JP3570250B2 - 強密着ガスバリア透明積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装分野に用いられる包装用の積層体に関するもので、特にボイル殺菌やレトルト殺菌等の殺菌工程が必要な包装分野に関するものや洗剤や入浴剤等の強密着性が必要とされる包装分野に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などによる影響が少ないアルミニウム箔等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
【0003】
ところが、アルミ等箔等の金属箔を用いた包装材料は、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなどの欠点を有し問題があった。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば米国特許第3442686号公報、特公昭63−28017号公報等に記載されているような酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物を高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により蒸着膜を形成したフィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性の両者を有する包装材料として好適とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した包装用材料に適するフィルムであっても、包装容器または包装材として、蒸着フィルム単体で用いられることはほとんどなく、蒸着後の後加工として蒸着フィルム表面に文字・絵柄等を印刷加工またはフィルム等との貼り合わせ、容器等の包装体への形状加工などさまざまな工程を経て包装体を完成させている。特にボイル殺菌やレトルト殺菌等を行う場合の包装材や紙素材との複合化が必要な包装材は、種々さまざまな工程を経て市場へ流れていくので、包装設計の際は十分注意しなければならない。
【0006】
そこで、上述した蒸着フィルム等を用いてシーラントフィルムと貼り合わせ製袋後、水等の内容物を充填してボイル殺菌やレトルト殺菌を試みたところ、殺菌後シール部の一部に剥離が発生して外観不良になったり、その部分からガスバリア性が低下し内容物が変質する等の問題を有することが明らかとなった。また上述の製袋品に、内容物として入浴剤を充填し一定期間保存後の保存前後でのガスバリア性やラミネート強度を比較したところ保存後で剥離が発生したりラミネート強度が低下し、更にその部分からガスバリア性が劣化するという問題もあった。
【0007】
すなわち、この様な場合の包装材料として用いられる条件として、内容物を直接透視することが可能なだけの透明性、内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性、内容物充填保存後も強度の低下のない高度な密着性及びボイル殺菌やレトルト殺菌後もガスバリア性の劣化がなく、また剥離現象等が発生しない等の耐ボイル性、耐レトルト性を有することが求められており、現在のところこれら全てを満たす包装材料は見いだされていない。
【0008】
そこで、本発明においては透明性に優れ、且つ高いガスバリア性や高度な密着性を有すると共にボイル殺菌やレトルト殺菌後も物性の劣化がなく、剥離現象等の発生がない高い耐ボイル性、耐レトルト性を持つ実用性の高い包装材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためのもので、請求項1に記載の発明は、透明プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、アクリルポリオールとポリエステルポリオール及びイソシアネート化合物、シランカップリング剤との複合物からなる透明プライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる蒸着薄膜層を順次積層したことを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0010】
また請求項2の発明は、請求項1の発明に基づき、前記シランカップリング剤が、アクリルポリオールとポリエステルポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一方と反応する有機官能基を持つことを特徴とする強密着性ガスバリア性透明積層体である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2記載の発明に基づき、前記シランカップリング剤に含まれる有機官能基が、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基のいずれかであることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3記載の発明に基づき、前記複合物中に反応触媒が添加されていることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4記載の発明に基づき、反応触媒が、錫化合物であることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0014】
請求項6の発明は請求項4乃至5記載の発明に基づき、錫化合物が、塩化錫、オキシ塩化錫及び錫アルコキシドのいずれかであることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1乃至6記載の発明に基づき、前記透明プライマー層の厚さが、0.01〜2μmの範囲であることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の発明に基づき、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物であることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0017】
請求項9の発明は、請求項1乃至8記載の発明に基づき、本発明の透明積層体上に、更にガスバリア性被膜層を積層した構成において、該ガスバリア性被膜層が、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は、(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる層であることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0018】
請求項10の発明は、請求項9記載の発明に基づき、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0019】
請求項11の発明は、請求項9乃至10記載の発明に基づき、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体である。
【0020】
【作用】
本発明によれば、透明プラスチック基材上に寸法安定性や密着性に優れた透明プライマー層を設けた後、ガスバリア性に優れた無機酸化物層を積層した構成になっているので、ボイル殺菌やレトルト殺菌等の後も剥離の発生やガスバリア性の劣化のなく、更に強密着性を必要とされる内容物を充填しても強度の低下のない実用性の高い包装用積層体が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の強密着ガスバリア透明積層体を説明する断面図である。
【0022】
まず図1の本発明の強密着ガスバリア透明積層体を説明する。図1における基材1は透明プラスチック材料からなるフィルムであり、その上にアクリルポリオールとポリエステルポリオール及びイソシアネート化合物、シランカップリング剤等の複合物よりなる透明プライマー層2、無機酸化物からなる蒸着薄膜層3、ガスバリア性被膜層4が順次積層されている。この場合、ガスバリア性被膜層4は、要求品質により設けなくても構わない。
【0023】
上述した基材1は透明プラスチック材料であり、蒸着薄膜層の透明性を生かすために透明なフィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。これらをフィルム状に加工して用いられる。特に二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。またこの基材1の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良く、薄膜との密着性を良くするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施しておいても良く、さらに薬品処理、溶剤処理などを施しても良い。
【0024】
基材1の厚さはとくに制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他の層を積層する場合もあること、透明プライマー層2及び無機酸化物蒸着薄膜層3、ガスバリア性被膜層4を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲で、用途によって6〜30μmとすることが好ましい。
【0025】
また、量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できるように長尺フィルムとすることが望ましい。
【0026】
本発明の透明プライマー層2は、透明プラスチック材料からなる基材1上に設けられ、基材1と無機酸化物からなる蒸着薄膜層3との間の密着性を高め、ボイル殺菌やレトルト殺菌後の剥離現象の発生等を防止し、更に強密着性を必要とする内容物を充填しても強度低下を抑制すること目的とする。
【0027】
鋭意検討の結果、上記目的達成のために透明プライマー樹脂として用いることができるのは、アクリルポリオールとポリエステルポリオール及びイソシアネート化合物、シランカップリング剤等との複合物である必要がある。
【0028】
透明プライマー層を構成する複合物について、更に詳細に説明する。
アクリルポリオールとは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物もしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0029】
またポリエステルポリオールとは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびこれらの反応性誘導体等の酸原料と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のアルコール原料から周知の製造方法で得られたポリエステル系樹脂の内末端に2個以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
【0030】
アクリルポリオールとポリエステルポリオールとの配合比は、要求品質に応じて適宜選ばれるが、一般的には重量比換算で99/1〜10/90範囲にあることが好ましい。より好ましくは、90/10〜50/50の範囲にあることである。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0031】
またイソシアネート化合物とは、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールと反応してできるウレタン結合により基材や無機酸化物との密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するためにイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が用いられ、これらが単独かまたは混合物等として用いられる。
【0032】
イソシアネート化合物の添加量は特に制限されるのもではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでインソシアネート化合物の添加量としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がアクリルポリオール由来のOH基とポリエステルポリオール由来のOH基とを合わせたものに対して当量比換算で50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が等量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0033】
また上記シランカップリング剤とは、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤或あるいはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0034】
さらにこれらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N―β―(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むもの、さらにγ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ―(3、4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むもの等で、これらが単独または2種以上の混合物で用いることができる。これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固なプライマー層を形成し、他端のアルコキシ基等の加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物中の金属や、無機酸化物の表面の活性の高い水酸基等と強い相互作用により無機酸化物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。よって上記シランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0035】
アクリルポリオールとポリエステルポリオールとを合わせたものとシランカップリング剤の配合比は、重量比で1/1から1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1から100/1の範囲にあることである。溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸や酢酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることがより好ましい。
【0036】
またシランカップリング剤の配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性および重合安定性の点から塩化錫(SnCl、SnCl)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)Cl)、錫アルコキシド等の錫化合物であることが好ましい。これらの触媒は、配合時に直接添加してもよく、またメタノール等の溶媒に溶かして添加しても良い。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果が得られないため、シランカップリング剤に対してモル比で1/10〜1/10000の範囲が好ましく、更に望ましくは1/100〜1/2000の範囲であることがより好ましい。
【0037】
本発明における複合物の被膜を形成するためのプライマー溶液の調液法としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物、シランカップリング剤を任意の配合比で混合した複合溶液を製作しそれを基材1にコーティングして形成する。その複合溶液の製作法としては、シランカップリング剤とアクリルポリオール、ポリエステルポリオールを混合し、溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して複合溶液を作製する方法、または予めシランカップリング剤を溶媒中混合しておきその後アクリルポリオール、とポリエステルポリオールを混合させたものを溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物加え複合溶液を作製する方法などがある。
【0038】
この複合物に各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を添加することも一向に構わない。
【0039】
透明プライマー層2の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.001〜2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は厚いために塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.03〜0.5μmの範囲内にあることである。
【0040】
透明プライマー層2の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用い基材1にコーティングし、その後コーティング膜を乾燥し溶媒等を除去し硬化させることによって透明プライマー層2を得ることができる。
【0041】
無機酸化物からなる薄膜層3は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。その中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素が好ましい。ただし本発明の薄膜層3は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることができる。
【0042】
薄膜層3の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。
【0043】
無機酸化物からなる薄膜層3を透明プライマー層2上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式が好ましく、薄膜と基材の密着成及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなど吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0044】
ガスバリア性被膜層4は、要求品質によりアルミ箔並の高いガスバリア性を付与するために無機酸化物薄膜層3上に設けられるものである。
【0045】
上記ガスバリア性被膜層4は、水溶性高分子と(a)1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物又は、(b)塩化錫、の少なくとも一方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を無機酸化物薄膜層3上にコーティング、加熱乾燥し形成したものである。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
【0046】
本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子はポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAとする)を本発明の積層体のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVAまでを含み、特に限定されない。
【0047】
また塩化錫は塩化第一錫(SnCl)、塩化第二錫(SnCl)、あるいはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0048】
更に金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C〕などの一般式、M(OR)(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH,C等のアルキル基)で表せるものである。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0049】
上述した各成分を単独又はいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらにコーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を加えることができる。
【0050】
例えばコーティング剤に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(以下TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(以下TTI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(以下TMXDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体などがある。
【0051】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法などの従来公知の手段を用いることができる。被膜の厚さは、コーティング剤の種類や加工条件によって異なるが、乾燥後の厚さが0.01μm以上あれば良いが、厚さが50μm以上では膜にクラックが生じ易くなるため、0.01〜50μmの範囲が好ましい。
【0052】
更に無機酸化物薄膜層3やガスバリア性被膜層4上に他の層を積層することも可能である。例えば印刷層、中間層、ヒートシール層等である。印刷層は包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を用いることができる。厚さは0.1〜2.0μmで良い。
【0053】
また中間層はボイルおよびレトルト殺菌時の破袋強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質等に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。形成方法としては2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等の公知の方法により積層できる。
【0054】
またヒートシール層は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。形成方法としては、上記樹脂からなるフィルム状のものを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるがいずれも公知の方法により積層することができる。
【0055】
【実施例】
本発明の強密着ガスバリア透明積層体を具体的な実施例を挙げて更に説明する。
【0056】
〈複合溶液の調製〉
A)希釈溶媒中、2−(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメチルシラン(以下EETMSと略す)2重量部に対し、アクリルポリオール9重量部及びポリエステルポリオール1重量部を量りとり混合し、さらに触媒として塩化錫(SnCl)/メタノール溶液(0.003mol/gに調液したもの)をEETMSに対し1/135molになるように添加し攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてトリイジルイソシアネート(以下TDIと略する)をアクリルポリオールとポリエステルポリオールのOH基に対してNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものを複合溶液Aとする。
【0057】
B)希釈溶媒中、N−β―(アミノエチル)―γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量部に対し、アクリルポリオール9重量部及びポリエステルポリオール1重量部を量りとり混合攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールとポリエステルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものを複合溶液Bとする。
【0058】
C)希釈溶媒中、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン1重量部に対し、アクリルポリオール9重量部及びポリエステルポリオール1重量部を量りとり混合攪拌する。ついでイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールとポリエステルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものを複合溶液Cとする。
【0059】
D)複合溶液Aにおいて、アクリルポリオール7重量部及びポリエステルポリオール3重量部とした以外は、同様に作製したものを複合溶液Dとする。
【0060】
E)複合溶液Aにおいて、ポリエステルポリオール10重量部とした以外は、同様に作製したものを複合溶液Eとする。
【0061】
〈実施例1〉
基材1として、厚さ12μmの2軸延伸PETフィルムの片面に、透明プライマー層2として複合溶液Aをグラビアコート法により厚さ0.1μm形成した。次いで透明プライマー層2上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、厚さ20nmの酸化アルミニウムを蒸着して無機酸化物薄膜層3を形成し、実施例1の強密着ガスバリア透明積層体を得た。
【0062】
〈実施例2〉
実施例1の無機酸化物薄膜層3上に、更にガスバリア性被膜層4として下記組成のコーティング剤をグラビアコート法により厚さ0.5μmを形成し、実施例2の強密着ガスバリア透明積層体を得た。
コーティング剤の組成は、▲1▼液と▲2▼液を配合比(wt%)で60/40に混合したもの。(注:▲1▼テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液 ▲2▼ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10))
【0063】
〈実施例3〉
実施例2において、無機酸化物薄膜層3として図示しない抵抗加熱方式による真空蒸着方式により、厚さ約40nmの酸化珪素を蒸着した以外は、実施例2と同様にして実施例3の強密着ガスバリア透明積層体を得た。
【0064】
〈実施例4〉
実施例2において、透明プライマー層2として複合溶液Bを使用した以外は、実施例2と同様にして実施例4の強密着ガスバリア透明積層体を得た。
【0065】
〈実施例5〉
実施例2において、透明プライマー層2として複合溶液Cを使用した以外は、実施例2と同様にして実施例5の強密着ガスバリア透明積層体を得た。
【0066】
〈実施例6〉
実施例2において、透明プライマー層2として複合溶液Dを使用した以外は、実施例2と同様にして実施例6の強密着ガスバリア透明積層体を得た。
【0067】
〈比較例1〉
実施例2において、透明プライマー層2を設けなかった以外は、実施例2と同様にして比較例1の透明積層体を得た。
【0068】
〈比較例2〉
実施例2において、透明プライマー層として複合溶液Eを使用した以外は、実施例2と同様にして比較例2の透明積層体を得た。
【0069】
〈ドライラミネート1〉
以上のようにして作製した実施例及び比較例の無機酸化物層3またはガスバリア性被膜層4側に、中間層として厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層し、更にヒートシール層として厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層した。
【0070】
〈ドライラミネート2〉
また同様に、実施例及び比較例の無機酸化物層3またはガスバリア性被膜層4側に、ヒートシール層として厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムを2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により積層した。
【0071】
〈テスト1〉
実施例及び比較例のドライラミネート1積層品について、レトルト殺菌するために4方シールパウチを作製し、内容物として水150gを充填し、125°C−30分間のレトルト殺菌を行った。評価として、レトルト前後の酸素透過率(cc/m/day)及びラミネート強度(gr/15mm)、目視観察によるレトルト後の剥離現象の発生状況を観察した。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
Figure 0003570250
【0073】
〈テスト2〉
実施例及び比較例のドライラミネート2積層品について、4方シールパウチを作製し、内容物として粉末入浴剤を充填した。その後そのパウチを、40°C−90%RHの雰囲気中に1ヶ月間保存し、保存前後の酸素透過率(cc/m/day)及びラミネート強度(gr/15mm)、目視観察による保存後の剥離現象の発生状況を観察した。その結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
Figure 0003570250
【0075】
実施例に対して比較例は上述した包装材料として用いられる条件とした、内容物を直接透視することが可能なだけの透明性、内容物に対して影響を与える気体等を遮断する高いガスバリア性、各種殺菌後もガスバリア性の劣化がなく、デラミ等の発生がない耐殺菌性、内容物により強度が劣化した強密着性を全て満たすものではないが、実施例はそれを全て満たしていると言える。
【0076】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、透明性に優れ、且つアルミ箔並の高度なガスバリア性を持つ汎用性のある包装材料が得られ、さらに、耐各種殺菌性を含めた密着性にも優れているので、包装分野において巾広く使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強密着ガスバリア透明積層体の一実施例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1‥‥透明プラスチック基材
2‥‥透明プライマー層
3‥‥無機酸化物薄膜層
4‥‥ガスバリア性被膜層

Claims (11)

  1. 透明プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、アクリルポリオールとポリエステルポリオール及びイソシアネート化合物、シランカップリング剤との複合物からなる透明プライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる蒸着薄膜層を順次積層したことを特徴とする強密着ガスバリア透明積層体。
  2. 前記シランカップリング剤が、アクリルポリオールとポリエステルポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一方と反応する有機官能基を持つことを特徴とする請求項1記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  3. 前記シランカップリング剤に含まれる有機官能基が、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  4. 前記複合物中に反応触媒が添加されていることを特徴とする請求項1乃至3記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  5. 前記反応触媒が、錫化合物であることを特徴とする請求項4記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  6. 前記錫化合物が、塩化錫、オキシ塩化錫及び錫アルコキシドのいずれかであることを特徴とする請求項4乃至5記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  7. 前記透明プライマー層の厚さが、0.01〜2μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至6記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  8. 前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至7記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  9. 請求項1乃至8記載の積層体上に、更にガスバリア性被膜層を積層した構成において、該ガスバリア性被膜層が、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は、(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなる層であることを特徴とする請求項1乃至8記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  10. 前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項9記載の強密着ガスバリア透明積層体。
  11. 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項9乃至10記載の強密着ガスバリア透明積層体。
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