JP3787970B2 - 汚泥脱水方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難脱水性の有機性汚泥に無機凝集剤および両性ポリマーを添加して加圧脱水する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下水、し尿、有機性産業排水等の処理により生じる難脱水性の有機性汚泥の脱水方法として、汚泥に塩化第二鉄等の無機凝集剤、消石灰およびアニオン性またはノニオン性ポリマーを添加して凝集させ、フィルタプレスで加圧脱水する方法がある。しかしこの方法では、含水率70%程度の脱水ケーキが得られるが、大量の無機凝集剤を使用する必要があり、ケーキ固形分増加率が30〜50重量%にも達するほか、カルシウム成分の溶出によりスケール障害が起きる等の問題点がある。
【0003】
一方、汚泥にポリ硫酸鉄、ポリ塩化アルミニウム等の多量化した無機凝集剤とアニオン性またはノニオン性ポリマーとを添加して凝集させ、ベルトプレス等で脱水する方法がある。しかしこの方法ではケーキ含水率が高く、さらに含水率を低下させることが求められている。
【0004】
このような点を改善する方法として、無機凝集剤と両性ポリマーを添加して凝集させ、ベルトプレスで脱水する方法が提案されている(特開平2−180700号)。この方法ではケーキ含水率が改善されるが、さらに低いケーキ含水率とすることが求められている。
【0005】
一般にベルトプレスは1〜3MPa(ゲージ圧)の圧力で圧搾することにより脱水しているのに対し、フィルタプレスでは10〜15MPa(ゲージ圧)の高い圧力で圧搾するため、低いケーキ含水率の脱水ケーキが得られるが、凝集汚泥(フロック)の強度が大きくないと、フロックが破壊して濾布に目詰まりを起こし、脱水することができなくなる。上記の無機凝集剤と両性ポリマーを添加する場合も、低い加圧力のベルトプレスでは脱水可能であるが、高い加圧力のフィルタプレスではフロックが破壊して目詰まりにより脱水できなくなるため、さらに強度の大きいフロックとすることが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、少ない薬剤使用量で強度の大きいフロックを形成して、高い加圧力により加圧脱水することができ、これにより低含水率で剥離性の良好な脱水ケーキを生成することができ、ケーキ増加率の小さい汚泥脱水方法を提案することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機性汚泥に無機凝集剤を汚泥のSS乾燥重量に対し、10〜80重量%添加してpH2.5〜5となるように制御し、周速100〜300m/分で攪拌して混合し、
無機凝集剤を混合した汚泥に第1のポリマーとして両性ポリマーを、汚泥中のSS乾燥重量に対し0.5〜2重量%添加して周速300〜500m/分で強攪拌し、
第1のポリマー添加と第1の攪拌を行った汚泥にさらに第2のポリマーとして両性ポリマーを、汚泥のSS乾燥重量に対して0.1〜1重量%添加して20〜100m/分で緩速攪拌した後、
4〜20MPa(ゲージ圧)で加圧脱水することを特徴とする汚泥脱水方法である。
【0008】
本発明において処理対象となる有機性汚泥は特に限定されないが、例えばし尿の嫌気性消化汚泥、し尿の好気性消化汚泥、し尿浄化槽汚泥、し尿消化脱離液、下水、各種産業廃水の活性汚泥処理における余剰汚泥、下水の最初沈澱池汚泥、し尿、下水等の三次処理で発生する凝集汚泥、各種産業廃水の凝集汚泥などの有機性汚泥をあげることができる。このような汚泥は有機物のほかに、砂、凝集フロック等の無機物を含んでいてもよい。
【0009】
本発明で使用する無機凝集剤は凝集性を有する無機薬剤であって、例えば硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸鉄など、従来より汚泥脱水に使用されていた無機凝集剤を使用することができる。
【0010】
本発明で第1および第2のポリマーとして使用する両性ポリマーはカチオン性基およびアニオン性基を有する水溶性ポリマーであり、ノニオン性基を有していてもよい。このような両性ポリマーとしては、例えばアニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーの共重合体、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーおよびノニオン性モノマーの共重合体、あるいはアニオン性モノマーとノニオン性モノマーの共重合体のマンニッヒ変性ホフマン分解等のカチオン変性物などがあげられる。
【0011】
アニオン性モノマーとしては、例えばアクリル酸(AA)、アクリル酸ナトリウム(NaA)、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウムなどがあげられる。
カチオン性モノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、それらの四級化物などがあげられる。四級化物としては、具体的にはジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド四級化物(DAA)、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド四級化物(DAM)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロライド四級化物(DAPAAm)などをあげることができる。
ノニオン性モノマーとしては、例えばアクリルアミド(AAm)、メタアクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。
【0012】
これらの化合物の共重合体として、具体的にはDAA/AA/AAm共重合体、DAM/AA/AAm共重合体、DAA/DAM/AA/AAm共重合体、DAPAAm/AA/AAm共重合体、DAA/AA共重合体、NaA/AAm共重合体マンニッヒ変性物等が好適であり、特にカチオン性モノマーが20モル%以上、好ましくは25モル%以上で、アニオン性モノマーが10モル%以上、好ましくは15モル%以上のものが好適である。
【0013】
本発明ではこのような両性ポリマーを1種単独で、あるいは2種以上の混合物として使用できるほか、両性ポリマーと他のポリマー、特にカチオン性ポリマーとの混合物として用いることができる。他のポリマーとの混合物として用いる場合、高カチオン性ポリマーとの混合物として用いるのが好ましい。このようなカチオン性ポリマーとしては、アミド基、ニトリル基、アミン塩酸塩、ホルムアミド基などを含むポリビニルアミジンや、ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級化物や、ベンジルクロライド4級化物などとアクリルアミドの共重合物などの高カチオン性ポリマーが有効である。
これらの他のポリマーは両性ポリマー1重量部に対して1重量部以下の混合物として使用するのが好ましい。
上記の第1および第2のポリマーは別のものでもよいが、同一のものを用いる方が操作が簡素化し好ましい。
【0014】
本発明の汚泥脱水方法は前記有機汚泥に前記無機凝集剤を汚泥のSS乾燥重量に対し、10〜80重量%、好ましくは40〜70重量%添加し、pH2.5〜5、好ましくは3〜4.5となるように制御して混合する。このとき無機凝集剤の種類によって添加量とpHを最適範囲に選ぶ。無機凝集剤の添加により上記pH範囲に調整されない場合は必要により酸またはアルカリ剤を添加して調整する。これにより汚泥と凝集剤が反応して凝集が起こる。
【0015】
こうして無機凝集剤を混合した汚泥に第1のポリマー添加として両性ポリマーまたは両性ポリマーと他のポリマーとの混合物を添加し、第1の攪拌として強攪拌を行う。このときのポリマーの添加量は汚泥中のSS乾燥重量に対し0.5〜2重量%、好ましくは0.8〜1.2重量%とする。
【0016】
第1の攪拌は強攪拌であって、攪拌機の周速として300〜500m/分、好ましくは350〜450m/分とするのが適している。ポリマーの添加により凝集汚泥がフロック化するが、このとき強攪拌することによりフロックに強い衝撃を与えてフロック中の水分を放出するとともに、衝突によるフロックの硬化を促進し、強固なフロックを形成する。
【0017】
こうして第1のポリマー添加と第1の攪拌を行った汚泥に対して第2のポリマー添加として両性ポリマーまたは両性ポリマーと他のポリマーとの混合物を添加し、第2の攪拌として緩速攪拌を行う。このときのポリマーの種類は第1のポリマーと同一でも異なっていてもよい。またポリマーの添加量は汚泥のSS乾燥重量に対して0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%とする。この場合、第1および第2のポリマーの添加量を100としたとき、第1のポリマーの添加量を約80、第2のポリマーの添加量を約20の割合とするのが好ましい。第2の攪拌は攪拌機の周速として20〜100m/分、好ましくは30〜60m/分で、汚泥脱水における通常攪拌よりも弱い強度である。このような緩速攪拌を行うことにより、微細化されたフロックが集合して小形の粒状フロックが生成する。
【0018】
こうして粒状のフロックが生成した汚泥を加圧脱水する。加圧脱水の手段としてはフィルタプレスが好ましいが、ベルトプレス、遠心分離その他の機械的脱水手段でもよい。脱水の際の加圧力は4〜20MPa(ゲージ圧)、好ましくは5〜10MPaとする。この圧力は通常のフィルタプレスに適用される圧力である。ベルトプレス、遠心分離等でも、従来の方法で調質する場合よりも低含水率の脱水ケーキが得られる。
【0019】
この場合フロックは強攪拌によって形成された緻密で強固な微細フロックが緩速攪拌により集合して粒状化しているため、濾過脱水性に優れ、高い圧力をかけても目詰まりを生じることはなく、効率よく水が分離されて低含水率で剥離性の良好な脱水ケーキが形成される。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、有機性汚泥に無機凝集剤を汚泥のSS乾燥重量に対し、10〜80重量%添加してpH2.5〜5となるように制御し、周速100〜300m/分で攪拌して混合し、無機凝集剤を混合した汚泥に第1のポリマーとして両性ポリマーを、汚泥中のSS乾燥重量に対し0.5〜2重量%添加して周速300〜500m/分で強攪拌し、第1のポリマー添加と第1の攪拌を行った汚泥にさらに第2のポリマーとして両性ポリマーを、汚泥のSS乾燥重量に対して0.1〜1重量%添加して20〜100m/分で緩速攪拌した後、4〜20MPa(ゲージ圧)で加圧脱水するようにしたので、少ない薬剤使用量で強度の大きいフロックを形成して、高い加圧力により加圧脱水することができ、これにより低含水率で剥離性の良好な脱水ケーキを生成することができ、ケーキ増加率も小さい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
図1は実施形態の汚泥の脱水方法を示すフローシートである。
【0022】
図1において、1は貯槽、2は第1槽、3は第2槽、4は第3槽、5はフィルタプレスである。
【0023】
図1の汚泥の脱水方法は、まずし尿、下水、各種有機性排水処理施設等で発生する汚泥6を貯槽1に導入して貯留し、汚泥を均一化して汚泥の性状変化を小さくする。
【0024】
貯槽1から均一化した汚泥6を定量ポンプP1により第1槽2に導入し、ここで攪拌機7により攪拌しながら無機凝集剤8を添加して反応させる。このとき、pH計9によりpH2.5〜5、好ましくは3〜4.5になるように無機凝集剤8の添加量を制御する。無機凝集剤8を設定量添加して所定pHにならないときはpH計の検出値によりpH調整剤10を注入して上記pH範囲に制御する。攪拌機7は汚泥と無機凝集剤を混合できる攪拌強度であればよく、平羽根またはプロペラ型羽根を用い、周速100〜300m/分、好ましくは150〜200m/分、とする。第1槽の滞留時間は1〜10分間、好ましくは2〜5分間程度とする。
【0025】
第1槽2の汚泥を第2槽3に導入し、ここで第1のポリマー11を添加し、攪拌機12により強攪拌を行う。第1のポリマーは両性ポリマーまたは両性ポリマーとカチオン性ポリマーとの混合物であり、前記添加量となるように添加する。攪拌機12は平羽根またはプロペラ型羽根を用い、第1の攪拌として周速300〜500m/分、好ましくは350〜450m/分の強攪拌を行う。第2槽3における滞留時間は1〜10分間、好ましくは3〜5分間とする。この強攪拌により汚泥と無機凝集剤の反応がいったん微細化されて均一に反応し、さらに両性ポリマーと反応することにより、微細で強固なフロックが生成する。
【0026】
第2槽3の反応物は第3槽4に移送する際、第2のポリマー13を添加して第3槽4に導入し、攪拌機14により緩速攪拌を行う。第2のポリマー13は第1のポリマーとは同じものを使用することができる。この場合第1のポリマーとして約80重量%、第2のポリマーとして約20重量%となるように配分して添加する。第1および第2のポリマーの合計量は汚泥のSS乾燥重量に対して1〜1.7重量%/SSとするのが好ましい。攪拌機14は多段羽根式の攪拌機を用い、周速20〜100m/分、好ましくは30〜60m/分で緩速攪拌する。緩速攪拌により微細フロックが集合して小形の粒状フロックが生成する。滞留時間は次工程が連続式のベルトプレスの場合は5〜30分間、好ましくは10〜15分間とすることができるが、次工程がバッチ式のフィルタプレスの場合には調質汚泥の貯留槽を兼ねるために、実際上は30〜120分間、好ましくは40〜60分間とすることができる。
【0027】
第3槽4において粒状フロックを形成した調質汚泥はポンプP2によりフィルタプレス5に供給して加圧脱水を行う。フィルタプレスはポンプの吐出圧を利用して汚泥を濾過脱水し、さらに圧搾を行って低含水率の脱水ケーキを形成する装置である。このときの最高圧力は4〜20MPa(ゲージ圧)、好ましくは5〜10MPa(ゲージ圧)とする。このような加圧力で脱水できる限り、任意の形状のフィルタプレスを用いることができる。このようなフィルタプレス5による加圧脱水により低含水率の脱水ケーキ15を得る。脱水により生じる濾液16は処理装置(図示せず)に戻す。
【0028】
第3槽4で調質を行った汚泥は弱酸性であるので、フィルタプレス等に腐食等のおそれがある場合は、アルカリを添加して中和してもよい。この場合でもフロックの脱水性に対する影響は少ないが、フィルタプレスへの移送直前に中和するのが好ましい。
【0029】
本発明ではフロックは強攪拌によって形成された緻密で強固な微細フロックが緩速攪拌により集合して粒状化しているため、濾過脱水性に優れ、フィルタプレスにより高い圧力をかけても目詰まりを生じることはなく、効率よく水が分離されて、低含水率で剥離性の良好な脱水ケーキが形成される。
【0030】
すなわち従来法のように周速100〜200m/minで攪拌して凝集を行う場合は、フロック中に無機凝集剤および/またはポリマーと反応しない部分が残り、この部分は高い圧力により容易に破壊されて濾材が目詰まりを起こすが、本発明では強攪拌によりこのような汚泥の未反応部分が存在しなくなり、しかもさらに緩速攪拌により粒状のフロックが形成されるため、フィルタプレスにより高い圧力に加圧しても濾材(濾布)の目詰まりは生じず、脱水ケーキの剥離性もよい。
【0031】
フィルタプレス5の代りにベルトプレスその他の加圧脱水装置を用いることができるが、この場合も従来の方法で汚泥を調質した場合よりも低含水率の脱水ケーキを得ることができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。各例中、%は重量%である。
実施例1〜2
固形分濃度(SS)20,000mg/l、有機物濃度63%(対SS)のし尿処理混合汚泥の脱水処理を図1の方法により行った。無機凝集剤として塩化第二鉄を用い、第1および第2のポリマーとして両性ポリマーA:DAA/DAM/AA/AAm(モル比23/2/15/60)を用い、表1の条件で反応させ、含有効濾過面積120m2のフィルタプレスを用いて6MPaで加圧脱水した。結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
同一の汚泥について表1に示す薬剤を用い、第2槽における攪拌強度を変え、第3槽の処理は省略して同様の処理を行った結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
第1槽において無機凝集剤として塩化第二鉄と消石灰を用い、第2槽においてポリマーとしてカチオン性ポリマーB:DAA/AAm(モル比20/80)を用いて同様に処理した結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の注
1):添加量は汚泥のSS乾燥重量に対する%
(ただし塩化第二鉄はFe(OH)3として表示)
2):攪拌強度は周速(m/分)
【0037】
表1の結果より、強攪拌と緩速攪拌の組合せによる実施例1、2は少ない薬剤使用量で、目詰まりなしに、高い圧力で脱水可能であり、ケーキ含水率は低く、ケーキ剥離性は良好で、ケーキ増量も少ないことがわかる。これに対して強攪拌を行わない比較例1は目詰まりにより脱水不可となり、消石灰を用いる比較例2は多量の薬剤を用い、濾液pHが高く、ケーキ増量も大きいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の汚泥の脱水方法を示すフローシートである。
【符号の説明】
1 貯槽
2 第1槽
3 第2槽
4 第3槽
5 フィルタプレス
6 汚泥
7、12、14 攪拌機
8 無機凝集剤
9 pH計
10 pH調整剤
11 第1のポリマー
13 第2のポリマー
15 脱水ケーキ
16 濾液
Claims (1)
- 有機性汚泥に無機凝集剤を汚泥のSS乾燥重量に対し、10〜80重量%添加してpH2.5〜5となるように制御し、周速100〜300m/分で攪拌して混合し、
無機凝集剤を混合した汚泥に第1のポリマーとして両性ポリマーを、汚泥中のSS乾燥重量に対し0.5〜2重量%添加して周速300〜500m/分で強攪拌し、
第1のポリマー添加と第1の攪拌を行った汚泥にさらに第2のポリマーとして両性ポリマーを、汚泥のSS乾燥重量に対して0.1〜1重量%添加して20〜100m/分で緩速攪拌した後、
4〜20MPa(ゲージ圧)で加圧脱水することを特徴とする汚泥脱水方法。
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