JP3738618B2 - 蒸着フィルム及びこの蒸着フィルムを用いた包装材料 - Google Patents
蒸着フィルム及びこの蒸着フィルムを用いた包装材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装分野に用いられる包装用の積層体に関するもので、特にボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等が必要な包装分野に用いられる蒸着フィルム及びこの蒸着フィルムを用いた包装材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能、性質および品質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を阻止する必要があり、これら様々気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などによる影響が少ないアルミ等の金属からなる金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
【0003】
ところが、アルミ等の金属からなる金属箔を用いた包装材料は、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなどの欠点を有し問題があった。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば米国特許第3442686号明細書、特公昭63−28017号公報等に記載されているような酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物を高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により蒸着膜を形成したフィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性の両者を有する包装材料として好適とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した包装用材料に適するフィルムであっても、包装容器または包装材として、蒸着フィルム単体で用いられることはほとんどなく、蒸着後の後加工として蒸着フィルム表面に文字・絵柄等を印刷加工またはフィルム等との貼り合わせ、容器等の包装体への形状加工などさまざまな工程を経て包装体を完成させている。特にボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等を行う場合の包装材料は、種々さまざまな工程を経て殺菌されるために、包装材料の設計には十分注意しなければならない。
【0006】
そこで、上述した蒸着フィルム等を用いてシーラントフィルムと貼り合わせ製袋後、内容物を充填してボイル殺菌やレトルト殺菌を試みたところ、殺菌後シール部の一部にデラミネーションが発生して外観不良になったり、その部分からガスバリア性が低下し内容物が変質する等の問題を有することが明らかとなった。
【0007】
すなわち、この様な場合の包装材料として用いられる条件として、内容物を直接透視することが可能なだけの透明性、内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性及びボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌後もガスバリア性の劣化がなく、またデラミネーション等が発生しない等の耐ボイル性、耐レトルト性及び耐オートクレーブ性を有することが求められている。
【0008】
そこで、本発明においては透明性に優れ、且つ高いガスバリア性を有すると共にボイル殺菌やレトルト殺菌後も物性の劣化がなく、デラミネーション等の発生がない高い耐ボイル性、耐レトルト性を持つ実用性の高い蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を達成するためのもので、請求項1に記載される発明は、プラスチック材料からなるプラスチック基材の少なくとも片面に、実質的に反応基を有するシリコーン、ポリオールおよびイソシアネート化合物を少なくとも含む複合物からなるプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる蒸着薄膜層を順次積層したことを特徴とする蒸着フィルム、としたものである。
【0010】
請求項2の発明は、プラスチック材料からなるプラスチック基材の少なくとも片面に、シリコーンを含むポリオールおよびイソシアネート化合物を少なくとも含む複合物からなるプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる蒸着薄膜層を順次積層したことを特徴とする蒸着フィルム、としたものである。
【0011】
請求項3の発明は、前記ポリオールがアクリルポリオールであることを特徴とする請求項1又は2記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0012】
請求項4の発明は、前記シリコーンが直鎖のシリコーンまたはラダーシリコーンであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0013】
請求項5の発明は、前記プライマー層の厚さが、0.01〜2μmの範囲であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0014】
請求項6の発明は、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0015】
請求項7の発明は、前記蒸着フィルムの無機酸化物の蒸着薄膜層に被膜層を積層したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0016】
請求項8の発明は、前記被膜層が水性高分子を金属アルコキシド及び/又はその加水分解物からなる請求項7のいずれかに記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0017】
請求項9の発明は、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプルポキシアルミニウム、又はこれらの混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項8記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0019】
請求項10の発明は、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項8又は9記載の蒸着フィルム、としたものである。
【0020】
請求項11の発明は、前記蒸着フィルムの無機酸化物の蒸着薄膜層又は被膜層上に接着剤を介してヒートシール層を積層したことを特徴をする請求項1〜10のいずれかに記載の包装材料、としたものである。
【0021】
【作用】
本発明によれば、プラスチック基材上にボイル殺菌やレトルト殺菌後も寸法安定性や密着性に優れたプライマー層を設けた後、ガスバリア性に優れた無機酸化物よりなる蒸着薄膜層を積層した構成になっているので、ボイル殺菌やレトルト殺菌等の後もデラミネーションの発生やガスバリア性の劣化のない実用性の高い蒸着フィルムおよびこの蒸着フィルムを用いた包装材料が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明を図面を用いて更に詳細に説明する。
図1は本発明の蒸着フィルムを説明する断面図である。
まず図1の本発明の蒸着フィルムを説明する。図1におけるプラスチック基材1はプラスチック材料からなるフィルムであり、その上に実質的に反応基を有するシリコーン、ポリオールおよびイソシアネート化合物等の複合物からなるプライマー層2、無機酸化物からなる蒸着薄膜層3、被膜層4が順次積層されている。この場合、被膜層4は、要求品質により設けなくても構わない。
【0023】
上述したプラスチック基材1はプラスチック材料からなるフィルムであり、蒸着薄膜層の透明性を生かすために透明なフィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。これらをフィルム状に加工して用いられる。
またこのプラスチック基材1の表面に、一般に用いられている種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
【0024】
プラスチック基材1の厚さは、包装材料としての適性、他の層を積層する場合も在ること、プライマー層2及び無機酸化物よりなる蒸着薄膜層3、被膜層4を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲で、用途によって6〜30μmとすることが好ましい。
また、量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できるように連続状長尺フィルムとすることが望ましい。
【0025】
本発明のプライマー層2は、プラスチックフィルムからなるプラスチック基材1上に設けられ、プラスチック基材1と無機酸化物からなる蒸着薄膜層3との間の密着性を高め、特にボイル殺菌やレトルト殺菌、オートクレーブ殺菌等の加熱処理後のデラミネーション発生等を防止することを目的とする。
鋭意検討の結果、上記目的達成の為にプライマー層として、実質的に反応基を有するシリコーン、ポリオールおよびイソシアネート化合物を少なくとも含む複合物からなる必要がある。
【0026】
更に、プライマー層を構成する複合物について詳細に説明する。
ポリオールとは高分子末端に、2つ以上の水酸基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。中でもアクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが特に好ましい。
【0027】
このポリオールとしてエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独または共重合させポリオールや、前記アクリル酸誘導体モノマーとスチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましい。またイソシアネート化合物との反応性を考慮すると前記アクリルポリオールのヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0028】
プライマー層を構成するシリコーンは、実質的に反応基を有するポリオール等と反応前の状態であっても良く、下記の如くポリオール等と予め反応したものを用いても良い。
【0029】
シリコーンを含むポリオールとは、シリコーンの側鎖の一部に反応性有機官能基を持つものをポリオールと反応させたものであり、その中でもシロキサン結合が直鎖状の直鎖のシリコーン、梯子型になっているとされるラダーシリコーンが特に好ましい。
【0030】
アクリルポリオールとシリコーンの比は、シリコーンをSiO2 換算の重量比で1/1から1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1から100/1の範囲にあることである。
【0031】
溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば良く、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。
【0032】
更にイソシアネート化合物は、アクリルポリオールなどのポリオールと反応してできるウレタン結合により基材や無機酸化物との密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。前記機能を発揮するイソシアネート化合物の具体例としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、もしくは誘導体の1種またはこれらの2種以上用いることができる。
【0033】
ここで側鎖にシリコーンを含むアクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合比は、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでアクリルポリオールとインソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がアクリルポリオール由来のOH基の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が当量で配合される場合である。混合方法は、一般に用いられる方法で良い。
【0034】
本発明におけるプライマー層は側鎖にシリコーンを含むポリオール、イソシアネート化合物を適宜混合した複合溶液を製作し、プラスチック基材1にコーティングし、乾燥硬化して形成する。前記プライマー層を形成する複合溶液は具体的にはすでにシリコーンをグラフト化してあるものを用いる以外に、任意の反応性有機官能基をもつシリコーンをあらかじめアクリルポリオールと混合、反応させたものに、溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して複合溶液を作製する方法などがある。
【0035】
この複合溶液に各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を必要により適宜添加する。
【0036】
プライマー層2は複合溶液を例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの塗布方式を用い基材1の上にコーティングし、その後コーティング膜を乾燥し溶媒等を除去し硬化させることによって形成する。
【0037】
プライマー層2の厚さは、均一に塗膜が形成されていれば良く、一般的に0.01〜2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は厚いために塗膜にフレキシビリティを保持させることが困難で、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.05〜0.5μmの範囲内である。
【0038】
次に無機酸化物からなる蒸着薄膜層3は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。その中で、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素が好ましい。
【0039】
蒸着薄膜層3の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることが困難で、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。
【0040】
無機酸化物からなる蒸着薄膜層3をプライマー層2上に形成する手段としては各種手段が可能であるが、真空蒸着法により形成するのが一般的である。その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、真空蒸着法が最も優れている。この真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかを適宜用いればよい。また蒸着薄膜層とプラスチック基材の密着性及び蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着薄膜層の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0041】
無機酸化物よりなる蒸着薄膜層3上に設けた被膜層4は、蒸着薄膜層3を保護するためのもので、合わせて高いガスバリア性を付与するために設けられるものである。
【0042】
上記被膜層4として高いガスバリア性を付与する被膜層としては、例えば水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシド及び/又は加水分解物からなるもの、さらには前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、又はこれらの混合物のいずれかからなる溶液を塗布形成したものである。高いガスバリア性を付与する被膜層の他の例としては、水溶性高分子と塩化錫からなるもの、さらには前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールからなる溶液を塗布したものである。
具体的には水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、或いはこれに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を無機酸化物の蒸着薄膜層3にコーティング、加熱乾燥し形成したものである。被膜層4を形成する各成分について更に詳細に説明する。
【0043】
本発明の被膜層を形成するために用いられる水溶性高分子の具体例としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAとする)がガスバリア性が最も優れる。
ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVAまでを含む。
【0044】
また塩化錫は塩化第一錫(SnCl2 )、塩化第二錫(SnCl4 )、或いはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0045】
更に金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC2 H5 )4 〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2′−C3 H7 )3 〕などの一般式、M(OR)n (M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3 ,C2 H5 等のアルキル基)で表せるものである。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0046】
上述した各成分を単独又はいくつかを組み合わせて被膜層を形成することができ、さらに被膜層のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの一般に用いられている。添加剤を加えてもよい。
【0047】
例えば被膜層4に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(以下TDIという)、トリフェニルメタントリイソシアネート(以下TTIという)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(以下TMXDIという)などのモノマー類と、これらの重合体、または誘導体などがある。
【0048】
被膜層4を形成するためには、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法などの従来公知の手段を用いることができる。また被膜層4の厚さは、被膜層を形成するコーティング剤の種類や加工条件によって異なるが、乾燥後の厚さが0.01μm以上あれば良いが、厚さが50μm以上では膜にクラックが生じ易くなるため、0.01〜50μmの範囲が好ましい。
【0049】
更に必要により蒸着薄膜層3または被膜層4上に他の層を積層する。例えば印刷層、介在フィルム、ヒートシール層等である。印刷層は包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の塗布方式を用いることができる。厚さは0.1〜2.0μmで良い。
【0050】
また必要な場合には介在フィルムを設ける。介在フィルムはボイルおよびレトルト殺菌時の破袋強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である。厚さは、材質や要求品質等に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。形成方法としては2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等の方法により積層できる。
【0051】
またヒートシール層は袋状包装体などを形成する際に密封層として設けられるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体またはそれらの金属架橋物等の樹脂の一種からなるフィルムが用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。形成方法としては、ヒートシール層を形成するフィルムを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的である。
【0052】
【実施例】
本発明の蒸着フィルムを具体的な実施例を挙げて更に詳細に説明する。
〈複合溶液の調製〉
A)希釈溶媒(酢酸エチル)中、側鎖にラダーシリコーンをSi02 換算で10%含むアクリルポリオールにイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対して1.1等量になるように添加した混合溶液を、2%の濃度になるように希釈溶媒を加えたものを複合溶液Aとする。
【0053】
B)希釈溶液(酢酸エチル)中、末端にカルビノール基をもつポリジメチルシロキサンをアクリルポリオールに対しSi02 換算で10%加えたものに、イソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対して1.1等量になるように添加したものに、2%の濃度になるように希釈溶媒を加えたものを複合溶液Bとする。
【0054】
C)希釈溶剤(酢酸エチル)中、アクリルポリオールのOH基に対しNCO基が1.1等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度になるように希釈したものを複合溶液Cとする。
【0055】
〈実施例1〉
プラスチック基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ナイロンフィルム(ONY)の片面に、プライマー層2として複合溶液Aをグラビアコート法により厚さ0.1μm形成した。(乾燥膜厚)
次いでプライマー層2上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、厚さ20nmの酸化アルミニウムを蒸着して蒸着薄膜層3を形成した。
更にその上に下記組成のコーティング剤をグラビアコーターで塗布し、乾燥機で100℃、1分間乾燥させ厚さ0.3μmの被膜層4を形成した蒸着フィルムを得た。
コーティング剤の組成は、▲1▼液と▲2▼液を配合比(wt%)で60/40に混合したものを用いた。ここで、▲1▼はテトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2 換算)の加水分解溶液、▲2▼はポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)である。
【0056】
〈実施例2〉
実施例1において、プライマー層2として複合溶液Bを使用した以外は、同様に本発明の蒸着フィルムを得た。
【0057】
〈比較例1〉
実施例1において、プライマー層2を設けなかった以外は、同様に蒸着フィルムを得た。
【0058】
〈比較例2〉
実施例1において、プライマー層2として複合溶液Cを使用した以外は、同様に蒸着フィルムを得た。
【0059】
〈包装材料の製造〉
実施例1、2および比較例1、2の蒸着フィルムの蒸着薄膜層側にヒートシール層として、厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層し、包装材料を得た。
【0060】
〈テスト1〉
実施例1、2及び比較例1、2の蒸着フィルムを用いた包装材料で、3方シール部を有するパウチを作製し、それぞれ内容物として水400gを充填し、90℃−30分間のボイル殺菌を行った。評価として、ボイル殺菌前後の酸素透過率(cc/m2/day)、剥離強度(gr/15mm)及び目視観察によりボイル後のデラミネーション発生状況を観察した。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
ラミネート強度;T型剥離、gf/15mm、PECUT=ポリエチレン切れ
酸素透過率;cc/m2 /day、30℃−70%Rh
外観;○=デラミネーション無し、△=一部デラミネーション発生、×=全面にデラミネーション発生
【0063】
上記の表1に示すように、比較例1のボイル殺菌前の初期評価をみるとプライマー層の必要なことがわかる。またプライマー層のある構成においてはボイル殺菌前の初期評価では密着性、ガスバリア性に問題は無いが、ボイル後の結果をみると実施例1、2はガスバリア性の劣化もなく、高い密着性を維持していることが分かる。一方、比較例2をみるとレトルト後ではデラミネーション等が発生し外観不良が発生しプラスチック基材と蒸着薄膜層の密着性が足りないことが分かる。よって実施例1、2の包装材料は比較例1、2のものに対して内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性、ボイル殺菌後も劣化が無く、デラミネーション等の発生がない耐ボイル性をすべて満たしている。
【0064】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、透明性に優れ、且つ高度なガスバリア性を持つ汎用性のある包装材料が得られ、さらに、密着性を含めたボイル適性にも優れているので、包装分野において巾広く使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蒸着フィルムの断面図である。
【符号の説明】
1‥‥プラスチック基材
2‥‥プライマー層
3‥‥蒸着薄膜層
4‥‥被膜層
Claims (11)
- プラスチック材料からなるプラスチック基材の少なくとも片面に、実質的に反応基を有するシリコーン、ポリオールおよびイソシアネート化合物を少なくとも含む複合物からなるプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる蒸着薄膜層を順次積層したことを特徴とする蒸着フィルム。
- プラスチック材料からなるプラスチック基材の少なくとも片面に、シリコーンを含むポリオールおよびイソシアネート化合物を少なくとも含む複合物からなるプライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる蒸着薄膜層を順次積層したことを特徴とする蒸着フィルム。
- 前記ポリオールがアクリルポリオールであることを特徴とする請求項1又は2記載の蒸着フィルム。
- 前記シリコーンが直鎖のシリコーンまたはラダーシリコーンであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の蒸着フィルム。
- 前記プライマー層の厚さが、0.01〜2μmの範囲であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の蒸着フィルム。
- 前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蒸着フィルム。
- 前記蒸着フィルムの無機酸化物の蒸着薄膜層に被膜層を積層したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蒸着フィルム。
- 前記被膜層が水性高分子を金属アルコキシド及び/又はその加水分解物からなる請求項7のいずれかに記載の蒸着フィルム。
- 前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプルポキシアルミニウム、又はこれらの混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項8記載の蒸着フィルム。
- 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項8又は9記
載の蒸着フィルム。 - 前記蒸着フィルムの無機酸化物の蒸着薄膜層又は被膜層上に接着剤を介してヒートシール層を積層したことを特徴をする請求項1〜10のいずれかに記載の包装材料。
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