脂を採用できる。好ましくはエピクロロヒドリンと
ビスフェノールAから製造されるものが良い。
【0030】例えばエポキシ当量300〜5000の固
形エポキシ樹脂で、ポリアミド系アロイ樹脂100重量
部に対して、添加量は2.2〜10重量部が好ましい。
2.2重量部未満では反応が起こり難く塗膜密着性の向
上が見られない。また10重量部を越えると引張強度、
熱変形温度が低くなる。特に好ましい添加量は3〜5重
量部である。
【0031】エポキシ樹脂によればエポキシ当量が30
0以下では一般的には半固形〜液状であり、樹脂中へ混
合する事が困難となり易い。又、エポキシ当量が500
0を越えると、塗膜密着性を向上させる効果を出すため
には添加量が10重量部を越えることになり、コストが
高くなり実用的でない。請求項3、4の方法において
は、エポキシ樹脂を添加する場合には、例えば、ペレッ
ト状組成物にポリアミド樹脂と共に添加することができ
る。
【0032】○上記した様にエポキシ樹脂を含む耐熱性
樹脂組成物によれば、塗膜を形成した場合には、耐候性
試験後の塗膜の密着性が良くなる。その理由は次の様に
考えられる。即ち、〔化1〕から理解できる様に、添加
されたエポキシ樹脂はエポキシ基が開環して成形品のベ
ースであるポリアミドと反応することにより強固に結合
する。更に〔化1〕から理解できる様に、添加されたエ
ポキシ樹脂はエポキシ基と塗料(例えばメラミン塗料)
との反応により塗膜と強固に結合する。つまりエポキシ
樹脂が成形品と塗膜と反応することにより、成形品と塗
膜との密着性が向上すると考えられる。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【発明の効果】
○本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、特定の平均
繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比を持った微細な
繊維状フィラーであるワラストナイトを用い、このワラ
ストナイト20〜100重量部を添加して補強している
ので、高荷重下での熱変形性(耐熱性)、強度、剛性及
び成形品の表面外観性が向上する。
【0036】更に本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれ
ば、上記した特定範囲のワラストナイトを採用してお
り、射出成形に適するものである。この点、アスペクト
比が大きなワラストナイトを採用しているブロー中空成
形用の樹脂組成物を得る特公平6−19017号公報に
係る技術とは異なる。ポリプロピレン樹脂を用いる本発
明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、ポリプロピレン樹
脂とポリアミド樹脂とをポリマーアロイ化しているの
で、ポリアミド樹脂の吸湿性を小さくする効果がある。
また溶融粘度の低いポリプロピレン樹脂が添加されてい
るので、繊維状フィラーであるワラストナイトが充填さ
れた樹脂組成物であっても、射出成形の際における成形
加工性は良くなる。
【0037】本発明に係る耐熱性樹脂組成物によれば、
相溶化剤として、不飽和カルボン酸又はその無水物によ
り変性したポリプロピレン樹脂を用いれば、成形樹脂表
面に極性基が生じる。従って塗装する場合において、こ
の極性基が塗料として反応するため、塗膜の密着性が向
上する。 ○エポキシ樹脂を含む本発明に係る耐熱性樹脂組成物に
よれば、塗膜を施した場合には、耐候性試験を行った際
の塗膜の密着性を向上できる。
【0038】○請求項3及び4に係る方法によれば、ポ
リプロピレン樹脂とワラストナイトとを混練してペレッ
ト状組成物を得た後に、射出成形の際にそのペレット状
組成物と少なくともポリアミド樹脂とを添加する方法で
ある。このペレット状組成物を得るに際の混練時におい
て、ポリプロピレン樹脂はポリアミド樹脂に比較して融
点が低く流動性に富み、溶融混練の際において粘性を低
めに維持できるため、繊維状フィラーであるワラストナ
イトの損傷や破損を軽減、回避するのに有利である。従
って目標どおりの樹脂組成物の特性を得るのに有利であ
る。
【0039】更にポリプロピレン樹脂は前述の様に溶融
混練時においてポリアミド樹脂に比較して流動性に富
み、粘性を低めに維持できるため、繊維状フィラーであ
るワラストナイトの均一分散性を高めるのに有利であ
る。従って樹脂組成物や成形品における強度等のバラツ
キを軽減、回避でき、目標どおりの樹脂組成物や成形品
の特性を得るのに有利である。
【0040】○更に請求項3、4に係る方法によれば、
ペレット状組成物はポリアミド樹脂ではなく、吸水性の
少ないポリプロピレン樹脂を用いて形成されているた
め、ペレット状組成物のハンドリング時や保管時などに
おいて吸湿が小さくなり、樹脂組成物の品質が安定する
という利点が得られ、目標どおりの樹脂組成物や成形品
の特性を得るのに有利である。
【0041】○請求項5に係る焼付塗装成形品によれ
ば、上記した樹脂組成物を主成分とする成形品は高温領
域における熱変形性が良いので、高温領域における焼付
塗装が可能となる。従って塗膜の密着性向上に有利であ
る。殊にエポキシ樹脂を含む耐熱性樹脂組成物で成形品
が成形されている場合には、耐候性試験を行っても塗膜
密着性は良好となる。
【0042】
【実施例】
<実施例1、2>実施例1、2によれば、ワラストナイ
トAとして平均繊維径が5μ、平均アスペクト比が12
のものを用いる。この例では、ワラストナイトA100
重量部に対して、γ−アミノプロピルトリエトキシシラ
ン(KBM903 信越化学工業(株)製)を0.6重
量部シラン系カップリング剤として添加している。
【0043】PA66樹脂としてレオナ1402S(商
品名、旭化成工業(株)製)を表1に示す割合でワラス
トナイトAと共に混合して、2軸押出機(40mm径、
L/D=30、シリンダー温度260〜280℃)で溶
融混練を行い、PA66/ワラストナイトAからなるP
A系のマスタ−ペレット(サイズ:φ2mm×3mm)
を作製した。
【0044】このPA系のマスタ−ペレットに、PP樹
脂(商品名J−785H、出光石油化学工業(株)
製)、相溶化剤Aとして無水マレイン酸変性PP樹脂
(商品名アドマーQE800、三井石油化学工業(株)
製)をドライブレンドして、射出成形機にてシリンダー
温度260〜280℃、金型温度70〜80℃の条件で
試験片を成形した。この試験片について物性の測定を行
った。。
【0045】さらに塗料として、アルキッドメラミン系
塗料(商品名アミラックTM−13関西ペイント(株)
製)を用い、イソプロピルアルコ−ルで脱脂した成形品
である試験片にスプレー塗布して30〜40μの塗膜を
形成し、その後に140℃×20分焼付を施した後、塗
装性の評価を行った。結果を表1に示す。なお表1〜表
3中の評価項目は下記によった。
【0046】 塗装後の鮮映性:目視で観察し、鮮映性の最も優れるもの5、最も劣るも の1とし、5段階で相対評価した。 塗料焼付による変形:○:塗膜表面部にソリ、ウネリなし △:塗膜表面部に若干ソリ、ウネリあり ×:塗膜表面部に明らかにソリ、ウネリあり 塗膜密着性:初期密着試験(塗装直後にテスト) 耐温水試験(40℃×240hr温水浸漬後にテスト) ○:碁盤目塗膜剥離試験による塗膜剥離無し ×:碁盤目塗膜剥離試験による塗膜剥離あり 表1中の数値(x/100)=(塗膜剥離した数/ 塗膜剥離試験を行った全目数) コスト比較:PA66系の実施例1、2、5、6においては、PA66系 の比較例1の材料コストを100として相対比較 :PA6系の実施例3、4においては、PA6系の比較例8の 材料コストを100として相対比較
【0047】
【表1】 注) 配合単位は重量部 1)ASTM D638に準拠 2)、3)ASTM D790に準拠(18.6kg/cm2 荷重) 4)ASTM D648に準拠 5)23℃×24hr後の重量変化 6)JIS B0601に準拠 7)実施例1、2は前述の様に比較例1を100とした。
【0048】表1から理解できる様に実施例1、2によ
れば、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温度、
吸水率、10点平均粗さの材料物性は良好であった。更
に、塗装後の鮮映性、熱変形、塗膜密着性も良好あっ
た。更にコストも低廉であった。 <実施例3、4>実施例3、4では実施例1、2と基本
的に同条件で製造した。但し、実施例1、2で用いたP
A66樹脂の代わりに、PA6樹脂(商品名アミランC
M1017、東レ(株)製)を用いる。そして表1に示
す割合で配合、混練して試験片を形成した。その試験片
について同様に評価した。結果を表1に示す。
【0049】表1から理解できる様に、実施例3、4に
おいても引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温
度、吸水率、10点平均粗さの材料物性は良好であっ
た。更に、熱変形の評価は△であるものの、塗装後の鮮
映性、塗膜密着性も良好あった。更にコストも一層低廉
であった。 <実施例5、6>この例では実施例1、2と基本的に同
条件で製造した。但し、マスタ−ペレットを得るにあた
り、PA66樹脂の代わりにPP樹脂(商品名J−78
5H、出光石油化学工業(株)製)を用いた。そしてP
P樹脂とワラストナイトAとを混練してPP系のマスタ
−ペレット(サイズ:φ3mm×4mm)を形成した。
次にそのPP系のマスタ−ペレットにPA66樹脂と相
溶化剤Aとをブレンドして、射出成形機にて射出成形
し、試験片を形成した。試験片について同様に物性の測
定を行った。結果を表2に示す。
【0050】表2から理解できる様に、実施例5、6に
おいても引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温
度、吸水率、10点平均粗さの材料物性は良好であっ
た。特に引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温
度、吸水率において、実施例1、2よりも良好であっ
た。特にワラストナイトAが40重量部含まれている実
施例6では、引張強度が880kg/cm2 と高く、曲
げ強度が1420kg/cm2と高く、曲げ弾性率が6
0000kg/cm2 と高く、熱変形温度も190℃と
実施例1、2よりも良好であった。勿論、実施例3、4
よりも良好であった。
【0051】また、表2に示す様に実施例5、6共に塗
料焼付による熱変形の評価は○であり、塗装後の鮮映性
の評価は5であり、実施例1〜4よりも良好な結果であ
った。更に塗膜密着性も良好あった。更にコストも低廉
であった。ところで上記した実施例5、6によれば、液
状のPP樹脂とワラストナイトとを混練してPP系のマ
スタ−ペレットを得た後に、そのPP系のマスタ−ペレ
ット、相溶化剤及びポリアミド樹脂を添加して溶融混練
し、射出成形する方法である。この実施例5、6によれ
ば、PP系のマスタ−ペレットを得る際の混練時におい
て、PP樹脂はPA樹脂に比較して融点が低く流動性に
富み粘性を低めに維持できるため、繊維状フィラーであ
るワラストナイトの損傷や破損を軽減、回避するのに有
利である。従って目標どおりの耐熱性樹脂組成物の特性
を得るのに有利である。更に粘性を低めに維持できるP
P樹脂を用いるため、繊維状フィラーであるワラストナ
イトの均一分散性を高めるのに有利である。従って強度
等のバラツキを軽減、回避でき、目標どおりの耐熱性樹
脂組成物の特性を得るのに有利であり、これにより表2
から理解できる様に実施例1、2よりも、もちろん実施
例3、4よりも、良好な結果が得られたものと推察され
る。
【0052】<実施例7、8>この例では、実施例5、
6と同じ材料組成比であるが、マスターペレットを得る
にあたり、PP樹脂、相溶化剤とワラストナイトAを共
に混合後、溶融混練を行い、PP/相溶化剤/ワラスト
ナイトAからなるPP系のマスターペレット(サイズ:
φ3mm×4mm)を作製した。
【0053】このPP系マスターペレットにPA66樹
脂を表2に示す割合でドライブレンドし、射出成形機に
てシリンダー温度260〜280℃、金型温度70〜8
0℃の条件で試験片を形成した。その試験片について同
様に物性の測定を行った。結果を表2に示す。表2から
理解できる様に、実施例7、8の物性、塗装性は実施例
5、6とあまり差が見られない。このことからPP系の
マスターペレットは、PP/ワラストナイトA又は、P
P/相溶化剤/ワラストナイトAでも良い事がわかる。
【0054】
【表2】 ○更に、比較例について説明する。次の比較例1〜比較
例7では、実施例1、2と同様にポリアミド樹脂として
PA66樹脂を用いる。
【0055】<比較例1>この例ではPA66樹脂のみ
が採用され、PP樹脂が採用されていない。即ちPA6
6樹脂と、実施例1で用いたワラストナイトAとを用
い、これらを表3に示す割合で配合し、混練し、試験片
を形成した。そしてその試験片を実施例と同様に評価し
た。結果を表3に示す。表3から理解できる様に、比較
例1ではPA66樹脂のみが用いられているため、強度
は良好であり、熱変形温度も220℃とかなり良好であ
った。しかし実施例と同様なワラストナイトAを用いて
いるものの、10点平均粗さは6.1μmとかなり悪か
った。塗装後の鮮映性も3と悪かった。塗膜密着性も初
期密着性及び耐温水試験後においても、×の評価であっ
た。従って比較例1の結果から、PA系樹脂だけでは良
好な特性が得られず、PP樹脂とのアロイ化が有効であ
ることがわかる。
【0056】<比較例2>この例ではPA66樹脂の他
に、ポリフェニレンエーテル樹脂(以下PPE樹脂とも
いう)としてノリルPP0534(商品名、日本ジーイ
ープラスチックス(株)製)、相溶化剤Bとして無水マ
レイン酸で変性したPPにポリスチレンをグラフトした
化合物であるモディパーA8100(商品名、日本油脂
(株)製)を用いる。そしてこれらを表3に示す割合で
配合し、混練し、試験片を形成した。その試験片を同様
に評価した。結果を表3に示す。この例ではワラストナ
イトは配合されていないので、10点平均粗さは1.0
μmと極めて小さいものの、PA66樹脂が少ないこと
も併せて、引張強度、曲げ強度や曲げ弾性率は低かっ
た。更に熱変形温度も120℃と低く、塗料焼付による
熱変形の評価も×であり、価格も高かった。
【0057】<比較例3>この例はワラストナイトの代
わりに市販のガラス繊維を用いる。即ち、比較例2の組
成に、平均繊維径が11μ、平均繊維長3mmのガラス
繊維(ECS10・871F、セントラル硝子(株)
製)を表3に示す割合で配合して混練し、試験片を形成
した。その試験片について同様に評価した。結果を表3
に示す。この例ではワラストナイトではなく、ガラス繊
維が配合されているので引張強度、曲げ強度や曲げ弾性
率、熱変形温度は高いものの、10点平均粗さは12.
2μmと過大であり、塗装後の鮮映性の評価は1とかな
り悪く、価格も高かった。
【0058】<比較例4>この例は実施例1と基本的に
同じであるが、ワラストナイトの種類が異なる。即ち、
実施例1、2で用いたワラストナイトAよりも微小なワ
ラストナイトBを用いた。ワラストナイトBは、平均繊
維径が2.5μ、平均アスペクト比が4である。そして
表3に示す割合で配合して混練し、試験片を形成した。
この試験片を同様に評価した。結果を表3に示す。この
例では微小なワラストナイトBを用いているので、10
点平均粗さや塗装後の鮮映性は良好であるものの、強
度、剛性は充分ではなく、熱変形温度も90℃とかなり
低かった。塗料焼付による熱変形の評価も×であった。
従って適切な繊維径及びアスペクト比をもつワラストナ
イトの選択が有効であることがわかる。
【0059】<比較例5>この例は実施例1と基本的に
同じであるが、ワラストナイトの種類が異なる。即ち、
実施例1、2で用いたワラストナイトAよりも大きなワ
ラストナイトCを用いる。ワラストナイトCは、平均繊
維径が18μ、平均アスペクト比が6である。そして表
3に示す割合で配合して混練し、試験片を形成した。そ
の試験片を同様に評価した。結果を表3に示す。この例
では大きなワラストナイトCを用いているので、10点
平均粗さは11.2μmと過大であり、塗装後の鮮映性
の評価は1とかなり悪かった。従って適切な繊維径及び
アスペクト比をもつワラストナイトの選択が有効である
ことがわかる。
【0060】<比較例6、7>比較例6では実施例1と
同様なワラストナイトAを用いるものの、相溶化剤Aが
2重量部と少ない。比較例7では実施例1と同様なワラ
ストナイトAを用いるものの、PA66樹脂が60重量
%と少なく、PP樹脂が40重量%と多めである。そし
て同様に試験片を形成し、評価した。結果を表3に示
す。この例ではワラストナイトAを用いているため、1
0点平均粗さは良好であるものの、比較例6では塗膜密
着性の評価は、初期密着性、耐温水試験後においても×
であった。比較例6では相溶化剤Aが2重量部と低めで
あり、ポリマーアロイ化が必ずしも充分ではなく、且つ
塗装時の塗装密着性が悪くなったためと推察される。P
A樹脂が少ない比較例7では、引張強度、曲げ強度、曲
げ弾性率、熱変形温度は低かった。 ○次の比較例8〜比較例14では、実施例3、4と同様
にPA6樹脂を採用する。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】<比較例8>この例はPA6樹脂を用いる
点を除いて比較例1と基本的に同じである。そして表4
に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。その
試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。この例に
おいても比較例1と同様に10点平均粗さは大きく、塗
装後の鮮映性も充分ではなかった。塗膜密着性も充分で
はなかった。
【0064】<比較例9>この例はPA6樹脂を用いる
点を除いて比較例2と基本的に同じである。そして表4
に示す割合で配合し、混練し、試験片を形成した。その
試験片を同様に評価した。結果を表4に示す。この例で
も比較例2と同様に、10点平均粗さは良好であるもの
の、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率は小さかった。
【0065】<比較例10>この例はPA6樹脂を用い
る点を除いて比較例3と基本的に同じである。従って平
均繊維径が11μ、平均繊維長3mmのガラス繊維を用
いる。そして表4に示す割合で配合し、混練し、試験片
を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を表4
に示す。この例でも比較例3と同様に、ガラス繊維を用
いているため10点平均粗さは過大であり、塗装後の鮮
映性の評価も1であった。
【0066】<比較例11>この例はPA6樹脂を用い
る点を除いて比較例4と基本的に同じである。従ってワ
ラストナイトAよりも微小なワラストナイトBが用いら
れている。そして表4に示す割合で配合し、混練し、試
験片を形成した。試験片を同様に評価した。結果を表4
に示す。この例でも比較例4と同様に10点平均粗さは
小さいものの、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率は小さ
かった。熱変形温度も低かった。
【0067】<比較例12>この例はPA6樹脂を用い
る点を除いて比較例5と基本的に同じである。従ってワ
ラストナイトAよりも大きなワラストナイトCが用いら
れている。そして表4に示す割合で配合し、混練して試
験片を形成した。その試験片を同様に評価した。結果を
表4に示す。この例も比較例5と同様に10点平均粗さ
は過大であり、塗装後の鮮映性の評価も1であった。
【0068】<比較例13、14>比較例13は、PA
6樹脂を用いる点を除いて比較例6と基本的に同じであ
る。比較例14は、PA6樹脂を用いる点を除いて比較
例7と基本的に同じである。そして表4に示す割合で、
混練して試験片を形成した。その試験片を同様に評価し
た。結果を表4に示す。
【0069】(ワラストナイトの破損試験)混練の際に
おけるワラストナイトの破損率を調べた。まず混練前の
ワラストナイトをSEM観察し、混練前のワラストナイ
ト100本の長さL、径D、アスペクト比L/Dを求
め、平均値をそれぞれ求めた。そして試験例Aとして、
PP樹脂とワラストナイトとを2軸押出機を用いて、2
40〜250℃、スクリュー回転:140rpmの条件
で混練してPP系マスタ−ペレットを形成した。そし
て、PP系マスタ−ペレットを500℃で1時間加熱し
て燃焼させた後に、残ったワラストナイトを同様にSE
M観察し、混練後のワラストナイト100本の長さL、
径D、アスペクト比L/Dの平均値を求めた。
【0070】試験例Bとして、PP樹脂に代えてPA6
6樹脂を用い、PA66樹脂とワラストナイトとを2軸
押出機を用いて、270〜280℃、スクリュー回転:
140rpmの条件で混練してPP系マスタ−ペレット
を形成した。そして、PA系マスタ−ペレットを500
℃で1時間加熱して燃焼させた後、残ったワラストナイ
トをSEM観察し、混練後のワラストナイトの長さL、
径D、アスペクト比L/Dのそれぞれの平均値を同様に
求めた。
【0071】結果を表5に示す。表5から理解できる様
に、混練前のワラストナイトは繊維長さLが60μm、
繊維径が5μm、アスペクト比が12であった。混練時
の粘性を小さくできるPP樹脂が採用されているPP系
マスタ−ペレットに係る試験例Aによれば、表5から理
解できる様に、混練後のワラストナイトは繊維長さLが
55μmでありアスペクト比も11であった。一方、混
練時の粘性が大きくなるPA樹脂が採用されているPA
系マスタ−ペレットに係る試験例Bによれば、表5から
理解できる様に、混練後のワラストナイトは繊維長さL
が40μmと短くなり、アスペクト比も8と低めであっ
た。
【0072】これはPP系マスタ−ペレットでは、PP
樹脂はPA樹脂に比較して、混練の際に流動性に富み粘
性も低いため、混練の際にワラストナイトが折損、破損
しにくいためであると推察される。
【0073】
【表5】 (吸水試験)マスタ−ペレットにおける吸水率を調べる
試験を行った。試験例Cとして、PA66樹脂(70重
量%)とワラストナイト(30重量%)とを2軸押出機
で混練したペレットを射出成形にてPA系試験片(75
mm×25mm×3mm)を形成した。
【0074】試験例Dとして、PP樹脂(30重量%)
とワラストナイト(70重量%)とを2軸押出機で混練
したペレットを射出成形にてPP系試験片を形成した。
そしてこれらの試験片を23℃の蒸留水に24時間〜3
60時間〜726時間〜1008時間浸漬し、その重量
変化を測定し、これから吸水率を求め、表6に示した。
表6から理解できる様に試験例CではPA66樹脂でマ
スタ−ペレットを形成しているため、吸水率が高い。一
方、試験例DではPP樹脂でマスタ−ペレットを形成し
ているため、吸水率が低くく、1008時間浸漬したと
しても0.07%と小さかった。
【0075】
【表6】 この様に試験例A〜Dの結果を考慮すると、ポリプロピ
レン樹脂とワラストナイトとを混練し、固化してペレッ
ト状組成物を得る方法を実施すれば、吸水性の問題、混
練時におけるワラストナイトの破損の問題を軽減、回避
するのに有利であることがわかる。
【0076】<実施例9〜実施例12>実施例9〜実施
例12は基本的には実施例1〜実施例4に準じるもので
ある。実施例9〜実施例12における配合割合、材料特
性、塗装性について表7に示す。実施例9〜実施例12
によれば、実施例1〜4で用いたワラストナイトAをP
A樹脂に混合して2軸押出機で溶融混練を行い、PA/
ワラストナイトAからなるマスターペレット(サイズ:
φ2mm×3mm)を作製した。その後、このマスター
ペレットに相手樹脂として、実施例9及び実施例10で
はAES樹脂、実施例11及び実施例12ではPP樹脂
をそれぞれ混合した。更に実施例9及び実施例10では
相溶化剤Cをブレンドし、実施例11及び実施例12で
は、実施例1で用いた相溶化剤Aをブレンドし、射出成
形機にてシリンダー温度260〜280℃、金型温度7
0〜80℃の条件で試験片を成形した。エポキシ樹脂は
各相溶化剤をブレンドするときに添加した。前記した相
溶化剤Cは、グリシジル化合物をもつポリエチレンを主
鎖にビニル系ポリマーであるAS樹脂をグラフトした化
合物であり、モディパーA4400(日本油脂(株))
製を用いた。
【0077】上記した各試験片について物性の測定を前
述同様に行った。更に塗料として、実施例1、2と同様
に、アルキッドメラミン系塗料を用い、試験片にスプレ
ー塗布して30〜40μmの塗膜を形成し、その後実施
例1、2と同様に焼付処理した。上記例によれば、PA
66樹脂として実施例1と同様にレオナ1402S(旭
化成工業(株))を用いた。PA6樹脂として実施例3
と同様にアミランCM1017(東レ(株))を用い
た。PP樹脂として実施例1と同様にJ−785HP
(出光石油科学工業(株)製)を用いた。AES樹脂と
してUB−500P(住友ダウ(株))を用いた。エポ
キシ樹脂としてエポキシ当量が2712であるエピクロ
ン HMー091(大日本インキ化学工業(株)製)を
用いた。
【0078】表7に示す実施例9〜実施例12によれ
ば、塗膜密着性の試験として、前述同様な初期密着試
験、耐温水試験の他に、耐候性試験を行った。耐候性試
験では、塗膜を備えた試験片を用い、サンシャインカー
ボンウェザメータの照射光に1000時間暴露した後
に、碁盤目塗膜剥離試験を行った。試験結果を表7に示
す。表7に示す様に実施例9〜実施例12によれば初期
密着試験、耐温水試験共に、試験片100個中のうち、
塗膜が剥離したものは0、つまり0/100であり、評
価は○であった。更に耐候性試験においても、試験片1
00個中のうち、塗膜が剥離したものは0/100であ
り、塗膜の密着性は良好であった。
【0079】
【表7】 なお表7の配合単位は重量部を示す。
【0080】<試験例1〜試験例8>表7と表8との比
較から理解できる様に、試験例1は実施例9に対応し、
試験例2は実施例10に対応し、試験例3は実施例11
に対応し、試験例4は実施例12に対応するものであ
る。但し実施例9〜実施例12ではエポキシ樹脂が含ま
れているが、試験例1〜試験例4ではエポキシ樹脂は含
まれていない。試験例5ではエポキシ樹脂が少ない。
【0081】試験例1〜試験例6についても、前述同様
に、塗膜に対して耐候性試験を行った。表8から理解で
きる様に、塗膜の密着性において初期密着試験と耐温水
試験とでは塗膜の密着性の評価は○であり良好であった
が、耐候性試験では試験例1〜試験例5では塗膜の密着
性に対する評価は×であった。但し表8から理解できる
様に、エポキシ樹脂が適量含まれている試験例6におい
ては、初期密着試験、耐温水試験ばかりでなく、耐候性
試験においても塗膜の密着性の評価は○であった。この
ことからエポキシ樹脂の適量添加が塗膜の耐候性向上に
対して良好であることがわかる。
【0082】上記した試験例1、2ではPA樹脂とアロ
イ化する樹脂としてAES樹脂を採用しているが、AB
S樹脂でも同様の結果が得られた。従って請求項2に係
るポリアミド系アロイ樹脂としては、PA/PP、PA
/AES、PA/ABSを採用できる。
【0083】
【表8】
【0084】(適用例)図1は車両のドア把手として機
能するアウトサイドハンドル10を示す。11はキーが
装入される装入孔、12は手指が差し込まれる差込凹部
である。これは、実施例1〜6のいずれか一方に係る耐
熱樹脂組成物を射出成形して成形されている。そしてそ
の表面にアルキッドメラミン系塗料を塗装し、焼付処理
して、塗膜が形成されている。この成形品を構成する耐
熱性樹脂組成物は耐熱性が優れているので、塗膜の密着
性が良好であった。しかも表面平滑性、強度、剛性、耐
吸水性等が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】アウトサイドハンドルに適用した例を示す正面
図である。
【符号の説明】
図中、10はアウトサイドハンドルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 23:10 23:26) B29K 77:00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリアミド樹脂(PA)90〜65重量%
    とポリプロピレン樹脂(PP)10〜35重量%とから
    なるポリアミド/ポリプロピレン樹脂100重量部に対
    して、 相溶化剤2.2〜10重量部、平均繊維径が3〜15
    μ、平均アスペクト比が1〜14のワラストナイト20
    〜100重量部を含有することを特徴とする射出成形に
    適する耐熱性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】ポリアミド樹脂(PA)90〜65重量%
    と、 ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリルーエチ
    レンースチレン樹脂(AES)及びアクリロニトリルー
    ブタジエンースチーレン樹脂(ABS)の少なくとも1
    種10〜35重量%とからなるポリアミド系アロイ樹脂
    100重量部に対して、 相溶化剤2.2〜10重量部、エポキシ樹脂2.2〜1
    0重量部、 平均繊維径が3〜15μm、平均アスペクト比が1〜1
    4のワラストナイト20〜100重量部を含有すること
    を特徴とする耐熱性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイ
    トとを混練し、固化してペレット状組成物を得る工程
    と、 該ペレット状組成物と相溶化剤と少なくともポリアミド
    樹脂とを溶融混練し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、ま
    たはポリプロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組
    成物を得る工程を順に実施することを特徴とする射出成
    形に適する耐熱性樹脂組成物の製造方法。
  4. 【請求項4】液状のポリプロピレン樹脂とワラストナイ
    トと相溶化剤とを混練してペレット状組成物を得る工程
    と、 該ペレット状組成物と少なくともポリアミド樹脂とを溶
    融混練し、請求項1の耐熱性樹脂組成物、またはポリプ
    ロピレン樹脂を含む請求項2の耐熱性樹脂組成物を得る
    工程を順に実施することを特徴とする射出成形に適する
    耐熱性樹脂組成物の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1または請求項2の耐熱性樹脂組成
    物を主成分とする射出成形された成形品と、該成形品に
    焼付塗装された塗膜とをもつ焼付塗装成形品。
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