JP4172082B2 - 複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合繊維およびその製造方法に関するものである。さらに詳細には、芯成分に粒子を含有するポリエステル系複合繊維であって、高強度、高比重であるとともに、黒または有彩色の発色性が高い複合繊維およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
漁網、ロープ、消波網などの一般産業用繊維として、また、緞帳、暗幕などの室内装飾用繊維として高比重繊維が要望されてきた。これは、海洋用途においては海流、潮流による製品のフカレを抑制することにより漁獲高、係留、消波等の効果が高くなるためであり、室内装飾用途においては製品のオチ感や風による揺れの防止による落ち着いた雰囲気の創出のためである。
【0003】
また、これらの用途の多くは、従来から染色や原着などにより有彩色や黒色の繊維として用いられることが一般的である。室内装飾はいうに及ばず、漁網においても特定の色調において漁獲高が確保されるという面があることが業界では知られていることである。
【0004】
高比重繊維という点では、一部の漁網では、ナイロンを鞘成分、鉛金属を芯成分とする複合繊維が実用化されている。しかしながら、ナイロンを鞘成分、鉛金属を芯成分とする複合繊維は、延伸時にその芯部(鉛金属部)が十分に延伸されないために、芯部が切断された断続状態が生じ、その結果、繊維長手方向の繊維径が大きく変動し、太細が不均一化に存在する繊維となり低強度の繊維となる。したがって、これらの複合繊維を単独で実用に供すことは困難であり高強度繊維と合糸して用いるが、その際にも、製網時の撚糸性が低下するなどの問題があった。
【0005】
また、特開昭62−15327号公報には、上記問題を解決するために、微細な鉛合金粒子を含有した熱可塑性重合体を芯成分とする高比重複合繊維が開示されているが、鉛金属や鉛合金を用いた繊維の場合、焼却時や廃棄後に鉛害が発生するため環境汚染の観点から安易に使用することができない。
【0006】
これらの観点から、特開平8−337924号公報などでは、芯成分の熱可塑性重合体に非鉛系金属またはその化合物からなる粒子を配合した芯鞘型複合繊維が提案されている。
【0007】
しかしながら、これら従来の技術では、延伸中に芯成分の粒子と熱可塑性重合体との間に発生するボイドをコントロールすることができず、低比重でかつ発色性の低い複合繊維しか得られなかった。また、前記特開平8−337924号公報による複合繊維は、芯成分と鞘成分との界面の相溶性が無く、ピンセット等で簡単に芯成分と鞘成分とを剥離させることができるため、剥離面での光散乱のために発色性が低下し、漁網、緞帳、暗幕といった分野には用いることができないという問題も有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、上記した従来の技術における問題点を解消し、高強度であるとともに高い発色性と耐摩耗性を兼ね備え、漁網等の一般産業用や室内装飾用等の繊維として有用な複合繊維を提供することにある。なお、本発明で目標とする繊維強度は3.97cN/dtex以上、繊維比重は1.5以上、L値24以下である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の複合繊維は主として次の構成を有する。すなわち、芯成分が融点70℃以上200℃以下の脂肪族ポリエステルであり、鞘成分がポリエチレンテレフタレートである芯鞘型複合繊維であって、芯成分および/または鞘成分に少なくともカーボンブラックを含有し、複合繊維中の粒子含有量が15重量%以上70重量%以下であり、L値が24以下であり、芯部に不連続で球状または楕円体状のボイドを有することを特徴とする複合繊維である。
【0010】
また、本発明の複合繊維の製造方法は主として次の構成を有する。すなわち、芯成分および/または鞘成分に少なくともカーボンブラックを含有し、融点が70℃以上200℃以下の脂肪族ポリエステルからなる芯成分に粒子を20重量%以上70重量%以下含有させて芯鞘複合紡糸し、多段延伸、熱処理、リラックス処理する芯鞘型複合紡糸の製造方法であって、1段目の延伸をホットローラ延伸とし、該延伸後に積極的に冷却した後、2段目の延伸を行うことを特徴とする複合繊維の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合繊維は、芯鞘複合繊維である。芯鞘型とすることにより、芯成分中に粒子を存在せしめるためこれら粒子が繊維表面に露出することが無くなり、撚糸、製織、編網等の高次加工装置の摩耗を防いでこれらの工程での通過性を良好とすることができる。この観点からは、実質的に同心円状芯鞘複合であることが好ましく、これにより鞘部の厚みを最大限に利用して強度、耐久性を向上させ、芯成分に含有する粒子によっていくつかの機能を付与することができる。複合形態は3重、4重の多重同心状複合や多芯複合でも良いが、強度、耐久性の観点から単純な2重同心状複合が好ましい。
【0012】
本発明の複合繊維の芯成分は脂肪族ポリエステルである。また、本発明の複合繊維の鞘成分は、ポリエチレンテレフタレートである。両成分をポリエステル系ポリマーとすることにより、両成分の界面の相溶性を良好とし、剥離を抑制することができ、漁網、緞帳、暗幕といった発色性の要求される分野に適するものとすることができる。
【0013】
本発明においては、粒子を芯成分に含有させる。本発明の目的を達成できる限りにおいて粒子を鞘成分にも含有させることはかまわない。
本発明において粒子とは、比重が2.5以上である粒子のことをいう。このような粒子としては、バリウム、チタン、アルミ、鉄、銅、タングステン等の金属粒子、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化第二鉄、酸化アルミニウム等の金属化合物が挙げられる。これら粒子の中でも、硫酸バリウムを用いることにより、ポリマ配管、パック内および口金でのポリマ流動異常およびポリエステルポリマ中での凝集を抑制させ、操業性の低下が防げることから、粒子としては硫酸バリウムが特に好ましい。
【0014】
また、含有させる粒子の粒径および粒径分布については特に限定するものではないが、繊維化を図る観点で製糸性が良好であることが必要であり、なるべく小さい粒径で分布の均一な粒子を用いることが好ましい。このためには、平均粒径は2.0μm以下が好ましい。
【0015】
本発明の複合繊維においては、上記粒子を複合繊維中の粒子含有量として15重量%以上含有させるものである。15重量%未満では、繊維に高比重の機能を付与する場合、十分な比重が得られない。本発明の複合繊維においては、容易に高比重の機能を付与するために芯成分のポリ乳酸の粒子含有量は20重量%以上とすることが好ましい。なお、製糸毛羽、延伸糸切れの抑制や製糸性を良好に保つ観点から一般に粒子含有量の上限は70重量%である。
【0016】
本発明の複合繊維の芯成分として用いる脂肪族ポリエステルは、融点が200℃以下であれば特段の制約はない。なお、本発明において融点とは、DSC測定で得られる溶融ピークのピーク温度をいう。このような融点を有するものとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバリレート、ポリ−ε−カプロラクトン等が挙げられるが、特にポリ乳酸が好ましい。なお、芯成分の耐熱性を十分なものとして、製糸性を良好に保の観点から一般に本発明で用いうる脂肪族ポリエステルの融点の下限は70℃である。
【0017】
一方、鞘成分として用いるポリエチレンテレフタレートは、常法の重合法によって得られたポリマーを固相重合し、高重合度化したものが好ましく、高強度と耐摩耗性が得られやすい固有粘度0.8以上、さらには1.0以上のポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、実質的に共重合成分を含まないことが好ましい。ここで、実質的に共重合成分を含まないとは、ポリエステル重合終了以前の段階で主たる繰り返し単位となるエステル形成性分子以外に、1重量%以上のエステル形成性分子を積極的に配合しないことをいう。 また、高強度と耐摩耗性を得るために、鞘成分のポリエチレンテレフタレートの粒子含有量は2重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下がより好ましい。
【0018】
本発明の複合繊維は、芯部に不連続の球状または楕円体状のボイドを有することが必要である。不連続的にボイドが存在するとは、繊維軸の長手方向に連続するボイド(空隙)が存在しないことであり、ボイドが連続的である場合には本発明の目的である高発色性が達成できない。
【0019】
本発明の複合繊維の芯部には、球状または楕円体状の非連続的ボイドが存在する。従来の粒子含有繊維には、粒子を高濃度に繊維に含有させた場合に生じる特有の微細ボイドや亀裂状のボイドが多数存在しており、これら微細ボイドや亀裂状のボイドの界面での光散乱により、有彩色や黒色が白く濁った発色性の劣った繊維となってしまう。これに対し、ボイドを球状または楕円体状に形成することにより、ボイド界面の面積は減少し発色性は向上する。この球状または楕円体状のボイドの大きさは、換算直径(同一容積の球の半径)で、通常2μm以上、芯部直径以下とするのが好ましい。微細ボイドの換算直径が1μm以下の小さいものと比較して大きく、このために散乱光が少なくなり発色性が向上するものと考えられる。さらには、このボイドは芯部の任意の位置に形成されるため、芯部の鞘部との境界部に位置しない限り、入射光または散乱光が粒子によって遮断されるため、本発明の高発色の効果が相乗的に発揮される。
【0020】
本発明の複合繊維においては、高発色を容易に得るとともに製造条件の変動によっても安定してムラなく球状または楕円体状のボイドを形成できる。
また、球状または楕円体状のボイドが形成されることにより、繊維比重が上昇することも本発明の繊維の利点である。高比重化する機構については不明な点もあるが、楕円体状のボイドが形成される際に、形成された直後の微細ボイドや亀裂状のボイド中の真空部を集合させるために、繊維体積を収縮させる力が働くためと思われる。
【0021】
球状または楕円体状とは、幾何学的に厳密な形状をいうものではなく、繊維縦断面を走査型電子顕微鏡で観察した際に、およそ球状か、ある方向に歪んだ球状が見られる場合をいう。この球状または楕円体の最大径と最小径の比率は、通常3以下である。前述のように、換算直径で通常2μm以上と大きな空間があるため、本発明の繊維であるかを判断することは容易である。
【0022】
本発明の複合繊維は、芯成分および/または鞘成分に公知の顔料を含有させたり、公知の染料により染色させたりすることができる。これらにより、本発明の光発色の効果がより明らかなものとなる。公知の顔料としては、カーボンブラックや酸化鉄などの無機系顔料や、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系等の有機系の顔料が挙げられる。染料は、分散染料が用いられる。染料と顔料を組み合わせることもできる。
【0023】
顔料としてカーボンブラックを用いる原着繊維の場合、色調を黒とするために、L値は24以下が好ましく、22以下がより好ましい。本発明の複合繊維を漁網用途として用いる場合、魚に警戒心を与えず高漁獲性を得るためには24以下のL値が好ましい。また、暗幕として用いる場合も、L値を24以下とすれば、暗幕全体が白ボケ感を与えることはなく、遮光性暗幕として好適である。
【0024】
L値と強度の両者を満足させるためにより好ましいカーボンブラック含有量は繊維全体に対し、0.1〜0.7重量%である。かかる範囲とすると、目的とするL値を容易に達成できる一方、十分な強度が得られる。
【0025】
次に本発明の複合繊維の製造方法について説明する。本発明の製造方法においては、芯成分および/または鞘成分に少なくともカーボンブラックを含有し、融点が70℃以上200℃以下の脂肪族ポリエステルからなる芯成分に粒子を20重量%以上含有させて芯鞘複合紡糸し、延伸、熱処理、リラックス処理するものである。また、延伸は多段とし、1段目の延伸をホットローラー延伸とし、該延伸後に積極的に冷却した後、2段目以降の延伸を行うものである。
【0026】
芯成分として用いる脂肪族ポリエステルの製造法として、ポリ乳酸の製造法の一例を示す。ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸(ラセミ体)を原料として一旦環状2量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う2段階のラクチド法と、当該原料を溶媒中で直接脱水縮合を行う1段階の直接重合法等が知られており、いずれの製法で得られたものを使用しても良い。こうして得られたポリ乳酸と粒子とを、それぞれ計量し、2軸押し出し機等により溶融混練した後、ノズルから押し出し、ペレット状にカットすることによって得る。この際、粒子とともに顔料を同時または逐次に混合することができる。ペレット状にカットされた粒子含有ポリ乳酸は、そのまま乾燥して紡糸に供してもよいし、固相重合により高重合度化し紡糸に供してもよい。あるいは、紡糸の際に、別途作成した高濃度に顔料を混合した原着マスターバッチと計量混合することもできる。
【0027】
一方、鞘成分として用いるポリエチレンテレフタレートは、常法の重合法によって得られたポリエチレンテレフタレートを固相重合し、高重合度化したものが好ましい。この際、鞘成分のポリエステルは、高強度と耐摩耗性が得られやすい固有粘度0.8以上、さらには1.0以上のポリエチレンテレフタレートが好ましく、積極的に共重合成分を配合させないことが好ましい。
紡糸の際には、別途調製した高濃度に顔料を混合した原着マスターバッチと計量混合し、着色することもできる。
【0028】
本発明の製造方法においては、芯成分の脂肪族ポリエステルの粒子含有量は20重量%以上とすることが必要である。20重量%未満であると、本発明の目標とする高比重とすることができない。
【0029】
本発明の製造方法においては、目的とする繊維比重である1.5以上を容易に得るために上記粒子を複合繊維中の粒子含有量として15重量%以上含有させるものである
【0030】
前記した芯成分用の脂肪族ポリエステルおよび鞘成分用のポリエチレンテレフタレートは、それぞれ別々のエクストルダーで溶融した後、複合紡糸パックに導き、複合紡糸口金内で所望の複合形態となるよう複合流を形成させ、紡糸口金から吐出する。
芯成分/鞘成分の複合比率は、本発明において目標とする強度と比重を満足させるためには、20/80〜70/30とするのが好ましい。
【0031】
吐出した芯鞘型複合糸条は、固化温度以下に冷却する。この際、紡糸口金直下に設置した加熱雰囲気域を通して遅延冷却し、冷却域に導入して冷却風を吹き付け、紡糸筒を通過して糸条を形成することが好ましい。
【0032】
前記加熱雰囲気域の温度は120〜350℃、その長さは5〜300cmであればよく、この加熱雰囲気域の条件は、紡出するポリマーの粘度、単繊維繊度、ドラフト率、単繊維数等の設定条件によって選択すればよい。
【0033】
前記冷却域では、常温空気のような120℃未満の気体を、15〜50m/分の速度で吹き付ければよい。この冷却域の条件も、紡出するポリマーの粘度、単繊維繊度、ドラフト率、単繊維数等の設定条件によって選択すればよい。
前記加熱雰囲気域および冷却域における各条件を前記の範囲内とすることによって、紡出糸条の冷却配向パターンを適切なものとすることができる。
【0034】
前記加熱雰囲気域および冷却域を通過し、冷風によって冷却固化した紡出糸条に紡糸油剤を付与し、回転するローラーに巻回した後、一旦巻き取った後延伸するか、巻き取らずに引き続き延伸する。製糸毛羽、延伸糸切れが頻繁に発生して製糸性が悪化するのを防ぐ観点から、紡糸速度は2000m/分、さらには1500m/分以下が好ましい。紡糸した複合繊維糸条は、多段延伸、熱処理、リラックス処理して巻き取られる。
【0035】
紡糸したままの繊維では、強度が低く、延伸が必要である。延伸は、2段以上の多段延伸を行なうことが、製糸性、高強度化の点で好ましい。
延伸温度は、芯成分の脂肪族ポリエステルが十分に加熱されないためボイドが多くなり高比重化しにくくなるのを防ぐ一方、芯部の結晶化が進行し、2段目以降の延伸によっ芯部に亀裂状ボイドが形成され比重が低下するのを防ぐ観点から、1段目の延伸に供する糸条の温度を80℃以上、130℃以下とするのが好ましい。
【0036】
延伸の終了した複合繊維糸条は次いで熱処理される。熱処理によって延伸工程で芯部に発生した微細ボイドや亀裂状のボイドを、不連続で球状または楕円体状のボイドへと集合させる。この際、熱処理温度は芯成分の融点より20℃以上高い温度で、かつ鞘成分の融点より20℃以上低い温度とすることが、熱処理温度の変動等の紡糸条件の変動に対してボイド形成状態が安定し、一定の高発色性の品質を維持できるために好ましい。
【0037】
熱処理した複合繊維糸条は、リラックス処理して巻き取られる。巻き取られる前にリラックス処理することにより、芯部に加わっている応力を緩和させることができ、不連続で球状または楕円体状のボイドをさらに成長させ、高発色化を十分なものとすることができる。このためには、リラックス率は2%以上であることが好ましい。
【0038】
不連続で球状または楕円体状のボイドを形成させるためには、1段目の延伸に際し、複合糸条への加熱手段としてホットローラーを用い、該ホットローラーから離れ延伸された糸条を積極的に冷却した後、2段目以降の延伸を行うことが好ましい。これにより、発色性を向上させることができる。ホットローラーを用いることにより、複合糸条はローラーの把持を受け、緊張することなく加熱され、十分に加熱された後に延伸されるため、芯部の流動性が高く、粒子周囲に生じるボイドを小さいものとすることができる。また、延伸後に積極的に冷却した後、2段目以降の延伸を行うことにより、延伸変形領域を狭い区間に特定できるため、延伸で生じた微細ボイドや亀裂状のボイドの成長を制限することができ、発色性を向上させることができる。積極的に冷却する手段としては、高圧の空気を吹き付ける方法や、液体を付与する方法が採用される。
【0039】
延伸、熱処理に必要な熱を糸条に与える方法としては、ローラー加熱、スチーム、熱板、熱液等公知の手法が用いればよい。
【0040】
本発明の複合繊維の単繊維繊度は、漁網用途として用いる場合、水中から引上げた時の水切れが悪くて漁網重量が重くなるのを防ぎ、また、室内装飾用の暗幕として用いた場合、幕の張りおよび腰が柔らか過ぎて美しいシルエットが得られないことを防ぐ観点から7.65dtex以上が好ましい。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、実施例中の物性は次のとおり測定した。
A.比重:
比重びんを使用して測定した。
B.強度:
試料を20℃、65%RTの温調室に24時間以上放置した後、(株)オリエンテック製テンシロン引張試験機を用い、試長25cm、引張速度30cm/分でS−S曲線を求め強度、伸度を算出した。
C.平均分子量
試料の0.1%クロロホルム溶液のGPC分析を行い、分子量1,000以下の成分を除く高分子成分の分散の重量平均値を算出した。
D.極限粘度:
試料8gをオルソクロロフェノール100mlに溶解し、溶液粘度(ηrp)をオストワルド粘度計を用いて25℃で測定し、次の近似式により極限粘度(IV)を算出した。
IV=0.0242ηrp+0.2634
ただし、ηrp=(t×d)/(t0 ×d0
ここで、
t :溶液の落下時間(秒)
0 :オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
d :溶液の密度(g/cc)
0 :オルソクロロフェノールの密度(g/cc)
E.芯部のボイド形状の判定:
複合繊維を鋭利な刃物で、繊維軸方向に切断し、切断した繊維断面の走査電子顕微鏡画像によって次のように判定した。
非連続の球状および楕円体状のボイド・・・・○
亀裂状および連続するボイド・・・・・・・・×
F.L値
スガ試験機(株)製SMカラーコンピューターにより巻取パッケージの色調(L値)を測定した。
【0042】
[実施例1〜6および比較例1]
L−乳酸を原料とした2段階ラクチド重合法により得た平均分子量190,000のポリL−乳酸(PLLA)の乾燥チップに、カーボンブラックを0.2重量%および粒子として平均粒径が0.7μm、比重が4.3の沈降性硫酸バリウムを表1に示すとおりの量を添加混合しつつ、2軸押出機で溶融混練した後、3.0mmΦの口金から吐出し、冷却した後カットして、芯成分として用いるチップを得た。さらに芯成分用チップを、温度110℃の回転式真空乾燥機で12時間以上乾燥し、チップの水分率を0.004%以下とした。
【0043】
鞘成分として用いるポリエチレンテレフタレート(PET)は、常法の固相重合によって得られた極限粘度1.30、水分率0.003%以下のチップを使用し、カーボンブラックを10重量%含有した原着マスターバッチを39:1となるように連続的に計量、混合したものを準備した。鞘成分中のカーボンブラック比率は0.25重量%とした。
【0044】
芯および鞘成分用ポリマは別々のエクストルダ型紡糸機で溶融した後、複合紡糸パック中に導き、芯鞘複合紡糸口金より、同心円型複合繊維となるよう紡糸した。芯/鞘複合比率は、重量比率で40/60とした。また、芯成分用はPLLAの融点より50℃高い温度で、鞘成分用は290℃でそれぞれ溶融させ、290℃に加熱した複合紡糸パックによって紡糸した。
【0045】
紡糸口金は環状2列配孔で、孔径0.8mmΦ、孔数は60ホ−ルであり、口金直下には30cmの加熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度を320℃となるように加熱した。筒内雰囲気温度は、口金面より10cm下の位置で、且つ最外周糸条より1cm離れた位置で測定した。
【0046】
加熱筒の下には長さ40cmの環状型チムニ−を取り付け、糸条の周囲より25℃で40m/分の冷風を糸条に直角に吹き付け、冷却した。次いで油剤を付与した後、570m/分の引取ローラーにより糸条速度を制御した後、一旦巻取ることなく連続して延伸した。
【0047】
延伸は3対のネルソン型ローラーによって、1段目延伸倍率3.5倍、2段目倍率1.5倍で2段延伸した後、次のネルソンローラー間で3%のリラックスを与えて巻取った。引取ローラー温度を110℃とし、引取ローラーと150℃に加熱した第1延伸ローラー間で1段目の延伸を行い、第1延伸ローラーと表1に示すとおりの温度に加熱された第2延伸ローラー間で2段目の延伸を行った。次のネルソンローラーは非加熱として使用した。1段延伸倍率は全延伸倍率の70%、残りを2段目で延伸し、延伸糸の総繊度が1120デニ−ルとなるようポリマ吐出量を調整し、巻量は5kgとした。また、引取ローラーと第1延伸ローラーとの間で、1.5kg/cm2の圧空を複合繊維糸条へ吹き付けた。
かくして得られた各複合繊維の評価結果を、表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004172082
表1により明らかなように、実施例はいずれも強度3.97cN/dtex以上、比重1.50以上、L値24以下を満足するが、芯成分の粒子含有量が低く繊維全体の粒子含有量の低い比較例1は、比重が低く、後述する比較例2は鞘成分と同じPETを芯成分として用いているため、第2延伸ローラー温度を高温としてもボイドが楕円体状とならずL値が高くなった。
【0049】
[実施例7]
芯成分に含有させる無機物質を、硫酸バリウムに替えて、平均粒径が0.5μm、比重が3.9の酸化チタンに変更した以外は、実施例3と同様にして製糸した。結果を表1に併せて示す。
【0050】
[実施例8]
引取ローラーと第1延伸ローラー間で複合繊維糸条への圧空の吹き付けを行わなかった以外は、実施例3と同様にして製糸した。なお、この実施例の場合には、約5日でポリマー配管が粒子の堆積により閉塞する傾向があった。結果を表1に併せて示す。
【0051】
[比較例2]
無機物質を含有させる芯成分用のポリマーを、ポリL−乳酸(PLLA)に替えて、極限粘度0.8のポリエチレンテレフタレート(PET)に変更した以外は、実施例3と同様にして製糸した。なお、第2延伸ローラーを保温する筐体のドアの開閉によりパッケージのL値が変化するかを観察したところ、この比較例の場合に明らかに変化する現象が観察された。
結果を表1に併せて示す。
【0052】
【発明の効果】
本発明の複合繊維は、高比重でかつ高強度を有しており、かつ、高発色性を有する。漁網、ロープ等の一般産業用繊維に極めて有用であり、また、緞帳、カーテン等の室内装飾用繊維としても極めて有用である。

Claims (7)

  1. 芯成分が融点70℃以上200℃以下の脂肪族ポリエステルであり、鞘成分がポリエチレンテレフタレートである芯鞘型複合繊維であって、芯成分および/または鞘成分に少なくともカーボンブラックを含有し、複合繊維中の粒子含有量が15重量%以上70重量%以下であり、L値が24以下であり、芯部に不連続で球状または楕円体状のボイドを有することを特徴とする複合繊維。
  2. ボイド直径が2μm以上、芯部直径以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合繊維。
  3. 球状または楕円形状のボイドの最大径と最小径比率が3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合繊維。
  4. 粒子が、バリウム、チタン、アルミ、鉄、銅、タングステン、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化第二鉄および酸化アルミニウムよりなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合繊維。
  5. 芯成分を構成する脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合繊維。
  6. 芯成分および/または鞘成分に少なくともカーボンブラックを含有し、融点が70℃以上200℃以下の脂肪族ポリエステルからなる芯成分に粒子を20重量%以上70重量%以下含有させて芯鞘複合紡糸し、多段延伸、熱処理、リラックス処理する芯鞘型複合紡糸の製造方法であって、1段目の延伸をホットローラ延伸とし、該延伸後に積極的に冷却した後、2段目の延伸を行うことを特徴とする複合繊維の製造方法。
  7. 粒子が、バリウム、チタン、アルミ、鉄、銅、タングステン、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化第二鉄および酸化アルミニウムよりなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項6に記載の複合繊維の製造方法。
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