JP4175062B2 - 組成物、両性高分子凝集剤及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝集力及び脱水性に優れ、濾過速度が速く、優れたフロックを得ることができるという各種凝集脱水性能に優れる組成物及び両性高分子凝集剤並びにこれらの汚泥脱水用途、抄紙用歩留向上剤用途、及びその他の用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、汚泥の脱水処理には、カチオン性高分子凝集剤が単独で使用されているが、近年、汚泥発生量の増加及び汚泥性状の悪化により、従来のカチオン性高分子凝集剤では、汚泥の処理量に限界があることや、脱水ケーキ含水率、SS回収率及びケーキのろ布からの剥離性等の点で処理状態は必ずしも満足できるものではなく、これらの点を改善することが要求されている。
【0003】
従来のカチオン性高分子凝集剤のこれら欠点を改良するために、種々の両性高分子凝集剤やこれをを使用した脱水方法が種々提案されている。
例えば、(1)無機汚泥を含まない無機凝集剤を添加したpHが5〜8の有機質汚泥に、特定イオン当量のカチオンリッチ両性高分子凝集剤を添加する汚泥の脱水方法(特許文献1参照)、(2)pHが5〜8の有機質汚泥に、アクリレート系カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を併用する汚泥の脱水方法(特許文献2参照)、(3)汚泥に無機凝集剤を添加しpHを5未満に設定し、特定組成のアニオンリッチ両性高分子凝集剤を添加する脱水方法(特許文献3)及び(4)排水に無機凝集剤、アニオン性高分子凝集剤及びカチオンリッチ両性高分子凝集剤を順次添加する有機性排水の処理方法(特許文献4参照)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特公平5−56199号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特許2933627号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特公平6−239号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平6−134213号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記(1)〜(4)の脱水方法は、それなりに特長を有するものではあるが、最近の廃水の難脱水化傾向に対して、必ずしも有効的な方法とは言い難いものであった。
即ち、廃水処理後のCOD値をより低いものとする要求があるため、廃水に対する活性汚泥処理の比率が従来より高くなっており、汚泥脱水処理を行なう汚泥は余剰汚泥を多く含んだものとなり、又製紙廃水においては、廃水中の繊維分の回収率が上昇しているため、汚泥中の繊維分含有量が低くなり、従来の高分子凝集剤や汚泥脱水方法では対応できない場合があった。
【0006】
一方、抄紙工程においては、従来より填料を含む紙料を抄紙機に送入する最終濃度に希釈する際、又は希釈後に、歩留向上剤を添加して、抄紙機からの白水中への填料流出を抑制し、歩留を向上させている。
歩留向上剤としては、通常、水溶性の高分子量のカチオン性重合体が使用されている。より具体的には、カチオン性のアクリルアミド系ポリマー、その部分加水分解物やマンニッヒ変性物等が挙げられ、最近では、紙料に対してカチオン性ポリマーを添加した後、ベントナイトを添加する歩留り向上方法(特許文献5等参照)や、紙料に対してアクリルアミド系ポリマーとアニオン性アルミニウム含有シリカゾルを併用添加する方法(特許文献6等参照)が注目されている。これらに用いられるアクリルアミド系ポリマーは、単量体固形分を10〜40質量%として、水溶液重合等で製造され、水溶液重合で得られた重合体は、通常高粘稠ペースト状のものである。このため、歩留向上剤として使用するに際しては、水によりそのペーストを0.1〜0.5質量%に希釈して、水溶液で使用される。この様な歩留向上剤は、パルプ繊維間の結合力を増加させ、最終製品の紙の破裂及び伸び等の強度を増加させる目的で使用される紙力増強剤とは、抄紙工程における添加タイミングや、使用される重合体の分子量が本質的に異なる。即ち、添加タイミングとしては、紙力増強剤は、紙料に硫酸バンド等の定着剤を添加した後に添加されるのに対して、歩留向上剤は、抄紙機に送入する直前で紙料に添加して、できるだけ紙料パルプ懸濁物フロックの凝集を破壊しない様にする必要がある。使用する重合体の分子量に関しては、紙力増強剤が分子量数十万であるのに対し、歩留向上剤は百万を超える高分子量体でないと、十分な歩留性が実現できない。又その様な高分子量体であるからこそ、紙力増強剤の添加量がパルプに対して0.1〜0.5質量%であるのに対して、歩留向上剤では0.01〜0.05質量%であり、極少量が添加される。以上の性質から明らかな様に、歩留向上剤には、排水処理で使用される凝集剤に近い性質が要求される。
この様な歩留向上剤は、分子量が100万超過の高分子量体であるため、重合後に得られる水分含有するペースト状重合体は、水への溶解性が極めて乏しく、実際の抄紙工程で水溶液として使用する場合、完全に希釈されるまでに極めて長時間を要するという問題を有するものであった。
又、従来の歩留向上剤は、歩留向上性能が不十分であり、特に中性抄紙領域での歩留性能に大きな欠点を有するものであった。最近では、抄紙工程のクローズ化進められており、再利用された水及びパルプ繊維には、填料を由来とする水溶性無機物等が多く混在しており、従来の歩留向上剤では、歩留性能が不十分であった。
【0007】
本発明は、種々の汚泥に対して凝集脱水性能に優れ、特に余剰比率の大きい汚泥に対しても凝集脱水性能に優れる組成物、高分子凝集剤及び汚泥の脱水方法、並びに水への溶解性に優れ、歩留向上性能に優れる歩留向上剤を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【0008】
【特許文献5】
特開平4−281095号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特許第2945761号公報(特許請求の範囲)
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々の検討を行なった結果、カチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位との共重合割合の異なる2種以上の両性高分子を含む組成物が有効であることを見出し、本発明を完成した。
以下に、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリルアミド又はメタクリルアミドを(メタ)アクリルアミドと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0010】
【発明の実施の形態】
1.組成物
本発明の組成物を構成する両性高分子としては、カチオン性単量体単位及びアニオン性単量体単位を必須構成単量体単位とする共重合体であれば良い。
【0011】
カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩が挙げられる。
【0012】
アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸及びこのナトリウム塩等のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0013】
両性高分子としては、前記単量体以外の単量体、具体的にはノニオン性単量体を併用したものである。ノニオン単量体としては、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0014】
いずれの単量体も、単独又は2種以上を使用することができる。
【0015】
本発明における好ましい単量体の組合せとしては、▲1▼カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルアクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体、▲2▼カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルメタクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体、並びに▲3▼カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルメタクリレートの3級塩又は4級塩、ジアルキルアミノアルキルアクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体がある。
【0016】
本発明における両性高分子は、両性高分子の分子量については、分子量の指標である0.5%塩粘度が10〜120mPa・sのものであり、後記する高分子凝集剤として使用する場合、安定した脱水処理を達成するためには、15〜90mPa・sがより好ましい。
本発明において0.5%塩粘度とは、4%塩化ナトリウム水溶液に両性高分子を0.5%溶解した試料を25℃で、B型粘度計にて、ローターNo.1又は2を用いて、60rpmで測定した値をいう。
【0017】
両性高分子の製造方法については特に制限はなく、一般的な重合方法を採用することができる。例えば、水溶液重合であれば、重合開始剤として過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩や、レドックス系の重合開始剤等を用いて、熱ラジカル重合を行なう方法や、ベンゾイン及びアセトフェノン型の光重合開始剤を用いて紫外線照射により光ラジカル重合を行なうこともできる。又、逆相のエマルション重合であれば、前記重合開始剤以外に、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等の水不溶性開始剤を用いて重合を行っても良い。
【0018】
得られたゲル状の重合体は、その後、公知の方法で切断・細断する。細断した重合体は、バンド式乾燥機、回転式乾燥機、遠赤外線式乾燥機及び振動流動式乾燥機等の乾燥機を使用し、温度60〜150℃程度で乾燥し、ロール式粉砕機等で粉砕して粉末状の共重合体とされ、粒度調整される。
本発明の組成物原料の両性高分子は、粉末状品のものが好ましく使用される。
【0019】
本発明の組成物は、カチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位の割合が異なる2種以上の両性高分子を含むものであり、さらに当該両性高分子として、カチオン性単量体単位のアニオン性単量体単位に対するモル基準の割合Ca/Anが、Ca/An≧1を満たすもの(以下カチオンリッチ両性高分子という)とCa/An<1(以下アニオンリッチ両性高分子という)を満たすものを併用してなるものである。カチオンリッチ両性高分子としては、さらにCa/Anが1.5〜10.0のものが、アニオンリッチ両性高分子としてはCa/Anが0.5〜0.9のものが好ましい。
カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子は、前記単量体単位割合を満たす様にカチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位を共重合して得ることができる。
【0020】
本発明の組成物は、カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子を混合することにより製造することができる。又、後記する汚泥の脱水や抄紙工程においては、それぞれの成分を別々に添加することもできる。
カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子としては、それぞれ1種を使用することも、2種以上を併用することもでき、カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子の1種づつを使用することが簡便であり好ましい。
組成物における両性高分子の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、カチオンリッチ両性高分子が20〜60質量%及びアニオンリッチ両性高分子が40〜80質量%の範囲が好ましい。
【0021】
2.用途
本発明の組成物は、種々の用途に応用することが可能である。例えば、高分子凝集剤及び塗料用等の増粘剤等が挙げられる。高分子凝集剤としては、汚泥脱水剤、及び歩留向上剤等の製紙工程における抄紙用薬剤等が挙げられる。
本発明で得られる組成物は、高分子凝集剤として有用なものであり、特に汚泥脱水剤及び歩留向上剤として有用なものである。以下、汚泥脱水剤及び歩留向上剤について説明する。
【0022】
1)汚泥脱水剤及び汚泥の脱水方法
本発明の汚泥脱水剤(以下両性高分子凝集剤ということもある)の使用に際しては、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルファミン酸等、脱水処理に悪影響がでないかぎり公知の添加剤と混合して使用しても良い。
【0023】
本発明の汚泥脱水剤は、種々の汚泥に適用可能であり、下水、し尿、並びに食品工業、化学工業及びパルプ又は製紙工業汚泥等の一般産業排水で生じる有機性汚泥及び凝集沈降汚泥を含む混合汚泥等を挙げることができる。
本発明の汚泥脱水剤は、特に繊維分が少ない汚泥、即ち余剰比率の高い汚泥に好ましく適用できるものである。具体的には、余剰比率が20SS%以上の汚泥に好ましく適用でき、より好ましくは20〜80SS%の汚泥に適用できる。
【0024】
本発明の汚泥脱水剤を使用する脱水方法は、具体的には、汚泥に汚泥脱水剤を添加した後、これにより汚泥フロックを形成させるものである。フロックの形成方法は、公知の方法に従えば良い。
【0025】
又、必要に応じて、無機凝集剤、有機カチオン性化合物、カチオン性高分子凝集剤及びアニオン性高分子凝集剤を併用することができる。
【0026】
無機凝集剤としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄及び硫酸第一鉄及びポリ硫酸鉄等を例示できる。
【0027】
有機カチオン性化合物としては、ポリマーポリアミン、ポリアミジン及びカチオン性界面活性剤等を例示できる。
【0028】
無機凝集剤又は有機カチオン性化合物を添加した場合においては、pHを4〜8とすることが、より効果的に汚泥の処理を行うことができるため好ましい。
pHの調整方法としては、無機凝集剤又は有機カチオン性化合物を添加した後、当該pH値を満たす場合は、特にpH調整の必要はないが、本発明で限定する範囲を満たさない場合は、酸又はアルカリを添加して調整する。
酸としては、塩酸、硫酸、酢酸及びスルファミン酸等を挙げることができる。又、アルカリとしては、苛性ソーダ、苛性カリ、消石灰及びアンモニア等が挙げられる。
【0029】
カチオン性高分子凝集剤としては、前記したカチオン性単量体の単独重合体及び前記したカチオン性単量体及びノニオン性単量体の共重合体等を挙げることができる。
【0030】
アニオン性高分子凝集剤としては、前記したアニオン性単量体の単独重合体及び前記したアニオン性単量体及びノニオン性単量体の共重合体等を挙げることができる。
【0031】
本発明において、繊維分が少ない汚泥、即ち余剰比率の高い汚泥を使用する場合においては、アニオン性高分子凝集剤と併用することが好ましい。
この場合において、凝集剤の汚泥への添加の順序としては、アニオン性高分子凝集剤を添加した後、両性高分子凝集剤を添加することが好ましい。
アニオン性高分子凝集剤としては、アニオン性単量体単位が30モル%以上の共重合割合である共重合体が好ましく、40モル%以上の共重合割合である共重合体がより好ましい。
この場合、アニオン性高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤の併用割合としては、使用する全高分子凝集剤の合計量に対して、アニオン性高分子凝集剤が1〜70質量%、両性高分子凝集剤が99〜30質量%であることが好ましい。
【0032】
又、汚泥に添加する凝集剤は、使用する全高分子凝集剤の合計したカチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位の割合が、下記式(1)を満足する様に添加することが好ましい。
【0033】
【式2】
0.3≦Caall/Anall≦4.0 (1)
【0034】
〔尚、上記式(1)において、Caall及びAnallは、それぞれ、全使用高分子凝集剤の全アニオン性単量体単位量及び全カチオン性単量体単位量の合計量を100モルに換算した場合における、全カチオン性単量体単位量及び全アニオン性単量体単位量のモル数を表す。〕
この範囲外で使用すると、フロックの造粒性が乏しくなったり、全凝集剤添加量が異常に増加したりし、得られるケーキの含水率が高くなることがある。
【0035】
両性高分子凝集剤の汚泥に対する添加割合としては、5〜500ppmが好ましく、SSに対しては0.05〜1質量%が好ましい。両性高分子凝集剤とその他の高分子凝集剤を併用する場合は、全高分子凝集剤の合計量が前記添加割合を満たすことが好ましい。
【0036】
汚泥脱水剤、その他凝集剤の添加量、攪拌速度、攪拌時間等は、従来行われている脱水条件に従えば良い。
【0037】
このようにして形成したフロックは、公知の手段を用いて脱水し、脱水ケーキとする。
【0038】
脱水装置としては、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機及びスクリューデカンター等を例示することが出来る。
【0039】
又、本発明の汚泥脱水剤は、濾過部を有する造粒濃縮槽を使用する脱水方法にも適用可能である。
具体的には、汚泥に、無機凝集剤を添加し、さらに汚泥脱水剤を添加した後、又は汚泥脱水剤と共に、該汚泥を濾過部を有する造粒濃縮槽に導入し、該濾過部からろ液を取り出すと共に造粒し、この造粒物を脱水機で脱水処理する方法等が挙げられる。
【0040】
2)歩留向上剤及び抄紙方法
本発明の組成物を歩留向上剤として使用する場合、組成物原料の両性高分子としては、粉末状のものが好ましい。又、実際の使用に当たっては、原料の両性高分子を水に溶解させ、0.01〜0.5質量%水溶液として使用することが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%水溶液である。
歩留向上剤の使用方法としては常法に従えば良く、例えば、紙料を抄紙機に送入する最終濃度に希釈する際、又は希釈後に添加する。
【0041】
歩留向上剤が適用される紙料としては、通常の抄紙工程で使用されるものであればよく、通常、少なくともパルプ及び填料を含み、必要に応じて填料以外の添加剤、具体的には、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤及び着色剤等を含むものである。
填料としては、白土、カオリン、アガライト、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸石灰、硫酸バリウム、酸化亜鉛及び酸化チタン等が挙げられる。サイズ剤としては、アクリル酸・スチレン共重合体等が挙げられ、定着剤としては、硫酸バンド、カチオン澱粉及びアルキルケテンダイマー等が挙げられ、紙力増強剤としては、澱粉及びカチオン性又は両性ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
歩留向上剤の添加方法としては、組成物の水溶液を添加することもでき、又は組成物原料の両性高分子の水溶液を添加した後、別の両性高分子の水溶液を添加することもできる。
歩留向上剤の好ましい添加割合としては、紙料中の乾燥パルプ質量当たり、0.05〜0.8質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
歩留向上剤の添加後の紙料のpHとしては、5〜10に維持することが好ましく、より好ましくは5〜8である。歩留向上剤の添加後に、紙料は直ちに抄紙機に送入される。
【0043】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
なお、以下において、「部」とは質量部を意味する。
各例で使用した両性高分子及びアニオン性高分子凝集剤は、それぞれ下記表1及び表2に示す粉状のものを使用した。
又、各表における略号は、以下の意味を示す。
・DAC:ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級塩
・AA:アクリル酸
・AMD:アクリルアミド
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
○実施例1
両性高分子としてCR−1の25部とAR−1の75部を使用し、これらを混合して組成物を製造し、これを両性高分子凝集剤として使用した。
古紙パルプ廃水のスカム廃水(SS:33400mg/l、VSS:16900mg/l、繊維分:290mg/l)と余剰汚泥(SS:10700mg/l、VSS:8200mg/l、繊維分:80mg/l)の55:45(SS%)混合汚泥200mlを300mlのビーカーに採取し、これに両性高分子凝集剤を添加した後、空の300mlのビーカーに移液し、計5回移液操作を実施した後、スパーテルにて50回攪拌してフロックを形成させた。この時のフロックの造粒性を下記の3段階で評価し、得られたフロックの粒径を測定した。
その後、80メッシュ濾布をフィルターとして用いて、前記汚泥フロック分散液を重力濾過し、10秒後の濾液容量を測定し、これを濾過速度とした。又、濾布上のケーキの自立性と得られた濾液の外観を下記の3段階で評価した。
得られたケーキを4mmφのパンチングメタルに挟み、6.5kg×3分間の荷重をかけ、パンチング穴から逸脱したケーキ重量を秤ると共に、濾布への剥離性を下記の3段階で評価した。
評価結果を表4に示す。実施例1の汚泥脱水方法は、評価を行なった全ての凝集性能に優れるものであった。
【0047】
・造粒性
優;攪拌すると直ちに粒径の大きなフロックを形成した。良好;攪拌をしばらく続けると粒径の大きなフロックを形成した。不良;攪拌を続けても粒径の小さなフロックしか形成しなかった。
・濾過概観
優;完全に透明。良好;僅かに浮遊物有り。不良;多くの浮遊物有り。
・自立性
重力濾過時にフロック分散液を円筒に流し込み、濾過後、円筒を取り外したときにおいて、
優:完全にケーキが自力で立った。良好:僅かにケーキが流れた。不良:ケーキが流れてしまった。
・剥離性
ケーキを濾布からはがした時における濾布の状況が、
優:全く汚れなかった。良好:僅かに汚れた。不良:汚れてしまった。
【0048】
○実施例2〜同5
両性高分子凝集剤として、下記表3に示す両性高分子を使用して実施例1と同様にして製造したBL−2も使用した。
汚泥に、表4に示すアニオン性高分子凝集剤を添加した後、表4に示す両性高分子凝集剤を添加する以外は実施例1と同様にして、汚泥の脱水処理を行なった。
実施例1と同様に評価した結果を表4に示す。実施例2〜同5の汚泥脱水方法は、いずれの場合も評価を行なった全ての凝集性能に優れるものであった。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
○比較例1
汚泥に、表5に示す両性高分子凝集剤を使用した以外は実施例1と同様にして、汚泥の脱水処理を行なった。
実施例1と同様に評価した結果を表5に示す。
比較例1で使用した両性高分子凝集剤CO−1の構成単量体比率は、実施例1で使用した両性高分子凝集剤BL−1の混合後の構成単量体比率が同じものであったが、いずれの凝集性能も不充分なものであった。
【0052】
○比較例2及び同3
汚泥に、表5に示すアニオン性高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤を使用した以外は実施例2〜5と同様にして、汚泥の脱水処理を行なった。
実施例1と同様に評価した結果を表5に示す。
比較例2及び同3で使用した両性高分子凝集剤のCO−1及びCO−2の構成単量体比率は、それぞれ両性高分子凝集剤のBL−1及びBL−2の混合後の構成単量体比率が同じものであったが、いずれの凝集性能も不充分なものであった。
【0053】
【表5】
【0054】
○実施例6及び同7
歩留向上剤として、CR−1の70部とAR−1の30部の割合で、それらの合計量0.05質量%含む水溶液を使用した。歩留向上剤の製造は、CR−1及びAR−1を攪拌下に水に添加し、添加後30分で溶解したが、さらに30分攪拌した。これを歩留向上剤BL−3という。
同様に、CR−3の60部とAR−1の40部の割合で、それらの合計量0.05質量%含む水溶液を、前記と同様にして製造し、これを歩留向上剤BL−4という。
LBKPシートを離解、叩解したCSF=450mlの1質量%パルプスラリーを調製し、1000rpmで攪拌しながら、下記▲1▼〜▲5▼の成分をこの順で添加し、ダイナミックドレネージジャー法にて総歩留率を測定した。得られた結果を表7に示す。パルプスラリーの最終pHは7.2であった。
▲1▼軽質炭酸カルシウム:20質量%(パルプスラリー中のパルプ固形分に対する割合。以下対パルプという)
▲2▼カチオン澱粉:0.3質量%(対パルプ)
▲3▼硫酸バンド:1.7質量%(対パルプ)
▲4▼紙力増強剤〔DAC/AA/AM=20/10/70(モル比)の共重合体の15質量%水溶液。粘度;3500mPa・s〕:0.5質量%(対パルプ)
▲5▼歩留向上剤:250ppm(固形分、対パルプ)
【0055】
○実施例8
実施例6において、歩留向上剤として、両性高分子AR−1の0.05質量%の水溶液を70ppm(固形分、対パルプ)を添加した後、両性高分子CR−1の0.05質量%の水溶液を固形分として175ppm(固形分、対パルプ)を添加した以外は実施例6と同様の方法により歩留向上剤としての性能を評価した。得られた結果を表7に示す。
【0056】
○比較例4
歩留向上剤として、カチオン性アクリル系重合体〔DAC:AM=10/90(モル比)の共重合体、0.5%塩粘度70mPa・s、ペースト状品〕0.05質量%含む水溶液を使用した。歩留向上剤の製造は、カチオンAを攪拌下に水に添加したが、完全に溶解するまで180分を要した。これを歩留向上剤カチオンAという。
実施例6において、歩留向上剤として、カチオンAの250ppm(固形分、対パルプ)を使用する以外は、実施例6と同様の方法により歩留向上剤としての性能を評価した。得られた結果を表7に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
【発明の効果】
本発明の組成物は、両性高分子凝集剤として使用した場合、汚泥脱水剤として、種々の汚泥に対して、特に余剰比率の高い汚泥に対しても、濾過速度が速く、得られるフロックは粒径が大きく、自立性及び剥離性に優れるという各種凝集脱水性能に優れたものとなり、又、歩留向上剤として、抄紙工程の歩留向上を達成することができる。
Claims (9)
- ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの3級塩又は4級塩であるカチオン性単量体単位と、(メタ)アクリル酸またはその塩であるアニオン性単量体単位、およびノニオン性単量体として(メタ)アクリルアミドを有し、その0.5%塩粘度が10〜120mPa・sである高分子であって、前記単量体単位の割合が異なる2種以上の両性高分子を含む組成物であって、前記両性高分子として、カチオン性単量体単位のアニオン性単量体単位に対するモル基準の割合(以下Ca/Anという)がCa/An≧1を満たすものとCa/An<1を満たすものを併用してなる組成物。
- ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの3級塩又は4級塩がジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級塩である請求項1記載の組成物。
- 請求項1または請求項2のいずれかに記載の組成物を含有してなる両性高分子凝集剤。
- 汚泥に対して、請求項3記載の両性高分子凝集剤を添加し、次いで脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
- さらにアニオン性高分子凝集剤を併用することを特徴とする請求項4記載の汚泥の脱水方法。
- 前記アニオン性高分子凝集剤が、全構成単量体単位に対するアニオン性単量体単位の割合が30モル%以上のものである請求項5記載の汚泥の脱水方法。
- 使用する全高分子凝集剤の合計したカチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位の割合が、下記式(1)を満足する様に汚泥に高分子凝集剤を添加することを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の汚泥の脱水方法。
0.3≦Caall/Anall≦4.0 (1)
〔尚、上記式(1)において、Caall及びAnallは、それぞれ、全使用高分子凝集剤の全アニオン性単量体単位量及び全カチオン性単量体単位量の合計量を100モルに換算した場合における、全カチオン性単量体単位量及び全アニオン性単量体単位量のモル数を表す。〕 - 請求項1または請求項2のいずれかに記載の組成物を含有してなる抄紙用歩留向上剤。
- 紙料に対して、請求項8記載の歩留向上剤を添加し、次いで抄紙することを特徴とする抄紙方法。
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