JP2004210986A - 組成物、高分子凝集剤及び汚泥の脱水方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1.(A)カチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位を有し、前記単量体単位の割合が異なる2種以上の両性高分子及び(B)(メタ)アクリレート系カチオン性単量体を必須構成単量体単位とするカチオン性高分子からなる組成物。2.前記組成物からなる高分子凝集剤。3.汚泥に対して前記高分子凝集剤を添加し、次いで脱水する汚泥の脱水方法。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝集力及び脱水性に優れ、濾過速度が速く、優れたフロックを得ることができるという各種凝集脱水性能に優れる組成物及び高分子凝集剤並びに及びこれを使用する汚泥脱水方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、汚泥の脱水処理には、カチオン性高分子凝集剤が単独で使用されているが、近年、汚泥発生量の増加及び汚泥性状の悪化により、従来のカチオン性高分子凝集剤では、汚泥の処理量に限界があることや、脱水ケーキ含水率、SS回収率及びケーキのろ布からの剥離性等の点で処理状態は必ずしも満足できるものではなく、これらの点を改善することが要求されている。
【0003】
従来のカチオン性高分子凝集剤のこれら欠点を改良するために、種々の両性高分子凝集剤やこれをを使用した脱水方法が種々提案されている。
例えば、(1)無機汚泥を含まない無機凝集剤を添加したpHが5〜8の有機質汚泥に、特定イオン当量のカチオンリッチ両性高分子凝集剤を添加する汚泥の脱水方法(特許文献1参照)、(2)pHが5〜8の有機質汚泥に、アクリレート系カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を併用する汚泥の脱水方法(特許文献2参照)、(3)汚泥に無機凝集剤を添加しpHを5未満に設定し、特定組成のアニオンリッチ両性高分子凝集剤を添加する脱水方法(特許文献3)及び(4)排水に無機凝集剤、アニオン性高分子凝集剤及びカチオンリッチ両性高分子凝集剤を順次添加する有機性排水の処理方法(特許文献4参照)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特公平5−56199号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特許2933627号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特公平6−239号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平6−134213号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記(1)〜(4)の脱水方法は、それなりに特長を有するものではあるが、最近の廃水の難脱水化傾向に対して、必ずしも有効的な方法とは言い難いものであった。
即ち、廃水処理後のCOD値をより低いものとする要求があるため、廃水に対する活性汚泥処理の比率が従来より高くなっており、汚泥脱水処理を行なう汚泥は余剰汚泥を多く含んだものとなり、又製紙廃水においては、廃水中の繊維分の回収率が上昇しているため、汚泥中の繊維分含有量が低くなり、従来の高分子凝集剤や汚泥脱水方法では対応できない場合があった。
【0006】
本発明者は、種々の汚泥に対して凝集脱水性能に優れ、特に余剰比率の大きい汚泥に対しても凝集脱水性能に優れる組成物、高分子凝集剤及び汚泥の脱水方法を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく種々の検討を行なった結果、カチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位との共重合割合の異なる2種以上の両性高分子と、(メタ)アクリレート系カチオン性高分子を併用した組成物が有効であることを見出し、本発明を完成した。
以下に、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリルアミド又はメタクリルアミドを(メタ)アクリルアミドと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表し、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを(メタ)アクリロニトリルと表す。
【0008】
【発明の実施の形態】
1. (A) 2種以上の両性高分子
(A)成分は、カチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位を有し、前記単量体単位の割合が異なる2種以上の両性高分子である。
(A)成分を構成する両性高分子としては、カチオン性単量体単位及びアニオン性単量体単位を必須構成単量体単位とする共重合体であれば良い。
【0009】
カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド等の塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩等が挙げられる。
【0010】
アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸及びこのナトリウム塩等のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;マレイン酸等及びそれらのアルカリ金属塩;アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルキルアルカンスルホン酸及びこのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;並びにビニルスルホン酸及びこのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。
【0011】
両性高分子としては、必要に応じて前記単量体以外の単量体、具体的にはノニオン性単量体を併用したものであっても良い。ノニオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダノール及びアリルアミン等を挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0012】
いずれの単量体も、単独又は2種以上を使用することができる。
【0013】
本発明における好ましい単量体の組合せとしては、▲1▼カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルアクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体、▲2▼カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルメタクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体、並びに▲3▼カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルメタクリレートの3級塩又は4級塩とジアルキルアミノアルキルアクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体がある。
【0014】
本発明における両性高分子は、両性高分子の分子量については、分子量の指標である0.5%塩粘度が10〜120mPa・sのものが好ましく、後記する高分子凝集剤として使用する場合、安定した脱水処理を達成するためには、15〜90mPa・sがより好ましい。
本発明において0.5%塩粘度とは、4%塩化ナトリウム水溶液に両性高分子を0.5%溶解した試料を25℃で、B型粘度計にて、ローターNo.1又は2を用いて、60rpmで測定した値をいう。
【0015】
両性高分子の製造方法については特に制限はなく、一般的な重合方法を採用することができる。例えば、水溶液重合であれば、重合開始剤として過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩や、レドックス系の重合開始剤等を用いて、熱ラジカル重合を行なう方法や、ベンゾイン及びアセトフェノン型の光重合開始剤を用いて紫外線照射により光ラジカル重合を行なうこともできる。又、逆相のエマルション重合であれば、前記重合開始剤以外に、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等の水不溶性開始剤を用いて重合を行っても良い。
【0016】
得られたゲル状の重合体は、その後、公知の方法で切断・細断する。細断した重合体は、バンド式乾燥機、回転式乾燥機、遠赤外線式乾燥機及び振動流動式乾燥機等の乾燥機を使用し、温度60〜150℃程度で乾燥し、ロール式粉砕機等で粉砕して粉末状の共重合体とされ、粒度調整される。
本発明の組成物原料の両性高分子は、粉末状品のものが好ましく使用される。
【0017】
本発明の(A)成分は、カチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位の割合が異なる2種以上の両性高分子を含むものであれば任意のものが使用可能である。
【0018】
好ましい両性高分子の組み合わせとしては、カチオン性単量体単位のアニオン性単量体単位に対するモル基準の割合Ca/Anが、Ca/An≧1を満たすもの(以下カチオンリッチ両性高分子という)とCa/An<1(以下アニオンリッチ両性高分子という)を満たすものを併用してなるものである。カチオンリッチ両性高分子としては、さらにCa/Anが1.5〜10.0のものが、アニオンリッチ両性高分子としてはCa/Anが0.5〜0.9のものが好ましい。
カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子は、前記単量体単位割合を満たす様にカチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位を共重合して得ることができる。
【0019】
別の好ましい両性高分子の組み合わせとしては、両性高分子におけるカチオン性単量体単位及びアニオン性単量体単位の割合が、下記式(1)を満たす両性高分子(以下カチオンリッチ両性高分子1という)と下記式(2)を満たす両性高分子(以下カチオンリッチ両性高分子2という)からなり、さらにこれらが式(3)を満たすものが挙げられる。
【0020】
【式2】
Ca1/An1≧1 ・・・・(1)
【0021】
【式3】
Ca2/An2≧1 ・・・・(2)
【0022】
【式4】
│(Ca1−An1)−(Ca2−An2)│≧1.5 ・・・・(3)
【0023】
〔尚、上記式(1)〜(3)において、Ca1及びAn1は、それぞれ、カチオンリッチ両性高分子1における全構成単量体単位の合計量を100モルに換算した場合における、全カチオン性単量体単位量及び全アニオン性単量体単位量のモル数を表し、Ca2及びAn2は、それぞれ前記と同様に、カチオンリッチ両性高分子2における全カチオン性単量体単位量及び全アニオン性単量体単位量のモル数を表す。〕
【0024】
Ca1/An1としては1.2〜40.0が好ましく、Ca2/An2としては1.2〜40.0が好ましい。
│(Ca1−An1)−(Ca2−An2)│としては1.5〜40.0が好ましい。この値が1.5に満たないと、凝集剤として使用した場合、本発明の様な高性能の凝集性能を発揮できないことがある。
【0025】
カチオンリッチ両性高分子1及び同2は、前記単量体単位割合を満たす様にカチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位を共重合して得ることができる。
【0026】
(A)成分における両性高分子の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良い。
カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子を併用する場合は、カチオンリッチ両性高分子が20〜60質量%及びアニオンリッチ両性高分子が40〜80質量%の範囲が好ましい。
カチオンリッチ両性高分子1及び同2を併用する場合は、カチオンリッチ両性高分子1が10〜90質量%及びカチオンリッチ両性高分子2が90〜10質量%の範囲が好ましい。
【0027】
カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子、又はカチオンリッチ両性高分子1及び同2としては、それぞれ1種を使用することも、2種以上を併用することもでき、カチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子、又はカチオンリッチ両性高分子1及び同2の1種づつを使用することが簡便であり好ましい。
【0028】
2. (B) カチオン性高分子
(B)成分は、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体を必須構成単量体単位とするカチオン性高分子である。
(B)成分としては、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体を必須構成単量体単位とする重合体であれば、種々の重合体が使用可能である。
【0029】
(メタ)アクリレート系カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩、並びにジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩等が挙げられる。
【0030】
本発明では、これら(メタ)アクリレート系カチオン性単量体の中でも、アクリレート系カチオン性単量体を使用することが、得られる高分子の分子量が高いものとなり、最終的に得られる組成物を高分子凝集剤等として使用した場合の性能が優れたものとなるため好ましい。
【0031】
(B)成分としては、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体に必要に応じて、ノニオン性単量体を共重合体したものであっても良い。
ノニオン性単量体としては、前記1.で挙げたものと同様の単量体を使用することができる。これらの中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
いずれの単量体も、単独又は2種以上を使用することができる。
【0032】
(B)成分の分子量としては、0.5%塩粘度が10〜120mPa・sのものが好ましく、後記する高分子凝集剤として使用する場合、安定した脱水処理を達成するためには、15〜90mPa・sがより好ましい。
【0033】
(B)成分の製造方法については特に制限はなく、一般的な重合方法を採用することができる。例えば、前記1.で挙げた方法と同様の方法が採用できる。
得られたゲル状の重合体の処理方法も、前記1.で挙げた方法と同様の方法が採用できる。
(B)成分は、粉末状品のものが好ましく使用される。
【0034】
(B)成分としては、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体とノニオン性単量体の共重合体が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリレート系カチオン性単量体と(メタ)アクリルアミドの共重合体である。この場合、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体の共重合割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、1〜95モル%が好ましい。
本発明の組成物を高分子凝集剤として使用する場合において、繊維分が少なく、カチオン要求量の高い、下水、養豚及び染色等の汚泥に対して使用する場合には、(B)成分として、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体単位が50〜95モル%有する高分子を使用することが好ましい。又、製紙排水等の繊維分が比較的多く、カチオン要求量の低い汚泥に対しては、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体単位が1〜50モル%有する高分子を使用することが好ましい。
【0035】
3.組成物
本発明の組成物は、前記(A)成分及び(B)成分を混合することにより製造することができる。又、後記する汚泥の脱水や抄紙工程においては、それぞれの成分を別々に添加することもできる。
組成物における(A)成分及び(B)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良い。好ましい割合としては、(A)成分が40〜99質量%及び(B)成分が1〜60質量%の範囲であり、より好ましくは(A)成分が50〜95質量%及び(B)成分が5〜50質量%の範囲である。
【0036】
4.用途
本発明の組成物は、種々の用途に応用することが可能である。例えば、高分子凝集剤及び塗料用等の増粘剤等が挙げられる。高分子凝集剤としては、汚泥脱水剤、及び歩留向上剤等の製紙工程における抄紙用薬剤等が挙げられる。
本発明で得られる組成物は、高分子凝集剤として有用なものであり、特に汚泥脱水剤及び歩留向上剤として有用なものであり、特に汚泥脱水剤として有用なものである。
以下、汚泥脱水剤及び歩留向上剤について説明する。
【0037】
1)汚泥脱水剤及び汚泥の脱水方法
本発明の組成物は、特に汚泥脱水剤として有用なものである。
本発明の組成物を汚泥脱水剤として使用する場合は、組成物に、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルファミン酸等、脱水処理に悪影響がでないかぎり公知の添加剤と混合して使用しても良い。
本発明の汚泥脱水剤(以下高分子凝集剤ということもある)は、種々の汚泥に適用可能であり、下水、し尿、並びに食品工業、化学工業及びパルプ又は製紙工業汚泥等の一般産業排水で生じる有機性汚泥及び凝集沈降汚泥を含む混合汚泥等を挙げることができる。
本発明の汚泥脱水剤は、特に繊維分が少ない汚泥、即ち余剰比率の高い汚泥に好ましく適用できるものである。具体的には、余剰比率が20SS%以上の汚泥に好ましく適用でき、より好ましくは20〜80SS%の汚泥に適用できる。
【0038】
本発明の汚泥脱水剤を使用する脱水方法は、具体的には、汚泥に汚泥脱水剤を添加した後、これにより汚泥フロックを形成させるものである。フロックの形成方法は、公知の方法に従えば良い。
【0039】
又、必要に応じて、無機凝集剤、有機カチオン性化合物及びアニオン性高分子凝集剤を併用することができる。
【0040】
無機凝集剤としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄及び硫酸第一鉄及びポリ硫酸鉄等を例示できる。
【0041】
有機カチオン性化合物としては、ポリマーポリアミン、ポリアミジン及びカチオン性界面活性剤等を例示できる。
【0042】
無機凝集剤又は有機カチオン性化合物を添加した場合においては、pHを4〜8とすることが、より効果的に汚泥の処理を行うことができるため好ましい。
pHの調整方法としては、無機凝集剤又は有機カチオン性化合物を添加した後、当該pH値を満たす場合は、特にpH調整の必要はないが、本発明で限定する範囲を満たさない場合は、酸又はアルカリを添加して調整する。
酸としては、塩酸、硫酸、酢酸及びスルファミン酸等を挙げることができる。又、アルカリとしては、苛性ソーダ、苛性カリ、消石灰及びアンモニア等が挙げられる。
【0043】
アニオン性高分子凝集剤としては、前記したアニオン性単量体の単独重合体及び前記したアニオン性単量体及びノニオン性単量体の共重合体等を挙げることができる。
【0044】
本発明において、繊維分が少ない汚泥、即ち余剰比率の高い汚泥を使用する場合においては、アニオン性高分子凝集剤と併用することが好ましい。
この場合において、凝集剤の汚泥への添加の順序としては、アニオン性高分子凝集剤を添加した後、高分子凝集剤を添加することが好ましい。
アニオン性高分子凝集剤としては、アニオン性単量体単位が30モル%以上の共重合割合である共重合体が好ましく、40モル%以上の共重合割合である共重合体がより好ましい。
この場合、アニオン性高分子凝集剤及び高分子凝集剤の併用割合としては、使用する全高分子凝集剤の合計量に対して、アニオン性高分子凝集剤が1〜70質量%、高分子凝集剤が99〜30質量%であることが好ましい。
【0045】
又、汚泥に添加する凝集剤は、使用する全高分子凝集剤の合計したカチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位の割合が、下記式(4)を満足する様に添加することが好ましい。
【0046】
【式5】
0.3≦Caall/Anall≦15 (4)
【0047】
〔尚、上記式(4)において、Caall及びAnallは、それぞれ、全使用高分子凝集剤の全アニオン性単量体単位量及び全カチオン性単量体単位量の合計量を100モルに換算した場合における、全カチオン性単量体単位量及び全アニオン性単量体単位量のモル数を表す。〕
この範囲外で使用すると、フロックの造粒性が乏しくなったり、全凝集剤添加量が異常に増加したりし、得られるケーキの含水率が高くなることがある。
【0048】
高分子凝集剤の汚泥に対する添加割合としては、5〜500ppmが好ましく、SSに対しては0.05〜1質量%が好ましい。高分子凝集剤とその他の高分子凝集剤を併用する場合は、全高分子凝集剤の合計量が前記添加割合を満たすことが好ましい。
【0049】
汚泥脱水剤、その他凝集剤の添加量、攪拌速度、攪拌時間等は、従来行われている脱水条件に従えば良い。
【0050】
このようにして形成したフロックは、公知の手段を用いて脱水し、脱水ケーキとする。
【0051】
脱水装置としては、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機及びスクリューデカンター等を例示することが出来る。
【0052】
又、本発明の汚泥脱水剤は、濾過部を有する造粒濃縮槽を使用する脱水方法にも適用可能である。
具体的には、汚泥に、無機凝集剤を添加し、さらに汚泥脱水剤を添加した後、又は汚泥脱水剤と共に、該汚泥を濾過部を有する造粒濃縮槽に導入し、該濾過部からろ液を取り出すと共に造粒し、この造粒物を脱水機で脱水処理する方法等が挙げられる。
【0053】
2)歩留向上剤及び抄紙方法
本発明の組成物を歩留向上剤として使用する場合、組成物原料としては、粉末状のものが好ましい。又、実際の使用に当たっては、組成物原料を水に溶解させ、0.01〜0.5質量%水溶液として使用することが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%水溶液である。
歩留向上剤の使用方法としては常法に従えば良く、例えば、紙料を抄紙機に送入する最終濃度に希釈する際、又は希釈後に添加する。
【0054】
歩留向上剤が適用される紙料としては、通常の抄紙工程で使用されるものであればよく、通常、少なくともパルプ及び填料を含み、必要に応じて填料以外の添加剤、具体的には、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤及び着色剤等を含むものである。
填料としては、白土、カオリン、アガライト、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸石灰、硫酸バリウム、酸化亜鉛及び酸化チタン等が挙げられる。サイズ剤としては、アクリル酸・スチレン共重合体等が挙げられ、定着剤としては、硫酸バンド、カチオン澱粉及びアルキルケテンダイマー等が挙げられ、紙力増強剤としては、澱粉及びカチオン性又は両性ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0055】
歩留向上剤の添加方法としては、組成物の水溶液を添加することもでき、又は組成物原料の両性高分子の水溶液を添加した後、別の両性高分子の水溶液を添加することもできる。
歩留向上剤の好ましい添加割合としては、紙料中の乾燥パルプ質量当たり、0.05〜0.8質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
歩留向上剤の添加後の紙料のpHとしては、5〜10に維持することが好ましく、より好ましくは5〜8である。歩留向上剤の添加後に、紙料は直ちに抄紙機に送入される。
【0056】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
なお、以下において、「部」とは質量部を意味する。
各例で使用した両性高分子及びアニオン性高分子凝集剤は、それぞれ下記表1及び表2に示す粉状のものを使用した。
又、各表における略号は、以下の意味を示す。
・DAC:ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級塩
・AA:アクリル酸
・AMD:アクリルアミド
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
○実施例1(高分子凝集剤の製造)
(A)成分としてCR−1の25部とAR−1の75部からなるBL−1の80部と(B)成分としてDACとAMDの共重合体であるアクリレート系カチオン性高分子(DACの共重合割合:25モル%、0.5%塩粘度=80mPa.s、以下C−25という)20部を混合して、高分子凝集剤ACBL−1を製造した。
【0060】
○実施例2〜同3(高分子凝集剤の製造)
(A)成分及び(B)成分として、下記表4に示す高分子を使用する以外は実施例1と同様の方法により、高分子凝集剤を製造した。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
○実施例4(汚泥の脱水方法)
古紙パルプ排水のスカム排水(SS:39000mg/l、VSS:20000mg/l、繊維分:880mg/l)と余剰汚泥(SS:12800mg/l、VSS:9500mg/l、繊維分:400mg/l)の70:30(SS%)混合汚泥200mlを300mlのビーカーに採取し、これに高分子凝集剤ACBL−1を添加した後、空の300mlビーカーに移液し、計5回の移液操作を実施した後、スパーテルにて50回攪拌してフロックを生成させた。この時のフロックの造粒程度を下記の3段階で評価し、得られたフロックの粒径を測定した。
その後、80メッシュ濾布をフィルターとして用いて、前記汚泥フロック分散液を重力濾過し、10秒後の濾液容量を測定し、これを濾過速度とした。又、濾布上のケーキの自立性と得られた濾液の外観を下記の3段階で評価した。
得られたケーキを4mmφのパンチングメタルに挟み、30kg×3分間の荷重をかけ、パンチング穴から逸脱したケーキ重量を秤ると共に、濾布への剥離性を下記の3段階で評価した。
【0064】
・造粒性
優;攪拌すると直ちに粒径の大きなフロックを形成した。良好;攪拌をしばらく続けると粒径の大きなフロックを形成した。不良;攪拌を続けても粒径の小さなフロックしか形成しなかった。
・濾過概観
優;完全に透明。良好;僅かに浮遊物有り。不良;多くの浮遊物有り。
・自立性
重力濾過時にフロック分散液を円筒に流し込み、濾過後、円筒を取り外したときにおいて、
優:完全にケーキが自力で立った。良好:僅かにケーキが流れた。不良:ケーキが流れてしまった。
・剥離性
ケーキを濾布からはがした時における濾布の状況が、
優:全く汚れなかった。良好:僅かに汚れた。不良:汚れてしまった。
【0065】
○実施例5〜同8(汚泥の脱水方法)
汚泥に、表5に示すアニオン性高分子凝集剤を添加した後、表5に示す高分子凝集剤を添加する以外は実施例4と同様にして、汚泥の脱水処理を行なった。
実施例4と同様に評価した結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
○比較例1〜4(汚泥の脱水方法)
汚泥に、表6に示すアニオン性高分子凝集剤及び高分子凝集剤を使用した以外は実施例4と同様にして、汚泥の脱水処理を行なった。
実施例4と同様に評価した結果を表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
○実施例9(汚泥の脱水方法)
製紙・パルプ排水混合汚泥(SS:37100mg/l、VSS:24000mg/l、繊維分:8000mg/l)200mlを300mlのビーカーに採取し、高分子凝集剤ACBL−3を添加した以外は、実施例4と同様の方法で汚泥の脱水処理を行った。
実施例4と同様に評価した結果を表7示す。
【0070】
○実施例10(汚泥の脱水方法)
実施例9と同様の汚泥に、表7に示すアニオン性高分子凝集剤を添加した後、表7に示す高分子凝集剤を添加する以外は実施例9と同様にして、汚泥の脱水処理を行なった。
実施例4と同様に評価した結果を表7に示す。
【0071】
【表7】
【0072】
○比較例5〜7(汚泥の脱水方法)
実施例9と同様の汚泥に、表8に示すアニオン性高分子凝集剤及び高分子凝集剤を使用した以外は実施例9と同様にして、汚泥の脱水処理を行なった。
実施例4と同様に評価した結果を表8に示す。
【0073】
【表8】
【0074】
【発明の効果】
本発明の組成物は、高分子凝集剤として使用した場合、汚泥脱水剤として、種々の汚泥に対して、特に余剰比率の高い汚泥に対しても、濾過速度が速く、得られるフロックは粒径が大きく、自立性及び剥離性に優れるという各種凝集脱水性能に優れたものとなる。
Claims (5)
- (A)カチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位を有し、前記単量体単位の割合が異なる2種以上の両性高分子及び(B)(メタ)アクリレート系カチオン性単量体を必須構成単量体単位とするカチオン性高分子からなる組成物。
- 請求項1記載の組成物を含有してなる高分子凝集剤。
- 汚泥に対して、請求項2記載の高分子凝集剤を添加し、次いで脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
- さらにアニオン性高分子凝集剤を併用することを特徴とする請求項3記載の汚泥の脱水方法。
- 使用する全高分子凝集剤の合計したカチオン性単量体単位とアニオン性単量体単位の割合が、下記式(4)を満足する様に汚泥に高分子凝集剤を添加することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の汚泥の脱水方法。
【式1】
0.3≦Caall/Anall≦15 (4)
〔尚、上記式(4)において、Caall及びAnallは、それぞれ、全使用高分子凝集剤の全アニオン性単量体単位量及び全カチオン性単量体単位量の合計量を100モルに換算した場合における、全カチオン性単量体単位量及び全アニオン性単量体単位量のモル数を表す。〕
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