JP4205806B2 - ボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料 - Google Patents
ボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装分野に用いられる包装用の蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料に関するもので、特にボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等が必要な包装分野に用いられる蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能、性質および品質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を阻止する必要があり、これら様々気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などによる影響が少ないアルミ等の金属からなる金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
【0003】
ところが、アルミ等の金属からなる金属箔を用いた包装材料は、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなどの欠点を有し、問題があった。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば米国特許第3442686号明細書、特公昭63−28017号公報等に記載されている如き、高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成したフィルムが開発されている。
これらの蒸着フィルムは透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性の両者を有する包装材料として好適とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した包装材料に適する蒸着フィルムであっても、包装容器または包装材として、蒸着フィルム単体で用いられることはほとんどなく、蒸着後の後加工として蒸着フィルム表面に文字・絵柄等を印刷加工またはフィルム等との貼り合わせ、容器等の包装体への形状加工などさまざまな工程を経て包装体を完成させている。
特にボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等を行う場合の包装材料は、種々さまざまな工程を経て殺菌されるために、包装材料の設計には十分注意しなければならない。
【0006】
そこで、上述した蒸着フィルム等を用いてシーラントフィルムと貼り合わせ製袋後、内容物を充填してボイル殺菌やレトルト殺菌を試みたところ、殺菌後シール部の一部にデラミが発生して外観不良になったり、その部分からガスバリア性が低下し、内容物が変質する等の問題を有することが明らかとなった。
【0007】
すなわち、この様な場合の包装材料として用いられる条件として、内容物を直接透視することが可能な透明性、内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性及びボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌後もガスバリア性の劣化がなく、またデラミ等が発生しない等の耐ボイル性、耐レトルト性及び耐オートクレーブ性を有することが求められており、現在のところこれら全てを満たす包装材料は見いだされていない。
【0008】
そこで、本発明においては透明性に優れ、且つ高いガスバリア性を有すると共にボイル殺菌やレトルト殺菌後も物性の劣化がなく、デラミネーション等の発生がない高い耐ボイル性、耐レトルト性を持つ実用性の高い蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を達成するためのもので、請求項1の発明は、プラスチック材料からなるプラスチック基材の少なくとも片面に、アクリルポリオールの水酸基若しくはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一方と反応する有機官能基を有するシランカップリング剤若しくはシランカップリング剤の加水分解物と、ヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)のアクリルポリオールと、イソシアネート化合物との複合物を含むプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層、及び被覆層を順次積層したことを特徴とするボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム、としたものである。
【0011】
請求項2の発明は、前記シランカップリング剤に含まれる有機官能基がイソシアネート基、アミノ基、又はメルカプト基のいずれか1種であることを特徴とする請求項1記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム、としたものである。
【0013】
請求項3の発明は、前記プライマー層の厚さが、0.01〜2μmの範囲であることを請求項1又は2記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム、としたものである。
【0014】
請求項4の発明は、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム、としたものである。
【0016】
請求項5の発明は、前記被覆層が水溶性高分子と金属アルコキシド及び/又はその加水分解物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム、としたものである。
【0017】
請求項6の発明は、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、又はこれらの混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項5記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム、としたものである。
【0019】
請求項7の発明は、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールからなることを特徴とする請求項5又は6に記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム、としたものである。
【0020】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルムの被覆層上に接着層を介してヒートシール層を積層したことを特徴とするボイル殺菌、レトルト殺菌用包装材料、としたものである。
【0021】
【作用】
本発明によれば、プラスチック基材上にボイル殺菌やレトルト殺菌後も寸法安定性や密着性に優れたプライマー層を設けた後、ガスバリア性に優れた無機酸化物薄膜層を積層した構成になっているので、ボイル殺層菌やレトルト殺菌等の後もデラミの発生やガスバリア性の劣化のない実用性の高い蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明を図面を用いて更に詳細に説明する。
図1および図2は本発明の蒸着フィルムを説明する断面図である。
図1におけるプラスチック基材1は透明プラスチック材料からなるフィルムであり、その上に有機官能基を有するシランカップリング剤、ポリオールおよびイソシアネート化合物等の複合物よりなるプライマー層2、無機酸化物を蒸着などのして形成した無機酸化物薄膜層3が積層形成されている。また図2に示す蒸着フィルムは、図1に示される実施の形態の蒸着フィルムの無機酸化物薄膜層3上に、更に被膜層4を積層したものである。
【0023】
上述したプラスチック基材1はプラスチック材料からなるフィルムであり、無機酸化物薄膜層の透明性を生かすために透明なフィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。特に二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
またこのプラスチック基材1の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
【0024】
プラスチック基材1の厚さはとくに制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他の層を積層する場合もあること、プライマー層2、無機酸化物薄膜層3、または被膜層4を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲で、用途によって6〜30μmとすることが好ましい。
【0025】
また、量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できるように連続状長尺フィルムとすることが望ましい。
【0026】
本発明のプライマー層2は、プラスチックフィルムからなるプラスチック基材1上に設けられ、プラスチック基材1と無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層3との間の密着性を高め、特にボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等の加熱処理後のデラミネーションの発生等を防止することを目的とする。
鋭意検討の結果、上記目的達成の為にプライマー層2として用いる事ができるのは、有機官能基を有するシランカップリング剤或いはその加水分解物と、ポリオール及びイソシアネート化合物等との複合物である必要がある。
【0027】
更に、プライマー層2を構成する複合物について詳細に説明する。
前記シランカップリング剤の例としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤或いはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0028】
さらにこれらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。
例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N―β―(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものがある。
さらにγ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ―(3、4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β―メトキシエトキシ)シラン等のようなシランカップリング剤にアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでも良く、これら1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0029】
これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固なプライマー層を形成し、他端のアルコキシ基またはアルコキシ基の加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物中の金属や、無機酸化物の表面の極性の高い水酸基等と強い相互作用により無機酸化物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。
よって上記プライマー層としてシランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0030】
またポリオールとは高分子末端に、2つ以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。このポリオールとして、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが好ましい。
中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを重合させたアクリルポリオールや、前記アクリル酸誘導体とスチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性、シランカップリング剤との相溶性を考慮すると前記アクリルポリオールのヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0031】
アクリルポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比で1/1から1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1から100/1の範囲にあることである。溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。
しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いる場合には、共溶媒としてイソプロピルアルコール等のアルコール類と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0032】
更にイソシアネート化合物は、アクリルポリオールなどのポリオールと反応してできるウレタン結合によりプラスチック基材や無機酸化物との密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。前記機能を発揮するイソシアネート化合物の具体例としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシリレンジイソシアネート(XDI)やヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、もしくは誘導体の1種、またはこれらの2種以上用いることができる。
【0033】
ここで、アクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるものではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでアクリルポリオールとイソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がアクリルポリオール由来のOH基の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が当量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0034】
本発明におけるプライマー層は、シランカップリング剤、ポリオール、イソシアネート化合物を任意の濃度で混合した複合溶液を製作し、プラスチック基材1にコーティング、乾燥硬化して形成する。
前記プライマー層を形成するプライマー剤は具体的には、シランカップリング剤とポリオールを混合し、溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して作成する。前記方法以外にシランカップリング剤とポリオールを溶媒中混合しておき予めシランカップリング剤とポリオールを反応させたものを溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物加えて作製する方法などがある。
【0035】
前記プライマー剤にさらに各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を添加する事も可能である。
【0036】
プライマー層2は、プライマー剤を例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いプラスチック基材1の上にコーティングし、その後コーティング膜を乾燥乾燥し溶媒等を除去し硬化させることによって形成する。
【0037】
プライマー層2の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.01〜2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は厚いために塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.05〜0.5μmの範囲内にあることである。
【0038】
次に無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層3は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。その中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素が好ましい。ただし本発明の無機酸化物薄膜層3は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることができる。
【0039】
無機酸化物薄膜層3の厚さは、用いられる無機化合物の種類、構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は無機酸化物薄膜層にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、無機酸化物薄膜層に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。
【0040】
無機酸化物薄膜層3をプライマー層2上に形成する手段としては各種手段が可能であるが、真空蒸着法により形成することが一般的である。この真空蒸着法以外の手段としてスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。この真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかを適宜用いればよい。また無機酸化物薄膜層とプラスチック基材の密着性及び無機酸化物薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、無機酸化物薄膜層の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0041】
図2に示した実施の形態の、無機酸化物薄膜層3上に設けられた被膜層4は、無機酸化物薄膜層3を保護するためのもので、合わせて高いガスバリア性を付与するための層である。
【0042】
上記被膜層4に関し、高いガスバリア性を付与する被膜層の形成材料としては、例えば水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシド及び/又はその加水分解物からなるもの、さらには前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、またはこれらの混合物のいずれかからなる溶液を塗布形成したものである。高いガスバリア性を付与する被膜層の他の例としては、水溶性高分子と塩化銀からなるもの、さらには前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールからなる溶液を塗布形成したものである。
具体的には、水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、或いは前記溶液に金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を無機酸化物薄膜層3にコーティング、加熱乾燥し形成したものである。被膜層4を形成する各成分について更に詳細に説明する。
【0043】
本発明の被膜層を形成するために用いられる水溶性高分子の具体例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAという)がガスバリア性が最も優れる。
ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVAまでを含み、特に限定されない。
【0044】
また塩化錫は塩化第一錫(SnCl2 )、塩化第二錫(SnCl4 )、或いはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0045】
更に金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC2 H5 )4 〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C3 H7 )3 〕などの一般式、M(OR)n (M:Si、Ti、Al、Zr等の金属、R:CH3 、C2 H5 等のアルキル基)で表せるものである。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0046】
上述した各成分を単独又はいくつかを組み合わせて被膜層を形成することができ、さらに被膜層のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの添加剤を加えてもよい。
【0047】
例えば被膜層4に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(以下TDIという)、トリフェニルメタントリイソシアネート(以下TTIという)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(以下TMXDIという)などのモノマー類と、これらの重合体、または誘導体などがある。
【0048】
被膜層4を形成するためのコーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法などの従来公知の手段を用いることができる。また被膜層の厚さは、被膜層を形成するコーティング剤の種類や加工条件によって異なるが、乾燥後の厚さが0.01μm以上あれば良いが、厚さが50μm以上では膜にクラックが生じ易くなるため、0.01〜50μmの範囲が好ましい。
【0049】
更に無機酸化物薄膜層3、または被膜層4上に他の層を積層することも可能である。例えば印刷層、介在フィルム、ヒートシール層等である。印刷層は包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。
形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を用いることができる。厚さは0.1〜2.0μmで良い。
【0050】
また介在フィルムはボイルおよびレトルト殺菌時の破袋強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である。厚さは、材質や要求品質等に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。形成方法としては2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等の公知の方法により積層できる。
【0051】
またヒートシール層は袋状包装体などを形成する際に密封層として設けられるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体またはそれらの金属架橋物等の樹脂の1種からなるフィルムが用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。形成方法としては、ヒートシール層を形成するフィルムを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるがいずれも公知の方法により積層することができる。
【0052】
【実施例】
本発明の蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料を、具体的な実施例を挙げて更に説明する。
【0053】
〈プライマー剤の調製〉
A)希釈溶媒(酢酸エチル)中、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン1重量部に対し、アクリルポリオールを5重量部を量りとり混合し、攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈したものをプライマー剤Aとする。
【0054】
B)希釈溶媒(酢酸エチル)中、N−β―(アミノエチル)―γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量部に対し、アクリルポリオールを6重量部量りとり、攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈したものをプライマー剤Bとする。
【0055】
C)希釈溶媒(イソプロピルアルコール/酢酸エチル)中、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(以下EETMSという)1重量部に対し、アクリルポリオール2.5重量部を混合し、さらに触媒として塩化錫(SnCl2 )/メタノール溶液(0.003mol/gに調液したもの)をEETMSに対し1/135molになるように添加し攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈したものをプライマー剤Cとする。
【0056】
D)希釈溶媒(イソプロピルアルコール/酢酸エチル)中、EETMSとテトラエトキシシラン(Si(OC2 H5 )4 :以下TEOSという)とモル比で1:1となるように混合したものに、アクリルポリオールをEETMSとTEOSとをあわせたものに対して重量比で1.25倍量りとり、さらに触媒として塩化錫(SnCl2 )/メタノール溶液(0.003mol/gに調液したもの)をEETMSとTEOSをあわせたものに対し1/400molになるように添加し攪拌する。
そこへ0.1NHClを加え攪拌し加水分解後、TDIをアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈したものをプライマー剤Dとする。
【0057】
E)希釈溶媒(酢酸エチル)中、アクリルポリオールにイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対して等量になるように添加し、希釈溶媒を加え2%の濃度としたものをプライマー剤Eとする。
【0058】
F)希釈溶剤(イソプロピルアルコール/酢酸エチル)中、アクリルポリオール1重量部に対し、0.1重量部に相当するTEOSを加え、そこへ0.1NHClを加え攪拌し加水分解後、TDIをアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈したものをプライマー剤Fとする。
【0059】
〈実施例1〉
プラスチック基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、プライマー層2としてプライマー剤Aをグラビアコート法により厚さ0.2μm(乾燥膜厚)形成した。
次いでプライマー層2上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機酸化物薄膜層3を形成した。
更にその上に下記組成のコーティング剤をグラビアコーターで塗布し乾燥機で100℃、1分間乾燥させ、厚さ0.3μmの被膜層4を形成した蒸着フィルムを得た。
コーティング剤の組成は、▲1▼液と▲2▼液を配合比(wt%)で60/40に混合したものを用いた。ここで、▲1▼液はテトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2 換算)の加水分解溶液、▲2▼液はポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)である。
【0060】
〈実施例2〉
実施例1において、無機酸化物薄膜層3として抵抗加熱方式による真空蒸着方式により、厚さ約40nmの酸化珪素を蒸着した以外は同様にして、蒸着フィルムを得た。
【0061】
〈実施例3〉
実施例1において、プライマー層2としてプライマー剤Bを使用した以外は同様にして、蒸着フィルムを得た。
【0062】
〈実施例4〉
実施例1において、プライマー層2としてプライマー剤Cを使用した以外は同様にして、蒸着フィルムを得た。
【0063】
〈実施例5〉
実施例1において、プライマー層2としてプライマー剤Dを使用した以外は同様にして、蒸着フィルムを得た。
【0064】
〈比較例1〉
実施例1において、プライマー層2を設けなかった以外は同様にして、蒸着フィルムを得た。
【0065】
〈比較例2〉
実施例1において、プライマー層2としてプライマー剤Eを使用した以外は同様にして、蒸着フィルムを得た。
【0066】
〈比較例3〉
実施例1において、プライマー層2としてプライマー剤Fを使用した以外は同様にして、蒸着フィルムを得た。
【0067】
〈包装材料の製造〉
実施例1〜5および比較例1〜3の蒸着フィルムの被膜層側に、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムからなる介在フィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層し、更にこの介在フィルムにポリオレフィン系ヒートシール層として、厚さ40μmの低密度ポリエチレンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層して包装材料を得た。
【0068】
〈テスト1〉
実施例1〜5および比較例1〜3の蒸着フィルムを用いた包装材料で4方シール部を有するパウチを作製し、それぞれ内容物として水150gを充填し、121℃−30分間のレトルト殺菌を行った。評価として、レトルト殺菌前後の酸素透過率(cc/m2 /day)、剥離強度(gr/15mm)及び目視観察によりレトルト後のデラミネーション発生状況を観察した。また剥離面の観察はプラスチック基材とシーラントフィルムから蛍光X線装置によりアルミニウム元素を検出し、剥離面を推定した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
1)剥離強度は、300mm/分の剥離速度で引っ張り測定した。
2)酸素透過率は、酸素透過測定装置;モダンコントロール社製、OXTRAN−10/50Aを用いて、30°C、70%RHの雰囲気下で測定した。
3)剥離面の評価において、AlOは、無機酸化物薄膜層の凝集破壊、ADHは、被膜層と接着剤層間の剥離を表す。
4)外観は、レトルト殺菌後、パウチのシール部を180°折り曲げて観察し、無機酸化物薄膜層がデラミネーションした場合は×、デラミネーションしなかった場合は◎で表した。
【0071】
上記の表1にも示すようにレトルト前は全ての包装材料が密着性、ガスバリア性において問題は無い。しかし、レトルト後の結果をみると実施例1〜5の包装材料はガスバリア性の劣化もなく、剥離面をみても接着剤層で剥離しており、高い密着性を維持していることが分かる。一方、比較例1〜3をみるとレトルト後ではデラミネーション等が発生し外観不良が発生し、また剥離面の観察からプラスチック基材と無機酸化物薄膜層の密着性が足りないことが分かる。よって実施例1〜5の包装材料は比較例1〜3のものに対して、内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性がレトルト後も劣化が無く、デラミネーション等の発生がないレトルト耐性を全て満たしている。
【0072】
〈実施例6〉
プラスチック基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、プライマー層2としてプライマー剤Aをグラビアコート法により厚さ0.2μm(乾燥膜厚)形成した。
次いで、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、プライマー層2上に厚さ20nmの酸化アルミニウムからなる無機酸化物薄膜層3を形成した。
得られた蒸着フィルムの無機酸化物薄膜層3の上にヒートシール層として、厚さ30μmのポリプロピレンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネートにより積層して包装材料を得た。
【0073】
〈比較例4〉
実施例6において、プライマー層2を設けなかった以外は実施例6と同様にして包装材料を得た。
【0074】
〈テスト2〉
このようにして作製した実施例6の包装材料および比較例4の包装材料を用いて、無機酸化物薄膜層とヒートシール層(ポリプロピレンフィルム)との間のラミネート強度(gr/15mm)を測定した。同時に無機酸化物薄膜層とヒートシール層との剥離面に少量の水道水を垂らしながら、同様にラミネート強度(gr/15mm)を測定した。剥離強度は、剥離速度300mm/分で引っ張り測定した。その結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、透明性に優れ、且つアルミ箔並の高度なガスバリア性を持つ汎用性のある包装材料が得られ、さらに、密着性を含めたレトルト適性にも優れているので、包装分野において巾広く使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蒸着フィルムの断面図である。
【図2】本発明の蒸着フィルムの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1‥‥プラスチック基材
2‥‥プライマー層
3‥‥無機酸化物薄膜層
4‥‥被膜層
Claims (8)
- プラスチック材料からなるプラスチック基材の少なくとも片面に、アクリルポリオールの水酸基若しくはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一方と反応する有機官能基を有するシランカップリング剤又はシランカップリング剤の加水分解物と、ヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)のアクリルポリオールと、イソシアネート化合物との複合物を含むプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層、及び被覆層を順次積層したことを特徴とするボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム。
- 前記シランカップリング剤に含まれる有機官能基がイソシアネート基、アミノ基、又はメルカプト基のいずれか1種であることを特徴とする請求項1記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム。
- 前記プライマー層の厚さが0.01〜2μmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム。
- 前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム。
- 前記被覆層が水溶性高分子と金属アルコキシド及び/又はその加水分解物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム。
- 前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、又はこれらの混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項5記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム。
- 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールからなることを特徴とする請求項5又は6に記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のボイル殺菌、レトルト殺菌用蒸着フィルムの被覆層上に接着層を介してヒートシール層を積層したことを特徴とするボイル殺菌、レトルト殺菌用包装材料。
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