JP3574513B2 - 高比重・高強度複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

高比重・高強度複合繊維およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高比重と高強度を兼ね備えた産業資材用途に好適な複合繊維に関し、特に、海洋環境汚染の問題もなく、耐久性に優れた魚網用に好適な複合繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、魚網などに使用される水産資材用繊維は、海水中での魚網の高沈降速度および潮流に対する保形性に重点がおかれ、比重の大きい繊維を用いることにより沈降速度が速く、吹かれ補角が小さく保形性の良好な魚網が得られることが知られている。特に定置網においては、魚群に対する海中での魚網の形状が漁獲に大きく影響するため、繊維の比重が大きくかつ水切れ性が良く、耐摩耗性のよいものが必要とされてきた。しかも、繊維の色相としては、魚に対して警戒感を与えない違和感のない黒色系の色調が必要とされた。
【0003】
このような観点から、従来は、比較的比重の大きい塩化ビニリデン系繊維が広く用いられていたが、製網技術の発達に伴って高速製網に安定して供し得るような高強度の繊維が要求されるようになり、塩化ビニリデン系繊維では強度不足という問題があった。しかも、繊維を着色するために顔料を添加すると、更に繊維の強度が低下してしまうという問題も存在していた。
【0004】
このような課題を解決するために、高比重・高強度を兼ね備えた水産資材用繊維の開発が行われ、種々のものが提案されている。その一つの手段として、延伸処理により高強度を発現する樹脂と高比重粉末との組合せによる繊維が考えられており、具体的には(1)樹脂中に高比重粉末を均一分散させてなる繊維(例えば、特公昭51−37378号公報、特開昭56−61936号公報、特開昭61−613号公報)、(2)低軟化点樹脂中に高比重粉末を混合分散し、この混合物を更に強度付与のための樹脂と混合してなる繊維(特公昭57−20407号公報)および(3)低軟化点樹脂と高比重粉末の混合物を芯層とし、強度付与の樹脂を鞘層とする有芯型繊維(特開昭58−4819号公報、特開昭62−15327号公報)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記のものでも未だ魚網用繊維に要求される高沈降速性および高速製網性が十分満足されていないのが現状である。しかも、使用する高比重粉末の種類によっては、耐候性が不十分で、長期間太陽光に照射されることにより繊維を構成する樹脂の劣化が進み、その結果強度の低下が著しくなり、魚網としての使用ができなくなってしまうという問題があった。また、高比重粉末として金属鉛やその化合物を用いた場合、鉛化合物等が、繊維製造工程や加工工程においてガイドとの摩擦で繊維から脱落したり、魚網として使用中に海水に溶出して鉛公害の問題が発生する可能性があった。さらに、使用済みの魚網を廃棄する場合においても、廃棄焼却後に鉛を含む有害成分が残るなど同様の公害問題が発生する可能性があり、安易には廃棄処分できないという問題があった。また、鉛を含んでいない塩化ビニリデン系繊維からなる漁網も焼却時には塩化水素ガスが発生するために焼却処理が困難であるという問題を抱えている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高沈降速性と製網加工上問題のない十分な繊維強度を兼ね備え、長期間魚網として使用しても強度低下を発生しない優れた耐候性を有する繊維を提供することである。更には、かかる特性を満足しつつ魚に対して違和感のない色調を有する繊維を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1発明は、非鉛系金属またはその化合物からなる比重3以上の微粒子を50〜85重量%含有する芯ポリマー成分と該芯ポリマー成分を覆う保護ポリマー成分とから構成され、繊維比重が1.5以上であり、かつ強度が3.5g/d以上である複合繊維であり、また、第2発明は、二酸化チタンと他の比重3以上の無機微粒子を合計で50〜85重量%含有する熱可塑性ポリマーを芯成分とし、該熱可塑性ポリマーよりも少なくとも20℃以上高い融点または軟化点を有する熱可塑性ポリマーを保護成分として複合紡糸し、加熱延伸した後に、芯成分の熱可塑性ポリマーの(融点または軟化点−80)℃以上、保護成分の熱可塑性ポリマーの(融点または軟化点−5)℃以下の温度で熱処理を施す複合繊維の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維は、比重1.5以上と強度3.5g/dを兼ね備えているものであり、比重が1.5未満の場合は、海水中での高沈降性と漁網の保形性を達成することが困難であり、強度が3.5g/d未満の場合は、高速製網時に繊維が損傷するので好ましくない。このような観点から、1.55以上の比重と4.0g/d以上の強度を有する繊維であることが望まれる。そして、本発明においては、繊維を高比重化するために比重3以上の上記微粒子を含有させることが必須であり、該微粒子の種類としては、非鉛系金属の微粒子またはその化合物の微粒子を使用しなければならない。本発明において「非鉛系金属」とは、鉛や錫など環境問題を極めて起こしやすい金属以外の金属を意味しており、具体的には、チタン、鉄、銅、亜鉛、銀、バリウム、ジルコニウム、マンガン、アンチモン、タングステンなどの金属やその酸化物などの化合物を挙げることができる。
【0009】
比重が3未満の微粒子を使用する場合は、目的の繊維比重を達成するために、繊維中の微粒子含有量を高め、しかも芯ポリマー成分の複合比率を大きくしなければならないので、たとえ目的とする繊維比重の繊維が得られたとしても、曳糸性、延伸性などの工程性が不良で、繊維強力も低いものしか得られないので漁網としての用途には不適となる。
【0010】
また、芯ポリマー成分中の微粒子の含有量は50〜85重量%でなければならない。50重量%未満の場合は目的とする繊維比重を得るためには、芯ポリマー成分(B)の複合比率を、大きくしなければならず、繊維強力も低いものしか得られならないため好ましくない。一方、85重量%を越える場合は、紡糸時のポリマー溶融流動性が悪くなり、糸切れが頻発してくるため好ましくない。
【0011】
次に粒子径は、1次粒子の平均粒子径が5μ以下であることが望ましい。5μ以上になると紡糸時、延伸時に断糸や毛羽が多発しやすいので好ましくない。また、1次粒子の平均粒子径が0.05μ以上であることが好ましい。粒子径があまり小さくなると、逆にポリマー中へ微粒子を添加させる時に、成型加工時の熱により熱凝集を発生して粗大粒子化したり、あるいは紡糸時に高添加のポリマーを溶融押出時に、ポリマー溶融ラインの配管中で微粒子の熱凝集が発生しやすくなり、ラインが詰まるというトラブルが多発するため好ましくない。
【0012】
使用する微粒子の種類については、所望に応じて上記した微粒子のなかから適宜選択することができるが、本発明においては、微粒子として酸化鉄や二酸化チタンを使用することに特に意味がある。
【0013】
まず、酸化鉄を使用する場合について述べる。酸化鉄には、色調が黒色のマグネタイトすなわち磁鉄鉱(Fe)、茶色のγ形のヘマタイト、赤褐色のα形ヘマタイト等があるが、定置網等の漁網用繊維においては、色相を黒色系とすると魚に警戒感を与えないため、漁獲高に好結果を与えることができ、黒色を呈する磁鉄鉱を使用することが好ましい。この時、使用する微粒子全体の20重量%以上が磁鉄鉱であることが望ましい。磁鉄鉱を使用することにより、染色処理等を簡素化または省略し得るが、かかる場合においても保護ポリマー成分に原着ポリマーを使用することは何等差し支えない。
【0014】
また磁鉄鉱の粒子形状としては、球状、八面体状、六面体状、多面体状等があり、いずれの形状でも使用できるが、球状の磁鉄鉱微粒子を用いると芯ポリマー成分中での分散性が最も良好となり好ましい。特に、この球状粒子の使用は、本発明のように微粒子をポリマー中へ数十%以上という高添加率で添加する場合に顕著な効果が認められ、かかる粒子を用いた場合、凝集による紡糸時のフィルター詰まりの発生も少なく、しかも紡糸時、延伸時の糸切れ発生も少ない。
【0015】
さらに、磁鉄鉱微粒子として、有機系または無機系化合物により表面コーティング処理を施した微粒子を使用すると耐熱性や微粒子分散性を更に向上させる事ができるので好ましい。就中、微粒子表面にシリカコーティングされた磁鉄鉱やフェライトコーティングされた磁鉄鉱を使用すると好ましい。
【0016】
芯ポリマー成分に配合する微粒子は、磁鉄鉱微粒子単独でもよいが、芯ポリマー成分中での磁鉄鉱微粒子の含有量が50重量%以上になると、粒子形状、粒子サイズの適切なものを用いても、前記したような溶融押出時のライン中での熱凝集によるコンタミの発生や、激しい場合には配管の詰まり等のトラブルが起こる場合があり、芯ポリマー成分中の微粒子の含有量を50重量%以上にするため、磁鉄鉱と他の微粒子とを併用する方が好ましい。
【0017】
特に、細デニールの糸を製造する場合などでは、溶融ポリマーのライン中での滞留時間が長くなり、ライン詰まりのトラブル発生が顕著に起こる。磁鉄鉱と併用する他の微粒子は、比重が3以上で、かつ平均粒子径が5μ以下、しかも熱凝集性があまりなく、コスト的にも高価ではないものを選ぶ必要がある。例えば、好適な例として二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、フェライト、リトポン、酸化銅、酸化マグネシウム等が上げられる。
【0018】
鉛丹等の鉛系化合物や酸化スズ等のスズ系化合物など重金属系無機物は粒子の比重としては大きく好適であるが、毒性等の点で好ましくない。特に使用済になった場合漁網等の廃棄方法が難しく場合によっては、環境汚染などの二次公害が発生してくるため、好ましくない。また、タングステン系無機粒子、ビスマス系無機粒子は、高比重粒子であり、目標とする性能等を発現させるためには、好ましい無機粒子ではあるが、非常に高価であり漁網用途には使用することが難しい。
【0019】
本発明において、磁鉄鉱微粒子と併用可能な無機粒子の中で最も好ましいのは二酸化チタンである。芯ポリマー成分に対する微粒子合計の含有量が50重量%〜85重量%の範囲で、磁鉄鉱との二酸化チタンの混合比率を任意に変更しても紡糸性、延伸性良好で大きなトラブルが発生せず、目的とする繊維を得ることができるが、好適な混合比率の例を挙げると、例えば、芯ポリマー成分中の合計の微粒子の含有量が70重量%の場合、磁鉄鉱を30重量%、二酸化チタンを40重量%にしたり、芯ポリマー成分中の合計の微粒子含有量が60重量%の場合、磁鉄鉱を30重量%、二酸化チタンを30重量%等の混率にするのが得られた繊維の色相上からも好ましい。磁鉄鉱と二酸化チタンの配合比率の好ましい範囲としては、磁鉄鉱/二酸化チタン=2/8〜7/3である。
【0020】
ポリマー中の微粒子の含有量が50重量%以上の高含有量でしかも、その中に磁鉄鉱を高添加する場合に、二酸化チタン粒子を混合添加することにより、溶融押出時のライン詰まり等のトラブルもなく、しかもポリマー中の分散性も良好で、工程中の糸切れも少なく、A格率が高い状態で目的とする繊維が得られることは、本発明者らが、種々検討した中で初めて見出されてたことである。
【0021】
次ぎに、二酸化チタンを使用する場合について述べる。
本発明は、優れた機械的物性と高比重を兼ね備えている網用繊維を提供すると同時に、種々の色相に対応できる漁網用繊維を提供することを目的としているが、芯ポリマー成分に磁鉄鉱のような着色粒子を高添加率で配合した場合、色相を自由に変更することができなくなるが、二酸化チタンは白色であり、このような白色系粒子を芯ポリマー成分に添加し、保護ポリマー成分には所望の色の顔料等を配合することで、芯成分の色に邪魔されることなく目的とする色を発現させることができるのである。
【0022】
二酸化チタンは、結晶形により、アナターゼ(Anatase)、ルチル(Rutile)及びブルカイト(Brookite)の3つの形態があり、一般に顔料として使用されているのは、アナターゼとルチルである。特に、化学繊維には、二酸化チタンの工程上の摩耗性に及ぼす硬度の関係と溶剤または分散媒に対する分散性の問題からアナターゼタイプが主として用いられるが、アナターゼタイプの比重が3.9であるのに対し、ルチルタイプは比重が4.2と大きいので、本発明の目的にはルチルタイプの二酸化チタンが好ましく使用される。
【0023】
この場合、モース硬度がルチルタイプがアナターゼタイプより大きく、工程上の摩耗等のトラブルが発生する懸念があるが、本発明の複合繊維においては、微粒子を含有する芯ポリマー成分を保護ポリマー成分で実質的に覆っているので、紡糸時のノズル口金の摩耗や加工工程中のガイド類やローラー類の摩耗損傷等の問題もない。
【0024】
さらに、他の微粒子に比して二酸化チタンは、ポリマー中へ高添加し、ポリマーを溶融押し出しする際に、熱凝集が起こりにくく、溶融ポリマーライン中でのコンタミによる詰まりが発生しにくく、紡糸時のフィルター詰まりも少なく、かつ紡糸、延伸時の糸切れ発生も少ないことから、他の白色系微粒子を使用するよりも二酸化チタンを使用することが好ましい。
【0025】
二酸化チタンは、単独で使用してもよいし、一部を比重が3以上で平均粒径が5μ以下の他の白色系微粒子に置き換えてもよい。ただし、上記したような熱凝集の問題があるので、二酸化チタンを少なくとも15重量%、特に好ましくは40重量%使用することが望まれる。他の白色系微粒子としては、例えば、酸化錫(スズ石)等に比して毒性の少ない酸化亜鉛、アルミナ、硫酸バリウム、リトポン、酸化マグネシウム等を使用することができる。
【0026】
次に微粒子を添加する芯ポリマー成分のベースポリマーであるが、保護ポリマー成分の紡糸温度において耐熱性を示す熱可塑性ポリマーが用いられ、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン4、ナイロン46などのポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのブロック共重合体)の水素添加物、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンのブロック共重合体)の水素添加物、SI(ポリスチレン−ポリイソプレンのブロック共重合体)の水素添加物、ポリα−メチルスチレン−ポリイソプレン−ポリα−メチルスチレンのブロック共重合体の水素添加物などの芳香族ビニルブロックと共役ジエンブロックからなる共重合体等から適宜選択することができる。
【0027】
特に、本発明のように微粒子を高添加する場合には、微粒子とポリマーとのヌレ性およびポリマー中での粒子の分散性が良好で、紡糸性、延伸性が最も良好なベースポリマーを使用することが望ましく、かかる観点から、本発明においてはポリアミド類、特にナイロン6を主成分とするポリアミドを使用することが望ましい。
【0028】
また、好適な例として用いるナイロン6ベースポリマーの重合度は、数平均分子量で約22,000以下、更に好ましくは20,000以下6,000以上である。重合度が高すぎると微粒子を高添加した時の混練ポリマー作製時の溶融粘度が高くなりすぎ、トラブルが発生したり、分散不良を発生しやすい。また、実際に無機粒子を高添加したポリマーを溶融押出し、繊維化する際も、溶融粘度が高すぎると設備上のトラブルが多発しやすくなると同時に、断糸が多発してくるため好ましくない。一方、重合度が低すぎると溶融粘度が保護ポリマー成分に対して低くなり過ぎるため芯鞘断面の形成が困難となる。
加えて、芯ポリマー成分にポリアミドを用いる場合は、無機微粒子を含む芯成分として水分を500ppm以下、好ましくは300ppm以下とする必要がある。ポリアミドの如き吸水性ポリマーに、多量に微粒子を含有せしめると、水分率が高い場合、溶融時に極端に流動性が低下し、工程調子を著しく害してしまうためである。一般に、微粒子を多く含有しないポリアミドが、500〜1000ppm程度で用いられるのに対し、多量に含有せしめた本発明においては特に配慮しなければならない点である。
また、芯ポリマー成分としてのポリアミド類は、少量の第3成分を共重合していたり、また少量の添加剤、安定剤などを含んでいてもよい。
【0029】
本発明の繊維の主な使用目的は漁網用途であるが、漁網は屋外で使用されるため、経時的な耐候性が重要であり、長期間使用している間に強力低下が発生し、実用上問題となるようなものは、使用することができない。上記のような微粒子を多量に添加されたポリアミドを用いた場合、漁網として長期間使用した時に繊維強度低下が起こってくる可能があるが、本発明においては、ベースポリマーであるポリアミドに対して、0.01重量%以上、特に0.1重量%以上2重量%以下のヨウ化銅などの銅塩を熱安定剤として添加することにより経時的な繊維強力低下は実用上問題とならないレベルまで改良される。さらに、微粒子として二酸化チタンを使用する場合、紫外線によるチタン原子の励起によりポリマーの劣化を促進しやすいので、酸化防止剤等を添加すると好ましい。
【0030】
芯ポリマー成分であるベースポリマーへ微粒子を含有させる方法としては、種々の方法が可能であるが、例えば二軸押出機等が好適である。また該ベースポリマーと微粒子を混練する場合には、ステアリン酸金属塩、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等種々の分散剤を添加すると、分散性が良好となり好ましい。
【0031】
本発明の複合繊維は、上述したような微粒子を含有した芯ポリマー成分を一成分とし、繊維形成性熱可塑性ポリマーである保護ポリマー成分を他成分として複合紡糸することにより得られる。複合断面形状としては、繊維表面周長の60%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは100%を保護ポリマー成分が占めていることが望ましい。具体的な芯ポリマー成分と保護ポリマー成分との複合形態としては、種々のものが挙げられるが、代表的なものとしては図1(1)〜(8)のようなものが挙げられる。
【0032】
図1中、(1)は一芯、(2)は三芯、(3)は四芯の芯鞘構造繊維、(4)は三層同心円、(5)および(6)は一部露出タイプの芯鞘構造、(7)および(8)は分割タイプの複合構造である。芯ポリマー成分と保護ポリマー成分の組み合わせによっては、(7)と(8)の構造は2成分間の界面で剥離が生じる場合があり、また、(5)と(6)の構造はガイドやローラー等が摩擦することを十分に解消することができない。ガイドやローラー等の摩擦および糸切れをより一層防ぎ、ポリマー間での剥離を防ぐことができる点より、(1)〜(4)のような芯ポリマーが保護ポリマーにより完全に覆われているような芯鞘構造が好ましい。これら図中、斜線部分が芯ポリマー成分であり、斜線のない部分が保護ポリマー成分である。
【0033】
保護ポリマー成分と芯ポリマー成分との複合重量比率は30:70〜80:20、より好ましくは50:50〜80:20である。保護ポリマー成分の比率が少なすぎると、繊維強度が低下してくるため好ましくない。また保護ポリマー成分の比率が多すぎると繊維比重を高くする効果が十分発揮できないため好ましくない。
【0034】
本発明の保護ポリマー成分としては、繊維形成能を有する熱可塑性のポリマーであれば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等、特に限定されないが、繊維としての実用性能上、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル系ポリマーが好ましい。また、これらのポリマーに少量の第3成分を共重合したものも用いることができる。例えばポリエステルとして、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,5−ジカルボン酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4′−ジカルボキシジフェニル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、5−スルホイソフタル酸のNa塩などの芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸、ジオール、ヒドロキシ安息香酸等のオキシカルボン酸などから合成される繊維形成性ポリエステル系ポリマーであり、構成単位の80モル%以上、特に90モル%以上がエチレンテレフタレート単位またブチレンテレフタレート単位であるポリエステル系ポリマーが好ましい。また、これらのポリマーは、蛍光増白剤、安定剤などの添加剤を含んでいても良い。
【0035】
特に、繊維全体の耐候性すなわち経時的な強力保持率を更に良好なレベルに維持するには、カーボンブラックを含有させても良い。保護ポリマー成分としてポリエステル系ポリマーを使用する場合の重要な用件は、ポリマーの極限粘度〔η〕が0.7以上のものを用いる必要がある。ここで極限粘度〔η〕は、フェノールとテトラクロルエタン50:50混合溶液を用い30℃の温度下で測定した値である。
【0036】
通常の衣料用繊維においては、ポリエチレンテレフタレートの〔η〕は、0.60〜0.65くらいのものが用られるのに対し、本発明では目的とする繊維強度を発現させるために、通常の重合度より更に重合度の大きいポリエステルを用いたものである。〔η〕が0.7未満では、繊維比重1.5以上、繊維強度3.5g/dr以上を両立することは難しく、保護ポリマー成分と芯ポリマー成分の複合比率を変更し、保護ポリマー成分リッチにすれば繊維比重が目標とするレベルまで至ることができず、逆に芯ポリマー成分リッチにすれば繊維強度が目標とするレベルまで至らないという結果になった。すなわち、保護ポリマー成分であるポリエステルの〔η〕を0.7以上のものを用いることにより、初めて繊維強度と繊維比重の両方を満足するものが得られたわけである。
【0037】
本発明における〔η〕は、紡糸後の繊維が形成されているポリエステル成分の〔η〕である。すなわち、紡糸時に熱分解または、加水分解等で重合度低下が生じる場合は、その分を見込んだやや高目の重合度のポリマーを用いて繊維化しなければならない事は言うまでもないことである。
【0038】
ところで、本発明にいおては、保護ポリマー成分に着色剤を添加して、前述したような漁網用途に適した色相にすることができ、該ポリマー成分の溶融紡糸温度に耐え得る耐熱性を有する有機顔料や無機顔料が適宜使用できる。具体的には、例えば、カーボンブラック、アントラキノン系褐色着色剤、アントラキノン系紫色着色剤、ベンゾキノン系赤色着色剤等、通常の原着用着色剤を使用することができ、これらの顔料を単独または2種以上用いて添加率0.1〜5重量%程度の範囲で保護ポリマー成分に配合すればよい。
【0039】
着色剤の添加量が0.1重量%未満の場合、十分な「色合い」や「ツヤ」を呈する漁網用原着糸を得ることが難しく、また、5重量%を越えると強力の低下が大きくなるので好ましくない。
【0040】
特に、現在必要とされる漁網用原着糸の色相の大部分が黒色であるが、このような場合、カーボンブラックを保護ポリマー成分に1〜3重量%添加することが好ましい。それは、カーボンブラックが紫外線を吸収しポリマーの劣化を防ぐ効果があり、繊維の耐光性、すなわち、経時的な強力低下を防止でき相乗的な効果を発現するからである。
【0041】
本発明の複合繊維を得るための方法は、特に限定されるものではないが、保護ポリマー成分と芯ポリマー成分を別々の溶融系で加熱溶融しておき、それぞれ通常の押出紡糸装置により紡糸口金まで送り、紡糸口金直前で両成分を前述したような複合形状に合わせて合流させ、押し出して得られる糸条を巻き取り、さらに延伸、熱処理することにより得られる。また、紡糸口金から押出した後、巻き取ることなく直ちに延伸する方法や、紡糸口金から押し出した後、高速で巻き取り、そのまま製品とする方法も用いることができる。
【0042】
具体的には、大略4000m/分以下の速度で引きとり、一旦これを巻取った後に延伸するいわゆるFOYやPOY延伸法、または巻きとることなく延伸するスピンドロー法、更には4000m/分以上の高速で引きとるDSY法あるいはDSY法においてノズルと引取ローラーの間にヒーターを設け、延伸しながら引きとる方法などが適用しうる。
中でも好ましいのは、300〜4000m/分、更に好ましくは600〜2000m/分で引きとり、延伸し(FOYでもスピンドローでもよい)続いて熱処理する方法である。該速度が300m/分未満では、未延伸糸の配向度が低く所望の繊維強度を得るために延伸倍率を上げる必要が生じ、その結果、繊維中に多数のボイドが発生し、高比重化が十分に達成できない場合がある。一方4000m/分を越える、いわゆるDSYといわれる領域で引き取る場合は、延伸熱処理操作を実施しなくとも目標物性が得られることもあるが、先述600〜2000m/分で引きとり延伸熱処理する方法に比し強度が低下することは避けられない。
【0043】
延伸は、一段延伸でも二段延伸でもよい。また延伸倍率は、紡糸速度により様々に変化するので一義的に特定できないが、破断に至る倍率の75〜85%程度の倍率を採用することが好ましい。
特に、本発明の繊維の製造において特徴的な点は、延伸後の熱処理である。すなわち、芯成分の熱可塑性ポリマーの(融点または軟化点−80)℃以上、保護成分の熱可塑性ポリマーの(融点または軟化点−5)℃以下の温度で熱処理を施すことであり、かかる熱処理温度としては、毛羽が発生しない範囲で高目に設定する方が繊維比重が高くかつタフネスの大きいものが得られる。これは、芯ポリマー成分の融点または軟化点に近いか、もしくはそれ以上の温度で加熱されることにより繊維が収縮しつつ延伸時に発生した繊維中の微粒子周辺でのポリマー中のボイドがある程度修復されるためと推定され、また処理温度を高めることにより繊維の機械的性質を発現させる保護成分の結晶化が促進されるためと推定される。
かかる熱処理の温度が保護成分のポリマーの(融点または軟化点−5)℃を越えると断糸が多発し、芯成分のポリマーの(融点または軟化点−80)℃未満ではボイドを十分に修復することが困難である。好ましい熱処理温度の下限値は、芯成分の熱可塑性ポリマ−の(融点または軟化点−60)℃であり、上下値は保護成分の熱可塑性ポリマ−の(融点または軟化点−10)℃である。
例えば、芯ポリマー成分がナイロン6、保護ポリマー成分がポリエステルであるときには、かかる加熱処理の温度を160℃以上255℃以下とすることが望ましい。
【0044】
また、延伸を安定化させ、かつ、ボイドの発生を抑制するには、延伸時の加熱を熱ロ−ル等の接触加熱方式に加えてスチームジェットや空気加熱等の非接触加熱方式を併用することが好ましい。これは、芯ポリマー成分よりも十分に高い温度で芯ポリマーの流動性を高めた状態で延伸しようというものであり、例えば、芯ポリマー成分がナイロン6であるときには、350℃以上、好ましくは400℃以上、特に好ましくは430℃以上のスチームジェットを用いて加熱延伸することが好ましい。
なお、かかるスチ−ムジェットの温度は、本発明における熱処理温度そのものを示すものではなく、本発明における熱処理温度とは接触加熱温度を意味するものである。
これらの知見から、芯ポリマ−成分のベ−スポリマ−は、保護ポリマ−成分より20℃以上、好ましくは30℃以上低い融点または軟化点を有するものが好適である。このポリマ−は結晶性の繊維形成性ポリマ−が繊維化工程性の見地から好ましいが、本発明の目的のためには非晶性ポリマ−も使用できる。
【0045】
また、本発明の複合繊維は、単独あるいは他の繊維と混用して広汎な用途に用いることができる。他の繊維と混用する場合には、混繊、合糸、合撚、交織、交編、その他あらゆる手段を用いることができ、さらに得られた布帛は必要に応じ、種々後加工処理を施して、各種の用途に供することができる。本発明の複合繊維の好適な用途としては、従来にない高比重、実用に耐えうる繊維強力を有するポリエステル系繊維である特徴を最大限に生かせる刺網類、曳網類、旋網類、建網類、敷網類等各種漁網用途に最適である。特に、サケ、ブリ、マグロ、アジ、サバ、イワシ、スズキ、イカ他の定置網用として最適である。
【0046】
漁網用途以外として、土木工事等で使用されるシルトプロテクター用を始め、従来にない、高比重性能を保持したポリエステル繊維として各種産業資材用途への応用が可能である。また産業資材用途以外にも、カーテン、暗幕等非衣料分野への応用も好適である。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何等限定されるものではない。なお、本発明における〔η〕、微粒子の平均粒径、繊維比重、強度、伸度、ナイロンの数平均分子量は以下の方法で求めることができる。
・ポリエステルの〔η〕:溶剤としてフェノールとテトラクロルエタン1:1の混合溶剤を用い、30℃の温度下で測定した。
・ナイロンの数平均分子量:ウォーターズ社製HLC−510によるGPCクロマトグラムにより測定した。
・微粒子の平均粒径:堀場製作所製の遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−500により測定した。
・繊維比重:溶剤として四塩化炭素とノルマルヘキサンを用い、密度勾配を作成して、20℃下で測定した。
・繊維強度及び伸度:島津製作所社製 引張試験機(オートグラフIM−100)を用い、20℃、65RH%下で測定した。
【0048】
実施例1
宇部興産(株)社製 数平均分子量11,000のナイロン6粉末(商品名P1011F)を芯ポリマー成分のベースポリマーとして使用し、かかるポリマー粉末に対して平均粒子径0.2μの球状の磁鉄鉱粉末(戸田工業(株)社製:表面フェライトコート品、比重5.0)を30重量%と平均粒子径0.35μの二酸化チタン(チタン工業(株)社製 比重4.2)40重量%とを混合し、かかる混合物を二軸混練機で溶融混練してストランド状に押出し、ストランドをカットしてペレット化し、90℃で真空乾燥して水分を180ppmとした。
一方、保護ポリマー成分としては、二酸化チタンを0.08重量%含有する極限粘度〔η〕0.80のポリエチレンテレフタレートを常法により溶融重合し、ペレット化したものを使用した。
【0049】
得られた保護ポリマー成分と芯ポリマー成分を別々の押出機で溶融押し出しし、紡糸温度295℃で保護ポリマー成分が鞘となるようにノズル部で合流し、複合重量比(保護ポリマー成分):(芯ポリマー成分)=2:1とし、断面を図1(1)のような芯鞘形状にして、ノズル口径0.4mmφ、8ホールノズルで吐出させ、紡糸速度1000m/分で巻き取った。この時、繊維形成後の保護ポリマー成分を形成するポリエチレンテレフタレートは〔η〕0.75であった。
【0050】
得られた紡糸原糸をホットローラー80℃、ホットプレート140℃で延伸倍率4.0倍で延伸し、つづいて3%オーバーフィードを入れながらホットローラー180℃で熱処理した後、75デニール8フィラメントのマルチフィラメントを捲き取った。このマルチフィラメント糸の断面形状を顕微鏡により観察したところ、芯鞘比率がいずれの繊維においてもまた長さ方向においてもほぼ一定であり、かつ芯成分が鞘成分により完全に覆われており、さらに極めて均質性に優れ、毛羽も無かった。また、紡糸工程、延伸工程におけるトラブルの発生も認められなかった。得られた繊維比重は1.58で、強度は4.5g/dr、伸度15%であった。
【0051】
得られた延伸糸を合糸して網を作成し、海中に投入試験した所、沈降性良好で、海中での網揺れも少なく、且つ耐久性に優れ、漁網としての好適な繊維であることが確認された。
【0052】
延伸時の熱処理温度を変化させることにより得られた繊維の比重が異なることがわかった。上記で述べた同一条件で採取した紡糸条件を、以下の条件で延伸した結果、以下の物性を有する繊維が得られた。
【0053】
Figure 0003574513
【0054】
収縮処理時の熱処理温度が高い方が繊維物性は良好な結果が得られることがわかった。しかしながら、熱処理温度が極端に高くなると延伸毛羽が多発してくるため好ましくない。
【0055】
また、磁鉄鉱微粒子を上記のものに替えて、表面コーティングされていない戸田工業(株)社製:比重5.0を用いて全く同様にして繊維化を行なった。その結果、繊維の比重が1.53と表面コート品使用の時よりも若干比重の低いものが得られた。
【0056】
実施例2
芯ポリマー成分中へヨウ化銅を0.2重量%添加したこと以外は実施例1と同様にして複合繊維を製造し、得られた繊維の強度保持性について調べた。評価手段として83℃下でカーボンフェード照射400時間照射後の強度保持率と、83℃下でキセノンウェザー照射400時間照射後の強度保持率について調べた。その結果、カーボンフェード400hr後、n=5の平均強度保持率は、約86%、キセノンウェザー400hr後、n=5の平均強度保持率は約84%であった。これに対して実施例1で得られた繊維は、カーボンフェード400hr後では強度保持率が約42%、キセノンウェザー400hr後では強度保持率が約36%であった。
【0057】
実施例3〜8
実施例3は、芯ポリマー成分の微粒子を磁鉄鉱50重量%と二酸化チタン20重量%とし、実施例4は磁鉄鉱20重量%と二酸化チタン50重量%とで合計70重量%とし、実施例5は磁鉄鉱10重量%と二酸化チタン60重量%とで合計70重量%としたこと以外は、いずれも実施例2と同様にして複合繊維を得た。いずれも工程性のトラブルもなく、しかも良好な繊維物性を有する繊維が得られた。実施例4は、得られた繊維の色相が灰色を呈し黒色とやや異なるレベルであり、実施例5は、繊維の色相は白っぽい灰色であった。実施例6は、芯ポリマー成分中の微粒子含量を磁鉄鉱30重量%、二酸化チタン20重量%で合計50重量%とし、実施例7は、保護ポリマー成分の〔η〕を0.85とし、実施例8は、保護ポリマー成分と芯ポリマー成分の複合比率を1:1としたこと以外は、すべて実施例2と同様の方法で実施した。いずれも工程性良好で、高比重、高強度の繊維が得られた。これら実施例における保護ポリマー成分の〔η〕、芯ポリマー成分における微粒子の種類とその配合率、保護ポリマー成分と芯ポリマー成分の複合比及び繊維の断面形状について纏めたものを表1に、また、これら繊維の工程性および物性についての評価を表2に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0003574513
【0059】
【表2】
Figure 0003574513
【0060】
実施例9〜10
実施例9は二酸化チタンのかわりに、平均粒径1.0μの酸化亜鉛(比重5.5)を用い、実施例10は平均粒径2.0μのアルミナ(比重3.98)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で複合繊維を得た。いずれも紡糸時にやや毛羽が発生したこと以外は工程性良好でしかも良好な繊維が得られた(表1、表2参照)。
【0061】
実施例11〜12
実施例11は断面形状を図1(2)、実施例12は断面形状を図1(3)とすること以外は、実施例2と同様の方法で複合紡糸した。いずれも工程性良好でしかも良好な繊維が得られた(表1、表2参照)。
【0062】
実施例13
芯ポリマー成分のベースポリマーとして、ナイロン12(宇部興産(株)社製3014U)を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で複合繊維を製造したが、工程性良好で、良好な繊維が得られた(表1、表2参照)。
【0063】
実施例14
芯ポリマー成分として、数平均分子量が22,000であるナイロン6(宇部興産(株)社製 商品名P1022)を用いて実施したこと以外は、実施例2と同様にして複合繊維を得た(表1、表2参照)。
【0064】
比較例1
保護ポリマー成分として紡糸前の〔η〕が0.65であるポリエチレンテレフタレートチップを用い、紡糸後の〔η〕が0.60となるように紡糸したこと以外は、実施例2と同様の方法で複合繊維を得た。その結果、紡糸時および延伸時に毛羽がやや発生し、保護ポリマー成分の粘度が低いために繊維強度が2.5g/dと低く、実施例2より劣るものであった。
【0065】
比較例2
微粒子として磁鉄鉱15重量%と二酸化チタン15重量%とで合計30重量%としたこと以外は実施例2と同様の方法で複合繊維を得た。工程性は良好で繊維化可能であったが、繊維比重が1.45であり、実施例2より劣るものであった。
【0066】
比較例3〜4
比較例3は二酸化チタンのかわりに、平均粒径0.1μ、比重2.2の二酸化ケイ素粒子を用い、比較例4は平均粒径1.0μ、比重2.5のカオリン粒子を用いた以外は、実施例2と同様の方法で実施した。いずれも、毛羽が発生し、紡糸性、延伸性はあまり良くなかった。得られた繊維の比重も、実施例2よりも劣るレベルのものであった。
【0067】
比較例5〜6
実施例2と同一のポリマーを用い、比較例5は保護ポリマー成分:芯ポリマー成分の複合比率を85:15、比較例6は保護ポリマー成分:芯ポリマー成分の複合比率を15:85として実施例2と同様にして複合紡糸した。比較例5は良好に繊維化が可能であったが、繊維比重性能としては劣るレベルであった。比較例6は紡糸性、延伸性が不良で毛羽、断糸が多発し、性能評価できるような繊維が得られなかった。比較例1〜6における保護ポリマー成分の〔η〕、芯ポリマー成分における微粒子の種類とその配合率、保護ポリマー成分と芯ポリマー成分の複合比及び繊維の断面形状について纏めたものは表1に、また、これら繊維の工程性および物性についての評価は表2に示したとおりである。
【0068】
実施例15
宇部興産(株)社製 数平均分子量11,000のナイロン6粉末(商品名P1011F)を芯ポリマー成分のベースポリマーとして使用し、かかるポリマー粉末に対して平均粒子径0.35μの二酸化チタン(チタン工業(株)社製 比重4.2)70重量%を混合し、かかる混合物を二軸混練機で溶融混練してストランド状に押出し、ストランドをカットしてペレット化し、100℃の窒素循環により水分率を460ppmとした。
一方、保護ポリマー成分としては、1次平均粒子径0.03μのカーボンブラック(デグサ社製)を1.5重量%含有する極限粘度〔η〕0.80のポリエチレンテレフタレートを常法により溶融重合し、ペレット化したものを使用した。これら両ポリマーを用いて実施例2と同様にして複合繊維を得た。得られた複合繊維の保護ポリマー成分のポリエチレンテレフタレートの〔η〕は0.75であった。また、繊維比重は、1.57、強度は4.6g/dr、伸度は18%であり、魚網用途として優れた性能を有していた。
【0069】
実施例16
二酸化チタンの含有量を55重量%とすること以外は、実施例15と同様にして複合繊維を得た。得られた繊維の比重は、1.53、強度は5.2g/dr、伸度は20%であり、紡糸性、延伸性ともに優れた繊維が得られた。
【0070】
実施例17
二酸化チタンを50重量%と平均粒径1.0μ、比重5.5の酸化亜鉛を20重量%の合計70重量%の微粒子を含有すること以外は、実施例15と同様にして複合繊維を得た。得られた繊維の比重は、1.58、強度は4.5g/dr、伸度は15%であり、紡糸時に若干の毛羽が発生したものの、延伸性に優れ、漁網用途として優れた性能を有した繊維が得られた。
【0071】
実施例18
二酸化チタンを50重量%と平均粒径2.0μ、比重3.9のアルミナを20重量%の合計70重量%の微粒子を含有すること以外は、実施例15と同様にして複合繊維を得た。得られた繊維の比重は、1.56、強度は4.5g/dr、伸度は15%であり、紡糸時に若干の毛羽が発生したものの、延伸性に優れ、漁網用途として優れた性能を有した繊維が得られた。
【0072】
実施例19
二酸化チタンを50重量%と平均粒径0.6μm、比重4.3の硫酸バリウムを20重量%の合計70重量%の微粒子を含有すること以外は、実施例15と同様にして複合繊維を得た。得られた繊維の比重は、1.57、強度は4.5g/dr、伸度は14%であり、紡糸時に若干の毛羽が発生したものの、延伸性に優れ、漁網用途として優れた性能を有した繊維が得られた。実施例15〜19における保護ポリマー成分の〔η〕、着色剤の含有量、芯ポリマー成分における微粒子の種類とその配合率、保護ポリマー成分と芯ポリマー成分の複合比および繊維の断面形状について纏めたものを表3に、また、これら繊維の工程性および物性についての評価を表4に示す。
【0073】
【表3】
Figure 0003574513
【0074】
【表4】
Figure 0003574513
【0075】
実施例20
平均粒子径0.35μの二酸化チタン(ルチル型;チタン工業(株)社製 比重4.2)を60重量%含有する数平均分子量11,000のナイロン6(宇部興産社製)を芯ポリマー成分(水分率は100ppm)とし、二酸化チタンを0.08重量%含有する極限粘度が〔η〕0.95であるポリエチレンテレフタレートを保護ポリマー成分として、別々の押出機で溶融押し出しし、紡糸温度300℃で保護ポリマー成分が鞘となるようにノズル部で合流し、複合重量比(保護ポリマー成分):(芯ポリマー成分)=1:1とし、断面を図1(1)のような芯鞘形状にして、ノズル口径0.5mmφ、200ホールノズルで吐出させた。吐出糸条は、ノズル直下に設けた20cm長、380℃の加熱帯域を通過させた後、25℃、毎分7Nmの冷却風で冷却し、オイリングローラーで紡糸油剤を付与し、紡糸速度600m/分で引き取った。
【0076】
引き続き該糸条を一旦捲取ることなく、延伸、熱処理を以下の要領で実施し巻き取った。
延 伸:110℃の熱ロールで加熱後、400℃の加熱蒸気を噴射しつつ4.3倍に一段延伸。
熱処理:220℃の熱ロールと弛緩ロールとの間で3%の収縮処理。
その結果、工程安定性は良好で、1004デニール、強度4.0g/d、伸度18%、比重1.62の漁網用繊維として実用性の高い繊維が得られた。
【0077】
実施例21
平均粒子径0.35μの二酸化チタン(ルチル型;チタン工業(株)社製 比重4.2)25重量%と平均粒子径0.2μのα型ヘマタイト粉末(戸田工業社製、比重5.2)を50重量%含有する数平均分子量12,000のナイロン6を芯ポリマー成分(水分率200ppm)とし、カーボンブラック(デグサ社製)を1.0重量%含有する極限粘度が〔η〕1.0であるポリエチレンテレフタレートを保護ポリマー成分として、別々の押出機で溶融押し出しし、紡糸温度300℃で保護ポリマー成分が鞘となるようにノズル部で合流し、複合重量比(保護ポリマー成分):(芯ポリマー成分)=2:1とし、断面を図1(1)のような芯鞘形状にして、ノズル口径0.6mmφ、100ホールノズルで吐出させた。吐出糸条は、ノズル直下に設けた20cm長、380℃の加熱帯域を通過させた後、25℃、毎分7Nmの冷却風で冷却し、オイリングローラーで紡糸油剤を付与し、紡糸速度600m/分で引き取った。
【0078】
引き続き該糸条を一旦捲取ることなく、延伸、熱処理を以下の要領で実施し巻き取った。
延 伸:110℃の熱ロールで加熱後、450℃の加熱蒸気を噴射しつつ4.8倍に一段延伸。
熱処理:210℃の熱ロールと弛緩ロールとの間で4%の収縮処理。
その結果、工程安定性は良好で、1002デニール、強度5.5g/d、伸度19%、比重1.62の漁網用繊維として実用性の高い繊維が得られた。
【0079】
比較例7
加熱蒸気の温度を300℃とすること以外は、実施例20と同様にして複合繊維を製造したが、その結果、強度3.3g/dr、伸度20%、比重1.54とわずかではあるが、繊維強度が本発明に達しない繊維が得られた。これは、延伸時に芯ポリマー成分の流動が不十分であることに起因するものと思われ、延伸時に断糸が多発した。
【0080】
実施例22〜23、比較例8
延伸後の熱処理温度を245℃(実施例22)、160℃(実施例23)、256℃(比較例8)とすること以外は実施例20と同様にして複合繊維を製造した。その結果、245℃の場合は、強度4.2g/dr、伸度21%、比重1.63と高強度、高比重の繊維が得られたが、熱処理時に若干の断糸が見られた。また、160℃の場合は、強度3.7g/dr、伸度15%、比重1.53であった。256℃では、繊維が一部融着し、断糸した。
【0081】
比較例9
実施例1において、芯成分が水分率を650ppmとしたところノズル孔からビス落ちが生じ、全く紡糸不能であった。
【0082】
【発明の効果】
本発明は、特定の無機粒子が高添加された芯ポリマー成分と保護ポリマー成分の2成分による複合繊維を得ることにより、従来にない高い繊維強力と高い比重性能を有し、しかも定置網用繊維として公害問題がなく、かつ好適な色相を有した複合繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(1)〜(8)は本発明の繊維断面における芯ポリマー成分と保護ポリマー成分との代表的な複合形態を示す模式図である。
【符号の説明】
1:芯ポリマー成分
2:保護ポリマー成分

Claims (3)

  1. 粒子を50〜85重量%含有する数平均分子量22,000以下のポリアミドからなる芯ポリマー成分と、該芯ポリマー成分を覆う保護ポリマー成分とから構成され、繊維比重が1.5以上、強度が4.0g/d以上であり、かつ該微粒子が酸化鉄および二酸化チタンであることを特徴とする複合繊維。
  2. 二酸化チタンと他の比重3以上の無機微粒子を合計で50〜85重量%含有する数平均分子量22,000以下のポリアミドを芯ポリマー成分とし、該ポリアミドよりも少なくとも20℃高い融点または軟化点を有する熱可塑性ポリマーを保護成分として複合紡糸し、加熱延伸した後に、芯成分のポリアミドの(融点または軟化点−80)℃以上、鞘成分の熱可塑性ポリマー成分の(融点または軟化点−5)℃以下の温度で熱処理を施すことにより、繊維比重が1.5以上であり、かつ強度が3.5g/d以上である複合繊維を製造する方法。
  3. 無機微粒子を含む芯成分の水分率が500ppm以下である請求項に記載の複合繊維の製造方法。
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